JP5866743B1 - 衣服消毒装置及び衣服消毒方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】人体に安全に、衣服に付着した病原体を確実に消毒することが可能な衣服消毒装置及び衣服消毒方法の提供。【解決手段】衣服消毒装置1の生成部10が、微酸性次亜塩素酸水を微粒子化して、物に付着した時の濡れ性が水滴の濡れ性よりも低い微細粒子の霧Fを生成し、噴霧部11が、霧FをユーザーUの衣服Cに噴霧することで、衣服Cに付着した病原体を不活化させる衣服Cの消毒方法。生成部10が、微粒子化した微酸性次亜塩素酸水の粒子を送風に乗せることで、微細粒子のみの霧Fを生成する衣服消毒装置1。【選択図】図1

Description

本発明は、衣服消毒装置及び衣服消毒方法に関する。
従来、消毒剤を噴霧してユーザーの衣服や持ち物に付着した病原体を消毒、殺菌する技術は多数存在する。例えば、特開2011−67498号公報(特許文献1)には、ゲート状に配置され、断面形状が扁平な中空管状部材と、当該中空管状部材の内側の周方向に所定の間隔を空けて複数の浄化材噴霧ノズルとが配置され、浄化材噴霧ノズルから消毒剤が噴霧される浄化装置が開示されている。これにより、ユーザーの衣服等に付着した汚染物質、微生物を住宅に入る前の段階で浄化出来るとしている。
又、実用新案登録第3089427号公報(特許文献2)には、ユーザーが、弧形カバーのカバー噴霧室に入り、身体を1回〜2回回転させると、弧形カバーの各噴霧排出口から、水霧のような極めて小さい粒度の噴霧液が噴霧されて、衣服に接触する自動噴霧脱臭機が開示されている。これにより、ユーザーの衣服に付いた悪臭を除去することが出来るとしている。
又、特開2011−80745号公報(特許文献3)には、衛生水を微粒化して、除菌・消臭の対象体に向けて噴出して除菌・消臭を行う際に、衛生水を十分に微粒化して拡散させて対象体の必要箇所に衛生水を噴霧するエアーシャワー装置が開示されている。又、このエアーシャワー装置は、対象体に衛生水を噴霧後、対象体の衣服に着いた衛生水の乾燥も可能とするとしている。
特開2011−67498号公報 実用新案登録第3089427号公報 特開2011−80745号公報
例えば、ユーザーが外部から住宅、病院、空港等の建築物に入る場合、ユーザーの衣服に、感染症患者の唾液、吐物、便が知らぬ間に付着していることがあり、ユーザーが当該衣服を着たまま建築物に入ると、唾液等に含まれる病原体が建築物内に蔓延するという課題がある。
又、病院、歯科院等で従事するユーザー(例えば、医師、歯科医師、看護師等)は、通常、病原体に感染された患者と接している。近年では、手洗いによる手指の消毒は十分に励行されているが、ユーザーの衣服(例えば、白衣、ユニフォーム等)の消毒は殆どなされていない。そのため、ユーザーの衣服に付着した病原体が、当該衣服を介して、次の患者に付着して、当該次の患者が前記病原体に感染する場合がある。この場合、院内感染が発生する可能性がある。インフルエンザウイルス、ノロウイルス等の院内感染の主な原因は、人と人との接触感染であると言われている。
又、消費者の口に入れる製品を製造する食品製造工場、医薬品製造工場等で従事するユーザーは、工場の作業場に入る際に、エアーシャワーで作業着や帽子等の衣類にエアーを吹きかけて、衣類に付着した病原体を除去している。このエアーシャワーでは、エアーが届かない衣類の箇所や病原体が液に含まれて付着している箇所に対して、病原体の除去の効果が無いという課題がある。
上述した特許文献1−3に記載の技術では、衣服に付着した病原体を安全に消毒、殺菌出来るか不明である。又、従来の技術では、噴霧された消毒剤により衣服が濡れた状態になり、消毒剤で汚れ、ユーザーの着心地が悪く、新しい衣服に着替える必要が生じるという課題がある。
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、ユーザーが衣服を着替えることなく、ユーザーの人体に安全に、且つ、当該衣服に付着した病原体を確実に消毒することが可能な衣服消毒装置及び衣服消毒方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規な衣服消毒装置及び衣服消毒方法を完成させた。本発明に係る衣服消毒装置は、生成部と、噴霧部と、を備える。生成部は、有効塩素濃度が10ppm〜80ppmであり、pHが5.0〜6.5である次亜塩素酸水を微粒子化して、粒子径が70μm以下である微細粒子であって、衣服に当った時の濡れ性が、粒子径が70μmを超える水滴の濡れ性よりも低い微細粒子の霧を生成する。噴霧部は、前記霧をユーザーが着用している衣服に噴霧することで、当該衣服に付着した病原体を不活化させる。
前記生成部は、微粒子化した前記次亜塩素酸水の粒子を送風に乗せることで、前記微細粒子のみの霧を生成する。前記微細粒子の粒子径は、70μm以下である。前記噴霧部は、前記衣服に対する前記霧の付着量を、前記衣服の面積に対して1mg/cm〜20mg/cmの範囲内とする。前記噴霧部は、前記衣服に対する前記霧の噴霧時間を、10秒〜120秒の範囲内とすることで、前記霧を前記衣服に特定の付着量だけ付着させる。前記噴霧部は、前記霧を噴霧する噴霧孔と、前記衣服との間の噴霧距離を、20cm〜100cmの範囲内とすることで、前記霧を前記衣服に特定の付着量だけ付着させる。
又、本発明に係る衣服消毒方法は、生成ステップと、噴霧ステップと、を備える。生成ステップは、有効塩素濃度が10ppm〜80ppmであり、pHが5.0〜6.5である次亜塩素酸水を微粒子化して、粒子径が70μm以下である微細粒子であって、衣服に当った時の濡れ性が、粒子径が70μmを超える水滴の濡れ性よりも低い微細粒子の霧を生成する。噴霧ステップは、前記霧をユーザーが着用している衣服に噴霧することで、当該衣服に付着した病原体を不活化させる。
本発明によれば、ユーザーが衣服を着替えることなく、ユーザーの人体に安全に、且つ、当該衣服に付着した病原体を確実に消毒することが可能となる。
本発明の実施形態に係る衣服消毒装置の概念図である。 本発明の実施形態に係る衣服消毒装置において、超音波振動子を用いた場合の概念図である。 本発明の実施形態に係る衣服消毒装置の水位調整管の一例を示す図(図3A)と、本発明の実施形態に係る衣服消毒装置の二重の噴霧孔の一例を示す図(図3B)と、である。 本発明の実施形態に係る衣服消毒装置において、2流体ノズルを用いた場合の概念図である。 本発明の実施形態に係る他の衣服消毒装置の斜視図である。 本発明の実施例に係る衣服消毒装置の斜視図(図6A)と、本発明の実施例に係る衣服消毒装置とユーザーとの関係を示す斜視図(図6B)と、である。 本発明の実施例に係る衣服消毒装置の殺菌試験の一例を示す図(図7A)と、本発明の実施例に係る衣服消毒装置の殺菌試験結果の一例を示す図(図7B)と、である。 本発明の実施例、比較例に係る衣服消毒装置の殺菌試験、濡れ試験、付着量測定の結果をまとめた表を示す図である。 本発明の実施例に係る衣服消毒装置で白衣に微酸性次亜塩素酸水の霧を噴霧する状態を示す図(図9A)と、微酸性次亜塩素酸水の霧を噴霧する前後の白衣の殺菌試験結果の一例を示す図(図9B)と、である。
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る衣服消毒装置及び衣服消毒方法の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
本発明に係る衣服消毒装置1は、図1に示すように、生成部10と、噴霧部11とを備える。生成部10は、微酸性次亜塩素酸水を微粒子化して、物に付着した時の濡れ性が水滴の濡れ性よりも低い微細粒子の霧Fを生成する。噴霧部11は、複数の噴霧孔11aから特定の噴霧距離Dだけ離れたユーザーUの衣服Cに前記霧Fを噴霧することで、当該衣服Cに付着した病原体を不活化させる。これにより、ユーザーUが衣服Cを着替えることなく、ユーザーUの人体に安全に、且つ、当該衣服Cに付着した病原体を確実に消毒することが可能となる。
即ち、微酸性次亜塩素酸水とは、有効塩素濃度が10ppm〜80ppmであり、pHが5.0〜6.5である次亜塩素酸水を意味し、不快な塩素臭や漂白作用が無いにもかかわらず、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌、MRSA等)、グラム陰性菌(サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター菌、緑膿菌等)、ウイルス(ノロウイルス、インフルエンザウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルス等)、真菌(カンジダ等)の病原体を数秒−数分で不活化させる殺菌力を有する。
更に、微酸性次亜塩素酸水は、特定量であれば、人体に対して安全であり、日本国の厚生労働省で食品添加物として認定されている。微酸性次亜塩素酸水は、塩化ナトリウム等の塩化物イオンを含む水溶液を直流電圧で電解処理して得られる水溶液(電解次亜塩素酸水)であり、装置や電解条件により製造される。
本発明では、殺菌力と安全性を兼ね備えた微酸性次亜塩素酸水の消毒液(殺菌液)を、濡れ性の低い微細粒子の霧Fにし、当該霧Fを衣服Cに噴霧することで、ユーザーUの衣服Cに付着した病原体を確実に不活化させる。
又、本発明における濡れ性の低い微細粒子の霧Fは、ドライミスト(マイクロフォグ)とも呼ばれ、粒子径が極めて微細であり、粗大な粒子径の水滴の霧と比較して、表面張力が高く、浮遊性が高く、物に付着した時の濡れ性が水滴の濡れ性よりも低い(蒸発特性に優れる)。そのため、前記霧Fの微細粒子が衣服Cに付着すると、直ぐに気化(蒸発)するか、暫くして気化して、微酸性次亜塩素酸水が衣服Cに残留することが無い。又、微細粒子は、表面張力が高いことから、衣服Cのうち、何も無い箇所に当たっても、当該衣服Cに滲み込まずに、跳ね返る。一方、衣服Cのうち、病原体が存在する箇所に微細粒子が当たれば、その病原体に付着して、当該病原体を不活化させる。
そのため、本発明では、霧FをユーザーUの衣服Cに満遍なく散布しても、当該衣服Cを殆ど濡らすこと無く、病原体を不活化させることが可能となり、当該衣服Cを満遍なく消毒、殺菌することが可能となる。
又、本発明では、消毒液を微酸性次亜塩素酸水に限定することで、ユーザーUの衣服Cに塩素系の不快な臭気を付けたり、当該衣服Cの色を脱色(漂白)したりすること無く、快適に衣服Cを消毒、殺菌することが出来る。
その結果、例えば、不特定人が往来する病院、歯科院、老人ホーム、施設、学校、保育園、幼稚園、空港等において、不特定人の衣服Cを殆ど濡らすこと無く、容易に消毒することが出来るため、感染症の流行を確実に防止することが出来る。又、病原体に感染された患者と接した医師等の衣服Cも濡らすこと無く簡単に消毒することが出来るため、院内感染を確実に防止することが出来る。食品製造工場等のユーザーの衣服Cの消毒にも好適である。衣服Cが殆ど濡れないため、衣服Cを着替える必要が無く、次の作業に支障が無い。更に、塩素系の不快な臭気や漂白が生じないため、ユーザーUは気軽に衣服Cを消毒することが可能となる。
ここで、微酸性次亜塩素酸水を微粒子化した粒子は、その粒子径により、表面張力、浮遊性、濡れ性が異なり、本発明では、ドライミスト(マイクロフォグ)となる粒子径が70μm以下である微細粒子の霧Fを採用している。一方、粒子径が70μmを越える粗大粒子の霧は、表面張力が低く、浮遊性が低く、水滴の濡れ性に近い濡れ性を有する。そのため、本発明では、粒子径が70μmを越える粒子の霧を採用しない。
又、本発明に係る衣服消毒装置1の構成に特に限定は無いが、例えば、下記の構成を採用することが出来る。先ず、消毒液の霧Fを生成するために超音波振動子を採用する場合は、図2に示すように、特定の容器20内に消毒液が貯留され、当該容器20内に超音波振動子21aが投入される。超音波振動子21aは、振動制御部21に電気的に接続され、振動制御部21が、当該超音波振動子21aを振動させることで、消毒液の霧Fを生成させる。容器20は、内部が空洞で長尺の噴霧パイプ22に連通され、当該噴霧パイプ22は、垂直方向に沿って設置され、例えば、垂直方向の面に沿って複数の噴霧孔11aを備えている。又、容器20には、送風部23aが設けられ、送風制御部23に電気的に接続されており、送風制御部23は、送風部23aを駆動することで、外部の空気を容器20内に送り出して、超音波振動子21aで微粒子化した消毒液の粒子を送風に乗せる。ここで、超音波振動子21aで微粒子化した粒子の粒子径は、通常、様々であるが、微細粒子は、浮遊性から、送風に乗って運ばれる一方、粗大粒子は、送風に運ばれること無く落下する。この現象を利用して、粗大粒子を除去し、ドライミストとなる微細粒子の霧Fのみを生成することが出来る。
超音波振動子21aから噴霧孔11aまでの距離が長い程、送風に乗って運ばれる微細粒子の粒子径は小さくなる。微細粒子の霧Fは、噴霧パイプ22の内部を通過して各噴霧孔11aから噴射される。噴霧孔11aには、開閉弁24aが内蔵され、開閉制御部24に電気的に接続されている。開閉制御部24は、当該開閉弁24aの開閉を制御し、開閉弁24aを閉状態にすると、噴霧パイプ22内に霧Fが充満され、開閉弁24aを開状態にすると、噴霧孔11aからの霧Fの噴霧が開始される。
ここで、前記容器20は、図3Aに示すように、容器20内の消毒液の水位を一定にするために、水位調整管30が設けられると好ましい。水位調整管30は、容器20の下面の側面に前記容器20の内部と連通され、への字状に形成された管であり、への字状の部分30aが、前記容器20内の消毒液の水位に近い位置に設けられ、消毒液の液相と空気相とを有する状態である。そして、水位調整管30には、別個、消毒液を貯留する貯留タンク31と連通しており、貯留タンク31の消毒液を容器20へ供給する。これにより、容器20内の消毒液の水位が下がると、への字状の部分30aから、当該下がった水位を元に戻すだけの消毒液が供給され、容器20内の消毒液の水位が一定に保持される。
又、噴霧パイプ22の内部に充満された霧Fを噴霧孔11aから噴霧する場合、当該噴霧孔11aは、図3Bに示すように、二重の噴霧孔で構成されると好ましい。即ち、噴霧パイプ22の内部に、垂直方向に沿って二つの空間を生じさせる内壁部32が設けられ、噴霧孔11aから離れた第一の空間S1に霧Fが充満され、噴霧孔11aに近接する第二の空間S2には何も充満されない。内壁部32に、第一の空間S1と第二の空間S2とを連通する第一の噴霧孔33が設けられ、当該第一の噴霧孔33に対向する噴霧パイプ22の位置に、前記第一の噴霧孔33の孔径よりも大きい孔径を有する第二の噴霧孔34が設けられる。又、第一の空間S1と第二の空間S2とは容器20に連通している。これにより、霧Fが第一の噴霧孔33から噴射された場合に、第一の噴霧孔33で凝集した消毒液は内壁部32の外面に沿って垂れ落ちて、容器20の内部に収集され、再利用される。一方、第一の噴霧孔33で凝集されなかった霧Fが第二の噴霧孔34から噴射される場合、第二の噴霧孔34の孔径は第一の噴霧孔33の孔径よりも大きいため、第二の噴霧孔34で霧Fの凝集は生じ難くなり、噴霧パイプ22の外面が消毒液で汚れ難くなる。又、第二の噴霧孔34からは凝集されなかった霧Fが噴射されるため、粒子径が極めて小さい微細粒子のみの霧Fを噴射させることが出来る。尚、霧Fの噴射を制御する開閉弁24aは、第一の噴霧孔33、第二の噴霧孔34のいずれかに内蔵される。
又、消毒液の霧Fを生成するためにノズルを採用する場合は、図4に示すように、噴霧孔11aをノズル(例えば、2流体ノズル)としても良い。当該ノズル11aには、空気管40aと液管40bとがそれぞれ接続され、各ノズル11aの空気管40aと液管40bは、それぞれ流量制御部40に接続されている。流量制御部40は、空気管40aを通じて、ノズル11aに特定の空気圧で空気を送出する。流量制御部40は、液管40bを通じて、ノズル11aに特定の液圧で消毒液を送出する。前記ノズル11aには、ソレノイド等の駆動部41aが内蔵され、各ノズル11aの駆動部41aは、それぞれノズル制御部41と電気的に接続されている。ノズル制御部4は、ノズル11aの駆動部41aを駆動することで、当該ノズル11aに送出された空気及び消毒液を混合し、消毒液を微粒子化する。又、上述と同様に、微粒子化された消毒液の粒子を前記空気の送風に乗せることで、微細粒子の霧Fを生成する。空気圧と液圧は、噴霧距離D、霧Fの微細粒子の粒子径に応じて、適宜調整される。この場合は、ノズル11aが、生成部10と噴霧部11とを兼ね備える。又、流量制御部40は、外部からの空気を吸い取って空気管40aに供給し、外部に設けられたタンク42から消毒液を吸い取って液管40bに供給する。駆動部41aの駆動により、ノズル11aから霧Fが噴霧され、駆動部41aの不駆動により、ノズル11aからの霧Fの噴霧が停止されるため、当該駆動部41aは開閉弁に対応する。
又、ドライミストとなる微細粒子の霧Fを生成する方法として、他に、加圧法、超音波法、振動法、回転ディスク法、静電気法、噴霧熱分解法など、公知の方法を採用することが出来る。又、図2、図4では、噴霧孔11aが垂直方向に沿って設けられているが、水平方向に沿って設けられても構わない。
又、前記衣服Cに対する前記霧Fの付着量に特に限定は無いが、ドライミストの霧Fの付着量は一時的であり、最終的に蒸発気化するものの、微酸性次亜塩素酸水の殺菌力と衣服Cの濡れを考慮すると、例えば、前記霧Fの付着量は、前記衣服Cの面積に対して1mg/cm〜20mg/cmの範囲内であると好ましい。
又、前記衣服Cに対する前記霧Fの噴霧時間tsに特に限定は無いが、微酸性次亜塩素酸水の殺菌力と衣服Cの濡れを考慮すると、例えば、前記霧Fの噴霧時間tsは、10秒〜120の範囲内とすることで、前記霧を前記衣服に特定の付着量だけ付着させると好ましい。前記噴霧時間tsが10秒未満であると、十分に衣服Cを消毒出来ない可能性があり、又、前記噴霧時間tsが120秒を越えると、衣服Cが微酸性次亜塩素酸水で濡れる可能性がある。
又、前記噴霧距離Dに特に限定は無いが、微酸性次亜塩素酸水の殺菌力と衣服Cの濡れを考慮すると、例えば、前記噴霧距離Dは、20cm〜100cmの範囲内とすることで、前記霧を前記衣服に特定の付着量だけ付着させると好ましい。前記噴霧距離Dが20cm未満であると、霧Fの噴霧圧で衣服Cが微酸性次亜塩素酸水で濡れる可能性があり、前記噴霧距離Dが100cmを越えると、衣服Cに霧Fが十分に吹き付けられない可能性がある。
又、本発明に係る衣服消毒装置1は、適宜、設計変更可能である。図5に示すように、ユーザーUが立位する平面台50の両側部に、複数の噴霧孔11aを備えた二つの噴霧部11が設けられ、二つの噴霧部11の噴霧孔11aから平面台50の中心に向かって霧Fが噴射される。これにより、ユーザーUの衣服Cに霧Fを満遍なく吹き付けることが可能となる。複数の噴霧孔11aは、垂直方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。二つの噴霧部11を含む外装51には、微酸性次亜塩素酸水の微細粒子の霧Fを生成する生成部10が内蔵されている。外装51は、ユーザーの短手方向の大きさよりも大きい円弧状の断面を有する半円筒状の形状を有している。外装51の内面の中心近傍には、噴霧孔11aから特定の噴霧距離Dだけ離れたユーザーの存在を検知する検知部52が設けられている。具体的には、検知部52は、小型カメラに対応し、平面台50に立位したユーザーUの顔又は体の画像を撮影し、ユーザーUの画像の撮影により、当該ユーザーUの存在を検知する。検知部52が、ユーザーUの存在を検知すると、生成部10は、微酸性次亜塩素酸水の霧Fを生成し、噴霧部11は、複数の噴霧孔11aからユーザーUの衣服Cに霧Fを噴霧する。
ここで、噴霧部11は、前記ユーザーUの存在が検知されると、特定の噴霧時間tsだけ、噴霧孔11aから衣服Cに向かって霧Fを噴霧する。具体的には、噴霧部11は、ユーザーUの存在が検知された時点(開閉弁が開状態になった時点)からの経過時間を計時し、当該計時された経過時間が前記噴霧時間tsを超過するまで、噴霧孔11aの開閉弁を開状態に維持する。そして、前記経過時間が前記噴霧時間tsを超過すると、噴霧部11は、前記開状態の開閉弁を閉状態にし、噴霧孔11aからの霧Fの噴霧を終了する。これにより、微酸性次亜塩素酸水を無駄に消費すること無く、衣服Cの濡れを確実に防止し、衣服Cを容易に消毒することが出来る。
又、衣服消毒装置1は、検知部52により撮影されたユーザーUの画像に基づいて、当該ユーザーUの身長を推定する推定部53を備えており、噴霧部11は、前記推定されたユーザーUの身長のうち、首から下に対応する噴霧孔11aのみから霧Fを噴霧する。例えば、噴霧孔11aが垂直方向に沿って5つ設けられ、ユーザーUの身長が大人の身長に対応する場合には、噴霧部11は、大人の身長に対応して5つの噴霧孔11aの全てから霧Fを噴霧し、ユーザーUの身長が子供の身長に対応する場合には、噴霧部11は、子供の身長に対応して下から3つの噴霧孔11aのみから霧Fを噴霧する。噴霧孔11aの開閉は、上述した開閉弁によりなされる。これにより、ユーザーUの身長に合わせて衣服Cを消毒することが可能となる。一方、食品製造工場等、ユーザーUの体全体を消毒する必要がある場合には、噴霧部11は、全ての噴霧孔11aを開状態にし、ユーザーUの頭から足まで霧Fを噴霧する。
又、外装51の上方近傍の位置で、平面台50に立位したユーザーUが視認出来る位置に、モニター部54(タッチパネル部)が設けられ、噴霧部11が霧Fを噴霧している最中に、微酸性次亜塩素酸水の効果やインフルエンザの感染状況等を表示する。これにより、ユーザーUは、衣服Cの消毒中に各種の情報を得ることが出来る。
又、噴霧部11は、ユーザーUの衣服Cに対して霧Fを噴霧する衣服消毒モード以外に、定期的に霧Fを噴霧する空気清浄モードを備える。例えば、外装50又はモニター部54に設けられた特定のスイッチがONされると、噴霧部11が空気清浄モードとなり、特定の周期で全ての噴霧孔11aから霧Fを噴霧することで、空間を除菌する。一方、前記スイッチがOFFされると、噴霧部11が衣服消毒モードとなり、検知部52の検知により、特定の噴霧孔11aからの霧Fの噴霧を実行する。又、平面台50の裏面には、移動可能なコロが設けられ、衣服消毒装置1を移動可能とする。更に、噴霧孔11aには、LED等の光源部を設けて、噴霧部11が、噴霧孔11aから霧Fを噴霧する場合には、光源部を点灯させて、噴霧される霧Fに光を当て、ユーザーUが当該霧Fの噴霧状態を視覚的に確認出来るようしても良い。
<実施例、比較例>
以下、実施例等によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
図6Aに示すように、二つの噴霧部11を備えた衣服消毒装置1を本発明の実施例として作成した。本発明の実施例における衣服消毒装置1では、微酸性次亜塩素酸水を霧化する生成部10を備える。生成部10には、内部に超音波振動子を含む容器20と、二本の噴霧パイプ22と、送風部23aとを備えている。一つの噴霧パイプ22に、7つの噴霧孔11aが垂直方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。図6Bに示すように、ユーザーUが噴霧孔11aから特定の噴霧距離Dで立位すると、生成部10が、微酸性次亜塩素酸水を微粒子化して、ドライミストである微細粒子の霧Fを生成し、噴霧部11が、前記ユーザーUの衣服Cに霧Fを噴霧する。実施例として、有効塩素濃度が40ppmであり、pHが6.5である微酸性次亜塩素酸水を採用した。又、上述では、超音波振動子を用いる方法であるが、噴霧孔11aに2流体ノズルを装着して、2流体ノズルによるドライミストの霧FをユーザーUの衣服Cに噴霧する場合も試験した。
本発明の実施例における衣服消毒装置1を用いて、殺菌試験、濡れ試験、付着量測定を実施した。殺菌試験では、先ず、試験用の病原体(例えば、黄色ブドウ球菌)の懸濁液からコンラージ棒で10μLの試験液だけ採取し、その試験液を無菌ガーゼに3点接触させ、乾燥させた。図7Aに示すように、乾燥後のガーゼを、噴霧孔11aから噴霧距離Dに置いた状態で、微酸性次亜塩素酸水の霧Fを噴霧する噴霧時間tsを、5秒、10秒、120秒、300秒と設定し、当該霧Fを吹き付けた。ここで、超音波振動子を用いた場合の噴霧距離Dは、10cm、30cm、80cm、120cmと設定し、2流体ノズルを用いた場合の噴霧距離Dは、30cm、80cmと設定した。吹き付けた後のガーゼを寒天培地に接触させ、寒天培地を35度で24時間培養した。そして、寒天培地上に病原体のコロニーが形成されたか否かを観察した。ここで、超音波振動子を用いた場合の噴霧距離Dを30cmと設定して、病原体を、大腸菌、緑膿菌、カンジダ(カンジダ・トロピカリス)に変更して、同様の試験を行なった。
又、濡れ試験では、噴霧後のガーゼを手で触り、手に液が残るか否かを確認することで、濡れの程度を評価した。付着量測定では、噴霧前後のガーゼの重量を測定し、噴霧後のガーゼの重量から噴霧前のガーゼの重量を減算した値を濡れ重量として算出し、この濡れ重量をガーゼの面積(100cm)で除算した値を付着量(mg/cm)として算出した。
比較例として、市販の霧吹きを用いる方法を採用し、同様の試験を実施した。霧吹きでは、粒子径が100μmを超える粗大粒子の霧Fが噴霧される。
生成方法を超音波振動子とし、病原体を黄色ブドウ球菌とし、噴霧距離Dを30cmとし、噴霧時間tsを、5秒、10秒、120秒と設定した場合の殺菌試験では、図7Bに示すように、噴霧時間tsが5秒の場合、コロニーが形成されたものの、噴霧時間tsが10秒及び120秒の場合は、コロニーが形成されなかった。従って、噴霧時間tsが10秒以上では、黄色ブドウ球菌を不活化させることが理解される。
又、全ての試験結果を図8の表にまとめた。殺菌試験では、「+」が増殖(コロニー形成)を示し、「−」が不活化(コロニー不形成)を示す。濡れ試験では、「+」が濡れ(指に液が残る)を示し、「−」が不濡れ(指に液が残らない)を示す。図8に示すように、殺菌試験では、生成方法が超音波振動子であり、噴霧距離Dが30cmであり、噴霧時間tsが10秒以上であれば、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、カンジダの病原体がいずれも不活化されている。又、噴霧距離Dが10cmであり、噴霧時間tsが5秒以上であれば、黄色ブドウ球菌が不活化される。一方、噴霧距離Dが120cmでは、噴霧時間tsが300秒であっても、黄色ブドウ球菌は不活化されなかった。
一方、濡れ試験では、噴霧距離Dが30cm、80cmであり、噴霧時間tsが5秒、10秒、120秒であれば、ガーゼに濡れは生じなかった。又、噴霧距離Dが120cmであれば、噴霧時間tsが300秒であっても、ガーゼに濡れは生じなかった。一方、噴霧距離Dが30cm、80cmであり、噴霧時間tsが300秒であれば、ガーゼは濡れた状態になり、噴霧距離Dが10cmであり、噴霧時間tsが5秒以上であれば、ガーゼは濡れた状態になった。
又、生成方法が2流体ノズルの場合、噴霧距離Dが30cm、80cmであり、噴霧時間tsが10秒以上であれば、黄色ブドウ球菌は不活化された。一方、濡れ試験では、噴霧時間tsが120秒以下であれば、ガーゼに濡れは生じなかったが、噴霧時間tsが300秒であれば、ガーゼは濡れた状態になった。
又、生成方法が霧吹きの場合、噴霧距離Dが30cmであり、噴霧時間tsが5秒以上であれば、黄色ブドウ球菌は不活化されるものの、濡れ試験では、全ての噴霧時間tsにおいて、ガーゼは濡れた状態になった。殺菌試験と、濡れ試験と、付着量測定の結果を総合して、衣服に対する霧の付着量は、前記衣服の面積に対して1mg/cm〜20mg/cmの範囲内が最適と推定した。
又、現実の衣服殺菌試験を実施した。医師に白衣を2週間、継続して着用してもらい、2週間後の白衣を寒天培地に接触させ、寒天培地を35度で24時間培養し、コロニーが形成されたか否かを観察した。又、本発明の実施形態に係る衣服消毒装置において、微酸性次亜塩素酸水(有効塩素濃度40ppm、pH6.5)とし、生成方法を超音波振動子とし、噴霧距離Dを30cmとし、噴霧時間tsを30秒として、図9Aに示すように、2週間後の白衣を着たままで、この白衣に、微酸性次亜塩素酸水の霧を噴霧した。そして、噴霧後の白衣を寒天培地に接触させ、上述と同様に、寒天培地を35度で24時間培養し、コロニーが形成されたか否かを観察した。その結果、図9Bに示すように、噴霧前の白衣では、病原体が増殖したが、噴霧後の白衣では、病原体が不活化されていた。又、噴霧後の白衣に濡れは生じていなかった。
以上のように、本発明に係る衣服消毒装置及び衣服消毒方法によれば、住宅、病院、歯科院、食品製造工場、介護施設、老人ホーム、空港等におけるユーザーの衣服の消毒に有用であり、ユーザーが衣服を着替えることなく、ユーザーの人体に安全に、且つ、当該衣服に付着した病原体を確実に消毒することが可能な衣服消毒装置及び衣服消毒方法として有効である。
1 衣服消毒装置
10 生成部
11 噴霧部

Claims (3)

  1. 有効塩素濃度が10ppm〜80ppmであり、pHが5.0〜6.5である次亜塩素酸水を微粒子化して、粒子径が70μm以下である微細粒子であって、衣服に当った時の濡れ性が、粒子径が70μmを超える水滴の濡れ性よりも低い微細粒子の霧を生成する生成部と、
    前記霧をユーザーが着用している衣服に噴霧することで、当該衣服に付着した病原体を不活化させる噴霧部と、
    を備えることを特徴とする衣服消毒装置。
  2. 前記生成部は、微粒子化した前記次亜塩素酸水の粒子を送風に乗せることで、前記微細粒子のみの霧を生成する
    請求項1に記載の衣服消毒装置。
  3. 有効塩素濃度が10ppm〜80ppmであり、pHが5.0〜6.5である次亜塩素酸水を微粒子化して、粒子径が70μm以下である微細粒子であって、衣服に当った時の濡れ性が、粒子径が70μmを超える水滴の濡れ性よりも低い微細粒子の霧を生成する生成ステップと、
    前記霧をユーザーが着用している衣服に噴霧することで、当該衣服に付着した病原体を不活化させる噴霧ステップと、
    を備えることを特徴とする衣服消毒方法。
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