JP5865524B2 - ゲンノショウコ組成物の製造方法 - Google Patents
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日中の気温が約15℃に達した3月〜4月頃にゲンノショウコの種子を定植用ポットに3〜5粒を播種した。定植後4週間後に5〜6cmに成長したゲンノショウコの苗を、マルチを張った畝(幅130cm、高さ30cm、長さ25m)に、一列6株、株間15cm間隔で定植した。定植後約2週間毎に5〜6株を採取し、一株当たりの各部位の新鮮重量(g)とゲンノショウコ有効成分であるゲラニインの含量(%)を測定し、その結果を表1に示した。表1の結果より、各部位に対するゲラニイン量は葉が最も多く、新鮮重量の最も多い定植後11週間後に葉を収穫するのが最も効果的であることがわかった。
定植後11週間後に収穫したゲンノショウコの葉1gに水100mlとクエン酸水100ml(クエン酸濃度0.2%)を添加したものをそれぞれ調製し、80℃、0分と80℃、60分の条件で加熱抽出し、濾過してHPLC分析を行った。HPLC条件は以下のとおりで行った。
カラム:Nucreosil
C18(φ4.6mm×250mm)、Detect:276nm、流速0.5ml/min、展開溶媒A;0.05%trifluoro acetic acid(TFA), B;CH3CN、グラジエント溶出パターン; (A;100%, B;0%, 0min)→(A;70%, B;30%, 50min)→(A;0%, B;100%, 70min)。図1に水で抽出した80℃、0分と80℃、60分およびクエン酸水で抽出した80℃、60分のHPLCパターンを示した。水抽出した場合、ゲラニインは経時的に加水分解され、コリラジン、没食子酸等の含量が増えゲラニインの含量は減少した。一方、クエン酸水で抽出した場合にはゲラニインの分解がほとんどおこっていないことが分かった。
ゲンノショウコの葉(1kg)を水(20L)で80℃の条件で抽出した液より、MS分析、NMR分析により同定した没食子酸260mg(分子量170、没食子酸含量99.9%)、コリラジン580mg(分子量634、コリラジン含量99.3%)、ゲラニイン150mg(分子量952、ゲラニイン含量99.5%)を分離した。また、ゲンノショウコの葉(1kg)をクエン酸水(0.2%、20L)で80℃の条件で抽出し乾固した粉末品(ゲラニイン含量12.4%)を得た。これらの4サンプルと試験4で得られたゲンノショウコ組成物(ゲラニイン含量50%)の合計5サンプルを後述する試験6、7、8と同じ方法で抗酸化効果、アルカリホスファターゼ(ALP)活性阻害効果、SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)活性様効果(活性酸素様消去効果)について、それぞれ各成分の最終濃度が1mMとなるようにして評価した。この結果、どの評価系においてもゲラニイン100%に対し、ゲンノショウコ組成物が90〜95%、コリラジンが60〜65%、没食子酸が40〜50%、抽出粉末品が25〜35%の効果を示した。このことは、ゲラニインの効果がコリラジン、没食子酸より高く、更にタンパク、ポリフェノールなどの不純物が混在するものより精製したものの方がより効果が高いことが分かった。
試験3の結果よりゲンノショウコ組成物のゲラニインを高含量にすることが効果的であるということが分かったので、ゲンノショウコの抽出・精製方法を以下のようにして行った。定植後11週間後に収穫したゲンノショウコ葉2.5kg、水50Lおよびクエン酸100gをステンレス容器(50L)に入れ、攪拌しながら80℃、1時間加熱処理し、25℃まで冷却した。金網ザル(30メッシュ)にて残渣を取り除き、濾紙フィルター(孔径1μm)にて濾過し抽出液50Lを得た。この抽出液を吸着樹脂(三菱化成、ダイヤイオンHP-20、2000ml)にて処理した。活性化(4%NaOH水2000mlを33ml/minの速度で通液した後、水6000mlで水洗する。次に4%H2SO4水2000mlを33ml/minの速度で通液した後、水6000mlで水洗した)したHP-20に抽出液50Lを33ml/minの速度で通液し、水6000mlで水洗した。ゲンノショウコ有効成分であるゲラニインの溶出には40%v/vEtOH+0.05%(2g)、2000mlを33ml/minの速度で通液したものを回収した。得られた溶出液を循環圧力10kg/cm2、循環流量5L/minの条件で逆浸透膜(膜面積0.8m2、NaCl阻止率55%〜80%)を用い膜処理し、真空濃縮(ロータリーエバポレーター)で濃縮した。更に、20%エタノールを用い5℃のもと再結晶法による精製を行い、結晶物は回収し再度50%エタノールに溶解した。この溶解液を真空濃縮乾固し、ゲンノショウコ組成物75gを得た。得られたゲンノショウコ組成物のゲラニイン含量は50%であった。
シミ、ソバカスの要因となるメラニンは、紫外線から皮膚を守るために存在することが知られているが、その一方、シミ、ソバカス、黒ずみの原因があることが知られている。メラニンはチロシンがL-DOPA、更にDOPAキノンに変換され、DOPAキノンが縮合して生成される。この2つの変換反応に関与しているのがチロシナーゼである。既に、松木らは(M.MATUKI et.al. YAKUGAKU ZASSHI 128(8) 1203-1207, 2008)グルタチオンにDOPAキノンの縮合反応を阻害しメラニン生成阻害効果が存在することを報告している。本発明では、L-DOPAがチロシナーゼによりDOPAキノンに変換され、その後DOPAキノンが縮合してメラニンを生成することを確認し、ゲンノショウコ(ゲラニイン)がDOPAキノンの縮合を阻害しメラニン生成を阻害することを解明した。
最終濃度が1、0.5、0.25、0.1、0mMとした L-DOPA溶液とチロシナーゼ(final 53.7units/ml)を混和後37℃ 30分間静置した後、DOPAキノンの吸収波長である490nmにおける吸光度(OD490)値を測定し、DOPAキノンを確認した(表2)。
その結果、L-DOPAの濃度依存的に吸光度(OD490)が高くなった。このことは、L-DOPAがDOPAキノンに変換していることを示唆していると考えられた。
メラニン合成阻害効果があると知られているグルタチオンと比較してゲンノショウコ(ゲラニイン)のメラニン合成阻害能力を調べた。最初に、最終濃度が0.8、0.4、0.2、0.08、0mMとしたグルタチオン、L-DOPA溶液(final 1mM)およびチロシナーゼ(final 53.7units/ml)を混和後37℃ 30分間静置した後OD490値を測定し、吸光度測定し、DOPAキノン生成を確認した(表3)。その結果、グルタチオンの濃度依存的に吸光度が低くなった。また、グルタチオン濃度(0.8mM)を一定にし、L-DOPA濃度(1〜0mM)を変えた実験ではOD490の上昇は見られなかった。更に、生成されたDOPAキノン(OD490=0.921)にグルタチオン(final 0.8mM)を加え、8時間室温に放置したときメラニン生成が見られなかった。これらのことは、グルタチオンはチロシナーゼによりL-DOPAから変換されたDOPAキノンと反応してメラニンの合成を阻害していると考えられた。
試験5−1−2の結果より、ゲンノショウコ中のゲラニインがメラニン合成阻害効果を有することが判明したが、チロシナーゼ酵素活性を低下させメラニン合成阻害しているのか、或いはL-DOPAがチロシナーゼにより変換されたDOPAキノンが縮合工程を阻害しているのかを調べた。ゲラニイン最終濃度が500、250、100、0ppmになるよう、グルタチオンは最終濃度が0.8、0.4、0.2、0.08、0mMになるようにリン酸緩衝液で調製し1ml、L-DOPA0.5ml(最終濃度196ppm、1mM)、チロシナーゼ0.5mlを(最終濃度62units/ml)を混合し、37℃のもと、一定時間インキュベートしてメンブレン濾過(0.45μm)したものをHPLC分析した。
最初に、L-DOPAのチロシナーゼによる変換について分析した。L-DOPA(1mM)およびL-DOPA(1mM)とチロシナーゼ(62 units/ml)を混合し、37℃、30分インキュベートした時のHPLCパターンを図2、3に示した。その結果、無色透明のリテンションタイム(Rt)3.8分にあるL-DOPA(図2)は、チロシナーゼによりRt;4.2分のDOPAキノン(図3)に変換した。
L-DOPA(1mM)とゲンノショウコ(ゲラニイン) (250ppm)を混合し、37℃、30分インキュベートした時のHPLC分析を行ったところ、両者は全く反応しなかった。
ゲンノショウコ(ゲラニイン)とチロシナーゼの反応性を調べるためにゲラニイン濃度(100、250、500ppm)とチロシナーゼ(62 units/ml)とを混合し、37℃、30分インキュベートした。図4、5にはゲラニイン(500ppm)とチロシナーゼで反応させたゲラニイン(250ppm)のHPLCパターンを示した。ゲンノショウコ(ゲラニイン)(Rt;16.5分)はチロシナーゼにより元の成分とは異なる成分(Rt;22.5分)に変換することが判った。
ゲンノショウコ(ゲラニイン)がメラニン合成のどの工程を阻害しているのかを調べるためにゲンノショウコ(ゲラニイン)(0、100、250、500ppm)、L-DOPA(1mM)とチロシナーゼ(62 units/ml)とを混合し、37℃、30分インキュベートした。その結果を図6に示した。図6より、DOPAキノン(Rt;4.2分)は殆ど存在しないことが分かり、更に、ゲンノショウコ(ゲラニイン)の添加濃度が上がるに従ってDOPAキノンの赤色が薄くなり、量が低下していた。このことは、ゲンノショウコ(ゲラニイン)はチロシナーゼにより他の成分(Rt;22.5分)に変換(キノン体であると考えられる)され、この成分とDOPAキノンが反応し、メラニン合成を阻害していると考えられた。本実験においてゲンノショウコ組成物(ゲラニイン含量50%)を用いた結果も同様の結果であった。
近年、糖尿病、高血圧、ガンなどの疾病に活性酸素が関与している可能性が高いことが知られるようになった。それにともない、この活性酸素を消去する様々な抗酸化物質の存在が報告されている。本実験ではゲンノショウコ(ゲラニイン)の抗酸化能について調べた。クロロゲン酸、没食子酸、エラグ酸(純度97%)、Torolox、カテキン、ルチン、モリン、クエルセチン、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)試薬は和光純薬より購入した。2-(N-Morpholino)ethanesulfonic Acid(MES; 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸分子量213.25)緩衝液は1.72gを水40mlに溶解し調製した(200mM、pH6.0)。DPPHは0.0128gをエタノールにて40mlに希釈して調製した(800μM)。クロロゲン酸、没食子酸、Torolox、カテキン、ルチン、モリン、クエルセチンは50%エタノール溶液で100ppmに調製した。ただし、エラグ酸は100ppmでは溶解しなかったので50ppmに調製した。ゲンノショウコ(ゲラニイン)は50%エタノールで溶解させ、ゲラニイン濃度100ppmに調製した。100ppmに調製した各試験液(エラグ酸は50ppm)を用い、最終濃度が0, 2.5, 5.0, 10, 25, 50 ppmになるように50%EtOHで1.5mlに希釈した。その後、MES緩衝液0.75mlとDPPH液0.75mlを試験管で混合し3mlにした。室温で20分間放置後、分光光度計で吸光度520nmを測定した。
脇の臭いや体臭は、脂質やタンパク質などが皮膚の常在菌によって分解されて臭いが発生すると考えられている。現在市場に、臭いを防止するために、常在菌の殺菌剤や吸着剤による臭いの吸着、香りによるマスキング剤などが販売されている。一方、脂質やタンパク質などが分解する際に、常在菌中の酵素であるアルカリフホスファターゼ(ALP)が関与していることが新たに見出され、臭いの発生を抑える方法が検討されている。本実験では、ゲンノショウコ(ゲラニイン)がALP活性阻害を行うかを調べた。
スーパーオキサイド・ディスムターゼ(SOD)は、2つのスーパーオキシドアニオンの酸素分子と過酸化水素への変換を触媒する酵素である。生体の酸化防止能を強化すれば、活性酸素が関与する疾病のリスクを低下させることができるという考え方がある。食品中の有効成分には活性酸素の消去作用(superoxide anion scavenging activity;SOSA)を有するものがある。高い活性を有する食品素材の開発が活発に展開されている。そこで、ゲンノショウコ(ゲラニイン)がSOD活性様作用を有するかをCayman’s Superoxide Dismurase Assay Kitを用いて調べた。
最終SOD活性が0、0.025、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25U/mlになるよう緩衝液(Tris-HCl,pH8.0)で調製した溶液(10μl)にXanthine、Xanthine oxidase、およびTetrazolium saltを添加し230μlとし、20分間室温にてインキュベートした後、マイクロプレートリーダーで450nmにおける吸光度を測定した。各SOD活性濃度における吸光度のLR(linearized rate;例えばStd BのLR値=Std A吸光度÷Std B吸光度)を用い検量線を作成した。
ゲンノショウコ(ゲラニイン)のSOD活性を評価するために、カテキン、ルチン、クロロゲン酸、没食子酸と比較して行った。各サンプルを最終濃度が1、5、10、25、50、100、250、500ppmの濃度になるように緩衝液(Tris-HCl,pH8.0)で調製した溶液にXanthine、Xanthine oxidase、およびTetrazolium saltを添加し230μlとし、20分間室温にてインキュベートした後、マイクロプレートリーダーで450nmにおける吸光度を測定した。検量線作成時と同様なLR値用い、検量線の一次方程式より以下の計算式にてSOD(U/ml)を算出しその結果を図9に示した。
SOD(U/ml)={(サンプルLR−y軸切片)÷傾き×23}、(y=aX+b:a;傾き、b;y軸切片)、0〜500ppmのゲラニイン添加濃度の範囲で高いSOD活性様作用を有しており、市販品への利用が期待できる。また、ゲンノショウコ組成物を用いても同様の結果であった。
Claims (3)
- 未乾燥あるいは乾燥したゲンノショウコの全草を、ゲラニインの加水分解を抑制するために酸を添加した、水、含水エタノール又は含水メタノールでゲラニインを抽出し、
上記抽出によって得られた抽出液を、臨界抽出法、膜処理法、再結晶法、透析膜処理法、遠心分離法、合成吸着剤処理法、イオン交換樹脂処理法の内の少なくとも1種類以上を用いて精製することを特徴とする、
ゲラニインを主成分とするゲンノショウコ組成物の製造方法。 - 未乾燥あるいは乾燥したゲンノショウコの全草を、ゲラニインの加水分解を抑制するために酸を添加した、水、含水エタノール又は含水メタノールでゲラニインを抽出し、
上記抽出によって得られた抽出液をスチレンージビニルベンゼン系合成吸着剤に通液した後、エタノール水溶液で溶出し、
上記溶出によって得られた溶出液を、NaCl阻止率が55〜80%である逆浸透膜を用いて膜処理を行うことを特徴とする、
ゲラニインを主成分とするゲンノショウコ組成物の製造方法。 - 前記酸が、クエン酸、酢酸及び酒石酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の製造方法。
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