JP5860026B2 - シリコンスラリー廃液の全量リサイクルシステム、クーラント回収液、回収砥粒、及び回収切削粉 - Google Patents

シリコンスラリー廃液の全量リサイクルシステム、クーラント回収液、回収砥粒、及び回収切削粉 Download PDF

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Description

本発明は、シリコンスラリー廃液のリサイクルシステム、及び該シリコンスラリー廃液のリサイクルシステムにより得られるクーラント回収液、回収砥粒、回収切削粉に関する。
半導体の単結晶シリコン、太陽電池の単結晶シリコンや多結晶シリコンなどを切断切削する手段として、ワイヤーソー装置を用いることが知られている。ワイヤーソー装置では、クーラントと砥粒を混合させた切削スラリー中でワイヤーソーを走行させて切断切削を行う。切断切削は、切削スラリーを装置内で循環させて行われるが、切断切削が進むと切削スラリー中に切削屑(半導体の単結晶シリコンなどを切断切削した際に生じるシリコンの屑)や金属屑(切断切削した際に生じるワイヤーの鉄粉や鉄以外の金属粉)がたまることで、切断切削性能が低下する。
切断切削後の切削屑を含む切削スラリー(例えば、シリコンスラリー廃液など)には、使用可能なクーラントや砥粒などが含まれている。一般的に、切削スラリー中の切削屑が一定量を超えると切削スラリーを廃棄することが多いが、切削スラリーから、クーラントや砥粒を回収する試みもなされている(特許文献1〜6)。
特開平9−225937号公報 特開2003−225700号公報 特開2005−313030号公報 特開2005−349507号公報 特開2006−315099号公報 特開2011−005561号公報
近年、環境問題及び再資源化の観点から、廃棄物を出すことなく、シリコンスラリー廃液からクーラント、砥粒、切削屑などを回収するリサイクルシステムが求められている。特に、回収した成分を切断切削以外の用途にも用いたいとの要求から、より効率よく、より純度の高いクーラント、砥粒、切削屑等が回収できるリサイクルシステムが求められている。
例えば、特許文献1のスラリー廃液の再利用システムは、スラリー廃液から有効砥粒と水溶性クーラント成分を再利用しているが、切削屑や鉄屑は廃棄するものであり、環境及び再資源化の観点から十分とはいえない。また、液体サイクロンにかける前のスラリーの希釈時に、多量の希釈液を用いるため、廃液の処理が困難となる。
特許文献2の廃スラッジの再利用システムは、産業廃棄物を生じさせることなく残留液体分や有効砥粒を再利用可能としているが、得られる残留液体分は希釈されたものなので純度が低く、また得られる砥粒の純度も十分とはいえない。
特許文献3の研磨・切削剤スラリー廃液の再正処理方法は、クーラントと砥粒を回収しているがその他の成分を廃棄しており、環境及び再資源化の観点から十分とはいえない。また、処理後の砥粒は遠心分離しかしておらず、純度が十分とはいえない。
特許文献4のクーラント再生システムは、分離した廃スラリーや、廃クーラントから除去された固形分を廃棄するものであり、またアルカリを使用することでその後の排水処理が必要となるため、環境の観点から十分とはいえない。特に、アルカリ処理によって切削屑を溶解させているため、切削屑の回収ができない。また、砥粒は遠心分離しかしておらず、純度が十分とはいえない。
特許文献5の研磨・切削剤スラリー廃液の再生処理方法は、廃液中に含まれている微量な酸化成分が含まれたままの(微量な酸化成分が含まれている)ため、純度が十分とはいえず、また切削屑、鉄屑、及び砥粒の破片を廃棄しており、環境の観点から十分とはいえない。また、特殊な機器を必要とする、超臨界状態の二酸化炭素流体を使用するためコストがかかる。
特許文献6のシリコンインゴットの切断システムは、鉄屑と砥粒が混合した状態で分級しており、回収される砥粒の純度が十分とはいえない。また、分級後の砥粒中に混在する鉄を酸で溶解処理することとしているが、酸処理後の廃液処理の際、環境に負荷が生じる。
しかしながら、シリコンスラリー廃液から、廃棄物を出すことなく(例えば酸やアルカリなどで処理することなく)、効率よく、純度の高いクーラント、砥粒、切削屑等の廃液中の全成分を回収するリサイクルシステムはないのが現状である。
従って、本発明の目的は、シリコンスラリー廃液から廃棄物を出すことなく、効率よく高純度の回収砥粒、回収切削粉を回収できるリサイクルシステムを提供することにある。 また、本発明の他の目的は、シリコンスラリー廃液から廃棄物を出すことなく、効率よく高純度のクーラント回収液を回収できるリサイクルシステムを提供することにある。
そこで、本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シリコンスラリー廃液を分離するクーラント回収工程、その後、超音波を照射する超音波処理工程、及び超音波を照射後に回収砥粒、回収切削粉を分離する分離工程により、効率よく純度の高いクーラント回収液、回収砥粒、回収切削粉が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、クーラント、砥粒、切削屑、鉄屑を含むシリコンスラリー廃液から得られた分離固体分を、前記切削屑及び/又は前記鉄屑を主成分とする微粒子スラリーと、前記砥粒を主成分とする粗粒子スラリーとに分級した後、分級した前記粗粒子スラリーに超音波を照射する超音波処理工程(B)、
超音波を照射した前記粗粒子スラリーから回収砥粒と回収切削粉とを分離する分離工程(C)、
を含むことを特徴とするシリコンスラリー廃液のリサイクルシステムを提供する。
すなわち、本発明は、クーラント、砥粒、切削屑、鉄屑を含むシリコンスラリー廃液を分離して、分離固体分とクーラント回収液とを得るクーラント回収工程(A)、
分離した前記分離固体分に超音波を照射する超音波処理工程(B)、
超音波を照射した前記分離固体分から回収砥粒と回収切削粉とを分離する分離工程(C)、
を含むシリコンスラリー廃液のリサイクルシステムであって、前記クーラント回収工程(A)が、前記シリコンスラリー廃液から留及び/又は精留により、水、クーラント、及びクーラントの酸化物を分離し、前記クーラントをクーラント回収液として得る工程を含むことを特徴とするシリコンスラリー廃液のリサイクルシステムを提供する。
上記超音波処理工程(B)において、分級した前記粗粒子スラリーに周波数20〜45kHzの超音波を照射することが好ましい。また、上記超音波処理工程(B)が、分級前に前記分離固体分を超音波で解砕する工程を含むことが好ましい。
上記クーラント回収工程(A)において、前記分留工程及び/又は前記精留工程の前に、前記シリコンスラリー廃液を、遠心分離及びフィルター濾過からなる群より選ばれる少なくとも1の分離手段により、前記分離固体分と前記分留工程及び/又は前記精留工程に供する液に分離することが好ましい。
上記分離工程(C)において、沈降速度の差により、超音波を照射した上記粗粒子スラリー又は上記分離固体分から回収砥粒、回収切削粉を分離することが好ましい。
さらに、上記回収砥粒に希釈液を加え、超音波を照射した後に、沈降速度の差により分離して回収砥粒を洗浄する洗浄工程(D)を含むことが好ましい。
さらに、本発明は、上記リサイクルシステムにより得られるクーラント回収液を提供する。
さらに、本発明は、上記リサイクルシステムにより得られる回収砥粒を提供する。
さらに、本発明は、上記リサイクルシステムにより得られる回収切削粉を提供する。
さらに、本発明は、クーラントの含有量が88重量%以上であり、下記の臭気評価法により評価される臭気強度が2.5未満であり、且つ快・不快度が−1より大きいことを特徴とするクーラント回収液を提供する。
(臭気測定法)
6人の評価者が、評価サンプルの臭いをかぎ、以下に示す6段階の臭気強度表示法、及び9段階の快・不快度表示法により、評価を行い、その平均値を臭気強度及び快・不快度とした。
臭気強度表示法
0:無臭、1:やっと感知できる臭い、2:何の臭いであるかわかる弱い臭い、3:楽に感知できる臭い、4:強い臭い、5:強烈な臭い
快・不快度表示法
−4:極端に不快、−3:非常に不快、−2:不快、−1:やや不快、0:快でも不快でもない、1:やや快、2:快、3:非常に快、4:極端に快
さらに、本発明は、クーラントの含有量が88重量%以上であり、色相がAPHA40以下であることを特徴とするクーラント回収液を提供する。
さらに、本発明は、クーラントの含有量が88重量%以上であり、水の含有量が5重量%未満であることを特徴とするクーラント回収液を提供する。
上記クーラント回収液は、切削用のクーラントの原料であることが好ましい。
上記クーラント回収液は、粉砕助剤原料であることが好ましい。
上記クーラント回収液は、合成樹脂原料であることが好ましい。
上記クーラント回収液は、燃料であることが好ましい。
上記回収砥粒は、切削用の砥粒であることが好ましい。
上記回収砥粒は、鉄鋼副資材であることが好ましい。
上記回収砥粒は、セメント原料であることが好ましい。
上記回収切削粉は、鉄鋼副資材であることが好ましい。
上記回収切削粉は、セメント原料であることが好ましい。
本発明のリサイクルシステムは、上記構成を有することにより、シリコンスラリー廃液から廃棄物を出すことなく、効率よく純度の高い回収砥粒、回収切削粉を回収できる。
図1は、本発明のリサイクルシステムの一例を示すフロー図である。 図2は、本発明のリサイクルシステムにおけるクーラント回収工程(A)の一例を示すフロー図である。 図3は、本発明のリサイクルシステムにおけるクーラント回収工程(A)の一例を示すフロー図である。 図4は、本発明の超音波処理工程(B)の一例を示すフロー図である。 図5は、分離工程(C)後に、さらに、洗浄工程(D)、製品化工程(E)、廃液再生工程(F)を設けた場合の一例を示すフロー図である。 図6は、実施例1におけるシリコンスラリー廃液(1)の乾燥固体の粒度分布を示す図である。 図7は、実施例1における回収砥粒の粒度分布を示す図である。 図8は、実施例1におけるシリコンスラリー廃液(1)の乾燥固体を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した図(写真)である。 図9は、実施例1における回収砥粒を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した図(写真)である。 図10は、実施例2におけるシリコンスラリー廃液(2)の乾燥固体の粒度分布を示す図である。 図11は、実施例2における回収砥粒の粒度分布を示す図である。 図12は、実施例2におけるシリコンスラリー廃液(2)の乾燥固体を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した図(写真)である。 図13は、実施例2における回収砥粒を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した図(写真)である。
本発明のリサイクルシステムは、少なくとも超音波処理工程(B)、及び分離工程(C)を含む。本発明のリサイクルシステムは、例えば、少なくともクーラント回収工程(A)、超音波処理工程(B)、及び分離工程(C)を含むことが好ましい。上記クーラント回収工程(A)前、上記分離工程(C)後、上記各工程(クーラント回収工程(A)、超音波処理工程(B)及び分離工程(C))の間には、他の工程が含まれていてもよい。
本発明のリサイクルシステムでは、各工程で発生する全ての分離成分を、再利用可能な程度に一定以上の純度とすることができるため、廃棄物が一切発生しない。
本明細書において、クーラント回収工程(A)を、「クーラント回収工程」と称する場合がある。超音波処理工程(B)を、「超音波処理工程」と称する場合がある。分離工程(C)を、「分離工程」と称する場合がある。
本明細書において、「クーラント回収液」とは、クーラントを含む溶液をいうものとする。「回収砥粒」とは、砥粒を主成分とする混合物をいうものとする。「回収切削粉」とは、切削粉及び/又は鉄粉を主成分とする混合物をいうものとする。
図1は、本発明のリサイクルシステムの一例を示す図である。本発明のリサイクルシステムでは、例えば、シリコンスラリー廃液から、クーラント回収工程(A)でクーラント回収液を分離し、超音波処理工程(B)及び分離工程(C)を経て、回収砥粒及び回収切削粉を分離することが好ましい。
[クーラント回収工程(A)]
上記クーラント回収工程(A)は、少なくともクーラント、砥粒、切削屑、鉄屑を含むシリコンスラリー廃液を分離して、分離固体分とクーラント回収液とを得る工程である。上記シリコンスラリー廃液を分離することにより、クーラントを含むクーラント回収液と、砥粒、切削屑、鉄屑を主成分とする分離固体分とを得ることができる。
(シリコンスラリー廃液)
上記シリコンスラリー廃液は、特に限定されないが、例えば、ワイヤーソーなどの装置で被加工体を加工する際に使用された廃液が挙げられる。
なお、本明細書において、「廃液」とは、原液(被加工体を加工する前に添加した溶液)に何らかの成分が混入したものをいう。上記シリコンスラリー廃液は、上記被加工体の加工が終了した後に排出される廃液であってもよいし、上記被加工体の加工中(加工プロセス中)に取り出した液であってもよい。
なお、上記シリコンスラリー廃液には、さらに水、分散剤、消泡剤などが含まれていてもよい。
上記被加工体としては、特に限定されないが、例えば、半導体の単結晶シリコン、太陽電池の単結晶シリコンや多結晶シリコン(例えば、太陽電池基板製造の単結晶シリコンや多結晶シリコンなど)などシリコン成分を含む被加工体(例えば、シリコン成分のみからなる被加工体、シリコン成分を主成分とする被加工体など)が挙げられる。
なお、シリコン以外の成分からなる被加工体(例えば、シリコンを除くセラミックス、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、モリブデン酸鉛単結晶、二酸化テルル単結晶、ゲルマニウム酸ビスマス単結晶を成分とする被加工体など)の廃液を用いた場合でも、本発明と同様の効果が得られる場合がある。
上記被加工体の加工方法としては、特に限定されないが、例えば、被加工体の切断、切削、研磨、などが挙げられる。すなわち、上記シリコンスラリー廃液とは、シリコン成分を含む被加工体を加工する際に使用された廃液である。
なお、上記シリコンスラリー廃液は、1の被加工体を加工する際に使用された廃液であってもよいし、2以上の被加工体を加工する際に使用された廃液の混合液であってもよい。また、上記シリコンスラリー廃液は、1の加工方法で使用された廃液であってもよいし、複数の加工方法で使用された廃液の混合液であってもよい。
上記クーラントとしては、特に限定されないが、例えば、鉱油をベースとした油性クーラント;水溶性グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、メトキシエチレングリコール、エトキシエチレングリコール、モノアルコキシエチレングリコール、グリセリン、モノアルコキシグリセリン、ジアルコキシグリセリンなど)などの水溶性クーラント;これらの混合物などが挙げられる。上記クーラントは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記砥粒としては、特に限定されないが、例えば、炭化珪素(SiC)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化珪素などが挙げられる。上記砥粒は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記砥粒の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、5〜88μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmさらに好ましくは6〜18μmである。
上記砥粒の平均粒径は、例えば、レーザー回析・散乱法、電子顕微鏡による観察により、測定することができる。本明細書において、平均粒径は、JIS R 1629に準拠したレーザー回析・散乱法により測定したものをいう。
上記切削屑としては、特に限定されないが、例えば、珪素(シリコン)、シリコンを除くセラミックス、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、モリブデン酸鉛単結晶、二酸化テルル単結晶、ゲルマニウム酸ビスマス単結晶などが挙げられる。上記切削屑の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、8.8μm以下(例えば、0.1〜8.8μm)が好ましく、より好ましくは1.8μm以下である。なお、切削屑とは、被加工物の加工により生じた、被加工物の欠片(屑)をいう。
上記鉄屑の平均粒径としては、特に限定されないが、例えば、0.3〜30μmが好ましく、より好ましくは0.9〜4μmである。平均粒径が0.3μm以上であることにより、クーラント回収工程(A)の遠心分離において、鉄屑が沈降しやすくなり、クーラントと鉄屑との分離が一層容易となる。なお、鉄屑とは、ワイヤーソー装置などの装置を用いて被加工物を加工する際に生じる、ワイヤーに由来する鉄粉など(ワイヤーの欠片(屑)など)をいう。
上記シリコンスラリー廃液中の液体分の割合は、特に限定されないが、例えば、シリコンスラリー廃液全量(100重量%)に対して、30〜70重量%が好ましく、より好ましくは35〜65重量%である。上記シリコンスラリー廃液中の固体分の割合は、特に限定されないが、例えば、シリコンスラリー廃液全量(100重量%)に対して、30〜70重量%が好ましく、より好ましくは35〜65重量%である。液体分及び固体分の割合が上記範囲であることにより、クーラント回収液、回収砥粒、回収切削粉を一層効率よく回収できる。
上記シリコンスラリー廃液における固体分中の砥粒の割合は、特に限定されないが、例えば、上記シリコンスラリー廃液中の固体分全量(100重量%)に対して、10重量%以上(例えば10〜75重量%など(中でも、下限値としては、より好ましくは40重量%である。また上限値としては、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは65重量%、特に好ましくは63重量%である))が好ましい。
上記シリコンスラリー廃液における固体分中の切削屑の割合は、特に限定されないが、例えば、上記シリコンスラリー廃液中の固体分全量(100重量%)に対して、70重量%以下(例えば5〜70重量%など(中でも、上限値としては、より好ましくは60重量%、さらに好ましくは40重量%、特に好ましくは36重量%である))が好ましい。
上記シリコンスラリー廃液における固体分中の鉄屑の割合は、特に限定されないが、例えば、上記シリコンスラリー廃液中の固体分全量(100重量%)に対して、20重量%以下(例えば0.5〜20重量%など(中でも、上限値としては、より好ましくは10重量%以下である。))が好ましい。
上記シリコンスラリー廃液における固体分中の砥粒、切削屑、鉄屑の割合が上記範囲であることにより、クーラント回収液、回収砥粒、回収切削粉を一層効率よく回収でき、また一層純度の高いクーラント回収液と回収砥粒が得られる。
なお、上記シリコンスラリー廃液中の砥粒の割合、切削屑の割合、鉄屑の割合が上記範囲を超えて、多く含まれる場合であっても、本発明のリサイクルシステムにより、クーラント回収液、回収砥粒、回収切削粉を回収することは可能である。
上記シリコンスラリー廃液は、上記クーラント回収工程(A)前に、希釈、pH調整、超音波照射、加温、分散、磁力選別などの処理をしてもよい。
上記クーラント回収工程(A)では、特に限定されないが、例えば、遠心分離、フィルター濾過、及び蒸留からなる群より選ばれる少なくとも1の分離手段により、分離固体分とクーラント回収液とに分離されることが好ましい。上記シリコンスラリー廃液を分離する手段(方法)は、シリコンスラリー廃液中の固体分濃度や、シリコンスラリー廃液における固体分中の鉄屑濃度などに応じて適宜選択することができる。なお、上記分離手段は、加圧することなく行う分離手段であってもよい。
中でも、クーラント回収液がより効率よく、より高純度で得られるという観点から、上記シリコンスラリー廃液を遠心分離後に蒸留して分離する手段、上記シリコンスラリー廃液をフィルター濾過後に蒸留する手段、又は上記シリコンスラリー廃液を蒸留する手段からなる群より選ばれる1の手段により、分離固体分とクーラント回収液とに分離されることが好ましい。
上記シリコンスラリー廃液は、異臭がする場合がある。この異臭は、クーラントの酸化物に代表される有臭(異臭)成分(例えば、被加工体の加工時に生成したクーラントの酸化物などの有臭成分)によるものと考えられる。異臭の原因としては、特にクーラントの酸化物及び樹脂化物(クーラントの重縮合物)の影響が大きい。クーラントの酸化物としては、例えば、クーラントがプロピレングリコールである場合は、アセトールやメチルグリオキサールが挙げられる。
クーラントの酸化物は、クーラント回収液中に、少量含まれる場合(例えばクーラント回収液全量(100重量%)に対して1100重量ppm含まれる場合)でも、異臭の原因となり、クーラント回収液を使用する作業環境が悪くなる場合がある。
クーラントの樹脂化物は、クーラント回収液中に、少量含まれる場合(例えばクーラント回収液全量(100重量%)に対して6000重量ppm以上)でも、異臭の原因となり、クーラント回収液を使用する作業環境が悪くなる場合がある。
クーラントの樹脂化物は、沸点が高いため、分留時の後留として除去すること、又は蒸留時に分離固体分として残留させることにより、クーラント回収液から除去することができる。また、クーラントの樹脂化物の量は、例えば、蒸留後の液体分をクーラントの沸点以上で加熱し、後に残った残渣の量から測定することができる。
本発明者らは、クーラントと鉄(鉄屑)が混在すると、鉄がクーラントの酸化反応の触媒となるため、クーラントが一層酸化しやすくなること、特に長時間高温(例えば、蒸留時の加熱による高温(100〜250℃など))にさらされるとクーラントの酸化反応が起こりやすいことを見出した。また、上記シリコンスラリー廃液中のクーラントは、高温(例えば100℃以上(100〜250℃など))になると酸化して変性し、その反応により水素ガスが発生する場合がある。
例えば、蒸留する際に、クーラント100重量%に対して鉄屑が0.8重量%以上存在すると、蒸留により得られるクーラント回収液中にクーラントの酸化物が1100重量ppm以上生成される場合がある。そのため、クーラント回収工程(A)では、クーラントと鉄屑が混在した状態で長時間加熱(例えば蒸留時の加熱)されないことが好ましい。すなわち、クーラントと混在する鉄(鉄屑)の割合を少なくすると、クーラントの酸化を抑えることができ、一層純度の高い(クーラントの酸化物の少ない)クーラント回収液が得られるという観点から、上記クーラント回収工程(A)における分離手段としては、上記シリコンスラリー廃液を遠心分離後に蒸留して分離する手段がより好ましい。
(フィルター濾過)
上記シリコンスラリー廃液をフィルター濾過することにより、加熱することなく、上記シリコンスラリー廃液を分離して、クーラントを主成分とするクーラント回収液と、砥粒、切削屑、鉄屑を主成分とする分離固体分とに分離することができる。
上記フィルター濾過により、クーラントと鉄屑とを分離することができる。そのため、フィルター濾過後のクーラントは、その後の工程中や保存時において、酸化しにくい(フィルター濾過後のクーラント中に含まれるクーラントの酸化物(被加工体の加工時に生成したクーラント酸化物など))に加え、新たにクーラントの酸化物が生成しにくい)。また、フィルター濾過後のクーラントは、高温でも(例えば、蒸留しても)酸化されにくい。
上記シリコンスラリー廃液をフィルター濾過することにより、シリコンスラリー廃液に含まれるクーラントの酸化物に加えてフィルター濾過後に新たにクーラントの酸化物が生成しにくいため、クーラントの酸化物が少ない(例えば、クーラントの酸化物の含有量が、クーラント回収液(クーラント回収液に水分が含まれる場合は水分を除いたクーラント回収液)全量(100重量%)に対して0.01〜0.1重量%など)クーラント回収液を得ることができる。なお、フィルター濾過後の回収クーラントに含まれるクーラントの酸化物としては、被加工体の加工時に生成したクーラントの酸化物などが挙げられる。
上記フィルター濾過に用いられるフィルターとしては、特に限定されないが、例えば、不織布、織布、ネット、布などの繊維系フィルター、樹脂系フィルター、グラスウールなどが挙げられる。フィルター濾過に用いられるフィルターは、上記フィルター濾過中に目詰まりしない程度のものが好ましい。
上記フィルター濾過は、特に限定されないが、例えば、100℃未満(例えば、20〜99℃)で行われることが好ましい。フィルター濾過を行う温度が上記範囲であることにより、フィルター濾過中に、加熱によるクーラントの変性(クーラントの酸化)が起こらず、クーラントの酸化物の割合が低く、純度の高いクーラント回収液を得ることができる。
また、クーラントの酸化が起こらない程度に加熱(例えば、20〜99℃に加熱)してもよい。加熱により、上記シリコンスラリー廃液中の水分が蒸発し、水含有量の低いクーラント回収液が得られる場合がある。上記フィルター濾過は、1回であってもよいし複数回行ってもよい。上記フィルター濾過としては、特に限定されないが、例えば、加圧濾過が好ましい。
上記フィルター濾過により分離した分離固体分には、クーラント成分が残存している場合がある。そのため、分離固体分中の残存しているクーラントを有効利用できるという観点や、超音波処理工程(B)、分離工程(C)の効率を上げるという観点から、フィルター濾過後に蒸留することが好ましい。なお、フィルター濾過後の蒸留で分離したクーラント成分は、クーラント回収液として利用できる。
フィルター濾過により分離したクーラント回収液は、そのまま回収クーラントとして使用してもよいし、クーラント濃度がより高いクーラント回収液が得られるという観点から、蒸留、遠心分離などによりさらに精製してもよい。なお、フィルター濾過後の蒸留で分離した、砥粒、切削屑、鉄屑などを含む混合物は、分離固体分として利用できる。
(遠心分離)
上記シリコンスラリー廃液を遠心分離することにより、加熱することなく、容易且つ低コストで、上記シリコンスラリー廃液を分離して、クーラントを主成分とするクーラント回収液と、砥粒、切削屑、鉄屑を主成分とする分離固体分とに分離することができる。
特に、シリコンスラリー廃液を遠心分離した場合、クーラント及び切削屑を含み、鉄屑の割合が低い軽液(クーラント回収液)と、砥粒及び鉄屑を含む重液(分離固体分)とに分離することができる。すなわち、遠心分離により、クーラントと鉄屑とを分離することができる。そのため、遠心分離後の軽液に含まれるクーラントは、その後の工程中や保存時において、クーラントが酸化されにくい(軽液中に含まれるクーラントの酸化物(被加工体の加工時に生成したクーラント酸化物のうち、軽液に分離したものなど)に加え、新たにクーラントの酸化物が生成しにくい)。特に、遠心分離後の軽液に含まれるクーラントは、高温でも(例えば、蒸留しても)酸化されにくい。また、遠心分離後の軽液は、上記フィルター濾過に比べ、上記遠心分離では、上記シリコンスラリー廃液の粘度が高い場合でも、クーラントと鉄(鉄屑)とを分離ができるため好ましい。
上記シリコンスラリー廃液を遠心分離することにより、シリコンスラリー廃液に含まれるクーラントの酸化物に加えて遠心分離後に新たにクーラントの酸化物が生成しにくいため、クーラントの酸化物が少ないクーラント回収液(例えば、クーラントの酸化物の含有量が、クーラント回収液(クーラント回収液に水が含まれる場合は水を除いたクーラント回収液)全量(100重量%)に対して0.05〜0.3重量%のクーラント回収液など)を得ることができる。なお、遠心分離後の回収クーラントに含まれるクーラントの酸化物としては、被加工体の加工時に生成したクーラントの酸化物などが挙げられる。
上記遠心分離における遠心力は、特に限定されないが、例えば、1500〜3000gが好ましく、より好ましくは2000〜2500gである。遠心力が上記範囲であることにより、鉄屑の割合が一層低い軽液が得られる。
上記遠心分離は、クーラントの酸化が起こりにくい温度(例えば5〜99℃)で行われることが好ましい。上記遠心分離は、1回であってもよいし複数回行ってもよい。
上記遠心分離後の軽液中に含まれる鉄屑の割合は、特に限定されないが、例えば、軽液中に含まれるクーラント全量(100重量%)に対して、3重量%以下(例えば0.1〜3重量%が好ましく、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは0.8重量%未満である。例えば、遠心分離を繰り返す、フィルター濾過と組み合わせるなどにより、遠心分離後の軽液中の鉄屑の割合を下げることができる。
遠心分離する前のシリコンスラリー廃液に含まれる鉄屑に対する上記遠心分離後の軽液中に含まれる鉄屑の割合は、特に限定されないが、例えば、遠心分離する前のシリコンスラリー廃液に含まれる鉄屑全量(100重量%)に対して、35重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下である。
上記遠心分離により分離した分離固体分(重液)には、クーラント成分が残存している場合がある。そのため、分離固体分中の残存しているクーラントを有効利用できるという観点や、超音波処理工程(B)、分離工程(C)の効率を上げるという観点から、遠心分離後に蒸留、乾燥することが好ましい。なお、上記遠心分離後の蒸留で分離したクーラント成分は、クーラント回収液として利用できる。
遠心分離後の軽液を蒸留する場合、遠心分離後の軽液中に含まれる鉄屑の割合は、特に限定されないが、例えば、遠心分離後の軽液中の液体分(100重量%)に対して、0.8重量%未満であることが好ましい。軽液中の鉄屑の割合が上記範囲であることにより、クーラント回収液中のクーラントの酸化を抑え(クーラント回収液全量に対して、クーラント酸化物の生成量を1100重量ppm以下に抑え)、異臭がなく、一層純度の高いクーラント回収液を得ることができる。
上記遠心分離により分離した軽液は、そのまま回収クーラントとして使用してもよいし、より純度の高いクーラント回収液が得られるという観点から、さらに蒸留、遠心分離などにより、精製してもよい。なお、上記遠心分離後の蒸留で分離した、砥粒、切削屑、鉄屑などを含む混合物は、分離固体分として利用できる。
(蒸留)
被加工体の加工などに使用されたシリコンスラリー廃液は、水分が多く含まれる(例えば水分20%程度含まれる)場合がある。そのため、クーラント回収液を回収する際に、水分を除去する工程があることが好ましい。
上記シリコンスラリー廃液を蒸留することにより、上記シリコンスラリー廃液を分離して、クーラントを主成分とするクーラント回収液と、砥粒、切削屑、鉄屑を主成分とする分離固体分とに分離することができる。特に、蒸留により、クーラント回収液中の水の割合を減らすことができる。
なお、本明細書において、蒸留には、単蒸留、分留、精留などが含まれる。
上記蒸留をする際の圧力は、特に限定されず、例えば、常圧蒸留であってもよく減圧蒸留であってもよい。また、蒸留に用いる蒸留塔は、単留塔であってもよいし、精留塔であってもよい。精留塔における理論段数は特に限定されない。また、蒸留は、回分式蒸留(バッチ式蒸留)であってもよいし、連続式蒸留であってもよい。上記蒸留をする際の温度としては、特に限定されないが、例えば、水を分離する目的であれば、留出温度がクーラントの沸点以下である温度が挙げられる。なお、高沸物は、長時間加熱(例えば蒸留時の加熱)されないことが好ましい。
上記蒸留は、蒸留時間が短いことが好ましい。また、上記蒸留は、蒸留中に新たなにクーラントの酸化物が生成されることを抑えるという観点から、クーラントと鉄屑が混在しない状態で行われることが好ましい。すなわち、上記蒸留は、例えば、上記フィルター濾過又は上記遠心分離などにより、鉄屑を選択的に除去した後に行われることが好ましい。中でも、より純度の高いクーラント回収液(クーラントの濃度が高いクーラント回収液)、及び分離固体分を得ることができるという観点から、上記遠心分離後に上記蒸留をすることが好ましい。
クーラントの酸化物は、低沸点であるため、単蒸留では、クーラントと分離することが困難であり、クーラントとクーラントの酸化物とが混在する状態から、クーラントの酸化物を分離することは困難と思われていた。しかしながら、本発明者らは、精留を行うことにより、クーラントと、クーラントの酸化物を効率よく、かつ容易に分離することができることを見出した。すなわち、精留により、クーラントとクーラントの酸化物とを含む組成物から、クーラントの酸化物の含有量が1100重量ppm以下のクーラント回収液(異臭のしないクーラント回収液、臭気強度が2.5未満であり、且つ快・不快度が−1より大きいクーラント回収液など)を得ることができる。
特に、クーラント中の鉄屑の割合を少なくして蒸留することにより、蒸留中に新たなクーラントの酸化物が生成しにくいという点、及び、シリコンスラリー廃液中に含まれるクーラントの酸化物(例えば、被加工体の加工時に生成したクーラントの酸化物など)は精留によりほぼ完全に除去できるという点から、鉄屑とクーラントとを分離した後に、分離後のクーラントを精留すると、クーラントの酸化物の含有量が著しく少ないクーラント回収液を得ることができる。
上記蒸留は、特に限定されないが、水分の割合を一層低くすることができ、またクーラントと水以外の成分の割合を低くすることができるという観点から、分留が好ましい。また、クーラント回収液中のクーラントの酸化物(低沸点の酸化物)の割合は、分留により、低くすることができる。即ち、分留後の本留成分を、さらに精留することで、水分及びクーラントの酸化物が一層少ないクーラント回収液を得ることができる。
上記蒸留で分離した水や分留後の後留成分は、例えば、助燃材、補助燃料の水成分、
本発明のリサイクルシステム中の希釈液などとして用いることができるため、廃棄物とはならない。上記蒸留で分離した水は、本発明のリサイクルシステム中の希釈液として、特に好適に用いることができる。
上記クーラント回収工程(A)で得られた分離固体分は、超音波処理工程(B)、分離工程(C)により、回収砥粒、回収切削粉に分離することができる。
なお、シリコンスラリー廃液、クーラント回収液又は分離固体分中の鉄屑は、磁石による分離によって、ある程度低減させることもできる。
以下に、クーラント回収工程(A)の好ましい具体的態様の例を示す。
図2は、クーラント回収工程(A)の一例を表す図である。上記シリコンスラリー廃液は、上記遠心分離により、クーラント及び切削屑を主成分とする軽液(a)と、砥粒及び鉄屑を主成分とする重液(b)とに分離される。その後、軽液(a)を蒸留することにより、クーラント回収液A、及び分離固体分Aを得ることができる。また、重液(b)を軽液(a)とは別の蒸留器で蒸留することにより、クーラント回収液B及び分離固体分Bを得ることができる。なお、遠心分離後の軽液と重液とは、同じ蒸留器を用いて蒸留してもよいし、異なる蒸留器を用いて蒸留してもよい。また、軽液(a)及び重液(b)は、分留をすることで、水分の割合を下げ、より純度を高くすることができる。
軽液(a)は鉄屑の割合が低く、蒸留中にクーラントが酸化しにくいため、蒸留後に得られる上記クーラント回収液Aはクーラントの酸化物が少ない。重液(b)は鉄屑の割合が軽液(a)に比べて多いため、蒸留中にクーラントの酸化が起こりやすく、上記クーラント回収液Bは、クーラントの酸化物が含まれる場合がある。なお、クーラント回収液A、クーラント回収液Bは、精留により、クーラントの酸化物の割合を低減させることができる。
上記クーラント回収液A及び上記クーラント回収液Bは、含有成分の割合等に応じて、異なる用途に用いることができる。酸化物が少ないクーラント回収液の用途としては、例えば、切削用のクーラントが挙げられる。酸化物が含まれていてもよいクーラント回収液の用途としては、例えば、不凍液又は不凍液の原料、冷却液又は冷却液の原料、燃料又は燃料の原料などが挙げられる。
上記分離固体分Aは切削屑の割合が多く、上記分離固体分Bは砥粒及び鉄屑の割合が多い。すなわち、上記クーラント回収工程(A)において、上記遠心分離後に、上記蒸留を行うことにより、切削屑の割合が多い分離固体分と、砥粒及び鉄屑の割合が多い分離固体分とに分離することができる。
遠心分離後に蒸留をして得られる切削屑の割合が多い分離固体分(例えば、上記軽液(a)の蒸留後の固体分、分離固体分A)における切削屑の割合は、特に限定されないが、例えば、切削屑の割合が多い分離固体分全量(100重量%)に対して、60〜99重量%が好ましく、より好ましくは70〜99重量%である。
遠心分離後に蒸留をして得られる砥粒及び鉄屑の割合が多い分離固体分(例えば、上記重液(b)の蒸留後の固体分、分離固体分B)における砥粒の割合は、特に限定されないが、例えば、砥粒及び鉄屑の割合が多い分離固体分全量(100重量%)に対して、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは35〜95重量%である。
遠心分離後に蒸留をして得られる砥粒及び鉄屑の割合が多い分離固体分(例えば、上記重液(b)の蒸留後の固体分、分離固体分B)における鉄屑の割合は、特に限定されないが、例えば、砥粒及び鉄屑の割合が多い分離固体分全量(100重量%)に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
遠心分離後に蒸留をして得られる切削屑の割合が多い分離固体分(例えば分離固体分A)、及び遠心分離後に蒸留をして得られる砥粒及び鉄屑の割合が多い分離固体分(例えば分離固体分B)は、超音波処理工程(B)に用いられる以外にも、含有成分の割合等に応じて、異なる用途に用いることができる。
砥粒及び鉄屑の割合が多い上記分離固体分は、例えば、鉄鋼用の脱酸剤、鉄鋼副資材(加珪材など)、セメント原料として用いることができる。切削屑の割合が多い分離固体分は、鉄粉の割合が低く切削粉の割合が多い回収切削粉でもあり、例えば、鉄鋼用の脱酸剤、鉄鋼副資材(加珪材など)、セメント原料、金属シリコン原料、シリコン樹脂原料として用いることもできる。
図3は、クーラント回収工程(A)の一例を表す図である。上記シリコンスラリー廃液は、上記フィルター分離により、クーラント回収液と、砥粒、切削屑、鉄屑を主に含む固体分とに分離される。その後、固体分を蒸留することにより、クーラント回収液、及び分離固体分を得ることができる。
[超音波処理工程(B)]
上記超音波処理工程(B)では、上記シリコンスラリー廃液から得られた上記分離固体分に超音波を照射する。中でも、上記クーラント回収工程(A)で得られた上記分離固体分に超音波を照射することが好ましい。
上記クーラント回収工程(A)で得られた上記分離固体分には、一部の成分が凝集したもの(例えば、切削屑と鉄屑とが凝集したもの、切削屑が凝集したものなど)、化学的に結合したものが含まれる。そのため、分離工程(C)において回収砥粒を回収する際に、砥粒と他の成分との界面(例えば、砥粒と、鉄屑と切削屑との凝集物との界面など)がわかりにくく、回収砥粒中の砥粒の濃度(回収砥粒の純度)が低くなる場合や、回収砥粒の回収効率が低下する場合がある。そのため、クーラント回収工程(A)で得られた分離固体分に超音波を照射することで、各成分の凝集が破壊(分離、分散)され(化学的結合のうち一部が解離する場合もある)、分離工程(C)で回収砥粒と回収切削粉に分離する効率が向上する。特に、分離工程(C)で得られた回収砥粒の洗浄回数が少なくても、純度の高い回収砥粒が得られるため、効率よく純度の高い回収砥粒(砥粒の割合が多い回収砥粒)を得ることができる。
効率的に超音波分散できるという観点から、上記超音波処理工程(B)の前に、上記分離固体分を、希釈することが好ましい(希釈工程)。また、効率的に超音波分散できるという観点から、上記超音波処理工程(B)の前に、上記分離固体分を解砕(特に塊状粒子の解砕)しても良い。
希釈液としては、特に限定されないが、例えば、水、アルカリ水溶液(例えば、アンモニア水、メチルアミン水溶液、重炭酸ソーダ水溶液など)、界面活性剤含有水溶液(例えば、ノニオン性界面活性剤含有水溶液、アニオン性界面活性剤含有水溶液、カチオン性界面活性剤含有水溶液など)、クーラント、又はこれらの組合せにより希釈されてもよい。中でも、本発明のリサイクルシステムにより得られる溶液を全て有効利用するという観点から、水、又は水とクーラントの混合液(例えば、クーラント回収工程(A)で分留した場合に得られる水分の多い初留成分など)による希釈が好ましい。
希釈後の上記分離固体分溶液(希釈工程で得られた分離固体分を希釈した溶液)における固体分の合計含有量は、特に限定されないが、例えば、分離固体分溶液全量(100重量%)に対して、5〜50重量%が好ましい。
なお、上記の希釈液は、分離工程(d3)後の製品化工程(E)、又は廃液再生工程(F)で回収することができ、且つ回収した溶液は希釈液として再利用できるため廃棄物とはならない。
上記超音波処理工程(B)において、超音波を照射する回数は、例えば、1回であってもよいし、2回以上であってもよい。中でも、超音波処理工程(B)には、超音波解砕工程(b1)、超音波分散工程(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1の超音波を照射する工程が含まれることが好ましい。超音波解砕工程(b1)とは、超音波の周波数が小さく、エネルギーの高い超音波を照射する工程をいう。超音波分散工程(b3)とは、超音波の周波数が大きく、エネルギーの低い超音波を照射する工程(特に、超音波解砕工程(b1)と超音波の周波数が同じ又は大きい超音波を照射する工程)をいう。
また、超音波処理工程(B)には、他の工程が含まれていてもよい。
上記超音波処理工程(B)は、特に限定されないが、分離工程(C)における回収砥粒と回収切削粉との回収効率が一層向上し、純度の高い回収砥粒を得るための洗浄回数を一層少なくできるという観点から、超音波解砕工程(b1)、分級工程(b2)、超音波分散工程(b3)をこの順で含むことが好ましい。
上記超音波処理工程(B)における、超音波の周波数は、特に限定されないが、例えば、10〜45kHzが好ましい。超音波の周波数が45kHzより大きいと、エネルギーが小さく、超音波の照射による効果(例えば凝集成分の分離)を得るのに時間がかかる場合や、効果が得られない場合がある。なお、超音波の照射を2回以上行う場合(例えば超音波解砕工程(b1)と超音波分散工程(b3)を含む場合)は、いずれも上記範囲の周波数の超音波を照射することが好ましい。
上記超音波処理工程(B)において、超音波の照射時間は、特に限定されないが、例えば、10〜180分が好ましく、より好ましくは10〜150分、さらに好ましくは10〜120分である。超音波の照射時間が上記範囲であることにより、分離工程(C)において、回収砥粒と回収切削屑を効率よく分離できる。また、分離工程(C)において、より純度の高い回収砥粒が得られる。
上記超音波処理工程(B)において、超音波を照射する際の温度は、特に限定されないが、例えば、1〜40℃が挙げられる。温度が40℃を超えると、反応等により砥粒が着色する場合がある。また、分離界面が出にくくなることで、歩留まりが低下する場合がある。
上記超音波処理工程(B)は、上記分離固体分を攪拌しながら照射してもよいし、上記分離固体分を静置して照射してもよい。中でも、分散した粒子の再凝集を防ぐために静置して照射するのが好ましい。攪拌しながら行う場合は、沈殿などを起こさない程度の撹拌(例えば、線速度10〜30cm/s(特に20cm/s)に相当する撹拌)しながら超音波を照射することが好ましい。
上記超音波処理工程(B)は、例えば、超音波照射では解離させることが困難な鉄屑と切削屑とが化学的に結合したものを分離できるという観点から、磁石を用いて鉄屑を吸着させながら行ってもよい。
(超音波解砕工程(b1))
上記超音波解砕工程(b1)は、例えば、クーラント回収工程(A)に連続して設けられていることが好ましく、クーラント回収工程(A)で得られた分離固体分を超音波で解砕することが好ましい。
効率的に超音波を照射できるという観点から、上記超音波解砕工程(b1)の前に、上記分離固体分を、希釈してもよい(希釈工程)。希釈液としては、例えば、上述のものが挙げられる。希釈後の上記分離固体分溶液における固体分の合計含有量は、特に限定されないが、例えば、分離固体分溶液全量(100重量%)に対して、5〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。
上記超音波解砕工程(b1)における、超音波の周波数は、特に限定されないが、例えば、30kHz以下(例えば10〜30kHz)が好ましく、より好ましくは15kHz以下である。超音波解砕工程(b1)における超音波の周波数が、30kHzより大きいと、凝集物の破壊に時間がかかる場合がある。特に、超音波解砕工程(b1)後に分級工程(b2)を設ける場合は、超音波の周波数が、上記範囲であることにより、分級機が詰まりにくくなり、また、切削粉と鉄粉との凝集が破壊され、分級工程(b2)において、砥粒、切削粉、鉄粉を効率よく分離できる。
上記超音波解砕工程(b1)において、超音波の照射時間は、特に限定されないが、例えば、10〜180分が好ましく、より好ましくは10〜150分、さらに好ましくは10〜120分である。超音波解砕工程(b1)の照射時間が上記範囲であることにより、分級工程(b2)において、砥粒と、切削屑及び鉄粉とを効率よく分離できる。
上記超音波解砕工程(b1)において、超音波を照射する際の温度は、特に限定されないが、例えば、1〜40℃が挙げられる。
上記超音波解砕工程(b1)は、上記分離固体分を攪拌しながら照射してもよいし、上記分離固体分を静置して照射してもよい。中でも、撹拌しながら照射することが好ましい。攪拌しながら行う場合は、沈殿などを起こさない程度に撹拌(例えば、線速度10〜30cm/s(特に20cm/s)に相当する撹拌)しながら超音波を照射することが好ましい。
上記超音波解砕工程(b1)は、例えば、磁石を用いて鉄屑を吸着させながら行ってもよい。
(分級工程(b2))
上記超音波解砕工程(b1)と上記超音波分散工程(b3)との間には、例えば、分級工程(b2)が設けられることが好ましい。中でも、上記分級工程(b2)は、上記超音波解砕工程(b1)後に連続して設けられることが好ましい。上記分級工程(b2)は、上記分離固体分から、切削屑及び/又は鉄屑を主成分とする微粒子スラリーと、砥粒を主成分とする粗粒子スラリーとに分離する工程である。
上記分級工程(b2)において上記分離固体分を分離する方法としては、特に限定されないが、例えば、沈降分離、遠心分離などが挙げられる。中でも、操作の容易性から、遠心分離が好ましい。
上記分級工程(b2)における上記遠心分離は、特に限定されないが、例えば、湿式分級機により行われることが好ましい。上記湿式分級機としては、特に限定されないが、例えば、液体サイクロン、デカンタ型遠心分離機などが挙げられる。中でも、分級効率が良いという観点から、液体サイクロンを用いることが好ましい。
液体サイクロンにかける分離固体分の固体分濃度は、特に限定されないが、例えば、10〜30重量%が好ましい。液体サイクロンの上部ノズル径と下部ノズル径との比(ノズル径比)は、特に限定されないが、例えば、1〜7であることが好ましい。液体サイクロンの使用圧力は、特に限定されないが、例えば、0.4〜1.0MPaが好ましい。上記固体分濃度、ノズル径比、及び/又は使用圧力が、上記範囲であることにより、一層効率よく微粒子スラリーと粗粒子スラリーとに分離することができる。
上記分級工程(b2)後の上記微粒子スラリーと上記粗粒子スラリーの割合としては、特に限定されないが、例えば、微粒子スラリーの重量と粗粒子スラリーの重量の比(微粒子スラリーの重量:粗粒子スラリーの重量)が、90:10〜60:40が好ましく、より好ましくは80:20〜65:35である。
上記分級工程(b2)後の上記微粒子スラリーの固体分濃度は、特に限定されないが、例えば、微粒子スラリー全量(100重量%)に対して、3〜20重量%が好ましく、より好ましくは4〜15重量%である。
上記分級工程(b2)後の上記微粒子スラリー中の砥粒の割合は、特に限定されないが、例えば、微粒子スラリー中の固体分全量(100重量%)に対して、45重量%以下(例えば0.5〜45重量%)が好ましく、より好ましくは0.5〜40重量%である。
上記分級工程(b2)後の上記微粒子スラリー中の切削屑と鉄屑の割合(切削屑と鉄屑との合計量の割合)は、特に限定されないが、例えば、微粒子スラリー中の固体分全量(100重量%)に対して、55重量%以上(例えば55〜99.5重量%)が好ましく、より好ましくは60〜99.5重量%である。
上記分級工程(b2)後の上記微粒子スラリー中の固体分濃度、砥粒の割合、切削屑の割合、及び/又は鉄屑の割合が上記範囲であることにより、より純度の高い回収切削粉を得ることができる。
上記分級工程(b2)後の上記粗粒子スラリーの固体分濃度は、特に限定されないが、例えば、粗粒子スラリー全量(100重量%)に対して、50〜80重量%が好ましく、より好ましくは60〜70重量%である。
上記分級工程(b2)後の上記粗粒子スラリー中の砥粒の割合は、特に限定されないが、例えば、粗粒子スラリー中の固体分全量(100重量%)に対して、60重量%以上(例えば、60〜99重量%)が好ましく、より好ましくは80〜99重量%である。
上記分級工程(b2)後の上記粗粒子スラリー中の切削屑と鉄屑の割合は、特に限定されないが、例えば、粗粒子スラリー中の固体分全量(100重量%)に対して、40重量%以下(例えば1〜40重量%)が好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。
上記分級工程(b2)後の上記粗粒子スラリー中の固体分濃度、砥粒の割合、切削屑の割合、及び/又は鉄屑の割合が上記範囲であることにより、より純度の高い回収砥粒を効率よく得ることができる。
上記分級工程(b2)後の上記微粒子スラリーは、特に限定されないが、例えば、廃液再生工程(F)において、濃縮、脱水乾燥して固体分濃度を上げた後に回収切削粉としてもよい。なお、廃液再生工程(F)により得られた液体分は、超音波解砕工程(b1)や超音波分散工程(b3)前の粘度や濃度を調整するための希釈液として用いることができる。このため、廃液再生工程(F)において、廃棄物は発生しない。
上記分級工程(b2)後の上記粗粒子スラリーは、特に限定されないが、例えば、超音波分散工程(b3)において超音波照射されてもよいし、分離工程(C)で回収砥粒と回収切削粉とに分離されてもよい。
上記分級工程(b2)が、液体サイクロンによる分級である場合、砥粒と鉄屑とを非常に効率よく分離できる。特に分級工程(b2)前に、特定の周波数(例えば30kHz以下)の超音波を照射すると(例えば超音波解砕工程(b1)を設けると)、液体サイクロンによる砥粒と鉄屑との分離能が著しく向上し、砥粒を主成分とする粗粒子スラリー中の鉄屑の割合が、大幅に減少する。液体サイクロンによる分級工程(b2)を、分離工程(C)の前に設けることで、分離が困難な鉄屑と砥粒とを効率よく分離できるため、分離工程(C)において、純度の高い回収砥粒が得られる。また、分離工程(C)の前に、砥粒と鉄屑とを分離できるため、純度の高い回収砥粒を得るための洗浄工程(D)の回数が少なくなり、一層効率よく純度の高い回収砥粒が得られる。
(超音波分散工程(b3))
上記超音波分散工程(b3)は、例えば、上記分級工程(b2)後に連続して設けられていることが好ましい。
効率的に超音波を照射できるという観点から、上記超音波分散工程(b3)の前に、固体分(例えば、粗粒子スラリー)を、希釈してもよい。希釈液としては、例えば、水、アルカリ水溶液(例えば、アンモニア水、メチルアミン水溶液、重炭酸ソーダ水溶液など)、界面活性剤含有水溶液(例えば、ノニオン性界面活性剤含有水溶液、アニオン性界面活性剤含有水溶液、カチオン性界面活性剤含有水溶液など)、クーラント、又はこれらの組合せによる希釈液(低粘度液体)を加えて希釈し、粘度を調整してもよい。中でも、本発明のリサイクルシステムにより得られる溶液を全て有効利用するという観点から、水、又は水とクーラントの混合液(例えば、クーラント回収工程(A)で分留した場合に得られる水分の多い初留成分など)による希釈が好ましい。
希釈後の溶液中の固体分の合計含有量(例えば、希釈後の粗粒子スラリー中の固体分の合計含有量)は、特に限定されないが、例えば、溶液全量(100重量%)に対して、10〜50重量%が好ましく、より好ましくは20〜30重量%である。
分離固体分又は粗粒子スラリーの固体分濃度が50重量%より大きい場合は、超音波分散工程(b3)において超音波による分散効果が得られない場合があるため、希釈液(水等)によって希釈するのが好ましい。分級工程(b2)で得られる粗粒子スラリーは固体分濃度が高いため、上記超音波分散工程(b3)前に、粗粒子スラリーを希釈して固体分の合計含有量を上記範囲とすることが好ましい。
上記超音波分散工程(b3)における、超音波の周波数は、特に限定されないが、例えば、20kHz以上(例えば20〜45kHz)が好ましく、より好ましくは20〜38kHzである。超音波分散工程(b3)における超音波の周波数が、20kHzより小さいと、超音波のエネルギーが大きく、系内の温度が上昇し、他の反応が起こる場合がある。特に、超音波分散工程(b3)後に静置分離を行う場合、静置分離に時間がかかる場合がある。また、波長が長すぎて、微細な凝集粒子が分散されない場合がある。上記周波数が、45kHzより大きいと、超音波のエネルギーが小さすぎて、凝集分子の分散効果が得られない場合がある。
上記超音波分散工程(b3)において、超音波の照射時間は、特に限定されないが、例えば、10〜180分が好ましく、より好ましくは10〜150分、さらに好ましくは10〜120分、さらに好ましくは10〜60分、特に好ましくは20〜30分である。超音波分散工程(b3)の照射時間が上記範囲であることにより、静置分離の際、回収砥粒と、回収切削粉とを効率よく分離できる。また、照射時間が長いと、系内の温度が上昇し、他の反応が起こる可能性がある。
上記超音波分散工程(b3)は、攪拌しながら超音波を照射してもよいし、静置して照射してもよい。中でも、分散した粒子の再凝集を防ぐために静置して照射するのが好ましい。攪拌しながら行う場合は、沈殿などを起こさない程度の撹拌(例えば、線速度10〜30cm/s(特に20cm/s)に相当する撹拌)しながら超音波を照射することが好ましい。
上記超音波分散工程(b3)は、例えば、磁石を用いて鉄屑を吸着させながら行ってもよい。
上記分離工程(C)が静置分離である場合、静置分離前に上記超音波分散工程(b3)を設けることにより、静置分離工程において、より効率よく回収砥粒と回収切削粉とを分離することができる。
以下に、超音波処理工程(B)の好ましい具体的態様の例を示す。
図4は、超音波処理工程(B)の一例を表す図である。超音波を効率よく照射できるという観点から、クーラント回収工程(A)で得られた分離固体分は、適度な濃度、粘度となるように上述の希釈液で希釈される。その後、鉄屑と砥粒と分離の効率を上げるという観点から、超音波を照射して、分離固体分中の凝集成分(特に、切削屑と鉄屑とが凝集したもの)を分散させる(超音波解砕工程(b1))。その後、湿式分級機(特に、液体サイクロン)などを用いて、分級し、砥粒を主成分とする粗粒子スラリー、及び切削屑及び/又は鉄屑を主成分とする微粒子スラリーとが得られる(分級工程(b2))。粗粒子スラリーは、超音波を効率よく照射できるという観点から、希釈液で希釈される。その後、超音波解砕工程(b1)と周波数が同じ又は大きい超音波を照射する(超音波分散工程(b3))。
分級工程(b2)で得られた微粒子スラリーは、廃液再生工程(F)で、液分と固体分とに分離して、回収切削粉とすることができる。なお、廃液再生工程(F)で分離した液分は、例えば、超音波処理工程(B)中の希釈液などに用いることができる。そのため、超音波処理工程(B)からは、廃棄物は発生しない。
[分離工程(C)]
上記分離工程(C)は、上記超音波処理工程(B)において超音波を照射した上記分離固体分(又は、分離固体分から分離した粗粒子スラリー)から回収砥粒と回収切削粉とを分離する工程である。すなわち、上記分離固体分から、上記分離工程(C)を経て、回収砥粒と回収切削粉とを得ることができる。
上記分離工程(C)は、例えば、沈降速度の差により、選択的に砥粒を沈降させ、回収砥粒と、回収切削粉とを分離する工程であることが好ましい。沈降速度の差による分離は、特に限定されないが、例えば、遠心分離であってもよいし、静置分離であってもよい。上記分離工程(C)は、特に限定されないが、上記超音波分散工程(b3)後に設けられることが好ましい。
上記分離工程(C)が静置分離である場合、静置時間(少なくとも界面が生成する静置時間)は、特に限定されないが、例えば、30〜120分が挙げられる。また、上記静置分離は、例えば、分離中の分離固体分又は粗粒子スラリーの上澄み液の濁度を測定し、上澄み液の濁度が特定値を上回るまで行ってもよい。上澄み液の濁度を監視する方法としては、例えば、濁度監視センサーを設けて濁度を監視する方法が挙げられる。
上記静置分離における上澄み液の濁度としては、特に限定されないが、例えば、2500〜4000ディジットが挙げられる。濁度が上記範囲であることにより、回収砥粒の純度を高くすることができる。上記濁度は、厚さ15mmの容器にサンプルを入れ、ファイバセンサー(商品名「デジタルファイバアンプFS−V21」、株式会社キーエンス製)で測定することができる。濁度とは、サンプルを透過した光の量を上記ファイバセンサーで測定する値であり、値が大きいほど透明であることを示す。
上記静置分離を経ても、上澄み液の濁度が、特定の値(例えば、濁度が2500ディジット)を上回らず、目的の純度の回収砥粒が得られないと判断した場合は、上記静置分離後の上澄み液を抜き取り、静置分離後の沈殿物を洗浄する洗浄工程(D)を設けてもよい。
上記洗浄工程(D)を設ける場合は、特に限定されないが、例えば静置分離後の沈殿物(100重量%)中の鉄屑の濃度が1重量%以下であることが好ましい。鉄屑の濃度は、例えば、分級や磁力選別により低くすることができる。
上記分離工程(C)は、例えば、磁石を用いて鉄屑を吸着させながら行ってもよい。
本発明者らは、上記分離工程(C)の前に、超音波解砕工程(b1)及び分級工程(b2)で、砥粒を主成分とする粗粒子スラリー中の鉄屑の割合を少なくすることで、超音波分散工程(b3)で凝集分が分離し、分離工程(C)において、沈殿分と上澄み分との界面が著しく明確となることを見出した。そのため、分離工程(C)前に、超音波解砕工程(b1)、分級工程(b2)、超音波分散工程(b3)がこの順で設けられていると、分離の効率が一層向上し、一層純度の高い回収砥粒を得ることができる。
より純度の高い回収砥粒を得るという観点から、分離工程(C)後の回収砥粒は、洗浄工程(D)、製品化工程(E)に付されることが好ましい。また、より純度の高い回収切削粉を得るという観点から、分離工程(C)後の回収切削粉は、廃液再生工程(F)に付されることが好ましい。
[洗浄工程(D)]
上記洗浄工程(D)は、回収砥粒に希釈液を加え、超音波を照射した後に、沈降速度の差により分離して回収砥粒を洗浄する工程である。上記洗浄工程(D)は、例えば、上記分離工程(C)後の沈殿物を洗浄して、回収砥粒中の砥粒濃度を一層高くする工程(分離工程(C)後の沈殿物から、砥粒とその他の成分を分離する工程)である。
上記洗浄工程(D)は、例えば、沈殿物を希釈する希釈工程(d1)、超音波により沈殿物中の成分を分散させる超音波分散工程(d2)、沈降速度の差による分離工程(d3)などを含むことが好ましい。
(希釈工程(d1))
上記希釈工程(d1)において、分離工程(C)後の沈殿物を希釈する希釈液としては、特に限定されないが、例えば、上述の希釈液や分離工程(C)後の上澄み液を濃縮した後の液体成分が挙げられる。
希釈後の溶液中の固体分の合計含有量は、特に限定されないが、例えば、希釈後の溶液全量(100重量%)に対して、10〜50重量%が好ましく、より好ましくは20〜30重量%である。
(超音波分散工程(d2))
上記超音波分散工程(d2)の条件は、上記超音波分散工程(b3)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記超音波分散工程(d2)において、超音波の周波数は、特に限定されないが、例えば、20kHz以上(例えば、20〜45kHz)が好ましく、より好ましくは20〜38kHzである。超音波分散工程(d2)における超音波の周波数が、20kHzより小さいと、超音波のエネルギーが大きく、系内の温度が上昇し、他の反応が起こる場合がある。特に、超音波分散工程(d2)後に静置分離を行う場合、静置分離に時間がかかる場合がある。また、波長が長すぎて、微細な凝集粒子が分散されない場合がある。上記周波数が、45kHzより大きいと、超音波のエネルギーが小さすぎて、凝集分子の分散効果が得られない場合がある。
上記超音波分散工程(d2)において、超音波の照射時間は、特に限定されないが、例えば、10〜180分が好ましく、より好ましくは10〜150分、さらに好ましくは10〜120分、さらに好ましくは10〜60分、特に好ましくは20〜30分である。超音波分散工程(d2)の照射時間が上記範囲であることにより、分離工程(d3)で、回収砥粒を効率よく洗浄できる。また、照射時間が長いと、系内の温度が上昇し、他の反応が起こる可能性がある。
上記超音波分散工程(d2)は、攪拌しながら超音波を照射してもよいし、静置して照射してもよい。中でも、分散した粒子の再凝集を防ぐために静置して照射するのが好ましい。攪拌しながら行う場合は、沈殿などを起こさない程度の撹拌(例えば、線速度10〜30cm/s(特に20cm/s)に相当する撹拌)しながら超音波を照射することが好ましい。
上記超音波分散工程(d2)は、例えば、磁石を用いて鉄屑を吸着させながら行ってもよい。
(分離工程(d3))
上記分離工程(d3)では、粒子の沈降速度の差を利用して、砥粒を選択的に沈降させ、砥粒とその他の成分とを分離することができる。上記分離工程(d3)において、沈降速度の差による分離は、特に限定されないが、例えば、遠心分離であってもよいし、静置分離であってもよい。
上記分離工程(d3)が静置分離である場合、静置時間(少なくとも界面が生成する静置時間)は、特に限定されないが、例えば、30〜120分が挙げられる。また、上記分離工程(d3)が静置分離である場合、例えば、分離中の希釈液の濁度を測定し、濁度が特定値を下回るまで静置してもよい。希釈液の上澄みの濁度を監視する方法としては、例えば、濁度監視センサーを設けて濁度を監視する方法が挙げられる。
上記分離工程(d3)後の上澄み液の濁度としては、特に限定されないが、例えば、2500〜4000ディジットが挙げられる。濁度が上記範囲であることにより、回収砥粒の純度を高くすることができる。上記濁度は、厚さ15mmの容器にサンプルを入れ、ファイバセンサー(商品名「デジタルファイバアンプFS−V21」、株式会社キーエンス製)で測定することができる。
上記分離工程(d3)を経ても、上澄み液の濁度が、特定の値(例えば、濁度が2500ディジット)を上回らず、目的の純度の回収砥粒が得られないと判断した場合は、上記分離工程(d3)後の上澄み液を抜き取り、沈殿物を再度洗浄工程(D)に付してもよい。
上記分離工程(d3)は、例えば、磁石を用いて鉄屑を吸着させながら行ってもよい。
上記洗浄工程(D)は、繰り返し行ってもよい。上記洗浄工程(D)の繰り返し回数は、特に限定されないが、例えば、1〜10回が好ましい。上記洗浄工程(D)を繰り返すことにより、回収砥粒中の切削粉、鉄粉の濃度を低くでき、一層純度の高い回収砥粒を得ることができる。
上記洗浄工程(D)中の分離工程(d3)で分離した上澄み液は、廃液再生工程(F)で固体分と液体分に分離した後、液体分を再度洗浄工程(D)中の希釈工程(d1)で用いることができるため、廃液が発生しない。
なお、上記洗浄工程(D)中の分離工程(d3)で分離した上澄み液を、廃液再生工程(F)で固体分と液体分に分離した後の固体分は、切削粉、鉄粉の濃度がより高い回収切削粉となる。
[製品化工程(E)]
上記洗浄工程(D)を経て得られた回収砥粒を、製品化工程(E)で乾燥して、液分を揮発させることで、より純度の高い回収砥粒が得られる。
上記製品化工程(E)における、乾燥の温度、時間は特に限定されない。
[廃液再生工程(F)]
上記廃液再生工程(F)は、洗浄工程(D)中の分離工程(d3)で分離された上澄み液等を、濃縮して、回収切削粉の純度を上げる工程である。
上記廃液再生工程(F)における濃縮の方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルタープレス、減圧濾過、限外濾過、蒸留、蒸発乾燥などが挙げられる。中でも、作業の容易性、効率的に濃縮できるという観点から、フィルタープレスが好ましい。
上記廃液再生工程(F)で得られた回収切削粉は、さらに、磁力選別、静置分離、遠心分離(例えば、液体サイクロンによる分離など)から選ばれる少なくとも1の手段(例えば、上記洗浄工程(D)など)などによる分離により、砥粒、鉄粉、切削粉に分離することができる。
上記廃液再生工程(F)における、濃縮後の液体分は、例えば、クーラント回収工程(A)中の希釈液、超音波処理工程(B)前の希釈液(超音波解砕工程(b1)前の希釈液や超音波分散工程(b3)前の希釈液など)、希釈工程(d1)の希釈液、などに用いることができる。そのため、廃液再生工程(F)から廃棄物は発生しない。
以下に、洗浄工程(D)、製品化工程(E)、廃液再生工程(F)の好ましい具体的態様の例を示す。
図5は、分離工程(C)後に、さらに洗浄工程(D)、製品化工程(E)、廃液再生工程(F)を設けた場合の一例を表す図である。図5に示す工程では、希釈工程(d1)で、回収砥粒を希釈し、超音波分散工程(d2)を経た後に、分離工程(d3)で沈殿分と上澄み液とに分離する。沈殿分は、製品化工程(E)を経ることで、より純度の高い回収砥粒となる。また、廃液再生工程(F)を経て、上澄み液からより純度の高い回収切削粉が得られる。廃液再生工程(F)で得られた液体分は、希釈工程(d1)で、希釈液として用いることができる。
[クーラント回収液]
本発明のクーラント回収液は、例えば、上記シリコンスラリー廃液(例えば、固体分の割合が高いシリコンスラリー廃液、特に砥粒の割合が高いシリコンスラリー廃液)から得られた、クーラントを含む液であることが好ましい。本発明のクーラント回収液は、クーラントのみからなる液であってもよいし、クーラントを主成分とする溶液(混合液)であってもよい。中でも、本発明のクーラント回収液は、上記シリコンスラリー廃液から得られた、クーラントを主成分とする溶液であることが好ましい。
本発明のクーラント回収液は、クーラントの含有量がクーラント回収液全量(100重量%)に対して88重量%以上であり、下記の臭気測定法において評価される臭気強度が2.5未満であり、且つ快・不快度が−1より大きいことが好ましい。クーラントの含有量、臭気強度及び快・不快度が上記範囲であるクーラント回収液は、特に、切削用のクーラントとして好ましく用いることができる。なお、臭気強度は、例えば、蒸留(特に精留、分留)などにより下げることができる。また、快・不快度は、例えば、蒸留(特に精留、分留)などにより上げることができる。
(臭気測定法)
臭気測定は、JIS K−0102に準じ、以下の方法で行った。
以下に示す6段階の臭気強度表示法、及び9段階の快・不快度表示法により、溶液の臭気強度及び快・不快度を評価した。6人の評価者が、同じ溶液について、同様の評価を行い、6人の評価結果の平均値を臭気強度及び快・不快度とした。
なお、臭気の測定は、温度25℃の環境下で行った。
(臭気強度表示法)
0:無臭
1:やっと感知できる臭い
2:何の臭いであるかわかる弱い臭い
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
(快・不快度表示法)
−4:極端に不快
−3:非常に不快
−2:不快
−1:やや不快
0:快でも不快でもない
1:やや快
2:快
3:非常に快
4:極端に快
また、本発明のクーラント回収液は、クーラントの含有量がクーラント回収液全量(100重量%)に対して88重量%以上であり、色相がAPHA40以下(例えば、10〜40、好ましくは20〜30)であることが好ましい。
本発明のクーラント回収液に、クーラントの樹脂化物が含まれると(例えば、クーラント回収液全量(100重量%)に対して6000重量ppm以上含まれると)、色相がAPHA40を超える場合がある。上記色相は、例えば、蒸留により低くすることができる。
上記色相は、JIS K0071−1:1998に記載の方法に準じて、標準試料を作製し、目視でAPHA(バーゼン色数)を評価した。
また、本発明のクーラント回収液は、クーラントの含有量がクーラント回収液全量(100重量%)に対して88重量%以上であり、水の含有量が5重量%未満であることが好ましい。
本発明のクーラント回収液は、例えば、本発明のリサイクルシステムにより得ることができる。本発明のリサイクルシステムにより得られたクーラント回収液に、pH調整剤、添加剤(例えば、分散剤、防錆剤など)を加えてもよい。
本発明のクーラント回収液中のクーラントの含有量(クーラントの純度)は、特に限定されないが、例えば、クーラント回収液全量(クーラント回収液に水が含まれる場合は水を除いたクーラント回収液)(100重量%)に対して、88重量%以上が好ましく、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。また、クーラントの上記含有量は、クーラント回収液全量(クーラント回収液に水が含まれる場合は水を除いたクーラント回収液)(100重量%)に対して、100重量%であってもよい。
本発明のクーラント回収液中の鉄屑の割合(鉄屑の含有量)は、特に限定されないが、例えば、クーラント回収液全量(クーラント回収液に水が含まれる場合は水を除いたクーラント回収液)(100重量%)に対して、5重量ppm以下が好ましい。特に、クーラント回収液中の水の割合が5重量%以下であり、且つ鉄屑の割合が5重量ppm以下であることが好ましい。
本発明のクーラント回収液中の水の割合(水の含有量)は、特に限定されないが、例えば、クーラント回収液(100重量%)に対して、15重量%以下が好ましく、より好ましくは12重量%以下、さらに好ましくは5重量%未満、特に好ましくは1重量%以下である。水の割合が、上記範囲であると、本発明のクーラント回収液を、切削用のクーラントやクーラントの原料、合成樹脂や合成樹脂の原料、可塑剤や可塑剤の原料、界面活性剤や界面活性剤の原料として用いることができる。
本発明のクーラント回収液は、例えば、クーラントの含有量がクーラント回収液全量(100重量%)に対して88重量%以上であり、水の含有量が5重量%未満であることが好ましい。
クーラント回収液中の水の割合は、例えば、蒸留により低くすることができる。特に、分留による回収液(初留、本留、後留)のうち本留から、水の割合が少なく、クーラントの濃度が高いクーラント回収液を得ることができる。
本発明のクーラント回収液に含まれるクーラントの酸化物の割合(クーラントの酸化物の含有量)は、特に限定されないが、例えば、クーラント回収液全量(クーラント回収液に水が含まれる場合は水を除いたクーラント回収液)(100重量%)に対して、1000重量ppm以下が好ましい。
なお、プロピレングリコールの酸化物であるアセトール濃度が、250重量ppm、500重量ppm、750重量ppm、1000重量ppm、1500重量ppmであるプロピレングリコール溶液を、上記の臭気測定法で臭気を評価したところ、以下のような結果であった。なお、アセトール含有のプロピレングリコールの臭気は、主にアセトールに由来する。
アセトール濃度250重量ppmの臭気強度:1.8、快・不快度:0.0
アセトール濃度500重量ppmの臭気強度:1.8、快・不快度:−0.2
アセトール濃度750重量ppmの臭気強度:2.2、快・不快度:−0.2
アセトール濃度1000重量ppmの臭気強度:2.3、快・不快度:−0.3
アセトール濃度1500重量ppmの臭気強度:3.5、快・不快度:−1.5
クーラント回収液の臭気(臭気強度、及び快・不快度)は、例えば、クーラント回収液中のクーラントの酸化物の割合を減らすことで、抑えることができる。クーラント回収液中の不純物(例えば鉄屑、切削屑など)の割合は、例えば、蒸留により、低くすることができる。クーラントの酸化物の割合は、例えば、本発明のリサイクルシステムにより分離をする、精留するなどの方法で低くすることができる。なお、分留をした場合、初留のアセトールだけでなく、後留の焼け臭も除去することができる。
本発明のクーラント回収液は、特に限定されないが、例えば、透明(例えば、無色透明、淡黄色透明など)であることが好ましい。中でも、本発明のクーラント回収液は、下記のチンダル現象の有無の確認方法において、チンダル現象がないと判定される程度に透明であることが好ましい。
(チンダル現象の有無の確認方法)
クーラント回収液を厚さ3cmのガラス製サンプル瓶(無色透明)に入れ、暗所でLED光線を照射した状態で、LED光線に対して直角の方向から目視で観察した結果、散乱光による濁りがない場合をチンダル現象なしと判断し、散乱光による濁りがある場合をチンダル現象ありと判断した。
上記シリコンスラリー廃液には、コロイド状となった粒子が含まれている。シリコンスラリー廃液中に含まれるコロイド状の粒子としては、特に限定されないが、例えば、シリコンと鉄とのコロイド粒子などが挙げられる。コロイド状の粒子を含むシリコンスラリー廃液を蒸留することにより、上記チンダル現象の有無の確認方法において、チンダル現象がないと判定されるクーラント回収液を得ることができる。一方、コロイド状の粒子を含むシリコンスラリー廃液をフィルター濾過しても、上記チンダル現象の有無の確認方法において、チンダル現象がないと判定されるクーラント回収液を得ることができない。即ち、コロイド状の粒子を含むシリコンスラリー廃液から、コロイド状の粒子を分離する方法(透明のクーラント回収液を得る方法)としては、特に限定されないが、例えば、蒸留、限外濾過などが挙げられる。
本発明のクーラント回収液は、特に限定されないが、例えば、一層取扱いやすくなる点や、切削用のクーラントやクーラントの原料、合成樹脂や合成樹脂の原料、可塑剤や可塑剤の原料、界面活性剤や界面活性剤の原料に一層好適であるという点から、クーラントの含有量が88重量%以上であり、上記臭気強度及び快・不快度が上記範囲であり、色相が上記範囲であり、且つ水含有量が上記範囲であることが好ましい。さらに、クーラント酸化物の割合、クーラントの樹脂化物の割合、鉄屑の割合が上記範囲であり、透明であることが好ましい。
本発明のクーラント回収液は、特に限定されないが、医薬品、化粧品を除く用途に用いることができ、例えば、切削用のクーラント、粉砕助剤、合成樹脂(ポリエステルなど)、可塑剤、界面活性剤、不凍液、冷却液、燃料、又はこれらの原料として用いることができる。中でも、合成樹脂(ポリエステルなど)、合成樹脂(ポリエステルなど)の原料、可塑剤、可塑剤の原料、界面活性剤、界面活性剤の原料、クーラント、クーラントの原料に用いる用途は、特に酸化物が含まれていないほうが良い。
なお、本発明のクーラント回収液は、上記用途において、単独で用いられてもよいし(新品として用いられてもよいし)、補充液として用いられてもよい。
[回収砥粒]
本発明の回収砥粒は、例えば、上記シリコンスラリー廃液から得られた砥粒を主成分とする混合物であることが好ましい。本発明の回収砥粒は、例えば、本発明のリサイクルシステムにより得ることができる。本発明のリサイクルシステムより得られる回収砥粒は、工業用JIS規格(例えば、JIS R6001、1998など)を満足するものである。
本発明の回収砥粒中の砥粒の割合(砥粒の含有量)は、特に限定されないが、例えば、回収砥粒全量(100重量%)に対して、80重量%以上が好ましく、より好ましくは98重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上である。
本発明の回収砥粒中の切削屑の割合は、特に限定されないが、例えば、回収砥粒全量(100重量%)に対して、9重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。
本発明の回収砥粒中の鉄屑の割合は、特に限定されないが、例えば、回収砥粒全量(100重量%)に対して、5重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。
すなわち、本発明の回収砥粒は、例えば、砥粒の割合が98重量%以上(好ましくは99重量%以上)、切削屑の割合が1重量%以下(好ましくは0.5重量%以下)、鉄屑の割合が1重量%以下(好ましくは0.5重量%以下)であることが好ましい。
本発明の回収砥粒は、特に限定されないが、例えば、切削用の砥粒、触媒の原料、窯業(陶磁器、瓦、耐火物など)の原料、燃料、鉄鋼副資材(加珪材、加炭材、昇温材、脱酸材など)、セメント原料として用いることができる。なお、砥粒は、被加工体の加工後もほとんど摩耗しないため、砥粒として再利用が可能である。また、磨耗したものは切削用の砥粒以外の用途に用いる事が出来る。
なお、本発明の回収砥粒は、上記用途において、単独で用いられてもよいし(新品として用いられてもよいし)、補充固体として用いられてもよい。
[回収切削粉]
本発明の回収切削粉は、例えば、上記シリコンスラリー廃液から得られた切削粉及び/又は鉄粉を主成分であることが好ましい。本発明の回収切削粉は、例えば、本発明のリサイクルシステムにより得ることができる。
本発明の回収切削粉中の切削粉及び鉄粉の割合は、特に限定されないが、例えば、回収切削粉全量(100重量%)に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは65重量%以上である。
本発明の回収切削粉中の砥粒の割合は、特に限定されないが、例えば、回収切削粉全量(100重量%)に対して、30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
使用後のケイ素(シリコンスラリー廃液中のケイ素)は、ケイ素の酸化が、切削屑の表面のみで起こり、内部には酸化していないケイ素が残っているため、シリコンスラリー廃液に含まれる切削粉は、二酸化ケイ素の割合が低い。また、本発明のリサイクルシステムによれば、回収切削粉を分離する際に、切削屑の化学的な変化が起こらないため、二酸化ケイ素の割合が低い切削屑を回収することができる。
本発明の回収切削粉は、鉄鋼副資材(加珪材、加炭材、昇温材、脱酸材、スラグ生成材など)、セメントの原料、金属シリコンの原料として用いることができる。本発明の回収切削粉は、鉄粉の割合が多い場合、特に鉄鋼副資材、セメントの原料として用いられることが好ましい。本発明の回収切削粉は、切削粉の割合が多い場合、鉄鋼副資材(スラグ生成剤、加珪材)、セメントの原料、金属シリコンの原料として用いられることが好ましい。
なお、本発明の回収切削粉は、上記用途において、単独で用いられてもよいし(新品として用いられてもよいし)、補充固体として用いられてもよい。
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、原料に対する回収率が、100%とならない場合(例えば99%となる場合など)があるが、これは廃棄物が発生したことを意味するのではなく、機器に吸着した成分等によるものであり、リサイクルを連続的に行うことで回収、利用される成分である。
なお、各成分の分析方法は、下記に記載の方法で行った。
(実施例1)
クーラントとしてプロピレングリコール、砥粒として炭化珪素砥粒(GC#1200)の切削液を用いて、太陽電池基板製造の多結晶シリコンを切削した後のシリコンスラリー廃液(1)を500重量部回収した。回収したシリコンスラリー廃液(1)は、憲房色であった。回収したシリコンスラリー廃液(1)の重量、液体分と固体分の割合、及び固体分の成分分析結果を表1に示す。
次に、バッチ式遠心分離機を用いて、遠心力2000g、遠心時間5分間の条件で、上記シリコンスラリー廃液(1)500重量部を遠心分離し、軽液(a−1)、及び重液(b−1)を得た。遠心分離後の軽液(a−1)及び重液(b−1)の割合を表2に示す。
次いで、軽液(a−1)175重量部、及び重液(b−1)313重量部を、それぞれ異なる濡れ壁塔蒸留装置を用いて減圧蒸留した。軽液(a−1)、重液(b−1)の蒸留条件は、圧力30mmHgで、留去(液が出なくなる少し手前)するまで蒸留した。軽液(a−1)は、蒸留時の留出温度が60℃以上100℃未満の留出液を初留、留出温度が100℃以上140℃未満の留出液を本留、留出温度が140℃以上180℃以下の留出液を後留として、回収液体を初留、本留、後留の3つにわけた。重液(b−1)は、180℃以下で蒸留し液体分(蒸留液体分)と固体分(蒸留固体分)とにわけた。
蒸留後の軽液(a−1)及び蒸留後の重液(b−1)の液体分と固体分の割合を表3に示す。蒸留後の軽液(a−1)の液体分及び蒸留後の重液(b−1)の液体分の成分分析結果を表4に示す。蒸留後の初留及び本留は、無色透明であった。また、後留は、淡黄色透明であった。また、本留に焦げ臭はなかった。重液(b−1)は、単蒸留した。
蒸留後の軽液(a−1)の固体分及び蒸留後の重液(b−1)の固体分の成分分析結果を表5に示す。なお、蒸留後の軽液(a−1)の固体分及び重液(b−1)の固体分の含液率は、10重量%以下であった。
表4に示されるように、蒸留後の軽液(a−1)の液体分は、初留、本留、後留ともに、蒸留後の重液(b−1)の液体分よりもプロピレングリコールの酸化物(アセトール)の濃度が低かった。また、分留することによって、本留では、水分含量1.5重量%、プロピレングリコール98.2重量%、プロピレングリコールの酸化物(アセトール)0.1重量%の高純度のクーラント回収液が得られた。固体分中の鉄屑の割合が多い重液(b−1)を蒸留して得られた回収液体は、軽液(a−1)の回収液体に比べてプロピレングリコールの酸化物(アセトール)や不純物が多く含まれていた。
また、蒸留後の軽液(a−1)(初留、本留、後留)、及び蒸留後の重液(b−1)の臭気は、以下の通りであった。
軽液(a−1)の蒸留後の初留:臭気強度3.0、快・不快度−1.2
軽液(a−1)の蒸留後の本留:臭気強度2.3、快・不快度−0.3
軽液(a−1)の蒸留後の後留:臭気強度3.5、快・不快度−1.5
重液(b−1)の蒸留液:臭気強度3.5、快・不快度−1.5
軽液(a−1)の蒸留後の本留は、臭気がなく、高品質なクーラント回収液であった。また、軽液(a−1)の蒸留後の本留中に含まれるプロピレングリコールの樹脂化物は、検出限界以下(軽液(a−1)の蒸留後の本留全量(100重量%)に対して6000重量ppm未満)であった。
また、蒸留後の軽液(a−1)(初留、本留、後留)、及び蒸留後の重液(b−1)の色相は、以下の通りであった。
軽液(a−1)の蒸留後の初留:APHA20
軽液(a−1)の蒸留後の本留:APHA30
軽液(a−1)の蒸留後の後留:APHA60
重液(b−1)の蒸留液:APHA50
また、軽液(a−1)の蒸留後の本留について、チンダル現象の有無を確認したところ、チンダル現象は確認できなかった。
表5に示されるように、軽液(a−1)の蒸留後の固体分は、切削屑を主成分とするものであった。また重液(b−1)の蒸留後の固体分は、砥粒を主成分とするものであった。また、鉄屑は、軽液(a−1)よりも重液(b−1)に多く含まれた。
軽液(a−1)の本留に水を添加し、切削工程に用いていない新品クーラント(プロピレングリコール)と水分量を同程度にし、15〜50℃における粘度を測定した。軽液(a−1)の蒸留後の本留及び新品クーラントの各温度における粘度を表6に示す。表6に示されるように、軽液(a−1)の蒸留後の本留の粘度変化は、新品クーラントと同程度であった。
粘度の測定は、ビスコテスター粘度計(ローターNo.3)、液温25℃で行った。
次いで、重液(b−1)の固体分(分離固体分)100重量部、水300重量部をプロペラ式攪拌つき濃度調整タンクに入れ、固体分の含有量を25重量%とした。その後、沈殿しない程度にゆるやかに攪拌しつつ、常温で周波数15kHzの超音波を120分間照射した。その結果、目視や触診で確認できるような粗粒子(凝集物)がほとんどなかった。解砕後のスラリーを270メッシュ(53μm)のふるいを通し、凝集物がないことを確認した。解砕後のスラリー(分離固体分を希釈した溶液)の液体分と固体分の割合、重量を表7に示す。
次いで、解砕後のスラリー400重量部を、液体サイクロンにかけ、微粒子スラリー(c−1)と粗粒子スラリー(d−1)を得た。分級後の微粒子スラリー(c−1)と粗粒子スラリー(d−1)との割合、液体分と固体分の割合、成分分析結果を表8に示す。
表8に示されるように、液体サイクロンによる分級により、微粒子スラリーは切削屑及び鉄屑の割合が多く、粗粒子スラリーは砥粒の割合が多かった。鉄屑は微粒子スラリーに多く移行し、粗粒子スラリー中の鉄屑は0.6重量%と低かった。
次いで、粗粒子スラリー100重量部に、水を220重量部添加して、固体分濃度20重量%とし、均一に攪拌した後、常温で、周波数26kHzの超音波を30分間照射し、凝集粒子を分散させた。次いで、超音波照射した粗粒子スラリーを120分間、静置し、沈殿物とそれ以外(上澄み)に分離し上澄み液を回収した。残った沈殿物に、回収した水と同量の水を添加し、固体分濃度分20重量%となるようにした。その後、磁石を用いて磁力選別を行った。磁力選別で回収した固体分は、廃液再生工程を経て、回収切削粉とすることができる。
その後、均一に攪拌した後、常温で、周波数26kHzの超音波を30分間照射し、120分間静置し、上澄み液を回収するまでを1回とする洗浄を、上澄み液の濁度(ファイバセンサー(商品名「デジタルファイバアンプFS−V21」、株式会社キーエンス製)で測定した濁度)が2500ディジット以上になるまで行った。洗浄回数は計4回であった。
次いで、沈殿物を、乾燥機を用いて乾燥させ、325メッシュ(45μm)の振るいにかけ、振るいを通過したものを回収砥粒として得た。ふるいを通過しなかったものはなかった。得た回収砥粒の重量と成分分析した結果を表9に示す。粗粒子スラリーに含有している砥粒に対する、回収砥粒中の砥粒の回収率は88.9重量%であった。また、シリコンスラリー廃液(1)の乾燥固体の粒度分布を図6に、回収砥粒の粒度分布を図7に示す。走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したシリコンスラリー廃液(1)の乾燥固体を図8、回収砥粒を図9に示す。なお、粒度分布は、レーザー回析・散乱法により測定した。
洗浄時に回収した上澄み液を、フィルタープレス(ろ布の材質:ポリプロピレン、ろ過圧力:0.4MPa)で濃縮し、得られた固体分を蒸発乾燥させて回収切削粉(1−1)(18.4重量部)を得た。得た回収切削粉の重量と成分分析した結果を表10に示す。
また、軽液(a−1)の蒸留後の固体分、微粒子スラリー(c−1)をフィルタープレスで濃縮し、得られた固体分を蒸発乾燥させたもの、及び洗浄時に回収した上澄み液をフィルタープレスで濃縮し、得られた固体分を蒸発乾燥させたもの、を混ぜて回収切削粉(1−2)(80.8重量部)を得た。得た回収切削粉(1−2)の重量と成分分析した結果を表10に示す。
なお、上記のフィルタープレスで濃縮して分離した液体は、上記と同様の洗浄における希釈液としても用いることができた。
表9に示されるように、得られた回収砥粒は、切削粉、鉄粉がほとんど含まれておらず、砥粒の濃度が非常に高い高純度の回収砥粒であった。また、図6、図7を比較すると、得られた回収砥粒には、シリコンスラリー廃液(1)中に存在していた切削屑である粒径1μm付近の粒子は存在しなかった。また、図9に示されるように、得られた回収砥粒中の砥粒には、切削屑は付着しておらず、切削屑や鉄屑が除去されていた。また、砥粒の形状が損なわれていないことを確認した。
また、実施例1で回収された初留は粉砕助剤原料として、本留は切削用のクーラント原料として、後留は粉砕助剤原料として、回収砥粒は切削用の砥粒として、回収切削粉は鉄鋼副資材として使用でき、実施例1では廃棄物はなかった。
(実施例2)
クーラントとしてジエチレングリコール及びジエチレングリコールモノメチルエーテルの混合物、砥粒として炭化珪素砥粒(GC#1200)の切削液を用いて、太陽電池基板製造の多結晶シリコンを切削した後のシリコンスラリー廃液(2)を500重量部回収した。
シリコンスラリー廃液(2)の重量、液体分と固体分の割合、及び固体分の成分分析結果を表11に示す。
回収したシリコンスラリー廃液(2)500重量部を、蒸留装置を用いて減圧蒸留した。蒸留条件は、圧力30mmHg、留去(液が出なくなる少し手前まで)蒸留した。留出温度が60℃以上100℃未満の留出液を初留、留出温度が100℃以上170℃未満の留出液を本留、留出温度が170℃以上200℃以下の留出液を後留として、初留、本留、後留の3つにわけた。蒸留後の液体分と固体分の割合を表12に示す。蒸留後の液体分及び固体分の成分分析結果を表13、表14に示す。
表13に示されるように、初留、後留に比べ、本留は水分が少なく、高純度のジエチレングリコールとジエチレングリコールモノメチルエーテルの回収液を得た。なお、蒸留後の固体分の含液率は、10重量%以下であった。
また、蒸留後の初留、本留、後留の臭気を評価したところ、以下の通りであった。
蒸留後の初留:臭気強度2.0、快・不快度0
蒸留後の本留:臭気強度2.3、快・不快度0
蒸留後の後留:臭気強度2.5、快・不快度−1.0
また、蒸留後の初留及び本留は無色透明、後留は淡黄色透明であった。また、蒸留後の本留中に含まれるジエチレングリコールやジエチレングリコールモノメチルエーテルの樹脂化物は、検出限界以下(蒸留後の本留全量(100重量%)に対して6000重量ppm未満)であった。
また、蒸留後の初留、本留、後留の色相を評価したところ、以下の通りであった。
蒸留後の初留:APHA20
蒸留後の本留:APHA30
蒸留後の後留:APHA70
また、蒸留後の本留について、チンダル現象の有無を確認したところ、チンダル現象は確認できなかった。
実施例1と同様に水分調整した本留と切削工程に用いていない新品クーラントの温度変化による粘度変化を解析した(表15)。表15に示されるように、本留の粘度変化は、新品クーラントと同程度であった。なお、粘度の測定は、実施例1と同様の条件で行った。
次いで、蒸留後の固体分344重量部に、水を1370重量部添加して、固体分濃度20重量%とし、均一に攪拌した後、常温で、周波数26kHzの超音波を30分間照射し、凝集粒子を分散させた。次いで、120分間静置し、沈殿物とそれ以外(上澄み)に分離した。残った沈殿物に回収した水と同量の水を添加した。その後、磁石を用いて磁力選別を行った。磁力選別で回収した固体分は、廃液再生工程を経て、回収切削粉とすることができる。
その後、均一に攪拌した後、常温で、周波数26kHzの超音波を30分間照射し、120分間静置し、上澄み液を回収するまでを1回とする洗浄を、上澄み液の濁度(ファイバセンサー(商品名「デジタルファイバアンプFS−V21」、株式会社キーエンス製)で測定した濁度)が2500ディジット以上になるまで行った。洗浄回数は計6回であった。
次いで、乾燥機を用いて、乾燥させ、325メッシュ(45μm)の振るいにかけ、振るいを通過したものを回収砥粒として得た。得た回収砥粒の重量と成分分析した結果を表16に示す。蒸留後の固体分中の砥粒に対して、回収砥粒中の砥粒の回収率は78.6%であった。
また、シリコンスラリー廃液(2)の乾燥固体の粒度分布を図10に、回収砥粒の粒度分布を図11に示す。走査電子顕微鏡で撮影したシリコンスラリー廃液(2)の乾燥固体を図12、回収砥粒の乾燥固体を図13に示す。
洗浄時に回収した上澄み液を、実施例1と同様に、フィルタープレスで濃縮し、得られた固体分を蒸発乾燥させて回収切削粉(157.1重量部)を得た。得た回収切削粉の重量と成分分析した結果を表17に示す。
表16に示されるように、得られた回収砥粒は、切削粉、鉄粉がほとんど含まれておらず、砥粒の濃度が非常に高い高純度の回収砥粒であった。また、図11に示されるように、得られた回収砥粒には、シリコンスラリー廃液(2)中に存在していた切削屑である粒径1μm付近の粒子は存在しなかった。また、図13に示されるように、得られた回収砥粒中の砥粒には、切削屑は付着しておらず、切削粉や鉄粉が除去されていた。また、砥粒の形状が損なわれていないことを確認した。
また、実施例2でも、実施例1と同様にして廃棄物はないことを確認した。
(実施例3)
クーラントとしてプロピレングリコール、砥粒として炭化珪素砥粒(GC#1500)の切削液を用いて、太陽電池基板製造の多結晶シリコンを切削した後のシリコンスラリー廃液(3)を回収した。シリコンスラリー廃液(3)230重量部を、実施例1と同様に蒸留し、固体分100重量部、液体分130重量部を回収した。蒸留後の固体分の成分分析結果を表18に示す。
蒸留後の固体分100重量部と水400重量部を攪拌タンクに入れ、固体分濃度を20重量%とし均一に攪拌した後、常温で、周波数38kHzの超音波を30分間照射し、凝集粒子を分散させた。次いで、120分間静置し、沈殿物とそれ以外(上澄み)に分離した。残った沈殿物に回収した水と同量の水を添加した。その後、磁石を用いて磁力選別を行った。磁力選別で回収した固体分は、廃液再生工程を経て、回収切削粉とすることができる。
その後、均一に撹拌した後、常温で、周波数38kHzの超音波を30分間照射し、120分間静置し、上澄み液を回収するまでを1回とする洗浄を、上澄み液の濁度(ファイバセンサー(商品名「デジタルファイバアンプFS−V21」、株式会社キーエンス製)で測定した濁度)が2500ディジット以上になるまで行った。洗浄回数は計7回であり、この洗浄に要した洗浄水量は計2800重量部だった。
次いで、沈殿物を、乾燥機を用いて、乾燥させ、325メッシュ(45μm)の振るいにかけ、振るいを通過した56.7重量部を回収砥粒として得た。得られた回収砥粒の重量と成分分析した結果を表19に示す。
洗浄時に回収した上澄み液を、フィルタープレスで濃縮し、得られた固体分を蒸発乾燥させて回収切削粉(34.5重量部)を得た。得た回収切削粉の重量と成分分析した結果を表20に示す。
また、実施例3でも、実施例1と同様にして廃棄物はないことを確認した。
(比較例1)
実施例3と同様にして蒸留後の固体分及び液体分を回収し、固体分100重量部と水400重量部を攪拌タンクに入れ、固体分濃度を20重量%とした。その後、超音波を照射しなかった以外は、実施例3と同様にして回収砥粒を回収した。上澄み液の濁度(ファイバセンサー(商品名「デジタルファイバアンプFS−V21」、株式会社キーエンス製)で測定した濁度)が2500ディジット以上になるまでに必要な洗浄回数は22回であり、洗浄に要した洗浄水量は8800重量部であった。
次いで、乾燥機を用いて乾燥させ、20μmの振るいにかけ、振るいを通過した34.1重量部を回収砥粒として得た。得られた砥粒の重量と成分分析した結果を表21に示す。
洗浄時に回収した上澄み液を、フィルタープレスで濃縮し、得られた固体分を蒸発乾燥させて回収切削粉(57.1重量部)を得た。得た回収切削粉の重量と成分分析した結果を表22に示す。
また、実施例1でも、実施例1と同様にして廃棄物はないことを確認した。
実施例3及び比較例1における、砥粒の回収率、洗浄回数、及び使用した洗浄水量を表23に示す。
比較例1では、超音波照射を行っていないため、凝集した砥粒と切削屑の剥離が行われておらず、洗浄回数が多くなった。実施例3の方が、比較例1よりも、洗浄回数や洗浄水量も少なく、高純度の回収砥粒が得られた。また、実施例3の方が回収率も高く、効率的に回収砥粒が得られた。
(実施例4)
クーラントとしてプロピレングリコール、砥粒として炭化珪素砥粒(GC#1500)の切削液を用いて、太陽電池基板製造の多結晶シリコンを切削した後のシリコンスラリー廃液(4)を回収した。シリコンスラリー廃液(4)を、実施例1と同様に蒸留し固体分を100重量部回収した。蒸留後の固体分の成分分析結果を表24に示す。
蒸留後の固体分100重量部と水400重量部の攪拌タンクに入れ、固体分濃度を20重量%とした。その後、常温で周波数26kHzの超音波を30分間照射し、凝集粒子を解砕した。解砕した固体分(20重量%のスラリー)を実施例1と同様に液体サイクロンにかけ、分級し、微粒子スラリー(c−2)と粗粒子スラリー(d−2)を得た。得られた微粒子スラリー(c−2)と粗粒子スラリー(d−2)の割合、液体分と固体分の割合、固体分の成分分析結果を表25に示す。
粗粒子スラリー(d−2)143重量部に加水し、固体分濃度20重量%とし、実施例1と同様に洗浄、乾燥させ、回収砥粒を56.5重量部得た。上澄み液の濁度(ファイバセンサー(商品名「デジタルファイバアンプFS−V21」、株式会社キーエンス製)で測定した濁度)が2500ディジット以上になるまでに必要な洗浄回数は4回であり、洗浄に要した洗浄水量は1170重量部であった。
得られた回収砥粒の成分分析結果を表26に示す。
洗浄時に回収した上澄み液を、フィルタープレスで濃縮し、得られた固体分を蒸発乾燥させて回収切削粉(4−1)(20.7重量部)を得た。また、微粒子スラリー(c−2)の固体分と、回収切削粉(4−1)とを混合し、回収切削粉(4−2)(34.8重量部)を得た。得た回収切削粉(4−1)及び回収切削粉(4−2)の重量と成分分析した結果を表27に示す。
実施例4では、廃棄物はなかった。
(実施例5)
実施例4と同様にして蒸留後の固体分を回収し、固体分100重量部と水400重量部を攪拌タンクに入れ、固体分濃度を20重量%とした。周波数26kHzの超音波照射、及びその後の液体サイクロンによる分級を行わなかった以外は、実施例4と同様にして回収砥粒を得た。得られた回収砥粒は、39.4重量部であった。上澄み液の濁度(ファイバセンサー(商品名「デジタルファイバアンプFS−V21」、株式会社キーエンス製)で測定した濁度)が2500ディジット以上になるまでに必要な洗浄回数は6回であり、洗浄に要した洗浄水量は5400重量部であった。得られた回収砥粒の成分分析結果を表28に示す。
洗浄時に回収した上澄み液を、フィルタープレスで濃縮し、得られた固体分を蒸発乾燥させて回収切削粉(53.7重量部)を得た。得た回収切削粉の重量と成分分析した結果を表29に示す。
実施例5では、廃棄物はなかった。
実施例4及び実施例5における、洗浄回数、及び使用した洗浄水量を表30に示す。
実施例4のほうが実施例5よりも、洗浄回数も少なく、洗浄水量も少なく、効率的に砥粒を回収することが出来た。液体サイクロンにより、洗浄工程の前の分級工程で選択的に切削屑と鉄屑を除去する事により、後の洗浄工程における洗浄回数や洗浄水量を低減する事ができた。
(実施例6)
クーラントとしてプロピレングリコール、砥粒として炭化珪素砥粒(GC#1200)の切削液を用いて、太陽電池基板製造の多結晶シリコンを切削した後のシリコンスラリー廃液(5)を、遠心分離を行わずに、実施例1の重液(b−1)の蒸留条件と同様の方法で蒸留だけ行い、蒸留後の液体分を100重量部得た。得られた蒸留後の液体分の成分分析結果を表31に示す。
蒸留後の液体分(表31の蒸留後の液体分)を、濡れ壁塔による蒸留装置を用いて精留した。精留の条件は減圧(300〜400mmHg)、留出温度100℃〜115℃とした。精留後、得られた初留は32重量部、本留が68重量部であった。得られた初留及び本留の水分、成分分析結果を表32に示す。
蒸留後の液体分(表31の蒸留後の液体分)を精留して得られた本留成分は、水や酸化成分(アセトール)が除去され、高純度のクーラント(プロピレングリコール)であった。なお、シリコンスラリー廃液(5)を直接精留した場合でも、操作に時間を要するものの、上記と同様の高純度のクーラントが得られた。
また、シリコンスラリー廃液(5)の蒸留後の液体分、及び精留後の本留成分の臭気を評価したところ、以下の通りであった。
シリコンスラリー廃液(5)の蒸留後の液体分:臭気が強く、評価しなかった
精留後の本留成分:臭気強度2.3、快・不快度−0.3
また、蒸留後の本留中に含まれるプロピレングリコールの樹脂化物は、検出限界以下(精留後の本留全量(100重量%)に対して6000重量ppm未満であった。
実施例及び比較例で行った分析方法は、以下の通りである。
(クーラント成分の分析方法)
GC−FID分析法(検出器:水素炎イオン検出器)
使用機器:商品名「GC−2014 C−R8A」(株式会社島津製作所製)
カラム:商品名「Rtx−Wax」(長さ30m×内径0.32mm、膜厚0.1μm、株式会社島津ジーエルシー製)
キャリアガス:He
検出器:FID(検出器温度210℃)
(クーラント中の水分の分析方法)
カールフィッシャー法
使用機器:商品名「MKS−500」京都電子工業株式会社製
(固体分中の成分の分析方法)
波長分散型蛍光X線分析
使用機器:商品名「ZSX Primus III+」(株式会社リガク製)
また、クーラントの樹脂化物は、蒸留後の液体分を、クーラントの沸点以上で加熱し、クーラントが完全に気化した後に残った残渣を測定し、蒸留後の液体分(100重量%)に対する、樹脂化物の重量の割合から算出した。
実施例及び比較例で行った臭気の評価方法は、以下の通りである。
(臭気測定法)
以下に示す6段階の臭気強度表示法、及び9段階の快・不快度表示法により、溶液の臭気強度及び快・不快度を評価した。6人(20代の男性1名、30代の男性3名、40代2名の男性)の評価者が、同じ溶液について、同様の評価を行い、6人の評価結果の平均値を臭気強度及び快・不快度とした。
なお、臭気の測定は、温度25℃の環境下で行った。
(臭気強度表示法)
0:無臭
1:やっと感知できる臭い
2:何の臭いであるかわかる弱い臭い
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
(快・不快度表示法)
−4:極端に不快
−3:非常に不快
−2:不快
−1:やや不快
0:快でも不快でもない
1:やや快
2:快
3:非常に快
4:極端に快
実施例及び比較例で行った色相の評価方法は、以下の通りである。
JIS K0071−1:1998に記載の方法に準じて、標準試料を作製し、目視でAPHA(バーゼン色数)を評価する。
実施例で行ったチンダル現象の有無の確認方法は、以下の通りである。
蒸留後の本留を厚さ3cmのガラス製サンプル瓶(無色透明)に入れ、暗所でLED光線をサンプル瓶に照射した状態で、LED光線に対して直角の方向から目視で観察した結果、散乱光による濁りがない場合をチンダル現象なしと判断し、散乱光による濁りがある場合をチンダル現象ありと判断した。
1 クーラント回収工程(A)
2 超音波処理工程(B)
3 洗浄工程(C)

Claims (22)

  1. クーラント、砥粒、切削屑、鉄屑を含むシリコンスラリー廃液から得られた分離固体分を、前記切削屑及び/又は前記鉄屑を主成分とする微粒子スラリーと、前記砥粒を主成分とする粗粒子スラリーとに分級した後、分級した前記粗粒子スラリーに超音波を照射する超音波処理工程(B)、
    超音波を照射した前記粗粒子スラリーから回収砥粒と回収切削粉とを分離する分離工程(C)、
    を含むことを特徴とするシリコンスラリー廃液のリサイクルシステム。
  2. クーラント、砥粒、切削屑、鉄屑を含むシリコンスラリー廃液を分離して、分離固体分とクーラント回収液とを得るクーラント回収工程(A)、
    分離した前記分離固体分に超音波を照射する超音波処理工程(B)、
    超音波を照射した前記分離固体分から回収砥粒と回収切削粉とを分離する分離工程(C)、
    を含むシリコンスラリー廃液のリサイクルシステムであって、前記クーラント回収工程(A)が、前記シリコンスラリー廃液から留及び/又は精留により、水、クーラント、及びクーラントの酸化物を分離し、前記クーラントをクーラント回収液として得る工程を含むことを特徴とするシリコンスラリー廃液のリサイクルシステム。
  3. 前記超音波処理工程(B)において、分級した前記粗粒子スラリーに周波数20〜45kHzの超音波を照射する請求項1に記載のシリコンスラリー廃液のリサイクルシステム。
  4. 前記超音波処理工程(B)が、分級前に前記分離固体分を超音波で解砕する工程を含む請求項1に記載のシリコンスラリー廃液のリサイクルシステム。
  5. 前記クーラント回収工程(A)において、前記分留工程及び/又は前記精留工程の前に、前記シリコンスラリー廃液を、遠心分離及びフィルター濾過からなる群より選ばれる少なくとも1の分離手段により、前記分離固体分と前記分留工程及び/又は前記精留工程に供する液に分離する請求項2に記載のシリコンスラリー廃液のリサイクルシステム。
  6. 前記分離工程(C)において、沈降速度の差により、超音波を照射した前記粗粒子スラリー又は前記分離固体分から回収砥粒と回収切削粉とを分離する請求項1〜5の何れか1項に記載のシリコンスラリー廃液のリサイクルシステム。
  7. さらに、前記回収砥粒に希釈液を加え、超音波を照射した後に、沈降速度の差により分離して回収砥粒を洗浄する洗浄工程(D)を含む請求項1〜6の何れか1項に記載のシリコンスラリー廃液のリサイクルシステム。
  8. 請求項2、5〜7の何れか1項に記載のリサイクルシステムにより得られるクーラント回収液。
  9. 請求項1〜7の何れか1項に記載のリサイクルシステムにより得られる回収砥粒。
  10. 請求項1〜7の何れか1項に記載のリサイクルシステムにより得られる回収切削粉。
  11. クーラントの含有量が88重量%以上であり、下記の臭気評価法により評価される臭気強度が2.5未満であり、且つ快・不快度が−1より大きいことを特徴とする請求項8に記載のクーラント回収液。
    (臭気測定法)
    6人の評価者が、評価サンプルの臭いをかぎ、以下に示す6段階の臭気強度表示法、及び9段階の快・不快度表示法により、評価を行い、その平均値を臭気強度及び快・不快度とした。
    臭気強度表示法
    0:無臭、1:やっと感知できる臭い、2:何の臭いであるかわかる弱い臭い、3:楽に感知できる臭い、4:強い臭い、5:強烈な臭い
    快・不快度表示法
    −4:極端に不快、−3:非常に不快、−2:不快、−1:やや不快、0:快でも不快でもない、1:やや快、2:快、3:非常に快、4:極端に快
  12. クーラントの含有量が88重量%以上であり、色相がAPHA40以下であることを特徴とする請求項8又は11に記載のクーラント回収液。
  13. クーラントの含有量が88重量%以上であり、水の含有量が5重量%未満であることを特徴とする請求項8、11、及び12の何れか1項に記載のクーラント回収液。
  14. 切削用のクーラントの原料である請求項8、及び11〜13の何れか1項に記載のクーラント回収液。
  15. 粉砕助剤原料である請求項8、及び11〜14の何れか1項に記載のクーラント回収液。
  16. 合成樹脂原料である請求項8、及び11〜15の何れか1項に記載のクーラント回収液。
  17. 燃料である請求項8、及び11〜16の何れか1項に記載のクーラント回収液。
  18. 切削用の砥粒である請求項9に記載の回収砥粒。
  19. 鉄鋼副資材である請求項9に記載の回収砥粒。
  20. セメント原料である請求項9に記載の回収砥粒。
  21. 鉄鋼副資材である請求項10に記載の回収切削粉。
  22. セメント原料である請求項10に記載の回収切削粉。
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