JP2010168255A - 金属含有物除去方法およびシリコン精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の金属含有物除去方法は、シリコンを機械加工して得られかつシリコン粒子を含む廃スラリー又は前記廃スラリーから分離したシリコン回収固形分を酸性の第1洗浄液で洗浄する第1洗浄工程と、前記シリコン粒子を含む第1洗浄液を塩基で処理する中和処理工程と、前記塩基で処理した第1洗浄液から分離した前記シリコン粒子を含む固形分又はスラリーを酸性の第2洗浄液で洗浄する第2洗浄工程とを備え、前記機械加工から生じかつ第1洗浄工程で除去できなかった金属含有物を第2洗浄工程で効率的に除去することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
そこで従来、例えば特許文献1、特許文献2のように原料シリコンの切断又は研磨といったシリコンウェハの製造時に発生する廃液からシリコンを回収する方法が提案されてきた。
すなわち、シリコン再生コストを低く抑えるためにシリコン回収用固形分の融解前に、できるだけ多くの不純物を除去しておくことが好ましい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い不純物除去効果を有する金属含有物除去方法を提供するものである。
さらに、本発明は、本発明の金属含有物除去方法を行ったシリコン粒子を含む固形分を用いたシリコン精製方法を提供するものである。
さらに、本発明者らは、シリコン回収用固形分を酸溶液により洗浄した後、塩基溶液を用いてこれを中和することにより、凝集したシリコン粒子の分散を促進させる効果があることを見出した。さらにこのシリコン粒子の分散が促進された中和処理後のシリコン回収用固形分を、再び酸溶液で洗浄することにより、1回目の酸溶液による洗浄では除去できなかったシリコン粒子の凝集体の内部の不純物を効率的に除去することができ、不純物除去効果を劇的に高められることを見出し、本発明の完成に至った。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。
前記塩基は、アンモニア水溶液、水酸化マグネシウム水溶液及び水酸化第2銅水溶液のうち少なくとも1つを含んでもよい。
前記中和処理工程後の第1洗浄液は、5以上10未満のpHを有してもよい。
第1洗浄工程、前記中和処理工程および第2洗浄工程のうち少なくとも1つは、超音波照射により前記シリコン粒子の分散を行ってもよい。
第1洗浄工程の前に前記廃スラリーまたは前記シリコン回収固形分を粉砕する粉砕工程をさらに備えてもよい。
第2洗浄工程の後に、前記シリコン粒子を含む第2洗浄液から固形分を分離し、第2洗浄液から分離した固形分を水洗する工程をさらに備えてもよい。
ここで示した種々の実施形態は、互いに組み合わせることができる。
本発明の一実施形態の金属含有物除去方法は、シリコンを機械加工して得られかつシリコン粒子を含むシリコン粒子2を含む廃スラリー又は前記廃スラリーから分離したシリコン回収固形分1を酸性の第1洗浄液3で洗浄する第1洗浄工程と、シリコン粒子2を含む第1洗浄液3を塩基で処理する中和処理工程と、前記塩基で処理した第1洗浄液3から分離したシリコン粒子2を含む固形分又はスラリーを酸性の第2洗浄液11で洗浄する第2洗浄工程とを備える。
また、本実施形態の金属含有物除去方法は、第1洗浄工程の前に粉砕工程を、中和処理工程の後に第1水洗・固液分離工程を、第2洗浄工程の後に第2水洗・固液分離工程及び乾燥工程を備えてもよい。
以下本実施形態について説明する。
まず、本実施形態の金属含有物除去方法の各構成要素について説明する。
1−1.シリコン粒子
シリコン粒子2は、粒子状のシリコンである。また、例えば、シリコン粒子2は、不純物を含んでもよい。
シリコン粒子2の粒径は、特に限定されないが、例えば0.1〜5000μmである。
シリコンの機械加工により生じる廃スラリーは、特に限定されないが、例えば、砥粒とクーラントを含むスラリーを用いたシリコン塊又はシリコンウェハの切断又は研磨により生じた廃スラリーである。また、シリコンの機械加工では、例えば、切断刃、ワイヤ又は研磨ホイールなどが用いられる。
本実施形態のシリコンの機械加工の例として、シリコン塊に含まれるシリコンインゴットをマルチワイヤソー装置(以下「MWS」と記載する。)で切断するシリコンの機械加工、及びシリコンインゴットをホイール式研磨装置で研磨するシリコンの機械加工で生じる廃スラリーについて説明する。
これらの装置を用いてシリコンインゴットを切断又は研磨すると、スラリー中にシリコンの切断屑、粉砕された砥粒及び粉砕されなかった砥粒、さらにはワイヤ及び研磨ホイールの摩耗片である金属屑などが混入し、廃スラリーが排出される。
クーラントは、その種類は限定されず、例えば、油性クーラント(鉱油をベースとしたオイル)や、水性クーラント(水をベースとしてグリコール系溶媒(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、界面活性剤、有機酸などが添加されたもの)であってもよい。クーラントは、エチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどの有機溶媒(水溶性有機溶媒)を主成分とし、ここに有機酸、塩基性水溶液、ベントナイトなどの添加物を10wt%以下(好ましくは3wt%以下)添加したものであってもよい。なお、ここでいう「有機溶媒を主成分とする」とは、例えばクーラント中に20wt%以下(好ましくは15wt%以下)の水分が含まれていてもよいことを意味している。
廃スラリーから分離されたシリコン回収固形分1は、「1−2」で説明した廃スラリー又はその濃縮分について固液分離を行って得られる固形分である。固形分の分離方法は、特に限定されないが、例えば、遠心分離機、ろ過装置、蒸留装置などである。
本実施形態の廃スラリーからの固形分の分離方法の例として、固液分離装置を用いた分離方法について説明する。
金属含有物は、シリコンの機械加工に使用した切断刃、ワイヤ、研磨ホイール又は加工装置構造材などから生じ、廃スラリーまたはシリコン回収固形分1に含まれる。金属含有物は、例えば、金属(例えば金属粉末など)又は金属化合物(例えば塩化鉄などの塩化物や水酸化鉄などの水酸化物)である。また、例えば、金属含有物は、Al、B,Ca,Cr,Cu,Fe,Ni,P、Ti,Znのうち少なくとも1つを含む物質である。
洗浄装置は、第1洗浄装置7および第2洗浄装置12を含む。洗浄装置は、第1洗浄工程、または第2洗浄工程を行うことができれば特に限定されないが、例えば、洗浄槽4、洗浄槽4内に設けられた攪拌機5および超音波発信装置6で構成される。また、第1洗浄装置7と第2洗浄装置12は、同一であってもよく、異なってもよい。
中和処理装置10は、中和処理工程を行うことができれば特に限定されないが、例えば、中和処理槽8、中和処理槽8内に設けられた攪拌機5および超音波発信装置6で構成される。また、中和処理装置10は、第1洗浄装置7または第2洗浄装置12と同一であってもよく、異なってもよい。
洗浄液には、第1洗浄液3と第2洗浄液11が含まれる。洗浄液は、第1洗浄工程又は第2洗浄工程前において酸性である。洗浄液は、酸性物質を水を含む溶媒に溶解した溶液であれば特に限定されない。また、第1洗浄液又は第2洗浄液は、例えば、硫酸、フッ酸、塩酸、過酸化水素、臭化水素酸、硝酸、クエン酸、酢酸、蟻酸、シュウ酸および乳酸のうち少なくとも1つを含むことができる。洗浄液のpHは、7未満であればよいが、0〜4が好ましい。洗浄液のpHは、例えば、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4である。洗浄液のpHは、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
洗浄液は、無機酸性洗浄液からなることが好ましい。シリコン回収固形分1などに含まれる不純物と無機酸との反応によって新たに生成する化合物は、有機酸との反応によって生成する化合物に比べて一般に沸点が低く、除去が容易である場合があるからである。
洗浄液は、過酸化水素を含んでいてもよい。この場合、短い時間で金属屑を除去できるという利点がある。過酸化水素の比率は、例えば、0.1〜5wt%であり、具体的には例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5wt%である。過酸化水素の比率は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
また、第2洗浄液11として、例えば、塩酸、弗酸、硫酸、硝酸の何れか1つか、それらの混合物からなる無機酸溶液を用いることができる。また、第2洗浄液11の溶媒は水が好ましい。
塩基は、水等の溶媒に溶解して水酸化物イオンを放出するかプロトンの受容体となる物質(塩基性物質)または、この物質が水等の溶媒に溶解した塩基溶液9であれば特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど、又はアンモニア水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化第2銅水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などである。また、塩基は1種類の塩基を用いてもよく、数種類の塩基の混合物を用いてもよい。
また、アルカリ金属を含む塩基を用いた場合、このアルカリ金属がシリコン粒子2を含む固形分に混入する可能性があるが、後述するシリコン精製方法において、これらのアルカリ金属はスラグとともに容易に除去できる。塩基溶液9は、弱塩基であることが望ましく、アンモニア水溶液、水酸化マグネシウム水溶液及び水酸化第2銅水溶液からなる群から選ばれる1つからなるか又は2つ以上の混合物であることがさらに望ましい。
2−1.粉砕工程
シリコンの機械加工から得られる廃スラリーまたはシリコン回収固形分1を粉砕することができる。このことにより廃スラリー又はシリコン回収固形分1の洗浄効果を高めることができることができるためである。粉砕の方法は、特に限定されないが、例えば、粉砕装置を用いて、シリコン回収固形分1を特定の大きさまで粉砕してもよい。また、廃スラリーの場合、この工程により、廃スラリーに含まれる凝集したシリコン粒子2をある程度分散させることができる。
粉砕条件としては、洗浄効果を高めるためにはできるだけ粒径が小さくなることが好ましいが、一方、粒径が小さくなると粉砕装置の構造材由来の不純物混入も多くなる、さらに粉砕コストが高くなるという問題があることから、実用上は、粉砕後の粒径の平均値は10μm以上10mm未満の範囲にあることが好ましい。100μm以上1mm未満の範囲にあればさらに好ましい。
なお、本明細書において、「粒径」とは、JIS R1629に準拠した方法で測定したものを意味する。例えば、「粒径Xμm未満の粉体」とは、その粉体中の98%の粒子の粒径がXμm未満であるような粉体を意味する。また、例えば、「粉体Yμm以上Zμm未満の粉体」とは、「粒径Zμm未満の粉体」から「粒径Yμm未満の粉体」を除いて残った粉体を意味する。
シリコンの機械加工から得られるシリコン粒子2を含む廃スラリー又は前記廃スラリーから分離したシリコン回収固形分1を酸性の第1洗浄液で洗浄する。
この工程は第1洗浄装置7を用いて行うことができる。また、シリコン粒子2を分散させるために、第1洗浄液3を攪拌機5により攪拌することもできる。また、シリコン粒子2の分散を促進するために、超音波発信装置6により第1洗浄液3に超音波を照射しシリコン粒子2などを振動させることもできる。第1洗浄工程を行う時間は、特に限定されないが、例えば、30秒〜10時間である。
この工程は、シリコン粒子2を洗浄する目的で行うが、より具体的に説明すると、例えば、(1)シリコンの機械加工に使用したグリコール系溶媒や添加物などのクーラント由来の残留有機物を酸溶液に溶解させて除去すること、(2)ワイヤの摩耗片である金属屑を洗浄液に溶解させて除去すること、(3)中和による分散効果を高めるための前処理、等を目的として行われる。
第1洗浄工程後のシリコン粒子2を含む第1洗浄液を塩基で処理する。
この工程は中和処理装置10を用いて行うことができる。また、第1洗浄装置7を用いて行うこともできる。また、シリコン粒子2を分散させるために、塩基溶液9を加えた第1洗浄液3を攪拌機5により攪拌することもできる。また、シリコン粒子2の分散を促進するために、超音波発信装置6により塩基溶液8を加えた第1洗浄液3に超音波を照射しシリコン粒子2などを振動させることもできる。中和処理工程を行う時間は、特に限定されないが、例えば、30秒〜1時間である。
塩基で処理する方法は、特に限定されないが、例えば、塩基溶液9を第1洗浄液3に添加する方法や、塩基性物質を第1洗浄液3に直接添加する方法等が挙げられる。
この中和処理工程は、第1洗浄液3に含まれる酸性物質の全てを中和する必要は必ずしも無く、塩基溶液9などを余分に加えても構わない。
中和処理工程後の第1洗浄液3のpHの値は、特に限定されないが、例えば、5以上10未満の範囲(例えば、pHの値が、5、6、7、8、9、10のいずれか2つの間の範囲)にあることが好ましい。pHが5以上でシリコン粒子2の分散効果が高まるからである。また、pHが10以上になるとシリコンのゲル化が進行する場合がある。
中和処理工程後のシリコン粒子2を含む第1洗浄液3について固液分離処理及び水洗を行うことができる。具体的に説明すると、例えば、水洗・固液分離装置を用いて、第1洗浄液3と固形分との固液分離を行い、純水により洗浄を行うことができる。このことにより、洗浄後のシリコン粒子2を含む固形分を得ることができる。なお、この工程を省略して中和処理工程後のシリコン粒子2を含む第1洗浄液3から分離したシリコン粒子を含むスラリーを第2洗浄工程を行ってもよく、この工程の代わりに例えば乾燥機などを用いて第1洗浄液3を蒸発させてもよい。
水洗・固液分離装置は、例えば、遠心分離機、濾過装置又は蒸留装置などの固液分離装置と、純水供給装置を2つ以上直列に組み合わせて構成することができる。
中和処理工程において塩基で処理した第1洗浄液から分離したシリコン粒子2を含む固形分又はスラリーを酸性の第2洗浄液で洗浄する。この固形分又はスラリーは、中和処理工程後のものであればその後に他の工程を経たものであってもよい。
この工程は第2洗浄装置12を用いて行うことができる。また、シリコン粒子2を分散させるために、第2洗浄液11を攪拌機5により攪拌することもできる。また、シリコン粒子2の分散を促進するために、超音波発信装置6により第2洗浄液11に超音波を照射しシリコン粒子2などを振動させることもできる。第2洗浄工程を行う時間は、特に限定されないが、例えば、30秒〜10時間である。
第2洗浄液11に含まれるシリコン粒子2は、中和処理工程を経たものであるため、シリコン粒子凝集体13を構成するものは減少し、シリコン粒子2の分散が促進されている。その結果、シリコン粒子凝集体13の内部などに存在した第1洗浄工程では除去することができなかった金属含有物を効率的に洗浄除去することができる。従って、中和処理工程を行った後、第2洗浄工程を行うことで、不純物除去効果を劇的に高めることができる。
第2洗浄工程後のシリコン粒子2を含む第2洗浄液11について固液分離処理及び水洗を行うことができる。具体的に説明すると、例えば、水洗・固液分離装置を用いて、第2洗浄液11と固形分との固液分離を行い、この固形分を純水により洗浄を行うことができる。このことにより、洗浄後のシリコン粒子2を含む固形分を得ることができる。なお、この工程を省略して、例えば次の乾燥工程で第2洗浄液11を蒸発させてもよい。
水洗・固液分離装置は、例えば、遠心分離機、濾過装置又は蒸留装置などの固液分離装置と、純水供給装置を2つ以上直列に組み合わせて構成することができる。
第2洗浄工程後のシリコン粒子2を含む第2洗浄液又は第2水洗・固液分離工程後のシリコン粒子2を含む固形分を乾燥させることができる。乾燥させることにより、シリコン粒子2を含む固形分に残留している洗浄液や、沸点の低い有機溶媒等を除去することができる。
乾燥は、例えば、加熱すること、又は周囲雰囲気を減圧することなどによって行うことができる。
なお、乾燥工程を省略して、後述するシリコン精製方法において加熱乾燥してもよい。
また、この工程は、乾燥装置により行うことができ、乾燥装置は、シリコン粒子2を含む固形分を粉砕する機能を有する乾燥及び粉砕装置であってもよい。乾燥と粉砕は、同時に行ってもよく、乾燥を行ってから粉砕を行ってもよく、その逆であってもよい。固形分の粉砕は、粉砕羽根を用いた粉砕装置、ボールミル、ジェットミル、振動真空乾燥機などの公知の装置を用いて行うことができる。
また、シリコン粒子を含む固形分が粉末の場合、必要に応じてこの固形分の成形工程、この固形分の分級・分離工程を組み込むことができる。成形工程は、かさ比重を高めて運搬効率を上げるため、あるいは熱伝導性を上昇させ融解を容易にするための融解の前処理として行うことができ、シリコン含有粉体を加圧して板状、ブロック状、ペレット状などに造粒する装置であればどのような構成の装置でも用いることができる。分級・分離工程は、例えば慣性分級装置又は遠心分級装置を用いて粒径や密度などの物理的パラメータに基づいて粒子を分別する分級や、磁石を用いて鉄などの磁性不純物を除く方法などがある。
「2.」に説明した金属含有物除去方法により得られシリコン粒子2を含む固形分を融解し、その後凝固させることにより不純物を除去し、精製されたシリコン塊を得ることができる。不純物の除去方法は、シリコン粒子2を含む固形分を融解し、その後凝固させる公知の精製手法を用いることができ、例えば、融解中に生成するスラグを除去すること、減圧融解下においてリンを除去すること、一方向凝固により偏析不純物の除去することなどである。より具体的に説明すると例えば、シリコン粒子2を含む固形分を融解させたものを下方から温度降下させることで、シリコンの一方向凝固を行ってシリコン塊とし、さらに、得られたシリコン塊の上部(金属不純物の濃縮部)を切断して除去し、精製シリコンインゴットを得ることができる。
また、シリコン粒子2を含む固形分の融解中に、この固形分を融解することにより生成するスラグを分離、除去することができる。例えば、「2−3」に説明した中和処理工程において中和剤としてアルカリ金属の水酸化物を用いた場合、スラグ中にアルカリ金属が溶出する場合がある。このとき、スラグを除去することによりアルカリ金属を除去できる。
また、加熱装置は、公知の精製手法を用いてシリコンを精製する機能を備えていても良い。
このシリコン精製方法により得られる不純物が除去されたシリコン塊は、そのまま精製シリコンとして回収することができる。
次に本発明の効果実証実験について説明する。ここでは、金属含有物除去方法の各工程における不純物測定実験、粒径分布測定実験を行った。また、金属含有物除去方法を行ったシリコン粒子2を含む固形分を用いたシリコン精製実験、およびその精製されたシリコンを用い製造した太陽電池の特性評価実験を行った。図3は、不純物測定実験、粒径分布測定実験、およびシリコン精製実験におけるフローチャートである。また、比較例として、中和処理工程を行わない金属含有物除去方法も行い、各工程で不純物測定実験も行った。
4−1−1.シリコン回収固形分の取得
4−1−1−1.シリコンの機械加工
マルチワイヤソーおよび砥粒を含むスラリーを用いて多結晶シリコンの切断加工を行った。まず、プロピレングリコールに、15wt%程度の水と、砥粒などの分散を容易にするための分散剤、及びpH調整剤としての有機酸を1wt%程度加えクーラントを調整した。さらにこのクーラントに砥粒を重量比1:1で混合することによりスラリーを調製した。このスラリーとマルチワイヤソーを用いて多結晶シリコンの切断加工を行い、マルチワイヤソー装置から廃スラリーが排出された。
ここでは、砥粒として粒径10μm以上30μm以下のSiCを用いた。また、廃スラリー中にはシリコンからなる切断屑は、10wt%〜12wt%程度含まれていた。
固液分離装置を用い、マルチワイヤソー装置から排出された廃スラリーの固液分離を行い、シリコン回収固形分1を取得した。
図4は、固液分離工程におけるフローチャートである。
固液分離装置には、一次遠心分離機、二次遠心分離機及び蒸留装置を含むものを用いた。固液分離は、一次遠心分離、二次遠心分離及び蒸留を組み合わせて行った。以下、詳細に説明する。
(1)一次遠心分離工程
まず、廃スラリーを一次遠心分離機に投入し、遠心力が500G(比較的低い遠心力であり、一般的には「一次分離」と呼ぶ)になるように一次遠心分離機を動作させることにより砥粒が主成分の一次固形分(重比重液)とクーラント及び切屑(シリコンを主に含む)が主成分の一次液分(低比重液)に分離した。
(2)二次遠心分離工程
次に、一次液分(低比重液)を二次遠心分離機に投入し、遠心力が3500G(比較的高い遠心力であり、一般的には「二次分離」と呼ぶ)になるように二次遠心分離機を動作させることによりクーラントが主成分の二次液分及び、切屑と砥粒が主成分の二次固形分に分離した。
(3)蒸留工程
二次液分を蒸留装置に投入し、二次液分に対して、到達真空度10Torr、160℃の蒸留を行うことによりシリコン回収固形分1と精製クーラントを得た。このシリコン回収固形分1中には、シリコンが90wt%以上含まれ、それ以外は不純物であった。シリコン回収固形分1に含まれる不純物のうち、半導体の特性に強く影響する鉄、ホウ素、リンの含有量の測定をICP発光装置を用いて行った。その結果を表1に示す。
次に、粉砕装置を用いて、シリコン回収固形分1の粉砕を行った。粉砕条件として、粒径の平均値が200μmとなるように調整した。具体的には、ジェットミル装置を用いて、1時間に200kgのシリコン回収固形分1を送り、さらに150Lの空気を循環送風し、粉砕を行った。
粒度分布計を用いて、この粉砕工程後のシリコン回収固形分1の粉体の粒径分布の計測を行った。図5は、粉砕工程後、第1洗浄工程後および中和処理工程後のシリコン回収固形分1又はシリコン粒子2を含む固形分の粉体の粒径分布の計測結果を示したグラフである。図5を見ると、粉砕工程後のシリコン回収固形分1には、1μm以下から100μm以上の粒径のものが含まれていることが分かった。
次に、第1洗浄装置7において、塩酸10wt%水溶液からなる第1洗浄液3を用いて、洗浄漕4内でシリコン回収固形分1と第1洗浄液3を1:10の質量比で混合した。200rmpで回転する攪拌機5を用いて攪拌を行いながら、さらに高周波出力120Wの超音波洗浄装置6を用いて38kHzの高周波を送り、4時間の攪拌・超音波洗浄を行った。ここで、シリコン回収固形分1を分散させた第1洗浄液3の一部を抽出し、濾過、乾燥させてシリコン粒子2を含む固形分を取り出し不純物分析を行った。この固形分に含まれる不純物含有量を表2に示す。
次に、第1洗浄液3のpHが6〜8を示すまで、アンモニア水溶液を第1洗浄液3に加え、中和処理を行った。その後、攪拌機5を200rpmで0.1時間攪拌した。
また、粒度分布計を用いて、中和処理工程後のシリコン粒子2を含む固形分の粉体の粒径分布の計測を行った。その結果を図5に示す。図5を見ると、中和処理工程後のシリコン粒子2を含む固形分の大部分は、0.1μm以上1.0μm以下の粒径を有し、第1洗浄工程後のものと比べ粒径が小さくなっていることがわかった。この粒径が小さくなる理由は、例えば、中和処理工程を行うことによりシリコン粒子凝集体13に含まれるシリコン粒子2の分散が促進され、粒径が小さくなったと考えられる。
次に、中和処理工程後の第1洗浄液3を、水洗・固液分離装置にポンプで送り、第1洗浄液3の5倍の量の純水ですすいだ後、濾過で固液分離し、シリコン粒子2を含む固形分を得た。この固形分に含まれる不純物含有量を表4に示す。
次に、第2洗浄装置12において、硫酸25wt%水溶液からなる第2洗浄液11を用いて、洗浄漕4内でシリコン粒子2を含む固形分と第2洗浄液11を1:10の質量比で混合した。この第2洗浄液11を200rmpで回転する攪拌機5を用いて攪拌を行い、4時間の攪拌洗浄を行った。
次に、第2洗浄工程後の第2洗浄液11を、水洗・固液分離装置にポンプで送り、第2洗浄液11の5倍の量の純水ですすいだ後、濾過で固液分離し、シリコン粒子2を含む固形分を得た。この固形分に含まれる不純物含有量を表6に示す。
次に、乾燥装置において、シリコン粒子2を含む固形分の乾燥を行った。この乾燥は、この固形分を0.1気圧の空気中で60℃まで加熱することで1時間乾燥させた。
加熱装置を用いて、「4−1」に記載した実験で得られたシリコン粒子2を含む固形分の焼成、融解及び精製を行った。具体的には、この固形分をグラファイト坩堝に入れ、10Torrの真空下で抵抗加熱により600℃、1時間の焼成を行うことにより、固形分中にわずかに残った微量有機物を除去した。次に、この固形分をAr雰囲気下で高周波誘導加熱により1800℃まで加熱し、この固形分に含まれるシリコンを融解させた。その後、坩堝下方から温度降下させることで、シリコンの一方向凝固を行ってシリコン塊を得た。さらに、得られたシリコン塊の上部(金属不純物の濃縮部)を切断して除去し、精製シリコンインゴットを得た。
精製シリコンインゴットに含まれていた不純物含有量を、通常の太陽電池用シリコンインゴットに含まれる不純物含有量と併せて、表8に示す。
「4−2」に記載した本発明のシリコン精製実験により得られたシリコンインゴットをマルチワイヤソー装置で厚さ250μmに切断して精製シリコンウェハ(多結晶基板)を得た。この精製シリコンウェハを用いて太陽電池を作製し、光電変換特性を測定した。
本発明のシリコン精製実験により得られた精製シリコンウェハを用いた太陽電池と、市販の通常の太陽電池用シリコンウェハを用いた太陽電池の特性を表10に示す。表10は、通常の太陽電池用シリコンウェハを用いた太陽電池の特性を100%とし、精製シリコンウェハを用いた太陽電池の特性を相対比較したものである。
Claims (8)
- シリコンを機械加工して得られかつシリコン粒子を含む廃スラリー又は前記廃スラリーから分離したシリコン回収固形分を酸性の第1洗浄液で洗浄する第1洗浄工程と、
前記シリコン粒子を含む第1洗浄液を塩基で処理する中和処理工程と、
前記塩基で処理した第1洗浄液から分離した前記シリコン粒子を含む固形分又はスラリーを酸性の第2洗浄液で洗浄する第2洗浄工程とを備え、
前記機械加工から生じかつ第1洗浄工程で除去できなかった金属含有物を第2洗浄工程で効率的に除去することを特徴とする金属含有物除去方法。 - 第1洗浄液又は第2洗浄液は、硫酸、フッ酸、塩酸、過酸化水素、臭化水素酸、硝酸、ホウ酸、クエン酸、酢酸、蟻酸、シュウ酸および乳酸のうち少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
- 前記塩基は、アンモニア水溶液、水酸化マグネシウム水溶液及び水酸化第2銅水溶液のうち少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の方法。
- 前記中和処理工程後の第1洗浄液は、5以上10未満のpHを有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
- 第1洗浄工程、前記中和処理工程および第2洗浄工程のうち少なくとも1つは、超音波照射により前記シリコン粒子の分散を行う請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
- 第1洗浄工程の前に前記廃スラリーまたは前記シリコン回収固形分を粉砕する粉砕工程をさらに備えた請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
- 第2洗浄工程の後に、前記シリコン粒子を含む第2洗浄液から固形分を分離し、第2洗浄液から分離した固形分を水洗する工程をさらに備えた請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
- 請求項7に記載の方法により得られた前記シリコン粒子を含む固形分を融解し、その後凝固させることにより不純物を除去するシリコン精製方法。
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