JP5859753B2 - 磁性材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁性材料に関する。
従来より、高い磁気特性を有する磁石として、Nd−Fe−B系の組成を有する焼結磁石(以下、Nd−Fe−B焼結磁石と称する。)が知られている。このようなNd−Fe−B焼結磁石は、通常、耐熱性を向上させるために、希少資源であるDyなどの重希土類を含有させる必要がある。
一方、近年では、資源の枯渇の観点から、Dyなどの重希土類を配合する必要がない、Nd−Fe−B焼結磁石の代替磁石が求められている。
そのような磁石としては、窒素系磁石(例えば、Sm−Fe−N系の組成を有する磁石など)が提案されている。窒素系磁石はポテンシャルが高く、優れた磁気特性を有するが、熱的に不安定であるため、焼結すると窒素系磁石の成分の分解により、磁気特性が低下する場合がある。
そのため、例えば、SmFe172.6化合物粉末に、粉末に対する重量比で3%のエポキシ樹脂を混合し、8ton/cmの圧力を加えることによって圧縮成形した樹脂ボンド磁石が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平4−346203号公報
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂ボンド磁石はエポキシ樹脂を含むので、成形体自体を緻密に形成できるが、磁石成分の密度を向上することができず、そのため、十分な磁気特性を得ることができないという不具合がある。
本発明の目的は、簡易に製造でき、優れた磁気特性を備える磁性材料を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の磁性材料は、磁石粉末とアモルファス金属とを原料とする磁性材料であって、前記アモルファス金属が、希土類元素、鉄およびホウ素を含有し、前記アモルファス金属において、前記希土類元素の原子割合が、22〜44原子%の範囲であり、前記ホウ素の原子割合が、6〜28原子%の範囲であり、前記磁石粉末と前記アモルファス金属とを混合するとともに、前記アモルファス金属の結晶化温度(Tx)より30℃低い温度以上、または、アモルファス金属が金属ガラスである場合には、そのガラス遷移温度(Tg)以上の温度に加熱することにより得られることを特徴としている。
また、本発明の磁性材料では、前記アモルファス金属が、さらに、コバルトを含有し、前記アモルファス金属において、鉄に対するコバルトの原子比が、1.5以下であることが好適である。
また、本発明の磁性材料は、さらに、添加材を含有し、前記添加材の含有割合が、磁性材料100質量部に対して、10質量部未満であることが好適である。
また、本発明の磁性材料では、前記磁石粉末として、磁気異方性磁石粉末が用いられ、前記アモルファス金属との混合物が磁場プレス処理されていることが好適である。
本発明の磁性材料によれば、簡易な製造によって、高い磁気特性を確保することができる。
本発明の磁性材料は、磁石粉末とアモルファス金属とを原料としている。磁石粉末としては、例えば、窒素系磁石粉末(以下、窒素系磁石と称する)、窒素系ナノコンポジット磁石粉末(以下、窒素系ナノコンポジット磁石と称する)などが挙げられる。
本発明において、窒素系磁石としては、特に制限されないが、例えば、希土類−遷移金属−窒素系磁石、遷移金属−窒素系磁石などが挙げられる。
希土類−遷移金属−窒素系磁石としては、例えば、Sm−Fe−N系磁石、Sm−Fe−Mn−N系磁石などが挙げられ、好ましくは、Sm−Fe−N系磁石が挙げられる。
Sm−Fe−N系磁石は、Sm−Fe−N系の組成を有する磁石(以下、SmFeNと称する場合がある。)の粉末であって、例えば、公知の方法により得られたSmFeNを粉砕することにより、製造することができる。
より具体的には、例えば、まず、サマリウム酸化物および鉄粉から、還元拡散法によってSmFe合金の粉末を製造し、次いで、得られたSmFe合金の粉末を、例えば、Nガス、NHガス、NおよびH混合ガスなどの雰囲気中において、例えば、600℃以下の温度で加熱することにより、SmFeNを製造する。
その後、得られたSmFeNを、例えば、ジェットミル、ボールミルなどの公知の粉砕装置で微粉砕する。これにより、Sm−Fe−N系磁石を得ることができる。
また、Sm−Fe−N系磁石は、SmFeNを粉砕することなく製造することもできる。この方法では、例えば、まず、SmおよびFeを酸に溶解し、SmイオンおよびFeイオンを得た後、その溶解液に、例えば、SmイオンおよびFeイオンと反応して不溶性の塩を形成する陰イオン(例えば、水酸化物イオン、炭酸イオンなど)などを添加し、塩の沈殿物を得る。
その後、得られた沈殿物を焼成し、金属酸化物を製造した後、その金属酸化物を還元処理する。これにより、Sm−Fe−N系磁石を得ることができる。
なお、Sm−Fe−N系磁石は、上記の方法に限定されず、他の公知の方法により製造することができる。
このようなSm−Fe−N系磁石として、より具体的には、SmFe17(キュリー点:474℃)などが挙げられる。
また、遷移金属−窒素系磁石としては、例えば、Fe−N系磁石などが挙げられ、好ましくはFe16系磁石が挙げられる。
これら窒素系磁石は、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、窒素系磁石の分解温度は、例えば、600℃以上である。さらには、このような窒化物磁石は、加熱により、例えば、500℃から徐々に分解し、SmN、Feなどを生じる。
また、窒素系磁石(粉末)の体積平均粒子径は、例えば、1〜20μm、好ましくは、2〜4μmである。
窒素系磁石(粉末)の体積平均粒子径が上記範囲であれば、保磁力が良好となる。
また、このような窒素系磁石(粉末)としては、一般に市販されているものを用いることができ、例えば、Z16(Sm−Fe−N系磁石(SmFe17)、分解温度600℃、体積平均粒子径3μm、日亜化学工業社製)などを用いることができる。
本発明において、窒素系ナノコンポジット磁石としては、特に制限されないが、例えば、Sm−Fe−N系ナノコンポジット磁石などが挙げられる。
Sm−Fe−N系ナノコンポジット磁石は、例えば、Fe/Sm−Fe−N系の組織を有するナノコンポジット磁石の粉末であって、特に制限されないが、例えば、Sm−Fe−N系磁石に電流および圧力をかけることにより製造することができる。
より具体的には、この方法では、例えば、放電プラズマ焼結機などを用いて、公知の方法により得られたSm−Fe−N系磁石を所定圧力で加圧するとともに、所定時間パルス通電する。これにより、Sm−Fe−N系磁石を部分的に分解することができ、高磁性相としてのSm−Fe−N単結晶相中に、軟磁性相としてのFe結晶相を形成することができる。これによりSm−Fe−N系ナノコンポジット磁石を製造することができる。また、Sm−Fe−N系ナノコンポジット磁石は、必要により、さらに粉砕して用いることもできる。
なお、Sm−Fe−N系ナノコンポジット磁石は、上記の方法に限定されず、他の公知の方法により製造することができる。
このようなSm−Fe−N系ナノコンポジット磁石として、より具体的には、FeとSmFe17(キュリー点:474℃)とのナノコンポジット磁石などが挙げられる。
これら窒素系ナノコンポジット磁石は、単独使用または2種類以上併用することができる。
一般に、磁性材料の製造において窒素系ナノコンポジット磁石を焼成すると、その結晶が粗大化して、保磁力が低下する。
窒素系ナノコンポジット磁石の結晶が粗大化する温度は、例えば、600℃以上である。
また、窒素系ナノコンポジット磁石(粉末)の体積平均粒子径は、例えば、30〜300μm、好ましくは、50〜150μmである。
窒素系ナノコンポジット磁石(粉末)の体積平均粒子径が上記範囲であれば、磁紛充填率が向上し残留磁束密度が良好となる。
また、これら磁石粉末は、磁気等方性磁石粉末、磁気異方性磁石粉末に分類される。
磁気等方性磁石粉末は、個々の合金粉が多数の微細な結晶粒で構成されており、かつ、それぞれの結晶粒の磁化容易軸方向が無秩序になっているものと定義される。
また、磁気異方性磁石粉末は、個々の合金粉が1つの単結晶となっているか、もしくは、多数の微細な結晶粒で構成されており、かつ、それぞれの結晶粒の磁化容易軸方向が特定の方向に揃っているものであると定義される。
これら磁気等方性磁石粉末および磁気異方性磁石粉末は、公知の方法により製造することができる。
これら磁石粉末は、単独使用または2種類以上併用することができる。
磁石粉末としては、特に制限されないが、磁気等方性磁石粉末を用いれば、後述する磁場プレス処理することなく、優れた磁気特性を確保することができ、また、磁気異方性磁石粉末を用いる場合には、得られる磁性材料の磁気特性を向上させる観点から、好ましくは、後述するように磁場プレス処理する。
本発明において、アモルファス金属は、結晶化温度(Tx)未満の温度で変形開始(軟化)するアモルファス合金であって、優れた磁気特性を備えている。このようなアモルファス金属は、加熱することにより、変形開始(軟化)し、その後、結晶化する。
本発明において、アモルファス金属は、希土類元素、Fe(鉄)およびB(ホウ素)を含有する。
このようなアモルファス金属において、希土類元素は、その焼成において、結晶磁気異方性を生じさせ、その磁気特性(例えば、保磁力など)を向上させるために含有される。
希土類元素としては、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)などの軽希土類元素、例えば、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)などの重希土類元素などが挙げられる。
これら希土類元素は、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、このようなアモルファス金属は、必ずしも重希土類元素を含まなくとも、十分大きな保磁力を発現することができる。
希土類元素として、好ましくは、軽希土類元素、より好ましくは、Nd(ネオジム)が挙げられる。
希土類元素としてNd(ネオジム)を用いれば、アモルファス金属を用いて得られる磁性材料の保磁力、残留磁化を向上することができる。
また、アモルファス金属において、希土類元素の原子割合(併用される場合には、それらの総量)は、22〜44原子%、好ましくは、23〜40原子%、より好ましくは、24〜37原子%の範囲である。
希土類元素の原子割合が上記下限未満である場合には、アモルファス金属の結晶化温度(Tx)が高くなる場合があるため、後述するように、磁石粉末およびアモルファス金属を熱処理して磁性材料を製造する場合において、熱処理のエネルギーコストが増加し、さらに、作業性および生産性が低下するという不具合がある。
また、希土類元素の原子割合が上記下限未満である場合には、磁性材料の保磁力が低下するという不具合がある。
一方、希土類元素の原子割合が上記上限を超過する場合には、磁性材料の残留磁化が低下するという不具合がある。
また、希土類元素の原子割合が上記上限を超過すると、コスト面に劣り、また、酸化しやすくなるため、生産性および安全性にも劣るという不具合がある。
これに対し、希土類元素の原子割合が上記範囲であれば、アモルファス金属を用いて得られる磁性材料の残留磁化および保磁力を向上することができ、さらには、アモルファス金属の結晶化温度(Tx)を低く抑えることができるため、後述するように、高温で熱処理することなく、低コスト、かつ、作業性および生産性よく磁性材料を製造することができる。
アモルファス金属において、Fe(鉄)は、磁性に寄与する元素であって、磁性材料の磁気特性(例えば、残留磁束密度など)を向上させるために含有される。
アモルファス金属において、Fe(鉄)の原子割合は、例えば、15〜65原子%、好ましくは、20〜60原子%、より好ましくは、25〜55原子%の範囲である。
Fe(鉄)の原子割合が上記下限未満である場合には、後述する熱処理(結晶化)後の磁性材料の残留磁束密度が低下する場合がある。
また、Fe(鉄)の原子割合が上記上限を超過する場合には、後述する熱処理(結晶化)後の磁性材料の保磁力が低下する場合がある。
アモルファス金属において、B(ホウ素)は、非晶質相を形成し、アモルファス合金とするために含有される。
アモルファス金属において、B(ホウ素)の原子割合は、6〜28原子%、好ましくは、12〜28原子%、より好ましくは、15〜25原子%の範囲である。
B(ホウ素)の原子割合が上記下限未満である場合には、後述する急冷時において、結晶相が生成する場合があり、アモルファス金属を原料として、放電プラズマ焼結法やホットプレス法等を用いて成形体を製造する場合において、成形性および加工性が低下する場合がある。
また、B(ホウ素)の原子割合が上記上限を超過する場合には後述する熱処理(結晶化)後の磁性材料の残留磁束密度が低下する場合がある。
また、アモルファス金属は、好ましくは、Co(コバルト)を含有している。
アモルファス金属において、Co(コバルト)は、アモルファス金属を用いて得られる磁性材料の磁気特性を向上させ、また、酸化を防止することにより取扱性の向上を図るために含有される。
さらに、アモルファス金属が後述するように金属ガラスである場合には、Co(コバルト)は、その金属ガラスを、後述する軟化状態(ガラス遷移状態)において安定化させ、その成形性を向上するために含有される。
アモルファス金属において、Co(コバルト)の原子割合は、例えば、1〜50原子%、好ましくは、2〜45原子%、より好ましくは、4〜40原子%の範囲である。
Co(コバルト)の原子割合が上記下限未満である場合には、取扱性、成形性および加工性が低下する場合がある。
とりわけ、アモルファス金属が後述するように金属ガラスである場合において、その過冷却領域(ガラス遷移温度以上、かつ、結晶化温度未満の領域。ΔTx(=Tx−Tg))を十分に確保することができず、成形性および加工性が低下する場合がある。
また、Co(コバルト)の原子割合が上記上限を超過する場合には、アモルファス金属を用いて得られる磁性材料の残留磁束密度が低下する場合がある。
また、Co(コバルト)の原子割合として、好ましくは、Fe(鉄)に対するCo(コバルト)の原子比が、1.5以下、好ましくは、1.44以下、より好ましくは0.6以下であることが挙げられる。
Fe(鉄)に対するCo(コバルト)の原子比が、1.5以下であれば取扱性を向上できる。一方、1.5を超過すると、コスト面に劣るという不具合がある。
また、アモルファス金属は、添加元素として、さらに、その他の元素、例えば、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Mn(マンガン)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Au(金)などの遷移元素、例えば、C(炭素)、P(リン)、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)、Ca(カルシウム)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)、Pb(鉛)、Zn(亜鉛)などの典型元素など、種々の元素を含むことができる。
これら添加元素は、単独使用または2種類以上併用することができる。
添加元素として、好ましくは、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)が挙げられる。
添加元素として、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Si(ケイ素)およびAl(アルミニウム)からなる群から選択される少なくとも1種を含有すれば、磁性材料の残留磁束密度、保磁力などを向上させることができる。
このようなアモルファス金属において、添加元素の原子割合は、例えば、1〜15原子%、好ましくは、1〜10原子%。より好ましくは、1〜5原子%である。
また、添加元素として、より好ましくは、Al(アルミニウム)が挙げられる。
アモルファス金属が、添加元素として、Al(アルミニウム)を含有すれば、後述するアモルファス金属の結晶化温度(Tx)を低く抑えることができるため、後述するように、高温で熱処理することなく、すなわち、低コスト、かつ、作業性および生産性よく磁性材料を製造することができる。
また、アモルファス金属が、後述する金属ガラスである場合に、その金属ガラスの軟化開始温度(ガラス遷移温度(Tg))を低く抑えることができるため、成形性をより向上することができる。
アモルファス金属がAl(アルミニウム)を含有する場合において、Al(アルミニウム)の原子割合は、例えば、15原子%未満であり、好ましくは、5原子%未満、より好ましくは、3.5原子%以下、さらに好ましくは、3原子%以下である。
Al(アルミニウム)の原子割合が5原子%以上である場合には、アモルファス金属の結晶化温度(Tx)が高くなり、磁性材料の製造におけるコストを増加させる場合や、作業性および生産性を低下させる場合がある。
そして、このようなアモルファス金属において、希土類元素およびFe(鉄)(さらに必要により含有されるCo(コバルト))の原子割合の総量は、例えば、65〜94原子%、好ましくは、70〜90原子%、より好ましくは、72〜85原子%である。
希土類元素およびFe(鉄)(さらに必要により含有されるCo(コバルト))の原子割合の総量が上記範囲であれば、アモルファス金属の成形性および加工性を向上することができ、さらには、後述する熱処理(結晶化)後の磁性材料の残留磁束密度および保磁力を良好とすることができる。
また、アモルファス金属において、希土類元素およびFe(鉄)(さらに必要により含有されるCo(コバルト))を除く元素(必須成分としてB(ホウ素)を含み、任意成分として添加元素(例えば、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)などを含む。)の原子割合の総量は、例えば、6原子%以上、好ましくは、10〜30原子%、より好ましくは、15〜28原子%、とりわけ好ましくは、15〜25原子%の範囲である。
希土類元素、Fe(鉄)およびCo(コバルト)を除く元素の原子割合の総量が上記範囲であれば、アモルファス金属の成形性および加工性を向上することができ、さらには、後述する熱処理(結晶化)後の磁性材料の残留磁束密度および保磁力を良好とすることができる。
このようなアモルファス金属の一態様として、例えば、下記式(1)で示されるアモルファス金属が挙げられる。
83−xFex/2Cox/2Al17−y (1)
(式中、Rは、希土類元素を示す。また、0<x<83であり、また、0<y≦17である。)
上記式(1)において、Rは、上記した希土類元素を示す(以下同様。)。
また、xの範囲は、0<x<83、好ましくは、28<x<58、より好ましくは、33<x<53である。
xの値が上記範囲であれば、アモルファス金属の成形性および加工性を向上することができ、さらには、後述する熱処理(結晶化)後の磁性材料の残留磁束密度および保磁力を良好とすることができる。
また、yの範囲は、0<y≦17、好ましくは、12<y<17、より好ましくは、13.5<y<17である。
yの値が上記範囲であれば、アモルファス金属の成形性および加工性を向上することができ、さらには、後述する熱処理(結晶化)後の磁性材料の残留磁束密度および保磁力を良好とすることができる。
そして、このようなアモルファス金属は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
より具体的には、例えば、まず、原料成分として、上記各元素の単体の粉末、塊状物など(必要により、一部合金化していてもよい)を用意し、それらを、上記原子割合となるように混合する。
次いで、得られた原料成分の混合物を、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気において溶解させる。
原料成分の溶解方法としては、上記各元素を溶解できる方法であれば特に制限されないが、例えば、アーク溶解などが挙げられる。
次いで、例えば、放冷し、上記各元素を上記原子割合で含有する塊状合金(鋳塊、インゴット)を得る。その後、得られた塊状合金を公知の方法により粉砕し、合金粒状物(粒子径:0.5〜20mm)を得る。
その後、この方法では、得られた合金粒状物を溶解させ、合金溶湯を得る。
合金粒状物の溶解方法としては、上記合金粒状物を溶解できる方法であれば特に制限されないが、例えば、高周波誘導加熱などが挙げられる。
次いで、この方法では、得られた合金溶湯を、公知の方法、例えば、単ロール法、ガスアトマイズ法などにより急冷し、アモルファス金属を得る。
単ロール法では、例えば、回転する冷却ロールの外周表面上に合金溶湯を流下し、その合金溶湯と冷却ロールとを所定時間接触させることにより、合金溶湯を急冷する。
合金溶湯の急冷速度(冷却速度)は、例えば、10−2〜10℃/sである。
また、合金溶湯の急冷速度(冷却速度)は、例えば、冷却ロールの回転速度を調節することなどにより制御される。このような場合において、冷却ロールの回転速度は、例えば、1〜60m/s、好ましくは、20〜50m/s、より好ましくは、30〜40m/sである。
このように合金溶湯を急冷することにより、冷却ロールの外周表面上において、例えば、帯状(薄膜状、厚膜状を含む)のアモルファス金属を得ることができる。
得られるアモルファス金属の厚みは、例えば、1〜500μm、好ましくは、5〜300μm、より好ましくは、10〜100μmである。
また、ガスアトマイズ法では、上記の合金溶湯に、例えば、高圧の噴射ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスなど)を噴き付け、合金溶湯を急冷するとともに微粉化する。
このように合金溶湯を急冷することにより、粉末状のアモルファス金属を得ることができる。
得られるアモルファス金属の体積平均粒子径は、例えば、1〜200μm、好ましくは、5〜50μmである。
なお、合金溶湯の急冷方法としては、上記の単ロール法、ガスアトマイズ法に限定されず、公知の方法を採用することができる。好ましくは、単ロール法が採用される。
また、アモルファス金属の結晶化温度(Tx)(結晶化を開始する温度)は、例えば、600℃以下、好ましくは、550℃以下、より好ましくは、500℃以下である。
アモルファス金属の結晶化温度(Tx)は、DSC(示差走査熱量測定)によって測定することができ、本発明においては、40℃/minの昇温速度で測定された値であると定義される。
なお、結晶化温度(Tx)が複数確認される場合には、それら結晶化温度(Tx)のうち最も低い結晶化温度(Tx)を、アモルファス金属の結晶化温度(Tx)とする。
また、このようにして得られるアモルファス金属は、金属ガラスを含んでいる。
金属ガラスは、結晶化温度(Tx)未満のガラス遷移温度(Tg)を有するアモルファス合金であり、高い成形性を有している。
そして、このようにして得られるアモルファス金属が、金属ガラスである場合には、その軟化開始温度(ガラス遷移温度(Tg))は、例えば、600℃以下、好ましくは、500℃以下、より好ましくは、450℃以下である。
また、アモルファス金属は、金属ガラスでなくとも、加熱により軟化する場合があり、そのような場合における軟化開始温度は、例えば、600℃以下、好ましくは、500℃以下、より好ましくは、450℃以下である。
アモルファス金属(金属ガラスを含む。)の軟化開始温度は、例えば、DSC(示差走査熱量測定)、または、放電プラズマ焼結機のプレス変位測定などにより、求めることができる。
これらアモルファス金属は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、本発明の磁性材料は、さらに、添加材を含有することができる。
添加材としては、例えば、融点が600℃以下の遷移元素および典型元素、および、融点が600℃以下に調整された化合物が挙げられる。具体的には、例えば、Zn、Sn、Bi、Cd、In、Li、P、Na、S、Teなどの遷移元素および典型元素、例えば、Ag−Al合金、Ag−Sn合金、Ag−Zn合金、Al−Au合金、Al−Cu合金、Al−Si合金、Al−Sn合金、Al−Zn合金、Au−Mg合金、Au−Sn合金、Cu−In合金、Cu−Mg合金、Cu−Sn合金、Cu−Zn合金Cu−希土類合金、Co−Zn合金、Fe−Zn合金、Mg−Zn合金、Ni−Zn合金、Sn−Zn合金などの2元化合物、さらに、融点が600℃以下の多元化合物が挙げられる。
これら添加材は、単独使用または2種類以上併用することができる。
添加材として、好ましくは、Zn(亜鉛)が挙げられる。
添加材の体積平均粒子径は、例えば、5nm〜100μm、好ましくは、20nm〜10μmである。
磁性材料において、添加材の含有割合は、磁性材料100質量部に対して、添加材が、例えば、10質量部未満、好ましくは、5質量部以下である。
本発明において、磁性材料を製造するには、まず、磁石粉末とアモルファス金属と(必要により配合される添加材と)を混合する。
磁石粉末とアモルファス金属との配合割合は、磁石粉末とアモルファス金属との総量100質量部に対して、磁石粉末が、例えば、60〜99質量部、好ましくは、80〜95質量部であり、アモルファス金属が、例えば、1〜40質量部、好ましくは、5〜20質量部である。
また、添加材が配合される場合には、その配合割合は、磁性材料中の添加材の含有割合が上記範囲となるように、調整される。
混合は、磁石粉末とアモルファス金属と(必要により配合される添加材と)を十分に混合できれば、特に制限されず、例えば、ボールミルなどの公知の混合装置を用いることができる。
この方法では、乾式法、湿式法のいずれも採用することができる。例えば、乾式法では、磁石粉末とアモルファス金属と(必要により配合される添加材と)を、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下において、混合する。また、湿式法では、磁石粉末とアモルファス金属と(必要により配合される添加材と)を、溶媒(例えば、シクロヘキサン、アセトン、エタノールなど)中において、混合する。
混合条件としては、特に制限されないが、ボールミル(容量0.3L)を使用する場合には、回転数が、例えば、100〜300rpm、好ましくは、150〜250rpmであって、混合時間が、例えば、5〜60分間、好ましくは、5〜45分間である。
次いで、この方法では、磁石粉末とアモルファス金属と(必要により配合される添加材と)の混合物を、例えば、加圧しながら、アモルファス金属の結晶化温度(Tx)より30℃低い温度以上に加熱する。
また、アモルファス金属が金属ガラスである場合には、磁石粉末とアモルファス金属と(必要により配合される添加材と)の混合物を、例えば、加圧しながら、ガラス遷移温度(Tg)以上の温度に加熱することもできる。
より具体的には、この方法では、例えば、ホットプレス装置、放電プラズマ焼結機などを用いて、磁石粉末とアモルファス金属と(必要により配合される添加材と)の混合物を、例えば、20〜1500MPa、好ましくは、200〜1000MPaの圧力条件下において、アモルファス金属の結晶化温度(Tx)より30℃低い温度以上、または、アモルファス金属が金属ガラスである場合にはそのガラス遷移温度(Tg)以上、好ましくは、アモルファス金属の結晶化温度(Tx)以上、具体的には、例えば、400〜600℃、好ましくは、410〜550℃に加熱する。
このような加圧加熱成形により、アモルファス金属が変形を生じ、これにより、高密度な磁性材料を得ることができる。さらに、アモルファス金属が硬磁性相となるため、磁石粉末、および、アモルファス金属から生成した硬磁性相を含む磁性材料を、得ることができる。
加熱は、特に制限されないが、例えば、常温から一定の昇温速度で加熱することができ、そのような場合には、昇温速度は、例えば、10〜200℃/分、好ましくは、20〜100℃/分である。
また、磁性材料の製造においては、必要により、イメージ炉などを用いて、上記の加圧加熱成形の後、磁石粉末と、アモルファス金属またはアモルファス金属から生成した硬磁性相との成形体を、高温条件下において所定時間保持することもできる。
そのような場合には、上記の加熱処理の後、例えば、400〜600℃、好ましくは、410〜550℃において、例えば、1〜120分間、好ましくは、10〜60分間保持する。
これにより、アモルファス金属の結晶化熱処理工程を、バッジ式で行えるため、磁性材料の生産性を向上することができる。
また、磁性材料の製造においては、加圧加熱成形の昇温後に、必要により、加圧加熱状態で保持することもできる。
さらに、磁性材料の製造においては、例えば、上記の加圧加熱成形、および、その後の熱処理を磁場中で行うことができる。
また、上記の加圧加熱成形の前処理として、磁石粉末とアモルファス金属と(必要により添加材と)の混合物を、磁場中で加圧(磁場プレス処理)することもできる。
とりわけ、磁石粉末として、磁気異方性磁石粉末が用いられる場合には、好ましくは、磁石粉末とアモルファス金属との混合物を磁場プレス処理する。
磁場中で加圧すると、磁石粉末を所定方向に配向することができるため、得られる磁性材料の磁気特性を、より一層向上することができる。
磁場プレス処理における条件としては、例えば、印加磁場が、10kOe以上、好ましくは、20kOe以上であり、圧力条件が、例えば、30〜2000MPa、好ましくは、100〜1000MPaである。
そして、このようにして得られる磁性材料では、磁石粉末が焼成されることにより生じる材料劣化、より具体的には、窒素系磁石の分解によるSmN、Feなどの生成や、窒素系ナノコンポジット磁石の結晶の粗大化などが抑制されるとともに、磁石粉末の隙間(空隙)に、磁気特性に優れるアモルファス金属が充填されている。
そのため、このような磁性材料によれば、簡易な製造によって、高い磁気特性を確保することができる。
従って、この磁性材料は、樹脂(例えば、エポキシ樹脂など)を含有する樹脂ボンド磁石に比べて、その磁気特性を向上することができる。
また、このような磁性材料では、アモルファス金属における希土類元素の原子割合が、22〜44原子%の範囲であり、ホウ素の原子割合が、6〜28原子%の範囲であるため、高温で熱処理することなく、すなわち、低コスト、かつ、作業性および生産性よく磁性材料を製造することができる。
つまり、アモルファス金属として、上記組成を除くアモルファス金属(例えば、Nd60Fe30Al10など)を用いることも検討されるが、このようなアモルファス金属は、磁気特性が十分ではなく、そのため、得られる磁性材料の磁気特性に劣る場合がある。
一方、本発明の磁性材料は、上記のアモルファス金属と磁石粉末とを混合するとともに、そのアモルファス金属の変形開始温度以上の温度に加熱することにより得られるため、優れた磁気特性を備えることができる。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
製造例1〜8(アモルファス金属の製造)
Nd(ネオジム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Al(アルミニウム)およびB(ホウ素)の単体粉末または塊状物を、表1に示す組成となる配合割合で処方し、アーク溶解炉により、4kPa(30Torr)のAr(アルゴン)雰囲気下で溶解させ、表1に示す組成比の合金(インゴット)を作製した。
次いで、得られたインゴットを粉砕し、合金粒状物(粒子径:0.5〜10mm)を得た。
その後、得られた合金粒状物を、Ar雰囲気下において、高周波誘導加熱にて溶解し、合金溶湯とした後、得られた合金溶湯を、Ar雰囲気下において、単ロール装置にて周速度40m/sの冷却ロールの外周表面上に流下し、急冷した。これにより、アモルファス金属を得た。
その後、得られたアモルファス金属を遊星ボールミル(伊藤製作所製 LP−1)により体積平均粒子径1.5μmに微粉砕した。
製造例9(アモルファス金属の製造)の製造
ガスアトマイズ法(噴射ガス:Ar)によりNd60Fe30Al10を製造した後、ボールミル(伊藤製作所製 LP−1)により微粉砕した。これにより、体積平均粒子径1μmの、Nd60Fe30Al10の粉末を得た。
[評価]
DSC(示差走査熱量測定:SII社製、DSC6300)を用いて、各製造例において得られたアモルファス金属の結晶化温度(Tx)、および、アモルファス金属が金属ガラスである場合には、そのガラス遷移温度(Tg)を測定した。
具体的には、アモルファス金属試料10mgをアルミナパンに投入し、Ar雰囲気中、昇温速度40℃/minで測定した。
なお、結晶化反応(Tx)が複数確認された場合には、その温度の低い方を結晶化温度(Tx)として測定した。
また、結晶化温度(Tx)、および、ガラス遷移温度(Tg)が確認される場合には、過冷却領域ΔTx(=Tx−Tg)を算出した。
その結果を表1に示す。
Figure 0005859753
実施例1
製造例1において得られたアモルファス金属の粉末と、Z16(磁気異方性磁石粉末、Sm−Fe−N系磁石(SmFe17)、分解温度600℃、体積平均粒子径3μm、日亜化学工業社製)とを、それらの総量に対してアモルファス金属が10質量%となるように配合し、シクロヘキサン中において、アトライター(プライミクス製フィルミックス40−40型)によって、周速40m/sで5分間混合した。
次いで、窒素雰囲気中で乾燥させ、アモルファス金属の粉末と磁石粉末との混合粉末を得た。
その後、混合粉末1.0gを採取して、非磁性金型(ホッカイMIC製、成形サイズ:8mm×6mm)に充填し、磁場プレス機(玉川製作所製TM−MPH8525−10T型)によって、磁界25kOe、プレス圧800MPaで磁場プレス処理した。
引続き、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製SPS−515S)によって、真空中で800MPaに加圧するとともに、昇温速度40℃/minで440℃まで加熱(昇温)し、30分保持した後、放冷した。これにより、磁性材料を得た。
実施例2〜22および比較例1〜
磁石粉末Z16、または、SP14(磁気等方性磁石粉末、ボンド磁石SP−14(ダイドー電子製)の製造に用いられる等方性Sm−Fe−N系磁石)と、各製造例で得られたアモルファス金属とを、表2に示す割合で配合し、また、表2に示す処理条件で放電プラズマ焼結処理した以外は、実施例1と同様にして、磁性材料を得た。なお、実施例1および比較例以外では、磁場プレス処理しなかった。
Figure 0005859753
その後、混合粉末0.3gを採取して、超硬製金型(成形サイズ:5mm×5mm)に充填し、放電プラズマ焼結機(SPSシンテックス社製SPS−515S)によって、真空中で表3に示す圧力で、表3に示す温度まで加熱(昇温)し、表3に示す時間、その温度で保持した後、放冷した。これにより、磁性材料を得た。
Figure 0005859753
評価
各実施例および比較例により得られた各磁性材料について、VSM(玉川製作所製)にて減磁曲線を測定し、それらの磁気特性を評価した。その結果を表4および5に示す。
Figure 0005859753
Figure 0005859753
なお、表中において、Brは残留磁束密度を、bHcは保磁力(B保磁力)を、iHcは保磁力(I保磁力)を、(BH)maxは最大エネルギー積を、それぞれ示す。
また、これらは、いずれもその値が高いほど磁気特性が良好であることを示す。

Claims (4)

  1. 磁石粉末とアモルファス金属とを原料とする磁性材料の製造方法であって、
    前記磁石粉末が、Sm−Fe−N系磁石であり、
    前記アモルファス金属が、希土類元素、鉄およびホウ素を含有し、
    前記アモルファス金属において、
    前記希土類元素の原子割合が、22〜44原子%の範囲であり、
    前記ホウ素の原子割合が、6〜28原子%の範囲であり、
    前記磁石粉末と前記アモルファス金属とを混合する工程と、
    前記アモルファス金属の結晶化温度(Tx)より30℃低い温度以上、または、アモルファス金属が金属ガラスである場合には、そのガラス遷移温度(Tg)以上の温度に加熱する工程と
    を備えることを特徴とする、磁性材料の製造方法。
  2. 前記アモルファス金属が、さらに、コバルトを含有し、
    前記アモルファス金属において、鉄に対するコバルトの原子比が、1.5以下である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の磁性材料の製造方法。
  3. さらに、添加材を含有し、
    前記添加材の含有割合が、磁性材料100質量部に対して、10質量部未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の磁性材料の製造方法。
  4. 前記磁石粉末として、磁気異方性磁石粉末が用いられ、前記アモルファス金属との混合物が磁場プレス処理されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
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