JP5858198B2 - めっき鋼材、塗装鋼材及びめっき鋼材の製造方法 - Google Patents

めっき鋼材、塗装鋼材及びめっき鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、めっき鋼材、塗装鋼材及びめっき鋼材の製造方法に関する。
Znは、大気環境での耐食性が良好であり、特に、鋼材の腐食を有効に抑制することから、鋼材に対するめっきとして広く用いられている。特に、屋内家電の用途では、電気亜鉛めっき鋼板が使用されている。しかし、かかる電気亜鉛めっき鋼板の表面外観はやや暗い灰色であり、意匠性に乏しい。特に、屋内の白物家電(例えば、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)では、意匠性の観点から、素材鋼板にも白い色調が望まれている。
例えば以下の特許文献1に開示されているように、低コスト化を目的に、電気亜鉛めっきに白色塗料を薄膜厚で塗布する試みがなされている。しかしながら、曲げ加工や張り出し加工等で塗膜が更に薄膜化する場合は、塗膜による下地の隠蔽が必ずしも十分ではない。従って、現行の電気亜鉛めっき鋼板のように色調が暗いと、塗膜を厚くしたり、塗料中の顔料を増やしたりする等の必要が生じる。
また、以下の特許文献2〜4及び非特許文献1に開示されているように、電気亜鉛めっきそのものを白くするという開発も、これまでも行われてきた。しかしながら、これらの方法により得られる鋼板の色調は、十分満足できるものではない。
一方、以下の特許文献5では、可溶性第一スズ塩、可溶性亜鉛塩、錯化剤、光沢剤及び光沢助剤からなり、pH=4〜9であるめっき浴を用いて、光沢スズ−亜鉛合金めっきを得る技術が開示されている。しかしながら、かかる技術では、めっき浴中に錯化剤、光沢剤及び光沢助剤が添加されているため、めっき浴の管理が難しく、鋼材プロセスのような高速かつ大量生産が求められるプロセスには適用できない。
また、以下の非特許文献2では、光沢スズめっきが紹介されている。しかしながら、かかる技術では、電流密度の上限がせいぜい2A/dmであって生産性が低く、また、Sn単独では犠牲防食能を示さない。
また、以下の特許文献6では、高光沢意匠性複層めっき鋼板及びその製造方法として、最表層のSnめっきと下地のZnめっきという組み合わせで、下地めっきは溶融めっきとし、最表層のめっきは蒸着めっきとする技術が開示されている。しかしながら、蒸着めっきは生産性が低く、下地の表面形態の影響をより敏感に受けやすいという課題がある。
更に、以下の特許文献7では、缶外面の耐錆性と外観に優れた容器用表面処理鋼板として、缶外面側に相当する面の下層にZnめっきを施し、Znめっきの上層にSnめっきを施す技術が開示されている。しかしながら、かかる技術では、めっき層の合金化処理は行われておらず、十分な耐食性(特に、鋼板端部での耐食性)を得ることができない。また、同文献の実施例では、缶内面側にPET等の有機フィルムを付着させているが、かかる有機フィルムを付着させる際にめっき層のスズが溶融してしまうと、有機フィルムが付着しなくなってしまう。そのため、同文献では、有機フィルム付着時の加熱温度を、スズの融点(230℃程度)以下の安全な操業が可能な温度に設定している。しかしながら、スズの溶融が起こらないような加熱温度では、めっき層を合金化することはできない。
特開2012−131223号公報 特許第4823564号公報 特許第3366321号公報 特許第3364878号公報 特許第4461295号公報 特開平8−60326号公報 特開平4−48095号公報
鉄と鋼 Vol.86(2000)No.9 584−590 表面技術 40(2),306−310,1989 社団法人 表面技術協会
上記のような事情に鑑み、本発明は、意匠性の観点から環境調和性の高い色調を有するとともに、犠牲防食能を有しており、良好な外観と犠牲防食能とを両立させることが可能なめっき鋼材及び塗装鋼材を提供することを課題とする。
また、本発明は、比較的簡便なプロセスによって良好な外観と犠牲防食能を併せ持つめっき鋼材を製造することが可能な、めっき鋼材の製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは、電気Snめっきの白色度と、Znめっきの犠牲防錆能に着目して、電気めっきプロセスによって、白色で耐食性が良好なめっきを形成することを検討した。その結果、鋼材に下層としてZnめっきを形成し、Znめっきの上層に中性の電気めっき浴からSnを電解析出させることに想到した。かかる処理により、外観が白色であるめっき層を得ることができ、かつ、適正な熱処理によって耐食性を向上させることが可能であるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)鋼材と、前記鋼材の表面に位置し、少なくともSn及びZnを含むめっき層と、を備え、前記めっき層は、前記鋼材上に位置するZnめっき層と、前記Znめっき層上に位置するSn−Znめっき層と、からなり、前記めっき層のSnの付着量は、Sn量換算で、0.17g/m 以上0.4g/m 以下であり、前記めっき層のZnの付着量は、Zn量換算で、10g/m以上60g/m以下であり、前記Snの付着量と前記Znの付着量の比は、Sn:Zn=3:97〜0.5:99.5であり、前記Sn−Znめっき層におけるZn濃度は、4質量%以上50質量%以下である、めっき鋼材。
(2)前記めっき層の表面は、光源D65光、10°視野の分光測色において、SCI方式で、L88以上、−1.0≦a≦0.5、0≦b≦3.0を示す、(1)に記載のめっき鋼材。
(3)前記Sn−Znめっき層は、SnとZnとの共晶を少なくとも含む組織からなる、(1)又は(2)に記載のめっき鋼材。
)前記めっき層のSnの付着量は、Sn量換算で、0.26g/m以上0.3g/m以下である、(1)〜()の何れか1項に記載のめっき鋼材。
)前記めっき層のZnの付着量は、Zn量換算で、15g/m以上40g/m以下である、(1)〜()の何れか1項に記載のめっき鋼材。
)前記めっき層のZnの付着量は、Zn量換算で、20g/m以上30g/m以下である、(1)〜()の何れか1項に記載のめっき鋼材。
)前記Snの付着量と前記Znの付着量の比は、Sn:Zn=1.5:98.5〜1:99である、(1)〜()の何れか1項に記載のめっき鋼材。
)前記Sn−Znめっき層におけるZn濃度は、8質量%以上35質量%以下である、(1)〜()の何れか1項に記載のめっき鋼材。
)前記Sn−Znめっき層におけるZn濃度は、10質量%以上25質量%以下である、(1)〜()の何れか1項に記載のめっき鋼材。
10)前記Znめっき層は、Zn−Fe相を更に含む、(1)〜()の何れか1項に記載のめっき鋼材。
11)前記めっき層は、Sn−Zn−Fe相を含む、(1)〜(10)の何れか1項に記載のめっき鋼材。
12)液温25℃で濃度5質量%のNaCl水溶液中における前記めっき層の表面の自然浸漬電位が、Feよりも200mV以上卑である、(1)〜(11)の何れか1項に記載のめっき鋼材。
13)前記めっき層の表面粗度が、算術平均粗さRaで、0.2μm超過3.0μm以下である、(1)〜(12)の何れか1項に記載のめっき鋼材。
14)60°鏡面光沢法Gs60°による前記めっき層の表面光沢度が、50以上200未満である、(1)〜(13)の何れか1項に記載のめっき鋼材。
15)(1)〜(14)の何れか1項に記載のめっき鋼材と、前記めっき鋼材の表面に形成された白色塗膜と、を備える、塗装鋼材。
16)前記白色塗膜は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛から選ばれる白系顔料を含む、(15)に記載の塗装鋼材。
17)前記白色塗膜は、二酸化チタンと、カルシウム修飾シリカと、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂と、を少なくとも含有し、前記白色塗膜中の前記二酸化チタンの濃度は、30質量%以上60質量%以下であり、前記白色塗料中の前記カルシウム修飾シリカの濃度は、0.5質量%以上10質量%であり、前記白色塗膜中の前記エポキシ樹脂の濃度は、0.5質量%以上5質量%以下であり、前記白色塗膜の膜厚は、8μm〜24μmである、(15)に記載の塗装鋼材。
18)前記白色塗膜は、Si系カップリング剤を更に含有する、(17)に記載の塗装鋼材。
19)鋼材にZnめっき層を形成する工程と、前記Znめっき層上に、pH7〜10のめっき浴を用いてSnめっき層を電解析出させる工程と、前記Znめっき層及び前記Snめっき層の形成された前記鋼材を、200℃以上300℃以下に昇温する工程と、を含み、Snの付着量を、Sn量換算で、0.17g/m 以上0.4g/m 以下とし、Snの付着量とZnの付着量の比を、Sn:Zn=3:97〜0.5:99.5とする、めっき鋼材の製造方法。
(20)Znの付着量を、Zn量換算で、10g/m 以上60g/m 以下とする、(19)に記載のめっき鋼材の製造方法。
21)前記めっき浴中に、ピロリン酸塩が含有される、(19又は(20)に記載のめっき鋼材の製造方法。
22)前記Snめっき層を、0.1A/dm以上20A/dm以下の電流密度で析出させる、(19)〜(21)の何れか1項に記載のめっき鋼材の製造方法。
23)前記Snめっき層の電解析出において、前記めっき浴と被めっき鋼材との相対液流速を0.5m/秒以上とする、(19)〜(22)の何れか1項に記載のめっき鋼材の製造方法。
24)前記鋼材を200℃以上300℃以下に昇温する工程の後に、昇温後の前記鋼材の表面に白色塗膜を形成する工程を更に含む、(19)〜(23)の何れか1項に記載のめっき鋼材の製造方法。
25)前記白色塗膜は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛から選ばれる白系顔料を含む、(24)に記載のめっき鋼材の製造方法。
26)前記白色塗膜は、二酸化チタンと、カルシウム修飾シリカと、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂と、を少なくとも含有する白色塗料を含む、(24)に記載のめっき鋼材の製造方法。
以上説明したように、本発明のめっき鋼材によれば、環境調和性の高い色調を有するとともに、犠牲防食能を有しており、良好な外観と犠牲防食能を両立させるめっき鋼材及び塗装鋼材を提供することができる。
また、本発明のめっき鋼材の製造方法によれば、従来では成し得なかった高い意匠性と、良好な耐食性とを有する白色めっき鋼板を、特殊なプロセスを経ず、一般的な鋼材製造プロセスにより、高速に大量に得ることができる。
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
以下で詳述する本発明に係るめっき鋼材は、鋼材と、かかる鋼材の表面に位置するめっき層とを備え、めっき層の表面が白色を呈するめっき鋼材である。
(白色の定義について)
本発明に係るめっき鋼材について説明するに先立ち、まず、白色の定義を明確にしておく。特に、物体の色は、光源(太陽光、蛍光灯、LED等)によって変化するため、光源を定義し、「白色」という状態を定量化することが重要となる。
物体の色合いを測定する際に、光源を測色用標準イルミナントD65とし、測定の際の視野角度として10°を選択すると、昼光で照らされている物体色を再現することができる。同測定条件下のSCI方式でSn及びZnを含むめっきで被覆されためっき鋼材表面を測色することを考える。かかる場合に、CIELAB表色系でL88以上であると、肉眼で白色に見え、−1.0≦a≦0.5、かつ、−1.0≦b≦3.0であれば、無彩色であると感じる。従って、本発明のめっき鋼材は、めっき層表面を測色した場合に、明度L値が88以上になり、かつ、色度のa値、b値の範囲が、それぞれ−1.0≦a≦0.5、−1.0≦b≦3.0となるものがよい。
光源については、JIS Z8720「測色標準イルミナイト(標準の光)及び標準光源」(対応外国規格ISO/CIE 10526)に記載されている。測色用標準イルミナントD65は、昼光で照明される物体色を表示する場合に使用される光源である。また、視野角度(例えば、上記視野角度10°)は、JIS Z8723「表面色の視覚比較方法」(対応外国規格ISO/DIS 3668)で定義されている。
色を測定するとき、正反射光を除去して色を測る方法をSCE(Specular Components Exclude:正反射光除去)方式といい、光トラップがなく正反射光を除去せずに色を測る方法をSCI(Specular Components Include:正反射光込み)方式という。SCI方式では、正反射光を含んで測定するので、表面状態に関係なく、素材そのものの色の評価となる。かかる測定方法は、JIS Z8722「色の測定方法−反射・透過物体色」に準拠する。
なおCIEとは、「Commission Internationale de l’Eclairage(仏),国際照明委員会」の略である。CIEは、光と照明の分野での科学・技術及び工芸に関するあらゆる事項について、標準と測定の手法を開発し、国際規格及び各国の工業規格の作成に指針を与え、他の国際団体との連携・交流を図っている。CIELAB表示色は、知覚と装置の違いによる色差を測定するために1976年に勧告され、日本ではJIS Z8729「色の表示方法−L表色系およびL表色系」に規定されている均等色空間である。
CIELABの3つの座標(L,a,b)は、それぞれ、色の明度(0≦L≦100であり、L=0は黒、L=100は白の拡散色)、赤と緑の間の位置(負の値は緑寄りで、正の値は赤寄り)、黄色と青の間の位置(負の値は青寄り、正の値は黄色寄り)に対応している。かかる座標系において、a=0、b=0のときを無彩色と呼び、所謂モノクロームの状態に対応している。
以上、本発明における「白色」の定義について、具体的に説明した。
(めっき鋼材について)
続いて、本発明に係るめっき鋼材について、詳細に説明する。
本発明に係るめっき鋼材は、鋼材と、鋼材の表面に形成されためっき層とを有している。また、かかるめっき層は、少なくともSn(スズ)及びZn(亜鉛)を含むめっき層であり、厚さ方向のSn濃度分布が鋼材側よりも表面側で高くなっている。
ここで、めっき層を構成する元素であるSnは、めっき層を白色とするために必要な元素であり、めっき層を構成する元素であるZnは、めっき層に犠牲防食能を付与するために必要な元素である。
本発明に係るめっき層に、これらSn及びZnが適切な付着量で含有されることで、めっき層は、光源D65光、10°視野の分光測色において、SCI方式でL88以上、−1.0≦a≦0.5、0≦b≦3.0で表わされる白色を呈するようになる。
<鋼材について>
本発明に係るめっき鋼材において母材として用いられる鋼材は、特に限定されるものではなく、例えば、熱延鋼板や冷延鋼板等の公知の鋼材を利用することができる。また、鋼の種類についても、特に限定されるものではない。
<めっき層について>
本発明に係るめっき鋼材は、めっき層として、鋼材上に位置するZnめっき層と、かかるZnめっき層上に位置するSn−Znめっき層と、から構成されている。かかるSn−Znめっき層は、Znめっき層上にSnめっき層を形成した後に、所定の熱処理を行うことでSnとZnとを相互拡散させ、下層に位置するZnめっき層のZnを、上層に位置するSnめっき層に含まれるようにして形成されるめっき層である。
具体的には、かかるめっき層として、鋼材上にZnめっき層とSn−Znめっき層とが積層されためっき層を例示できる。また、鋼材上にZnめっき層とSn−Znめっき層とが積層されるとともに、Znめっき層の鋼材側にZn−Fe合金層が形成されためっき層も例示できる。これらめっき鋼材のめっき層は、いずれも下層にZnめっき層が存在するため、厚さ方向のSn濃度分布が鋼材側よりも表面側で高くなる。
[めっき層の付着量について]
まず、本発明に係るめっき層の付着量について説明する。
本発明に係るめっき層は、上記のように、少なくともZn及びSnを含むものであるが、Zn及びSnの付着量は、それぞれ以下の通りである。
○Znの付着量
めっき層におけるZnの付着量は、金属Zn量で、10g/m以上60g/m以下である。Znの付着量が4g/m以上となることで、地鉄に対する犠牲防食能を発現させることが可能となるが、かかる犠牲防食能をより確実に発現させるために、めっき層におけるZnの付着量は、10g/m以上とする。Znの付着量は、より好ましくは15g/m以上であり、更に好ましくは20g/m以上である。
一方、Znの付着量の上限は、特に規定するものではないが、Znの付着量が60g/m超過となると犠牲防食効果が飽和するため、コスト面で不利となる。従って、Znの付着量は、60g/m以下とする。また、電気Znめっき時における粗大結晶粒の成長を抑制するという観点から、Znの付着量は、40g/m以下とすることが好ましく、30g/m以下とすることが更に好ましい。
○Snの付着量
また、めっき層におけるSnの付着量は、金属Sn量換算で、0.1g/m以上10g/m以下である。Snの付着量が0.1g/m以上となることで、めっき層の表面の明度Lの値を、88以上とすることができる。めっき層の色調をより白色とするために、Snの付着量は、好ましくは0.17g/m以上であり、より好ましくは0.26g/m以上である。Snの付着量が1.12g/m以上となると、下層に位置するZnめっき層を十分に隠蔽し、更にLの値が90以上となって、白色度が増す。なお、Snの付着量が3g/mでLの値は92程度となり、白色度に対するSnの寄与効果はほぼ飽和する。
一方、Snの付着量の上限は、特に制限するものではないが、Snの付着量が10g/m超過となると、コスト面で不利になり、かつ、Snめっきに特有のウィスカー(Whisker)が発生しやすくなる。また、後述するように、本発明に係るめっき層では、Snめっき層に熱処理を施してSn−Znめっき層とすることでSn−Znめっき層と地鉄との電位差を小さくし、より優れた耐食性を実現している。しかしながら、Snの付着量が10g/m超過となると、Sn−Znめっき層の電位を下げるのに必要なZn量が増加するため、好ましくない。従って、Snの付着量は、10g/m以下とすることが重要である。また、熱処理時におけるSn−Zn合金化の際の入熱を抑制するという観点から、Snの付着量は、0.5g/m未満であることが好ましい。具体的には、Snの付着量は、0.4g/m以下であることが好ましく、0.3g/m以下であることが更に好ましい。Snの付着量が0.5g/m未満となり、後述するようなZn付着量との比率が満たされることによって、白錆に対する耐食性が更に向上するなど、更なる耐食性の向上を実現することが可能となる。ここで、Snの付着量が0.1g/m未満となると、明度Lの値が88未満となって目的とする白色度が得られないため、好ましくない。
○Snの付着量とZnの付着量との比率
本発明に係るめっき層では、Sn及びZnの付着量が上記範囲を満足するだけでなく、Snの付着量とZnの付着量との比率が、下記の範囲を満たすことが重要となる。より詳細には、本発明に係るめっき層において、Snの付着量とZnの付着量の比は、Sn:Zn=50:50以上0.2:99.8以下となることが重要である。換言すれば、本発明に係るめっき層の組成は、Sn−50mass%Zn以上、Sn−99.8mass%Zn以下であることが重要である。Sn:Zn=50:50未満となる場合には、めっき層の犠牲防食性と白色度とを両立させることが困難となるため、好ましくない。一方、Sn:Zn=0.2:99.8超過となる場合には、めっき層の白色度を維持することが困難となることから、好ましくない。
上記のような比率が満たされることで、ZnがSnに対して過剰に存在することとなり、優れた耐食性を維持しつつ、均一な外観を有する白色のめっき層表面を実現することが可能となる。また、上記のような付着量及び付着量の比率が満たされることで、めっき層表面の白色度が実現されるため、かかるめっき層上に白色塗料等を用いて白色塗膜を形成する場合に、白色塗膜の膜厚を薄くすることが可能となる。白色塗膜の膜厚が薄く、下地のめっき鋼材が透けて見える場合であっても、めっき鋼材のめっき層の白色度が担保されているからである。また、めっき層の白色度が担保されることで、めっき層上に白色以外の塗膜を形成する場合であっても、塗膜の色をより鮮明に感じさせることが可能となる。このように、上記のような付着量及び付着量の比率が満たされることで、本発明に係るめっき鋼材を用いて製造される様々な物品の意匠性を担保することが可能となる。更に、めっき層上に形成されうる塗膜の膜厚を薄くできるということは、本発明に係るめっき鋼材の溶接性が向上することを示唆している。
ここで、合金化後のSn−Zn合金めっきとZnめっきとの比率、及び、犠牲防食能力と外観とのバランスという観点から、Snの付着量とZnの付着量との比率は、Sn:Zn=3:97以上(すなわち、Znの相対付着量が97以上)となることが好ましく、1.5:98.5以上(すなわち、Znの相対付着量が98.5以上)となることが更に好ましい。また、合金化後のSn−Zn合金めっきとZnめっきとの比率、及び、白色度と犠牲防食能との高度なバランスという観点から、Snの付着量とZnの付着量との比率は、Sn:Zn=0.5:99.5以下(すなわち、Znの相対付着量が99.5以下)となることが好ましく、1:99以下(すなわち、Znの相対付着量が99以下)となることが更に好ましい。
なお、上記のようなSnの付着量とZnの付着量との比率で実現される、Sn−Znめっき層の組織については、以下で詳述する。ここでは、Sn及びZnの付着量という観点から、以下の内容について言及しておく。
すなわち、Sn−Zn二元合金は、共晶合金(共晶組成:Sn−9mass%Zn、共晶温度:199℃)であり、かかる合金中に金属間化合物は存在しない。また、Snの融点は232℃であり、Znの融点は419.5℃である。従って、熱処理後、Sn−Zn合金めっきとZnめっきの二層にするためには、少なくともZnリッチであることが重要である。また、共晶組成、共晶温度、純Sn及び純Znの融点から考慮すると、Snの付着量に対してZnの付着量が圧倒的に多いことが重要である。
以上、本発明に係るめっき層の付着量について、詳細に説明した。
以下では、これらZnめっき層及びSn−Znめっき層について、詳細に説明する。
[Znめっき層]
Znめっき層は、本発明に係るめっき鋼材のめっき層に、犠牲防食能を付与する層である。Znめっきの種類は、特に規定されるものではなく、後述するようにSnめっき層を電解析出させるために、電気めっきが可能な種類であればよい。具体的には、かかるZnめっき層は、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき層のいずれであってもよい。
上記Znめっき層のうち、特に電気亜鉛めっき層は、表面粗度が溶融亜鉛めっき層に比べて比較的大きいため、Znめっき層に対するSn−Znめっき層の密着性をより向上させることができる。また、電気亜鉛めっき層とすることで、Znめっき層の表面粗さがSn−Znめっき層の表面粗さに反映され、めっき層の表面粗度を適正な範囲に制御でき、めっき層の表面をより白色にすることができる。従って、Znめっき層としては、電気亜鉛めっき層が好適である。
一方、溶融亜鉛めっき層又は合金化溶融亜鉛めっき層は、比較的厚いめっき層でも容易に製造できる。そのため、特に十分な犠牲防食能を必要とする用途にめっき鋼材を利用する場合には、溶融亜鉛めっき層又は合金化溶融亜鉛めっき層を用いるとよい。ただし、溶融亜鉛めっき層には、一般に電気めっきに比べ表層に厚い酸化膜が形成され、この酸化膜が後述するSnめっき層の密着性を低下させる場合がある。従って、密着性の観点からは、溶融亜鉛めっき層よりも電気亜鉛めっき層が好ましい。
Znめっき層の成分は、特に限定されるものではなく、Znめっき、Zn−Niめっき、Zn−Feめっき、Zn−Coめっきなど、一般的に鋼材に対する犠牲防食能が確認されているZnめっきを例示できる。また、合金化溶融亜鉛めっき層には、鋼材側にZn−Fe合金層が形成される。Zn−Fe合金層が形成されることで、鋼材に対するめっき層の密着性を高めることができる。
[Sn−Znめっき層]
Snめっき層は、Znめっき層上に形成されて、その表面が白色を呈するものでる。かかるSn−Znめっき層は、Znめっき層上にSnめっき層を形成した後、適切な温度で熱処理を行うことによって、下層のZnめっき層のZnとSnめっき層のSnとが相互拡散することで形成される合金化層である。SnとZnとが合金化したSn−Znめっき層が形成されることで、めっき鋼材の端部における耐食性も含め、めっき鋼材の耐食性を飛躍的に向上させることが可能となる。
Sn−Znめっき層を形成するに先立って、Znめっき層上に形成されるSnめっき層は、電気Snめっき層であることが好ましい。
Snめっき層には、溶融Snめっき層もあるが、溶融Snめっき層は付着量が大きくなって表面粗度が小さくなり、Sn−Znめっき層を形成した後の明度Lの値を88以上とすることが困難になる。更に、溶融めっき法では、既に形成されたZnめっき層を高温のSnめっき浴に通すことになり、Znめっき層の品質を低下させる可能性がある。また、Snめっき層には蒸着Snめっき層もあるが、蒸着Snめっき層は、真空雰囲気が必要で成膜時間も長くなるから、生産性を向上できない。
Sn電気めっき層は、溶融Snめっき層や蒸着Snめっき層に対して、付着量の調整が比較的容易であり、厚みを比較的薄く形成できるため、下地であるZnめっき層の表面粗さがある程度反映された表面粗度を有するものとなる。Snめっき層を形成した後に行われる熱処理は、後述するように、Snめっき層の表面粗度が熱処理後も維持されるように実施される。そのため、形成されたSn−Znめっき層の表面粗度も、Znめっき層の表面粗さがある程度反映されたものとなる。Sn−Znめっき層の表面粗さに起因して、Sn−Znめっき層に入射する光が乱反射することにより、Sn−Znめっき層の表面は、白色を呈するようになる。かかるSn−Znめっき層の表面粗さについては、以下で改めて詳述する。
また、Znめっき層として電気Znめっきを選択した場合、電気Snめっき層を成膜するための設備を電気Znめっき設備の後段に配置でき、Znめっき層とSnめっき層を連続して成膜できるので、生産性も有利である。
先だって説明したように、Znめっき層上に形成したSnめっき層に対して熱処理を行うことで、SnとZnとが相互拡散して合金化し、Sn−Znめっき層が形成される。ここで、適切な温度で熱処理を行うことによって、相互拡散によりSn−Znめっき層に含まれるZnの濃度を、4質量%以上50質量%以下とする。Sn−Znめっき層に含まれるZn濃度が4質量%未満である場合には、地鉄に対するSn−Znめっき層の電位差が卑とならず、耐食性を更に向上させることができない。加えて、電気Snめっきで懸案となる針状Sn単結晶(Whisker)が発生しやすく、本発明に係るめっき鋼材を家電部材などに適用する場合、短絡の可能性が生じる。また、Sn−Znめっき層に含まれるZn濃度が50質量%超過である場合には、Sn−Znめっき層の白色度を維持することができない。以下、Znの濃度が上記のように規定される理由を、詳細に説明する。
ここで、Sn、Zn、Feの標準単極電位は、標準水素電極(Standard Hydrogen Electrode:SHE)を基準として、それぞれ以下の通りである。
Sn:−0.14V vs.SHE
Zn:−0.76V vs.SHE
Fe:−0.45V vs.SHE
上記の標準単極電位から明らかなように、SnとZnの電位差は620mVであり、SnよりもZnが卑な電位であるため、めっき層の端面やめっき層に生じた疵では、Znの選択腐食が助長され、腐食幅が大きくなってしまう懸念がある。かかる選択腐食を回避するために、めっき層の上層をSnではなくSn−Zn合金とすることにより、L88以上、−0.5≦a≦−1.0、0≦b≦3.0を維持しつつ、地鉄との電位差を小さくして、選択腐食を緩和することができる。
腐食環境を想定すると、5mass%NaCl水溶液25℃中の自然浸漬電位がFeより200mV以上卑となるように、Sn−Znめっき層を形成させるとよい。これにより、Sn−Znめっき層層とZnめっき層との電位差が110mVと小さくなり、Znの選択腐食を抑制でき、Feに対する犠牲防食能を発現することができる。なお、このときのSn−Znめっき層の組成は、Sn−4mass%ZnよりZnを多く含んでいればよい。従って、Sn−Znめっき層に含有されるZnの濃度は、4質量%以上に規定される。なお、FeとZnとの電位差が310mVであるため、Sn−Znめっき層がFeより310mV以上卑となることはない。一方、Sn−Znめっき層において、Sn−50mass%Zn以上のZn濃度となると、明度Lの値が88未満に低下し、白色度を維持することができない。従って、Sn−Znめっき層に含有されるZnの濃度は、50質量%以下に規定される。
なお、Sn−Znめっき層を電気めっき法で形成することは不可能ではないが、前述したようにSnとZnの自然浸漬電位はZnが620mV卑であるため、Snを錯体化して電解析出電位をZnに近づけたり、Snイオンを拡散律速させたりする必要がある。これらの対策は、電流効率低下、低電流密度化といった課題が生じるため、効率的な工業生産には向かないと考えられる。
ここで、Sn−Znめっき層の電位をより確実に低下させるために、Sn−Znめっき層に含まれるZn濃度は、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。一方、Sn−Znめっき層の明度Lの値をより確実に88以上とするために、Sn−Znめっき層に含まれるZn濃度は、35質量%以下が好ましく、25質量%以下が更に好ましい。
先だって簡単に言及したように、めっき層の最表面(すなわち、Sn−Znめっき層)の粗さは、光学特性に影響する。本発明に係るめっき鋼材では、めっき層の最表面があまりに低粗度では、最表面が鏡面となって白色度が出現しない。従って、最表面に位置するSn−Znめっき層の表面粗度が、算術平均粗さRaで0.2μm超過であることが好ましい。表面粗度の上限は特に規定するものではないが、めっき鋼材の用途によって、つや消しであるマット仕上げ(JIS−H0400−6041)、サテン仕上げ(JIS−H0400−6039)が適用されるケ−スが考えられるため、算術平均粗さRaで3.0μm以下が好ましい。めっき層の表面粗度は、より好ましくは、算術平均粗さRaで、0.5μm以上2.0μm以下である。
なお、めっき層の最表面の鏡面状態を数値として表すために、60°鏡面光沢法(Gs60°)を用いることが好ましい。60°鏡面光沢度の測定方法は、JIS Z8741「鏡面光沢度−測定方法」に記載されており、かかる記載に基づいて、めっき層の最表面の光沢度を測定すればよい。本発明に係るめっき鋼材では、かかるGs60°でのめっき層最表面の表面光沢度が、50以上200未満であることが好ましい。めっき層最表面の表面光沢度は、より好ましくは、80以上180以下である。
[めっき層の金属組成について]
続いて、以上説明したようなめっき層を構成する金属組織について、具体的に説明する。
本発明に係るZnめっき層は、Zn相を含む組織から構成されている。Znめっき層にZn相が含有されることで、めっき層の犠牲防食性が発現することとなる。また、Znめっき層の鋼材側の界面には、Zn−Fe相が存在していてもよい。かかるZn−Fe相は、Znめっき層に含まれるZnと、母材である鋼材に含まれるFeとが、鋼材に加えられる熱によって反応することで生成される、Zn−Fe合金を含む。かかるZn−Fe相が鋼材とZnめっき層との界面に存在することで、めっき層の鋼材への密着性を向上させることが可能となる。なお、Zn−Fe相が大きく成長しすぎると、めっき鋼材の耐食性が低下してしまう可能性がある。従って、Znめっき層に含まれるZn−Fe相の厚みは、薄い方が好ましい。
また、本発明に係るSn−Znめっき層は、SnとZnとの共晶からなるSn−Zn層を少なくとも含有する組織からなる。すなわち、本発明に係るSn−Znめっき層は、SnとZnとが合金化したSn−Zn合金層である。また、かかるSn−Znめっき層には、金属組織として、Zn初晶からなるZn相が含有されていてもよく、Sn初晶からなるSn相が含有されていてもよい。Sn−Znめっき層がSn相を含有することで、めっき層表面の白色度を高めることが可能となる。一方、Sn−Znめっき層がZn相を適度に含有した場合、めっき層は、犠牲防錆能を発現しつつ白色度を維持することができる。
Sn−Znめっき層の各相の存在比率について、更に説明する。
かかるSn−Znめっき層において、Sn−Zn共晶は必ず存在し、Sn−Znめっきの組成が8.8%Znを中心に、冷却速度によってはSn−Znめっきの組成が8〜10%Znである場合に、Sn−Znめっき層の金属組織は、Sn−Zn共晶単独となりうる。本発明において、Sn−Znめっき層におけるZn濃度が4質量%である場合には、Sn−Znめっき層は、Sn初晶とSn−Zn共晶と、からなり、体積分率でSn初晶が55vol%となり、Sn−Zn共晶45vol%となる。一方、Sn−Znめっき層におけるZn濃度が50質量%では、Zn初晶が45vol%となり、Sn−Zn共晶が55vol%となる。すなわち、Sn−Znめっきの組成が4%Zn以上8%Zn未満である場合には、Sn−Znめっき層はSn初晶とSn−Zn共晶とから構成され、Znの含有量が多くなるほど、Sn−Zn共晶の体積分率が増加していく。また、Sn−Znめっきの組成が10%Zn超過50%Zn以下である場合には、Sn−Znめっき層はZn初晶とSn−Zn共晶とから構成され、Znの含有量が多くなるほど、Sn−Zn共晶の体積分率が減少していく。
なお、Snの比重が7.3であり、Znの比重が7.1と、両者の比重はほぼ同じであるため、各相の存在比率は、体積分率とほぼ同じとしてもよい。また、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)によってめっき層を観察することで得られる各相の面積率を、Sn−Znめっき層における各相の体積分率として取り扱っても良い。
また、先述のように、Sn−Zn合金層の組成が、共晶組成、又は、共晶組成のカップルドゾーンである場合には、Sn−Zn合金層は共晶組織のみとなる。Sn−Zn共晶組織は、Irregular fibrous structure、又は、Broken lamellarとなる。Sn初晶は、丸いデンドライト状となりやすく、Zn初晶は、針状になりやすい。これらの組織は、走査型電子顕微鏡の反射電子像で観察可能であるが、例えば、ナイタールでZnを軽くエッチングした後、光学顕微鏡でも観察可能である。
なお、Sn−Znめっき層がSn−Zn相を含有することで、Sn−Znめっき層とZnめっき層との電位差を小さくして、めっき鋼材の耐食性を高めることができる。
また、本発明に係るめっき層には、Sn−Zn−Fe相が含有されていてもよい。
めっき層にSn−Zn−Fe相が含まれることで、めっき層の耐食性及び鋼材との密着性を高めることができる。
以上、本発明に係るめっき鋼材のめっき層について、詳細に説明した。
<めっき層に関する各種物性の測定方法について>
続いて、本発明に係るめっき層に関する各種物性の測定方法について、簡単に説明する。
本発明に係るめっき層に含まれる各種の金属組織や、めっき層の付着量については、例えば、グロー放電発光分光法(Glow Discharge Spectroscopy:GDS)による分析装置や、電子線マイクロアナライザ(Electron Probe MicroAnalyser:EPMA)を用いることで、測定することが可能である。
より詳細には、以下の方法が適用できる。
めっき層全体のSn付着量、Zn付着量を測定するには、インヒビター入りの5%程度の塩酸でめっき層を溶解し、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)又は原子吸光法の湿式分析を行うと良い。より簡便には、既知の付着量のサンプルを標準として、蛍光X線法にてSn付着量、Zn付着量測定することも可能である。
GDSを適用する場合には、スパッタレートを落とすことで、Sn、Zn、Feに関して、表面からの深さ方向の分布状態を、十分かつ定量的に測定することができる。ただし、めっき層が塗料などの導電性のない物質で表面被覆されている場合には、予めリムーバーで塗料を除去する必要がある。リムーバーの種類は特に問わないが、一般的にZnめっき系で使用されているものが適用可能である。
EPMAを適用する場合には、予めクロスセクションポリッシャ(Cross section polisher:CP)を用いて断面観察が可能なように試料を作製する。用いるEPMAとしては、特にFE−EPMAが好ましい。FE−EPMAを用いることで、めっき層のSn、Zn、Feの元素マッピングにより、めっき層の組織及び付着量を分析することができる。なお、連続的に組成変化を知りたい場合には、線分析を用いても解析することが可能である。
以上のような方法により、Snの付着量及びZnの付着量を測定することで、めっき層におけるSnの付着量とZnの付着量との比率を算出することが可能となる。
また、Sn−Znめっき層におけるZnの濃度については、上述のGDSによりSnが検出されなくなるまでの平均濃度を測定したり、FE−EPMAによりSnが検出されなくなるまでの平均濃度を算出したりすれば良い。
また、上記の方法以外にも、以下のような方法を用いることで、めっき層に関する各種物性を測定することが可能である。例えば、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)で断面を露出させ透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)で観察する方法や、共焦点型三次元蛍光X線分析による三次元元素分布測定法などが適用できる。また、Surface And Interfacial Cutting Analysis System(SAICAS)により試料を斜め切削することで、塗装で被覆されている状態であっても通常のSEMレベルでめっき層の定性・定量分析が可能である。
以上、本発明に係るめっき層に関する各種物性の測定方法について、簡単に説明した。
(めっき鋼材の製造方法について)
次に、本発明に係るめっき鋼材の製造方法について、詳細に説明する。
本発明に係るめっき鋼材の製造方法は、鋼材にZnめっき層を形成する工程と、Znめっき層にSnめっき層を形成する工程と、形成されたSnめっき層に対して熱処理を行って、Snめっき層をSn−Znめっき層とする工程と、を含む。
ここで、鋼材上にZnめっき層を形成する手法は、溶融亜鉛めっき法、電気亜鉛めっき法のいずれであってもよいが、本発明に係るめっき鋼材の製造方法では、電気めっき法を用いることが好ましい。
電気めっき法では、一般的な電気亜鉛めっき鋼板の製造方法である硫酸亜鉛、硫酸ナトリウム及び硫酸からなるZnめっき浴を用いればよい。かかるZnめっき浴を用い、電流密度を10〜200A/dm程度とし、電流密度と通電時間との積であるクーロン数を制御することにより、目的の付着量とすればよい。また、Znめっき浴の浴温や、被めっき材である鋼材とめっき液との相対流速の制御等も、特に限定されるものではなく、一般に知られる方法を適用すればよい。また、Znめっき層を、Znと他の金属との合金めっき層とする場合には、上記のZnめっき浴に対して、所望の金属を含む金属塩を添加すればよい。例えば、Znめっき層としてZn−Ni系めっきからなるめっき層形成する場合には、上記めっき液に対して硫酸ニッケル又は塩化ニッケルを添加すればよい。また、Znめっき層としてZn−Fe系めっきからなるめっき層を形成する場合には、上記めっき液に対して硫酸鉄又は塩化鉄を添加すればよい。
なお、溶融めっき法でZnめっき層を形成することも可能であるが、溶融めっき法では、一般に電気めっき法に比べて表層に厚い酸化膜が形成され、かかる酸化膜がSnめっき液の濡れ性を低下させる場合がある。また、Snめっき時にかかる酸化膜が還元されて、Snめっきの形成を阻害する場合がある。従って、本発明に係るめっき鋼材の製造方法では、溶融めっき法ではなく電気めっき法を用いることが好ましい。
Znめっき層の形成後に、Snめっき層の形成を行う。Snめっき層は、電解析出法で形成することが好適である。その他のめっき方法としては、溶融めっき法や蒸着めっき法が挙げられるが、溶融めっきでは付着量過多になりやすく、蒸着めっきではプロセス上、真空が必要で製膜時間がかかる。これより、本発明に係るめっき鋼材の製造方法では、電解析出法(電気めっき法)を用いることが好ましい。
電解析出法に用いるSnめっき液のpHは、下層のZnめっき層の活性溶解を防止するために、7以上10以下とする。Znは、両性金属であり、低pH、高pHでも溶解する。Snめっきを形成する際には、被めっき材がSnめっき液に浸漬したときに無通電の時間が発生するため、Znの溶解防止のためにSnめっき液のpHを7以上10以下とするのである。Snめっき液のpHは、pH管理の容易性という観点から、8.5以上9.5以下とすることがより好ましい。
なお、Snめっき液には、ピロリン酸塩を含有させるとよい。Snめっき液に含有させるピロリン酸塩としては、具体的には、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらのピロリン酸塩は、pH緩衝剤として機能し、特に今回好ましい浴組成としているpH範囲(7以上10以下)で、効果的に作用する。
ここで、pH緩衝作用とは、ピロリン酸塩の解離平衡とバランスすることにより起きるものであり、酸性の物質(H)がめっき液中に入ったとき、平衡が移って、新たに入ってきたHを消費し、逆に塩基性の物質がめっき液中に入ったとき、平衡が逆に移ってその塩基を消費する挙動のことである。このpH緩衝作用のために、Snめっき液のpHをほぼ一定に保持することができる。なお、ピロリン酸塩の添加量は、特に規定するものではないが、Snめっき液に対して0.1mol/L以上3mol/L以下とすることで上記pH緩衝作用が効果的に作用するため好ましい。ピロリン酸塩の添加量は、より好ましくは0.1mol/L以上2mol/L以下であり、更に好ましくは0.5mol/L以上2mol/L以下である。
Snめっき時の電流密度は、0.1A/dm以上20A/dm以下とすることが好ましい。電流密度が0.1A/dm未満である場合には、製膜速度が遅くなり、粗大なSnめっき粒となりやすい。一方、電流密度が20A/dm超過である場合には、Snイオンの補給が追い付かず、均一で密着性の良いめっきを得ることが困難となる。より好ましい電流密度範囲は、5A/dm以上15A/dm以下であり、かかる電流密度とすることで、電流効率よく、より均一で密着性の良いめっきを得ることができる。
Snめっき時において、Snめっき液と被めっき鋼材との間の相対液流速は、0.5m/秒以上とすることが好ましい。相対流速が大きいほど、被めっき鋼材とめっき液との間の拡散層が薄くなり、Snイオンの補給が容易となる。かかる相対液流速は、特に高電流密度でのめっきを行う際に有効である。相対液流速の与え方は種々存在するが、被めっき鋼材が鋼板である場合は、鋼板を高速で通板する、対抗流を付与するなどといった方法がある。なお、相対液流速の上限は、特に規定するものではないが、5m/秒以上になると、めっき液の持ち出し、対抗流を生むポンプ能力といった課題が発生するので好ましくない。従って、Snめっき液と被めっき鋼材との間の相対液流速は、5m/秒未満とすることが好ましい。
Snめっき液の組成は、0.05mol/L≦Sn2+≦0.9mol/Lとすることが好ましい。Sn2+が0.05mol/L未満の濃度となる場合には、Sn2+の拡散限界に到達するために電流密度を上げられず、生産性が悪化する。また、Sn2+が0.9mol/L超過の濃度となる場合には、Sn2+がめっき液中に溶解しがたく、沈殿物が生じやすくなる。ピロリン酸塩は、前述の通り、pH緩衝能ため0.1〜3mol/Lとすることが良い。その他、Sn2+の対イオンとなるSO 2−、Clは特に規定しないが、不可避的にめっき浴中に混入する。
なお、めっき浴の温度は、特に限定するものではないが、電流効率とめっき液蒸発の観点から、30℃以上70℃以下にするとよい。
このようにして、鋼材上に、Znめっき層とSnめっき層とが順次積層される。
続いて、本発明に係るめっき鋼材の製造方法では、形成されたSnめっき層に対して熱処理を行って、Sn−Znめっき層を形成させる。
従来、ブリキを製造する際に、めっき表面を光沢面にすることを目的として、所謂リフロー処理が行われている。リフロー処理とは、Snめっき層の形成後にSnの融点以上の温度に加熱してSnめっき層を溶融させ、その後、水冷却することで、光沢あるSnめっき層を形成する処理である。このリフロー処理では、Snめっき層の表面にフラックスを塗布してから加熱することで、Snめっき層の表面の平滑化を促進して、光沢を出すようにしている。このように、従来のリフロー処理は、Snめっき層を一旦溶融させて冷却することで、Snめっき形成直後のめっき表面の凹凸を小さくして、めっき表面を鏡面にすることを目的とした処理である。鏡面とされためっき表面に入射光が入射した場合、入射光が全反射されて、めっき表面が金属光沢を呈するようになる。
一方、本発明におけるSnめっき形成後の熱処理は、従来のリフロー処理とは異なり、フラックスを塗布せずに加熱を行うことで、Snめっき層の表面を鏡面化させないまま熱処理を終了させて、加熱前のめっき表面の形態を残すようにする処理である。これにより、めっき表面に入射した入射光を散乱させて散乱光となるので、めっき表面が白色を呈するようになる。また、かかる熱処理によって、Snめっき層に含まれるSnと、Znめっき層に含まれるZnとが相互に拡散され、Sn−Znめっき層が形成される。その結果、下地のZn層とSn−Zn層との電位差が小さくなり、めっき層の耐食性を更に向上させる効果が発現する。
具体的な熱処理条件としては、Znめっき層及びSnめっき層の形成された鋼材を加熱到達温度が200℃以上となるように昇温することで、下層のZnめっき層に含まれるZnとSnとを合金化させて、Sn−Znめっき層を容易に形成することができる。これは、Sn−Zn二元系合金が共晶であり、共晶温度が199℃であるためである。このため、かかる昇温工程において加熱到達温度200℃以上に昇温することにより、めっき層の最表面がSn−Zn溶融状態になり、冷却後、Sn−Zn合金層(すなわち、Sn−Zn相)を得ることができる。
加熱温度及び加熱時間は、特に規定するものではないが、200℃を1秒以上維持すれば、Sn−Zn合金層を確実に形成することができる。なお、加熱到達温度の上限があまりに高すぎると、めっき層の表面に酸化層が形成されたり、めっき層の表面に溶融状態にある金属の流れ模様(溶融金属流れ模様)が発生したりするため、加熱到達温度は300℃以下とする。より好ましい加熱条件は、230℃以上270℃以下の到達温度で、到達後直ちに冷却するという条件である。これにより、温度むらや過合金化を抑制しながら、Sn−Znめっき層を形成することができる。
温度むらは、加熱方式により種々の状況がありうるが、例えば熱風を当てる場合には熱風の当たり方に起因し、通電加熱では、通電パスや被めっき材の形状に起因して、温度分布が生じる。本発明では、めっき表面が溶融状態になるため、液相状態でのめっきの流動による厚みむら、模様等が生じる。このため、推奨する温度範囲に到達後、鋼材を直ちに冷却することが好ましい。かかる冷却パターンに関して、溶融金属状態が長く続くと、好ましい粗度の維持が困難となったり、溶融金属流れ模様が発生したりすることがある。このため、理想的には、加熱到達温度からSn−Zn共晶温度の199℃以下まで、直ちに冷却することが好ましく、199℃以下の温度域のパターンは、特に限定しない。加熱到達温度からSn−Zn共晶温度の199℃以下までの冷却速度は、40℃/sec以上であることが好ましい。
また、過合金とは、本来望まない地鉄(Fe)とめっき層との合金化が進むことである。本発明のめっき層構造では、先だって説明したように、Zn−Fe相の出現の可能性があるが、Zn−Fe相は様々な金属間化合物を有するため、あまりにZn−Fe相が出現しすぎると、加工性の低下や合金層の成長速度差異による模様が発生する可能性が高くなる。従って、推奨する温度範囲に到達後、鋼材を直ちに冷却することが好ましい。なお、加熱方法については、炉加熱、通電加熱、赤外線加熱などの公知の方法をいずれも適用可能である。また、冷却方法についても、特に限定するものではなく、鋼材を急冷可能な方法であれば、水冷、ミスト冷却、エアジェット冷却などの公知の方法をいずれも適用可能である。
また、本発明に係るめっき鋼材の製造方法では、各種特性の向上を目的として、めっき層の表面に更に各種の処理を行うことが可能である。
例えば、変色の防止と、後述する塗料の密着性と、を改善する目的で、めっき層上にクロメート処理又はクロメートフリー処理により防錆被膜層を形成する、一次防錆処理を行ってもよい。
クロメート処理の場合、例えばクロム酸と反応促進剤とを主成分として含有するクロメート処理液によるクロメート処理を適用することが可能である。かかるクロメート処理に際して、クロメート付着量を1mg/m以上200mg/m以下とすることが好ましい。クロメート付着量が1mg/m未満である場合、充分な防錆効果が得られず好ましくない。また、クロメート付着量が200mg/m超過である場合、防錆効果が飽和してしまい経済的にコスト高となるため、好ましくない。
クロメートフリー処理(ノンクロメート処理)は、環境上有害な六価クロムを処理液中に含有していない処理液を用いて実施される一次防錆処理である。このような処理液として、例えば、Zr、Tiの塩などを含む処理液や、シランカップリング剤を含む処理液などがある。これらのクロメートフリー処理では、Ti、Zr、P、Ce、Si、Al、Li等を主成分とするクロムを含有しないクロメートフリー処理層が、めっき層上に形成される。かかるクロメートフリー処理に際して、クロメートフリー処理の付着量を1mg/m以上1000mg/m以下とすることが好ましい。クロメートフリー処理の付着量が1mg/m未満である場合、充分な防錆効果が得られず好ましくない。また、クロメートフリー処理の付着量が1000mg/m超過である場合、防錆効果が飽和してしまい経済的にコスト高となるため、好ましくない。
また、変色防止、耐疵付き性をより完璧にするために、必要に応じて実施されたクロメート処理等の後に、塗膜を0.5〜100μmの厚さで形成させてもよい。めっき層上に塗膜が形成されることにより、本発明に係るめっき鋼材を、塗装鋼材として利用することが可能となる。塗膜は、公知の塗装方法で形成することができる。このような塗膜としては、具体的には、アクリル系焼付け塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料、ポリエステル系塗料、ポリエーテルサルホン系塗料、メラミンアルキッド系塗料などが挙げられ、これらの混合物も用いられる。
更に、本発明に係るめっき鋼材の白色度を活かすために、無添加のクリヤ塗料を用いることが好適である。
また、本発明に係るめっき鋼材の白色度を活かすために、塗料に着色顔料を含ませてもよく、かかる着色顔料として、各種の白系顔料を挙げることができる。白系顔料の含まれた塗料を用いることで、本発明は、先だって言及したように、塗料膜厚の薄膜化を図ることが可能であり、顔料の低減に寄与できる。
白系顔料の例として、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛などの白系顔料を挙げることができる。
なお、塗膜の塗装方法としては、特に限定されるものではなく、一般に公知の塗装方法を採用することができる。具体的には、ロールコーター法、リンガーロールコート法、カーテンコーター法、スプレーガン法、浸漬法、静電塗装法などの方法を挙げることができる。これらの中では、ロールコーター法、カーテンコーター法を用いることが好ましい。更に、これらの塗布装置を完備した一般的コイルコーティングライン、シートコーティングラインと呼ばれる連続塗装ラインで塗布すると、塗装作業効率が良く、大量生産が可能であるため、より好適である。
また、上記のような方法により塗膜をめっき層上に形成した後に、かかる塗膜を硬化させる処理を行う。塗膜を硬化させる硬化処理は、白色塗料を硬化させることが出来る方法であればその形態は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。かかる硬化処理としては、例えば、熱風炉にて、加熱到達温度が180℃程度となるように焼付を行うことが好ましい。
なお、塗膜形成前にSn−Zn合金化させた場合には、再溶融と過剰な合金化を抑制するために、加熱到達温度が198℃以下となるようにし、逆に塗膜形成時にSn−Zn合金化を同時に行う場合は例えば、220℃のように共晶温度を超える200℃以上とすると良い。
また、本発明に係るめっき鋼材に対して、以下に示すような白色塗料を用いて白色塗膜を形成することで、塗膜の更なる薄膜化を図ることも可能となる。
かかる白色塗膜は、1層のみで形成される塗膜層であり、二酸化チタンと、防錆顔料として機能するカルシウム修飾シリカと、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂と、を含有する。ここで、塗膜中の二酸化チタンの含有量は、乾燥時の塗膜の全質量に対して、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、35質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。二酸化チタンの含有量が30質量%未満である場合、白色塗膜の白色度が不十分となる可能性がある。また、塗膜中の二酸化チタンの含有量が60質量%超過である場合、塗膜が脆くなり、加工密着性や耐汚染性が劣化する可能性がある。塗膜中の二酸化チタンの含有量を35質量%以上55質量%以下とすると、白色度と塗膜性能とを高いレベルで両立することが可能となる。
二酸化チタン(TiO)は、めっき鋼材の隠蔽と意匠化を目的として含有される。用いる二酸化チタンの結晶型は、ルチル型、アナターゼ型のいずれであっても良い。また、CaSO、MgSO、BaSOなどを配合した複合顔料としての二酸化チタンや、表面をAl、Sb、ZnOなどで被覆した二酸化チタン等を用いることも可能である。
カルシウム修飾シリカは、シリカ微粒子の表面に、シリカより粒子径の小さいカルシウムの微粒子が吸着したものである。カルシウム修飾シリカは、シリカ微粒子の表面にカルシウムが吸着しているため、多孔度が増し、光を乱反射しやすくなる。本発明者らは、白色塗膜に含有させる防錆顔料としてカルシウム修飾シリカを用いることにより、光沢度を所定の範囲に調整しつつ、ランダムな波長の光を反射させることが可能になり、塗装鋼材の白色度を向上させる効果があることを見出した。そこで、本発明では、白色塗膜(白色塗膜を形成する際に用いる白色塗料)に、カルシウム修飾シリカを含有させる。これにより、従来よりも白色塗膜の厚さを薄くしたとしても、明度L値を大きくすることが可能である。
白色塗膜中におけるカルシウム修飾シリカの含有量は、0.5質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下とすることがより好ましい。白色塗膜中における防錆顔料の含有量が少なすぎると、白色塗膜の耐食性が劣化する。また、カルシウム修飾シリカの含有量が少なすぎると、塗装鋼材を製造する際の焼付時に溶剤が突沸することに起因する外観不良が生じやすくなり、通板速度が制限される場合がある。一方、白色塗膜中における防錆顔料の含有量が多すぎると、塗膜密着性や光沢の劣化を伴う。なお、カルシウム修飾シリカに加えて、リン酸アルミニウム、Mg処理一リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウムなどを併用しても良い。
本発明において、防錆顔料として用いるカルシウム修飾シリカは、一般に公知のシリカ表面のシラノール基にカルシウムをイオン交換させたタイプのものを使用することができ、市販のものを使用することもできる。市販のものとしては、GRACE社製の「SHIELDEX(商標)」等が挙げられる。
カルシウム修飾シリカとリン酸アルミニウムとを併用する場合には、一般に公知のリン酸アルミニウムを使用することができ、例えば、テイカ社製のトリポリリン酸2水素アルミニウムである「K−WHITE」(商標)等の市販のものを使用することができる。また、トリポリリン酸2水素アルミニウムは、亜鉛、カルシウム等で処理されたもの、例えば、テイカ社製の「K−WHITE/#105」(亜鉛処理)、「K−WHITE/Ca650」(カルシウム処理)等であっても良い。また、マグネシウム等で表面処理をしたリン酸アルミニウムを使用することも可能である。かかるリン酸アルミニウムの商品名としては、テイカ社製のマグネシウム処理を施したトリポリリン酸2水素アルミニウムである「K−WHITE/K−G105」が挙げられる。
しかしながら、リン酸アルミニウムを単独で用いたのみでは、白色塗膜の白色度を上げることが出来ない。従って、リン酸アルミニウムの使用量には上限があり、その値は、カルシウム修飾シリカの含有量の100%以下とすべきである。
カルシウム修飾シリカとリン酸マグネシウムとを併用する場合には、一般に公知のリン酸マグネシウムを使用することができ、例えば、純正化学社製リン酸2水素マグネシウム等の市販のものを使用することができる。
しかしながら、リン酸マグネシウムを単独で用いたのみでは、白色塗膜の白色度を上げることが出来ない。従って、リン酸マグネシウムの使用量には上限があり、その値は、カルシウム修飾シリカの含有量の100%以下とすべきである。
白色塗膜は、白色度、密着性、耐薬品性及び耐食性などを並立しなければならず、主樹脂としてポリエステル樹脂を用いることが好ましい。かかるポリエステル樹脂として、数平均分子量が3000以上30000以下であり、ガラス転移温度Tgが0℃〜80℃程度のものを利用することが好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量は、5000以上25000以下であることがより好ましく、9000以上23000以下であることが更に好ましい。また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、10℃以上70℃以下であることが好ましく、20℃以上60℃以下であることがより好ましい。また、硬化剤としては、メラミン樹脂を用いることが好ましいが、イソシアネートを用いてもよい。
白色塗膜は、更に、エポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂は黄色の要素を含んでいるため、白色塗膜にエポキシ樹脂を含有させることで、めっき鋼材素地が青昧がかった色を呈している場合であっても、かかる色を相殺して、白色塗膜の白色度を高めることが可能となる。かかる効果を発現させるために、白色塗膜中におけるエポキシ樹脂の含有量は、0.5質量%以上とすることが好ましい。一方、白色塗膜に多量のエポキシ樹脂が含有されると、白色塗膜の表面に存在するエポキシ樹脂によって黄色が強調されやすくなる。この黄色の影響を低減して白色度を高めやすくするために、白色塗膜中におけるエポキシ樹脂の含有量を5質量%以下とすることが好ましい。白色塗膜における主樹脂はポリエステル樹指であるため、エポキシ樹脂の添加量は、ポリエステル樹脂よりも少なくする。また、エポキシ樹脂には、防錆被膜層と白色塗膜との密着性を向上させる効果も期待できる。
白色塗膜の厚さが8μm程度であっても、塗装鋼材の明度L値を88以上にするためには、エポキシ樹脂の添加により下層に位置する鋼材の青みを抑制しながら、カルシウム修飾シリカを含有させることで光沢度を抑制して、エポキシ樹脂の黄色みが表面から見て目立たなくすることが重要である。本発明では、白色塗膜に含有させるカルシウム修飾シリカとエポキシ樹脂との量の比を調整することが好ましい。カルシウム修飾シリカを用いることにより光を乱反射させやすくなるので、エポキシ樹脂の黄色の影響を低減して白色度を高めることが可能になる。
白色塗膜中におけるカルシウム修飾シリカの含有量Aとエポキシ樹脂の含有量Bとの比X=A/Bは、0.25以上20以下とすることが好ましく、1.0以上10以下とすることがより好ましい。含有量の比Xが0.25未満の場合には、白色塗膜の白色度が不足したり黄昧が強くなったりするため、目的の外観が得られにくくなり、耐食性が劣化しやすくなる。一方、含有量の比Xが20超過である場合には、加工密着性や耐薬品性が劣化する。
かかる白色塗膜は、潤滑剤を更に含有することが好ましい。潤滑剤を含有することで、塗膜表面の摩擦係数低減によるプレス加工性向上や取り扱いキズの低減などの効果が期待される。かかる潤滑材としては、加工用途に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素化合物から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。白色塗膜中における潤滑剤の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下とすることが好ましく、1.0質量%10質量%以下であることが更に好ましい。潤滑材の含有量が0.5質量%未満である場合には、十分な潤滑性が得られず、好ましくない。また、潤滑材の含有量が20質量%超過である場合には、潤滑剤起因の淀みや発泡性等の課題が生じるため、好ましくない。潤滑剤含有量が1.0質量%以上10質量%以下である場合、より安定して低い摩擦係数が得られ、塗料起因の不具合も生じ難くなり、好ましい。
かかる白色塗膜は、更に、黄色顔料を含有することができる。黄色顔料を含有することで、めっき鋼材素地が青味がかった色を呈している場合に、かかる色を打ち消すことができる。黄色顔料は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化鉄、ビスマス化合物、チタン化合物等が、耐熱性や耐食性の観点から好ましい。
かかる白色塗膜の膜厚は、8μm以上24μm以下とすることが好ましい。塗膜の膜厚が8μm未満である場合、顔料の絶対量が少なくなるため色調が安定せず、素地が透けて見えるため、好ましくない。また、防錆顔料の量も少なくなり、十分な性能が発現できなくなる。また、白色塗膜が24μm超過である場合、製造コストの点で不利となる。更に、塗料が熱架橋型の場合、焼付時に溶剤が突沸して生じる外観不良が生じ易くなる。特に、本発明では、塗膜の厚みが8μm以上20μm以下である場合に、白色度を確保しながら膜厚を薄く出来るという顕著な効果を奏する。なお、塗装膜厚は、重量法(塗膜剥離前後の鋼板重量及び塗料の乾燥比重から算出)により求めることができる。なお、本願の白色塗膜において膜厚を薄くすることで、加工時に塗膜に生じる残留応力が小さくなるため、塗膜密着性が向上するというメリットが生じる。
更に、白色塗膜には、Si系及び/又はTi系のカップリング剤を含有させることができる。塗膜に対して、カルシウム修飾シリカやリン酸アルミニウムなどの防錆顔料を添加すると、加工密着性が劣化する場合がある。Si系及び/又はTi系のカップリング剤を併用することで、加工密着性を向上することが可能である。塗料中のSi系及び/又はTi系のカップリング剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂100質量部に対して0.2質量部以上5.0質量部以下含有させると効果的である。
なお、上記のような白色塗膜の付着量は、例えば、蛍光X線分析法を利用して測定することが可能である。
以上、塗膜の更なる薄膜化を図ることが可能な白色塗料及び白色塗膜について、詳細に説明した。
また、上記のような白色顔料以外に、本発明で用いることができる代表的な着色顔料の例としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、酸化鉛、コールダスト、タルク、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等の着色無機顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド等の着色有機顔料や、アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、亜鉛粉、リン化鉄粉、金属コ−ティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉等の光輝材などを挙げることができる。かかる着色顔料としては、1種類を使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
以上説明したような塗膜の塗装方法としては、特に限定されるものではなく、一般に公知の塗装方法を採用することができる。具体的には、ロールコーター法、リンガーロールコート法、カーテンコーター法、スプレーガン法、浸漬法、静電塗装法などの方法を挙げることができる。これらの中では、ロールコーター法、カーテンコーター法を用いることが好ましい。更に、これらの塗布装置を完備した一般的コイルコーティングライン、シートコーティングラインと呼ばれる連続塗装ラインで塗布すると、塗装作業効率が良く、大量生産が可能であるため、より好適である。
また、上記のような方法により塗膜をめっき層上に形成した後に、かかる塗膜を硬化させる処理を行う。塗膜を硬化させる硬化処理は、白色塗料を硬化させることが出来る方法であればその形態は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。かかる硬化処理としては、例えば、熱風炉にて、加熱到達温度が180℃程度となるように焼付を行うことが好ましい。
以上、本発明に係るめっき鋼材の製造方法について、詳細に説明した。
以上、説明したように、本発明に係るめっき鋼材によれば、下層をZnめっき層とし、上層を中性の電気めっき浴から電解析出させたSnめっき層を合金化させたSn−Znめっき層とすることで、優れた耐食性を有する白色のめっき鋼材を得ることができる。
以下では、実験例を示しながら本発明を説明するが、本発明は、以下に示す実験例に限定されるものではない。
(実験例1)
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C:0.13%、Mn:0.5%、P:0.05%、S:0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で、60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、浴組成(1)としてZnSO(1mol/L)、NaSO(30g/L)、HSO(15g/L)からなるZnめっき浴で電流密度100A/dm、6.5秒通電、浴温50℃、対極がPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行い、Znめっき層を形成した。このときのZnめっき層の付着量は、Zn量換算で20g/mであった。
次に浴組成(2)として、硫酸スズ(40g/L)及びピロリン酸カリウム(0.7mol/L)からなるSnめっき浴で、電流密度5A/dm、浴温50℃、pH=9、フローセルを用いて相対流速1m/sとし、対極をPtめっき/Tiとする条件でSnめっき層を形成した。このとき、通電時間を変更しSnめっき層の付着量を変更した。
引き続き、炉温を320℃に設定し、Znめっき層とSnめっき層を形成した鋼板を炉内で加熱し、所定の加熱到達温度(PMT: Peak Metal Temperature)に到達した後、直ちに水冷した。これにより、Snめっき層を合金化させて、Sn−Znめっき層とした。一部の条件では、炉温を320℃に設定し、更にアルゴン中で加熱して酸化の影響を除外した。
めっき後、得られためっき鋼板を水洗・乾燥して、分光測色計によりLを測定した。測定機器は、コニカミノルタ製CM−2600dであり、光源D65、10°視野で測定し、SCI方式のデータを採取した。
また、得られためっき鋼板について、上記の方法により各種物性値を測定するとともに、めっき層をSEMにより観察して、めっき層に含まれる金属組織とその面積率とを特定した。
更に、肩R5mmのカップ絞り後、60℃、90%RH雰囲気に2000時間曝し、光学顕微鏡200倍でWhiskerの有無を確認した。
Figure 0005858198
得られた結果を、表1に示した。ここで、得られためっき鋼板について、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が4質量%以上8質量%未満であったものは、Sn−Znめっき層がSn初晶及びSn−Zn共晶から構成されていた。また、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が8質量%以上10質量%以下であったものは、Sn−Znめっき層がSn−Zn共晶のみから構成されていた。また、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が10質量%超過50質量%以下であったものは、Sn−Znめっき層がZn初晶及びSn−Zn共晶から構成されていた。
発明例である符号1〜11、14〜18は、いずれも規定のLを満足した。一方、比較例である符号12は、Znめっき量が不足し、犠牲防食時間が不十分となり、比較例である符号13は、Znめっき量が過多となり、L、aが不足して、やや暗い印象を受けた。また、比較例である符号19は、Snめっき量が不足し、Snの被覆率が不十分でLの値が低く、比較例である符号20は、Snめっき量が過多となり、b*が規定を超過するとともに、Whiskerが発生した。
(実験例2)
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C:0.13%、Mn:0.5%、P:0.05%、S:0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で、60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、浴組成(3)としてZnSO(0.5mol/L)、FeSO(0.5mol/L)、NaSO(100g/L)、HSO(15g/L)からなるZn−Feめっき浴、浴組成(4)としてのZnSO(0.5mol/L)、CoSO(0.5mol/L)、HSO(15g/L)からなるZn−Coめっき浴、浴組成(5)としてのZnSO(0.5mol/L)、NiSO(0.5mol/L)、NaSO(100g/L)、HSO(15g/L)からなるZn−Niめっき浴をそれぞれ用い、電流密度100A/dm、6.5秒通電、浴温50℃、対極Ptめっき/Tiの条件で電気めっきを行い、Zn−Feめっき層、Zn−Coめっき層、Zn−Niめっき層をそれぞれ形成した。
次に、実施例1と同様の浴組成(2)のSnめっき浴を用い、電流密度5A/dm、浴温50℃、pH=9とし、更にフローセルを用いて相対流速1m/sとし、対極をPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行い、Snめっき層を形成した。
引き続き、炉温を320℃に設定し、Znめっき層とSnめっき層を形成した鋼板を炉内で加熱し、所定の温度に到達した後、直ちに水冷した。これにより、Snめっき層を合金化させて、Sn−Znめっき層とした。
めっき後、得られためっき鋼板を水洗・乾燥して、分光測色計によりLを測定した。測定機器は、コニカミノルタ製CM−2600dであり、光源D65、10°視野で測定し、SCI方式のデータを採取した。
また、得られためっき鋼板について、上記の方法により各種物性値を測定するとともに、めっき層をSEMにより観察して、めっき層に含まれる金属組織とその面積率とを特定した。
Figure 0005858198
得られた結果を、表2に示した。ここで、得られためっき鋼板について、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が4質量%以上8質量%未満であったものは、Sn−Znめっき層がSn初晶及びSn−Zn共晶から構成されていた。また、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が8質量%以上10質量%以下であったものは、Sn−Znめっき層がSn−Zn共晶のみから構成されていた。また、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が10質量%超過50質量%以下であったものは、Sn−Znめっき層がZn初晶及びSn−Zn共晶から構成されていた。
発明例である符号21〜23では、下層のZnめっきがZn−Feめっき層、Zn−Coめっき層、Zn−Niめっき層といった亜鉛合金めっきである場合であっても、いずれも規定のLを満足した。
(実験例3)
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C:0.13%、Mn:0.5%、P:0.05%、S:0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で、60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、実施例1で用いた浴組成(1)からなるZnめっき浴で電流密度100A/dm、浴温50℃、対極をPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行い、通電時間を変更することで、Znめっき層をZn量換算で種々の付着量で形成した。
次に、実施例1と同様の浴組成(2)Snめっき浴を用い、電流密度5A/dm、浴温50℃、pH=9とし、更にフローセルを用いて相対流速1m/sとし、対極をPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行って、通電時間を変更することで、Snめっき層をSn量換算で種々の付着量で形成した。
引き続き、炉温を320℃に設定し、Znめっき層とSnめっき層を形成した鋼板を炉内で加熱し、所定の温度に到達した後、直ちに水冷した。これにより、Snめっき層を合金化させて、Sn−Znめっき層とした。
めっき後、得られためっき鋼板を水洗・乾燥して、分光測色計によりLを測定した。測定機器は、コニカミノルタ製CM−2600dであり、光源D65、10°視野で測定し、SCI方式のデータを採取した。
また、得られためっき鋼板について、上記の方法により各種物性値を測定するとともに、めっき層をSEMにより観察して、めっき層に含まれる金属組織とその面積率とを特定した。
更に、本実験例では、比較例として、上記の合金化処理の加熱到達温度(PMT)を変化させて、Sn−Zn合金層の組成を変化させたものと、上記の合金化処理を実施していない、Snめっき層のままの鋼板も準備した。
得られためっき鋼板の端面を上バリとなる様に露出させ、塩水噴霧試験(SST)24時間後、端面からの腐食幅を測定し、めっき層の犠牲防食能を評価した。腐食幅2mm未満をE(Excellent)とし、2mm以上5mm未満をG(Good)とし、5mm以上をP(Poor)とした。
Figure 0005858198
得られた結果を、表3に示した。ここで、得られためっき鋼板について、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が4質量%以上8質量%未満であったものは、Sn−Znめっき層がSn初晶及びSn−Zn共晶から構成されていた。また、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が8質量%以上10質量%以下であったものは、Sn−Znめっき層がSn−Zn共晶のみから構成されていた。また、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が10質量%超過50質量%以下であったものは、Sn−Znめっき層がZn初晶及びSn−Zn共晶から構成されていた。
発明例である符号25〜43、45〜53は、いずれも規定のLを満足し、優れた犠牲防食能を示した。一方、比較例である符号24は、Znめっき量が不足し、十分な犠牲防食能を得ることができず、比較例である符号44は、Sn−Znめっき層におけるZn濃度が不足し、十分な犠牲防食能を得ることができなかった。また、合金化処理を行っていない比較例である符号54〜57は、規定のLを満足せず、かつ、十分な犠牲防食能を得ることができなかった。
(実験例4)
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C:0.13%、Mn:0.5%、P:0.05%、S:0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、浴組成(1)としてZnSO(1mol/L)、NaSO(30g/L)、HSO(15g/L)からなるZnめっき浴を用い、電流密度100A/dm、6.5秒通電、浴温50℃、対極がPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行い、Znめっき層を、Zn換算量で20g/mの付着量になるように形成した。
次にSnめっき浴中でのZnめっきの溶解性を調べるために、浴組成(2)として、硫酸スズ(40g/L)及びピロリン酸カリウム(0.7mol/L)からなるSnめっき浴を用い、浴温50℃にてpHを種々調整し、Znめっき層を形成した鋼板を10秒間浸漬した。Snめっき浴のpH調整は、酸性側にするときにはHSOを使用し、アルカリ側にするときにはKOHを使用した。10秒浸漬後、Znの溶解量を蛍光X線で測定し、浸漬前後の差からSnめっき浴へのZnの溶解量を測定した。溶解量が0.5g/m以下をE(Excellent)とし、0.5g/m以上1.0g/m未満をG(Good)とし、1.0g/m以上をP(Poor)とした。
Figure 0005858198
得られた結果を、表4に示した。表4から明らかなように、Snめっき液のpHが7以上10以下であった符号58〜63(発明例)では、活性溶解を防止することができた。一方、低pHであった符号21(比較例)又は高pHであった符号64(比較例)では、Znの溶解が顕著であった。pHが7未満又は10超過である領域でSnめっきを行う場合には、微弱通電など無通電の時間帯をなくすことが重要であり、操業上、煩雑さを伴うこととなる。
(実験例5)
ピロリン酸塩によるpH緩衝能を調査した。
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C:0.13%、Mn:0.5%、P:0.05%、S:0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で、60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、浴組成(1)としてZnSO(1mol/L)、NaSO(30g/L)、HSO(15g/L)からなるZnめっき浴を用い、電流密度100A/dm、6.5秒通電、浴温50℃、対極がPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行って、Znめっき層を形成した。このときのZnめっき層の付着量は、Zn量換算で20g/mであった。
次に、硫酸スズ(40g/L)とピロリン酸カリウムからなるSnめっき浴と、硫酸スズ(40g/L)とピロリン酸ナトリウムからなるSnめっき浴とにおいて、ピロリン酸塩濃度を変化させつつ、電流密度10A/dm、浴温50℃、pH=9、めっき浴量5Lの条件にて、8時間通電を行い、めっき浴のpH変動を調査した。通電後、pH=8.5〜9.5をE(Excellent)とし、pH=7以上8.5未満又はpH=9.5超過10未満をG(Good)とし、pH=7未満又はpH=10を超過したものをP(Poor)とした。
Figure 0005858198
得られた結果を、表5に示した。符号65、72では、ピロリン酸塩濃度が低いため、pH緩衝能力が不足し、通電後のSnめっき液のpHが大きく変動した。一方、ピロリン酸塩濃度を高くするとpH変動は抑制されるが、符号70、71のように、ある濃度以上では効果が飽和した。また、符号73〜78に示したピロリン酸ナトリウムにおいても、符号65〜71に示したピロリン酸カリウムと同様のpH緩衝能力を示した。
(実験例6)
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C;0.13%、Mn;0.5%、P;0.05%、S;0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で、60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、浴組成(1)としてZnSO(1mol/L)、NaSO(30g/L)、HSO(15g/L)からなるZnめっき浴を用い、電流密度100A/dm、6.5秒通電、浴温50℃、対極がPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行い、Znめっき層を形成した。このときのZnめっき層の付着量は、Zn換算で20g/mであった。
次に、実施例1と同様の浴組成(2)からなるSnめっき浴を用い、浴温50℃、pH=9とし、対極をPtめっき/Tiとする条件で、フローセルを用いて鋼板とめっき浴との相対流速を変更し、更に電流密度と通電時間を変更しつつ、Snめっき層をSn換算量で1g/mの付着量となるように形成した。
引き続き、炉温を320℃に設定し、Znめっき層とSnめっき層を形成した鋼板を炉内で加熱し、所定の温度に到達した後、直ちに水冷した。これにより、Snめっき層を合金化させて、Sn−Znめっき層とした。
また、本実験例では、比較例として、上記の合金化処理を実施していない、Snめっき層のままの鋼板も準備した。
めっき後、得られためっき鋼板を水洗・乾燥して、分光測色計によりLを測定した。測定機器は、コニカミノルタ製CM−2600dであり、光源D65、10°視野で測定し、SCI方式のデータを採取した。
その後、めっき鋼板を肩R=3mmで90°曲げした後にテープ剥離してめっき層の密着性を評価した。剥離がなければG(Good)とし、剥離が認められればP(Poor)とした。
Figure 0005858198
得られた結果を、表6に示した。符号79のように、電流密度が0.1A/dm未満である場合は成膜速度が遅く、めっき密着性が悪くなった。別途SEMで調査した結果、Sn粒が粗大化していることがわかった。逆に符号86のように電流密度が20A/dmを超えると、均一で密着性の良いめっきが得難く、めっき密着性が悪くなった。通電時間を加味すると、より好ましい電流密度範囲は5A/dm以上15A/dm以下で、この範囲では生産性がよく、均一で密着性の良いめっきを得られることが判明した。
また、特に電流密度が高い条件では、めっき液と被めっき鋼材間の相対流速が0.5m/sec以上が好ましく、相対流速が低い符号88では密着性が劣位となった。相対流速の上限は特にめっき性能には影響しないが、5m/sec以上になるとめっき液の持ち出しが起こり、符号94のような対抗流を生むポンプ能力といった課題が発生する。
(実験例7)
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C:0.13%、Mn:0.5%、P:0.05%、S:0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で、60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、浴組成(1)としてZnSO(1mol/L)、NaSO(30g/L)、HSO(15g/L)からなるZnめっき浴を用い、電流密度100A/dm、6.5秒通電、浴温50℃、対極がPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行い、Znめっき層を形成した。このときのZnめっき層の付着量は、Zn量換算で20g/mであった。
次に、実施例1と同様の浴組成(2)からなるSnめっき浴を用い、電流密度5A/dm、浴温50℃、pH=9とし、更にフローセルを用いて鋼板とめっき浴との相対流速を1m/sとし、対極としてPtめっき/Tiを用いてSnめっき層を形成した。このとき、通電時間を変更しSnめっき層の付着量を変更した。
引き続き、炉温を320℃に設定し、Znめっき層とSnめっき層を形成した鋼板を炉内で加熱し、所定の温度に到達した後、直ちに水冷した。一部の条件では、炉温を370℃に設定し、更にアルゴン中で加熱して酸化の影響を除外した。
加熱処理後、得られためっき鋼板を水洗・乾燥し、分光測色計によりLを測定した。測定機器は、コニカミノルタ製CM−2600dであり、光源D65、10°視野で測定し、SCI方式のデータを採取した。
また、得られためっき鋼板について、上記の方法により各種物性値を測定するとともに、めっき層をSEMにより観察して、めっき層に含まれる金属組織とその面積率とを特定した。
更に、5%NaCl水溶液中で自然浸漬電位を測定して、Feとの電位差を算出した。
また、めっき鋼板の端面が上バリとなる様に露出させ、塩水噴霧試験(SST)72時間後、端面からの腐食幅を測定し、めっき層の犠牲防食能を評価した。評価は、腐食幅2mm未満をE(Excellent)とし、2mm以上5mm未満をG(Good)とし、5mm以上をP(Poor)とした。
Figure 0005858198
得られた結果を、表7に示した。ここで、得られためっき鋼板について、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が4質量%以上8質量%未満であったものは、Sn−Znめっき層がSn初晶及びSn−Zn共晶から構成されていた。また、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が8質量%以上10質量%以下であったものは、Sn−Znめっき層がSn−Zn共晶のみから構成されていた。また、Sn−Znめっき層中のZnの含有量が10質量%超過50質量%以下であったものは、Sn−Znめっき層がZn初晶及びSn−Zn共晶から構成されていた。
符号95の比較例は、Snの絶対量が不足しているため、Lが88に到達しなかった。符号60は、Snめっき量が多く、Feとの電位差が180mV卑であり、十分な犠牲防食能を発現する200mV卑には到達していなかった。符号61は、白色を示す点では良好であるが、Sn−Znの溶融温度に到達しておらず、ほぼSnの自然浸漬電位を示し、Feを犠牲防食しなかった。符号105は、Feより200mV卑であり、このときの上層のSn−Zn合金層を断面SEM−EDXにより半定量分析すると、Sn−4mass%Znであった。符号105、106は、温度むらに起因する模様が発生した。符号109、110は、PMTがやや高くFeとの合金化が進行した過合金気味であり、表面が荒れたためLが低下した。符号111は、Snの酸化膜成長に起因する黄変が発生した。符号112、113は、酸化の影響を抑制するためにAr中で加熱したが、Sn−Zn合金のZn比率が高く、Lが88に到達しなかった。その他は、白色度を維持し、Feより200mV以上卑であり、犠牲防食能を発揮した。
(実験例8)
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C:0.13%、Mn:0.5%、P:0.05%、S:0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で、60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、浴組成(1)としてZnSO(1mol/L)、NaSO(30g/L)、HSO(15g/L)からなるZnめっき浴で電流密度100A/dm、6.5秒通電、浴温50℃、対極がPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行い、Znめっき層を形成した。このときのZnめっき層の付着量は20g/mであった。
次に、実施例1で用いた浴組成(2)からなるSnめっき浴で、電流密度5A/dm、浴温50℃、pH=9、フローセルを用いて鋼板とめっき浴との相対流速を1m/sとし、対極をPtめっき/Tiとする条件で、SnめっきをSn換算量で5g/mの付着量となるように形成した。
引き続き、炉温を320℃に設定し、Znめっき層とSnめっき層を形成した鋼板を炉内で加熱し、所定の温度に到達した後、直ちに水冷した。これにより、Snめっき層を合金化させて、Sn−Znめっき層とした。
めっき後、水洗・乾燥して、各種粗度の調質圧延ロールによりめっき最表面の粗度を制御した。
その後、二次元粗度計により圧延C方向のRaを測定し、光沢度計でGs60°を測定し、分光測色計によりLを測定した。測定機器は、コニカミノルタ製CM−2600dであり、光源D65、10°視野で測定し、SCI方式のデータを採取した。
Figure 0005858198
得られた結果を、表8に示した。表8から明らかなように、全ての水準で、Lは本発明例となったが、符号114、115は、低粗度で光沢度が高く、鏡面状態となって白色度がやや低下した。
(実験例9)
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板(C:0.13%、Mn:0.5%、P:0.05%、S:0.04%)を、濃度30g/LのNaSiO処理液で、60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗後、濃度50g/Lの60℃のHSO水溶液に10秒浸漬し、その後に水洗するめっき前処理を行った。
その後、下層めっきとして、浴組成(1)としてZnSO(1mol/L)、NaSO(30g/L)、HSO(15g/L)からなるZnめっき浴で電流密度100A/dm、6.5秒通電、浴温50℃、対極がPtめっき/Tiとする条件で電気めっきを行い、Znめっき層を形成した。このときのZnめっき層の付着量は20g/mであった。
次に、実施例1で用いた浴組成(2)からなるSnめっき浴で、電流密度5A/dm、浴温50℃、pH=9、フローセルを用いて鋼板とめっき浴との相対流速を1m/sとし、対極をPtめっき/Tiとする条件で、SnめっきをSn換算量で5g/mの付着量となるように形成した。
引き続き、炉温を320℃に設定し、Znめっき層とSnめっき層を形成した鋼板を炉内で加熱し、所定の温度に到達した後、直ちに水冷した。これにより、Snめっき層を合金化させて、Sn−Znめっき層とした。
引き続き、上記めっき層上に、
(1)二酸化チタンとポリエステル樹脂とを含有する塗料、
(2)酸化亜鉛とポリエステル樹脂とを含有する塗料、
(3)硫酸バリウムとポリエステル樹脂とを含有する塗料、
(4)塩基性炭酸塩である塩基性炭酸マグネシウムとポリエステル樹脂とを含有する塗料
(5)二酸化チタン(30質量%)と、防錆顔料として機能するカルシウム修飾シリカ(10質量%)と、エポキシ樹脂(5質量%)と、ポリエステル樹脂(55質量%)と、を含有する塗料、
(6)二酸化チタン(60質量%)と、防錆顔料として機能するカルシウム修飾シリカ(0.5質量%)と、エポキシ樹脂(0.5質量%)と、Si系カップリング剤である3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(3質量%)と、ポリエステル樹脂(37質量%)と、を含有する塗料、
の何れかを塗装し、PMT180℃で焼き付けた。
塗装膜厚はそれぞれ8μm、16μm、24μmとし、比較のめっき鋼板として電気Znめっき鋼板を使用し、それぞれのLを測定した。
Figure 0005858198
得られた結果を、表9に示した。その結果、Sn−Znめっき/電気Znめっきは、電気Znめっきよりも高いLを示し、塗装後もより高い白色度を得ることができた。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (26)

  1. 鋼材と、
    前記鋼材の表面に位置し、少なくともSn及びZnを含むめっき層と、
    を備え、
    前記めっき層は、
    前記鋼材上に位置するZnめっき層と、
    前記Znめっき層上に位置するSn−Znめっき層と、
    からなり、
    前記めっき層のSnの付着量は、Sn量換算で、0.17g/m 以上0.4g/m 以下であり、
    前記めっき層のZnの付着量は、Zn量換算で、10g/m以上60g/m以下であり、
    前記Snの付着量と前記Znの付着量の比は、Sn:Zn=3:97〜0.5:99.5であり、
    前記Sn−Znめっき層におけるZn濃度は、4質量%以上50質量%以下である、めっき鋼材。
  2. 前記めっき層の表面は、光源D65光、10°視野の分光測色において、SCI方式で、L88以上、−1.0≦a≦0.5、0≦b≦3.0を示す、請求項1に記載のめっき鋼材。
  3. 前記Sn−Znめっき層は、SnとZnとの共晶を少なくとも含む組織からなる、請求項1又は2に記載のめっき鋼材。
  4. 前記めっき層のSnの付着量は、Sn量換算で、0.26g/m以上0.3g/m以下である、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  5. 前記めっき層のZnの付着量は、Zn量換算で、15g/m以上40g/m以下である、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  6. 前記めっき層のZnの付着量は、Zn量換算で、20g/m以上30g/m以下である、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  7. 前記Snの付着量と前記Znの付着量の比は、Sn:Zn=1.5:98.5〜1:99である、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  8. 前記Sn−Znめっき層におけるZn濃度は、8質量%以上35質量%以下である、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  9. 前記Sn−Znめっき層におけるZn濃度は、10質量%以上25質量%以下である、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  10. 前記Znめっき層は、Zn−Fe相を更に含む、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  11. 前記めっき層は、Sn−Zn−Fe相を含む、請求項1〜10の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  12. 液温25℃で濃度5質量%のNaCl水溶液中における前記めっき層の表面の自然浸漬電位が、Feよりも200mV以上卑である、請求項1〜11の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  13. 前記めっき層の表面粗度が、算術平均粗さRaで、0.2μm超過3.0μm以下である、請求項1〜12の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  14. 60°鏡面光沢法Gs60°による前記めっき層の表面光沢度が、50以上200未満である、請求項1〜13の何れか1項に記載のめっき鋼材。
  15. 請求項1〜14の何れか1項に記載のめっき鋼材と、
    前記めっき鋼材の表面に形成された白色塗膜と、
    を備える、塗装鋼材。
  16. 前記白色塗膜は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛から選ばれる白系顔料を含む、請求項15に記載の塗装鋼材。
  17. 前記白色塗膜は、二酸化チタンと、カルシウム修飾シリカと、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂と、を少なくとも含有し、
    前記白色塗膜中の前記二酸化チタンの濃度は、30質量%以上60質量%以下であり、
    前記白色塗料中の前記カルシウム修飾シリカの濃度は、0.5質量%以上10質量%であり、
    前記白色塗膜中の前記エポキシ樹脂の濃度は、0.5質量%以上5質量%以下であり、
    前記白色塗膜の膜厚は、8μm〜24μmである、請求項15に記載の塗装鋼材。
  18. 前記白色塗膜は、Si系カップリング剤を更に含有する、請求項17に記載の塗装鋼材。
  19. 鋼材にZnめっき層を形成する工程と、
    前記Znめっき層上に、pH7〜10のめっき浴を用いてSnめっき層を電解析出させる工程と、
    前記Znめっき層及び前記Snめっき層の形成された前記鋼材を、200℃以上300℃以下に昇温する工程と、
    を含み、
    Snの付着量を、Sn量換算で、0.17g/m 以上0.4g/m 以下とし、
    Snの付着量とZnの付着量の比を、Sn:Zn=3:97〜0.5:99.5とする、めっき鋼材の製造方法。
  20. Znの付着量を、Zn量換算で、10g/m 以上60g/m 以下とする、請求項19に記載のめっき鋼材の製造方法。
  21. 前記めっき浴中に、ピロリン酸塩が含有される、請求項19又は20に記載のめっき鋼材の製造方法。
  22. 前記Snめっき層を、0.1A/dm以上20A/dm以下の電流密度で析出させる、請求項19〜21の何れか1項に記載のめっき鋼材の製造方法。
  23. 前記Snめっき層の電解析出において、前記めっき浴と被めっき鋼材との相対液流速を0.5m/秒以上とする、請求項1922の何れか1項に記載のめっき鋼材の製造方法。
  24. 前記鋼材を200℃以上300℃以下に昇温する工程の後に、昇温後の前記鋼材の表面に白色塗膜を形成する工程を更に含む、請求項1923の何れか1項に記載のめっき鋼材の製造方法。
  25. 前記白色塗膜は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛から選ばれる白系顔料を含む、請求項24に記載のめっき鋼材の製造方法。
  26. 前記白色塗膜は、二酸化チタンと、カルシウム修飾シリカと、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂と、を少なくとも含有する白色塗料を含む、請求項24に記載のめっき鋼材の製造方法。
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