JP3554508B2 - 色調の安定した電気亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面色調の安定した電気亜鉛系めっき鋼板に関し、この亜鉛系めっき鋼板は自動車や家電・産業機械製品、OA機器などの外板や建材等に上塗り塗装の有無にかかわらず用いられる亜鉛系めっき鋼板として有用である、色調の安定した電気亜鉛系めっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気亜鉛系めっき鋼板に対して、外観、特に色調に関する要求が需要家の間に高まっている。これは、需要家での工程省略とコストダウンのために、上塗り塗装工程を省略して裸で使用する、あるいは薄い塗装しか行わないことが増えてきた結果、電気亜鉛系めっき鋼板の表面外観が実質的にそのまま製品の外観となる、あるいは薄い塗装しか行わないため下地が製品外観に大きく影響するので、その外観特性のうち明度(JIS Z 8730による)と色差といった色調に関する要求が厳しくなっている。明度は高いほど明るく白っぽい外観となるので上塗り塗装をしない用途で特に好まれるが、上塗り塗装の際にも上の色が鮮やかとなるので需要家のニーズは高い。また、色差については上塗り塗装をしない裸使用で同一部品を組み立てる際に仕上がりが綺麗なので特に重要視されている。
【0003】
こうした状況の中で、明度の高い電気亜鉛系めっき鋼板に関する方法はいくつか提案されている。例えば特公平5−36514号公報には、電気亜鉛系めっき鋼板のめっき層における特定結晶面の配向性を規定し、具体的には(002)面の配向指数を0.5以上とし、且つ(101)面の配向指数を1.0以下に抑えることによって、色調の明るいクロメート処理電気亜鉛系めっき鋼板が得られるとの記載がある。また、特公平7−11071号公報にも、上記と同様に電気亜鉛系めっき鋼板のめっき層における特定結晶面の配向性を規定する技術が開示されており、具体的には(103)面の配向指数を1.0以下とし、(101)面の配向指数を1.0以下とし、あるいは(110)面の配向指数を0.6以上、(101)面の配向指数を1.0以下とし、更には(002)面の配向指数を1.0以下に抑えることにより、明度が55以上の色調の明るいクロメート処理電気亜鉛系めっき鋼板を得ている。
【0004】
さらに、特願平10−18078号には、さらに高い明度を得るための方法として、電気亜鉛系めっき鋼板のめっき層における特定結晶面の配向性を規定する技術が開示されており、具体的には(002)面の配向指数を1.0以上、(101)面の配向指数を1.0以下、(103)面の配向指数を2.0以上とすることによって、色調の明るい亜鉛系めっき鋼板が得られるとの記載がある。また、特願平10−18079号にも上記と同様に電気亜鉛系めっき鋼板のめっき層における特定結晶面の配向性を規定する技術が開示されており、具体的には(002)面と(004)面および(103)面の配向指数の和が8.0以上、あるいは(100)面、(101)面、(102)面および(110)面の配向指数の和を1.0以下とすることにより、亜鉛系めっき鋼板の明度が80以上、クロメート処理した亜鉛系めっき鋼板の明度が75以上、有機被覆鋼板の明度が70以上である色調の明るい電気亜鉛系めっき鋼板を得ている。
上記公報に記載された方法は電気亜鉛系めっき鋼板のめっき結晶の特定結晶面の配向性を規定することにより明度を高める技術であり、色調の明るい電気亜鉛系めっき鋼板を得るところにその特徴を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際に需要家が電気亜鉛系めっき鋼板の外観に要求しているのは「高い明度」と「少ない色のばらつき」であり、ただ単に明度が高いだけでは需要家の外観に対するニーズを満たすことができなくなっているのが実状である。具体的にはL値(JIS Z 8730による)で65以上の明度を有し、コイル内あるいはコイル間の色調ばらつきΔEが3以内である、明度が高く、かつ非常に狭い範囲に色調のばらつきを抑えた鋼板が必要となっている。ここで、ΔEはJIS Z 8730に規定された色差で以下の式によって表わされるものである。
ΔE=[(ΔL)2 +(Δa)2 +(Δb)2 ]1/2
本発明においては、ΔL=LS −L、Δa=aS −a、Δb=bS −bであり、LS はLの平均値、aS とbS はそれぞれLS を示す鋼板のa値、b値である。本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は高い明度と少ない色調ばらつきを実現し得る様な電気系亜鉛めっき鋼板を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては、鋼板の片面もしくは両面に電気亜鉛系めっき層を有する鋼板において、該亜鉛めっき層の(002)面の配向指数が1.5以上、(101)面の配向指数が1.0超で、且つ、それ以外の面の配向指数の和を4.0〜6.0の範囲にすることにより、色調の安定した電気亜鉛系めっき鋼板を得ることが可能となった。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に至る経緯を詳細に説明する。本発明者らは、電気亜鉛系めっき鋼板の製造条件を変化させ、得られる電気系亜鉛めっき鋼板の色調とめっき層の結晶配向性の関係を詳細に調査した。この際、電気亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面色調はJIS Z 8730に規定されている明度(L値)と色差(ΔE)によって評価した。また、めっき層の結晶配向性はX線回折によって得られる回折ピークから下記の方法で算出した。
(hkl)面の配向指数=(hkl)面のピーク強度/(hkl)面の標準回折ピーク強度
【0008】
図1は電気亜鉛系めっき層の(002)面の配向指数がめっき層表面の明度(L値)に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフである。この図から明らかなように、(002)面の配向指数が1.5以上であれば明度が65以上となることがわかる。
次に、図2は電気亜鉛系めっき層の(002)面の配向指数がめっき層表面の色差(ΔE)に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフである。この図から明らかなように色差は最大19となり、(002)面の配向指数を規定するだけでは色調のばらつきを抑えるには不十分である。
【0009】
そこで、色差のばらつきを押さえ、色差を3以内に抑えるため更に他の結晶面の配向性を調査し、(002)面以外の結晶面の配向指数が色差に与える影響を詳細に検討した。その結果、(101)面の配向指数およびその他の結晶面の配向指数の和によって色差に顕著な差異が現れ、(101)面の配向指数が1.0超で、かつその他の結晶面の配向指数の和が4.0〜6.0の範囲にある時に限り色差が3以内に抑えられ、非常に安定して色のばらつきが少ないことが確認された。
【0010】
図3は電気亜鉛系めっき層の(002)面と(101)面およびその他の結晶面の配向指数の和がめっき層表面の色差(ΔE)に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフである。この図から、(002)面の配向指数が1.5以上、(101)面の配向指数が1.0超で、且つ、その他の結晶面の配向指数の和が4.0〜6.0の範囲にある時に限って色差が3以内に抑えられることがわかる。
これらの結果からも明らかである様に明度が65以上で、且つ色差が3以内の色調の安定した電気亜鉛系めっき鋼板を得るには、該亜鉛めっき層の(002)面の配向指数が1.5以上、(101)面の配向指数が1.0超で、且つ、それ以外の面の配向指数の和を4.0〜6.0の範囲にコントロールすることが不可欠である。
【0011】
本発明は高い明度と少ない色差に特徴を有するものであり、めっき付着量には特に制限はないが、めっき付着量が少なすぎると亜鉛系めっき鋼板本来の目的である耐食性が不十分となるので、3g/m2 以上、好ましくは10g/m2 以上とすることが望ましい。一方めっき付着量の上限については、付着量の増加に伴う電力コスト増や加工性低下から90g/m2 以下、好ましくは60g/m2 以下に抑えるのが一般的である。
【0012】
また、本発明の亜鉛系めっき層は、その用途に応じて広汎の片面側のみに形成し、あるいは両面に形成することが可能である。更には、上記亜鉛系めっき層の形成に先立って、下地めっき層としてNi,Ni−Co,Ni−P等のNi系めっき、Zn−Ni,Zn−Fe,Zn−Cr等のZn系めっき、Fe−P,Fe−B等のFe系めっき等を施した多層めっき構造とすることも可能である。
また、本発明の電気亜鉛系めっき鋼板は高い明度と安定した色調の故にそのまま製品化しえる他、必要に応じて耐食性、加工性、耐指紋性等の改善のため、その表面にクロメート等の化成処理皮膜を形成したり、有機皮膜を形成することも有効である。
【0013】
なお、クロメート皮膜を形成する主たる目的は、電気亜鉛系めっき層の耐食性向上にあるのでその付着量の下限は金属クロム換算で10mg/m2 以上、好ましくは15mg/m2 以上とすることが望ましい。一方上限については明度確保の点から金属クロム換算の付着量で60mg/m2 以下、好ましくは35mg/m2 以下に抑えるのがよい。
該クロメート皮膜の形成方法についても格別な制限はなく、電解型クロメート処理、浸漬型クロメート処理、塗布型クロメート処理、反応型クロメート処理等のいずれを採用してもよい。また、クロメート皮膜の耐食性や耐疵付き性、耐黒変性などを高めるため、シリカ等の各種酸化物や有機シラン系化合物、更にはリン酸、硝酸、フッ化物、ケイフッ化物などの反応促進剤などを適量含有させたクロメート処理液を採用することも有効である。
有機皮膜の膜厚は0.3〜4.0μmの範囲がよい。0.3μm以下では均一な成膜が困難なため、耐食性の低下を引き起こす可能性があり、4.0μm以上では明度、加工性、導電性、溶接性の確保が難しくなる。
【0014】
上記有機皮膜の構成素材にも格別の規制はないが、好ましいものを以下に例示する。エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン性不飽和カルボン酸を重合成分として含むエチレン共重合体樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、あるいはこれらのうち2種以上を混合した有機樹脂を主体とし、必要により耐食性、潤滑性、耐疵付き性、加工性、溶接性、電着塗装性、塗膜密着性などの一層の向上を期してシリカなどの各種酸化物粒子や各種リン酸塩などの無機顔料、ワックス粒子、有機シラン化合物、ナフテン酸塩等を含有せしめた有機系皮膜形成剤。あるいは、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ、ケイ酸リチウム等のケイ酸塩を主体とし、必要により造膜性、耐食性、潤滑性、耐疵付き性、加工性、溶接性、電着塗装性、塗膜密着性などの一層の向上を期してシリカなどの各種酸化物粒子や各種リン酸塩などの無機顔料、ワックス粒子、有機シラン化合物、ナフテン酸塩等を含有せしめた有機系皮膜形成剤。これらの中から1種もしくは2種以上を任意に選択して使用することができる。
また、本発明で使用する下地鋼板にも特に制限はなく、通常の軟鋼板をはじめ、高強度鋼板や各種の合金鋼板がすべてその対象となる。
【0015】
【実施例】
以下に、実例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはすべて本発明の技術範囲に包含される。
めっき原板としては冷延鋼板を使用した。次いでめっきの前処理として、アルカリ脱脂後水洗、酸洗後水洗を行った後に硫酸亜鉛主体の酸性めっき浴から電気亜鉛系めっきを実施した。また、その一部については、クロメート処理を行ってクロメート皮膜を形成し、更にそのうちの一部にはクロメート皮膜の上層にクリアー皮膜を形成した。その結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
【発明の効果】
本発明は、以上の様に構成されており、鋼板の片面もしくは両面に電気亜鉛系めっき層を有する鋼板において、該亜鉛めっき層の(002)面の配向指数が1.5以上、(101)面の配向指数が1.0超で、且つ、それ以外の面の配向指数の和を4.0〜6.0の範囲にコントロールすることにより、色調の安定した電気亜鉛系めっき鋼板を得ることが可能となり、上塗り塗装なし、ありの両方の用途において需要家ニーズを満たす外観品位を達成することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気亜鉛系めっき層の(002)面の配向指数が明度(L値)に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフである。
【図2】電気亜鉛系めっき層の(002)面の配向指数が色差(ΔE)に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフである。
【図3】電気亜鉛系めっき層の(002)面と(101)面の配向指数およびその他の結晶面の配向指数の和が色差(ΔE)に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフである。
Claims (4)
- 鋼板の片面もしくは両面に電気亜鉛系めっき層を有する鋼板において、該亜鉛めっき層結晶面である(002)面の配向指数が1.5以上、(101)面の配向指数が1.0超で、且つ、それ以外の面の配向指数の和が4.0〜6.0の範囲にあることを特徴とした、色調の安定した電気亜鉛系めっき鋼板。
- 上記亜鉛系めっき層の上に、金属クロム換算で10〜60mg/m2 のクロメート皮膜が形成されている請求項1記載の電気亜鉛系めっき鋼板。
- 上記クロメート皮膜の上に0.3〜4.0μmの有機皮膜を形成した請求項2記載の電気亜鉛系めっき鋼板。
- 亜鉛系めっき層のすぐ上層として0.3〜4.0μmの有機皮膜を形成した請求項1記載の電気亜鉛系めっき鋼板。
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