JP5857873B2 - 1h−テトラゾール誘導体及び質量分析用マトリックス - Google Patents

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Description

本発明は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析において試料のイオン化に用いられるマトリックスに関する。特に、本発明は、低分子物質の測定に有用な質量分析用マトリックスに関する。
質量分析におけるイオン化の1つとしてマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI;Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)法が知られている。MALDI法は、レーザー光を試料に短時間照射して瞬間的に試料を気化させることにより、試料中の測定対象の分子を分解することなくイオン化するものである。
一般にMALDI法は、測定対象の溶液をマトリックス溶液と混合し、さらに必要であれば別のイオン化助剤を混合した上で試料プレート上に塗布し、溶媒を除去することにより質量分析用試料を調製する。
調製された質量分析用試料は、測定対象物質が多量のマトリックスとほぼ均一に混合された状態にある。この試料にレーザー光を照射すると、マトリックスがレーザー光のエネルギーを吸収して熱エネルギーに変換する。このときに試料の一部が急速に加熱され、マトリックス及び測定対象物質が気化する。その過程で測定対象物質がイオン化される。
MALDI法をイオン化に利用した質量分析装置、特にマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOFMS;Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometer)は、タンパク質及び合成高分子化合物などの高分子物質を極めて温和な条件でイオン化することが特徴であり、測定対象化合物のイオンをあまり開裂させることなく分析することが可能である。さらに微量分析にも好適であることから、生命科学や工業材料の分野などで広範囲に利用されている。
MALDI法において、一般的にマトリックスとして用いられている化合物は、例えば、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、ジスラノール、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸(HABA)などの低分子有機化合物である。また、MALDI法におけるイオン化効率やイオン化の安定性などを改善するために、例えば、特開2010−204050号公報(特許文献1)、特開2004−347595号公報(特許文献2)、特開2008−261824号公報(特許文献3)において、マトリックスとして用いられる化合物の改良が試みられている。
これまでMALDI法は、特に高分子化合物のイオン化に利用されてきたが、MALDI法が非常に簡便で且つ高感度なイオン化法であることから、近年、低分子化合物への適用の要望が非常に高まっている。従来のマトリックスを用いてMALDI−TOFMS分析を行った場合、マススペクトルにはマトリックス由来のイオンピークが低質量(m/z)領域に顕著に観測されるが、測定対象物質が高分子化合物である場合には、マトリックス由来のイオンピークは測定対象物質の分析の妨害にはならない。しかしながら、測定対象物質が低分子化合物である場合には、マススペクトル上で、目的とする測定対象物質由来の各種分子イオンピークとマトリックス由来ピークとが混在し、目的とする測定対象物質由来のピークを正確に把握することができなくなる。このような理由により、従来のマトリックスを用いたMALDI−TOFMSで低分子化合物を適切に分析することは極めて困難であった。
一方、マトリックスとしての有機化合物を用いずにMALDI−TOFMSにより低分子化合物を分析する技術として、これまでいくつかの提案がなされている。例えば、ネイチャー(Nature)、1999年5月20日、第339巻、p.243−246(非特許文献1)には、多孔質シリコン(ポーラスシリコン)を基板としたDIOS(Desorption/Ionization on Silicon)と呼ばれるレーザー脱離イオン化法が提案されている。また、ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー・C(The Journal of physical chemistry C)、2007年、第11巻、p.16278−16283(非特許文献2)には、ナノ・フラワーと名付けられた白金ナノ粒子を無機マトリックスとして用いたレーザー脱離イオン化法が提案されている。また、特開2008−261824号公報(特許文献3)には、分子線エピタキシー法を用いてシリコン単結晶上にGeナノドットを形成したプレートを使用したレーザー脱離イオン化法が提案されている。
さらに、マススペクトル上で低質量領域にマトリックス由来のピークを生じさせないために、従来よりも分子量がかなり大きな、いわゆる高分子有機マトリックスを使用したレーザー脱離イオン化法の例も報告されている。
特開2010−204050号公報 特開2004−347595号公報 特開2008−261824号公報
ウェイ(J. Wei)ほか2名、「デソープション-アイオナイゼイション・マス・スペクトロメトリー・オン・ポーラス・シリコン(Desorption-ionization mass spectrometry on porous silicon)」、ネイチャー(Nature)、1999年5月20日、第339巻、p.243−246 カワサキ(H. Kawasaki)ほか3名、「プラチニウム・ナノフラワーズ・フォー・サーフェス-アシステッド・レーザ・デソープション/アイオナイゼイション・マス・スペクトロメトリー・バイオモレキュールズ(Platinum Nanoflowers for Surface-Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry of Biomolecules)」、ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー・C(The Journal of physical chemistry C)、2007年、第11巻、p.16278−16283
マトリックスを使用しない方法や、無機マトリックスを使用する方法は、従来のマトリックスを用いた場合に比べて分析コストがかなり高くなるという問題がある。一方、高分子有機マトリックスを用いる方法では、マトリックスの粘性が高いため作業性が悪く、試料調製が難しいために実用性に乏しいという問題がある。
なお、特開2010−204050号公報においては、一置換フェニル基などを有する1H−テトラゾール誘導体にマトリックスとしての効果があることが確認されている。一方、上記誘導体とは置換基の数や位置を異にした誘導体が同様にマトリックスとしての効果を有するものであるか否かについては予想不可能であることが通常である。
本発明はこうした点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特に分子量が500以下である低分子化合物を測定対象として実用上十分なMALDI質量分析が可能な、低分子有機化合物であるマトリックスを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、2,5−二置換のフェニル基を有する新規の1H−テトラゾール誘導体によって、上記本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
(1)
下記式(I):
(式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜10の有機基である。)
で示される、1H−テトラゾール誘導体。
(2)
前記有機基が、置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選ばれる、(1)に記載の1H−テトラゾール誘導体。
(3)
前記有機基が、メチル基、フェニル基、トリル基及びベンジル基からなる群から選ばれる、(1)又は(2)に記載の1H−テトラゾール誘導体。
(4)
下記式(I):
(式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜10の有機基である。)
で示される質量分析用マトリックス。
(5)
前記有機基が、置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選ばれる、(4)に記載の質量分析用マトリックス。
(6)
前記有機基が、メチル基、フェニル基、トリル基及びベンジル基からなる群から選ばれる、(4)又は(5)に記載の質量分析用マトリックス。
(7)
分子量500以下の物質を測定するための(4)〜(6)のいずれかに記載の質量分析用マトリックス。
本発明の1H−テトラゾール誘導体は、質量分析用マトリックスとして使用された場合、MALDI−TOFMS分析の正イオン測定モードにおいて、マトリックス由来のプロトン付加分子は実質的に検出されない。すなわち、全く検出されないか、又は検出されたとしても無視できる程度である。本発明の1H−テトラゾール誘導体は、MALDI−TOFMS分析の負イオン測定モードにおいては、マトリックス由来のプロトン脱離イオンが極めて明瞭に検出される。これは、1H−テトラゾール誘導体に含まれるプロトンがテトラゾール環から容易に離れ、正イオン測定モードでは測定対象物質に移動してプロトン付加分子の生成に寄与していることを示している。従って、本発明の1H−テトラゾール誘導体は、低分子化合物を正イオン化するためのマトリックスとして極めて有用であることを示している。
従来のマトリックスを使用したMALDI質量分析では、マトリックス由来の分子イオンピークがマススペクトル上でm/z100〜400の低質量領域に顕著に出現する。そのため、特に分子量が500以下の低分子物質を測定対象試料とする場合に、試料由来の分子イオンピークとマトリックス由来の分子イオンピークとが混在し又は重なり、目的とする試料由来のピークを正確に把握することが困難である。
これに対し、本発明のマトリックスを使用したMALDI質量分析では、正イオン測定モードにおいてマトリックス由来の分子イオンピークがマススペクトル上にほとんど観測されない。そのため、低分子化合物を測定対象試料とする場合でも、測定対象試料由来の分子イオンピークを正確に把握することが容易になる。これにより、これまで困難であった低分子化合物のMALDI−TOFMS分析を容易に且つ正確に行うことができるようになる。
本発明の質量分析マトリックスは、取り扱いも容易であり、試料調製の手順も従来のマトリックスと変わりない。従って、分析コストを抑えることができる。
本発明のマトリックスの一例である5−(2,5−ジメトキシフェニル)−1H−テトラゾールのみを質量分析に供して得られた、(a)負イオン測定モード及び(b)正イオン測定モードによるマススペクトルである。 本発明のマトリックスの一例である5−(2,5−ジメトキシフェニル)−1H−テトラゾールを用いてプロプラノロール塩酸塩の質量分析に供して得られた、(a)負イオン測定モード及び(b)正イオン測定モードによるマススペクトルである。 本発明のマトリックスの一例である5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールのみを質量分析に供して得られた、(a)正イオン測定モード及び(b)負イオン測定モードによるマススペクトルである。 本発明のマトリックスの一例である5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールを用いてプロプラノロール塩酸塩の質量分析に供して得られた、(a)正イオン測定モード及び(b)負イオン測定モードによるマススペクトルである。
本発明は、下記式(I)で示される、1H−テトラゾール誘導体である。
式(I)中、R及びRは、同一又は異なっていてよい水素又は炭素数1〜10の有機基である。
有機基としては、置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選ばれうる。より具体的には、メチル基、フェニル基、トリル基、及びベンジル基からなる群から選ばれうる。
本発明の1H−テトラゾール誘導体のpKaは、5.0〜5.7である。上記範囲とすることによって、質量分析用マトリックスとして使用された場合に、試料の効率的なイオン化を好ましく生じさせることができる。
本発明の1H−テトラゾール誘導体の融点は、一般的な質量分析用マトリックスの融点と同程度であることが好ましい。従って、本発明の1H−テトラゾール誘導体の融点はおよそ200℃以上でありうる。上記範囲内に設定することによって、MALDI−TOFMS分析におけるマトリックスとして適切な化合物となる。
本発明の1H−テトラゾール誘導体は、例えば、2,5−二置換ベンゾニトリルとアジ化化合物との付加環化反応により合成することができる。2,5−二置換ベンゾニトリルとアジ化化合物とは、1:4のモル比で反応させることができる。付加環化反応における条件は、100℃、18時間でありうる。
本発明の1H−テトラゾール誘導体は、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)質量分析におけるマトリックスとして有用である。質量分析においては、本発明の1H−テトラゾール誘導体は、これまでのマトリックスと同様に用いることができる。例えば、1〜20mg/mL、好ましくは1〜5mg/mLのマトリックス溶液に調製して用いることができる。マトリックス溶液に用いられる溶媒としては、具体的には、アセトニトリル、メタノ−ル、エタノ−ルなどの有機溶剤、又は、有機溶剤が例えば10〜90体積%、好ましくは30〜80体積%、更に好ましくは33〜75体積%、一例として50体積%水中に含まれる有機溶剤水溶液が用いられうる。
本発明の1H−テトラゾール誘導体が質量分析用マトリックスとして用いる場合、質量分析対象となる試料の種類については特に限定されるものではない。質量分析対象の分子量は、例えば、500以下、例えば100〜400の低分子量であることが好ましい。
上記の低分子量の試料を質量分析対象とする場合は、正イオン測定モードで測定する。
本発明のマトリックスを用いて使用される質量分析装置としては、MALDIイオン源と組み合わされたものであれば特に限定されない。例えば、MALDI-IT(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−イオントラップ)型質量分析装置、MALDI-TOF(マトリックス支援レ−ザ−脱離イオン化-飛行時間)型質量分析装置、MALDI-IT-TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−イオントラップ−飛行時間)型質量分析装置、MALDI-QIT-TOF(マトリックス支援レ−ザ−脱離イオン化-四重極イオントラップ-飛行時間)型質量分析装置、MALDI-FTICR(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴)型質量分析装置などが挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
以下の実施例において、質量分析における測定条件及び質量分析用ターゲットプレート上の試料搭載量は、以下の通りである。
<測定条件>
マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計
型名:島津製作所AXIMA-Performance
光源:パルスN2レーザー(337nm, 3nsec)
イオン極性:ポジティブ又はネガティブ
飛行モード:リフレクトロン
<試料搭載量>
被イオン化検体:50pmol/spot
マトリックス:5μg/spot
カチオン化剤:不使用
[実施例1:5−(2,5−ジメトキシフェニル)−1H−テトラゾールの合成]
2,5−ジメトキシベンゾジトリル10.0g、アジ化ナトリウム13.6g及び塩化アンモニウム11.9gをジメチルホルムアミド100mlに入れ、窒素気流下で18時間、100℃で撹拌した。その後、室温で2時間撹拌し、水300mlを加えて濃塩酸でpH2として、酢酸エチル150mlで3回抽出を行った。酢酸エチル層は、水100mlで4回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ別し、得られた酢酸エチル溶液を40℃、減圧下で溶媒留去し粗生成物12.7gを得た。得られた粗生成物を熱時酢酸エチル60mlに溶解後、室温で24時間放置することにより、析出物として目的化合物4.96g(mp:198.5℃)を得た。
元素分析:計算値 C 54.42, H 4.89, N 24.17 分析値:C 52.33, H 4.92, N 27.23
1H-NMR in DMSO d6:σ7.09(1H, dd, J=9.1, 2.9Hz), 7.20(1H, d, J=9.1 Hz), 7.61(1H, d, J=2.9Hz)
13C-NMR in DMSO d6:σ55.6, 56.0, 110.0, 112.5, 113.1, 113.6, 118.6, 150.7, 151.0, 153.2
得られた5−(2,5−ジメトキシフェニル)−1H−テトラゾールのマススペクトルを図1に示す。図1中、(a)は負イオン測定モード、(b)は正イオン測定モードによるスペクトルである。
図1から明らかなように、マトリックスのみの測定では、正イオン測定(b)においてマトリックス由来のピークが観測されなかった。一方、負イオン測定(a)においてはマトリックス由来の[matrix-H]-が観測された。
[実施例2:5−(2,5−ジメトキシフェニル)−1H−テトラゾールを用いたプロプラノロール塩酸塩の質量分析]
マトリックスとして、5−(2,5−ジメトキシフェニル)−1H−テトラゾール(分子量206.20):100mM/メタノール溶液と、プロプラノロール塩酸塩:1.0mM/50%アセトニトリル水溶液とを等量混合し、ステンレス製ターゲットプレート(島津製作所製)上に50ピコモル載せ風乾することにより、質量分析用試料を調製した。この試料をMALDI−TOFMS(島津製作所製AXIMA−CFR)で測定した。図2に、正イオンモードで得られたマススペクトル(b)を、負イオンモードで得られたスペクトル(a)と比較して示す。
図2に示すように、測定対象であるプロプラノロール由来のプロトン付加分子[M+H]+、ナトリウムイオン付加分子[M+Na]+、及びカリウムイオン付加分子[M+K]+のピークが、それぞれm/z 260、282及び298の位置に出現している。一方、m/z 72などの同定不能のイオンを除き、m/z 23及び39にそれぞれナトリウムイオン及びカリウムイオンのピークが観測される以外に、低質量領域に明確なピークは観測されなかった。これは、マトリックスである5−(2,5−ジメトキシフェニル)−1H−テトラゾール由来のプロトン付加分子[matrix+H]+などが検出されなかったことを意味している。これにより、マトリックスが測定対象由来のイオンの検出を妨げないことが分かる。なお、同定不能であるイオンは、ターゲットプレートなどに起因する不可避のイオンであると考えられる。これは他の実施例でも同様である。
[実施例3:5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールの合成]
2,5−ジヒドロキシベンゾニトリル3.50g、アジ化ナトリウム6.58g及び塩化アンモニウム5.41gをジメチルホルムアミド50mlにいれ、窒素気流下で18時間、100℃で撹拌した。その後、室温で2時間撹拌し、水300mlを加えて濃塩酸でpH2として、酢酸エチル200mlで3回抽出を行った。酢酸エチル層は、水100mlで3回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ別し、得られた酢酸エチル溶液を40℃、減圧下で溶媒留去し粗生成物4.61gを得た。得られた粗生成物を酢酸エチル100mlとエタノール100mlとの混合溶液に熱時溶解後、室温で24時間放置することにより、析出物として目的化合物1.55g(mp:291℃)を得た。
元素分析:計算値 C 47.19, H 3.39, N 31.45 分析値:C 47.22, H 3.36, N 31.55
1H-NMR in DMSO d6:σ6.82(1H, d), 6.85(1H, d),6.92(1H, dd)
得られた5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールのマススペクトルを図3に示す。図3中、(a)は正イオン測定モード、(b)は負イオン測定モードによるスペクトルである。
図3から明らかなように、マトリックスのみの測定では正イオン測定(a)においてマトリックス由来のピークが観測されなかった。一方、負イオン測定(b)においてはマトリックス由来のm/z 177に[matrix-H]-が観測された。
[実施例4:5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールを用いたプロプラノロール塩酸塩の質量分析]
マトリックスとして5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールを用いたことを除いて、実施例2と同様の操作を行うことによって、プロプラノロール塩酸塩の質量分析を行った。
図4に、正イオン測定モードで得られたマススペクトル(a)を、負イオン測定モードで得られたスペクトル(b)と比較して示す。
図4に示すように、測定対象であるプロプラノール由来のプロトン付加分子[M+H]+ m/z 260が検出されている。一方、同定不能のイオンを除き、低質量領域に明確なピークは観測されなかった。これは、マトリックスである5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾール由来のプロトン付加分子[matrix+H]+などが検出されなかったことを意味している。なお、同定不能であるイオンは、ターゲットプレートなどに起因する不可避のイオンであると考えられる。
一方、負イオン測定では、m/z 177に顕著に5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールのプロトン脱離イオン[matrix-H]-のピークが観測された。これは、レーザー脱離イオン化により、5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールから1個のプロトンが容易に脱離することを意味している。換言すれば、正イオン化の際に、このマトリックス由来のプロトン付加分子[M+H]+のプロトンH+がマトリックス由来のものであるとの高い確証が得られた。従って、MALDI質量分析において5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾールは低分子化合物の正イオン測定に有用なマトリックスであるということができる。
なお、上記実施例は本発明のいくつかの例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても当然に本願特許請求の範囲に包含される。

Claims (7)

  1. 下記式(I):
    (式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜10の有機基である。)
    で示される、1H−テトラゾール誘導体。
  2. 前記有機基が、置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選ばれる、請求項1に記載の1H−テトラゾール誘導体。
  3. 前記有機基が、メチル基、フェニル基、トリル基及びベンジル基からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の1H−テトラゾール誘導体。
  4. 下記式(I):
    (式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜10の有機基である。)
    で示される質量分析用マトリックス。
  5. 前記有機基が、置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選ばれる、請求項4に記載の質量分析用マトリックス。
  6. 前記有機基が、メチル基、フェニル基、トリル基及びベンジル基からなる群から選ばれる、請求項4又は5に記載の質量分析用マトリックス。
  7. 分子量500以下の物質を測定するための請求項4〜6のいずれか1項に記載の質量分析用マトリックス。
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