JP5856902B2 - 接合構造およびトラス構造 - Google Patents
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Description
特許文献2に記載された接合構造では、主管の孔端縁に接合部材を突合せ溶接することで、主管と接合部材を一体化できるものの、孔開け加工が必要であるとともに、孔端縁に対する接合部材の溶接が3次元曲面における突合せ溶接となることから、溶接精度や溶接品質管理が高度になり、加工設備が大型化、煩雑化し、製造コストが増大してしまう。さらに、特許文献2に記載された接合構造では、接合部材が複雑な形状の鋳造筒型金物であることから、金物製造に要するコストも増大し、トラス構造全体の施工コストの高騰を招いてしまうという問題がある。
このような構成によれば、連結面部の板厚に対して半分以下の板厚で薄肉部を形成することで、連結面部と薄肉部との適度な剛性比を確保することができ、薄肉部への応力伝達をコントロールしつつ薄肉部を変形しやすくして、カバープレート端部溶接部の応力集中を抑制することができる。また、薄肉部の板厚は、ある程度薄い方が主管への応力集中の度合いが小さくできるものの、薄すぎると製作性に問題が出てくるとともに、溶接性が低下することから、連結面部の板厚に対して1/7程度以上に設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、突出面部の突出寸法を主管直径Dの0.1D倍以上に設定することで、薄肉部の変形性能を確保することができる。なお、突出面部の突出寸法は、0.1D以上であればよいが、0.3D以上であればより好ましく、0.5D程度であればさらに好ましい。また、突出寸法の上限値としては、特に限定されないが、突出寸法が大きすぎると使用鋼材量や溶接等の加工手間、コスト面で不都合が生じることから、突出寸法は、1.0D程度以下であることが好ましい。
このような構成によれば、突出面部の突出外縁を薄肉部よりも厚くして薄肉部を囲んで連続的に設けることで、この突出外縁を連結面部の両端縁から連続して主管に溶接することができるとともに、この溶接の際に突出外縁が薄すぎないことで溶接性を確保することができ、溶接欠陥の発生を防止することができる。
このような構成によれば、接合部にガセットプレートを用いることで、被接合材の接続にボルト等による締結構造を採用することができる。ここで、ガセットプレートを用いた場合、連結面部においては特にガセットプレートの軸方向端部にあたる部分でガセットプレートから伝達される荷重が応力集中を生じることがあるが、当該部分においてガセットプレートと連結面部とを連結するリブによりガセットプレートから連結面部への荷重が分散され、応力集中を緩和することができる。また、分散することにより、薄肉部42の端部応力集中をさらに緩和する効果が期待できる。
このような構成によれば、カバープレートに設けた接続部に対して、溶接接合またはボルト接合によって被接合材を接続することで、カバープレート自体に直接に被接合材を溶接接合(突合せ溶接)する場合と比較して、接合に要する設備や作業手間等を削減することができ、施工性を向上させることができる。
図1および図2において、トラス構造は、所定の軸方向Xに延びる鋼管からなる主管1と、この主管1の軸方向Xに傾斜して設けられる被接合材としての4本の支管2と、これらの支管2を主管1に接合する接合部3と、を備えた立体トラスである。接合部3は、主管1の外周面1Aに固定された全体板状のカバープレート4と、このカバープレート4に固定されて支管2を接続する接続部としての2枚のガセットプレート5とを有して構成され、これらのガセットプレート5に支管2の端部がスプライスプレート6を介してボルト接合によって固定されている。なお、支管2の端部は、ガセットプレート5に対して溶接接合によって固定されてもよい。
すなわち、主管1の外周面1Aに固定されたカバープレート4を介して支管2が接合されているので、複雑な形状の鋳造筒型金物等に比較してカバープレート4の製造コストが抑制できるとともに、主管1に対して隅肉溶接でカバープレート4が固定されるので、加工コストも削減することができる。そして、カバープレート4において連結面部41よりも薄い板厚とされた薄肉部44を有して突出面部42が形成されているので、連結面部41に接続した支管2からの応力を主管1に伝達する際に、薄肉部44が適度に変形して最も高い応力集中が発生するカバープレート端部溶接部の応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させることができる。また、突出面部42の突出外縁45が角部のない曲線状に形成されていることで、主管1に対する集中応力をさらに低減させることができるとともに、連結面部41の端縁43と突出面部42の突出外縁45とが連続した隅肉溶接(溶接部W)によって主管1の外周面1Aに固定されているので、溶接の弱点となるような溶接端が形成されず、耐疲労性をより一層向上させることができる。さらに、被接合材である支管4の接続にあたって、ガセットプレート5に支管2の端部を、スプライスプレート6を介してボルトで締結する構造としたため、支管2の端部を溶接する場合よりも作業を効率よく行うことができる。
すなわち、図4に示すトラス構造は、主管1の軸方向Xに傾斜しかつ同一平面内に被接合材としての2本の支管2が設けられている。これらの支管2は、カバープレート4の周方向幅の中央に固定された1枚のガセットプレート5を介し、ボルト接合によって主管1に接続されている。
なお、図4の実施形態および後述する他の実施形態においては、前記図1から図3の実施形態と共通する構成に同じ符号を付し、各々の重複する説明は省略する。
図5において、本実施形態ではカバープレート4の周方向幅の中央に軸方向に延びる1枚のガセットプレート5が固定され、図4の実施形態と同様にガセットプレート5には支管4(図5では図示省略)が接続される。ガセットプレート5の軸方向の端部には、各端部の両側に一対で、ガセットプレート5と連結面部41とを接続するリブ51が設置されている。リブ51は、ガセットプレート5の側面に対して溶接されるとともに、薄肉部44の最寄りの辺縁に沿って連結面部41に溶接されている。
図6において、カバープレート4の一対の突出面部42は、カバープレート4の裏面側から凹状に形成されて連結面部41よりも薄い板厚とされた薄肉部44と、連結面部41の端縁43に連続して薄肉部44を囲む突出外縁45と、を有して略半円形状に形成されている。なお、連結面部41の厚さT1、薄肉部44の厚さT2および突出外縁45の厚さは、それぞれ前記図1から図3の実施形態と同様に設定される。
このような裏側から凹状に形成された薄肉部44を用いた実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
図7において、カバープレート4は前記図1から図3の実施形態あるいは図4の実施形態と同様な連結面部41、一対の突出面部42(薄肉部44および突出外縁45)、ガセットプレート5を備えている。ここで、連結面部41の両側の端縁43Aは、両端が突出外縁45に連続されるとともに、中間部分がガセットプレート5に近接するように湾曲されている。
カラー5Aは、支管2と同様のパイプ部材を加工したものであり、連結面部41に接続される側は連結面部41の表面に応じた形状の曲線状の端縁とされ、全周にわたって連結面部41に溶接されている。連結面部41と反対側は、支管2の端部に対応した角度の切断面とされ、支管2を接続する際に全周にわたって支管2の端部に溶接される。
本実施形態においては、支管2の端部を、予め連結面部41の表面に応じた形状の曲線状の端縁に形成しておき、支管2を接続する際に、支管2の端部を全周にわたって連結面部41に溶接する。
例えば、本発明の接合構造およびトラス構造において、被接合材は、前記実施形態のような鋼管からなる支管2に限らず、適宜な断面を有した形鋼などであってもよいし、その他任意断面および形状を有した鋼材であってもよい。
また、本発明の接合構造は、トラス構造に利用されるものに限らず、ラーメン架構などの任意の構造体に利用可能である。具体例としては、主管として鋼管柱を用い、この鋼管柱に接合される梁やブレースを被接合材としてもよいし、逆に、鋼管梁(主管)等に対して、柱やブレース等の被接合材を接合する構造であってもよい。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
ここでは、本発明を適用した接合部を実施例1〜9とし、従来技術や本発明以外の接合部を比較例1〜12とし、各接合部のFEM解析を実施して主管1に作用する応力を算出した。なお、実施例1〜9および比較例1〜12のFEM解析モデルは、主管1の直径Dおよび板厚を共通とし、カバープレート4の形状(長さ寸法Lや幅寸法Bである角度θ、突出面部42の突出寸法L1、突出外縁45の角部R、薄肉部44の板厚T2)をパラメータとしたモデルを用いた。
なお、実トラス構造として、主管1の直径Dが600mm、カバープレート4の全長が1800mm、突出面部42の突出寸法が264mm(約0.44D)を想定し、この縮小モデルとした実施例および比較例において、主管1の主管径267mm、板厚が6mmであり、カバープレート4は、連結面部41の板厚T1が16mm、薄肉部44の板厚T2が3mmである。次の表1に解析モデルの諸元を示すとともに、図10、図11に実施例の接合部の代表的な形態を示し、図12、図13に比較例の接合部の代表的な形態を示す。
実施例1は、図10(A)に示す形態の接合部3を備え、この接合部3におけるカバープレート4の形態は、前記実施形態で説明したものと同一であり、このカバープレート4の幅方向(主管1の周方向)略中央にガセットプレート5が1枚固定されている。
実施例2は、図10(B)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の形態が相違しており、薄肉部44の連結面部41側(突出面部42の突出方向基端部側)に丸みが形成され、すなわち板厚が厚い連結面部41の一部が突出外縁45に沿って突出面部42側に延長されている。
実施例3は、図10(C)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の形態が相違しており、突出面部42の突出方向基端部側において薄肉部44が連結面部41の端縁43に沿って延長されている。
実施例5は、図示を省略するが、実施例4のカバープレート4に対して、薄肉部44の傾斜部の傾きを変更し、実施例2のように丸みを形成したものである。
実施例6は、図示を省略するが、実施例5のカバープレート4に対して、薄肉部44の傾斜部の丸みをさらに大きくしたものである。
実施例8は、図11(B)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、突出面部42の突出外縁45の曲率が相違しており、突出外縁45のR寸法が50mmで形成されている。
実施例9は、図11(C)に示すように、実施例8のカバープレート4に対して、突出外縁45の曲率を変更したものであり、突出外縁45のR寸法が100mmで形成されている。
比較例1〜12の接合部3Aは、図12および図13に示すように、カバープレート4Aと、このカバープレート4Aの幅方向略中央に固定されたガセットプレート5とを有して構成されている。これらのカバープレート4Aは、前記実施例1〜9のカバープレート4と形状が相違している。
比較例1は、図12(A)に示すように、実施例1〜9のカバープレート4に対して、薄肉部を備えておらず、突出面部42Aは先端に向かって板厚が薄くなるテーパを有して形成され、この先端が直線状に切断されて角部42Bが形成されている。
比較例2は、図12(B)に示すように、比較例1に対して、突出面部42Aにテーパが設けられず、その突出寸法が小さく形成されている。
比較例3は、図12(C)に示すように、実施例のカバープレート4と同様の薄肉部44を備えるものの、突出面部42Aの先端が直線状に切断されてR寸法が10mmの角部42Bが形成されている。
比較例5は、図13(B)に示すように、実施例1〜9のカバープレート4と略同様の外形形状を備えるものの、薄肉部を備えておらず、突出面部42Aが連結面部41Aと同一の板厚で形成されている。
比較例6は、図示を省略するが、比較例5と略同様の外形形状を備え、カバープレート4の周方向幅寸法である角度θが90°で形成されている。
比較例7は、図示を省略するが、比較例6と略同様の外形形状を備え、カバープレート4の周方向幅寸法である角度θが45°で形成されている。
比較例8は、図示を省略するが、比較例6よりもさらに幅寸法が小さく形成され(角度θ≒0°)、ガセットプレート5と略同一幅で形成されている。
比較例10は、図示を省略するが、比較例1と略同様の外形形状を備え、連結面部41Aの端縁43Aに沿った方向(主管1の軸方向X)の端縁のみが主管1に溶接固定され、突出面部42Aの先端部分が溶接固定されていない点が相違する。
比較例11は、図13(C)に示すように、比較例6と略同様の外形形状を備え、突出面部42Aの突出寸法が拡大されている点が相違する。
比較例12は、図示を省略するが、比較例11と略同様に突出面部42Aの突出寸法が拡大され、比較例11では突出面部42Aにテーパが形成されるのに対し、比較例12ではテーパが形成されず突出面部42Aの板厚が連結面部41Aと同一のままフラットに形成されている点が相違する。
図14(A),(B)は、それぞれ比較例1および実施例1における主管1の応力を示すグラフであり、横軸は、接合部3,3Aの軸方向Xに沿った距離を示している。
比較例1では、図14(A)に示すように、突出面部42Aの先端位置である800mmを超えた位置から急激に応力が増大し、主応力の最大値として510MPa程度まで上昇していることが解る。
一方、実施例1では、図14(A)に示すように、突出面部42の先端よりも中央側で応力が増大し始め、突出面部42の先端位置において主応力の最大値が370MPa程度に抑制されている。このような応力は、突出面部42の薄肉部44が変形することにより、カバープレート4と主管1との間で徐々に応力が伝達され、突出面部42の先端位置における急激な上昇が抑制されることが解る。
Claims (7)
- 鋼管からなる主管に被接合材を接合する接合構造であって、
前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートを備え、このカバープレートを介して前記被接合材が前記主管に接合され、
前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記被接合材と連結される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、
前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、
前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されることを特徴とする接合構造。 - 請求項1に記載の接合構造において、
前記突出面部の薄肉部は、前記連結面部の板厚に対して1/2〜1/7程度の板厚を有して形成されていることを特徴とする接合構造。 - 請求項1または請求項2に記載の接合構造において、
前記カバープレートにおける前記連結面部からの前記突出面部の突出寸法は、前記主管の直径Dに対して0.1D程度以上に設定されていることを特徴とする接合構造。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の接合構造において、
前記突出面部の突出外縁は、溶接脚長が確保される程度に、前記薄肉部の板厚よりも厚く形成されるとともに前記連結面部の両端縁から当該薄肉部を囲んで連続的に設けられていることを特徴とする接合構造。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の接合構造において、
前記カバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部を備え、前記接続部は、前記連結面部に固定されかつ前記軸方向に延びるガセットプレートと、前記ガセットプレートの前記軸方向の端部と前記連結面部とを連結する前記軸方向とは交叉方向のリブとを備えていることを特徴とする接合構造。 - 鋼管からなる主管と、この主管の軸方向に傾斜して設けられる少なくとも一対の被接合材と、これら一対の被接合材を前記主管に接合する接合部とを備えたトラス構造であって、
前記接合部は、前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートと、このカバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部とを有し、
前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記接続部が固定される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、
前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、
前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されていることを特徴とするトラス構造。 - 請求項6に記載のトラス構造において、
前記被接合材の端部と前記接続部とが溶接接合またはボルト接合されていることを特徴とするトラス構造。
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