以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、ダンパ制御装置Eは、この例では、四輪車両のばね上部材Bとばね下部材W1,W2,W3,W4との間にそれぞれ介装される四つのダンパD1,D2,D3,D4における減衰力を制御するようになっており、ばね上部材Bの振動の大きさであるばね上振動レベルLbと各ばね下部材W1,W2,W3,W4の振動の大きさであるばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を検知する振動レベル検知部1と、ばね上振動レベルLbとばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4に基づいて上記四輪車両が走行する道路がうねり良路であることを判定する判定部2と、各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力調整部3へ与える電流値Iを求める指令値演算部4とを備えて構成され、各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力調整部4へ電流値I通りの電流を与えて各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力を制御するようになっている。
以下、各部について説明する。最初に振動レベル検知部1について詳細に説明する。説明を簡単にするため、振動レベル検知部1における振動レベルの検知手法を原理的に説明する。まず、振動レベル検知部1で図2に示した物体MをばねSで支承する系における物体Mの振動レベルを検知する場合について考える。
物体Mの上下方向の振動レベルを検知する場合、振動レベル検知部1は、図3に示すように、物体Mの上下方向の速度を得る第一参照値取得部5と、当該第一参照値取得部5で得た値を第一参照値aとして当該第一参照値aの微分値或いは積分値に相当する第二参照値bを得る第二参照値取得部6と、上記第一参照値aと上記第二参照値bとに基づいて振動レベルLを求める振動レベル演算部7とで構成される。
物体Mは、図2に示したように、ベースTに鉛直に取り付けたばねSによって図中下方から弾性支持されるばねマス系を構成しており、この場合、振動レベル検知部1は、物体Mの全体における図2中上下方向の振動レベルを検知するようになっている。
第一参照値取得部5は、たとえば、物体Mに取り付けられて物体Mの上下方向加速度を検出するセンサ部51と、センサ部51で検出した上下方向加速度を積分して物体Mの上下方向速度を得る積分器52とを備えて構成されている。このように、第一参照値取得部5は、第一参照値aとして物体Mの上下方向の速度を得るようになっている。
次に、第二参照値取得部6は、第一参照値aの積分値に相当する物体Mの上下方向の変位を得るようになっており、第一参照値aを積分する積分器61を備えていて、第二参照値bとして物体Mの上下方向の変位を得る。なお、第二参照値取得部6が第一参照値aの微分値相当の値を得るように設定される場合、つまり、物体Mの上下方向の加速度を得るように設定される場合、第一参照値取得部5におけるセンサ部51から当該上下方向の加速度を得て、これを第二参照値bとしてもよいし、微分器を備えて第一参照値aを微分して第二参照値bを得るようにしてもよい。
また、この実施の形態では、検知したい物体Mの振動レベルのうち任意の周波数帯の振動レベルを検知することができるよう第一参照値aと第二参照値bから検知したい周波数成分を抽出できるようになっている。具体的には、フィルタ8を備えていて、このフィルタ8で第一参照値aと第二参照値bを濾波することで第一参照値aと第二参照値bの検知したい周波数成分を得る。基本的には、物体MとばねSのばねマス系の固有振動数をフィルタ8で抽出する周波数とすると、物体Mのスペクトル密度の高い振動を抽出することができる。なお、フィルタ8は、特に評価したい周波数帯の振動を抽出でき物体Mの振動に重畳されるノイズなどを除去できるので有用であるが、たとえば、物体Mが単一の周期で振動するような場合には、省略することも可能である。
ところで、物体Mの任意の周波数の振動は正弦波で表すことができる。また、物体Mの速度である第一参照値aの任意の周波数成分は正弦波で表すことができる。たとえば、第一参照値aの任意の周波数成分をsinωt(ωは角周波数、tは時間)で表す場合、これを積分すると−(1/ω)cosωtとなり、第一参照値aの振幅とこの積分値の振幅とを比較すると、積分値の振幅は第一参照値aのω分の1倍となる。
したがって、第二参照値bが第一参照値aの積分値相当である場合には、フィルタ8で抽出する周波数に一致する角周波数ωを用いて、第一参照値aの積分値相当にω倍することで、第一参照値aと第二参照値bとの振幅を等しくすることができる。
また、第二参照値bが第一参照値aの微分値相当である場合には、1/ω倍することで第一参照値aと第二参照値bとの振幅を等しくすることができる。このように、第一参照値aと第二参照値bの振幅を同じとするために、この振動レベル検知部1にあっては、補正部9を備えており、補正部9は、第二参照値bが第一参照値aの積分値相当である場合には、検知対象となる振動の角周波数ωを用いて、ω倍することで第二参照値bを補正し、第二参照値bが第一参照値aの微分値相当である場合には、1/ω倍することで第二参照値bを補正する。
つづいて、振動レベル演算部7は、このように処理された第一参照値aと第二参照値bを図3に示すように直交座標にとった際の第一参照値aと第二参照値bの合成ベクトルUの長さを演算し、これを振動レベルLとして求める。なお、合成ベクトルUの長さは、(a2+b2)1/2で演算することができるが、ルート演算を省いて(a2+b2)、つまり、合成ベクトルUの長さの二乗の値を演算することで合成ベクトルUの長さを判断可能な値を求めてこれを振動レベルLとしてもよい。そうすることで、負荷の高いルート演算を回避することができ、演算時間を短縮することができる。また、直接に合成ベクトルUの長さとは一致しないものの、合成ベクトルUの長さをz乗(zは任意の値)した値や当該長さに任意の係数を乗じた値は、合成ベクトルUの長さを認識可能な値であって、このような値を振動レベルとしてもよいことは勿論である。すなわち、合成ベクトルUの長さを認識可能な値を振動レベルLとすればよい。
ここで、ベースTを上下動させて物体Mに振動を与えたり、物体Mに変位を与えて解放したりして物体Mに振動を与えると、ばねSが伸縮してばねSの弾性エネルギと物体Mの運動エネルギとが交互に変換されるため、何ら外乱がない場合には、物体Mの中立位置からの変位が最大となる物体Mの速度が0となり、物体Mが中立位置にあるときに物体Mの速度が最大となる。なお、中立位置とは、物体MがばねSによって弾性支持され静止状態にあるときの位置である。
そして、第一参照値aと第二参照値bとは、補正部9の補正によって、両者の振幅が等しくなり、第一参照値aと第二参照値bの位相は90度ずれているから、物体Mの振動が減衰せず同じ振動を繰り返す場合、第一参照値aと第二参照値bの理想的な軌跡は、図4に示すように、円を描くことになり、振動レベルLがこの円の半径に等しいことが理解できよう。なお、実際には、フィルタ8の抽出精度や物体Mに作用する外乱、第一参照値aや第二参照値bに含まれるノイズによって、両者の振幅を完全一致させることができない場合もあるが、振動レベルLの値は、ほぼ上記した円の半径に等しくなる。
このように、振動レベルLは、速度である第一参照値aが0でも、変位である第二参照値bの絶対値は最大値をとることになり、反対に、第二参照値bが0でも第一参照値aの絶対値は最大値をとり、物体Mの振動状況が変化しない場合には理想的には一定値をとる。つまり、振動レベルLは、物体Mがどの程度の振幅で振動しているかを示す指標となる値であり、振動の大きさを表している。そして、振動レベルLの算出に当たり、物体Mの一周期分の変位、速度、加速度のいずれかをサンプリングして波高を求める必要もなく、以上の手順から理解できるように、物体Mの変位と速度を得れば求めることができるから、タイムリーに求めることができる。すなわち、上記した振動レベル検知部1では、物体Mの振動の大きさをタイムリーかつリアルタイムに検知することが可能である。
なお、第一参照値aと第二参照値bを物体Mの速度と加速度、加速度と加速度の変化率、変位と変位の積分値相当とし振動レベルLを求めてもよく、このように設定しても第一参照値aと第二参照値bの位相は互いに90度ずれており、検知したい振動の角周波数ωで補正することで、第一参照値aと第二参照値bを直交座標にとった時の軌跡は円となるから振動レベルLを求めれば、この振動レベルLが振動の大きさを表す指標となる。つまり、第一参照値aを物体Mの検知したい振動方向に一致する方向の変位、速度、加速度のうちいずれか一つとし、第二参照値bを第一参照値aの積分値相当或いは微分値相当の値とすれば振動レベルLを求めることができる。
第一参照値aは、センサから直接得ずとも、センサ出力を微分や積分して得るようにしてもよい。また、第二参照値bは、検出器から直接得ることも可能であり、第一参照値aの微分値相当または積分値相当を第二参照値bとすればよいので、第二参照値bは、第一参照値aを微分或いは積分して得るのではなく検出器から直接得るようにしてもよい。
また、第一参照値aの積分値相当を第二参照値bとする場合、第一参照値aの微分値相当を第三参照値cとし、振動レベル演算部7は、第一参照値aと第二参照値bとで上記手順によって上記振動レベルに相当する値を求めてこの値を第一振動レベルL1とし、第二参照値bの代わりに第三参照値cを使用して第一参照値aと第三参照値cとで上記手順によって上記振動レベルに相当する値を求めこの値を第二振動レベルL2とし、第一振動レベルL1と第二振動レベルL2とを加算して2で割ることで第一振動レベルL1と第二振動レベルL2の平均値を算出しこの平均値を振動レベルLとすることもできる。この場合、図5に示すように、第三参照値cを求めるために、第三参照値取得部10を設けるようにすればよい。なお、第一参照値aの微分値相当を第二参照値bとする場合、第一参照値aの積分値相当を第三参照値cとすればよい。
この場合、図6に示すように、第一参照値aを横軸にとり、第二参照値bと第三参照値cを縦軸にとる直交座標を考えると、物体Mの振動周波数と、フィルタ8で抽出する周波数にずれが生じている場合、第一振動レベルL1が第一参照値aの最大値以上の値をとる場合、第一参照値aと第二参照値bの軌跡Jは図6中破線で示す第一参照値aの最大値を半径した円Hより大きな楕円形となり、第二振動レベルL2は第一参照値aの最大値以下の値をとって、第一参照値aと第三参照値cの軌跡Kは円Hよりも小さな楕円となる。つまり、物体Mの振動周波数と検知したい振動周波数が一致しない場合、補正部9で補正する際に使用する角周波数ωと実際の角周波数ω’がずれているから、第一参照値aの積分値相当の第二参照値bを補正した際に第二参照値bの最大値は、第一参照値aの最大値のω/ω’倍となり、第一参照値aの微分値相当である第三参照値cの最大値は補正によって第一参照値aの最大値のω’/ω倍となる。このように、第一振動レベルL1が第一参照値aより大きな値をとる場合、その分、第二振動レベルL2は第一参照値aよりも小さな値をとるから、これらを平均して振動レベルLを求めると、振動レベルLの変動が緩和されるため、物体Mの振動周波数と検知したい振動周波数とが一致しなくとも、安定した振動レベルLを求めることができ、振動レベルLの検知結果が良好なものとなる。また、このように振動レベルLの変動の緩和を行っても、振動レベルLにうねりが生じる場合には、振動レベルLに物体Mの振動周波数の2倍の周波数成分のノイズが重畳することが分かっているため、この重畳されるノイズを取り除くフィルタを設けて振動レベルLを濾波するようにしてもよい。また、この場合、第一参照値aに対して積分値相当と微分値相当を第二参照値bと第三参照値cとして振動レベルLを求めたが、たとえば、変位を第一参照値aとし、速度を第二参照値bとして振動レベルLを求めることに加えて、加速度を第一参照値aとして加速度の変化率を第二参照値bとして別途振動レベルLを求め、変位と速度から得た振動レベルLと、加速度と加速度の変化率から得た振動レベルLの平均値を最終的な振動レベルとして求めるといったように、異なる第一参照値と第二参照値とで得た複数の振動レベルから最終的な振動レベルを得ることも可能である。
つづいて、振動レベル検知部1を車両に適用して、具体的に、車両におけるばね上部材Bのばね上振動レベルLbとばね下部材W1,W2,W3,W4のばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を検知する形態について説明する。図1に示すように、この例では、車両が四つの車輪を備える四輪車両であって、四輪車両におけるばね上部材Bは、四つの懸架ばねS1,S2,S3,S4と四つのばね下部材W1,W2,W3,W4によって支持されている。なお、ばね下部材W1,W2,W3,W4は、車体であるばね上部材Bに揺動可能に取り付けられた車輪とリンクを含んでいる。
懸架ばねS1は、ばね上部材Bとばね下部材W1との間に介装され、他の懸架ばねS2,S3,S4もそれぞれ同様にばね上部材Bとばね下部材W2,W3,W4との間に並列に介装されている。また、この懸架ばねS1、S2,S3,S4の各々に減衰力を発揮するダンパD1,D2,D3,D4が並列されていて、これらダンパD1、D2,D3,D4は、ばね上部材Bとばね下部材W1,W2,W3,W4との間に介装されている。
以下、各部材について詳細に説明すると、各ダンパD1,D2,D3,D4は、詳しくは図示しないが、たとえば、シリンダCと、シリンダC内に摺動自在に挿入されるピストンと、シリンダC内に移動自在に挿入されてピストンに連結されるピストンロッドRと、シリンダC内にピストンで区画した二つの圧力室と、圧力室同士を連通する通路と、通路を通過する流体の流れに抵抗を与える減衰力調整部3とを備えて構成される流体圧ダンパとされている。そして、この各ダンパD1,D2,D3,D4は、伸縮作動に応じて圧力室内に充填された流体が通路を通過する際に減衰バルブにて抵抗を与えて当該伸縮作動を抑制する減衰力を発揮し、ばね上部材とばね下部材の相対移動を抑制するようになっている。
なお、流体には、作動油のほか、水、水溶液、気体を利用することができる。流体が液体であって、各ダンパD1,D2,D3,D4が片ロッド型ダンパである場合、各ダンパD1,D2,D3,D4は、シリンダC内にピストンロッドRが出入りする体積を補償するために気体室やリザーバを備えるが、流体が気体である場合、気体室やリザーバを備えずともよい。
また、ダンパD1,D2,D3,D4がリザーバを備えて伸長しても収縮してもシリンダ内からリザーバへ通じる通路を介して流体が排出されるユニフロー型に設定される場合、シリンダからリザーバへ通じる通路の途中に減衰力調整部3を設けて、流体の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するようにしてもよい。
減衰力調整部3は、たとえば、上記ダンパD1,D2,D3,D4の図示しない通路の流路面積を可変にする減衰弁と、当該弁体を駆動して上記通路の流路面積を調節することができるソレノイドやアクチュエータとで構成されていて、当該ソレノイドやアクチュエータへ与える電流量を増減させることで上記通路の流路面積を調整でき、通路を流れる流体に与える抵抗を変化させてダンパD1,D2,D3,D4が発生する減衰力を調整可能となっており、この場合、各ダンパD1,D2,D3,D4のピストン速度が変わらなければ減衰力調整部3へ与える電流量を大きくすると減衰力も大きくなるようになっている。つまり、減衰力調整部3は減衰係数を調整してダンパD1,D2,D3,D4が発生する減衰力を調整する。減衰力調整部3は、図が複雑となるため、図1に示したところでは、各ダンパD1,D2,D3,D4外へ記載されているが、各ダンパD1,D2,D3,D4に内蔵されている。
なお、減衰力調整部3の上記した構成は、一例であって、たとえば、ダンパD1,D2,D3,D4が電気粘性流体や磁気粘性流体を圧力室内に充填している場合、上記通路に減衰弁の代わりに電界或いは磁界を作用させることができる装置を組み込み、これを減衰力調整部3とし、ダンパ制御装置Eから与えられる電流によって電界或いは磁界の大きさを調整して、通路を流れる流体に与える抵抗を変化させることでダンパD1,D2,D3,D4の発生減衰力を可変にしてもよい。また、ダンパD1,D2,D3,D4が電気粘性流体を利用する場合、通路に与える電界の大きさによって減衰係数を調節するので、減衰力調整部3に与える電圧を増減することで制御することになるため、指令値演算部4は減衰力調整部3へ与える電圧値を求めるようにすればよい。
さらに、ダンパD1,D2,D3,D4は、上記以外にも、電磁力でばね上部材とばね下部材の相対移動を抑制する減衰力を発揮する電磁ダンパとされてもよく、電磁ダンパとしては、たとえば、モータと、モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを備えて構成されるか、リニアモータとされる。このようにダンパD1,D2,D3,D4が電磁ダンパである場合には、減衰力調整部3は上記モータ或いはリニアモータに流れる電流を調節するモータ駆動装置とされればよい。
対して、振動レベル検知部1は、図7に示すように、ばね上振動レベルを検知するばね上振動レベル検知部11とばね下振動レベル検知部20とを備えている。まず、ばね上振動レベル検知部11は、ばね上部材Bの上下方向の速度であるバウンス速度Vb、ローリング方向の速度であるロール速度Vrおよびピッチング方向の速度であるピッチング速度Vpを得る第一参照値取得部12と、当該第一参照値取得部12で得た値を第一参照値として当該第一参照値の微分値に相当する第二参照値を得る第二参照値取得部13と、第一参照値と第二参照値からばね上部材の共振周波数成分を抽出するフィルタ14と、補正部15と、ばね上振動レベルLbを求める振動レベル演算部16とを備えている。
第一参照値取得部12は、図7に示すように、センサ部としての加速度センサG1,G2,G3と、ロール速度演算部17と、ピッチング速度演算部18と、バウンス速度演算部19とを備えている。加速度センサG1,G2,G3は、ばね上部材Bの上下方向の加速度を検出するものであって、図示しない車体の同一水平面上の同一直線上にない任意の3箇所に設置されている。
そして、この加速度センサG1,G2,G3は、検出した車体の上下方向の加速度α1,α2,α3に応じた電圧信号をロール速度演算部17、ピッチング速度演算部18およびバウンス速度演算部19に出力し、ロール速度演算部17、ピッチング速度演算部18およびバウンス速度演算部19は、上記加速度センサG1,G2,G3の信号を処理して、車体ばね上部材Bのバウンス速度Vb、ロール速度Vrおよびピッチング速度Vpを演算できるようになっている。なお、加速度α1,α2,α3の符号の取り方は、上向きを正としてある。
具体的には、ロール速度演算部17は、加速度α1,α2,α3からばね上部材Bのローリング方向の加速度αr、つまり、角加速度を得て、これを積分してロール速度Vrを求め、これをローリング方向の振動レベルrrを得るための第一参照値arとする。ロール速度Vrは、車体であるばね上部材Bの重心におけるローリング方向の角速度である。
ピッチング速度演算部18は、加速度α1,α2,α3からばね上部材Bのピッチング方向の加速度αp、つまり、角加速度を得て、これを積分してピッチング速度Vpを求め、これをピッチング方向の振動レベルrpを得るための第一参照値apとする。ピッチング速度Vpは、車体であるばね上部材Bの重心におけるピッチング方向の角速度である。
バウンス速度演算部19は、加速度α1,α2,α3からばね上部材Bのバウンス方向の加速度αbを得て、これを積分してバウンス速度Vbを求め、これをバウンス方向の振動レベルrbを得るための第一参照値abとする。バウンス速度Vbは、車体であるばね上部材Bの重心における上下方向の速度である。
ロール加速度αr、ピッチング方向の加速度αpおよびバウンス加速度αbは、具体的には、加速度α1,α2,α3と各加速度センサG1,G2,G3の設置位置、車体の重心位置から求めることができる。
すなわち、車体であるばね上部材Bを剛体と見なして、ばね上部材Bの同一水平面上の同一直線上にない任意の3箇所の上下方向の加速度α1,α2,α3を得れば、各ばね上部材Bの重心位置におけるロール速度Vr、ピッチング速度Vpおよびバウンス速度Vbは一義的に決まるのであり、変位および加速度についても同様に求めることができる。また、このように、物体の振動が回転方向の振動レベルを求める場合には、第一参照値を物体の回転方向の変位である回転角、回転方向の速度である角速度、回転方向の加速度である角加速度としてもよい。なお、ばね上部材Bの重心位置以外の任意位置の各方向の変位、速度、加速度についても各加速度センサG1,G2,G3の設置位置、ばね上部材Bの任意位置から求めることができる。
第二参照値取得部13は、ロール速度Vrである第一参照値arを微分することで、ばね上部材Bのローリング方向の加速度に相当する第二参照値brを求め、ピッチング速度Vpである第一参照値apを微分することで、ばね上部材Bのピッチング方向の加速度に相当する第二参照値bpを求め、さらに、バウンス速度Vbを微分することでバウンス方向の加速度に相当する第二参照値bbを求める。なお、この場合、各第二参照値br,bp,bbは、第一参照値ar,ap,abの微分値相当であって、ロール速度Vr、ピッチング速度Vp、バウンス速度Vbを求める際に第二参照値br,bp,bbに相当する値を算出しているので、これを第二参照値bとしてもよい。フィルタ14は、ローリング方向の第一参照値ar、ローリング方向の第二参照値br、ピッチング方向の第一参照値ap、ピッチング方向の第二参照値bp、さらには、バウンス方向の第一参照値ab、バウンス方向の第二参照値bbをフィルタ処理して、ばね上部材Bの共振周波数の成分を抽出する。
また、ローリングの第二参照値br、ピッチング方向の第二参照値bpおよびバウンス方向の第二参照値bbは、補正部15にてばね上部材Bの共振周波数に一致する角周波数ωを用いて補正される。
振動レベル演算部16は、ローリング方向の第一参照値arと補正後のローリング方向の第二参照値brとから上記した物体Mの振動レベルLを求めた演算方法を用いることで、ばね上部材Bにおけるローリング方向の振動レベルrrを求める。
また、振動レベル演算部16は、同様にして、ピッチング方向の第一参照値apと補正後のピッチング方向の第二参照値bpとから上記した演算方法を用いることで、ばね上部材Bにおけるピッチング方向の振動レベルrpを求める。
さらに、振動レベル演算部16は、同様にして、バウンス方向の第一参照値abと補正後のバウンス方向の第二参照値bbとから上記した演算方法を用いることで、ばね上部材Bにおけるバウンス方向の振動レベルrbを求める。
最後に、ローリング方向の振動レベルrrとピッチング方向の振動レベルrpとバウンス方向の振動レベルrbを加算して、ばね上部材Bのばね上振動レベルLbを求める。ローリング方向の振動レベルrrとピッチング方向の振動レベルrpについては、ばね上部材Bの重心位置とにおける回転方向の振動レベルであり、この場合、ばね上部材Bの全体の振動レベルを求めるため、ローリング方向の振動レベルrrについては、ばね上部材Bの重心位置と各部位B1,B2,B3,B4の横方向距離の平均値を乗じて部位B1,B2,B3,B4でのロール振動レベル平均値を算出し、ピッチング方向の振動レベルrpについては、ばね上部材Bの重心位置と各B1,B2,B3,B4の前後方向距離の平均値を乗じて部位B1,B2,B3,B4でのピッチング振動レベル平均値を算出したうえで、これら平均値をバウンス方向の振動レベルrbに加算することでばね上振動レベルLbを求めることになる。なお、ここで横方向距離の平均値は、前輪トレッド幅の半分の値と後輪トレッド幅の半分の値を平均した値であるが、これらが大きく異なっていない場合は、いずれか一方の値を採用してもよい。また、前後方向距離の平均値は、前輪位置と重心位置の前後方向距離と、後輪位置と重心位置の前後方向距離を平均した値であるが、こちらに関してもこれらの値が大きく異なっていない場合には、いずれか一方の値を採用してもよい。また、各輪の各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力を独立に制御するような場合、各部位B1,B2,B3,B4の位置での振動レベルを算出する必要がある。このような場合、各加速度センサG1,G2,G3の設置位置と各部位B1,B2,B3,B4の位置関係により座標変換することで、各部位B1,B2,B3,B4の上下方向加速度を算出することができるから、単に、各部位B1,B2,B3,B4の上下方向振動の振動レベルを求めるようにすればよい。
各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力を制御してダンパD1,D2,D3,D4がばね上部材Bを支持する部位B1,B2,B3,B4の振動を抑制する制御を行うので、これら部位B1,B2,B3,B4における振動レベルrに換算するため、ローリング方向の振動レベルrrについてはばね上部材Bの重心位置と部位B1,B2,B3,B4の横方向距離を乗じたうえ、また、ピッチング方向の振動レベルrpについてはばね上部材Bの重心位置と部位B1,B2,B3,B4の前後方向距離を乗じたうえで、バウンス方向の振動レベルrbに加算することで振動レベルrを求めることになる。部位B1,B2,B3,B4とばね上部材Bとの重心位置との相対的位置関係が同じであれば、全ての部位B1,B2,B3,B4でばね上振動レベルLbが等しくなるので、たとえば、部位B1におけるばね上振動レベルLbを求めればよいが、異なっていれば、各部位B1,B2,B3,B4のばね上振動レベルLbを求めて制御に使用することもできる。なお、予め、加速度α1,α2,α3と各加速度センサG1,G2,G3の設置位置、各部位B1,B2,B3,B4の位置から各部位B1,B2,B3,B4におけるローリング方向、ピッチング方向およびバウンス方向の変位、速度或いは加速度を求めて、各部位B1,B2,B3,B4におけるローリング方向の振動レベルrrとピッチング方向の振動レベルrpとバウンス方向の振動レベルrbを得て、これらを単純に加算して各部位B1,B2,B3,B4における振動レベルrを求めるようにしてもよい。
ばね下振動レベル検知部20は、各ばね下部材W1,W2,W3,W4のばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を検知するため、図7に示すように、各ばね下部材W1,W2,W3,W4の上下方向の速度Vw1、Vw2,Vw3,Vw4を得る第一参照値取得部21と、当該第一参照値取得部21で得た値を第一参照値として当該第一参照値の微分値に相当する第二参照値を得る第二参照値取得部22と、第一参照値の積分値に相当する第三参照値を得る第三参照値取得部23と、第一参照値、第二参照値および第三参照値からばね下部材の共振周波数成分を抽出するフィルタ24と、補正部25と、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を求める振動レベル演算部26とを備えている。
第一参照値取得部21は、図7に示すように、各ダンパD1,D2,D3,D4のストロークを検出するストロークセンサSc1,Sc2,Sc3,Sc4と、各ストロークセンサSc1,Sc2,Sc3,Sc4で検出した各ダンパD1,D2,D3,D4のストローク変位を微分して各ダンパD1,D2,D3,D4のストローク速度であるダンパ速度Vd1,Vd2,Vd3,Vd4を演算する微分器27とを備えて、これらダンパ速度Vd1,Vd2,Vd3,Vd4を第一参照値とする。なお、ばね下部材W1,W2,W3,W4にセンサを取り付けて、直接にばね下部材W1,W2,W3,W4の上下方向加速度を検出して第一参照値を求めるようにしてもよい。
第二参照値取得部22は、ダンパ速度Vd1,Vd2,Vd3,Vd4である第一参照値を微分することで、各ダンパD1,D2,D3,D4のストローク加速度であるダンパ加速度αd1,αd2,αd3,αd4を求める。
第三参照値取得部23は、ダンパ速度Vd1,Vd2,Vd3,Vd4である第一参照値を積分することで、各ダンパD1,D2,D3,D4のストローク変位であるダンパ変位x1,x2,x3,x4を求めて、これらを第三参照値とする。なお、ダンパ変位x1,x2,x3,x4は、ストロークセンサSc1,Sc2,Sc3,Sc4で検出されるので、検出されるダンパ変位x1,x2,x3,x4をそのまま第三参照値としてもよい。
フィルタ24は、第一参照値であるダンパ速度Vd1,Vd2,Vd3,Vd4、第二参照値であるダンパ加速度αd1,αd2,αd3,αd4および第三参照値であるダンパ変位x1,x2,x3,x4を濾波し、ダンパ速度Vd1,Vd2,Vd3,Vd4、ダンパ加速度αd1,αd2,αd3,αd4およびダンパ変位x1,x2,x3,x4に含まれるばね下部材W1,W2,W3,W4の共振周波数帯の周波数成分のみを抽出する。なお、ばね下部材W1,W2,W3,W4毎に共振周波数が異なる場合には、ばね下部材W1,W2,W3,W4毎にフィルタ24の抽出する周波数帯を異なるように設定してもよい。つまり、ばね下部材W1に関連するダンパ速度Vd1、ダンパ加速度αd1およびダンパ変位x1については、フィルタ24の透過周波数帯をばね下部材W1の共振周波数帯に一致させ、他のばね下部材W2,W3,W4もこれと同様にすればよい。
なお、ばね下部材W1,W2,W3,W4の変位、速度、加速度を求めることができればよいので、第二参照値と第三参照値を得る際に第一参照値を微分および積分する場合、フィルタ24の処理は、第一参照値を得る前のダンパ変位x1,x2,x3,x4に対してのみ行ってもよいし、第二参照値と第三参照値を得る前に第一参照値のみに対して行ってもよい。
こうして得られた第一参照値、第二参照値および第三参照値は、補正部25にてそれぞれ対応するばね下部材W1,W,2,W3,W4の共振周波数に一致する角周波数ωを用いて補正される。
振動レベル演算部26は、第一参照値と第二参照値とから第一振動レベルL1を求め、第一参照値と第三参照値とから第二振動レベルL2を求め、これらの平均値であるばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を求める。なお、第三参照値取得部23を設けずに第一参照値と第二参照値とからばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を求めてもよいが、第三参照値取得部23を設けてばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を求めることで、これらばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4の検知結果が良好なものとなる。
判定部2は、ばね上振動レベルLbと各ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4に基づいて四輪車両が走行する道路がうねり良路であるかを判定する。また、判定部2は、この場合、うねり良路の他、うねり悪路を判定することができるようになっている。ここで、うねり良路とは、路面に細かい凹凸は少ないもののうねっている道路であり、ばね下部材W1,W2,W3,W4の振動は小さいものの、ばね上部材Bが低周波で大きく振動する傾向にある道路である。うねり悪路とは、路面に細かい凹凸が沢山あって且つうねっている道路であり、ばね下部材W1,W,2,W3,W4の振動も大きく、ばね上部材Bの低周波振動が大きくなる傾向にある道路である。
なお、判定部2は、基本的には、うねり良路であることを判定できればよいので、他の道路状況を判定しないようにしてもよいが、この例では、少なくとも、うねり良路の他にうねり悪路を判定する。
そのため、判定部2は、図7に示すように、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えるか否かを判定するばね上判定部30と、各ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4が所定のばね下閾値Lwrefを超えるか否かを判定するばね下判定部31と、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4がばね下閾値Lwrefを超えた個数をカウントするカウント部32と、ばね上判定部30の判定結果とカウント部32のカウント結果とから道路状況を判定するうねり良路判定部33とを備えて構成されている。
ばね上判定部30は、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えるか否かを判定するので、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超える場合には、ばね上部材Bが大きく振動していることを認識することができる。ばね上閾値Lbrefは、任意に決定することができるが、たとえば、車両における乗り心地が悪いと感ずる程度に設定される。
ばね下判定部31は、各ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4が所定のばね下閾値Lwrefを超えるか否かを判定する。つまり、各ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4毎にばね下閾値Lwrefを超えるか否かを判断する。ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4が所定のばね下閾値Lwrefを超える場合には、ばね下部材W1,W2,W3,W4が大きく振動していることを認識することができる。ばね下閾値Lwrefは、任意に決定することができ、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4に対応するばね下閾値Lwrefの値が異なるように設定されてもよく、たとえば、路面突起に乗り上げたり凹部に進入したりした際に検知されるばね下振動レベルの値に設定される。
カウント部32は、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4がばね下閾値Lwrefを超えた個数をカウントする。たとえば、ばね下振動レベルLw1とばね下振動レベルLw3がばね下閾値Lwrefを超えている場合、カウント部32は、「2」を出力することになる。
うねり良路判定部33は、基本的には、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えており、カウント部32のカウントの結果が1以下である場合、うねり良路であると判定するのであり、これでもよいのであるが、単に、このような基準で判定をする場合、たとえば、カウント部32の結果が判定する毎に1と2を交互に出力するような場合、ばね上判定部30の判定結果も振動的になる場合には、判定結果がうねり良路であるとの判定とそうでないとの判定を繰返して判定結果が振動的になってしまう場合がある。この実施の形態では、これを回避するため、判定にヒステリシスをもたせるようにしている。つまり、うねり良路判定部33は、今回の判定の直前に判定した結果に応じて判定をするようになっている。
具体的には、うねり良路判定部33は、前回の判定した際のばね上判定部30の判定の結果、うねり良路である場合、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えており、カウント部32のカウントの結果が2以上である場合、うねり悪路であると判定する。また、うねり良路判定部33は、前回の判定した際のばね上判定部30の判定の結果、うねり悪路である場合、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えており、カウント部32のカウントの結果が0である場合、うねり良路であると判定する。このように、判定することで、前回判定でうねり良路であると判定されているときには、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えている状況であってカウント部32のカウントの結果が1である場合でもうねり悪路と判定せず、反対に、前回判定でうねり悪路であると判定されているときには、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えている状況であってカウント部32のカウントの結果が1である場合でもうねり良路と判定しないことになり、うねり良路判定をするたびに判定結果が異なってしまうことを緩和することができる。さらに、前回判定でうねり良路であると判定されている場合、たとえば、ばね下部材W1の一つのみのばね下振動レベルLw1が大きくなっても、たまたま路面の突起に乗り上げただけで振動が一過性である可能性が大きいから、このように判定することで判定結果の正確性が向上する。以上のように、路面がうねっていてばね上部材Bが低周波数で振幅が大きな振動を呈している場合、これをばね上部材Bの上下方向速度から検知しようとしても速度は必ずしも大きくならない場合があって正確に検知することが難しいが、本発明では、このような場合でもばね上振動レベルLbは大きな値をとるため、ばね上部材Bが低周波数で振幅が大きい振動を呈している場合、これを正確に検知することができるのである。
なお、ばね上判定部30は、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えるか否かを判定するので、うねり良路判定部33にてうねり良路ともうねり悪路とも判定できない場合があるが、たとえば、判定結果をうねり良路でもうねり悪路でもないと判定するようにしておき、次回に判定する場合、うねり良路を判定する基準でうねり良路と判定し、うねり悪路であると判定する基準でうねり悪路と判定する等としておけばよい。
つづいて、指令値演算部4は、判定部2がうねり良路であると判定した場合、この例では減衰力調整部3が供給される電流量によってダンパD1,D2,D3,D4の減衰係数を調整するので、上記のようにして求められたばね上振動レベルLbとばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4とに基づいて減衰力調整部3へ与える電流値Iを求め、当該減衰力調整部3へ電流を出力する。
具体的には、指令値演算部4は、図8に示すように、ばね上振動レベルLbをパラメータとして変化する補正前電流値iのマップを保有しており、このマップを利用したマップ演算を行って補正前電流値iを求める。また、この実施の形態の場合、各ダンパD1,D2,D3,D4における減衰力調整部3は、与えられる電流量が大きければ大きいほど、各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰特性における減衰係数を大きくするように設定されているので、図8に示すマップは、ばね振動レベルLbが大きくなると補正前電流値iをばね上振動レベルLbの値に応じて比例的に大きくするようになっているが、各ダンパD1,D2,D3,D4における減衰力調整部3の設定に応じてばね上振動レベルLbに対して補正前電流値iが非線形に変化するものであってもよい。なお、マップ上で振動レベルrがある値を超えて大きくなると、補正前電流値iが一定値をとるようになっているが、これは供給上限値であり、別途、リミッタを設けて後述する最終の電流値Iをクランプする場合にはマップ上で補正前電流値iの上限を考慮しなくともよい。また、減衰力調整部3がフェールセーフのために、電流の供給が0である場合にある程度の減衰力を発揮させるべく、たとえば、実際に与えられる電流量と減衰係数との関係が供給電流量0である場合に減衰係数が最小値でない値をとり、供給電流量が所定値をとるときに減衰係数が最小値となり、供給電流量が所定値を超えるとこの電流量が所定値を超えた量に比例して減衰係数が大きくなるような設定となっている場合にはばね上振動レベルLbが0の時に補正前電流値iが所定値をとり、振動レベルLbの増加によって補正前電流値iが所定値から増加するような切片を持つマップとされてもよい。また、減衰力調整部3が電流量が大きくなると減衰係数を減少させる場合には、振動レベルLbの増加に伴って補正前電流値iが減少するようなマップとすることも可能である。つまり、マップは、減衰力調整部3の設定に応じて任意に設定することができる。さらに、指令値演算部4は、マップ演算以外の演算を行って電流値Iを求めてもよく、また、減衰力調整部3が電圧の増減によって減衰係数を調整する場合には、指令値演算部4は電圧値を求めればよく、補正前電圧値を求めてこれに以下に説明するばね下依存ゲインを乗じて補正して電圧値を求めてもよい。
さらに、指令値演算部4は、図9に示すように、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4をパラメータとして変化するばね下依存ゲインのマップを保有しており、このマップを利用したマップ演算を行って、各ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4に対応するばね下依存ゲインを求める。ばね下依存ゲインは、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4に応じて1から0の範囲の値をとるようになっていて、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4が所定値までは1であり、所定値を超えると漸減するようになっている。なお、減衰力調整部3が与えられる電流量が増えるとダンパD1,D2,D3,D4の減衰係数を減少させるようになっている場合、図9のマップとは反対にばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4が大きくなるとばね下依存ゲインが大きくなるように設定されてもよい。
指令値演算部4は、こうして求めた補正前電流値iにそれぞれ各ばね下依存ゲインを乗じて補正し、各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力調整部3へ出力すべき電流値Iを求め、各減衰力調整部3へ電流値I通りの電流を出力する。
うねり良路における制御では、ばね上部材Bのばね上振動レベルLbが大きいものの、ばね下部材W1,W2,W3,W4のばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4が小さい場合にばね上部材Bの振動を抑制するために行う制御である。そのため、ばね上振動レベルLbが大きければ大きいほど、各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰係数を大きくしたいので、ばね上振動レベルLbが大きくなればなるほど減衰係数を大きくするように補正前電流値iを変化させる、この場合、補正前電流値iが大きくなればなるほど減衰係数が大きくなるので、図8のマップは、ばね上振動レベルLbが大きくなればなるほど補正前電流値iを大きくする。なお、ばね上振動レベルLbがばね上閾値Lbref以下ではうねり良路制御を実施せず、また、他のスカイフック制御等と併用してうねり良路制御を導入する場合等ではうねり良路制御を開始したとたんに減衰力調整部3へ与える電流値Iが大きくなってしまう場合があるので、ばね上振動レベルLbがばね上閾値Lbrefを超えるまでは補正前電流値iが0をとり、このばね上閾値Lbrefを超えると電流値iが漸増するように設定されていて、電流値Iの急変を防止することができるが、上述したように補正前電流値iとばね上振動レベルLbのマップは任意に設定することができる。
また、うねり良路における制御では、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4が小さい場合、各ダンパD1,D2,D3,D4のダンパ速度Vd1,Vd2,Vd3,Vd4も小さいと推定されるため、減衰力調整部3へ与える電流量を多くすることで減衰係数を高くしてばね上部材Bの振動抑制効果を高めたい。しかしながら、上記したように、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4のうち一つのみが大きくなってばね下閾値Lwrefを超えてしまう場合にも、うねり良路制御を継続するため、ばね上振動レベルLbが大きい場合、たとえば、ばね下閾値Lwrefを超えた振動レベルにあるのがダンパD1であって、このダンパD1の減衰係数をばね上振動レベルLbの大きさのみで決定してしまう場合、ばね下部材W1の振動がばね上部材Bへ伝達されてしまって車両における乗り心地を悪化させてしまう場合がある。そこで、この実施の形態では、ばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4が大きくなると減衰係数を減少させるように設定されるばね下依存ゲインを乗じることで、ダンパD1,D2,D3,D4の減衰係数を小さくしてばね下部材W1,W2,W3,W4の振動をいなしてばね上部材Bへの振動の伝達を絶縁するようにしている。また、ばね下依存ゲインは、上述したように、ばね下部材W1,W2,W3,W4の振動が大きい場合にばね上部材Bへの振動の伝達を防止するために用いられるものであり、ばね下部材W1,W2,W3,W4の振動状況に応じて変化する値であるから、ばね下依存ゲインを求めるのにばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4の代わりにダンパ速度Vd1,Vd2,Vd3,Vd4をパラメータとしてばね下依存ゲインを求めることも可能である。ただし、うねり良路を判定する判定部2において、ばね上振動レベルLbが所定のばね上閾値Lbrefを超えており、カウント部32のカウントの結果が0である場合のみをうねり良路であると判定する場合には、ばね下依存ゲインによる補正前電流値iの補正は必要ないので、ばね下依存ゲインの算出および乗算を省略して上記補正前電流値iを電流値Iとして取り扱って制御するようにすることも可能である。
なお、ダンパ制御装置Eは、この実施の形態の場合、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、センサ部が出力する信号を取り込むためのA/D変換器と、振動レベル検知、うねり良路であるか否かの判定および電流値Iの演算等の処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、上記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、上記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、CPUが上記プログラムを実行することで、振動レベル検知部1、判定部2および指令値演算部4の動作を実現すればよい。
このように本発明のダンパ制御装置Eにあっては、ばね上振動レベルLbとばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を用いることで、ばね上部材が大きく振動しているのに対してばね下部材の振動が大きくない状況であることを正確に把握することができ、複数輪車両の走行中の道路がうねり良路であるか否かを正確に判定することができる。すなわち、ダンパ制御装置Eは、ばね上部材Bの低周波で振幅の大きな振動を正確に検知でき、ばね上部材Bの低周波で振幅が大きな振動の抑制を的確に行うことができる。
また、うねり良路を走行していると判定する場合、ダンパ制御装置Eは、減衰力を演算してこの減衰力とダンパ速度とから減衰力調整部3へ与える電流量を決定するという発振の可能性がある制御を行うのではなく、ばね上振動レベルLbから減衰力調整部3へ与える電流量を決定するという発振の可能性のない制御を行うので、電流ループの発振を防止でき、車両における乗り心地を良好に保つことが可能である。
さらに、単に、ばね上部材Bの速度のみを検知して振動を制御しようとする場合、振動速度が0となる場合に制御装置で演算される減衰力が小さくなって振動抑制に必要な力が不足してしまう問題があるが、ばね上振動レベルLbを用いて制御することで振動の大きさを把握することができ、ばね上振動レベルLbが大きくなればそれに応じた減衰力を大きくする制御を実施でき効果的に振動を抑制することができるのである。
なお、この本発明の制御は、上述したように、たとえば、スカイフック制御と併用するようにして、上記うねり良路判定がなされた場合にのみ本制御を実施するようなことも可能である。また、上記したところでは、四輪車両に本発明のダンパ制御装置Eが適用された例を説明したが、複数輪を備える車両に有効であるので、四輪車両のダンパ制御以外にも使用することができる。
さらに、車両が旋回中であったり、坂道やバンクした道路を走行したりする場合、ばね上部材Bの変位には遠心力や重力の影響でドリフト成分が重畳されるため、ばね上振動レベルLbを検知する場合、第一参照値と第二参照値にばね上部材Bの速度と加速度を選ぶことでドリフト成分の影響を軽減することができ、精度よくばね上振動レベルLbを検知することができる。なお、このようなドリフト成分の影響を軽減するには、第一参照値と第二参照値にばね上部材Bの加速度と加速度変化率を選ぶようにしてもよい。
さらに、このダンパ制御装置Eでは、振動レベル検知部1がばね上部材Bとばね下部材W1,W2,W3,W4における変位、速度、加速度のいずれか一つを得る第一参照値取得部12,21と、当該第一参照値取得部12,21で得た値を第一参照値として当該第一参照値の微分値或いは積分値に相当する第二参照値を得る第二参照値取得部13,22と、上記第一参照値と上記第二参照値とに基づいてばね上振動レベルLbとばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を求めるようになっているので、時間的遅れなくタイムリーにばね上振動レベルLbとばね下振動レベルLw1,Lw2,Lw3,Lw4を求めることができるので、複数輪車両のばね上部材Bの振動抑制効果を高めることができる。
なお、ばね上部材Bのばね上振動レベルLbを得る場合にあっても、ローリング方向、ピッチング方向およびバウンス方向の第三参照値を取得し、まず、ローリング、ピッチングおよびバウンスにおいて第一振動レベルと第二振動レベルを演算してから最終的な振動レベルを求めるようにしてもよいことは当然であり、その際に、第一参照値、第二参照値および第三参照値に変位以外を選択することで上記したようにドリフト成分の影響を軽減でき、精度良く振動レベルを求めることができる。
また、懸架ばねS1,S2,S3,S4とダンパD1,D2,D3,D4によって支持されるばね上部材Bの四つの部位を部位B1,B2,B3,B4とする場合、各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力を各部位B1、B2,B3,B4に適したものとするため各ダンパD1,D2,D3,D4毎に異なったマップを使用して電流値Iを算出するようにしてもよい。
さらに、ばね上部材Bのそれぞれの部位B1,B2,B3,B4の上下方向のばね上振動レベルLbを検知することも可能である。つまり、これらの部位B1,B2,B3,B4の上下方向の変位、速度、加速度のいずれかを第一参照値として取得し、上記手順で振動レベルを求めることも可能である。このようにして求めた各部位B1,B2,B3,B4における振動レベルLbは、各部位B1,B2,B3,B4における振動の大きさを示しており、これによって各部位B1,B2,B3,B4の振動の大きさを検知することができ、各部位B1,B2,B3,B4のばね上振動レベルLbから四つの補正前電流値iを求め、ばね下依存ゲインを乗じて電流値Iを得て、この電流値Iに等しい電流量の電流を対応する各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力調整部3へ与えるようにしてもよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。