以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、ダンパ制御装置Eは、この例では、車両におけるばね上部材Bとばね下部材Wとの間に介装されるダンパDにおける減衰力を予め用意される減衰特性に基づいて制御して上記ばね下部材Wの制振するようになっており、ばね上部材Bの振動情報に基づいてダンパDの減衰力目標値Fを補正する補正手段Aを備えている。
ダンパDは、この例では、懸架ばねVSに並列されて車両におけるばね上部材Bとばね下部材Wとの間に介装されており、ばね上部材Bは懸架ばねVSによって弾性支持されている。なお、ばね下部材Wは、車体であるばね上部材Bに揺動可能に取り付けられた車輪とリンクを含んでいる。
そして、ダンパDは、たとえば、図2に示すように、シリンダ12と、シリンダ12内に摺動自在に挿入されるピストン13と、シリンダ12内に移動自在に挿入されてピストン13に連結されるピストンロッド14と、シリンダ12内にピストンで区画した二つの圧力室15,16と、圧力室15,16同士を連通する通路17と、通路17を通過する流体の流れに抵抗を与える減衰力調整部18とを備えて構成される流体圧ダンパとされている。そして、このダンパDは、伸縮作動に応じて圧力室内に充填された流体が通路を通過する際に減衰力調整部18にて抵抗を与えて当該伸縮作動を抑制する減衰力を発揮し、ばね上部材とばね下部材の相対移動を抑制するようになっている。
この例では、流体は、磁気粘性流体とされて、圧力室15,16内に充填されており、減衰力調整部18は、上記通路17に磁界を作用させることができるようになっていて、ダンパ制御装置Eから供給される電流量によって磁界の大きさを調整して通路17を通過する磁気粘性流体の流れに与える抵抗を変化させてダンパDの減衰力を可変にすることができるようになっている。このように、この例では、ダンパ制御装置Eは、減衰力調整部18に与える電流を増減することでダンパDの減衰力を制御することになる。
なお、流体を電気粘性流体とする場合には、減衰力調整部18は、通路17に電界を作用させることができるものであればよく、ダンパ制御装置Eから与えられる電圧によって電界の大きさを調整して、通路17を流れる流体に与える抵抗を変化させることでダンパDの発生減衰力を可変にしてもよい。
さらに、流体は、上記した磁気粘性流体や電気粘性流体の他、作動油、水、水溶液、気体を利用することができる。その場合には、減衰力調整部18は、たとえば、上記ダンパDの図示しない通路の流路面積を可変にする減衰弁と、当該弁体を駆動して上記通路の流路面積を調節することができるソレノイド等の制御応答性の高いアクチュエータとで構成されればよく、当該アクチュエータへ与える電流量を増減させることで上記通路17の流路面積を調整して、通路17を流れる流体に与える抵抗を変化させてダンパDが発生する減衰力を調整することができる。
また、流体が液体であって、ダンパDが片ロッド型ダンパである場合、ダンパDは、シリンダ12内にピストンロッド14が出入りする体積を補償するために気体室やリザーバを備えるが、流体が気体である場合、気体室やリザーバを備えずともよい。ダンパDがリザーバを備えて伸長しても収縮してもシリンダ12内からリザーバへ通じる通路を介して流体が排出されるユニフロー型に設定される場合、シリンダ12からリザーバへ通じる通路の途中に減衰力調整部18を設けて、流体の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するようにしてもよい。
さらに、ダンパDは、上記以外にも、電磁力でばね上部材とばね下部材の相対移動を抑制する減衰力を発揮する電磁ダンパとされてもよく、電磁ダンパとしては、たとえば、モータと、モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを備えて構成されるか、リニアモータとされる。このようにダンパDが電磁ダンパである場合には、減衰力調整部18は上記モータ或いはリニアモータに流れる電流を調節するモータ駆動装置とされればよい。
ダンパ制御装置Eは、ダンパDのストローク変位を検出するストロークセンサ20と、ストロークセンサ20で検知したダンパDのストローク変位からストローク速度Vdを求めるストローク速度演算部21と、ストロークセンサ20で検知したダンパDのストローク変位からばね下部材Wの振動の大きさである振動レベルrを求める振動レベル検知部22と、予め用意された減衰特性とダンパDのストローク速度Vdとから減衰力目標値Fを求める減衰力目標値演算部23と、ばね上部材Bの振動情報とダンパDの伸縮情報とから減衰力目標値Fを補正する補正ゲインGを求め、当該補正ゲインGを減衰力目標値Fに乗じて最終的な減衰力目標値F*を求める補正手段Aと、補正手段Aで求めた減衰力目標値F*に基づいて減衰力調整部18へ与える電流値Iを求める制御指令値演算部24と、制御指令値演算部24で求めた電流値I通りの電流量を減衰力調整部18へ供給する駆動部25とを備えて構成されている。
ストローク速度演算部21は、図1に示すように、ストロークセンサ20で検出したダンパDのストローク変位を微分してダンパDのストローク速度Vdを演算するようになっている。
ストローク速度Vdは、振動レベル検知部22に入力され、当該振動レベル検知部22は、ストローク速度Vdからばね下部材Wの振動の大きさを示す振動レベルrを求める。
振動レベル検知部22について詳細に説明する。まず、説明を簡単にするため、振動レベル検知部22における振動レベルの検知手法を原理的に説明する。まず、図3に示した物体MをばねSで支承する系における物体Mの振動レベルを検知する場合について考える。物体Mは、図3に示したように、ベースTに鉛直に取り付けたばねSによって図中下方から弾性支持されるばねマス系を構成しており、物体Mの全体における図3中上下方向の振動レベルを検知するには、物体Mの上下方向の速度を得て、得られた値を第一参照値aとして当該第一参照値aの微分値或いは積分値に相当する第二参照値bを得る。そして、上記第一参照値aと上記第二参照値bとに基づいて振動レベルrを求める。
第一参照値aを物体Mの上下方向の速度とする場合、たとえば、物体Mに取り付けられた加速度センサで物体Mの上下方向加速度を検出し、検出した上下方向加速度を積分して物体Mの上下方向速度を得るようにすればよい。
次に、第一参照値aの積分値に相当する物体Mの上下方向の変位を第二参照値bとする場合、第一参照値aを積分することによって第二参照値bとして物体Mの上下方向の変位を得ればよい。なお、第二参照値bを第一参照値aの微分値相当の値とする場合、つまり、物体Mの上下方向の加速度を得るように設定される場合、上記加速度センサから当該上下方向の加速度を得て、これを第二参照値bとしてもよいし、微分器を備えて第一参照値aを微分して第二参照値bを得るようにしてもよい。
また、検知したい物体Mの振動レベルのうち任意の周波数帯の振動レベルを検知することができるよう第一参照値aと第二参照値bから検知したい周波数成分を抽出する。具体的には、帯域フィルタ等を用いて第一参照値aと第二参照値bを濾波することで第一参照値aと第二参照値bの検知したい周波数成分を得ることができる。基本的には、物体MとばねSのばねマス系の固有振動数を帯域フィルタで抽出する周波数とすると、物体Mのスペクトル密度の高い振動を抽出することができる。なお、帯域フィルタは、特に評価したい周波数帯の振動を抽出でき物体Mの振動に重畳されるノイズなどを除去できるので有用であるが、たとえば、物体Mが単一の周期で振動するような場合には、省略することも可能である。
ところで、物体Mの任意の周波数の振動は正弦波で表すことができる。また、物体Mの速度である第一参照値aの任意の周波数成分は正弦波で表すことができる。たとえば、第一参照値aの任意の周波数成分をsinωt(ωは角周波数、tは時間)で表す場合、これを積分すると−(1/ω)cosωtとなり、第一参照値aの振幅とこの積分値の振幅とを比較すると、積分値の振幅は第一参照値aのω分の1倍となる。
したがって、第二参照値bが第一参照値aの積分値相当である場合には、フィルタで抽出する周波数に一致する角周波数ωを用いて、第一参照値aの積分値相当にω倍することで、第一参照値aと第二参照値bとの振幅を等しく調整することができる。
また、第二参照値bが第一参照値aの微分値相当である場合には、1/ω倍することで第一参照値aと第二参照値bとの振幅を等しく調整することができる。このように、第一参照値aと第二参照値bの振幅を同じとするために、この振動レベルを得るに当たって、第二参照値bが第一参照値aの積分値相当である場合には、検知対象となる振動の角周波数ωを用いて、ω倍することで第二参照値bを調整し、第二参照値bが第一参照値aの微分値相当である場合には、1/ω倍することで第二参照値bを調整するようにする。
つづいて、このように処理された第一参照値aと第二参照値bを図4に示すように直交座標にとった際の第一参照値aと第二参照値bの合成ベクトルUの長さを演算し、これを振動レベルrとして求める。なお、合成ベクトルUの長さは、(a2+b2)1/2で演算することができるが、ルート演算を省いて(a2+b2)、つまり、合成ベクトルUの長さの二乗の値を演算することで合成ベクトルUの長さを判断可能な値を求めてこれを振動レベルrとしてもよい。そうすることで、負荷の高いルート演算を回避することができ、演算時間を短縮することができる。また、直接に合成ベクトルUの長さとは一致しないものの、合成ベクトルUの長さをz乗(zは任意の値)した値や当該長さに任意の係数を乗じた値は、合成ベクトルUの長さを認識可能な値であって、このような値を振動レベルとしてもよいことは勿論である。すなわち、合成ベクトルUの長さを認識可能な値を振動レベルrとすればよい。
ここで、ベースTを上下動させて物体Mに振動を与えたり、物体Mに変位を与えて解放したりして物体Mに振動を与えると、ばねSが伸縮してばねSの弾性エネルギと物体Mの運動エネルギとが交互に変換されるため、何ら外乱がない場合には、物体Mの中立位置からの変位が最大となる物体Mの速度が0となり、物体Mが中立位置にあるときに物体Mの速度が最大となる。なお、中立位置とは、物体MがばねSによって弾性支持され静止状態にあるときの位置である。
そして、第一参照値aと第二参照値bとは、上記手順の補正によって、両者の振幅が等しくなり、第一参照値aと第二参照値bの位相は90度ずれているから、物体Mの振動が減衰せず同じ振動を繰り返す場合、第一参照値aと第二参照値bの理想的な軌跡は、図4に示すように、円を描くことになり、振動レベルrがこの円の半径に等しいことが理解できよう。なお、実際には、フィルタの抽出精度や物体Mに作用する外乱、第一参照値aや第二参照値bに含まれるノイズによって、両者の振幅を完全一致させることができない場合もあるが、振動レベルrの値は、ほぼ上記した円の半径に等しくなる。
このように、振動レベルrは、速度である第一参照値aが0でも、変位である第二参照値bの絶対値は最大値をとることになり、反対に、第二参照値bが0でも第一参照値aの絶対値は最大値をとり、物体Mの振動状況が変化しない場合には理想的には一定値をとる。つまり、振動レベルrは、物体Mがどの程度の振幅で振動しているかを示す指標となる値であり、振動の大きさを表している。そして、振動レベルrの算出に当たり、物体Mの一周期分の変位、速度、加速度のいずれかをサンプリングして波高を求める必要もなく、以上の手順から理解できるように、物体Mの変位と速度を得れば求めることができるから、タイムリーに求めることができる。すなわち、上記したように振動レベルを検知するようにすれば、物体Mの振動の大きさをタイムリーかつリアルタイムに検知することが可能である。
なお、第一参照値aと第二参照値bを物体Mの速度と加速度、加速度と加速度の変化率、変位と変位の積分値相当とし振動レベルrを求めてもよく、このように設定しても第一参照値aと第二参照値bの位相は互いに90度ずれており、検知したい振動の角周波数ωで調整することで、第一参照値aと第二参照値bを直交座標にとった時の軌跡は円となるから振動レベルrを求めれば、この振動レベルrが振動の大きさを表す指標となる。つまり、第一参照値aを物体Mの検知したい振動方向に一致する方向の変位、速度、加速度のうちいずれか一つとし、第二参照値bを第一参照値aの積分値相当或いは微分値相当の値とすれば振動レベルrを求めることができる。
第一参照値aは、センサから直接得ずとも、センサ出力を微分や積分して得るようにしてもよい。また、第二参照値bは、センサから直接得ることも可能であり、第一参照値aの微分値相当または積分値相当を第二参照値bとすればよいので、第二参照値bは、第一参照値aを微分或いは積分して得るのではなく別途センサを設けて当該センサから直接得るようにしてもよい。
また、第一参照値aの積分値相当を第二参照値bとする場合、第一参照値aの微分値相当を第三参照値cとし、第一参照値aと第二参照値bとで上記手順によって上記振動レベルに相当する値を求めてこの値を第一振動レベルr1とし、第二参照値bの代わりに第三参照値cを使用して第一参照値aと第三参照値cとで上記手順によって上記振動レベルに相当する値を求めこの値を第二振動レベルr2とし、第一振動レベルr1と第二振動レベルr2とを加算して2で割ることで第一振動レベルr1と第二振動レベルr2の平均値を算出しこの平均値を振動レベルrとすることもできる。なお、第一参照値aの微分値相当を第二参照値bとする場合、第一参照値aの積分値相当を第三参照値cとすればよい。
この場合、図5に示すように、第一参照値aを横軸にとり、第二参照値bと第三参照値cを縦軸にとる直交座標を考える。物体Mの振動レベルのうち検出した周波数帯の振動レベルを求めるため、上記したように第一参照値a、第二参照値bおよび第三参照値cを帯域フィルタで濾波することになる。しかしながら、物体Mの振動周波数と、帯域フィルタで抽出する周波数にずれが生じていると、第一振動レベルr1が第一参照値aの最大値以上の値をとる場合、第一参照値aと第二参照値bの軌跡Jは図5中破線で示す第一参照値aの最大値を半径した円Hより大きな楕円形となり、第二振動レベルr2は第一参照値aの最大値以下の値をとって、第一参照値aと第三参照値cの軌跡Kは円Hよりも小さな楕円となる。つまり、物体Mの振動周波数と検知したい振動周波数が一致しない場合、上記手順の補正をする際に使用する角周波数ωと実際の角周波数ω’がずれているから、第一参照値aの積分値相当の第二参照値bを調整した際に第二参照値bの最大値は、第一参照値aの最大値のω/ω’倍となり、第一参照値aの微分値相当である第三参照値cの最大値は調整によって第一参照値aの最大値のω’/ω倍となる。このように、第一振動レベルr1が第一参照値aより大きな値をとる場合、その分、第二振動レベルr2は第一参照値aよりも小さな値をとるから、これらを平均して振動レベルrを求めると、振動レベルrの変動が緩和されるため、物体Mの振動周波数と検知したい振動周波数とが一致しなくとも、安定した振動レベルrを求めることができ、振動レベルrの検知結果が良好なものとなる。また、このように振動レベルrの変動の緩和を行っても、振動レベルrにうねりが生じる場合には、振動レベルrに物体Mの振動周波数の2倍の周波数成分のノイズが重畳することが分かっているため、この重畳されるノイズを取り除くフィルタを設けて振動レベルrを濾波するようにしてもよい。また、この場合、第一参照値aに対して積分値相当と微分値相当を第二参照値bと第三参照値cとして振動レベルrを求めたが、たとえば、変位を第一参照値aとし、速度を第二参照値bとして振動レベルrを求めることに加えて、加速度を第一参照値aとして加速度の変化率を第二参照値bとして別途振動レベルrを求め、変位と速度から得た振動レベルrと、加速度と加速度の変化率から得た振動レベル
rの平均値を最終的な振動レベルとして求めるといったように、異なる第一参照値と第二参照値とで得た複数の振動レベルから最終的な振動レベルを得ることも可能である。
つづいて、振動レベル検知部22を車両に適用して、具体的に、車両におけるばね下部材Wの振動レベルrを検知する形態について説明する。この場合、振動レベル検知部22は、ストローク速度演算部21から得たダンパDのストローク速度Vdを第一参照値としており、当該第一参照値の微分値に相当する第二参照値を得る第二参照値取得部26と、第一参照値の積分値に相当する第三参照値を得る第三参照値取得部27と、第一参照値、第二参照値および第三参照値からばね下部材Wの共振周波数成分を抽出するフィルタ28と、調整部29と、振動レベルrを求める振動レベル演算部30とを備えている。
なお、第一参照値は、ストローク速度演算部21から得られるダンパDのストローク速度Vdそのものであるので、ストローク速度Vdをそのままフィルタ28に入力することになる。この実施の形態では、ダンパ制御装置Eにストローク速度演算部21を設けており、このストローク速度演算部21で求めたストローク速度Vdを第一参照値としているので、振動レベル検知部22に第一参照値取得部を設けていないが、ばね下部材Wにセンサを取り付けて直接にばね下部材Wの上下方向加速度、速度、変位を検出し第一参照値とする場合には、ばね下部材Wの上下方向加速度、速度、変位を第一参照値として取得する第一参照値取得部を設けるようにしてもよい。
第二参照値取得部26は、ストローク速度Vdである第一参照値を微分することで、ダンパDのストローク加速度であるダンパ加速度αdを求める。
第三参照値取得部27は、ストローク速度Vdである第一参照値を積分することで、ダンパDのストローク変位であるダンパ変位Xdを求めて、これを第三参照値とする。なお、ダンパ変位Xdは、ストロークセンサ20で検出されるので、検出されるダンパ変位Xdをそのまま第三参照値としてもよい。
フィルタ28は、第一参照値であるストローク速度Vd、第二参照値であるダンパ加速度αdおよび第三参照値であるダンパ変位Xdを濾波し、ストローク速度Vd、ダンパ加速度αdおよびダンパ変位Xdに含まれるばね下部材Wの共振周波数帯の周波数成分のみを抽出する。
なお、ばね下部材Wの変位、速度、加速度を求めることができればよいので、第二参照値と第三参照値を得る際に第一参照値を微分および積分する場合、フィルタ28の処理は、第一参照値を得る前のダンパ変位Xdに対してのみ行ってもよい、つまり、ストロークセンサ20の出力を直接濾波処理してもよく、第二参照値と第三参照値を得る前に第一参照値のみに対して行ってもよい。こうして得られた第一参照値、第二参照値および第三参照値は、調整部29にてばね下部材Wの共振周波数に一致する角周波数ωを用いて調整される。
振動レベル演算部30は、第一参照値と第二参照値とから第一振動レベルr1を求め、第一参照値と第三参照値とから第二振動レベルr2を求め、これらの平均値であるばね下部材Wの振動レベルrを求める。なお、第三参照値取得部27を設けずに第一参照値と第二参照値とからばね下部材Wの振動レベルrを求めてもよいが、第三参照値取得部27を設けて振動レベルrを求めることで、振動レベルrの検知結果が良好なものとなる。
上記のようにして得られた振動レベルrは、補正手段Aに入力されて、補正手段Aにおける減衰力目標値Fを補正して減衰力目標値F*を求めるための情報として利用される。
つづいて、減衰力目標値演算部23は、予め用意された減衰特性と、ストローク速度演算部21で求めたストローク速度Vdとから目標減衰力を求める。具体的には、減衰力目標値演算部23は、図6に示した減衰特性上であって現在のストローク速度Vdに対応する減衰力目標値Fを求める。減衰特性は、図6に示すように、ストローク速度Vdに対してばね下部材Wの振動を抑制するのに適した減衰力の特性であり、この減衰特性を用いてストローク速度Vdから減衰力目標値Fを求めることができる。
なお、図6の破線は、このダンパDの減衰力の出力下限を示しており、一点鎖線は、ダンパDの減衰力の出力上限を示していて、出力下限から出力上限の範囲でダンパDは、減衰力を変化させることができる。
つづいて、減衰力目標値Fを補正して減衰力目標値F*を求める補正手段Aについて説明する。補正手段Aは、ばね上部材Bの振動情報とダンパDの振動情報とからダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できるか否かを判断する判断部40と、振動レベルrが上限値と下限値を超えると振動レベルrの値を飽和させる飽和演算部41と、ストローク速度Vdと振動レベルrの入力を受けてストローク速度Vdを振動レベルrで割る割算部42と、割算部42の結果および判断部40の判断結果から減衰力目標値Fに乗じる補正ゲインGを求めるゲイン演算部43と、減衰力目標値Fに補正ゲインGを乗じて減衰力目標値F*を得る乗算部44とを備えて構成されている。そして、ダンパ制御装置Eは、補正手段Aによって補正された減衰力目標値F*に従って減衰力調整部18へ電流を供給し、目標減衰力通りの減衰力をダンパDに出力させる。
判断部40は、ばね上部材Bの振動情報とダンパDの振動情報とからダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できるか否かを判断できればよいので、たとえば、ばね上部材Bの振動情報としてはばね上部材Bの振動の方向が分かる情報であればよく、ダンパDの振動情報としては現在の減衰力の向きが分かる情報であればよい。したがって、具体的には、ばね上部材Bの振動情報としては、ばね上部材Bの上下方向速度等といったばね上部材Bの振動方向に判断可能な情報を得ればよく、このような情報は、ばね上部材Bの振動状況をセンシングするセンサから直接得るようにしてもよいし、ダンパ制御装置Eの上位の制御装置がある場合、当該制御装置から得てもよい。さらに、ばね上部材Bの振動方向の情報は、上位の制御装置などで加工された情報であってもよい。つまり、車両の車体のロール成分、ピッチング成分、バウンス成分或いはこれらを任意に合成した情報あってもよく、ばね上部材Bのどのような振動を抑制したいかによって、適宜、判断部40に入力すべき情報を選択することができる。よって、具体的には、たとえば、ばね上部材Bが仮に実際には上方へ振動していても、車体の振動のロール成分のみを抽出するとこのロール成分ではばね上部材Bが下方へ振動していると判断される場合、車体のロールを抑制する目的であれば、ばね上部材Bの振動方向は下方であるとする情報を判断部40へ入力すればよい。
また、ダンパDの振動情報としては、現在の減衰力の向きが分かる情報であればよいので、ダンパDのストローク速度Vd、変位、圧力室15,16の圧力といった情報であればよい。なお、このような情報は、ダンパDの振動状況をセンシングするセンサから直接得るようにしてもよいし、ダンパ制御装置Eの上位の制御装置がある場合、当該制御装置から得てもよい。この場合、ダンパ制御装置Eでストローク速度Vdを求めているので、図1に示すように、ダンパDの振動情報としてストローク速度演算部21で求めたストローク速度Vdを判断部40へ入力するか、或いは、ストロークセンサ20で得られるダンパDの変位を判断部40へ入力すれば別途ダンパDの振動情報を得るためのセンサを設ける必要が無くなる。そして、判断部40は、上記のようにダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できるか否かを判断するが、この例では、ばね上部材Bの振動方向とダンパDの伸縮方向が一致しているか否かでこの判断を行うようにしている。たとえば、ばね上部材Bの上下方向速度とストローク速度Vdを利用する場合、上下方向速度のうち上側の速度を正とし、ダンパDの伸長側のストローク速度Vdを正とするのであれば、上下方向速度とストローク速度Vdの符号の一致をもって、或いは、上下方向速度とストローク速度Vdの乗算結果が正の値であることをもって、ダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できると判断すればよい。逆に、上下方向速度のうち上側の速度を正とし、ダンパDの伸長側のストローク速度Vdを負とするか、反対に、上下方向速度のうち上側の速度を負とし、ダンパDの伸長側のストローク速度Vdを正とする場合、上下方向速度とストローク速度Vdの符号の不一致をもって、或いは、上下方向速度とストローク速度Vdの乗算結果が負の値であることをもって、ダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できると判断すればよい。
飽和演算部41は、上記のようにして求めた振動レベルrの入力をうけ、振動レベルrの値が下限値を下回ると下限値に、上限値を上回ると上限値にそれぞれ制限する処理を行う。たとえば、この例では、振動レベルrの下限値を0.3とし、上限値を0.6としており、振動レベルrの値が0.3未満であると振動レベルrの値を0.3とし、振動レベルrの値が0.6より大きいと振動レベルrの値を0.6とし、振動レベルrの値が0.3以上、0.6以下であるとそのままの値を出力する。
割算部42は、ストローク速度Vdと飽和演算部41が出力した振動レベルrの入力を受けてストローク速度Vdを振動レベルrで割る割算を実行する。こうして割り算することで得られた値は、判断部40の判断結果とともにゲイン演算部43に入力される。たとえば、ストローク速度Vdが0.6m/s以上である場合、振動レベルrは0.6に制限されるので、割算部42は1以上を出力する。そして、振動レベルrが0.6である場合に、ストローク速度Vdが0.3であると割算部42は0.5を出力し、ストローク速度Vdが0である場合には0を出力する。なお、ストローク速度VdはダンパDの伸長と収縮の方向で符号が反転することになり、振動レベルrは振動の大きさで常に正の値を採るため、割算部42の演算結果もダンパDの伸長側と収縮側とでは符号が反転したものとなる。このように割算部42を設けることでゲイン演算部43におけるマップ演算においてストローク速度Vdが正規化されることになる。
ゲイン演算部43は、ダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できる場合に採用するべきゲインマップM1と、ダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できない場合に採用するべきゲインマップM2とを有しており、この判断部40の判断結果から上記二つのゲインマップM1,M2のうち一方を選択し、割算部42により正規化されたストローク速度Vd/rから加算ゲインを求め、この加算ゲインに1を加算して最終的に減衰力目標値Fに乗じるべき補正ゲインGを得るようになっている。つまり、ゲインの値が1から乖離すればするほど、減衰力目標値Fが大きく補正されることになる。
ゲインマップM1,M2は、具体的には、縦軸に加算ゲインを採り、横軸に正規化されたストローク速度Vd/rを採ったグラフ上に設定されており、ゲインマップM1は図7中実線で示すように、横軸の−1から1までの値を採る正規化されたストローク速度Vd/rに対して加算ゲインが0から0.3の間の値をとるようになっており、ゲインマップM2は図7中破線で示すように、正規化されたストローク速度Vd/rに対して加算ゲインが−0.3から0の間の値をとるようになっている。なお、割算部42の演算結果が1以上或いは−1以下の値の場合、加算ゲインは、マップM1,M2の終端の値である−0.3或いは0.3を採るようになっている。
図示するところでは、ゲイン演算部43は、上記のゲインマップM1,M2を利用してマップ演算して得た加算ゲイン値に1を加算した値を補正ゲインGとして出力する。この実施の形態では、加算ゲインを求め、これに1を加えて補正ゲインGを求めるようにしているが、ゲインマップM1,M2の縦軸に補正ゲインを採って、正規化されたストローク速度Vd/rから直接的に補正ゲインGを求めるようにしてもよい。つまり、この実施の形態の場合、ストローク速度Vdの絶対値が振動レベルr以上の値となっても、加算ゲインは下限値の−0.3或いは上限値の0.3に制限されて、補正ゲインGの値は飽和するようになっている。また、補正ゲインGがダンパDのストローク速度Vdに応じて変化し、ストローク速度Vdが増加すると補正ゲインGも増加するようになっている。
乗算部44は、減衰力目標値Fに上記のようにして求めた補正ゲインGを乗じて、最終的な減衰力目標値F*を求める。ここで、振動レベルrが大きい場合、振動中のダンパDのストローク速度Vdの振幅も大きくなるため、振動レベルrが小さい場合に比較して、ストローク速度Vdの変化率が大きくなる。よって、振動レベルrが大きい場合は、振動レベルrが小さい場合に比較して、ダンパDの減衰力の変化率も大きくなり、特に、ストローク速度Vdが低速域において減衰力変化が著しくなる。したがって、振動レベルrの大きさよらず、ストローク速度Vdのみによって補正ゲインGを決定すると、振動レベルrが大きい場合にゲインの値の1からの乖離が大きくなりすぎてストローク速度Vdが低速域にある際のダンパDの減衰力を急変させる場合がある。そこで、振動レベルrの大きさ毎に補正ゲインマップを用意する、たとえば、振動レベルrが0.3および0.6の時の最低二つの補正ゲインマップを用意しておき、振動レベルrが他の値を採る場合には、補正ゲインマップ間を線形補間する等して補正ゲインGを求めることができる。なお、振動レベルrが大きければ大きいほど、ストローク速度Vdが低速域における補正ゲインGが大きいと減衰力の急変の影響を受けやすいため、補正ゲインGの値が上記のように飽和するまでは、振動レベルrが大きければ大きいほど、任意のストローク速度Vdに対して補正ゲインGの値の1からの乖離が小さくなるようになっている。このように、補正ゲインマップを複数用意しておくようにしてもよいが、上述のように、割算部42を設けることでゲイン演算部43におけるマップ演算においてストローク速度Vdを正規化することで、ばね上部材Bの振動方向とダンパDの振動方向が一致する場合のゲインマップM1と両者が一致しない場合のゲインマップM2をそれぞれ一つ持っておけば、振動レベルrに応じた補正ゲインマップを多数用意しておく必要がなくなって、演算も容易となり、ダンパ制御装置Eにおける記憶容量も小さくすることができる利点がある。但し、減衰力の急変を回避しなくとも良い場合には、振動レベルrに応じた補正ゲインマップを用意するのではなく、振動レベルrによって正規化せず、ストローク速度Vdから加算ゲイン或いは補正ゲインGを求めるマップを用意して、補正ゲインGを求めてもよい。なお、ゲインマップM1,M2は、縦軸を中心として線対称となっているが、これに限られるものではない。
なお、ゲインマップM1,M2は、縦軸0のラインを中心として線対称になっており、任意の正規化されたストローク速度Vd/rの値に対して、ゲインマップM1,M2のそれぞれについてマップ演算すると、互いに符号を反転させた値を採り、これらに1を加えた値が補正ゲインGとなり、これらを加算すると2となる。この実施の形態の場合、ダンパDの減衰特性が任意のストローク速度Vdに対してダンパDの伸長側と収縮側とで減衰力の絶対値が同じであって、伸側減衰力と圧側減衰力の比である伸圧比が1となっているので、上記のように補正ゲインGを求めると、任意のストローク速度Vdに対するダンパDの伸側減衰力の値と圧側減衰力の値の和は、減衰力目標値Fに補正ゲインGを乗じる前後で同じ値となる。このようにすることで、ダンパDのストローク一周期で出力する減衰力とストローク速度Vdで演算されるエネルギ吸収量は、減衰力目標値Fに補正ゲインGを乗じた場合と乗じる前とで等しくなる。ばね下部材Wの制振を考えると、ダンパDのエネルギ吸収量が同じであれば、ばね下部材Wの振動を充分抑制することができることから、上記したように減衰力目標値Fに補正ゲインGを乗じる前後で減衰力のトータル量を等しくするとばね下部材Wの振動抑制に必要充分な振動減衰量が確保されるため、ばね下部材Wの制振に悪影響を与えずに済むことになる。
なお、上記したところでは、減衰力目標値Fに補正ゲインGを乗じて実際にダンパDの減衰力調整部18を駆動する駆動部25へ与える減衰力目標値F*を求めているが、減衰特性を補正ゲインG倍することで減衰特性のマップを補正した後に、ストローク速度Vdと補正後のマップとから減衰力目標値F*を求めることもできる。さらに、たとえば、減衰特性をいくつか用意しておき、振動レベルrに値に応じて、ばね下部材Wの制振に最も適する減衰特性を選択し、選択された減衰特性に基づいて減衰力目標値Fを求め、補正ゲインGにて補正するようにしてもよい。
制御指令値演算部24は、減衰力調整部18が供給される電流量によってダンパDの減衰係数を調整するので、上記のようにして求められた減衰力目標値F*から減衰力調整部18へ与えるべき制御指令値として電流値Iを求める。駆動部25は、たとえば、PWM回路などを備えていて、制御指令値演算部24が求めた電流値I通りに減衰力調整部18へ電流を供給する。なお、駆動部25は、PI補償、PID補償等の補償器を備えていて、減衰力調整部18に流れている電流をフィードバック制御し、減衰力調整部18へ電流値I通りに電流を供給するようになっているが、これに限られるものではない。
上記したようにダンパ制御装置Eでは、ダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できる場合には、ベースとなる減衰特性から求めた減衰力目標値Fよりも減衰力目標値F*を大きくするように補正し、反対にダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できない場合には、減衰特性から求めた減衰力目標値Fよりも減衰力目標値F*を小さくするように減衰特性を変更する。
つまり、このダンパ制御装置Eにあっては、ダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できる場合には、ダンパDの減衰力を大きくするように誘導し、ダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できずにダンパDがばね上部材Bの振動を助長する方向に減衰力を発揮するような場合には、ダンパDの減衰力を小さくするように誘導するので、ばね下部材Wの制振を行いつつもばね上部材Bの振動をも抑制することができる。
よって、本発明のダンパ制御装置Eでは、ばね下部材Wの制振を目的としてダンパDの減衰力を制御する場合にあっても、ダンパDの発生する減衰力をばね上部材Bの振動状況に応じて、ばね上部材Bの振動の抑制に適するように減衰力目標値Fを補正してダンパDの減衰力を制御することができるので、ばね上部材Bの制振とばね下部材Wの制振を両立させて車両における乗り心地を向上させることができるのである。
また、補正ゲインGがダンパDのストローク速度Vdに応じて変化し、上記補正ゲインGは、ダンパDのストローク速度Vdの増加に対し増加するよう変化するようになっているので、特に、ストローク速度Vdが低速域にある際には補正ゲインGを小さくしてダンパDの減衰力の急変を緩和することができ、より一層車両における乗り心地を向上させることができる。補正ゲインGは、ダンパDがばね上部材Bの振動を抑制する減衰力を発揮できる場合には1以上の任意の一定の値とし、そうでない場合についても任意の1以下の値に設定することも可能であるが、ダンパDの減衰力の急変を緩和する観点からは、ストローク速度Vdの絶対値が0.3m/s以下である範囲において、ストローク速度Vdの絶対値が0から増加するのに対して補正ゲインGが0から増加するように設定すると、上記減衰力の急変を緩和することができる。
さらに、補正ゲインGは、ばね下部材Wの振動の大きさを示す振動レベルrに基づいて変化するようにしており、上述したように、振動レベルrの大きさによらずにストローク速度Vdのみによってゲインを決定すると、振動レベルrが大きい場合に補正ゲインGが大きくなりすぎてストローク速度Vdが低速域にある際のダンパDの減衰力を急変させる場合があるが、振動レベルrが大きければ大きいほどゲインの値の1からの乖離を小さくして、振動レベルrが大きくストローク速度Vdが低速域にある際のダンパDの減衰力の急変を緩和することができ、より一層車両における乗り心地を向上させることができる。
また、減衰特性が複数用意されていて、ばね下部材Wの振動状況に基づいて複数の減衰特性のうち一つを選択して減衰力目標値Fを求める場合には、ばね下部材Wの制振に最適な減衰特性を選択しつつもばね上部材Bの制振も可能となるから、ばね下部材Wとばね上部材Bの制振を高次元で両立させることができ、車両における乗り心地をさらに向上させることができる。減衰特性の選択に当たっては、たとえば、ストローク速度Vd等といった振動レベルr以外のパラメータを基準として減衰特性を選択してもよい。
なお、上記したように、ベースとなる減衰特性からダンパDの減衰力目標値Fを求めてから、この減衰力目標値Fに補正ゲインGを乗じて最終的な減衰力目標値F*を求めているが、減衰特性に補正ゲインGを乗じて、減衰特性全体を補正するようにしておき、この補正された減衰特性から減衰力目標値F*を求めることも、結局は、演算の順序を入れ替えただけであるから、本発明に言う減衰力目標値Fの補正に他ならないことは明らかである。
上記したところでは、ダンパDの減衰特性が、任意のストローク速度Vdに対してダンパDの伸長側と収縮側とで減衰力の大きさが同じに設定されているが、このような減衰特性をもたないダンパに対しても本発明を適用することができるのは当然であり、その場合にあっても、ダンパDの伸長時に出力される減衰力量と収縮時に出力される減衰力量のトータルが同じになるように減衰特性を変更すれば、ばね下部材Wの振動抑制に必要充分な減衰力量が確保されるため、ばね下部材Wの制振に悪影響を与えずに済む。
また、上記補正ゲインGは、ばね上部材Bの振動速度によって、補正することもできる。たとえば、図8に示すように、ばね上部材Bのロール速度が低い場合には、補正手段Aにおけるゲイン演算部43の後にゲイン補正部45を設けて、上記補正ゲインGに1以下の値を採るゲイン補正係数を乗じて補正ゲインGを補正してから、補正後の補正ゲインGで減衰力目標値Fを補正して減衰力目標値F*を求め、ばね上部材Bの振動速度が低い場合の補正ゲインGを小さくして減衰力目標値Fの補正の度合いを小さくし、特に、ばね上部材Bの振動方向が逆転する際のダンパDの減衰力の急変を緩和して、車両における乗り心地をさらに向上させることが可能である。
さらに、上記補正ゲインGとは、別個独立して、車両の速度に応じて上記補正ゲインGを補正するようにしてもよい。たとえば、図9に示すように、補正手段Aにおけるゲイン演算部43の後にゲイン速度補正部46を設けて、上記補正ゲインGに車両の速度が高くなると徐々に大きくなる速度補正係数を乗じて補正ゲインGを補正してから、補正後の補正ゲインGで減衰力目標値Fを補正して減衰力目標値F*を求め、車両の速度に適したばね上部材Bの制振とばね下部材Wの制振を実現するようにし、車両における乗り心地をさらに向上させることが可能である。なお、この車両の速度による上記補正ゲインGの補正とばね上部材Bの振動速度による上記補正ゲインGの補正とは、互いに独立して設けることができ、両補正を実施するようにしてもよい。
なお、ダンパ制御装置Eは、この実施の形態の場合、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、センサ部が出力する信号を取り込むためのA/D変換器と、振動レベル検知と電流値Iの演算に必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、上記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、上記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、CPUが上記プログラムを実行することで、ダンパ制御装置Eの動作を実現すればよい。
また、ばね下部材Wの振動レベルrを検知するには、ストロークセンサ20で検出したシリンダ12とピストンロッド14との相対変位を検知する以外にも、ばね下部材Wにセンサを取り付けて、直接にばね下部材Wの上下方向加速度を検出し、この上下加速度を用いて第一参照値を求めるようにしてもよい。また、ダンパDにストロークセンサ20を組み込むようにしてもよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。