JP5853900B2 - 編組線の製造方法及び編組線の製造装置 - Google Patents

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Description

この発明は、複数の線材を編んで編組線を製造する編組線の製造方法及び製造装置に関する。
自動車産業界において、近年、「エコ・低燃費」への取り組みが進み、HEV(Hybrid Electric Vehicle)車あるいはEV(Electric Vehicle)車(以下、まとめて「HEV・EV車」と略記)が著しく増加する傾向にある。
このような状況下で、HEV・EV車ではモーター兼発電機であるモータージェネレータ(MG)と電力変換器であるインバータ(INV)との間を電気的に接続するワイヤーハーネスに対し、ノイズ遮蔽用途でシールド処理を施していた。そのシールド用途で使用されるシールド層として編組線がある。
電線のシールド層として編組線を製造する技術として、例えば、特許文献1に開示の技術がある。特許文献1では、ボビンより繰出されるシールド材が被シールド電線周りで筒状に編まれた編組線として、線材を巻取るキャプスタンにより引っ張られて、合成樹脂押出成形機に送込まれるようになっている。
また、編組線の他の態様として、例えば、「44打・/4本持・TA0.26mm」で分類される編組線がある。すなわち、44本のボビンそれぞれから、4本構成の直径0.26mmのTA(Tin Coated Anneled Copper Wires;すずめっき軟銅線)が繰り出された線材を編んで得られた編組線(以下、単に「上記タイプの編組線」と略記する場合あり)がある。上記タイプの編組線は被シール電線とは独立して一括シールド用編組線として単体で製造される。すなわち、一括シールド用編組線は、空心状態で筒状に編まれた編組線を製造し、この空心の編組線に対して電線を挿入することにより、電線をシールドすることができる。
上記タイプの編組線は、キャリア部から供給される素線(4本持/TA0.26)を44個集合させ網口ダイスを通じて得られる編組線を、巻き取り用キャプスタンを用いて巻き取ることにより、製造することができる。
特開2004−311330号公報
しかしながら、上述したように一括シールド用編組線は空心の編組線であることから、断面形状が安定しないため、一括シールド用編組線に歪みが生じやすい。
上記一括シールド用編組線の製造時に歪みが発生すると、完成後の一括シールド用編組線に対する加工段階の切断時に切断面が斜めになり、編組線の端部をアース用のリング部材等にカシメ固定等しようとする場合に、両者間の固定強度悪化、接触面積縮小に伴う接触抵抗増加を招いてしまうという問題点があった。
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、歪みが生じることなく精度良く編まれた編組線を製造することができる編組線の製造方法及び編組線の製造装置を得ることを目的とする。
この発明に係る請求項1記載の編組線の製造方法は、複数の線材を編んで編組線を得た後、所定の巻き取り装置を用いて巻き取る編組線の製造方法であって、(a) 所定の線材供給機構から前記複数の線材を所定の網口ダイスに向けて供給するステップと、(b) 前記所定の網口ダイスを通過して前記所定の巻き取り装置に至る第1の方向に沿った前記複数の線材の経路である移動経路上に設けられた経路規制部を通過させるステップとを備え、前記経路規制部を通過する前段階の所定の収束位置から前記複数の線材が前記編組線として編まれ、(c) 前記経路規制部を通過後の前記編組線を前記所定の巻き取り装置を用いて巻き取るステップをさらに備え、前記ステップ(b) に用いられる前記経路規制部は、前記第1の方向に垂直な第2の方向における前記編組線の動きが、前記所定の巻き取り装置の前記編組線の巻き取り位置に合致した理想中心位置から所定の規制幅内に収まる第2方向規制処理が可能であり、かつ、前記第1の方向において、前記所定の収束位置から前記編組線の編組ピッチ長近傍の形成高さに設けられることを特徴とする。
この発明に係る請求項2記載の編組線の製造装置は、複数の線材を編んで編組線を得た後、所定の巻き取り装置を用いて巻き取る編組線の製造装置であって、前記複数の線材を所定の網口ダイスに向けて供給する所定の線材供給機構と、前記所定の網口ダイスを通過して前記所定の巻き取り装置に至る第1の方向に沿った前記複数の線材の経路である移動経路上に設けられた経路規制部とを備え、前記経路規制部を通過する前段階の所定の収束位置から前記複数の線材が前記編組線として編まれ、前記経路規制部を通過後の前記編組線を巻き取る前記所定の巻き取り装置をさらに備え、前記経路規制部は、前記第1の方向に垂直な第2の方向における前記編組線の動きが、前記所定の巻き取り装置の巻き取り位置に合致した理想中心位置から所定の規制幅内に収まる第2方向規制処理が可能であり、前記第1の方向において、前記所定の収束位置から前記編組線の編組ピッチ長近傍の形成高さに設定されることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2記載の編組線の製造装置であって、前記複数の線材は所定数の線材を含み、前記線材供給機構は、前記所定数の線材に対応して設けられ、各々が回転動作を行う前記所定数のボビンを有し、前記所定数のボビンから前記所定数の線材が前記所定の網口ダイスに向けて繰り出され、前記所定数は“44”であり、前記複数の線材はそれぞれ、直径が0.26mmのすずめっき軟銅線の4本構成の線材であり、前記所定の規制幅は4mm未満の幅である。
請求項1記載の本願発明の製造方法のステップ(b) に用いられる経路規制部は、第1の方向に垂直な第2の方向における編組線の動きが、上記理想中心位置から所定の規制幅内に収まるように第2方向規制処理が可能である第1の特徴を有している。
請求項1記載の本願発明は、上記第1の特徴を有することにより、理想中心位置からの第2の方向の位置ズレが編組歪みを発生しない範囲で上記所定の規制幅を設定することにより、編組線の第2の方向における位置ズレに起因する編組歪みを抑制することができる。
さらに、請求項1記載の本願発明は、第1の方向において、所定の収束位置から編組線の編組ピッチ長近傍の形成高さに経路規制部が設けられるという第2の特徴を有することにより、経路規制部による上記第2方向規制処理を最も効果的に実行させることができるため、編組歪みを確実に抑制することができる。
請求項2記載の本願発明の編組線の製造装置における経路規制部は、第1の方向に垂直な第2の方向における編組線の動きが、上記理想中心位置から所定の規制幅内に収まるように第2方向規制処理が可能である第1の特徴を有している。
請求項2記載の本願発明は、上記第1の特徴を有することにより、上記理想中心位置からの第2の方向の位置ズレが編組歪みを発生しない範囲で上記所定の規制幅を設定することにより、編組線の第2の方向における位置ズレに起因する編組歪みを抑制することができる。
さらに、請求項2記載の本願発明は、第1の方向において、所定の収束位置から編組線の編組ピッチ長近傍の形成高さに経路規制部が設けられるという第2の特徴を有することにより、経路規制部による上記第2方向規制処理を最も効果的に行うことができ、編組歪みを確実に抑制することができる。
請求項3記載の本願発明の製造装置は、上記特徴を有する線材供給機構及び所定数の線材に対し、精度良く編組線を製造することができる。
複数の線材を編んで得られる編組線を示す概略図である。 本実施の形態における編組線製造装置を示す正面図である。 同上の編組線製造装置を示す平面図である。 編組線の編組構造を模式的に示す説明図(その1)である。 編組線の編組構造を模式的に示す説明図(その2)である。
<全体構成>
以下、本実施の形態における編組線の製造方法及び編組線の製造装置について説明する。
図1は複数の線材を編んで得られる編組線10を示す概略図である。編組線10は、複数(例えば、44本)の線材である複数の導電線12(後述)を、空心の筒状に編むことに形成されている。導電線としては、銅線又は銅合金線等が用いられる。このような編組線10は、網目を大きくするようにして広げることができる。そして、広げた編組線10内に、電力線等の電線18が挿入されることで、編組線10は当該電線18を覆うこととなる。これにより、編組線10は、電線18に対して電磁的なシールドを行う。編組線10は、上述したように、例えば、HEV・EV車においてMG,INV間に設けられる電線18を覆うシールド材等として用いられる。
図2はキャプスタン装置40が組込まれた本実施の形態の編組線製造装置20を示す正面図であり、図3は編組線製造装置20を示す平面図である。
編組線製造装置20は、複数の導電線12を編んで編組線10を製造する装置であり、主して、線材供給機構30と、網口ダイス5と、ガイドローラー1と、キャプスタン装置40と、巻取収納部60とを備えている。
線材供給機構30は、筒状の網を形成可能な態様で、複数の導電線12を送出し可能に構成されている。ここでは、線材供給機構30は、装置台22上に設けられた走行ベース32と、当該走行ベース32上を走行可能に設けられた複数の走行部34と、複数の走行部34それぞれに設けられたボビン36とを備えている。なお、複数の走行部34を区別するため、下記の説明及び図3等において、走行部34(1)、34(2)、34(3)、34(4)と表記する場合がある。
走行ベース32は、円盤状に形成されており、その上面に2つの走行路33A、33Bを有している。各走行路33A、33Bは、半円弧状の部分がサインカーブを描くように環状に連なる走行路に形成されている。また、2つの走行路33A、33Bは、それぞれの外周側に凸となる部分と内周側に凸となる部分とが一致する状態(サインカーブで捉えると半周期ずれた状態)で相互に交わっている。
上記走行部34は、導電線12を巻回収容したボビン36を回転自在に支持可能に構成されている。そして、本ボビン36より繰出される導電線12が、走行部34の走行によって筒状の網に編まれつつ、網口ダイス5及びガイドローラー1を通過した後、編組線10としてキャプスタン装置40に巻取られるようになっている。
すなわち、上記複数の走行部34のうちの半数の走行部34は、一方の走行路33Aを走行可能に設けられ、残りの半数の走行部34は他方の走行路33Bを走行可能に設けられている。走行ベース32内には、モーター、走行ベルト等を用いた走行駆動機構が組込まれており、この走行駆動機構によって、それぞれの走行路33A、33Bにおいて、走行部34が走行駆動される。具体的には、一方の走行路33Aでは、複数の走行部34は走行ベース32周りの一方側の回転方向に向けて間隔をあけて走行駆動され、他方の走行路33Bでは、複数の走行部34は走行ベース32周りの他方側の回転方向に向けて間隔をあけて走行駆動される。そして、それぞれの走行路33A、33Bにおいて、走行部34が互いに内外周の位置を入れ替えつつ、互いに逆方向に回転走行する。図3において、走行路33A、33Bが交差する一つのポイントPに着目して説明すると、走行路33Aを走行する走行部34(1)が、右回りでかつ外周側から内周側に向けてポイントPを通過した後、走行路33Bを走行する走行部34(2)が左周りでかつ外周側から内周側に向けてポイントPを通過し、この後、走行路33Aを走行する走行部34(3)が、右回りでかつ外周側から内周側に向けてポイントPを通過し、さらにこの後、走行路33Bを走行する走行部34(4)が左周りでかつ外周側から内周側に向けてポイントPを通過する。これにより、走行路33Aを走行する走行部34に支持されたボビン36より繰出される導電線12と、走行路33Bを走行する走行部34に支持されたボビン36より繰出される導電線12とが、内周側及び外周側に入れ替るように配設されつつ、所定の軸周り外周側より供給され、理想的には走行路33A、33Bの中心軸上で集合して筒状の網形態に編まれるようになっている。
上記のように編組線製造装置20によって、複数の導電線12は、網口ダイス5、ガイドローラー1を通過し、最終的に編組線10としてキャプスタン装置40によって巻取られて巻取収納部60に巻回収容される。網口ダイス5は平面視してその中心が、複数のボビン36の繰り出し位置の中心(走行路33A、33Bの中心軸上)に合致する位置に設けられる。
すなわち、本実施の形態の編組線製造装置20は、線材供給機構30から複数の導電線12が供給され、網口ダイス5を通過後の収束位置S1から編組線10として編まれ、ガイドローラー1を通過した後の編組線10をキャプスタン装置40を用いて巻き取る装置であり、以下のステップ(a) 〜(c) を実行する。
(a) 線材供給機構30(所定の線材供給機構)から複数の導電線12を網口ダイス5に供給するステップ、
(b) 網口ダイス5内を通過してキャプスタン装置40に至る垂直方向(第1の方向)に沿った複数の導電線12の経路である移動経路上に設けられたガイドローラー1(経路規制部)を通過させるステップ、このガイドローラー1を通過する前段階の網口ダイス5の上方の収束位置S1から複数の導電線12が編組線10として編まれはじめ、
(c) ガイドローラー1を通過後の編組線10をキャプスタン装置40(所定の巻き取り装置)を用いて巻き取るステップを備えている。
このように、線材供給機構30、網口ダイス5及びガイドローラー1の上方にキャプスタン装置40が設けられると共に、キャプスタン装置40の側方に巻取収納部60が設けられている。
なお、収束位置S1は、複数の導電線12が通過する網口ダイス5の開口部(円状)の大きさを所望の径で設定することにより、網口ダイス5から意図する高さに設定することができる。
キャプスタン装置40は、ボビン36から導電線12が連続的に引出されるように、編まれた編組線10を巻取ると共に、巻取った編組線10を巻取収納部60に送出し可能に構成されている。
キャプスタン装置40は、キャプスタンローラ42を備えている。
キャプスタンローラ42は、円盤状の全体形状を有しており、一端側から他端側に向けて順次縮径するテーパ状外周面43を有すると共に、その小径側の端部に外周側に向けて張出すつば部44が形成されている。ここでは、テーパ状外周面43のうちのもっとも小径となった部分からつば部44に向けてやや拡径する部分が形成されているが、これは必須ではない。
このキャプスタンローラ42は、装置台22に設けられた支柱24によって、走行ベース32の上方で回転可能に支持されている。この支持状態では、キャプスタンローラ42の回転軸部46は水平方向(第2の方向)に沿って配設され、編組線10の巻取方向である垂直方向に対して直交している。また、走行路33A、33Bの中心軸延長線が、キャプスタンローラ42の軸方向においてテーパ状外周面43の最も小径となる部分よりも大径側の位置C1(巻取開始点C1)で、テーパ状外周面43に接するようになっている。これにより、筒状に編まれた編組線10が、そのまま真上に引上げられ、テーパ状外周面43の大径側の部分である巻取開始点C1から巻取られるようになっている。
したがって、キャプスタン装置40の巻取開始点C1が後述する編組線10の理想中心位置となる。
また、キャプスタンローラ42の回転軸部46の一端部には、モーター等の回転駆動機構48が設けられている。この回転駆動機構48によって、キャプスタンローラ42が編組線10を巻取る方向に回転駆動されるようになっている。
なお、本編組線製造装置20において、編組線10に対してさらに張力を付与する別のキャプスタン、あるいは、余長吸収等を行うアキュームレータ等が組込まれていてもよい。
巻取収納部60は、編組線10を巻回収容可能なリール状に形成され、キャプスタンローラ42の側方位置で、支持フレーム26によって回転可能に支持されている。また、キャプスタンローラ42の回転軸部46に取付けられたプーリー46aと、巻取収納部60の回転軸部62に取付けられたプーリー62aとに、環状ベルト64が巻掛けられており、回転軸部46の回転が環状ベルト64を介して回転軸部62に伝達されるようになっている。これにより、キャプスタンローラ42と同期して巻取収納部60が回転するようになっている。
そして、回転駆動機構48によってキャプスタンローラ42及び巻取収納部60が回転すると、編まれた編組線10がキャプスタンローラ42によって巻取られつつ、巻取収納部60に送られて、当該巻取収納部60に巻回収容されるようになっている。
テーパ状外周面43の巻取開始点C1に達した編組線10は、テーパ状外周面43のうち前記到達部分からつば部44に至る領域で、複数回(例えば、2回)巻付けられ、つば部44に巻付けられた部分から外方に引出されて巻取収納部60に導かれる。編組線10がテーパ状外周面43に複数回巻付けられることで、テーパ状外周面43と編組線10との滑りが抑制され、キャプスタンローラ42の回転駆動力が編組線10を巻取る力としてより確実に伝達される。編組線10をテーパ状外周面43に巻付ける際には、編組線10の各周回部分が相互に干渉しないように、螺旋状に巻付けることになる。
<ガイドローラー1>
図2に示すように、ガイドローラー1は網口ダイス5の中空部の通過領域の上方であり、キャプスタン装置40の巻き取り位置C1直下に位置する編組線10の移動経路上において、複数の導電線12の収束位置S1からガイド高さH1の高さに設けられている。
ガイドローラー1はローラ本体1a、ローラフランジ部1b及びシャフト部1cから構成され、ローラ本体1a及びローラフランジ部1bそれぞれのつば部間のガイド幅W1の規制領域内に編組線10が通過するように水平方向(第2の方向)の位置設定がなされている。
なお、シャフト部1cはブラケット2に回転可能に設けられており、上記規制領域内ににおいてシャフト部1cが回転することにより、シャフト部1cの回転により編組線10の移動を滑らかにし、編組線10のキャプスタン装置40への移動を妨げることなく編組線10の水平方向の位置ズレを規制している。
10mm程度の製造幅を有する編組線10に対しガイド幅W1は10mm〜12mm程度に設定され、編組線10の水平方向の位置ズレを左右最大で2mm程度に規制することができる。
図4は編組線10の編組構造を模式的に示す説明図である。編組線10は、網み位置中心軸J7を中心として、第1線材群71(図3において走行路33Aを走行する走行部34に支持されたボビン36より繰出される導電線12からなる群に対応)と第2線材群72(図3において走行路33Bを走行する走行部34に支持されたボビン36より繰出される導電線12からなる群に対応)とが編まれることにより形成される。なお、70は仮想被覆対象物を示している。
したがって、理想的には、網み位置中心軸J7が上記理想中心位置(キャプスタン装置40の巻取開始点C1,網口ダイス5の中心位置にも合致する)に合致するとき、編組歪みが生じない精度が高い編組線10を得ることができる。
一方、網み位置中心軸J7が上記理想中心位置からズレる、例えば図4で示す状態が網み位置中心軸J7と理想中心位置とが合致していると仮定した場合、網み位置中心軸J7が左右にズレると、第1線材群71及び第2線材群72との間に収束位置S1に至るまでの移動距離に差が生じる(一方が長くなり他方が短くなる)ため、網込み率に差が生じる結果、編組線10に編組歪みが発生する。なお、網込み率とは編組線10が所定の線長を有する際に必要な第1線材群71あるいは第2線材群72の増加分を意味する。例えば、編組線10が100mm有する際に、102mmの第1線材群71が必要とされた場合、網込み率は2%(2/100)となる。
なお、網み位置中心軸J7の水平方向の位置ズレが生じる原因として、複数(44個)のボビン36全てにおいて同じ張力とならない傾向があると考えられる。また、全てのボビン36それぞれ繰り出し位置が多少異なるためパスライン長が変化する、ボビン36に隣接して設けられる繰り出し用ガイドローラーの摩耗等の影響も考えられる。
本実施の形態の編組線製造装置20では、網口ダイス5とキャプスタン装置40との間にガイドローラー1を設け、ガイド幅W1(=12mm)の規制領域内で編組線10を強制的に通過させることにより、編組線10(製造幅=10mm)における網み位置中心軸J7の上記理想中心位置からの水平方向の位置ズレを左右最大で2mm以下に抑えることができる。
また、編組線10が上記タイプの編組線で所定の試作条件で行った場合、すなわち、「44打・/4本持・TA0.26mm」で分類される編組線において、編組ピッチPTを175mm、各ボビン36の回転数を8rpmとした場合、水平方向の上記理想中心位置からの位置ズレを左右最大で4mm未満に抑えることにより、編組歪みの無い編組線10を得ることができることが出願人により確認されている。
また、ガイドローラー1はその形成高さが、複数の導電線12が編まれ始める編組線10の収束位置S1から、編組ピッチPTの形成高さで形成される。すなわち、収束位置S1からガイドローラー1のシャフト部1cの中心軸に至る垂直方向の距離であるガイド高さH1が編組ピッチPTに設定されている。上記タイプの編組線の場合、ガイド高さH1は収束位置S1から175mm、網口ダイス5から200mmの位置に設けられる。
図5は編組線10の編組構造を模式的に示す説明図である。同図において、第1線材群71に着目した場合、第1線材群71は編み込み曲線L7に沿って仮想被覆対象物70の周りを巻回する。この編み込み曲線L7に示すように第1線材群71が仮想被覆対象物70を1周するまでに要する垂直方向の距離が編組ピッチPTとなる。なお、図5では、第1線材群71の編み込み曲線L7で編組ピッチPTを示しているが、第2線材群72においても同一長の編組ピッチPTを有する。
このように、本実施の形態の編組線製造装置20において、上述した製造方法の上記ステップ(b) で用いられるガイドローラー1は、水平方向において編組線10の動きが、上記理想中心位置から所定の規制幅(左右最大で2mm)以内に収まるように水平方向規制処理が可能である第1の特徴を有している。
したがって、各ボビン36から供給される導電線12間の張力にバラツキが生じても、網み位置中心軸J7の上記理想中心位置からのズレを2mm以下に抑制することができる。
このように、編組線製造装置20による製造方法は、上記第1の特徴を有することにより、編組歪みが発生する可能性のある上記理想中心位置からの水平方向の位置ズレ量(4mm)未満になるように上記所定の規制幅(2mm)を設定することにより、編組線10の水平方向における位置ズレに起因する編組歪みが抑制することができる。
さらに、本実施の形態の編組線製造装置20において、上述した製造方法の上記ステップ(b) に用いられるガイドローラー1は、垂直方向において収束位置S1から編組ピッチPTの高さに設けられるという第2の特徴を有している。
収束位置S1からガイドローラー1までの距離が編組ピッチPTよりズレると、上記水平方向規制処理の効果を発揮させることが難しく、編組歪みが現れることが本願出願人により確認されている。
したがって、編組線製造装置20による製造方法は、上記第2の特徴を有することにより、ガイドローラー1による水平方向規制処理を最も効果的に実行させることができるため、編組線10の編組歪みを抑制することができる。
なお、ガイドローラー1のガイド高さH1は編組ピッチPT近傍であれば実質的には第2の特徴を有していると考えられる。
その結果、本実施の形態の編組線製造装置20の製造方法により編組歪みが精度の高い編組線10を得ることができるため、加工段階の切断時に切断面が斜めになることはなく、編組線の端部をアース用のリング部材等にカシメ固定等しようとする場合に、両者間の固定強度低下、接触抵抗増加を招くこともない。
特に、上記タイプの編組線10(「44打・/4本持・TA0.26mm」で分類される編組線)に対して編組歪みを効果的に抑制することができる。
すなわち、44本の導電線12が44個のボビン36から繰り出され、導電線12が「4本持・TA0.26mm」の場合、精度良く編組線10を製造することができる。
なお、ガイドローラー1は、水平方向規制処理をキャプスタン装置40の回転軸部46の形成方向に沿った方向において行っているが、回転軸部46の形成方向以外の方向に沿った水平方向規制処理をさらに行っても良い。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1 ガイドローラー
5 網口ダイス
10 編組線
12 導電線
20 編組線製造装置
30 線材供給機構
36 ボビン
40 キャプスタン装置
42 キャプスタンローラ

Claims (3)

  1. 複数の線材を編んで編組線を得た後、所定の巻き取り装置を用いて巻き取る編組線の製造方法であって、
    (a) 所定の線材供給機構から前記複数の線材を所定の網口ダイスに向けて供給するステップと、
    (b) 前記所定の網口ダイスを通過して前記所定の巻き取り装置に至る第1の方向に沿った前記複数の線材の経路である移動経路上に設けられた経路規制部を通過させるステップとを備え、前記経路規制部を通過する前段階の所定の収束位置から前記複数の線材が前記編組線として編まれ、
    (c) 前記経路規制部を通過後の前記編組線を前記所定の巻き取り装置を用いて巻き取るステップをさらに備え、
    前記ステップ(b) に用いられる前記経路規制部は、
    前記第1の方向に垂直な第2の方向における前記編組線の動きが、前記所定の巻き取り装置の前記編組線の巻き取り位置に合致した理想中心位置から所定の規制幅内に収まる第2方向規制処理が可能であり、かつ、
    前記第1の方向において、前記所定の収束位置から前記編組線の編組ピッチ長近傍の形成高さに設けられることを特徴とする、
    編組線の製造方法。
  2. 複数の線材を編んで編組線を得た後、所定の巻き取り装置を用いて巻き取る編組線の製造装置であって、
    前記複数の線材を所定の網口ダイスに向けて供給する所定の線材供給機構と、
    前記所定の網口ダイスを通過して前記所定の巻き取り装置に至る第1の方向に沿った前記複数の線材の経路である移動経路上に設けられた経路規制部とを備え、前記経路規制部を通過する前段階の所定の収束位置から前記複数の線材が前記編組線として編まれ、
    前記経路規制部を通過後の前記編組線を巻き取る前記所定の巻き取り装置をさらに備え、
    前記経路規制部は、
    前記第1の方向に垂直な第2の方向における前記編組線の動きが、前記所定の巻き取り装置の巻き取り位置に合致した理想中心位置から所定の規制幅内に収まる第2方向規制処理が可能であり、
    前記第1の方向において、前記所定の収束位置から前記編組線の編組ピッチ長近傍の形成高さに設定されることを特徴とする、
    編組線の製造装置。
  3. 請求項2記載の編組線の製造装置であって、
    前記複数の線材は所定数の線材を含み、
    前記線材供給機構は、前記所定数の線材に対応して設けられ、各々が回転動作を行う前記所定数のボビンを有し、前記所定数のボビンから前記所定数の線材が前記所定の網口ダイスに向けて繰り出され、
    前記所定数は“44”であり、
    前記複数の線材はそれぞれ、直径が0.26mmのすずめっき軟銅線の4本構成の線材であり
    前記所定の規制幅は4mm未満の幅である、
    編組線の製造装置。
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