JP5852892B2 - 重質油の水素化処理方法 - Google Patents

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

本発明は、API20以下の重質油を固定床水素化処理装置で処理し、さらに流動接触分解装置にて処理する重質油の水素化処理方法に関し、更に詳細には、水素化脱硫触媒および水素化分解触媒を備える固定床水素化処理装置を用いた水素化処理方法に関する。
原油の常圧蒸留残渣油は、重油直接脱硫装置(RH装置:以下、「直脱装置」と称することがある)にて水素化脱硫され、脱硫ナフサ、脱硫灯油、脱硫軽油などの留出油と脱硫重油を生成する。この脱硫重油は、低硫黄C重油として電力用のボイラー燃料などに用いられている。同時に脱硫重油は、流動接触分解装置(FCC装置)の原料としても使用され、接触分解ガソリン(以下、「FCCガソリン」と称する)、接触分解軽油(ライトサイクルオイル:以下、「LCO」と称することがある)、LPG留分等の軽質留分が生産されている。
近年、石油精製において使用できる原油は重質化し、重質油を多量に含む原油が多くなる傾向にある。しかも、発電、ボイラー用の重油の需要が減少するなど重質油の利用量は減少しつつある。また、FCC装置からのLCO留分の需要も減少しつつある。一方、ガソリン需要は拡大し、また、プロピレン、ブテンおよびベンゼン、トルエン、キシレンなどのBTX等の多数の石油化学製品の原料として使用されるLPG留分やナフサ留分の需要は増大してきている。したがって、常圧蒸留残渣油などの重質油からガソリンやナフサ留分、LPG留分などの軽質留分を多量に製造する技術開発が重要な課題となっている。
このような状況から、重質油を直脱装置などの水素化脱硫装置にて水素化脱硫処理して得られる脱硫重質軽油、脱硫重油などをさらに分解して、脱硫ナフサ、脱硫灯油、脱硫軽油を増産する水素化分解法が開発されている。また、流動接触分解装置にて前記脱硫重質軽油、脱硫重油を高い分解率で接触分解することにより、LPG留分、FCCガソリン留分、LCO留分などの軽質留分へ転換することが行われている。
例えば、常圧蒸留残渣油を水素化分解処理することにより、脱硫ナフサ留分、脱硫灯軽油留分の得率を増大して脱硫重油を低減し、かつその脱硫重油を流動接触分解装置にてLPG留分、FCCガソリン留分、LCO留分を生産することによって、トータル的に残渣油を低減し、軽質油留分を増大させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、原料油が重質化すると常圧蒸留残渣油を水素化分解できなくなり、残渣油の流動接触分解の分解性も低下してLPG留分やFCCガソリン留分など需要の多い軽質留分の得率が十分ではない。したがって、重質油を水素化分解処理と流動接触分解によって効率的に分解できる方法が期待されている。
原油の常圧蒸留によって得られる常圧蒸留残渣油などの重質油は、通常、硫黄分や窒素分を多量に含んでいる。これらの重質油を燃料油として使用する場合、SOxやNOxが発生するので、環境上の規制などにより重質油中の硫黄分や窒素分の含有量を所定の値以下にすることが必要となる。重質油の水素化精製を繰り返し行うことで、硫黄分や窒素分の含有量を十分下げることもできるが、硫黄分や窒素分を十分に除去できる条件で水素化精製処理を行った場合、水素化精製処理触媒の触媒寿命が短いなどの問題があった。また、水素化精製の反応温度を高温にすることにより、硫黄分や窒素分の除去を促進することも試みられているが、副反応として炭化水素が縮合して、ドライスラッジが発生し、製品が劣質化することや触媒上にコークが堆積して触媒が失活するという問題があった。
この、コーク生成の問題を解決するための一つの方法として、水素供与性化合物を用いて重質油中のコーク前駆体を水素化する方法が報告されている(特許文献2)。しかしながら、水素供与性溶剤を重質油に混合して高温で水素化処理を行っているため、ある程度コークの生成の抑制効果が見られるが、その効果は不十分であった。
また、水素供与性溶剤を含む、アスファルテンの凝集緩和処理剤を重質油に混合して、150〜350℃で凝集緩和処理することにより、その後に行う重質油の熱分解や接触分解などの水素の不存在下における分解反応において、コークの生成を抑制する方法が開示されている(特許文献3)。
特開平5−112785号公報 特開平5−117665号公報 特開2005−307103号公報
本発明は、このような状況下でなされたものであり、重質な常圧蒸留残渣油などを、水素化分解処理と流動接触分解によって効率的に分解できる方法が期待されている。本発明は、LPG留分やFCCガソリン留分の得率が高くかつLCO留分の得率が低くなるように分解することができる重質油水素化処理方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、原油の常圧蒸留残渣油を、特定条件にてアスファルテン凝集緩和処理剤によって処理して、特定の触媒を用いて水素化脱硫・水素化分解処理し、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、
〔1〕API20以下の重質油を、該重質油との合計量に対して1〜50容量%のアスファルテン凝集緩和処理剤の存在下で200〜350℃で保持した後に、固定床水素化処理装置で水素化脱硫・水素化分解処理し、さらに流動接触分解装置にて処理する重質油の水素化処理方法であって、
前記固定床水素化処理装置において、水素化分解触媒/水素化脱硫触媒の容量比が20/100〜50/100であることを特徴とした重質油水素化処理方法、
〔2〕アスファルテン凝集緩和処理剤が、芳香族系溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒、芳香族系石油留分、から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕に記載の重質油水素化処理方法、
〔3〕固定床水素化処理装置に使用される水素化分解触媒がゼオライトを含む無機耐火性酸化物担体に第6族金属並びに、第8族〜10族金属のうち少なくとも1種の金属を担持したものであることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の重質油水素化処理方法、
〔4〕アスファルテン凝集緩和処理剤が流動接触分解装置から得られる流動接触分解残油(CLO)および重質サイクル油(HCO)から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の重質油水素化処理方法、
に関する。
本発明によれば、重質油を特定条件にてアスファルテン凝集緩和処理剤によって処理して、特定の触媒を用いて水素化脱硫・水素化分解処理し、さらに流動接触分解装置にて処理することで、LPG留分、FCCガソリン留分、LCO留分等の軽質留分の収率を高めることができる。
(重質油)
本発明の水素化処理方法において、原料油として用いられる重質油としては、API20以下であれば、特に制限はなく、例えば原油の常圧蒸留残渣油(AR)および減圧蒸留残渣油(VR)、接触分解残油、ビスブレーキング油、ビチューメンなどの密度の高い石油留分を挙げることができる。これらの重質油は、通常アスファルテンが1質量%以上含まれているが、これらの重質油から抽出したアスファルテンも原料油として用いることができる。本発明においては、原料油として、これらを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、コーカー油、合成原油、ナフサカット原油、重質軽油、減圧軽油、LCO、GTL(Gas To Liquid)油、ワックス等を常圧蒸留残渣油等と混合して重質油として水素化分解処理をすることもできる。なお、API20以下の重質油とは、重質油の混合物全体のAPI度が20以下のものを意味する。API度とは、米国石油協会(American Petroleum Institute)が定めた原油製品の比重を示す単位である。
なお、前記アスファルテンとは、重質油からn−ヘプタンによる溶媒抽出により抽出したn−ヘプタン不溶解分を意味する。重質油中のアスファルテンの含有量が1質量%以上であれば、アスファルテン凝集緩和処理剤による重油直接脱硫装置(RH装置)、残油流動接触分解装置(RFCC装置)あるいは流動接触分解装置(FCC装置)でのコーク発生の低減効果が充分に発揮される。
(アスファルテン凝集緩和処理剤および凝集緩和処理方法)
本発明においては、これらの重質油を固定床水素化処理装置において水素化処理するに際し、この水素化処理を行う前に、重質油中のアスファルテンの凝集緩和処理を行なう。この凝集緩和処理として、本発明においては、アスファルテン凝集緩和処理剤の存在下で、重質油を200〜350℃の温度で加熱処理する。このような処理により、重質油の水素化脱硫および水素化分解において、アスファルテンの凝集を緩和することができ、その結果、アスファルテンの凝集に由来するコークの発生が抑制されると共に、反応基質と触媒活性点の接触効率を向上させることができ、原料重質油の脱硫反応、脱金属反応、水素化分解反応および水素化反応を促進することができる。本発明における好ましい加熱処理温度は250〜330℃の範囲であり、特に270〜320℃の範囲が好ましい。
アスファルテン凝集緩和処理剤の原料重質油に対する使用割合は、十分なアスファルテンの凝集緩和効果を得つつその後の反応効率を低下させない点から、前記重質油と凝集緩和処理剤との合計量の1〜50容量%である。アスファルテン凝集緩和剤の混合割合が、1容量%未満では、アスファルテンの凝集を緩和する効果が十分ではなく、コークの発生を十分に抑制できないため、LPG留分やFCCガソリン留分等の軽質留分を増量する効果が十分ではなく、一方、50容量%を超えると、アスファルテン凝集緩和処理剤そのものの分解が進行し、コークの析出が増加して、LPG留分やFCCガソリン留分の収率が低くなり、ガス分が多くなってしまうおそれがある。好ましい混合割合は、3〜40容量%、より好ましくは5〜30容量%である。
また、アスファルテン凝集緩和処理剤の使用量は、重質油中のアスファルテンに対し、0.1〜10倍質量の範囲で、該アスファルテンの分子構造に応じて適宜選定するのが好ましい。該凝集緩和処理剤はアスファルテンの凝集構造に浸透して、凝集緩和効果を発揮するが、その量が上記範囲内であれば凝集緩和効果が充分に発揮され経済的にも有利である。この凝集緩和処理剤のより好ましい使用量は、アスファルテンに対し、0.5〜5倍質量の範囲である。
アスファルテン凝集緩和処理剤を重質油に混合する方法としては、重質油の供給ラインに凝集緩和処理剤を導入しても良いし、あらかじめタンクで混合して原料油としてもよい。
また、その際の圧力については特に制限はなく、自生圧でよいが、窒素ガスなどの不活性ガスや水素ガスを導入して加圧してもよい。この場合、圧力は通常0.1〜30MPa、好ましくは1〜20MPaの範囲で選定される。加熱処理時間は、加熱処理温度などにより左右され、一概に定めることはできないが、通常10〜120分程度で充分である。この加熱処理においては、アスファルテンの凝集緩和効果をより一層高めるために回転翼による撹拌や、超音波照射を併用することができる。
本発明においては、アスファルテン凝集緩和処理剤としては、各種の有機溶媒、例えば芳香族系溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒、芳香族系石油留分、工業溶媒などが使用できる。アスファルテン凝集緩和処理剤の沸点範囲は、特に限定されないが、150〜350℃が好ましい。また、アスファルテン凝集緩和処理剤中には、4環の芳香族化合物を10〜80質量%含むことが好ましい。
上記芳香族系溶媒としては、例えば、1−メチルナフタレン、1−メチルアントラセン、9−メチルアントラセン、トルエンなどを、極性溶媒としては、例えば、キノリン、Nーメチルピロリドンなどを、水素供与性溶媒としては、例えば、デカリン、テトラリンなどを、芳香族系石油留分としては、十分な凝集緩和効果を得るため、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上の芳香族化合物を含有する石油留分であり、例えば、重質サイクル油(HCO)、流動接触分解残油(CLO)、軽質サイクル油(LCO)などを、工業溶媒としては、例えば、クレオソート油、アントラセン油などを挙げることができる。これらの溶媒や石油留分は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、芳香族系溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒、芳香族系石油留分が好ましく、芳香族化合物分含有量が多く製油所内で調達可能である点から、流動接触分解残油(CLO)および重質サイクル油(HCO)から選ばれる少なくとも一種の芳香族系石油留分が好ましい。
CLOまたはHCOは、残油流動接触分解装置(RFCC装置)もしくは流動接触分解装置(FCC装置)から得られたエフルエントを蒸留にて分離して得られるものであるが、重質油の水素化脱硫・水素化分解および引き続いての流動接触分解を効率的に行なう点から、前記AR単独由来の脱硫重油(DSAR)を、RFCC装置もしくはFCC装置の原料油の少なくとも一部として用いて、後述のRFCC装置もしくはFCC装置と同様の条件で得られたCLOまたはHCOを用いることが好ましい。CLOまたはHCOで循環を繰り返す場合は、ある一定以上はCLOまたはHCOの分解が進まず、未分解油として残り、精製費の浪費になる恐れがあるからである。
本発明において、上記CLOまたはHCOは、沸点330℃以上の流動接触分解処理後の生成油であることが好ましく、沸点350℃以上の留分が50容量%以上であるものがより好ましい。
本発明においては、アスファルテン凝集緩和処理剤として用いられるCLOまたはHCO中に含まれる水泥分は、RH装置の触媒層への堆積による差圧の発生を防止し、偏流によるホットスポットの発生を防止する観点から、0.5容量%以下であることが好ましく、0.2容量%以下であることがより好ましく、0.05容量%以下であることが更に好ましい。
上記CLOまたはHCOは、その芳香族化合物分含有量が、一般に60〜95質量%であるが、本発明においては、70〜80質量%であることが好ましい。また、硫黄分含有量は、一般に0.3〜1.1質量%である。
混合時間(アスファルテン凝集緩和処理時間)は、より好適なアスファルテン凝集緩和効果を得る観点から、1〜60分が好ましい。
(水素化脱硫・水素化分解処理)
本発明における重質油の水素化脱硫・水素化分解処理においては、このように予め重質油を、アスファルテン凝集緩和処理剤の存在下で加熱処理してアスファルテンの凝集を緩和する処理を施したのち、水素化脱硫および水素化分解を行う。
本発明における水素化脱硫・水素化分解の条件は、特に制限はなく、従来、重質油の水素化脱硫反応や水素化分解反応で行われている反応条件で行えばよく、通常は反応温度が好ましくは320〜550℃、より好ましくは350〜430℃、水素分圧が好ましくは1〜30MPa、より好ましくは5〜17MPa、水素/油比が好ましくは100〜2000Nm3/キロリットル、より好ましくは300〜1000Nm3/キロリットル、液空間速度(LHSV)が好ましくは0.1〜5h-1、より好ましくは0.2〜2.0h-1の範囲で適宜選定すればよい。
本発明の水素化脱硫・水素化分解処理で用いる触媒は、水素化脱硫触媒および水素化分解触媒であるが、該水素化分解触媒/水素化脱硫触媒の容量比が20/100〜50/100である。このような比率で水素化分解触媒を含有させることによって、重質油を固定床水素化処理装置で処理した後のRFCC装置またはFCC装置での流動接触分解処理において得られるLPG留分、FCCガソリン留分、LCO留分等の軽質留分の割合が多くなる。このような観点から、本発明の水素化分解触媒/水素化脱硫触媒の容量比は、25/100〜45/100が好ましく、30/100〜40/100がより好ましい。
(水素化分解触媒)
本発明において、水素化分解触媒は、ゼオライトを含む無機耐火性酸化物担体に第6族金属並びに、第8族〜10族金属のうち少なくとも1種の金属を担持したものが好適である。
ゼオライトを含む無機耐火性酸化物担体としては、例えば、結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物の混合物からなる担体が挙げられる。前記結晶性アルミノシリケートとしては、種々のものが使用できるが、例えば、水素型フォージャサイト、USYゼオライト、金属担持USYゼオライトなどが挙げられ、中でもUSYゼオライト、金属担持USYゼオライトが好ましく、特に、金属担持USYゼオライトが好ましい。
当該金属担持USYゼオライトとしては、USYゼオライトに周期表第3〜16族から選ばれる1種または2種以上の金属を担持した金属担持USYゼオライトが好ましく、特に、金属として鉄を担持した鉄担持USYゼオライトが好適である。
前記USYゼオライト、金属担持USYゼオライトは、例えば、以下の方法によって製造することができる。
USYゼオライトの原料として、アルミナに対するシリカの比率(モル比)、つまりSiO2/Al23が4.5以上、好ましくは5.0以上であり、また、Na2Oが2.4質量%以下、好ましくは1.8質量%以下のY型ゼオライトを用いる。
まず、上記のY型ゼオライトをスチーミング処理してUSYゼオライトとする。ここでスチーミング処理の条件としては様々な状況に応じて適宜選定すればよいが、温度510〜810℃の水蒸気の存在下で処理するのが好ましい。水蒸気は、外部から導入してもよいし、Y型ゼオライトに含まれる物理吸着水や結晶水を使用してもよい。また、スチーミング処理して得られたUSYゼオライトに鉱酸を加え、混合撹拌処理することによって、ゼオライト構造骨格からの脱アルミニウムとスチーミングおよび鉱酸処理により脱落アルミニウムの洗浄除去を行う。
このような鉱酸としては各種のものが挙げられるが、塩酸、硝酸、硫酸などが一般的であり、そのほかリン酸、過塩素酸、ペルオクソ二スルホン酸、二チオン酸、スルファミン酸、ニトロソスルホン酸等の無機酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸などを用いることもできる。添加すべき酸の量は、USYゼオライト1kgあたり0.5〜20モルとし、好ましくは3〜16モルとする。酸の濃度は0.5〜50質量%溶液、好ましくは1〜20質量%溶液である。処理温度は、室温〜100℃、好ましくは50〜100℃である。処理時間は0.1〜12時間である。
続いてこの系に金属塩溶液を加えてUSYゼオライトに金属を担持する。担持する方法としては混合撹拌処理、浸漬法、含浸法が挙げられ、混合撹拌処理が好ましい。金属としては周期表第3族のイットリウム、ランタン、第4族のジルコニウム、第5族のバナジウム、ニオブ、タンタル、第6族のクロム、モリブデン、タングステン、第7族のマンガン、レニウム、第8族の鉄、ルテニウム、オスミウム、第9族のコバルト、ロジウム、イリジウム、第10族のニッケル、パラジウム、白金、第11族の銅、第12族の亜鉛、カドミウム、第13族のアルミニウム、ガリウム、タリウム、第14族のスズ、第15族のリン、アンチモン、第16族のセレンなどが上げられる。この中で、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金が好ましく、特に鉄が好ましい。
各種金属の塩としては硫酸塩、硝酸塩が好ましい。金属塩溶液処理を行う場合、状況により異なり一義的に決定することはできないが、通常は処理温度30〜100℃、好ましくは50〜80℃、処理時間0.1〜12時間、好ましくは0.5〜5時間とし、これらの金属の担持はゼオライト構造骨格から脱アルミニウムと同時に行うことが好ましく、pH2.0以下、好ましくは1.5以下の範囲で適宜選定し、実施する。
なお、この鉱酸と金属塩を加えて結晶性アルミノシリケートを処理するにあたっては、そのスラリー比、すなわち、処理溶液容量(リットル)/アルミノシリケート重量(kg)は、1〜50の範囲が好都合であり、特に5〜30が好適である。
上述の処理により得られる金属担持結晶性アルミノシリケートは、さらに必要に応じて水洗、乾燥を行う。
以上のようにして、USYゼオライト、金属担持USYゼオライトを製造することができる。
一方、結晶性アルミノシリケートと混合して担体を構成する多孔性無機酸化物としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、アルミナ−ボリア、アルミナ−ジルコニアが挙げられ、中でも活性金属が高分散担持できる点でアルミナが好適である。アルミナとしてはベーマイトゲル、アルミナゾルまたはこれらから製造されるアルミナが用いられる。
本発明の水素化分解工程に使用する触媒の担体は、前記のUSYゼオライトおよび金属担持USYゼオライトなどの結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物を混合したものを用いる。また、その混合割合は、結晶性アルミノシリケート45質量%以上70質量%以下と多孔性無機酸化物55質量%以下30質量%以上であることが必要である。結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物との混合において結晶性アルミノシリケートの割合が少なすぎると、所望の分解率、軽質留分や中間留分を得るのに高い反応温度を必要とし、その結果、触媒の寿命に悪影響を与える。
また、結晶性アルミノシリケートの割合が多すぎると、分解活性は向上するが、過分解によりガス分が多くなり所望の軽質留分や中間留分の選択性が下がる。
一方、アルミナなどの多孔性無機酸化物は担持される活性金属を高度に分散させるため、多孔性無機酸化物の割合が多いと水素化活性が高く、脱硫活性、脱窒素活性、脱残炭活性、脱アスファルテン活性、脱メタル活性が向上するが、結晶性アルミノシリケートの割合が少なくなり、所望の分解率、軽質留分や中間留分を得るのが困難になる。また、多孔性無機酸化物の割合が少ないと脱硫活性、脱窒素活性、脱残炭活性、脱アスファルテン活性、脱メタル活性などの水素化活性が低下する。そのため結晶性アルミノシリケートを含む触媒と多孔性無機酸化物の混合割合は、結晶性アルミノシリケート45〜65質量%と多孔性無機酸化物55〜35質量%からなるものがより好適であり、特に結晶性アルミノシリケート45〜55質量%と多孔性無機酸化物55〜45質量%からなるものが好適である。
また、本発明の水素化分解処理に使用する触媒の担体を製造するためには、上記USYゼオライトおよび金属担持USYゼオライトなどの結晶性アルミノシリケートは水洗後の水を含有したスラリー状態として使用することが好ましい。そして、上記結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物を十分な水分量のもとにニーダー(混練機)にて十分に混合する。
多孔性無機酸化物はゲル状またはゾル状であるが、結晶性アルミノシリケートと同じように水を加えてスラリー状として結晶性アルミノシリケートと混合する。それぞれのスラリー状態での水分量は、結晶性アルミノシリケートスラリーでは30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。多孔性無機酸化物スラリーでは50〜90質量%が好ましく、55〜85質量%がより好ましい。
上記の結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物を混合捏和したのち、1/12インチ〜1/32インチの径、長さ1.5mm〜6mmに成型し、円柱状、三つ葉型、四葉型の形状の成型物を得る。成型物は30〜200℃、0.1〜24時間乾燥させ、次いで、300〜750℃(好ましくは450〜700℃)で、1〜10時間(好ましくは2〜7時間)焼成し担体とする。
次に、この担体に、周期表第6族金属並びに、第8族〜10族金属のうち少なくとも1種の金属を担持する。ここで周期表第6族に属する金属としては、モリブデン、タングステンが好ましく、また第8〜10族に属する金属としては、ニッケル、コバルトが好ましい。二種類の金属の組合せとしては、ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、ニッケル−タングステン、コバルト−タングステンなどが挙げられる。これらの中でも、第6族および第10族が好適であり、特に、ニッケル−モリブデンが好ましい。上記活性成分である金属の担持量は、特に制限はなく原料油の種類や、所望する脱硫重油の得率などの各種条件に応じて適宜選定すればよいが、通常は第6族の金属は触媒全体の0.5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、第8〜10族の金属は、触媒全体の0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%である。
上記金属成分を担体に担持する方法については特に制限はなく、例えば、含浸法、混練法、共沈法などの公知の方法を採用することができる。
上記の金属成分を担体に担持したものは、通常30〜200℃で、0.1〜24時間乾燥し、次いで、250〜700℃(好ましくは300〜650℃)で、1〜10時間(好ましくは2〜7時間)焼成して、触媒として仕上げられる。
本発明の水素化分解に用いる触媒は、以下の要件を満たすものが好ましい。
(1)細孔容積
本発明に用いる水素化分解触媒は、細孔径50〜10,000Åの細孔の総細孔容積に対し、細孔径500〜10,000Åの細孔の細孔容積が10%以上であることが好ましい。また、細孔径100〜200Åの細孔の細孔容積が、細孔径50〜10,000Åの細孔の総細孔容積に対し25%以上であることが好ましく、細孔径50〜500Åの細孔の細孔容積に対し50%以上であることがより好ましい。
このような細孔分布を有する触媒は、残渣油中のアスファルテン分等の高分子量炭化水素を拡散しやすく制御でき、重質油の水素化および分解を行い易くすることができる。なお、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用い、水銀圧入法により求めた値である。
(2)比表面積
本発明に用いる水素化分解触媒は、比表面積が200〜600m2/gであるものが好ましく、350〜500m2/gがより好ましい。比表面積が200m2/g以上であれば、重質油分解に適した分解活性点の充分な量を触媒表面に配置でき、600m2/g以下であれば、重質油分子の拡散に充分大きな細孔を有することができる。なお、比表面積は、窒素ガスによるBET1点法により測定した値である。
(3)全細孔容量
また、当該触媒の窒素ガス吸着法による全細孔容量は0.4cc/g以上であることが好ましく、0.5cc/g以上がより好ましい。全細孔容量が0.4cc/g以上であれば重質油分子の拡散を高めることができる。
上記製造法および物性範囲にて得られた水素化分解触媒は、水素化分解活性が向上し、残渣油(343℃以上の沸点を持つ留分)の分解活性が高く、且つ脱残炭活性をはじめ、脱硫活性、脱窒素活性、脱アスファルテン活性、脱メタル活性が高く、重質油留分の軽質化に好適であり、生成する脱硫ナフサ留分、脱硫灯軽油留分の得率も増加する。
(水素化脱硫触媒)
本発明で用いられる水素化脱硫触媒は、一般的に脱硫能を有する触媒であれば、特に限定されないが、例えば、アルミナ担体に活性金属を担持したものを使用することが好ましい。アルミナ担体としては、前記の多孔性無機酸化物において用いたアルミナと同様のものを好適に用いることができる。
活性金属としては、周期表第6、9および10族の金属の少なくとも1種の金属が用いられる。周期表第6族の金属としては、モリブデン、タングステンなどを挙げることができるが、モリブデンが好ましい。第6族金属の水素化脱硫触媒中における担持量は、水素化脱硫活性の観点から、酸化物基準で、好ましくは2〜23質量%、より好ましくは5〜17質量%である。周期表第9および10族の金属としては、コバルト、ニッケルなどを挙げることができるが、ニッケルが好ましい。第9および10族金属の水素化脱硫触媒中における担持量は、酸化物基準で、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは1.5〜5質量%である。
水素化脱硫触媒の細孔径は70〜220Å(好ましくは90〜200Å)、比表面積は、100〜300m2/g(好ましくは130〜250m2/g)、細孔容積は0.3〜1.0cc/g(好ましくは0.4〜0.9cc/g)である。
本発明の水素化脱硫・水素化分解処理では、水素化脱硫触媒と水素化分解触媒と組み合わせたものを用いる。組み合わせのパターンとしては、例えば水素化脱硫触媒充填量に対して第一段目に脱メタル触媒を10〜40容量%、第二段目に水素化脱硫触媒を1〜50容量%、第三段目に水素化分解触媒を10〜50容量%、第四段目にフィニシングの水素化脱硫触媒として0〜40容量%の充填パターンが好ましい。これらは原料油の性状等によっては種々の充填パターンとすることができる。第一段目の脱メタル触媒の前に原料油中に含まれる鉄粉、無機酸化物等のスケールを除去する脱スケール触媒を充填しても良い。上記水素化脱硫および水素化分解で用いられる反応器としては固定床を使用し、ダウンフロー式、アップフロー式のいずれであってもよい。
本発明においては、このような触媒を用いて、アスファルテン凝集緩和処理剤と重質油との混合油を原料として水素化脱硫・水素化分解処理し、得られた生成油を流動接触分解処理する。
当該流動接触分解処理は、特に制限はなく、公知の方法、条件で行えばよい。例えば、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどのアモルファス触媒や、フォージャサイト型結晶アルミノシリケートなどのゼオライト触媒を用い、反応温度450〜650℃、好ましくは480〜580℃、再生温度550〜760℃、反応圧力0.02〜5MPa、好ましくは0.2〜2MPaの範囲で適宜選定すればよい。
本発明の重質油の水素化処理方法では、最終工程である流動接触分解処理された生成油が、燃料や石油化学製品の原料として有用な、FCCガソリン留分およびLPG留分の割合を高く、需要が少ないLCO留分の割合を低くすることができる。
さらに、中間工程である重油直接脱硫装置による水素化脱硫・水素化分解処理においていわゆる中間留分である灯軽油留分や軽質留分であるフサ留分などの得率が高く、燃料や石油化学製品の原料として活用できる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。
なお、実施例、比較例では、原料として第1表に示す性状、留分分布を有するクウェート原油の常圧蒸留残渣油(AR)60容量%、減圧蒸留残渣油(VR)30容量%とRFCC装置からの流動接触分解残油(CLO)10容量%を混合したものを用いた。
Figure 0005852892
なお、各性状は次の方法に従って求めた。
ガソリン
[芳香族炭化水素分含有量]
JIS K 2536−2により測定した。
AR、VR、HCO、CLO、DSAR
[硫黄分含有量]
JIS K 2541−4に準拠して測定した。
[窒素分含有量]
JIS K 2609により測定した。
[バナジウム含有量]
石油学会規格JPI−5S−59−99に準拠して測定した。
[ニッケル含有量]
石油学会規格JPI−5S−59−99に準拠して測定した。
[残留炭素含有量]
JIS K 2270−2により測定した。
[アスファルテン(ヘプタン不溶解分)含有量]
IP143に準拠して測定した。
[芳香族炭化水素分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[飽和炭化水素分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[水泥分含有量]
JIS K 2601−14により測定した。
(1)触媒の調製
〔水素化分解触媒I〕
(1)結晶性アルミノシリケートの調製
Na−Y型ゼオライト(Na2O含量:13.3質量%,SiO2/Al23(モル比):5.0)をアンモニウムイオン交換し、NH4−Y型ゼオライト(Na2O含量:1.3質量%)を得た。これを650℃でスチーミング処理してスチーミングY型ゼオライトとした。10kgのスチーミングY型ゼオライトを純水115リットルに懸濁させた後、該懸濁液を75℃に昇温し30分間撹拌した。次いでこの懸濁液に10質量%硫酸溶液75kgを35分間で添加し、添加後更に30分間撹拌した後、濾過、洗浄し、固形分濃度30.5質量%のUSYゼオライトスラリーIを得た。X線回折法により求めた格子定数は24.30Åであった。
(2)アルミナスラリーの調製
アルミン酸ナトリウム溶液(Al23換算濃度:5.0質量%)80kgおよび50質量%のグルコン酸溶液240gを容器に入れ、60℃に加熱した。次いで硫酸アルミニウム溶液(Al23換算濃度:2.5質量%)88kgを別容器に準備し、15分間でpH7.2になるように該硫酸アルミニウム溶液を添加し水酸化アルミニウムスラリーを得た。60℃に保ったまま、60分間熟成した。次いで、水酸化アルミニウムスラリーをろ過脱水し、アンモニア水で洗浄し、アルミナケーキとした。該アルミナケーキの一部を純水と15質量%のアンモニア水を用い、アルミナ濃度12.0質量%、pH10.5のスラリーを得た。このスラリーを熟成タンクに入れ撹拌しながら95℃で8時間熟成した。次いで、この熟成スラリーに純水を加え、アルミナ濃度9.0質量%に希釈した後、撹拌機付オートクレーブに移し、145℃で5時間熟成した。更にAl23換算濃度で20質量%となるように加熱濃縮すると同時に脱アンモニアし、アルミナスラリーAを得た。
(3)触媒の調製
1,230gのUSYゼオライトスラリーI(30.5質量%濃度)と1,875.8gのアルミナスラリーA(20質量%濃度)をニーダーに加え、加熱、撹拌しながら押し出し成形可能な濃度に濃縮した後、1/18インチサイズの四つ葉型ペレット状に押し出し成形した。次いで、110℃で16時間乾燥した後、550℃で3時間焼成し、USYゼオライト/アルミナ(固形分換算質量比)で50/50の担体Iを得た。
次いで、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルを純水に懸濁したものを90℃に加熱し、次いでリンゴ酸を加え溶解させた。この溶解液を担体Iにそれぞれ触媒全体に対してMoO3として10.0質量%、NiOとして4.25質量%になるように含浸し、次いで乾燥させ、550℃で3時間焼成し、水素化分解触媒Iを得た。この触媒は比表面積473m2/g、全細孔容量0.61cc/gであった。また、水銀ポロシメーターによる、細孔径50〜10,000Åの細孔容積に対し細孔径500〜10,000Åの細孔容積が11%であった。さらに、細孔径100〜200Åの細孔容積が細孔径50〜10,000Åの細孔容積の59%であり、細孔径50〜500Åの細孔容積の65%であった。触媒の組成および物性を表2に示す。
Figure 0005852892
〔水素化分解触媒II〕
水素化分解触媒Iの触媒の調製において、USYゼオライトスラリーI(30.5質量%濃度)を1,476gとし、アルミナスラリーA(20質量%濃度)を1,500gとしてニーダーに加えた以外は担体Iと同様に調製し、USYゼオライト/アルミナ(固形分換算質量比)で60/40の担体IIを得た。
引き続き、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルを純水に懸濁したものを90℃に加熱し、次いでリンゴ酸を加え溶解させた。この溶解液を担体IIにそれぞれ触媒全体に対してMoO3として10.0質量%、NiOとして4.25質量%になるように含浸し、次いで乾燥させ、550℃で3時間焼成し、水素化分解触媒IIを得た。この触媒は比表面積517m2/g、全細孔容量0.56cc/gであった。水銀ポロシメーターによる、細孔径50〜10,000Åの細孔容積に対し細孔径500〜10,000Åの細孔容積が32%であった。さらに、細孔径100〜200Åの細孔容積が細孔径50〜10,000Åの細孔容積の43%であり、細孔径50〜500Åの細孔容積の63%であった。触媒の組成および物性を表2に示す。
(実施例1)
(1)一段目に市販の脱メタル触媒(触媒化成工業製)を24容量%、二段目に市販の水素化脱硫触媒A(触媒化成工業製)を20容量%、三段目に水素化分解触媒Iを28容量%、四段目に市販の水素化脱硫触媒B(触媒化成工業製)を28容量%の順に直列4段に充填し、合計250ccを高圧固定床反応器に充填し、硫化処理した。
次いで、クウェート原油の常圧蒸留残渣油(AR)60容量%、減圧蒸留残渣油(VR)30容量%とアスファルテン凝集緩和処理剤としてRFCC装置からの流動接触分解残油(CLO)10容量%を混合したものを原料油として、これをあらかじめ触媒の非存在下で300℃で30分間保持した後に、以下の条件で水素化脱硫・水素化分解処理を行った。この脱硫重油(DSAR)の性状を表3に示す。
水素化分解条件
反応温度(WAT) 395℃
液空間速度(LHSV) 0.2h-1
水素分圧 12.5MPa
水素/油比 900Nm3/キロリットル
なお、各触媒層の反応温度は、一段目386℃、二段目383℃、三段目401℃、四段目406℃とした。
(2)(1)の水素化脱硫・水素化分解処理によって得られた生成油をJIS K 2601の理論段数15段の精留塔を用いた蒸留試験方法に基づき蒸留し、ガス分(C4 -)、脱硫ナフサ留分(沸点範囲C5〜150℃)、脱硫灯油留分(沸点範囲150〜250℃)、脱硫軽油留分(沸点範囲250〜343℃)および残渣油である脱硫重油留分(343+℃)に分留した。
次いで、これらの留分のうち、脱硫重油留分を原料とし、市販平衡触媒を使用して、反応温度530℃、触媒/原料油比=5.0(質量比)の条件下で流動接触分解処理を行った。流動接触分解処理の反応生成物について、ガスクロ蒸留にてガス分、PP留分(プロパン、プロピレン)、BB留分(ブタン、ブチレン)、FCCガソリン留分(沸点範囲C5〜185℃の留分)、LCO留分(沸点範囲185〜370℃留分)、および残渣油留分(分解重油:HCO+CLO)の得率(容量%)を測定した。結果を表3に示す。
なお、HCOはRFCC装置からの重質サイクル油である。
(実施例2)
実施例1において常圧蒸留残渣油(AR)50容量%、減圧蒸留残渣油(VR)30容量%とアスファルテン凝集緩和処理剤としてのCLOの混合割合を20容量%とした以外は実施例1と同様にして水素化脱硫・水素化分解処理および流動接触分解処理を行った。結果を表3に示す。
(実施例3)
実施例1において常圧蒸留残渣油(AR)40容量%、減圧蒸留残渣油(VR)の混合割合を40容量%、CLO20容量%とした以外は実施例1と同様にして水素化脱硫・水素化分解処理および流動接触分解処理を行った。結果を表3に示す。
(実施例4)
実施例1において水素化分解触媒Iを水素化分解触媒IIに変えた以外は実施例1と同様にして、水素化脱硫・水素化分解処理および流動接触分解処理を行った。結果を表3に示す。
(比較例1)
本発明の実施例1において、三段目の触媒を、水素化分解触媒Iを充填せずに二段目と同じ水素化脱硫触媒Aに変えた以外は実施例1と同様にして水素化脱硫・水素化分解処理および流動接触分解処理を行った。結果を表3に示す。
(比較例2)
本発明の実施例1において、アスファルテン凝集緩和処理剤を混合せずに、常圧蒸留残渣油(AR)67容量%、減圧蒸留残渣油(VR)33容量%としたこと以外は、実施例1と同様にして水素化脱硫・水素化分解処理および流動接触分解処理を行った。結果を表3に示す。
(比較例3)
本発明の実施例1において、アスファルテン凝集緩和処理剤の混合割合を55容量%とした以外は実施例1と同様にして水素化脱硫・水素化分解処理および流動接触分解処理を行った。結果を表3に示す。
(比較例4)
本発明の実施例1において、混合時の温度を80℃とした以外は実施例1と同様にして水素化脱硫・水素化分解処理および流動接触分解処理を行った。結果を表3に示す。
Figure 0005852892
本発明の水素化処理方法によれば、流動動接触分解において軽質留分であるFCCガソリン留分やLPG留分を増産できるとともに、LCO留分の生産を減少することができる。したがって、ガソリン燃料に使用されるガソリン基材や石油化学製品の基礎原料を増産することができる方法として有効に利用することができる。

Claims (3)

  1. API20以下の重質油を、該重質油との合計量に対して1〜50容量%のアスファルテン凝集緩和処理剤の存在下で200〜350℃で保持した後に、水素化脱硫触媒および水素化分解触媒とを有する固定床水素化処理装置で水素化脱硫・水素化分解処理し、さらに流動接触分解装置にて処理する重質油の水素化処理方法であって、
    前記固定床水素化処理装置において、水素化分解触媒/水素化脱硫触媒の容量比が20/100〜50/100であり、
    固定床水素化処理装置に使用される水素化分解触媒がゼオライトを含む無機耐火性酸化物担体に第6族金属並びに、第8族〜10族金属のうち少なくとも1種の金属を担持したものであることを特徴とした重質油水素化処理方法。
  2. アスファルテン凝集緩和処理剤が、芳香族系溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒、芳香族系石油留分、から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の重質油水素化処理方法。
  3. アスファルテン凝集緩和処理剤が流動接触分解装置から得られる流動接触分解残油(CLO)および重質サイクル油(HCO)から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の重質油水素化処理方法。
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