JP5460224B2 - 高芳香族炭化水素油の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、中国、インド等におけるパラキシレンの需要増加に対し、ベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)等の一環芳香族化合物を多く含有する石油留分は、そのための原料として有用であり、石油化学原料としての芳香族分含有量の多い留分の増産技術の開発も望まれている。
他方、重油は年々需要が激減しており、バンカーC重油などに使用されている流動接触分解残油(CLO)は、残油流動接触分解装置(RFCC)または流動接触分解装置(FCC)からガソリン留分や灯軽油留分を製造する際の連産品であることから、特にその利用に関して、早急に有効な方策が望まれている。
ガソリン留分以外の留分を水素化分解して高オクタン価ガソリン基材を製造する方法として、軽質サイクル油(LCO)やコーカー軽油を原料とし、ZSM−5を触媒として用いて接触分解させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、転化率は高いものの、ガソリン留分の選択率が低く実用的ではない。
また、上記方法と同様の原料をモルデナイト、フォージャサイト等のアルミノシリケートを用いて接触分解する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法は、得られるガソリン留分のオクタン価は高いものの、ガソリン留分の収率が低い。
さらに、重質油をチタン含有フォージャサイト、アルミノシリケート等により接触分解させ、ガソリン留分及び灯軽油留分を製造する方法が提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、ガソリン留分及び灯軽油留分の収率は高いが、得られるガソリン留分のオクタン価についての詳細は不明であり、灯軽油留分の製造が主目的であることから、得られるガソリン留分はリサーチオクタン価が低く、そのままガソリン基材として用いるには多くの制約があると推測される。
この、コーク生成の問題を解決するための一つの方法として、水素供与性化合物を用いて重質油中のコーク前駆体を水素化する方法が報告されている。しかしながら、水素供与性溶剤を重質油に混合して高温で水素化処理を行っているため、ある程度コークの生成の抑制効果が見られるが、その効果は不十分であった。
また、水素供与性溶剤を含む、アスファルテンの凝集緩和処理剤を重質油に混合して、150〜350℃で凝集緩和処理することにより、その後に行う重質油の熱分解や接触分解などの水素の不存在下における分解反応において、コークの生成を抑制する方法が開示されている(特許文献5、6)。
また、本発明は重油直接脱硫装置(RH)での重質油の水素化精製処理において脱硫率、脱メタル率等を向上させ、かつコークの生成を抑制して、エネルギーの消費量を低減させるとともに、続く残油流動接触分解装置(RFCC)での接触分解を容易にする原料油を生成することにより、RFCCで芳香族分の含有量が高いガソリン留分や灯軽油留分等の高芳香族分炭化水素油を得ることができる方法を提供するものである。
〔1〕重質油を重油直接脱硫(RH)装置において水素化脱硫及び水素化分解して得られた脱硫重油(DSAR)を、残油流動接触分解(RFCC)装置または流動接触分解(FCC)装置の原料油として接触分解することにより、高芳香族炭化水素油を製造する、高芳香族炭化水素油の製造方法であって、前記重質油を予め150〜350℃の温度でアスファルテンの凝集緩和処理を行い、前記アスファルテンの凝集緩和処理を、凝集緩和剤の存在下で行い、前記重質油と前記凝集緩和処理剤の合計量に対する、前記凝集緩和処理剤の混合割合が1〜30容量%であり、前記凝集緩和処理剤は、流動接触分解残油(CLO)及び重質サイクル油(HCO)から選ばれる少なくとも一種であり、
前記流動接触分解残油(CLO)または前記重質サイクル油(HCO)は、沸点350℃以上の留分が50容量%以上である流動接触分解処理後の生成油であり、前記流動接触分解残油(CLO)または前記重質サイクル油(HCO)の芳香族分含有量は60〜95質量%である高芳香族炭化水素油の製造方法、
〔2〕前記重質油と前記凝集緩和処理剤の合計量に対する、前記凝集緩和処理剤の混合割合が3〜20容量%である、上記〔1〕に記載の高芳香族炭化水素油の製造方法、
〔3〕前記凝集緩和処理剤は重質サイクル油(HCO)である上記〔1〕又は〔2〕に記載の高芳香族炭化水素油の製造方法、
〔5〕前記高芳香族炭化水素油がガソリン留分である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法、
に関する。
また、重油直接脱硫装置(RH)での重質油の水素化精製処理において脱硫率、脱メタル率等を向上させ、かつコークの生成を抑制して、エネルギーの消費量を低減させるとともに、続く残油流動接触分解装置(RFCC)での接触分解を容易にする原料油を生成することにより、RFCCで芳香族分の含有量が高いガソリン留分や灯軽油留分等の高芳香族分炭化水素油を得ることができる。
本発明においては、これらの重質油をRHにおいて水素化精製処理するに際し、この水素化精製処理を行う前に、アスファルテンの凝集緩和処理を行なうものである。この凝集緩和処理として、本発明においては、凝集緩和処理剤の不存在下で、又は、存在下で、重質油を150〜350℃の温度で加熱処理する。このような処理により、重質油の水素化脱硫及び水素化分解において、アスファルテンの凝集を緩和することができ、その結果、アスファルテンの凝集に由来するコークの発生が抑制されると共に、反応基質と触媒活性点の接触効率を向上させることができ、原料重質油の脱硫反応、脱金属反応、水素化分解反応および水素化反応を促進することができる。
上記芳香族系溶媒としては、例えば、1−メチルナフタレン、1−メチルアントラセン、9−メチルアントラセン、トルエンなどを、極性溶媒としては、例えば、キノリン、Nーメチルピロリドンなどを、水素供与性溶媒としては、例えば、デカリン、テトラリンなどを、芳香族系石油留分としては、十分な凝集緩和効果を得るため、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上の芳香族化合物を含有する石油留分であり、例えば、重質サイクル油(HCO)、流動接触分解残油(CLO)、軽質サイクル油(LCO)などを、工業溶媒としては、例えば、クレオソート油、アントラセン油などを挙げることができる。これらの溶媒や石油留分は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、芳香族分含有量が多く製油所内で調達可能である点から、流動接触分解残油(CLO)及び重質サイクル油(HCO)から選ばれる少なくとも一種の芳香族系石油留分が好ましい。
本発明においては、凝集緩和処理剤として用いられるCLOまたはHCO中に含まれる水泥分は、RHの触媒層への堆積による差圧の発生を防止し、偏流によるホットスポットの発生を防止する観点から、0.5容量%以下であることが好ましく、0.2容量%以下であることがより好ましく、0.05容量%以下であることが更に好ましい。
上記CLOまたはHCOは、その芳香族分含有量が、一般に60〜95質量%であるが、本発明においては、70〜80質量%であることが好ましい。また、硫黄分含有量は、一般に0.3〜1.1質量%である。
水素化脱硫及び水素化分解は、触媒の存在下で行い、反応温度、反応圧力、液空間速度等の反応条件を最適化することにより必要とされる脱硫率や重質油の分解率を達成することができる。水素化脱硫及び水素化分解は、通常300〜450℃、好ましくは330〜420℃、より好ましくは380〜420℃の温度条件下で通常10〜22MPa、好ましくは13〜20MPaの水素加圧下で行われる。液空間速度(LHSV)は通常0.1〜10h-1、好ましくは0.1〜3h-1、水素/油比は通常200〜10,000Nm3/KL、好ましくは500〜10,000Nm3/KLの範囲で行われる。
本発明においては、触媒の劣化抑制の点から、前記RHの上流に、別途OCR等の脱金属装置を付帯して有することが好ましい。
上記水素化脱硫及び水素化分解で用いられる反応器としては従来公知の様式の反応器、例えば固定床、移動床いずれも使用することができ、ダウンフロー式、
アップフロー式のいずれであってもよい。
得られたDSARは、軽油等のいわゆる中間留分となり得る留分は極力軽油等に活用するという点から、沸点が330℃以上の重質留分であることが好ましく、その芳香族分含有量は、70〜90質量%であることが好ましく、硫黄分含有量は0.2〜0.5質量%であることが好ましい。
本発明の高芳香族炭化水素油の製造方法においては、RFCCもしくはFCC内で、DSARの分解反応と脱硫反応を同時に行わせる。RFCCもしくはFCCの原料油として、DSARとともに、本発明の効果を損なわない範囲で、重質軽油、減圧軽油、脱瀝軽油、常圧残油、その他重質留分を混合して用いることもできる。また、重質軽油、減圧軽油等を間接脱硫装置(VH)にて脱硫処理して得られる脱硫重質軽油(VHHGO)、脱硫減圧軽油(VHVGO)、溶剤脱瀝装置から得られる脱瀝油なども併用することができる。
ガソリン
[芳香族炭化水素分含有量]
JIS K 2536−2により測定した。
[硫黄分含有量]
JIS K 2541−4に準拠して測定した。
[窒素分含有量]
JIS K 2609により測定した。
[バナジウム含有量]
石油学会規格JPI−5S−59−99に準拠して測定した。
[ニッケル含有量]
石油学会規格JPI−5S−59−99に準拠して測定した。
[残留炭素含有量]
JIS K 2270−2により測定した。
[アスファルテン(ヘプタン不溶解分)含有量]
IP143に準拠して測定した。
[芳香族炭化水素分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[飽和炭化水素分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[水泥分含有量]
JIS K 2601−14により測定した。
常圧蒸留装置から得られたAR(芳香族分:64.1質量%、硫黄分:3.75質量%)90質量%と減圧蒸留装置から得られたVR(芳香族分:56.4質量%、硫黄分:4.25質量%)10質量%をタンク内で混合し、原料油を調製した。この原料油100質量%に対して流動接触分解装置から得られたHCO(芳香族分:71.9質量%、硫黄分:0.54質量%)をアスファルテンの凝集緩和処理剤として外枠で15質量%添加し60分間80℃で加熱前処理を行なった。使用したAR、VR及びHCOの各性状を表1に示す。その後、水素化処理を行なうため試料温度を下げることなく流通式反応装置に通油した。流通式反応装置では、触媒層の上段にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ2.5質量%、10.0質量%担持した脱金属触媒20質量%を充填し、中段に同様にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ3.0質量%、12.5質量%担持した脱硫触媒Aを40質量%充填し、さらに、下段にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ3.0質量%、13.3質量%担持した脱金属触媒Bを40質量%充填して用いた。水素化処理反応条件は、圧力14.5MPa、温度390℃、LHSV=2.2h-1、水素/油比750Nm3/KL、水素流量14.9NL/Hrであった。
通油して得たDSAR(芳香族分:57.4質量%、硫黄分:0.50質量%)をRFCCの原料として、RFCC処理を行なった。このとき、反応出口温度(ROT)は、519℃、C/Oが6.0であった。流通式反応装置内の触媒活性は、ASTM基準の固定床マイクロ活性試験(Micro Activity Test)装置を使用して、クウェート原油由来の減圧軽油(KVGO)を原料油として用い、485℃、C/O=4.5の測定条件で測定した結果、65質量%を示した。流通式反応装置での水素化処理により得られた生成油を蒸留装置にて分留し、炭素数5以上の留分であって195℃以下の沸点範囲留分である分解ガソリンを得た。他の留分も併せてそれぞれの得率を表2に示す。
比較例1において、加熱処理温度をそれぞれ230、280、330℃とし、それ以外は全て比較例1と同様にして前処理、水素化処理、及びRFCC処理を行った。
DSAR性状とRFCC得率を表2に示す。
常圧蒸留装置から得られたAR(芳香族分:64.1質量%、硫黄分:3.75質量%)90質量%と減圧蒸留装置から得られたVR(芳香族分:56.4質量%、硫黄分:4.25質量%)10質量%をタンク内で混合し、原料油を調製した。この原料油100質量%に対して流動接触分解装置から得られたCLO(芳香族分:77.9質量%、硫黄分:0.60質量%)をアスファルテンの凝集緩和処理剤として外枠で15質量%添加し60分間80℃で加熱前処理を行なった。使用したAR、VR及びCLOの各性状を表1に示す。その後、水素化処理を行なうため試料温度を下げることなく流通式反応装置に通油した。流通式反応装置では、触媒層の上段にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ2.5質量%、10.0質量%担持した脱金属触媒20質量%を充填し、中段に同様にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ3.0質量%、12.5質量%担持した脱硫触媒Aを40質量%充填し、さらに、下段にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ3.0質量%、13.3質量%担持した脱金属触媒Bを40質量%充填して用いた。水素化処理反応条件は、圧力14.5MPa、温度390℃、LHSV=2.2h-1、水素/油比750Nm3/KL、水素流量14.9NL/Hrである。
通油して得たDSAR(芳香族分:58.6質量%、硫黄分:0.50質量%)をRFCCの原料として、RFCC処理を行なった。このとき、反応出口温度(ROT)は、519℃、C/Oが6.0であった。流通式反応装置内の触媒活性は、ASTM基準の固定床マイクロ活性試験(Micro Activity Test)装置を使用して、クウェート原油由来の減圧軽油(KVGO)を原料油として用い、485℃、C/O=4.5の測定条件で測定した結果、65質量%を示した。流通式反応装置での水素化処理により得られた生成油を蒸留装置にて分留し、炭素数5以上の留分であって195℃以下の沸点範囲留分である分解ガソリンを得た。他の留分も併せてそれぞれの得率を表2に示す。
比較例2において、加熱処理温度をそれぞれ230、280、330℃とし、それ以外は全て比較例1と同様にして前処理、水素化処理、及びRFCC処理を行った。
DSAR性状とRFCC得率を表2に示す。
また、凝集緩和処理剤としてCLOを用いた場合は、比較例2の前処理温度80℃の場合に比べて、前処理温度230、280、330℃の実施例4、5及び6では、ガソリン留分のRFCC得率がそれぞれ0.4、1.6及び0.8ポイント向上した。
Claims (5)
- 重質油を重油直接脱硫(RH)装置において水素化脱硫及び水素化分解して得られた脱硫重油(DSAR)を、残油流動接触分解(RFCC)装置または流動接触分解(FCC)装置の原料油として接触分解することにより、高芳香族炭化水素油を製造する、高芳香族炭化水素油の製造方法であって、
前記重質油を予め150〜350℃の温度でアスファルテンの凝集緩和処理を行い、
前記アスファルテンの凝集緩和処理を、凝集緩和剤の存在下で行い、
前記重質油と前記凝集緩和処理剤の合計量に対する、前記凝集緩和処理剤の混合割合が1〜30容量%であり、
前記凝集緩和処理剤は、流動接触分解残油(CLO)及び重質サイクル油(HCO)から選ばれる少なくとも一種であり、
前記流動接触分解残油(CLO)または前記重質サイクル油(HCO)は、沸点350℃以上の留分が50容量%以上である流動接触分解処理後の生成油であり、
前記流動接触分解残油(CLO)または前記重質サイクル油(HCO)の芳香族分含有量は60〜95質量%である高芳香族炭化水素油の製造方法。 - 前記重質油と前記凝集緩和処理剤の合計量に対する、前記凝集緩和処理剤の混合割合が3〜20容量%である、請求項1に記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。
- 前記凝集緩和処理剤は重質サイクル油(HCO)である請求項1又は2に記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。
- 前記流動接触分解残油(CLO)又は重質サイクル油(HCO)中に含まれる水泥分が0.5容量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。
- 前記高芳香族炭化水素油がガソリン留分である、請求項1〜4のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。
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