JP6026782B2 - 重質油の水素化処理方法 - Google Patents
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また、触媒に周期表第4族に属する金属を添加することで、水素化脱硫活性が向上することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この場合でも、ある程度コークの生成抑制効果が見られるが、その効果は不十分であった。
〔1〕 API20以下の重質油を、触媒と接触処理させる前に、系全量に対して2〜50容量%の割合で混合された凝集緩和処理剤の存在下で予め200〜350℃にて加熱処理したのち、周期表第4族に属する金属を含む水素化脱硫触媒システムで水素化脱硫処理し、さらに流動接触分解装置にて接触分解処理することを特徴とする、重質油の水素化処理方法、
〔2〕凝集緩和処理剤が、芳香族系溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒及び芳香族系石油留分の中から選ばれる少なくとも一種である上記〔1〕に記載の重質油の水素化処理方法、
〔3〕周期表第4族に属する金属がチタンである、上記〔1〕又は〔2〕に記載の重質油の水素化処理方法、
〔4〕凝集緩和処理剤が、流動接触分解装置から得られる流動接触分解残油(CLO)及び重質サイクル油(HCO)の中から選ばれる少なくとも一種である、上記〔1〕に記載の重質油の水素化処理方法、
〔5〕凝集緩和処理剤の存在下での加熱処理時間が、5〜60分である上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重質油の水素化処理方法、
を提供するものである。
本発明の重質油の水素化処理方法は、API20以下の重質油を、触媒と接触処理させる前に、系全量に対して2〜50容量%の割合で混合された凝集緩和処理剤の存在下で予め200〜350℃にて加熱処理したのち、周期表第4族に属する金属を含む水素化脱硫触媒システムで水素化脱硫処理し、さらに流動接触分解装置にて接触分解処理することで、前記重質油の分解活性を向上させることを特徴とする。
本発明の水素化処理方法において、原料油として用いられる重質油としては、API20以下であれば、特に制限はなく、例えば原油の常圧蒸留残渣油(AR)および減圧蒸留残渣油(VR)、接触分解残油、ビスブレーキング油、ビチューメンなどの密度の高い石油留分を挙げることができる。これらの重質油は、通常アスファルテンが1質量%以上含まれているが、これらの重質油から抽出したアスファルテンも原料油として用いることができる。
本発明においては、原料油として、これらを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、コーカー油、合成原油、ナフサカット原油、重質軽油、減圧軽油、LCO、GTL(Gas To Liquid)油、ワックス等を常圧蒸留残渣油等と混合して重質油として水素化処理をすることもできる。なお、本発明におけるAPI20以下の重質油とは、重質油の混合物全体のAPI度が20以下のものを意味する。ここでAPI度とは、米国石油協会(American Petroleum Institute)が定めた原油製品の比重を示す単位である。
本発明においては、これらの重質油を固定床水素化処理装置において水素化処理するに際し、この水素化処理を行う前に、重質油中のアスファルテンの凝集緩和処理を行なう。この凝集緩和処理として、本発明においては、凝集緩和処理剤の存在下で、重質油を200〜350℃の温度で加熱処理する。このような処理により、重質油の水素化処理において、アスファルテンの凝集を緩和することができ、その結果、アスファルテンの凝集に由来するコークの発生が抑制されると共に、反応基質と触媒活性点の接触効率を向上させることができ、原料重質油の脱硫反応、脱金属反応、水素化分解反応および水素化反応を促進することができる。
本発明における好ましい上記加熱処理温度は250〜330℃の範囲であり、特に270〜320℃の範囲が好ましい。
また、その際の圧力については特に制限はなく、自生圧でよいが、窒素ガスなどの不活性ガスや水素ガスを導入して加圧してもよい。この場合、圧力は通常0.1〜30MPa、好ましくは1〜20MPaの範囲で選定される。加熱処理時間は、加熱処理温度などにより左右され、一概に定めることはできないが、通常10〜120分程度で充分である。この加熱処理においては、アスファルテンの凝集緩和効果をより一層高めるために回転翼による撹拌や、超音波照射を併用することができる。
これらの溶媒や石油留分は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、芳香族系溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒、芳香族系石油留分が好ましく、芳香族化合物分含有量が多く製油所内で調達可能である点から、流動接触分解残油(CLO)および重質サイクル油(HCO)から選ばれる少なくとも一種の芳香族系石油留分が好ましい。
本発明における重質油の水素化脱硫処理においては、このように予め重質油を、凝集緩和処理剤の存在下で加熱処理してアスファルテンの凝集を緩和する処理を施したのち、水素化脱硫を行う。
このような観点から、本発明における周期表第4族に属する金属を含有する水素化脱硫触媒/全充填触媒の容量比は、25/100〜70/100がより好ましく、30/100〜60/100がさらに好ましい。
本発明における水素化脱硫処理では、後述するように第4族に属する金属を含む水素化脱硫触媒と、第4族に属する金属を含まない水素化脱硫触媒と組み合わせたものを用いることが好ましい。以下、各々について説明する。
本発明において、上記周期表第4族に属する金属を含有する水素化脱硫触媒としては、周期表第4族に属する金属を含有する無機耐火性酸化物担体に第6族、第9族および第10族に属する金属及びリン成分を担持させたものが好適である。
周期表第4族の金属化合物としては、チタン、ジルコニウム等の金属化合物を挙げることができるが、特にチタン化合物が好ましい。周期表第4族に属する金属化合物としては、チタン化合物として、硫酸チタン、硫酸チタニル、塩化チタン、過酸化チタン、シュウ酸チタン及び酢酸チタンなどを、ジルコニウム化合物として、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム及び炭酸ジルコニルアンモニウムなどを各々挙げることができる。
無機酸化物担体への周期表第4族の金属化合物の水溶液の添加方法としては、例えばアルミナを例にとると、アルミナヒドロゲルが分散した水溶液中に周期表第4族の金属化合物の水溶液を添加する方法や、濾過・洗浄した脱水後のアルミナヒドロゲルへ周期表第4族の金属化合物の水溶液を加えて捏和する混練法、アルミナの水溶液に周期表第4族の金属化合物の水溶液を加えて酸塩基で沈殿を形成する共沈法、アルミナ担体にチタン溶液を浸漬して担持する含浸法等を用いることができる。また、周期表第4族の金属化合物の水溶液にアルミナヒドロゲルを添加してもよい。添加する温度は、通常室温〜90℃であるが、40〜80℃が好ましい。
上記活性成分である金属の担持量は、特に制限はなく原料油の種類や、所望する脱硫重油の得率などの各種条件に応じて適宜選定すればよいが、通常は第6族の金属の場合は触媒全体の0.5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、第8〜第10族の金属の場合は、通常触媒全体の0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%である。第15族の金属の場合は、通常触媒全体の0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
上記の金属成分を担体に担持したものは、通常30〜200℃で、0.1〜24時間程度乾燥し、次いで、250〜700℃程度(好ましくは300〜650℃)で、1〜10時間程度(好ましくは2〜7時間)焼成して、触媒として仕上げられる。
本発明で用いられる周期表第4族に属する金属を含まない水素化脱硫触媒は、一般的に脱硫能を有する触媒であれば、特に限定されないが、例えば、アルミナ担体に活性金属を担持したものを使用することが好ましい。アルミナ担体としては、前記の多孔性無機酸化物において用いたアルミナと同様のものを好適に用いることができる。
活性金属としては、周期表第6属、第9属および第10族に属する金属の1種または2種以上が用いられる。
周期表第9および第10族の金属としては、コバルト、ニッケルなどを挙げることができるが、ニッケルが好ましい。第9属および第10族金属の水素化脱硫触媒中における担持量は、酸化物基準で、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは1.5〜5質量%である。
組み合わせのパターンとしては、例えば、全触媒充填量に対して第一段目に脱メタル触媒を20〜50容量%、第二段目に第4族に属する金属を含まない水素化脱硫触媒を10〜50容量%、第三段目に第4族に属する金属を含む水素化分解触媒を20〜75容量%の充填パターンが好ましい。これらは原料油の性状等によっては種々の充填パターンとすることができる。第一段目の脱メタル触媒の前に原料油中に含まれる鉄粉、無機酸化物等のスケールを除去する脱スケール触媒を充填しても良い。上記水素化処理および水素化分解で用いられる反応器としては固定床を使用し、ダウンフロー式、アップフロー式のいずれであってもよい。
(1)比表面積
本発明に用いる水素化脱硫触媒は、比表面積が100〜300m2/gであるものが好ましく、120〜250m2/gがより好ましい。比表面積が100m2/g以上であれば、重質油の水素化に適した分解活性点の充分な量を触媒表面に配置でき、300m2/g以下であれば、重質油分子の拡散に充分大きな細孔を有することができる。なお、比表面積は、窒素ガスによるBET1点法により測定した値である。また、比表面積の異なる2種以上の第4族金属含有触媒を組み合わせることも有効である。
また、当該触媒の窒素ガス吸着法による全細孔容量は、0.4cm3/g以上であることが好ましく、0.5cm3/g以上がより好ましい。全細孔容量が0.4cm3/g以上であれば重質油分子の拡散を高めることができる。
また、細孔容量の異なる2種以上の第4族金属含有触媒を組み合わせることも有効である。
本発明においては、このような触媒を用いて、凝集緩和処理剤と重質油との混合油を原料として水素化脱硫処理し、さらに得られた生成油を流動接触分解装置にて接触分解処理する。
上記流動接触分解装置による接触分解処理は、特に制限はなく、公知の方法、条件で行えばよい。例えば、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどのアモルファス触媒や、フォージャサイト型結晶アルミノシリケートなどのゼオライト触媒を用い、反応温度450〜650℃程度、好ましくは480〜580℃、再生温度550〜760℃程度、反応圧力0.02〜5MPa程度、好ましくは0.2〜2MPaの範囲で適宜選定すればよい。
なお、実施例、比較例では、原料として第1表に示す性状、留分分布を有するクウェート原油の常圧蒸留残渣油(AR)60容量%、減圧蒸留残渣油(VR)30容量%とRFCC装置からの流動接触分解残油(CLO)10容量%を混合したものを用いた。
[芳香族炭化水素分含有量]
JIS K 2536−2により測定した。
[硫黄分含有量]
JIS K 2541−4に準拠して測定した。
[窒素分含有量]
JIS K 2609により測定した。
[バナジウム含有量]
石油学会規格JPI−5S−59−99に準拠して測定した。
[ニッケル含有量]
石油学会規格JPI−5S−59−99に準拠して測定した。
[残留炭素含有量]
JIS K 2270−2により測定した。
[アスファルテン(ヘプタン不溶解分)含有量]
IP143に準拠して測定した。
[芳香族炭化水素分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[飽和炭化水素分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[レジン分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[水泥分含有量]
JIS K 2601−14により測定した。
(調製例1:触媒1)
四塩化チタン500g及び純水1リットルを氷にて冷却しておいた。純水を攪拌しておき、そこに冷却しながら徐々に四塩化チタンを滴下した。激しい発熱・白煙を生じたが、その後、無色のチタニアゾルを得た。このチタニアゾル溶液に、1.2倍当量のアンモニア水(濃度:1モル/リットル)を滴下し、1時間攪拌し、水酸化チタンのゲルを得た。そのゲルを吸引濾過で分別し、約1リットルの純水に再分散させ濾過洗浄した。この操作を洗浄液が中性になるまで4回繰り返し、塩素根を取り除いた。
含浸液(S1)を50cm3採取し、担体(B2)100gの吸水量に見合うように純水にて希釈・定容し、常圧にて含浸し、70℃で1時間真空乾燥後、120℃で16時間熱処理し、触媒1を調製した。その触媒組成と物性を第2表に示す。
触媒1の調製において、吸水率0.7cm3/g、比表面積210m2/gのγ−アルミナ担体(A2)を用いた以外は触媒1と同様にして、触媒2を得た。その触媒組成と物性を第2表に示す。
含浸液(S1)を50cm3採取し、γ−アルミナ担体(A1)100gの吸水量に見合うように純水にて希釈・定容し、常圧にて含浸し、70℃で1時間真空乾燥後、120℃で3時間熱処理し、続いて500℃で3時間熱処理し、触媒3を調製した。その触媒組成と物性を第2表に示す。
含浸液(S1)を50cm3採取し、γ−アルミナ担体(A2)100gの吸水量に見合うように純水にて希釈・定容し、常圧にて含浸し、70℃で1時間真空乾燥後、120℃で3時間熱処理し、続いて500℃で3時間熱処理し、触媒4を調製した。その触媒組成と物性を第2表に示す。
(1)一段目に市販の脱メタル触媒(ART製)を25容量%、二段目に市販の水素化脱硫触媒A(ART製)を25容量%、三段目に調製例1で得られた触媒1を25容量%、四段目に調製例2で得られた触媒2を25容量%の順に直列4段に充填し、合計100cm3を高圧固定床反応器に充填し、通常の条件で予備硫化した。
次いで、クウェート原油の常圧蒸留残渣油(AR)60容量%、減圧蒸留残渣油(VR)30容量%と凝集緩和処理剤としてRFCC装置からの流動接触分解残油(CLO)10容量%を混合したものを原料油として、これをあらかじめ触媒の非存在下で250℃にて60分間保持した後に、以下の条件で水素化脱硫処理を行った。用いた原料の性状を第3表に示す。
・平均反応温度:380℃
・液空間速度(LHSV):0.35h-1
・水素分圧:14.5MPa
・水素/油比:750Nm3/キロリットル
次いで、これらの留分のうち、脱硫重油留分を原料とし、市販平衡触媒を使用して、反応温度530℃、触媒/原料油比=5.0(質量比)の条件下で流動接触分解処理(接触分解処理)を行った。流動接触分解処理の反応生成物について、ガスクロ蒸留にてガス分、PP留分(プロパン、プロピレン)、BB留分(ブタン、ブチレン)、FCCガソリン留分(沸点範囲:C5〜185℃の留分)、LCO留分(沸点範囲:185〜370℃留分)、および残渣油留分(分解重油:HCO+CLO)の得率(容量%)を測定した。結果を第3表に示す。
なお、HCOはRFCC装置からの重質サイクル油である。
実施例1において常圧蒸留残渣油(AR)50容量%、減圧蒸留残渣油(VR)30容量%と凝集緩和処理剤としてのCLOの混合割合を20容量%とした以外は実施例1と同様にして水素化脱硫処理および流動接触分解処理を行った。結果を第3表に示す。
実施例1において、三段目および四段目の触媒を、それぞれチタンを含まない触媒3および触媒4に変えた以外は実施例1と同様にして水素化脱硫処理および流動接触分解処理を行った。結果を第3表に示す。
実施例1において、凝集緩和処理剤の混合割合を55容量%とした以外は実施例1と同様にして水素化脱硫処理および流動接触分解処理を行った。結果を第3表に示す。
実施例1において、混合時の温度を80℃とした以外は実施例1と同様にして水素化脱硫処理および流動接触分解処理を行った。結果を第3表に示す。
実施例1において、混合保持時間を0分とした以外は実施例1と同様にして水素化脱硫処理および流動接触分解処理を行った。結果を第3表に示す。
Claims (7)
- API20以下の重質油を、触媒と接触処理させる前に、系全量に対して2〜50容量%の割合で混合された凝集緩和処理剤の存在下で予め200〜350℃にて加熱処理したのち、周期表第4族に属する金属を含む水素化脱硫触媒システムを用いた重油直接脱硫装置で水素化脱硫処理し、さらに流動接触分解装置にて接触分解処理することを特徴とする、重質油の水素化処理方法。
- 前記水素化脱硫触媒システムが、周期表第4族に属する金属を含む水素化脱硫触媒と、該第4族に属する金属を含まない水素化脱硫触媒とを組み合わせたものである請求項1に記載の重質油の水素化処理方法。
- 前記水素化脱硫触媒システムが、第一段目に脱メタル触媒を、第二段目に周期表第4族に属する金属を含まない水素化脱硫触媒を、第三段目に該第4族に属する金属を含む水素化分解触媒を各々充填した充填パターンを有する反応器を備える請求項1又は2に記載の重質油の水素化処理方法。
- 凝集緩和処理剤が、芳香族系溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒及び芳香族系石油留分の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の重質油の水素化処理方法。
- 周期表第4族に属する金属がチタンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重質油の水素化処理方法。
- 凝集緩和処理剤が、流動接触分解装置から得られる流動接触分解残油(CLO)及び重質サイクル油(HCO)の中から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の重質油の水素化処理方法。
- 凝集緩和処理剤の存在下での加熱処理時間が、5〜60分である請求項1〜6のいずれか1項に記載の重質油の水素化処理方法。
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