JP5849738B2 - 空包 - Google Patents
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Description
空包は、りゅう弾砲などの火砲を用いた訓練や式典において、実際の砲弾を射出することなく、主に射撃の発射音を発生させるものである。
例えば特許文献1に記載された従来技術には、発射薬が装填された燃焼容器の頭部を、蓋となる金属性の破裂板にて密閉している空包が開示されている。そして破裂板には、燃焼ガスにて壊れ易くするための厚さ方向に貫通していない切り溝が設けられており、空包の点火後、燃焼容器内部の圧力が所定圧に上昇するまで破裂板は破壊されずに維持され、更なる圧力上昇とともに破裂板は破壊され、衝撃音が発生する。
また、特許文献2に記載された従来技術には、発射薬が装填された燃焼容器の頭部の蓋部に厚さ方向に貫通した放射状の貫通スリットである排出孔を設けた、衝撃音発生装置が開示されている。特許文献2に記載の発明では、衝撃音発生装置(空包に相当)の点火後、燃焼容器内の圧力の上昇に伴い、排出孔の開口面積が増大するように変形し、内部圧力を一定に保ち、使用環境温度が変化しても一定の衝撃音圧を発生させることができる。
また特許文献1に記載された従来技術では、破裂板の破片が飛散することはないが、燃焼ガスの圧力によって破裂板が切り溝に沿って大きく開口して発射薬の未燃物等が砲の前方に飛散する可能性があるので、好ましくない。
また特許文献2に記載された従来技術も、燃焼ガスの圧力によって排出孔の開口面積が増大するので、特許文献1と同様に、発射薬の未燃物等が砲の前方に飛散する可能性があるので、好ましくない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、破片や発射薬の未燃物等が勢いよく飛散することがない、より安全な空包を提供することを課題とする。
まず、本発明の第1の発明は、軸方向における両端が開口した筒状の容器である燃焼容器と、前記燃焼容器における一方端に取り付けられて一方端の側の蓋となる底部材と、前記燃焼容器における他方端に取り付けられて他方端の側の蓋となる破裂板と、を有し、前記底部材には、前記燃焼容器の外部と内部を連通する連通孔が形成されており、前記燃焼容器の内部には発射薬が装填され、前記連通孔には着火用の火管が装填され、前記火管と前記発射薬との間には点火薬が装填されている、空包である。
そして、前記破裂板は、前記空包が点火されると、燃焼ガスの圧力によって開口する強度に設定されており、前記燃焼容器の内部において前記破裂板と前記発射薬との間には、複数の貫通部が形成された飛散防止部材が配置されている。
これにより、燃焼ガスの圧力によって破片が発生しないように、破裂板の適切な個所を適切な形状に開口させることができる。
これにより、燃焼ガスの圧力によって破片が発生しないように、破裂板の適切な個所を適切な形状に開口させることができる。
以下、第1の実施の形態〜第5の実施の形態を順に説明する。
図1は第1の実施の形態において、空包1を構成する各部材の斜視図を示しており、図2(A)、(B)は破裂板65の構造を説明する図であり、図2(C)は、空包1を組み付けた状態における断面図を示している。
第1の実施の形態では、図1及び図2に示すように、燃焼容器60の他方端に取り付けられる破裂板65において、溝部65Aが形成された破裂部65Bと、燃焼容器60に取り付けるための取付部65Cと、が一体的に形成されている点と、飛散防止部材40を備えている点が特徴である。また溝部65Aは、破裂部65Bの厚さ方向に貫通した貫通溝である。
図1及び図2に示すように、空包1は、底部材10、シール部材80、火管K1、点火薬K2、発射薬K3、燃焼容器60、飛散防止部材40、クロージャ50、破裂板65、装填ガイド70等にて構成されている。
なお、底部材10、燃焼容器60、飛散防止部材40、破裂板65、装填ガイド70の材質には、鉄、ステンレス、アルミニウム、真鍮等の種々の金属を使用することができる。
シール部材80は、例えばゴムや樹脂等の円環状の弾性部材であり、シール溝13に嵌め込まれて、火砲の薬室に装填された空包が燃焼した際、火砲と空包1との隙間を密封する。なお、シール部材80は省略してもよい。
火管K1は、底部材10のほぼ軸中心部に挿入され、火管K1の前方には火管K1の火炎を燃焼容器60内へ導く貫通孔(連通孔12における燃焼容器60の側)が開けられている。点火薬K2は、この貫通孔に配置されていても良い。
点火薬K2は、火管K1と発射薬K3との間に装填され、火管K1によって着火され、発射薬K3を着火する。なお点火薬K2は、連通孔12内において火管K1と発射薬K3との間に配置されていても良い。
点火薬K2には、黒色火薬、シングルベース点火薬など一般の弾薬に使用されている点火薬を使用することができる。また点火薬K2は布製の袋に収納されていても良い。
発射薬K3は、燃焼容器60内において底部材10の表面から飛散防止部材40の間の空間に装填され、点火薬K2によって着火され、空包1の衝撃音、または衝撃音と煙及び火炎を発生させる。
発射薬K3には、シングルベース、ダブルベース、トリプルベース、マルチベースなどを使用することができる。
また、燃焼容器60内に、砲口炎を抑制するためにアルカリ金属塩からなる消炎剤を配置しても良い。また消炎剤は布製の袋に収納されていても良い。
なお、燃焼容器60は、底部材10に、ネジ止め、溶接、ろう付け等にて固定可能であるが、発射薬K3や点火薬K2を内部に装填してから固定されるので、熱や火花や火炎等を用いないネジ止めとすることが好ましい。
また飛散防止部材40は、発射薬K3の燃焼ガスを燃焼容器60の他方端の側の開口部62に導くとともに、発射薬K3の未燃物等を通過させずに塞き止めるための所定径の複数の貫通孔が形成されたパンチングメタルや複数の貫通空間部が形成された金網等にて形成されている。なお、所定径は発射薬K3の種類や形状等に応じて設定されるが、例えば4[mm]程度の径である。
なお、以後、飛散防止部材40の貫通孔と貫通空間部を合わせて「貫通部(41)」という。
また飛散防止部材40は、燃焼容器60の他方端の側の開口部62の開口方向(Z軸方向)に向かって凹状となるように形成されているが、図7に示すように、スペーサ部材40Aを用いた場合は凹状でなくてもよい。
なお、点火薬K2から飛散防止部材40までの空間に発射薬K3がぎっしりと詰められていれば、飛散防止部材40からフランジ部42を省略して燃焼容器60の内部に飛散防止部材40を配置してもよい。
また、フランジ部42を省略して、飛散防止部材40を燃焼容器60の内部に圧入して位置を固定してもよいし、燃焼容器60の内部に飛散防止部材40をろう付けして位置を固定してもよい。
また飛散防止部材40として金網を使用する場合、空間率は25[%]〜90[%]とする。なお空間率は、以下の(式1)にて表される。
空間率[%]=[目開き2/(目開き+線径)2]*100 (式1)
また金網の材質としては、鉄、ステンレス、真鍮などの金属を用いることができる。
発射薬K3は燃焼を開始すると、その外表面から(垂直に)発射薬K3の内面に向かって燃焼し、外表面は燃焼に伴って後退する。従って、発射薬K3の外形は燃焼時間の経過とともに小さくなっていくため、一定時間後には、発射薬K3は飛散防止部材40の貫通部41を通って砲口方向(Z軸方向)へ飛び出す可能性がある。このため、金網やパンチングメタルの貫通部41(開口部)の大きさは、発射薬K3の未燃部分が飛散防止部材40の貫通部41を通過した後に砲口(空包1を装填する火砲の砲口)に達するまでに燃焼し尽くすように、適切な大きさに設定されている。
また、飛散防止部材40の貫通部41の大きさと密度(開孔率、空間率に関連する)は、発射薬K3の燃焼速度と発射薬K3の総表面積との関係で燃焼容器60内の圧力にも影響を及ぼす。
従って、金網の空間率またはパンチングメタルの開孔率は、使用する発射薬K3の形状と燃焼速度、設計燃焼容器内圧力、燃焼容器60の先端から砲口までの距離等を考慮して適切に設定されている。
なお、クロージャ50は封止が目的であり、着火後の燃焼容器60内の内圧を所定圧まで高めるものではないため、材質としては金属箔、プラスチック板、樹脂板、アルミラミネート箔、防水性を有する紙、等を使用することができる。
クロージャ50は、封止が目的であるので、燃焼容器60の外側に取り付けられていてもよいし、燃焼容器60の内側に取り付けられていてもよい。
またクロージャ50は、発射薬K3の燃焼による燃焼容器60の内部の圧力が上昇することにより容易に破れ、破れた際の破片が、前述した「飛散」状態とならない質量となる必要がある。クロージャ50の材質として、金属箔またはプラスチック板または樹脂板を使用する場合、厚さは0.5[mm]以下(より好ましくは0.2[mm]以下)とすると、飛び出した破片は直線状に勢いよく飛行せず、はらはらと舞い落ちてくるので「飛散」しない。またクロージャ50の材質として、アルミラミネート箔または防水性を有する紙を使用する場合、厚さは1[mm]以下とすると、飛び出した破片は直線状に勢いよく飛行せず、はらはらと舞い落ちてくるので「飛散」しない。
なお、クロージャ50は省略してもよい。
破裂部65Bは、燃焼容器60の他方端の側の開口部62の蓋となり、取付部65Cには、破裂板65を燃焼容器60のネジ部61Bに固定するためのネジ部が内壁に形成されている。
破裂部65Bにおける径方向の中央部には、中央から径方向外方側に向かう溝であって破裂部65Bの厚さ方向に貫通している溝である単数または複数の溝部65A(貫通溝に相当)が(放射状に)形成されている。そして破裂板65は、発射薬K3による燃焼容器60内の圧力(例えば5[MPa]〜100[MPa])を保持し、発射薬K3の安定燃焼と衝撃音を確保する。
そして破裂板65は、燃焼ガスの圧力によって開口する強度に設定されており、燃焼容器60内の圧力が前記圧力を超えると、溝部65Aに沿って開口するように変形して(破裂して)、破片は発生しない。
破裂板65は、燃焼容器60に、ネジ止め、溶接、ろう付け等にて固定可能であり、また燃焼容器60の円筒面である側壁64と一体的に形成とすることも可能である。
なお、破裂板65が変形を開始する際の圧力と、発射薬K3の種類及び量は、所望する衝撃音量(例えば100[dB]〜130[dB])に応じて適宜設定される。
発射薬K3が燃焼を開始すると、燃焼容器60の内部の圧力が上昇することにより、溝部65Aに沿って破裂部65Bが燃焼ガスの排出方向(Z軸方向)にめくれ上がるように破裂板65が変形して開口面積が増大する。しかし、溝部65Aが形成されていない部分は破断しないため、破裂板65の破片が飛散することはない。
また、装填ガイド70は省略してもよい。
図3は第2の実施の形態において、空包1を構成する各部材の斜視図を示しており、図4(A)、(B)は破裂部材68、取付部材67の構造を説明する図であり、図4(C)は、空包1を組み付けた状態における断面図を示している。
第2の実施の形態では、図3及び図4に示すように、図1及び図2に示す第1の実施の形態に対して、破裂板65が、破裂部材68と取付部材67と、の別々の部材で構成されている点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
図4(A)、(B)、(C)に示すように、支持部67Bは、破裂部材68を燃焼容器60の端面に支持し、取付部67Cは、燃焼容器60のネジ部61Bをねじ込むためのネジ部が内壁に形成されて燃焼容器60のネジ部61Bにねじ込まれる。
破裂部材68は、円板状の形状を有しており、径方向の中央部には、中央から径方向外方側に向かう溝であって破裂部材68の厚さ方向に貫通している溝である単数または複数の溝部68A(貫通溝に相当)が(放射状に)形成されている。
図5(A)、(B)は第3の実施の形態において、破裂板66の構造を説明する図であり、図5(C)は、空包1を組み付けた状態における断面図を示している。
第3の実施の形態では、図5(B)、(C)に示すように、図2(B)、(C)に示した第1の実施の形態に対して、破裂板66の溝部66Aが、破裂部66Bの厚さ方向に貫通していない非貫通溝である点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
従って第3の実施の形態では、第1の実施の形態に対して、クロージャ50が不要となり、部品点数が削減されており、部品コスト削減と組み立て作業時間の短縮に寄与することができる。
また、溝部66Aが非貫通溝であることにより、発射薬K3の燃焼開始初期の燃焼容器60内の圧力上昇率が貫通溝の場合よりも大きくなる点と、圧力上昇による変形の際、非貫通の溝部66Aが厚さ方向に破断した後に破裂部66Bが溝部66Aに沿ってZ軸方向にめくれ上がって開口する点が異なる以外は第1の実施の形態と同様であり、破裂板66の破片が飛散することはない。
図6(A)、(B)は第4の実施の形態において、破裂部材69、取付部材67の構造を説明する図であり、図6(C)は、空包1を組み付けた状態における断面図を示している。
第4の実施の形態では、図6(B)、(C)に示すように、図4(B)、(C)に示した第2の実施の形態に対して、破裂部材69の溝部69Aが、破裂部材69の厚さ方向に貫通していない非貫通溝である点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
従って第4の実施の形態では、第2の実施の形態に対して、クロージャ50が不要となり、部品点数が削減されており、部品コスト削減と組み立て作業時間の短縮に寄与することができる。
また、溝部69Aが非貫通溝であることにより、発射薬K3の燃焼開始初期の燃焼容器60内の圧力上昇率が貫通溝の場合よりも大きくなる点と、圧力上昇による変形の際、非貫通の溝部69Aが厚さ方向に破断した後に破裂部材69が溝部69Aに沿ってZ軸方向にめくれ上がって開口する点が異なる以外は第1の実施の形態と同様であり、破裂部材69の破片が飛散することはない。
図7(A)は第5の実施の形態において、飛散防止部材40B、スペーサ部材40Aの構造を説明する図であり、図7(B)は、空包1を組み付けた状態における断面図を示している。
第5の実施の形態では、図7に示すように、第1〜第4の実施の形態における飛散防止部材40が、スペーサ部材40Aと(平板状の)飛散防止部材40Bとの別々の部材で構成されている点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。なお、図7は、例として図2に示す第1の実施の形態に対して、飛散防止部材40をスペーサ部材40Aと飛散防止部材40Bに変更したものを示しており、第2〜第4の実施の形態の飛散防止部材40を変更した例については同様であるので図示を省略する。
飛散防止部材40Bは、平板状(円板状)の部材であり、複数の貫通部41が形成されている。
燃焼容器60内の発射薬K3の燃焼によって発生した燃焼ガスは、飛散防止部材40Bの貫通部41を通って破裂板65を破裂(開口)させて燃焼容器60の外部に放出され、衝撃音を発生する。この場合、飛散防止部材40Bの外周近傍まで貫通部41が形成されているが、スペーサ部材40Aが無いと、飛散防止部材40Bの外周近傍に設けられた貫通部41が破裂板65に塞がれてしまい、所望する衝撃音を得られなかったり、燃焼容器60内の圧力が高くなりすぎたりする可能性がある。しかし、スペーサ部材40Aを設けることで、破裂板65に塞がれる貫通部41を無くして燃焼ガスをスムーズに流すことが可能であり、所望する衝撃音が得られるとともに、燃焼容器60内の圧力が高くなりすぎることを適切に防止することができる。
このように、スペーサ部材40Aを設けることで、飛散防止部材40Bを凹状に形成する必要が無く、飛散防止部材40Bを単純な平面状にすることができるので、飛散防止部材40Bの形成が容易である。また、燃焼容器60内における飛散防止部材40Bの占有する体積が小さくなるので、燃焼容器60内により多くの発射薬K3を充填することができる。
また、本実施の形態の説明では、破裂板(または破裂部材)の溝部を、貫通溝または非貫通溝のいずれかとした例を説明したが、溝部の一部を貫通溝として残りを非貫通溝とするように構成しても良い。また溝部の代わりとして、貫通孔と貫通溝を組み合わせたり、貫通孔と非貫通溝を組み合わせたりしても良い。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
10 底部材
11 ネジ部
12 連通孔
13 シール溝
40、40B 飛散防止部材
40A スペーサ部材
41 貫通部
42 フランジ部
50 クロージャ
60 燃焼容器
61A、61B ネジ部
65、66 破裂板
65A、66A 溝部
65B、66B 破裂部
65C、66C 取付部
67 取付部材
67A 貫通孔
67B 支持部
67C 取付部
68、69 破裂部材
68A、69A 溝部
70 装填ガイド
71 テーパ部
72 開口孔
80 シール部材
K1 火管
K2 点火薬
K3 発射薬
Claims (3)
- 軸方向における両端が開口した筒状の容器である燃焼容器と、
前記燃焼容器における一方端に取り付けられて一方端の側の蓋となる底部材と、
前記燃焼容器における他方端に取り付けられて他方端の側の蓋となる破裂板と、
を有し、
前記底部材には、前記燃焼容器の外部と内部を連通する連通孔が形成されており、
前記燃焼容器の内部には発射薬が装填され、前記連通孔には着火用の火管が装填され、前記火管と前記発射薬との間には点火薬が装填されている、空包において、
前記破裂板は、前記空包が点火されると、燃焼ガスの圧力によって開口する強度に設定されており、
前記燃焼容器の内部において前記破裂板と前記発射薬との間には、複数の貫通部が形成された飛散防止部材が配置されており、
前記飛散防止部材は、前記破裂板の方向に向かって凹状となるように形成されている空包。 - 請求項1に記載の空包であって、
前記破裂板には、中央から径方向外方側に向かう溝であって前記破裂板の厚さ方向に貫通している溝である単数または複数の貫通溝が形成されている空包。 - 請求項1に記載の空包であって、
前記破裂板には、中央から径方向外方側に向かう溝であって前記破裂板の厚さ方向に貫通していない溝である単数または複数の非貫通溝が形成されている空包。
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