JP5849600B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
一般に、スタッドピンは、トレッド部に設けられたスタッドピンの埋め込み用の穴に埋め込まれる。このとき、タイヤ転動中に路面から受ける制駆動力や横力によってスタッドピンが上記穴から抜け落ちることがないようにスタッドピンは穴径を拡張して穴にきつく埋め込まれる。
上記空気入りスタッドタイヤでも、コンクリート路面やアスファルト路面上において、制駆動時やコーナリング時にタイヤが路面から受ける力によってスタッドピンの抜け(以降、ピン抜けという)が多く発生する場合がある。このため、上記空気入りスタッドタイヤにおいても、ピン抜けをより一層改善することが求められる。
前記空気入りタイヤのトレッド表面にスタッドピンの埋め込み用の穴が複数設けられたタイヤトレッド部と、
前記穴に埋め込まれた複数のスタッドピンと、を有する。
前記トレッド表面外側から前記穴の輪郭をみたとき、前記穴のそれぞれは、前記スタッドピンそれぞれの外周と接触して前記スタッドピンそれぞれを固定する固定領域と、前記スタッドピンそれぞれの外周と接触せず、前記固定領域から前記穴がスリット状に延びて前記タイヤトレッド部の一部が切り欠かれるように形成されたスリット領域と、を有する。
前記空気入りタイヤのトレッド表面にスタッドピンの埋め込み用の複数の穴が設けられたタイヤトレッド部と、
前記穴に埋め込まれた複数のスタッドピンと、を有する。
前記穴のそれぞれは、前記スタッドピンそれぞれの外周と接触して前記スタッドピンそれぞれを固定する2つの固定領域と、前記スタッドピンそれぞれの外周と接触せず、前記固定領域から延びて前記タイヤトレッド部の一部が切り欠かれるように形成された2つのスリット領域と、を有する。前記トレッド表面外側から前記穴をみたとき、前記2つのスリット領域は、前記2つの固定領域を挟んで対向する位置に設けられている。
以下、本実施形態の空気入りタイヤについて説明する。図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以降、タイヤという)10の断面を示すタイヤ断面図である。タイヤ10は、トレッド部にスタッドピンが埋め込まれたスタッドタイヤである。
タイヤ10は、例えば、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2010(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
以降で具体的に説明する各パターン要素の寸法の数値は、乗用車用タイヤにおける数値例であり、本発明である空気入リタイヤはこれらの数値例に限定されない。
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ層12と、ベルト層14と、ビードコア16とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側からベルト層14を覆う、有機繊維をゴムで被覆したベルトカバー層28を備える。
図2は、タイヤ10のトレッドパターン30を平面上に展開したトレッドパターンの一部の平面展開図である。タイヤ10は図2に示されるように、タイヤ周方向の一方の向きを示す回転方向Rが指定されている。回転方向Rの向きは、タイヤ10のサイドウォール表面に設けられた数字、記号等によって表示され指定されている。
傾斜溝32は、タイヤセンターラインCLの両側においてそれぞれ回転方向Rとは反対側に進むにつれて(図2中上方向に進むにつれて)タイヤ幅方向外側に延びるように、タイヤ周方向に対して傾斜した溝である。傾斜溝32は、パターンエンドEに到達することなく、途中で閉塞している。傾斜溝32は、タイヤ周方向に所定の間隔で複数設けられている。
横断溝34は、タイヤセンターラインCLの両側においてそれぞれ回転方向Rとは反対側へ進むにつれて、タイヤ幅方向外側に向かい、さらに、両側のパターンエンドEまで延びるようにタイヤ周方向に対して傾斜した溝である。横断溝34は、タイヤ周方向に所定の間隔で複数設けられている。
傾斜溝32のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ幅方向の同じ位置において、横断溝34のタイヤ周方向に対する傾斜角度に比べて小さい。このため、横断溝34は、傾斜溝32と交差する。
傾斜溝32及び横断溝34の溝幅は、例えば5.0mm〜15.0mmであり、溝深さは7〜10mmである。
本実施形態でいうサイプとは、厚さが1.5mm以下であり、深さが5.0〜9.0mmの溝状のものをいい、傾斜溝32及び横断溝34等の溝と寸法から区別され得る。
スタッドピン48の埋め込み用の穴46は、タイヤ製造工程中のタイヤ加硫時、トレッドパターンの一部として形成されるように、穴46に対応する凸部がタイヤ金型に予め形成されてもよいし、あるいは、タイヤ加硫後にドリルで穴46が設けられてもよい。穴48の直径は、スタッドピン48の直径に比べて小さく、図示されない専用装置を用いて穴46内にスタッドピン48を圧入することにより、スタッドピン48が穴46に埋め込まれる。
図4(b)に示すように、トレッド表面外側から穴46の輪郭をみたとき、穴46のそれぞれは、埋め込まれたスタッドピン48それぞれの外周と接触してスタッドピン48それぞれを固定する固定領域50と、スタッドピン48それぞれの外周と接触せず、固定領域50から穴46がスリット状に延びてタイヤトレッド部の一部が切り欠かれるように形成されたスリット領域52とを有する。
固定領域50は、図4(a)に示すように、スタッドピン48の回転体形状に対応した円筒形状をなしており、トレッド表面外側から穴46の輪郭をみたとき、円弧形状をなしている。
スリット領域52は、より具体的には、トレッド表面外側から穴46の輪郭をみたとき、固定領域50の円弧形状の一部からこの円弧形状の外側に突出した形状を成している。このように、穴46に固定領域50とスリット領域52を設けるのは以下の理由による。すなわち、スタッドピン48が路面から制駆動力あるいは横力を受けたとき、スタッドピン48は僅かに動く。このとき、外側陸部40に設けられたサイプ44及び横断溝34によって区画されたスタッドピン48周りのゴム部材の塊の部分(以降、この塊の部分をスタッドピン周りのゴムブロックという)も、穴46にスリット領域52が設けられているので、スタッドピン48の動きに追随して動くことができる。このため、スタッドピン48とスタッドピン周りのゴムブロックの一体性が強くなり、従来に比べて、スタッドピン48の抜け落ちが少なく、氷上性能を向上させることができる。従来のように、穴46によってスタッドピン48の全周を取り囲むようにスタッドピン48を固定して埋め込んだ場合、路面から受ける力によってスタッドピンが動こうとするが、スタッドピン周りのゴムブロックがスタッドピンの動きに追随できないため、スタッドピンが抜け易くなる。
また、スタッドピン48は制駆動時に抜け易いことから、スタッドピン周りのゴムブロックがスタッドピン48の動きの向きに合わせて同じ向きに動くことができるように、固定領域50から延びるスリット領域52は、少なくともタイヤ幅方向に延びる成分を有することが好ましい。すなわち、スリット領域52は、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に延びている。タイヤ10の制動時のスタッドピン48の動きに追随してスタッドピン周りのゴムブロックを動き易くすることにより、スタッドピン48の抜けを少なくしつつ氷上路面における制動性能を高める点で、スリット領域52の延びる方向の、タイヤ幅方向に対する角度は0〜45度であることがより好ましい。
また、図4(b)に示すように、固定領域50の円弧形状の直径をDとし、スリット領域52の三角形状に突出した突出長さをdとしたとき(図4(b)参照)、比d/Dは、0.05〜0.4であることが、スタッドピン48の抜けを少なくしつつ氷上路面における制動性能を高める点で好ましい。スリット領域52の突出長さdは、0.5〜2.0mmであることが好ましく、1.0〜1.5mmであることがより好ましい。突出長さdが0.5mmより小さい場合、スリット領域52を作製することは製造工程上難しく、2.0mmを超える場合、スタッドピン周りのゴムブロックの剛性が低下しすぎて、氷上における制動性能が低下する。
さらに、図4(b)に示すように、スリット領域52が固定領域50の円弧形状の一部からこの円弧形状の外側に突出するときの突出基部の幅をWとしたとき(図4(b)参照)、比W/Dは0.05〜0.40であることが、スタッドピン48の抜けを少なくしつつ氷上路面における制動性能を高める点で好ましい。幅Wは、例えば、0.3〜1.5mmであり、好ましくは、0.5〜1.0mmである。幅Wが0.3mmより小さい場合、スリット領域52を作製することは製造工程上難しく、1.5mmを超える場合、スタッドピン周りのゴムブロックの剛性が低下しすぎて、氷上における制動性能が低下する。
図5は、タイヤ10の穴46の形状の変形例1を示す図である。変形例1では、穴46は、スタッドピンそれぞれの外周と接触してスタッドピン48を固定する2つの固定領域50と、スタッドピン48の外周と接触せず、固定領域50から延びてトレッド部の一部が切り欠かれるように形成された2つのスリット領域52と、を有する。
穴46をトレッド表面外側からみたとき、2つのスリット領域52は、2つの固定領域50を挟んで対向する位置に設けられている。この場合、トレッド部が路面から制駆動力や横力を受けたとき、両側にあるスリット領域52により、スタッドピン48の動きに追随してスリット領域52が延びる方向と直交する方向にスタッドピン周りのゴムブロックはより動き易くなる。このため、スタッドピン48の抜け落ちを少なくすることができる。
図6は、タイヤ10の穴46の形状の変形例2を示す図である。変形例2の穴46は、トレッド表面外側からみたとき、図4(b)に示す穴46の輪郭形状と同様の輪郭形状を有するが、図6に示すように、スリット領域52の突出長さが、穴46の深さ方向の位置が深い程短くなっている。この場合においても、トレッド部が路面から制駆動力や横力を受けても、スタッドピン48の動きに追随してスリット領域52が延びる方向と直交する方向にスタッドピン周りのゴムブロックは動き易くなるため、スタッドピン48の抜け落ちを少なくすることができる。
本実施形態のタイヤ10の効果を調べるために、種々の寸法の穴46がトレッド部に設けられたタイヤ10を用いて、スタッドピン48の抜け落ち(耐ピン抜け性)とタイヤ10の制動性能を調べた。評価の際には、2000ccクラスの乗用車(前輪駆動車)にタイヤ10を装着して乗用車を走行させてタイヤの評価を行った。
評価に用いたタイヤ10は、図1に示すタイヤ構造を有し、図2に示すトレッドパターン30を有するタイヤである。穴46の形状を変更した実施例1〜20のタイヤと従来例のタイヤがそれぞれ4本ずつ作製された。作製したタイヤ10のタイヤサイズは205/55R16である。タイヤ10は、JATMA YEAR BOOK 2010に規定されるリムに組まれ、JATMA YEAR BOOK 2010中の空気圧−負荷能力対応表に示される最大負荷能力に対応する空気圧がタイヤ10に充填された。タイヤ10の負荷荷重は2名乗車相当の荷重とした。
制動性能は、走行速度40km/時から乗用車にフルブレーキで制動をかけたときの制動距離を複数回測定しその平均値を求めた。評価は、後述する従来例の上記測定値の平均値を100として指数で表した。指数の値が大きいほど、制動性能が高いことを示す。
従来例は、スタッドピン48用の穴が固定領域50のみからなり、スリット領域52が設けられない例である。実施例1〜5は、表1に示すように、スリット領域52の深さdepth、長さd/直径D、幅W/直径Dを固定して、スリット領域52の延びる方向を種々変更した例である。表1中のスリット領域の「数」とは、スリット領域52の配置数であり、図4(a)に示す例では「数」が1であり、図5に示す例では「数」が2である。なお、以下の実施例1〜20において、穴46の深さはいずれも9mmであり、スタッドピン48の長さはいずれも10mmである。下記表1に各実施例の仕様と評価結果を示す。
実施例6〜9は、実施例1に用いた穴46のうち、スリット領域52のdepthを0.3〜2.2mm変化させた例である。下記表2に各実施例の仕様と評価結果を示す。
実施例10〜13は、実施例1に用いた穴46のうち、スリット領域52の長さd/直径Dを0.04〜0.42の範囲で変化させた例である。下記表3に各実施例の仕様と評価結果を示す。
実施例14〜17は、実施例1に用いた穴46のうち、スリット領域52の幅W/直径Dを0.04〜0.42の範囲で変化させた例である。下記表4に各実施例の仕様と評価結果を示す。
実施例18〜20は、実施例1に用いた穴46と異なりスリット領域52の配置数を変更した。実施例18,19では、スリット領域52の配置数を2つとした。実施例18,19は、図5に示す形態の穴46を有する。
実施例18では、スリット領域52の深さdepthを0.5mmとし、スリット領域52の延びる方向のタイヤ幅方向に対する傾斜角度を20度、200度とした。スリット領域52の突出基部の幅Wを考慮すると、スリット領域52は、タイヤ幅方向に対して0度〜40度、180度〜220度の範囲に位置する。2つのスリット領域52は2つの固定領域50を挟んで対向する位置に設けられている。実施例19では、スリット領域52の深さdepthを1.0mmとした以外は実施例18と同じ仕様である。実施例20は、スリット領域52の数を3とし、3つのスリット領域52の延びる方向のタイヤ幅方向に対する傾斜角度を30度、150度、270度とし、360度を3等分した。スリット領域52の突出基部の幅Wを考慮すると、スリット領域52は、タイヤ幅方向に対して10〜50度の範囲、130〜180度の範囲、及び250〜290度の範囲に位置する。下記表5に各実施例の仕様と評価結果を示す。
12 カーカスプライ層
12a,12b カーカスプライ材
14 ベルト層
14a,14b ベルト材
16 ビードコア
18 トレッドゴム部材
18a 上層トレッドゴム部材
18b 下層トレッドゴム部材
20 サイドゴム部材
22 ビードフィラーゴム部材
24 リムクッションゴム部材
26 インナーライナゴム部材
28 ベルトカバー層
30 トレッドパターン
32 傾斜溝
36 中央陸部
38 ブロック
40 外側陸部
42,44 サイプ
46 穴
46a 底部
48 スタッドピン
48a 基部
48b 先端部
50 固定領域
52 スリット領域
Claims (8)
- 空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤのトレッド表面にスタッドピンの埋め込み用の穴が複数設けられたタイヤトレッド部と、
前記穴に埋め込まれた複数のスタッドピンと、を有し、
前記トレッド表面外側から前記穴の輪郭をみたとき、前記穴のそれぞれは、前記スタッドピンそれぞれの外周と接触して前記スタッドピンそれぞれを固定する円弧形状の固定領域と、前記スタッドピンそれぞれの外周と接触せず、前記固定領域の一部から前記円弧形状の外側に突出して延びる2つの直線が突出先端で接続された形状を成すスリット領域と、を有することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記固定領域から延びる前記スリット領域は、少なくともタイヤ幅方向に延びる成分を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スリット領域の延びる方向は、タイヤ幅方向に対して0〜45度傾斜している、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スリット領域は、前記穴の深さ方向において、前記トレッド表面を含む表面部分に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スリット領域が前記穴の深さ方向に延びる前記スリット領域の深さは、0.5〜2.0mmである、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
- 前記円弧形状の直径をDとし、前記スリット領域の突出長さをdとしたとき、比d/Dは、0.05〜0.40である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記円弧形状の直径をDとし、前記スリット領域が前記円弧形状の一部から前記円弧形状の外側に突出するときの突出基部の幅をWとしたとき、比W/Dは0.05〜0.40である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤのトレッド表面にスタッドピンの埋め込み用の複数の穴が設けられたタイヤトレッド部と、
前記穴に埋め込まれた複数のスタッドピンと、を有し、
前記穴のそれぞれは、前記スタッドピンそれぞれの外周と接触して前記スタッドピンそれぞれを固定する2つの円弧形状の固定領域と、前記スタッドピンそれぞれの外周と接触せず、前記固定領域の一部から前記円弧形状の外側に突出して延びる2つの直線が突出先端で接続された形状を成す、2つのスリット領域と、を有し、
前記トレッド表面外側から前記穴をみたとき、前記2つのスリット領域は、前記2つの固定領域を挟んで対向する位置に設けられている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
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