JP7243213B2 - スタッドピン、及びスタッドタイヤ - Google Patents
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Description
一般に、スタッドピンは、トレッド部に設けられた取付孔に埋め込まれる。取付孔にスタッドピンを埋め込むとき、孔径を拡張した状態の取付孔にスタッドピンを挿入することで、スタッドピンが取付孔にきつく埋め込まれ、タイヤ転動中に路面から受ける制駆動力や横力によるスタッドピンの取付孔からの抜け落ちを防いでいる。
当該スタッドピンは、
一方向に延在し、前記トレッド部内に埋設される埋設基部と、
前記埋設基部の一方の端面から突出し、路面と接触する先端部と、
を有し、
前記埋設基部は、
前記先端部側に位置する胴体部と、
前記先端部と反対側に位置するフランジ状の底部と、
前記底部と前記胴体部とを接続するシャンク部と、
を備え、
前記一方向に前記埋設基部を見たとき、前記シャンク部は、前記底部及び前記胴体部の断面形状の輪郭の内側に位置し、
前記埋設基部は、前記一方向と平行な中心軸を有し、
前記スタッドピン取付用孔の側面と接触する前記胴体部の外周側面には、前記外周側面の周を一周する凹部が形成され、前記凹部を境として両側に位置する前記外周側面の領域のそれぞれには、前記外周側面が前記中心軸から離れるよう突出した凸部が形成され、
前記凸部のうち、前記先端部側に形成された第1の凸部は、前記底部側に形成された第2の凸部よりも前記中心軸からの突出高さが高く、
前記中心軸から最も離れた前記第2の凸部の端は、前記スタッドピン取付用孔の前記側面と接触する前記底部の外周側面よりも、前記中心軸に接近して位置し、
前記中心軸から最も離れた前記第1の凸部の端は、前記底部の外周側面よりも、前記中心軸から離れて位置している、ことを特徴とする。
前記胴体部の前記先端部側の端に、前記突出高さが最大となる最大高さ位置を有し、
前記胴体部の外周側面上を当該最大高さ位置から前記底部側へ向かうに連れて前記中心軸に近づくよう前記一方向に対して傾斜した第1傾斜面を備えることが好ましい。
前記胴体部の前記底部側の端に、前記突出高さが最大となる最大高さ位置を有し、
前記胴体部の外周側面上を当該最大高さ位置から前記先端部側へ向かうに連れて前記中心軸に近づくよう前記一方向に対して傾斜した第2傾斜面を備えることが好ましい。
当該スタッドタイヤは、
トレッド部にスタッドピン取付用孔を有する空気入りタイヤと、前記スタッドピンと、を備えることを特徴とする。
以下、本実施形態のスタッドタイヤについて説明する。図1は、本実施形態のスタッドタイヤ(以降、タイヤという)10の断面を示すタイヤ断面図である。
タイヤ10は、例えば、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2012(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
タイヤ10は、骨格材として、一対のビードコア11と、カーカスプライ層12と、ベルト層14とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
カーカスプライ層12は、有機繊維をゴムで被覆した1又は複数のカーカスプライ材12a、12bからなる。カーカスプライ材12a、12bは、トロイダル形状をなすよう一対のビードコア11の間に巻き回されている。
ベルト層14は複数のベルト材14a、14bからなり、カーカスプライ層12のタイヤ径方向外側にタイヤ周方向に巻き回されている。タイヤ径方向内側のベルト材14aのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向外側のベルト材14bの幅に比べて広い。
ベルト材14a、14bは、スチールコードにゴムを被覆した部材である。ベルト材14aのスチールコード、および、ベルト材14bのスチールコードは、タイヤ周方向に対して所定の角度、例えば20~30度傾斜して配置されている。ベルト材14aのスチールコードと、ベルト材14bのスチールコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆方向に傾斜し、互いに交錯する。ベルト層14は充填された空気圧によるカーカスプライ層12の膨張を抑制する。
接地端E1,E2は、タイヤ10を正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、正規荷重の88%を負荷荷重とした条件において水平面に接地させたときの接地面のタイヤ幅方向の両端である。正規リムとは、JATMAに規定される「測定リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
サイドゴム部材20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材24が設けられる。リムクッションゴム部材24はタイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア11のタイヤ径方向外側には、ビードコア11の周りに巻きまわしたカーカスプライ層12に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム部材26が設けられている。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側面を覆うベルトカバー層28を備える。ベルトカバー層28は、有機繊維と、この有機繊維を被覆するゴムとからなる。
次に、本実施形態のスタッドピンについて説明する。
図2は、本実施形態のスタッドピン50の外観斜視図である。図3は、取付孔40に装着されたスタッドピン50の側面図である。
基部53は、装着される空気入りタイヤの取付孔40内に埋設される。基部53は、取付孔40を構成するトレッドゴム部材18と接触していることが好ましい。基部53は、取付孔40の孔径より大きい径を有しており、基部53が取付孔40の側面(内壁面)によってトレッドゴム部材18に押圧されることによりスタッドピン50がトレッド部に固定される。スタッドピン50は、基部53及び先端部60が、方向Xに沿ってこの順に形成されている。なお、方向Xは、先端部60に向けて延びる基部53の延在方向である。
第1の凸部57と接触するゴムの締付け力は、第2の凸部59と接触するゴムの締付け力より大きく、第1の凸部57は、強い力で取付孔40内に拘束される。このため、スタッドピン1が取付孔40内で回転するときの回転中心は、第1の凸部57の突出高さと第2の凸部59の突出高さが等しい場合と比べ、第1の凸部57の側に寄っている(偏心している)。このため、路面から外力Fが先端部60に作用してスタッドピン1に剪断力が作用したとき、取付孔40内での第1の凸部57の動きは小さく、取付孔40の側壁との間に隙間があきにくい。このように、スタッドピン50の抜け落ちに発展しやすい、胴体部58の先端部60側の部分と取付孔40との間の隙間があくことが抑制されていることで、スタッドピン50の取付孔40からの抜け落ちが抑制される。図4において、スタッドピン50とゴムとの隙間は、誇張して表されている。
図7から図12に、スタッドピン1の変形例を示す。図7から図12に示したスタッドピン1の各部の符号には、上記説明したスタッドピン1の対応する各部と同じ符号を用いている。
図7及び図8に示す例の胴体部58は、鼓形状を有している。
また、一実施形態によれば、第1傾斜面57aと第2傾斜面59aとが互いに接続する、方向Xにおける接続位置は、方向Xに沿った胴体部58の高さ範囲の中点よりも底部54側に位置することが好ましい。例えば、接続位置は、方向Xに沿った胴体部58の高さ範囲のうち、底部54側の端から、方向Xに沿った胴体部58の長さの25~45%の範囲に位置していることが好ましい。
一実施形態によれば、方向Xに沿った、胴体部58の長さとシャンク部56の長さとの比は、9:1~6:4であることが好ましく、8:2~7:3であることがより好ましい。これにより、胴体部58の外周側面58Aとゴムとの接触面積が大きくなり、胴体部58とゴムとの摩擦力が大きくなる。これにより、スタッドピン1の取付孔40からの抜け落ちが抑制される。
なお、シャンク部56の形状は、円筒形状に制限されず、例えば、図9(a)に示すように、胴体部58側から底部54側に向かって先細りに形成された円錐台形状であってもよい。
また、方向Xと直交する方向に沿った胴体部58の断面形状は、円形状に制限されず、図10から図12に示すように、多角形状であってもよい。多角形状は正多角形状であることが好ましい。胴体部58の方向Xと直交する断面形状は、図10に示す例では正方形状であり、図11に示す例では正五角形状であり、図12に示す例では正六角形状である。
本発明の効果を確認するために、以下の実施例1~6、比較例、および従来例1,2のスタッドピンを、図1に示すタイヤ10の接地領域に取り付けた。タイヤのタイヤサイズは、205/55R16 94Tとした。
実施例1~6、比較例、及び従来例1,2のスタッドピンには、表1及び下記に示した点を除いて、図2に示すスタッドピンの形態を採用した。
実施例1~6、比較例、及び従来例1,2のいずれも、シャンク部の断面形状は円筒形状とした。
実施例1~6、比較例、及び従来例1,2のいずれも、方向Xに沿った、シャンク部の長さと胴体部の長さとの比は、3:7とした。
実施例5の第1傾斜面には、図7に示す形態を採用し、図3に示す形態の第2の凸部及び凹部を採用した。
実施例6の第1傾斜面及び第2傾斜面には、図7に示す形態を採用した。実施例6の凹部の最大深さ位置は、方向Xに沿った胴体部の高さ範囲のうち、底部側の端から、胴体部の長さの35%の位置とした。
「凸高さD1」とは、第1の凸部の直径D1を意味し、「凸高さD2」とは、第2の凸部の直径D2を意味する。
「第1傾斜面」及び「第2傾斜面」の欄には、第1傾斜面の有無、及び第2傾斜面の有無を示す。
「底部高さ」とは、底部の直径を意味する。
トレッド部の接地領域に100本スタッドピンを打ち込んだタイヤを装着した車両(排気量2000ccの前輪駆動車)で乾燥路面(アスファルト路面およびコンクリート路面を含む)を10,000km走行させた。その後、トレッド部の接地領域に残存したスタッドピンの数を数えた。従来例1の接地領域に残存したスタッドピンの数を100としたときのタイヤの接地領域に残存したスタッドピンの数の相対値を耐ピン抜け性能の指数とした。指数が104以上の場合を耐ピン抜け性能に優れると評価した。
花崗岩を路面に埋め込み、上記車両で花崗岩の上を通過し、通過前後における花崗岩の重量差を摩耗量として測定した。測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数により示し、値が大きいほど耐路面損傷性能が高いと評価した。
結果を表1に示す。
また、実施例1~3と実施例4~6とを対比すると、比D1/D2が1.1~2.0を満たす、あるいは、比A/Bが1.3~2.0を満たすことで、凸高さD1が凸高さD2より高くても、耐路面損傷性が向上することがわかる。
また、実施例4と実施例5の対比、及び、実施例5と実施例6の対比から、凸部が傾斜面を有していることで、スタッドピンがさらに抜け落ちにくくなることがわかる。
18 トレッドゴム部材
40 取付孔
50 スタッドピン
53 基部
54 底部
56 シャンク部
58 胴体部
58A 外周側面
60 先端部
60a 先端面
57 第1の凸部
57a 第1傾斜面
59 第2の凸部
59a 第2傾斜面
71 環状の凹部
Claims (6)
- 空気入りタイヤのトレッド部のスタッドピン取付用孔に装着されるスタッドピンであって、
一方向に延在し、前記トレッド部内に埋設される埋設基部と、
前記埋設基部の一方の端面から突出し、路面と接触する先端部と、
を有し、
前記埋設基部は、
前記先端部側に位置する胴体部と、
前記先端部と反対側に位置するフランジ状の底部と、
前記底部と前記胴体部とを接続するシャンク部と、
を備え、
前記一方向に前記埋設基部を見たとき、前記シャンク部は、前記底部及び前記胴体部の断面形状の輪郭の内側に位置し、
前記埋設基部は、前記一方向と平行な中心軸を有し、
前記スタッドピン取付用孔の側面と接触する前記胴体部の外周側面には、前記外周側面の周を一周する凹部が形成され、前記凹部を境として両側に位置する前記外周側面の領域のそれぞれには、前記外周側面が前記中心軸から離れるよう突出した凸部が形成され、
前記凸部のうち、前記先端部側に形成された第1の凸部は、前記底部側に形成された第2の凸部よりも前記中心軸からの突出高さが高く、
前記中心軸から最も離れた前記第2の凸部の端は、前記スタッドピン取付用孔の前記側面と接触する前記底部の外周側面よりも、前記中心軸に接近して位置し、
前記中心軸から最も離れた前記第1の凸部の端は、前記底部の外周側面よりも、前記中心軸から離れて位置している、ことを特徴とするスタッドピン。 - 前記第2の凸部の前記突出高さに対する前記第1の凸部の前記突出高さの比は、1.1~2.0である、請求項1に記載のスタッドピン。
- 前記中心軸と直交する方向に沿った、前記凹部の凹み深さが最大となる最大深さ位置と前記中心軸との距離Bに対する、前記第1の凸部の前記突出高さが最大となる最大高さ位置と前記中心軸との距離Aの比A/Bは、1.3~2.0である、請求項1又は2に記載のスタッドピン。
- 前記第1の凸部は、
前記胴体部の前記先端部側の端に、前記突出高さが最大となる最大高さ位置を有し、
前記胴体部の外周側面上を当該最大高さ位置から前記底部側へ向かうに連れて前記中心軸に近づくよう前記一方向に対して傾斜した第1傾斜面を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のスタッドピン。 - 前記第2の凸部は、
前記胴体部の前記底部側の端に、前記突出高さが最大となる最大高さ位置を有し、
前記胴体部の外周側面上を当該最大高さ位置から前記先端部側へ向かうに連れて前記中心軸に近づくよう前記一方向に対して傾斜した第2傾斜面を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のスタッドピン。 - トレッド部にスタッドピン取付用孔を有する空気入りタイヤと、請求項1から5のいずれか一項に記載のスタッドピンと、を備えることを特徴とするスタッドタイヤ。
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