JP5843734B2 - 光電変換素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換素子およびその製造方法に係り、特に、結晶シリコン基板の一方の面にp型非晶質シリコン層を配置し、他方の面にn型非晶質シリコン層を配置したヘテロ接合型の光電変換素子およびその製造方法に関する。
近年、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板などの結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン系光電変換素子(以下、単に光電変換素子と呼ぶ場合がある)の開発が盛んに行われている。特に、単結晶シリコン基板を用いた光電変換素子は、光電変換効率が優れており、シリコンウェハの低価格化に伴って普及が進展している。設置面積の限られた都市部の住宅用途などでは、さらなる光電変換効率の改善が求められている。
ヘテロ接合型の光電変換素子は、結晶シリコン基板と非晶質シリコン薄膜を組み合わせたもので、不純物拡散を用いた拡散型の光電変換素子など、一般的な結晶シリコン系光電変換素子に比べて開放電圧が高く、高い光電変換効率を有している。結晶シリコン基板上に非晶質シリコン薄膜を形成したことから、ハイブリッド型とも呼ばれる技術である。具体的な構成としては、n型の単結晶シリコン基板の表裏両面にi型非晶質シリコン層が形成され、その上に正極側となるp型非晶質シリコン層、第1の電極(表面電極および集電電極)、負極側となるn型非晶質シリコン層、第2の電極(裏面電極および集電電極)が形成された、光電変換素子が開示されている。
一般に、第1の電極と第2の電極によって光電変換を行うための半導体層を挟持する構造を有する光電変換素子では、半導体層により多くの光を吸収させるため、半導体層の両面に形成される電極には透明電極材料を使用する。光電変換素子の受光面側に形成される電極は透明でなければならないのは当然であるが、裏面側に形成される電極に関しても透明材料が使用され、透明材料からなる電極を介して集電電極が形成される。これは、金属を主な材料とする集電電極の金属成分が半導体層へ拡散するのを防ぐため、また、半導体層で吸収されずに通過してきた光を、半導体層へ効率よく閉じ込めるためである。
そこで、透明電極形成時に酸素を添加し、キャリア濃度を低くすることが提案されている。
しかしながら、上記従来の技術によれば、透明導電膜形成時に酸素を添加することになる。このため、透明導電膜形成の初期に、半導体層が酸素に曝され、表面に酸化半導体層が形成されることになる。半導体層、特にn型半導体層と透明導電膜との接触抵抗は、透明導電膜と半導体層のイオン化ポテンシャルの関係で決まるが、酸化半導体層が介在する場合、接触抵抗が大きくなってしまい、光電変換素子特性の曲線因子を悪化させてしまう。
また、接触抵抗と光透過率とを両立する構成として、受光面側の一部領域において、透明導電膜に酸素を添加する構成が提案されている(特許文献1)。
また、酸素を添加する代わりに、窒素を添加する方法も開示されている(例えば特許文献2)。窒素を透明導電膜形成時に添加することで、透明導電膜と半導体層との密着強度が増加し、また透明導電膜中のキャリア濃度が低下する。このため、透明導電膜の光吸収が低下することで、半導体層へより多くの光が取り込まれ、光電変換素子の特性が向上する。
ところで、裏面側に形成される透明導電膜は太陽電池の構造上、横方向への導電性が必要なく、また紫外から可視光の波長の光は、先に光が通過する半導体層で大部分が吸収されてしまう。そのため、受光面側に比べ、導電性は低くてもよいが、さらに光吸収量を低くし、半導体層での光閉じ込めを強化するのが望ましい。
特開2004−214442号公報 特許第2984430号公報
しかしながら、特許文献2の技術を裏面側の透明導電膜に適用しようとしても、透明導電膜への窒素添加により、透明導電膜の仕事関数が増加する。このため、半導体層の特にn型半導体層とのコンタクトが悪化し、接触抵抗が悪化してしまうという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、裏面側の透光性導電膜と半導体層との接触抵抗を増加させること無く光吸収量を減少させ、電流密度を増加させた光電変換素子を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、n型の結晶系半導体基板と、結晶系半導体基板の第1の面にされたp型半導体層と、結晶系半導体基板の第2の面にされたn型半導体層と、p型半導体層上にされた第1の電極と、n型半導体層上にされた第2の電極とを備えた光起電力素子を構成する。ここで、第1及び第2の電極はいずれも透光性導電膜と透光性導電膜上に配された集電電極とを具備しており、第2の電極の前記透光性導電膜は窒素原子を含有する酸化物からなり、酸化物中において窒素原子の含有量がn型半導体層側から集電電極にかけて増大するように分布している。
本発明によれば、結晶系半導体基板の裏面側である第2の面の透光性導電膜とn型半導体層との接触抵抗を増加させること無く、透光性導電膜への光吸収量を減少させ、光電変換素子の電流密度を増加させることができる。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる光電変換素子の構造を示す断面図である。 図2−1は、本発明の実施の形態1にかかる光電変換素子の製造工程を示す断面図である。 図2−2は、本発明の実施の形態1にかかる光電変換素子の製造工程を示す断面図である。 図2−3は、本発明の実施の形態1にかかる光電変換素子の製造工程を示す断面図である。 図2−4は、本発明の実施の形態1にかかる光電変換素子の製造工程を示す断面図である。 図3は、本発明の実施の形態1にかかる光電変換素子の製造工程を示すフローチャートである。 図4は、本発明の実施例1の透光性導電膜における窒素/アルゴン比と規格化特性の関係を示す図である。 図5は、本発明の実施例1の透光性導電膜表面からの深さと、透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比との関係を示す図である。 図6は、本発明の比較例2−1,2−2及び2−3にかかる光電変換素子の構造を示す断面図である。 図7は、本発明の実施例2、比較例2−1,2−2及び2−3の透光性導電膜及び第2の透光性導電膜表面からの深さと、透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比との関係を示す図である。 図8は、本発明の温度サイクル試験後の実施例2、比較例2−1,2−2及び2−3の透光性導電膜及び第2の透光性導電膜表面からの深さと、透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比との関係を示す図である。
以下に、本発明にかかる光電変換素子およびその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる光電変換素子の構造を示す断面図である。本実施の形態では、基板の表面にテクスチャと呼ばれる凹凸構造が形成されたn型の単結晶シリコン基板1に対し、受光面側である第1の面1Aには非晶質シリコン層2、および第1の電極4が順次積層されており、裏面側である第2の面1Bには非晶質シリコン層3、第2の電極5が順次積層されている。ここで第1の電極4は、透光性導電膜4t、及びグリッド状の集電電極4mが順次積層され、第2の電極5は、透光性導電膜5t、及び集電電極5mが順次積層されて、形成されている。第1の面1A側の非晶質シリコン層2はi型非晶質シリコン層2i及びp型非晶質シリコン層2pからなり、第2の面1B側の非晶質シリコン層3はi型非晶質シリコン層3i及びn型非晶質シリコン層3nからなる。光電変換されるべき光は、p型非晶質シリコン層2p及びi型非晶質シリコン層2iが形成された第1の面1A側から入射される。そして、第2の電極4の透光性導電膜4tは窒素原子を含有する酸化物からなり、酸化物中において窒素原子の含有量がn型半導体層3n側から集電電極5mにかけて次第に多くなるように分布していることを特徴とする。
上記構成によれば、第2の面1B側の透光性導電膜5tとn型非晶質シリコン層3nとの接触抵抗を増加させること無く、光吸収量を減少させ電流密度を増加させる光電変換素子を得ることができる。さらに、第2の面1B側透光性導電膜5t内の窒素原子の濃度がなだらかに連続的に変化することで、経時的な拡散による特性変化を最小限に抑えることができる。
以下、本発明の実施の形態1の光電変換素子の製造工程を説明する。図2−1〜図2−4はこの光電変換素子の製造工程図であり、図3は同光電変換素子の製造工程を示すフローチャートである。
ここで、基板としては、n型の単結晶シリコン基板1を用いるが、通常、引き上げにより得られたインゴットをスライスすることにより切り出されたものであるため、表面に自然酸化膜、および構造的欠陥、金属等による汚染をはらんでいる。このため、ここで用いられるn型の単結晶シリコン基板1に対して洗浄および、ダメージ層エッチングを行う(S1001)。
n型の単結晶シリコン基板1に対し、洗浄、ダメージ層エッチングを行った後、n型の単結晶シリコン基板1内の不純物を除去するためにゲッタリングを行う(S1002)。ゲッタリング工程では、処理温度1000℃程度のリンの熱拡散により形成されたリンガラス層に不純物を偏析させ、リンガラス層をフッ化水素等でエッチングする。
ゲッタリング後、基板表面での光反射損失を低減させる目的でアルカリ溶液および添加剤を用いたウェットエッチングにより、テクスチャを形成する(S1003)。アルカリ溶液には水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を、添加剤にはイソプロピルアルコール等を用いる。なお、図1,2−1〜2−4では、本実施の形態の構成の理解を容易にするため凹凸形状は描画せず、平坦とした。
テクスチャ形成後、ヘテロ接合界面となるn型の単結晶シリコン基板1表面のパーティクル、有機物汚染、金属汚染を除去するために基板洗浄を実施する(S1004)。洗浄には、いわゆるRCA洗浄、SPM洗浄(硫酸過酸化水素水洗浄)、HPM洗浄(塩酸過酸化水素水洗浄)、DHF洗浄(希弗酸洗浄)、アルコール洗浄等を用いる。
ここでRCA洗浄とは、まずn型の単結晶シリコン基板1を希フッ酸水溶液(HF)の中に入れ、表面の薄いシリコン酸化膜を溶出する。このときシリコン酸化膜が溶出すると同時に、その上に付着していた多くの異物も同時に取り去られる。さらに、アンモニア(NH4OH)+過酸化水素(H22)で、有機物、パーティクルなどを除去する。次いで塩酸(HC1)+過酸化水素(H22)で金属類を除去し、最後に超純水で仕上げを行う方法である。
上記のいずれかの洗浄方法を用いて、基板洗浄を行った後、ヘテロ接合、および、pn、nn+接合を形成するために、n型の単結晶シリコン基板1上に、順次各導電型の半導体層を形成する。上記テクスチャ形成工程、洗浄工程を経て得られたn型の単結晶シリコン基板1は、厚さ100〜500μmであった。
まず、図2−1に示すように、n型の単結晶シリコン基板1の第1主面1Aに、プラズマCVD法を用いて約1〜10nmの厚さのi型非晶質シリコン層2i、および約5〜50nmの厚さのp型非晶質シリコン層2pをこの順に堆積する(S1005:i型非晶質シリコン層形成,S1006:p型非晶質シリコン層形成)。i型非晶質シリコン層2iの成膜に際しては、真空チャンバ内にSiH(シラン)ガス及びH(水素)ガスを導入して形成する。また、p型非晶質シリコン層2pの成膜に際しては、真空チャンバ内にSiHガス、Hガス及びB(ジボラン)ガスを導入して形成する。ここで、i型非晶質シリコン層2i、p型非晶質シリコン層2pはそれぞれ非晶質を用いているが、微結晶シリコンを用いてもよい。ここでi型非晶質シリコン層2iは、n型の単結晶シリコン基板1のパッシベーション作用を有する他、その上に形成されるp型非晶質シリコン層2pとn型の単結晶シリコン基板1との間でドーパントが相互に混入することを防ぐものである。
続いて、図2−2に示すように、n型の単結晶シリコン基板1の第2の面1B側にプラズマCVD法を用いて約1〜10nmの厚さのi型非晶質シリコン層3i型非晶質シリコン層3i型非晶質シリコン層3i及び約5〜50nmの厚さのn型非晶質シリコン層3nをこの順に形成する(S10及び約5〜50nmの厚さのn型非晶質シリコン層3nをこの順に形成する(S10及び約5〜50nmの厚さのn型非晶質シリコン層3nをこの順に形成する(S10型非晶質シリコン層3i及び約5〜50nmの厚さのn型非晶質シリコン層3nをこの順に形成する(S1007:i型非晶質シリコン層形成,S1008:n型非晶質シリコン層形成)。i型非晶質シリコン層3iの成膜に際しては、真空チャンバ内にSiH(シラン)ガス及びH(水素)ガスを導入して形成する。また、n型非晶質シリコン層3nの成膜に際しては、真空チャンバ内にSiHガス、Hガス及びPH(ホスフィン)ガスを導入して形成する。また、i型非晶質シリコン層3i、n型非晶質シリコン層3nはそれぞれ非晶質を用いているが、微結晶シリコンを用いてもよい。なおp型非晶質シリコン層2pとn型非晶質シリコン層3nの形成順序は入れ替わっても良い。
次に、p型非晶質シリコン層2pの上に、図2−3に示すように、透光性導電膜4tを形成する(S1009:透光性導電膜形成)。透光性導電膜4tの形成方法は、スパッタリング、イオンプレーティング及び蒸着などを用いることができる。透光性導電膜4tはp型非晶質シリコン層2pに対して電気的に接続されるコンタクト電極層となる。
次に、図2−4に示すように、n型非晶質シリコン層3nの上に、透光性導電膜5tを形成する(S1010:透光性導電膜形成)。透光性導電膜5tはn型非晶質シリコン層3nに対して電気的に接続されるコンタクト電極層となる。透光性導電膜5tの形成方法は、同様にスパッタリング、イオンプレーティング及び蒸着などを用いることができるが、第2の面1B側の透光性導電膜5tの形成時には真空チャンバ内に窒素を導入する。導入方法は、透光性導電膜5tの形成開始から終了時にわたり、導入量が多くなるように窒素の流量を次第に増加させる。この方法により、n型非晶質シリコン層3nの表面を酸化させることなく、透光性導電膜5tのキャリア濃度を減少させることができる。
次に、透光性導電膜4t、透光性導電膜5tにそれぞれグリッド状の集電電極4m、集電電極5mを形成する。グリッド状の集電電極4mと、集電電極5mを形成する(S1011:集電電極形成)ことで、図1に示した、ヘテロ接合型の光電変換素子(太陽電池セル)が完成する。
なお、前記実施の形態では、i型非晶質シリコン層2i及びi型非晶質シリコン層3iの形成には、プラズマCVD法を用いたがCatCVD法等、他の方法を用いてもよい。CatCVD法は、プラズマCVD法に比べてプラズマダメージが小さいという点では有効である。i型非晶質シリコン層2i及びi型非晶質シリコン層3i形成前に、n型の単結晶シリコン基板1上に形成されている自然酸化膜をフッ酸系溶液で除去するのが望ましい。
透光性導電膜4t、5tの材料としては、In(酸化インジウム)、SnO(酸化錫)、ZnO(酸化亜鉛)及びTiO(酸化チタン)等の金属酸化物が望ましい。これらの酸化物は、n型半導体の性質を有している。Inは、光透過率が高く、抵抗率が低い点で有利である。またSnOは、イオンかポテンシャルが低いためn型半導体層との接合抵抗を下げ易い。さらにまたZnO及びTiOは、低コストである。
また、透光性導電膜4t、5tの材料としては、導電性を高めるため、上記金属酸化物にドーパントを含有させたものを用いても良い。ドーパントの種類としては、InにはSn、Ti、Zn、Zr、Hf及びW、SnOにはIn、Ti、Sb及びF、ZnOにはAl、Ga、In、Ti、B及びF、TiOにはNb、Ta及びWが望ましい。
透光性導電膜4tの形成方法としては、プラズマCVDなどの化学的気相法及びスパッタ、イオンプレーティングなどの物理的気相法などがあるが、大量生産においてはスパッタリング、イオンプレーティング及び蒸着が望ましい。また、透光性導電膜4tを形成する前に、フッ酸系溶液などでp型非晶質シリコン層3pの表面に形成されている自然酸化膜を除去することが望ましい。
透光性導電膜5tの材料としては、透光性導電膜4tと同様の材料が望ましい。透光性導電膜5tの形成方法としては、プラズマCVDなどの化学的気相法及びスパッタ、イオンプレーティングなどの物理的気相法などがあるが、大量生産においてはスパッタリング、イオンプレーティング及び蒸着が望ましい。さらに、透光性導電膜5tの形成時に窒素を添加する。このとき、窒素原子がn型非晶質シリコン層3n側から集電電極5mにかけて多く含有されるように分布させる。この構成により、第2の面1B側の透光性導電膜と半導体層との接触抵抗を増加させること無く、透光性導電膜への光吸収量を減少させ光電変換素子の電流密度を増加させることができる。
具体的には、透光性導電膜5t形成開始時の製膜雰囲気では窒素を添加せず、製膜を開始してから窒素導入量を増加させる。製膜雰囲気に窒素を導入すると、窒素原子が透光性導電膜5tに取り込まれる。窒素原子が透光性導電膜に取り込まれると、酸素欠損によるキャリア電子がトラップされ、結果的にキャリア濃度が低下する。この形成方法によって、n型非晶質シリコン層3nの表面を酸化させることなく、透光性導電膜5tのキャリア濃度を減少させることができる。
また、透光性導電膜5tを形成する前に、フッ酸系溶液などでp型非晶質シリコン層2pの表面に形成されている自然酸化膜を除去することが望ましい。
さらに、透光性導電膜5t内の窒素原子が連続的に変化することで、経時的な拡散による特性変化を最小限に抑えることができる。窒素添加しない透光性導電膜と窒素添加する透光性導電膜の2層構造とした場合、光電変換素子特性における初期特性は、実施の形態1の構造に比べて変換効率が上回る場合がある。ただし、光電変換素子は数十年と屋外の環境に曝される。実際に、ダンプヒート等を行って、耐環境性実験を行った後は実施の形態1の構造の方が、変換効率が高くなる。
非晶質シリコンと透光性導電膜との接合抵抗の原理は、次のように説明される。In、ZnOなどの酸化物導電体は縮退半導体であり、キャリアのエネルギー状態は金属と実質的に同様と考えられる。そのため、非晶質シリコンとの接合は、金属との接合と同様に解釈することができる。
すなわち、透光性導電膜を構成する酸化物導電体の仕事関数がn型シリコンの仕事関数より大きいと、ショットキー障壁が生じてしまうのに対して、酸化物導電体の仕事関数がn型シリコンの仕事関数より小さいと、オーミック接合となる。透光性導電膜5tとn型非晶質シリコン層3nの接合界面に窒素が含まれてしまうと、透光性導電膜5tの仕事関数が増加し、ショットキー障壁が生じてしまう。このため、透光性導電膜5tの形成初期は窒素を添加しないで製膜を開始し徐々に窒素添加することで、接触抵抗の増加を防ぎつつ、透光性導電膜5tのキャリア濃度を低減させることができる。
したがって上記構成によれば、第2の面1B側透光性導電膜とn型半導体層との接触抵抗を増加させること無く、徐々に窒素の添加量を増大することで、窒素を添加しないものに比べ、光透過性の良好な透光性導電膜を得ることができる。従って、透光性導電膜への光吸収量を減少させ、光電変換素子の電流密度を増加させることができる。
グリッド状の集電電極4mは、透光性導電膜5tの直上に、スパッタリング蒸着、電子ビーム蒸着、スクリーン印刷等の方法を用いて形成する。透光性導電膜5tは集電電極としての機能も有しているため、必ずしも透光性導電膜5tの全面にグリッド状の集電電極4mを形成しなくても良い。この集電電極を構成する金属材料としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)などが望ましい。
集電電極5mは、透光性導電膜5tの直上に、スパッタリング蒸着、電子ビーム蒸着、スクリーン印刷等の方法を用いて形成する。透光性導電膜5tは集電電極としての機能も有しているため、必ずしも透光性導電膜5tの全面に集電電極5mを形成しなくても良く、例えば部分的に形成したり、グリッド状にしてもよい。集電電極5mを構成する金属材料としては、受光面側の集電電極と同様、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)などが適用可能である。
この場合、光電変換素子の第1の面1Aから入射した光が第2の面1B側まで到達した場合に集電電極5mが無いと、反射光を利用できない。そのため、集電電極5mを部分的に形成した光電変換素子の場合には、完成後、モジュール化する際に、第2の面1B側に白色板などの反射部材を設置することが望ましい。
本実施の形態の光電変換素子によれば、n型非晶質シリコン層3nと透光性導電膜5tとの接合界面での抵抗が小さいため、光電変換素子の直列抵抗が低下し曲線因子が増加する。さらに、キャリア濃度が低減しているため、光電変換素子への光吸収量が増加し、電流密度が増加する。その結果、光電変換素子の光電変換効率が向上する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1.
この実施例1では実施の形態1の方法で光電変換素子を作製し、特性を評価した。本発明の実施例1にかかる光電変換素子の構造は図1に示した断面図のとおりである。n型の単結晶シリコン基板1には、結晶方位は(100)で、寸法が10cm×10cm×t200μmの正方形ウエハを用いた。作製プロセスは、次の通りである。
まずNaOH水溶液にて、基板表面にピラミッド状のテクスチャ構造を形成した。基板洗浄後、n型の単結晶シリコン基板1の第1の面1A側にi型非晶質シリコン層2i、p型非晶質シリコン層2pをCVD法にて順次形成し、第2の面1B側にi型非晶質シリコン層3i、n型非晶質シリコン層3nをCVD法にて順次形成した。表1は、上記の形成膜の製膜条件で、製膜チャンバ内に導入するガスの組成と、圧力、投入電力の一覧である。
Figure 0005843734
次に、第1の面1A側に酸化インジウムの透光性導電膜4tをRFスパッタリングにて形成した。形成条件を表2に示す。
Figure 0005843734
次に、第2の面1B側に酸化インジウムの透光性導電膜5tをRFスパッタリングにて形成した。形成条件を表3に示す。透光性導電膜5tの窒素添加量による光電変換素子の特性比較のため、比較例1−1、実施例1−1、1−2、1−3及び1−4を示す。アルゴンと窒素の濃度変化方法は線形であり、形成開始から終了までの時間において、一定量で増減させる。実施例1−1では窒素濃度を最初は0とし、最後に2%となるように徐々に増大している。実施例1−2では窒素濃度を最初は0とし、最後に5%となるように徐々に増大している。実施例1−3では窒素濃度を最初は0とし、最後に10%となるように徐々に増大している。実施例1−4では窒素濃度を最初は0とし、最後に30%となるように徐々に増大している。また比較例1−1では窒素は添加せず、成膜時全体にわたりAr濃度を100%としたものである。他の条件については変化なしとした。
Figure 0005843734
図4は、実施例1の透光性導電膜5tにおける窒素/アルゴン比と規格化特性の関係を示すグラフである。測定は、光電変換素子(太陽電池セル)をソーラーシミュレーターに投入して実施した。規格化特性とあるのは、比較例1−1として、窒素を添加せずに作製した光電変換素子の特性を測定し、これを窒素/アルゴン比0%として表したものである。比較例1−1の製造プロセスは、窒素を添加しない以外は、実施例1−1と同一とした。Jscは規格化短絡電流密度、FFは規格化曲線因子、EFFは規格化変換効率を示す。図4に示すとおり、窒素導入量を大きくするにつれて、曲線因子FFが低下している。これは、膜中に窒素が多く含まれるほど、窒素濃度が低いn型非晶質シリコン層3n側に多く拡散し、透光性導電膜5t界面の仕事関数が上昇し、コンタクト抵抗が上昇した結果であると考えられる。
図5に、透光性導電膜5t表面からの深さと、透光性導電膜5t中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比との関係を示す。N102は実施例1−2における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。N104は実施例1−4における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。透光性導電膜5t及びn型非晶質シリコン層3nに含まれる窒素原子及びインジウム原子の測定は、二次イオン質量分析計(SIMS)を使用した。図5に示すとおり、窒素添加量を30%まで増加させることで、n型非晶質シリコン層近傍まで窒素が拡散しているのが確認された。
また図4に示すとおり、窒素導入量を大きくするにつれて、規格化短絡電流密度Jscが増加している。これは、透光性導電膜5t内のキャリア濃度が低下して光吸収率が低減した結果であると考えられる。光電変換素子の変換効率は開放電圧、規格化短絡電流密度及び曲線因子の積で決定するため、光電変換素子の開放電圧が一定の場合、規格化短絡電流密度Jscと曲線因子FFの積で決定される。図4に示すとおり窒素導入量が5%以下の実施例1−1及び実施例1−2において、透光性導電膜への窒素添加による特性改善がみられた。また、図5において、N104では光電変換素子のFF低下量が大きく効率が比較例より低下しているが、N102では光電変換素子のFFが低下しているのに対し、Jsc増加量のほうが大きく、結果として効率が改善している。N104の酸化インジウム(In23)/非晶質シリコン(a-Si)(n)界面のIn23に対する窒素の割合は0.01%となっている。このことから、透光性導電膜5tとn型非晶質シリコン層3nとの界面でのインジウム原子に対する窒素原子の濃度比は、0.01%未満であることが望ましい。
実施例2.
この実施例2では実施の形態1の方法で光電変換素子を作製し、特性を評価した。作製プロセスは実施例1と同様である。比較例として、n型の単結晶シリコン基板1の第2の面1B側に形成される透光性導電膜5tを2層にした光電変換素子を作製した。実施例2の透光性導電膜5tの形成条件を表4に示す。また、比較例2−1,2−2及び2−3の形成条件を表5に示す。比較例は何れも図6に示すように、透光性導電膜5tを2層にし、n型非晶質シリコン層3nの直上に1層目の第1の透光性導電膜51t、2層目の第2の透光性導電膜52tの順に形成する。透光性導電膜51t及び透光性導電膜52tの膜厚のみを変更している。透光性導電膜51t及び透光性導電膜52tの形成条件を表6に示す。透光性導電膜51t及び透光性導電膜52tは形成中にアルゴン及び窒素の濃度を変化させない。2層目の透光性導電膜52tのみで窒素濃度を5%としている。
Figure 0005843734
Figure 0005843734
Figure 0005843734
表7は、実施例2、比較例2−1,2−2及び2−3の規格化特性を示す表である。測定は実施例1と同じく光電変換素子(太陽電池セル)をソーラーシミュレーターに投入して実施した。実施例2の規格化特性を1とした。表7に示すとおり、実施例2に比べ比較例2−2及び2−3において規格化電流密度が上回っており、結果的に規格化効率Effが向上している。
Figure 0005843734
図7に第1の透光性導電膜51tまたは第2の透光性導電膜52t表面からの深さと、透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比との関係を示す。N200は実施例2における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。N201は比較例2−1における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。N202は、比較例2−2における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。N203は比較例2−3における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。透光性導電膜及びn型非晶質シリコン層3nに含まれる窒素原子及びインジウム原子の測定は、二次イオン質量分析計(SIMS)を使用した。図7に示すとおり、実施例2は窒素濃度が透光性導電膜の深さ方向に対して徐々に減少している。これに対し、比較例は第2の透光性導電膜52t中における窒素濃度は深さ方向に一定であるが、第1の透光性導電膜51tに切り替わった後は、急激に減少している。このためn型非晶質シリコン層3nとの界面においては、窒素濃度が0.01となっており、実施例1−4で見られたような、規格化曲線因子FFの低下は起こっていない。
次に、実施例2、比較例2−1,2−2及び2−3の光電変換素子を劣化させて評価を行った。劣化させる方法は温度サイクル試験とした。温度サイクル試験炉の中を−40℃と90℃を1時間ずつ交互に行った。その他の条件はJIS C8917−1998「結晶系太陽電池モジュールの環境試験方法及び耐久試験方法 温度サイクル試験A−1」と同じとした。
表8は、実施例2、比較例2−1,2−2及び2−3の規格化特性を示す表である。実施例2の規格化特性を1とした。表8に示すとおり、温度サイクル試験を行った後は、実施例2が比較例2−1,2−2及び2−3に比べて規格化変換効率が上回っている。
Figure 0005843734
図8に温度サイクル試験後の第1の透光性導電膜51tまたは第2の透光性導電膜52t表面からの深さと、透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比との関係を示す。N200Dは実施例2における温度サイクル試験後の透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。N201Dは比較例2−1における温度サイクル試験後の透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。N202Dは比較例2−2における温度サイクル試験後の透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。N203Dは比較例2−3における温度サイクル試験後の透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線である。
図8に示すとおり、温度サイクル試験後の窒素原子は、窒素原子濃度の薄いn型非晶質シリコン層3nの方へ拡散している。ただし実施例2に比べ、比較例2−1,2−2及び2−3の方がより多くの窒素原子が拡散しており、n型非晶質シリコン層3nとの界面では、窒素原子濃度が高くなっている。以上より、耐環境性における観点で実施例2は比較例2−1,2−2及び2−3に比べて、高い特性を有する。
以上説明してきたように、窒素添加しない透光性導電膜と窒素添加する透光性導電膜の2層構造とした場合、光電変換素子特性における初期特性は、実施の形態1の構造に比べて変換効率が上回る場合がある。ただし、光電変換素子は数十年と屋外の環境に曝されるため、透光性導電膜中で、集電電極方向に向けて窒素濃度が連続的に増大するように形成することで、長期に安定して、高い変換効率を維持することができる。
裏面側に配される透光性導電膜としては、集電電極方向に向けて窒素濃度が連続的に増大するように形成するのが望ましいが、ステップ状に増大するなど、窒素濃度のプロファイルは適宜変更可能である。
なお、結晶系半導体基板としては、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板などの結晶シリコン基板の他、透光性導電膜を用いる構成の光電変換素子に用いるものであれば、シリコンカーバイド基板などのシリコン化合物基板をはじめとする結晶シリコン系基板などにも適用可能である。真性または各導電型の非晶質シリコン層についても、透光性導電膜を用いる構成の光電変換素子であれば、微結晶シリコン系薄膜、多結晶シリコン系薄膜などの結晶系薄膜にも適用可能である。
以上のように、本発明にかかる光電変換素子およびその製造方法は、裏面側の透光性導電膜と半導体層との接触抵抗を増加させること無く、光吸収量を減少させ電流密度を増加させ、変換効率の増大に有用であり、特に、結晶系半導体基板を用いたヘテロ接合型の光電変換素子に適している。
1 単結晶シリコン基板、2i i型非晶質シリコン層、2p p型非晶質シリコン層、3i i型非晶質シリコン層、3n n型非晶質シリコン層、4t 透光性導電膜、4m 集電電極、5t 透光性導電膜、51t 第1の透光性導電膜、52t 第2の透光性導電膜、5m 集電電極、Jsc 規格化短絡電流密度、FF 規格化曲線因子、EFF 規格化変換効率、N102 実施例1−2における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N104 実施例1−4における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N200 実施例2における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N201 比較例2−1における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N202 比較例2−2における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N203 比較例2−3における透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N200D 実施例2における温度サイクル試験後の透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N201D 比較例2−1における温度サイクル試験後の透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N202D 比較例2−2における温度サイクル試験後の透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線、N203D 比較例2−3における温度サイクル試験後の透光性導電膜中の窒素原子のインジウム原子に対する濃度比を示す曲線。

Claims (6)

  1. n型の結晶系半導体基板と、
    前記結晶系半導体基板の第1の面にされたp型半導体層と、
    前記結晶系半導体基板の第2の面にされたn型半導体層と、
    前記p型半導体層上にされた第1の電極と、
    前記n型半導体層上にされた第2の電極とを備え、
    前記第1及び第2の電極はいずれも透光性導電膜と前記透光性導電膜上に配された集電電極とを具備しており、
    前記第2の電極の前記透光性導電膜は、窒素原子を含有する酸化物からなり、
    前記酸化物中において前記窒素原子の含有量が前記n型半導体層側から集電電極にかけて増大するように分布していることを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記窒素原子は、前記酸化物中において前記n型半導体層側から集電電極にかけて次第に濃度が高くなるようになだらかに分布していることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
  3. 前記第2の電極の前記窒素原子を含有する酸化物が、窒素原子を含有する酸化インジウムであることを特徴とする請求項1または2記載の光電変換素子。
  4. 前記第2の電極の前記窒素原子を含有する酸化物が酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタンのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2記載の光電変換素子。
  5. n型の結晶系半導体基板の第1の面にp型半導体層を形成する工程と、
    前記結晶系半導体基板の第2の面にn型半導体層を形成する工程と、
    前記p型半導体層上に第1の電極を形成する工程と、
    前記n型半導体層上に第2の電極を形成する工程とを備えた光電変換素子の製造方法であって
    前記第2の電極を形成する工程は、前記n型半導体層上に透光性導電膜を形成する工程と、前記透光性導電膜上に集電電極を形成する工程とを含み、
    前記透光性導電膜を形成する工程は、次第に窒素ガスの供給量を増大させながら、透光性の導電性酸化膜を成膜する工程であることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
  6. 前記透光性導電膜を形成する工程は、形成開始時の製膜雰囲気では窒素を添加せず、製膜を開始後に、窒素を導入して、窒素導入量を増加させ、透光性の導電性酸化膜を成膜する工程であることを特徴とする請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。
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