JP5837340B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は樹脂組成物に関し、更に詳しくは、機械的強度に優れ、高温下でも使用可能で、寸法安定性や樹脂の流動性付与に優れた樹脂組成物に関する。
今日、自動車部品、電気や電子部品等のさまざまな分野で、金属に比べて軽量であることと、摩擦・磨耗特性、耐衝撃性などの強度特性や寸法安定性、電気特性、耐熱・低温性、耐薬品性などが良好であることから、所謂エンジニアリングプラスチックが広く使用されている。
例えば、自動車のラジエタータンク、ファン、ギア、アウターハンドル、電気や電子部品のコネクターやコイルボビン、各種スイッチ、スイッチカバー、CDやDVDなどのディスク類など、あらゆる分野のさまざまな用途に、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が使用されている。
近年、携帯電子機器の小型化や、製造時のハンダ付け工程の作業工数削減と工程時間短縮によるコスト削減を目的に、リフロー方式による表面実装技術(SMT)が提案され普及している。SMTは、基板上に実装された部品を基板ごと加熱してハンダ付けを行うため、基板、部品ともにリフロー時の温度に耐える必要がある。リフロー時の温度は、近年の環境問題からハンダの鉛フリー化が求められ、従来の鉛ハンダより融点が高い錫−銀アロイなどの材料へ変換が行われた結果、約260℃以上と高温になっている。
このような温度に耐えうる材料として、これまで使用されてきたエンジニアリングプラスチックの耐熱性や強度をより向上させたスーパーエンジニアリングプラスチックと称される非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)が挙げられ、更にPAのジカルボン酸部分をテレフタル酸に、ジアミン部分をヘキサメチレンジアミンやノナンジアミンにして耐熱性を向上させた変成ポリアミドであるナイロン6Tやナイロン9Tなどの半芳香族ポリアミド樹脂も提案され使用されている。
また、これらの樹脂の強度特性や寸法安定性、表面平滑性、成形加工時の樹脂の流動性などの各種物性の向上を目的として、繊維や平板状、針状もしくはウィスカー状、粒状の粒子が樹脂充填剤として添加されている。
樹脂充填剤には様々な種類の素材があり、繊維としてはガラス、炭素、アラミド、LCP、金属などが、平板状粒子ではマイカ、タルクなどが、針状もしくはウィスカー状粒子ではチタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ワラストナイト、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛などが、粒状粒子ではシリカ、シリカアルミナ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、アスベスト、ガラスビーズ、カーボンブラック、グラファイト、二硫化モリブデン、フェノール樹脂、架橋スチレン、架橋アクリル系樹脂などがあり、用途や目的、使用する樹脂に応じて適宜選択して使用されている。これらは、必要に応じて表面処理が施される。
例えば特許文献1、2では、LCPにホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化チタンウィスカーなどの針状又はウィスカー状粒子を樹脂充填剤として含有させ、LCPの問題点であるウェルド部の強度改善を行っている。
また、例えば特許文献3では、ポリフェニレンサルファイドに扁平な断面形状を有するガラス繊維を充填して、寸法安定性の優れた樹脂組成物を提供している。
更に、例えば特許文献4では、テレフタル酸と1,9−ノナンジアミンからなる半芳香族ポリアミド樹脂に、針状又はウィスカー状粒子であるチタン酸カリウムウィスカーを充填し、成形品の摺動性、ミクロ的な補強性、寸法安定性、表面平滑性、成形加工性を向上させている。
特開平3−59067号公報 特開平3−281656公報 再公表特許WO2008/38512号公報 特開2000−191905公報
上記のように、樹脂成形品の強度、寸法安定性、表面平滑性、加工性の向上を目的とする樹脂充填剤として、繊維や針状又はウィスカー状粒子が用いられている。中でも、価格と入手しやすさの点でガラス繊維が、強度と寸法安定性の点でチタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化チタンウィスカーが使用されている。
しかしながら、これらの樹脂充填剤も様々な問題を有している。例えばガラス繊維は、ガラス繊維を数ミリ単位の長さで揃えたチョップドストランドや粉砕したミルドファイバー、その中間のカットファイバーがある。強度や寸法安定性、表面平滑性などにより高度な要求がされる用途には、長さの点から主としてミルドファイバーが用いられるが、それらは粉砕工程を経て製造されるために長さが30〜300μmと広い範囲で分布してしまい、樹脂に含有させた場合に寸法安定性や表面平滑性に劣るという問題がある。また、ガラス繊維を均一な長さで、例えば50μm程度に粉砕することは、現行の粉砕技術では困難である。更に、樹脂繊維は上述の問題に加えて一般に高価であり、本発明の用途に用いるには解決せねばならない課題が多い。
一方、チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカーなどの無機合成品は、ウィスカー状粒子の長径や短径などの形状を反応条件で調整することが可能であるため、長さの揃った粒子が得られるので好ましい。
しかしながら、ウィスカー状粒子が人体内に取り込まれた場合には発癌性の懸念があり、国際癌研究機関(IARC)の今後の検討報告を確認する必要があるなど、無条件での使用はできないという問題をはらんでいる。
ウィスカー状粒子の中でも、硫酸マグネシウムや炭酸カルシウムを成分とする粒子は、ヒトの体液に容易に溶解するので安全性の点で問題ない。また、それら自体が天然に産するものであるため、環境への負荷もかからない。
しかしながら、硫酸マグネシウムウィスカーは粒子自体の強度が乏しく、例えば樹脂の耐衝撃性強度を向上させるには大量に含有させる必要があり、その結果、引張強度や伸び等の他の物性低下を招く。
また、従来の炭酸カルシウムウィスカーは、スーパーエンジニアリングプラスチックなどの高耐熱性が要求される樹脂に使用されると、それらの樹脂との親和性が乏しいことから強力に結合せず、さらに260℃以上の温度条件下におかれると、粒子表面から付着水の揮発物や一酸化炭素、二酸化炭素等の離脱物を発生し、樹脂中で発泡の原因となるため好ましくなかった。
本発明は、かかる実情を鑑み、樹脂の充填剤として優れた性能を発揮するだけでなく、寸法安定性や樹脂の流動性付与に優れ、発泡などの問題を起こさず、安価で、人体に対しても安全な充填剤を含有してなる樹脂組成物を提供するものである。
本発明者は、上記の目的を達成せんとして鋭意検討の結果、特定量の燐を含み、特定のアスペクト比を有する針状炭酸カルシウム粒子からなる充填剤を含有する樹脂組成物が機械的強度、寸法安定性、表面平滑性、加工性、透明性、耐久性に優れていることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、下記の特徴を有する発明を包含する。
(1)炭酸カルシウムに対して0.01〜1.0重量%の燐を含有し、電子顕微鏡観察で観測されるアスペクト比が2〜50の針状炭酸カルシウム粒子からなる充填剤が半芳香族ポリアミド樹脂に含有されていることを特徴とする樹脂組成物。
(2)針状炭酸カルシウム粒子が長径4〜80μm、短径0.05〜4μmであることを特徴とする樹脂組成物。
(3)針状炭酸カルシウムが、脂肪酸、脂肪酸金属塩、界面活性剤、カップリング剤、シラン、多価アルコールからなるエステル、燐酸エステルから選択される少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されていることを特徴とする樹脂組成物。
(4)充填剤が15〜30重量%及び半芳香族ポリアミド樹脂が70〜85重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
本発明の樹脂組成物は、特定量の燐を含み、アスペクト比が2〜50の針状炭酸カルシウム粒子からなる充填剤が半芳香族ポリアミド樹脂や各種処理剤との親和性に優れ、製造時や使用中に誤って人体に取り込んだとしても安全で環境にも優しい該充填剤を含有してなり、機械的強度、寸法安定性、表面平滑性、加工性、透明性、耐久性に極めて良好で、また、発泡や着色の問題も生じない
本発明の樹脂組成物は、炭酸カルシウムに対して0.01〜1.0重量%の燐を含有し、電子顕微鏡観察で観測される粒子のアスペクト比が2〜50の針状炭酸カルシウム粒子からなる充填剤を半芳香族ポリアミド樹脂に含有してなることを特徴とする。
本発明において、針状炭酸カルシウムとは、ウィスカー状炭酸カルシウムや炭酸カルシウムウィスカーを含む。
本発明に使用される充填剤は、炭酸カルシウムに対して0.01〜1.0重量%の燐を含有することで、配合した樹脂との間に強力な親和性が生じて密着し、発泡、ボイド及び着色などの発生を抑制し、優れた機械的強度、寸法安定性、表面平滑性、加工性を付与することが可能である。
また、本発明に使用される充填剤は、針状炭酸カルシウム粒子のアスペクト比が2〜50の範囲内にあることによって、樹脂との親和性や処理剤との結合性が優れ、その結果、樹脂に優れた強度、寸法安定性、表面平滑性、加工性を付与することができる。
針状炭酸カルシウム粒子が含有する燐の量が、炭酸カルシウムに対して0.01重量%未満の場合、樹脂組成物中の針状炭酸カルシウムと樹脂との結合が十分でなく、樹脂と粒子と間にボイドが発生しやすくなり、機械的強度や耐熱性などが低下する。
一方、燐の量が、炭酸カルシウムに対して1.0重量%を超える場合、樹脂に含有され、例えば、260℃以上の高温で混練や成形加工する際に、樹脂中に水分に因る発泡が生じる。
なお、この水分に因る発泡は、針状炭酸カルシウム粒子表面の付着水の他、該粒子に含まれる燐酸や燐酸化合物の過剰分による未反応の水酸基が加熱により脱水縮合して発生したものと考えられる。
針状炭酸カルシウム粒子のアスペクト比が2未満の場合、配合した樹脂に所望の強度、寸法安定性、表面平滑性が付与できず、一方、アスペクト比が50を超えると、粒子のカサが高くなるため、樹脂に配合する際にハンドリングが悪化して加工性が低下する。好ましくは、長径が4〜80μm、短径が0.05〜4μmの針状炭酸カルシウム粒子であって、上記アスペクト比を満足する粒子である。
針状炭酸カルシウム粒子は、表面処理剤で表面処理されることにより、樹脂に使用する際、その混練、成形加工時に樹脂との親和性を向上させ、樹脂の強度、寸法安定性、表面平滑性、加工性を付与することが出来る場合がある。
このような表面処理剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩、界面活性剤、カップリング剤、シラン、多価アルコールからなるエステル、燐酸エステルが好適に用いられる。
脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸、ソルビン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭酸カルシウム粒子との反応性や、粒子の安定性、分散性、入手しやすさ、コストの点でステアリン酸とパルミチン酸の混合酸が好ましい。
脂肪酸の金属塩としては、例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸コバルト(II) 、ステアリン酸錫(IV) 、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸鉛(II) 等の飽和脂肪酸塩、オレイン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸コバルト(II) 、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムジエタノールアミン塩等の不飽和脂肪酸塩が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭酸カルシウム粒子との反応性や、粒子の安定性、分散性、入手しやすさ、コストの点でステアリン酸とパルミチン酸を主成分とする混合酸の金属塩(石鹸)が好ましい。
また、本発明の炭酸カルシウムの表面処理時または以前に、既述の脂肪酸にリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、鉛、コバルト、錫、アシル基を持つ化合物を混合・反応させて脂肪酸の金属塩を作成してもよい。
界面活性剤の例としては、ビニル基を有する単量体の重合物及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム、及びアミンによる部分もしくは完全中和物よりなるタイプで、例えば単量体としてα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β−モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、メタクリル酸アルキルエステル、アルコキシ基を有する(メタ)アクリルエーテル、シクロキシル基を有する(メタ)アクリレート、α,β−モノエチレン性不飽和ヒドロキシエステル、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルエステル、ビニル芳香族、不飽和ニトリル、不飽和ジカルボン酸エステル、ビニルエーテル、共役ジエン、鎖状オレフィン、環状オレフィン、スルホ基含有単量体等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
また、別のタイプの例としては、アルキルエーテル硫酸、アルキルエーテルリン酸、アルキルアリールエーテル硫酸、アルキルアリールエーテルリン酸、アルキル硫酸エステル、アルキルリン酸エステル、アルキルアリール硫酸、アルキルアリールリン酸、アルキルアミド硫酸エステル、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、N−アシルスルホン酸、N−アシルアミノ酸、アルキルエーテルカルボン酸、アシル化ペプチド、脂肪族アミン、脂肪族4級アミン、芳香族4級アンモニウム、ベタイン、イミダゾリン誘導体、アルキルエーテル、アルキルアリルエーテル、アルキルエステル、アルキルアミン、ソルビタン誘導体、多環フェニルエーテル、脂肪族エステル、フルオロアルキルカーボン酸、パーフルオロアルキルカーボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭酸カルシウム粒子の分散性と安定性、樹脂との親和性の向上、コストの点で、アルキルエーテル硫酸、アルキルアリールエーテル硫酸、アルキル硫酸エステル等の硫酸塩、硫酸エーテル、硫酸エステルが好ましい。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤の例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭酸化カルシウム粒子との結合と安定性、樹脂との親和性向上、コストの点で、ビニルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
チタネートカップリング剤の例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートなどを挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、樹脂と粒子との密着性、コストの点でイソプロピルトリイソステアロイルチタネートが好ましい。
アルミネートカップリング剤の例としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
ジルコネートカップリング剤の例としては、ジルコニウムジネオアルカノラトジ(3−メルカプト)プロピオナトが挙げられる。
シランとしては、クロロシラン、アルコキシシランが挙げられる。
クロロシランとしては、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシランが挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭酸カルシウム粒子との安定性の点で、メチルトリクロロシランやフェニルトリクロロシランが好ましい。
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭酸カルシウム粒子との安定性の点で、メチルトリメトキシシランやフェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
多価アルコールからなるエステルの例としては、ソルビトール、ソルビタン、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリストール、トリメチロールプロパン及びこれらのエチレンオキシド付加物又はプロピレンオキシド付加物等の多価アルコールに、炭素数が10〜22の脂肪酸、例えば、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸のエステルが挙げられる。
具体的には、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノオレート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンモノラウレート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノオレート、ポリグリセリンモノパルミテート、ポリグリセリンモノベヘネート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノベヘネート、ペンタエリストールモノステアレート、ペンタエリストールモノオレート、ペンタエリストールモノパルミテート、ペンタエリストールモノベヘネート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のモノエステル、ジグリセリンセスキステアレート等のセスキエステル(モノエステルとジエステルとがモル比1:1の割合で混合されたもの)、ジエステル、ポリエステル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、ソルビトールモノステアレートとソルビトールモノパルミテートが好ましい。
燐酸エステルの例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、ブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールジフェノールホスフェート、各種芳香族縮合燐酸エステル、2−クロロエチル、クロロプロピルホスフェート、ジクロロプロピルホスフェート、トリブロモネオペンチルホスフェート、含ハロゲン縮合燐酸、ビス−2−エチルヘキシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート、2−メタクリロイルオキシルエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、2−ブチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、モノイソデシルホスフェート、トリフェニルホスファイト、ジブチルハイドロジェンホスファイト、ジブチルハイドロジェンホスファイト、ジフェニルホスホロクロリデート、フェニルホスホロジクリデート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル燐酸、アルキル基が12〜15のポリオキシアルキルエーテル燐酸、同ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸、同ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル燐酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、トリメチルフォスヘートやニトリロトリス(メチレンホスホン酸)が好ましい。
表面処理剤の処理量は、本発明の充填剤が使用される樹脂の種類・用途によって適宜選択されるが、炭酸カルシウム粒子に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜8重量%である。表面処理剤の処理量が0.01重量%未満の場合、表面処理剤の効能が認められず、一方、表面処理量が10重量%を超えると、樹脂に含有させて成形体を作成した場合、樹脂の強度が著しく低下し、場合によっては成形体としての形状すら保てなくなる為、好ましくない。
表面処理は公知の乾式法で行われる。即ち、炭酸カルシウム粒子をヘンシェルミキサー等の混合機に投入し、十分な攪拌条件下で表面処理剤を液状、エマルジョン状、固形状で加え、加熱または非加熱下で混合して処理することができる。
本発明の充填剤が使用される樹脂は、成形品として使用されるものであればよいが、成形加工温度が260℃以上の樹脂に好適で、特に、耐熱性と強度が求められる樹脂に好適である。このような樹脂としては、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の5大汎用エンジニアリングプラスチックや、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、変成ポリアミドであるナイロン6Tやナイロン9T等の半芳香族ポリアミド樹脂などのエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックが例示される。これらは、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて使用される。これらの中でも、LCP、PPS、半芳香族ポリアミド樹脂といった、通常の樹脂よりも耐熱性を求められる樹脂に用いられた場合に、本発明の目的が一層効果的に達成される。特に、押出成形に供出される際に黒く着色されているLCPや樹脂自体が黒褐色のPPSよりも、色調への要求が高い半芳香族ポリアミドに適している。
半芳香族ポリアミドとは、テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位と、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位からなり、末端アミノ基含量が10〜60μ等量/gである。
半芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸単位において、テレフタル酸単位が50モル%未満の場合は、半芳香族ポリアミドとしての特徴である耐熱性を具備しないため好ましくない。
ただし、50モル%未満であれば、例えばマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸などから誘導されるジカルボン酸単位を含有することができる。
半芳香族ポリアミドを構成するジアミン単位において、炭素数6〜18の脂肪族ジアミン単位が60モル%未満の場合、得られた半芳香族ポリアミドとして靭性、摺動性、耐熱性、成形性、低吸水性、軽量性が劣るため好ましくない。
ジアミン単位としては、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの直鎖状脂肪族ジアミン、2−メチル−1,5−ペンタジアミン、3−メチル−1,5−ペンタジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族アミンから誘導される単位が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンから合成されるナイロン6T、テレフタル酸と1,9−ノナンジアミンから合成されるナイロン9Tが溶融温度などから作業性の点で好ましい。
本発明における充填剤を樹脂に含有させる方法については特に制限はなく、例えば上記の樹脂に用いられる各種安定剤や充填剤等を含有させる公知の方法が用いられる。具体的な方法として、リボンブレンダー、高速ミキサー、ニーダー、押し出し機等の公知の混合装置を使用して含有させる方法を挙げることができる。
本発明の充填剤は、使用する用途、目的、樹脂により、更には、工程の都合から、マスターバッチを経て樹脂へ含有させることもできる。充填剤の含有量は、樹脂組成物の用途、樹脂の種類等により必ずしも一定でないが、通常、樹脂70〜85重量%に対して15〜30重量%が好適である。
本発明の樹脂組成物は、本発明の効能を損なわない限り、上記成分以外に他の添加剤を含有することが出来る。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤、可塑剤、充填剤、難燃剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、上記以外の無機系あるいは有機系安定剤が挙げられる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
本発明において、炭酸カルシウム粒子や表面処理炭酸カルシウム粒子のアスペクト比は、3000倍の電子顕微鏡視野から無作為に各粒子を任意に100個選択し、それらの長径(最大径)と短径(最小径)を求め、長径を短径で除した値の平均値を求めた。
電子顕微鏡観測には(株)日立製作所製走査型電子顕微鏡(S−3000H Scanning Electron Microscope)を用いた。
また、炭酸カルシウムが含有する燐の量は、(株)島津製作所製ICP発光分析装置ICPE−9000で測定した。
参考例1(燐含有針状炭酸カルシウム粒子の製造)
石灰石を1400℃で5時間焼成して生石灰と炭酸ガスに分解し、130g/Lの濃度の消石灰スラリーになるように得られた生石灰を水に一度に加えて消石灰水スラリーを生成した。
この消石灰スラリー30Lに、スラリー中の水酸化カルシウムに対して4.0重量%のオルト燐酸(燐として約1.27%)を添加し、35℃に調整後、濃度30%(残りは空気)の炭酸ガスを10L/分の流速で吹き込んで消石灰を炭酸化し、長径2.7μm、短径0.4μmの針状炭酸カルシウム粒子からなる水スラリーを得た。
得られたアラゴナイト型針状炭酸カルシウムを濃度70g/Lに調整し、該スラリーを2L準備して70℃にした。
次に、水酸化カルシウムに対して3.0重量%のオルト燐酸(燐として0.95%)を添加した消石灰スラリー48Lを、攪拌下、水酸化カルシウム濃度30g/Lに調整後、0.1L/分の速度で滴下し、系内の温度70℃・pH11.5±0.3になるように濃度30%の炭酸ガスを導通して滴下終了後も炭酸化を行い、系内のpH7.0になった時点で反応を終了し、脱水、乾燥して炭酸カルシウムに対する燐の含有量0.91重量%、長径57μm、短径2.8μm、アスペクト比20.4の針状炭酸カルシウムからなる充填剤を得た。
参考例2(燐含有針状炭酸カルシウム粒子の製造)
参考例1のオルト燐酸の添加量を1/5にする以外は、参考例1と同じ方法で反応、脱水、乾燥を行い、炭酸カルシウムに対する燐の含有量0.17重量%、長径49μm、短径2.2μm、アスペクト比22.3の針状炭酸カルシウム粒子からなる充填剤を得た。
参考例3(針状炭酸カルシウム粒子の製造)
水酸化カルシウム濃度が191g/Lの石灰乳1000Lを5℃に保ち、それに炭酸ガスと窒素ガスの容量比が1:4の混合ガスを水酸化カルシウム1gに対して7ml/分で炭酸化率が5%になるまで吹き込んだ。
次に、この反応液の温度を7℃にし、炭酸−窒素混合ガスを反応液中の水酸化カルシウム1gに対して2ml/分に調節して反応液の炭酸化率が20%になるまで吹き込んだ。
次いで、この反応液の温度を45℃にし、炭酸−窒素混合ガスを反応液中の水酸化カルシウム1gに対して3ml/分に調節して反応が完結するまで吹き込み、長径3μm、短径0.3μmの針状形状をした針状炭酸カルシウムのスラリーを得た。
該スラリーと水酸化カルシウムを、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムのモル比が1:15になるように濃度調整して混合し、両者の混合後の濃度が150g/Lになるような水スラリーとした。
このスラリー温度を50℃に調整した後、100%の炭酸ガスをスラリーに対して反応液中の水酸化カルシウム1gに対して1ml/分に調節して反応が完結するまで吹き込み、脱水、乾燥して長径60μm、短径3μm、アスペクト比20.0の針状炭酸カルシウム粒子からなる充填剤を得た。
参考例4(表面処理燐含有針状炭酸カルシウム粒子の製造)
参考例1の針状炭酸カルシウム粒子をヘンシェルミキサーに仕込んで外部のジャケットを加熱しつつ攪拌、品温が85℃になった時点で炭酸カルシウム粒子に対して、ステアリン酸65%−パルミチン酸35%からなる混合酸1%をヘンシェルミキサーに投入し、品温が115℃になるまで加熱攪拌し、脂肪酸で処理した表面処理燐含有針状炭酸カルシウム粒子からなる充填剤を作成した。
実施例1
市販のナイロン9T(半香族ポリアミド樹脂PA─9T(株)クラレ製ジェネスタN1000A)を減圧下、120℃で24時間乾燥後、下記の配合で二酸化チタン(石原産業(株)製タイペークCR−63)、光安定剤(2−エチル−2−エトキシ−オキザルアニリド クラリアントジャパン(株)製ナイロスタブS−EED)とドライブレンドし、得られた混合物を二軸押出機(スクリュー径30mm,L/D=28,シリンダー温度320℃,回転数150rpm)でホッパーからフィードし、同時に下記に示す量の参考例1の充填剤をサイドフィーダーより添加して溶融混練し、ストランド状に押し出した後、ペレタイザにより切断してペレット状の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。
配合組成:
半芳香族ポリアミド樹脂 100重量部
二酸化チタン 15重量部
安定剤 0.5重量部
参考例1の充填剤 30重量部
得られた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を、以下に示す方法で試験片や試験板を成形し、更にそれを用いて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例2
参考例1の充填剤を、参考例2の充填剤に変更する以外は、実施例1と同様にして半芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。
得られた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を、以下に示す方法で試験片や試験板を成形し、更にそれを用いて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例3
参考例1の充填剤を、参考例4の充填剤に変更する以外は、実施例1と同様にして半芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。
得られた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を、以下に示す方法で試験片や試験板を成形し、更にそれを用いて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
比較例1
参考例1の充填剤を、参考例3の充填剤に変更する以外は、実施例1と同様にして半芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。
得られた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を、以下に示す方法で試験片や試験板を成形し、更にそれを用いて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
比較例2
参考例1の充填剤を、ガラス繊維(日東紡績製ガラス繊維ミルドファイバーPF E−301(フィラメント径10μm,シランカップリング処理))に変更する以外は、実施例1と同様にして半芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。
得られた半芳香族ポリアミド樹脂組成物を、以下に示す方法で試験片や試験板を成形し、更にそれを用いて各種評価を行った。その結果を表1に示す。
試験片の作成:
得られたペレット状半芳香族ポリアミド樹脂組成物を330℃で射出成形を行い、引張降伏強さ、および引張降伏伸び評価用の試験片(JIS1号ダンベル)、曲げ弾性率評価用の試験片を作成した。その結果を表2に示す。
<引張降伏強さ、引張降伏伸び>
作成した試験片を用いてJIS K7113に準じて精密万能試験機オートグラフ(島津製作所(株)製AG−1)を使用し、23℃における引張降伏強さと伸びを測定した。
<曲げ強さ、曲げ弾性率>
作成した試験片を用いてJIS K7171に準じて精密万能試験機オートグラフ(島津製作所(株)製AG−1)を使用し、23℃における曲げ強さと弾性率を測定した。
試験板の作成:
得られたペレット状半芳香族ポリアミド樹脂組成物を330℃で射出成形を行い、白色度と反射率、表面平滑性の測定、評価用の厚さ1mm、幅40mm、長さ100mmの試験板を作成した。
また、白色度と反射率については、作成した樹脂組成物をLEDチップといった封止剤として使用することを想定し、成形直後と170℃・2時間の加熱処理後に測定を行った。
<白色度>
作成した試験板を用い、ハンター式色差計(日本電飾工業(株)製Color meter ZE−2000)を使用して、JIS−Z8730に規定されるハンター式色差式明度(L値)、赤色度(a値)、黄色度(b値)を求め、以下の式に従ってハンター式白色度を算出した。
W=100−[ (100−L)2 +a2 +b2 ]1/2
ここで W:ハンター式白色度
L:L値
a:a値
b:b値
<反射率>
作成した試験板を用い、分光光度計(日立製作所(株)製U−3900)を使用し、470nmの波長における反射率を測定した。
<表面平滑性>
作成した試験板を用い、三次元測定機((株)ミツトヨ製CNC三次元測定機BRT−A504/MPK5000システム)で測定を行い、1cm2 あたりの5μm以上の突起の個数で下記の基準により判定した。
◎:0〜1個 ○:2〜5個 ×:6個以上
Figure 0005837340
実施例4〜6、比較例3,4
実施例1〜3、比較例1,2で使用した市販のナイロン9Tを市販のナイロン6T(半芳香族ポリアミド樹脂PA−6T:PA66=62.5:37.5 (株)三井化学製アーレンC3000)に変更する以外は、実施例1〜3,比較例1、2と同様にしてペレット状の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。
得られた半芳香族ポリアミド樹脂組成物について、上記と同じ方法で試験片や試験板を成形し、更にそれを用いて各種評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0005837340
叙上のとおり、本発明の樹脂組成物は、樹脂や各種処理剤との親和性に優れ、製造時や使用中に誤って人体に取り込んだとしても安全で環境にも優しい充填剤を含有してなり、機械的強度、寸法安定性、表面平滑性、加工性、透明性、耐久性に優れるとともに、発泡等の問題を生じない

Claims (4)

  1. 炭酸カルシウムに対して0.01〜1.0重量%の燐を含有し、電子顕微鏡観察で観測されるアスペクト比が2〜50の針状炭酸カルシウム粒子からなる充填剤が半芳香族ポリアミド樹脂に含有されていることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 針状炭酸カルシウム粒子が長径4〜80μm、短径0.05〜4μmであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 針状炭酸カルシウム粒子が、脂肪酸、脂肪酸金属塩、界面活性剤、カップリング剤、シラン、多価アルコールからなるエステル、燐酸エステルから選択される少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されていることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
  4. 充填剤が15〜30重量%及び半芳香族ポリアミド樹脂が70〜85重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
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