JP5836137B2 - タイヤサイド部の塗料層補修方法 - Google Patents

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この発明は、タイヤのビード部、および、該ビード部に連なって延びるサイドウォール部を含むタイヤサイド部の外表面の少なくとも一部に、塗料を塗布してなる塗料層を設けたタイヤの、前記塗料層を補修するタイヤサイド部の塗料層補修方法に関するものである。
近年、タイヤに装飾的な美観を付与することや、標章を表示すること等を目的として、タイヤのサイド部外表面に、印刷等によって塗料を塗布してなる塗料層を、たとえば、タイヤ周方向に沿わせて設けて、サイド部外表面に、文字、図形、バーコードを含む記号、模様等からなる装飾もしくは標章を施すことが提案されている。
ところで、上記のようなタイヤでは、タイヤの使用に伴って、サイド部外表面に設けた前記塗料層が縁石その他に擦り付けられること等に起因する、塗料層の損傷もしくは剥離、または、塗料層の劣化により、該塗料層が所期したとおりの装飾性もしくは標章の視認性を十分に発揮し得なくなることがある。このような塗料層を補修するために、サイド部に、再び塗料による装飾等を施す補修を行うと、補修前に存在している塗料の色彩が影響して、補修した装飾の発色性が損ねられる他、装飾それ自体の目視が困難になるという問題があった。
この発明は、タイヤサイド部の塗料層補修方法に生じていた従来技術のこのような問題点を解決するものであり、補修前に存在していた塗料層に影響されることのない、装飾性または標章の視認性の高い新たな装飾層を形成し得るタイヤサイド部の塗料層補修方法を提供することを目的とするものである。
この発明のタイヤサイド部の塗料層補修方法は、タイヤのビード部、および、該ビード部に連なって延びるサイドウォール部を含むタイヤサイド部の外表面の少なくとも一部に、塗料を塗布してなる塗料層を設けたタイヤの、前記塗料層を補修するタイヤサイド部の塗料層補修方法であって、明度が80%以上の白色塗料による白色層を前記塗料層上に形成する白色層形成工程を含むことを特徴とする。
この方法によれば、補修前に存在していた塗料層を白色層が隠すことによって、当該白色層の外表面に、補修前に存在していた塗料層に影響されることのない、装飾性もしくは標章の視認性の高い新たな塗料層を形成することが可能となる。
また、この発明のタイヤサイド部の塗料層補修方法では、前記白色層の外表面に塗料による新たな塗料層を形成する再塗装工程を、前記白色層形成工程の後にさらに含み、これにより、白色層の外表面に、装飾性もしくは標章の視認性の高い新たな塗料層を具えることが可能となる。
ここで、前記白色層の厚みは50μm以上とすることが好ましく、この場合には、補修前に存在していた塗料層を白色層が十分に覆い隠すことで、装飾性もしくは標章の視認性が一層向上した、新たな塗料層を設けることが可能となる。
そして、前記白色塗料の明度は100%であることが好ましく、この場合には、白色層によって、補修前に存在していた塗料の色彩がほぼ完全に隠されることで、装飾性もしくは標章の視認性がより一層向上した、新たな塗料層を設けることが可能となる。
ここにおいて、前記タイヤサイド部を洗浄する洗浄工程を、前記白色層形成工程の前にさらに含むことも好ましく、この場合には、形成される白色層に異物が埋め込まれることで、装飾性もしくは標章の視認性が低下したり、タイヤの負荷転動時に白色層が剥離したりすることを、有効に防止することができる。
ここにおいて、ここでいう明度は、HSVモデルにより定義されるものであり、そして、この明度は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ社製)を用いて明度、彩度及び色相を他系統(例えばLab色空間)で測定した後、該測定値を、必要なソフトウエア(例えば、photoshop(登録商標))によりHSV系統に変換することで算出するものとする。
この発明のタイヤサイド部の塗料層補修方法によれば、補修前に存在していた塗料に影響されることのない、装飾性または標章の視認性の高い新たな塗料層を形成することが可能になる。
この発明の補修方法に用いることのできるタイヤを示す側面図である。 この発明の一の実施形態の白色層形成工程を説明するタイヤの側面図である。
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について説明する。
図1に示すところにおいて、図中1は、この発明の補修方法に用いることのできるタイヤを示し、図示のタイヤ1は、一般的な空気入りタイヤと同様に、一対のビード部2と、各ビード部2に連なってタイヤ半径方向外方に延びるそれぞれのサイドウォール部3と、それらのサイドウォール部3を連結するトレッド部4とを具えるとともに、図示は省略するが、内部に、ビード部2からサイドウォール部3を経てトレッド部4までトロイド状に延在する、タイヤの骨格をなすカーカスおよび、該カーカスの外周側に配設したベルト等を有するものである。なおこの空気入りタイヤ1に代えてソリッドタイヤとすることもできる。
そしてここでは、ビード部2とサイドウォール部3とを含むタイヤサイド部5の外表面に、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版印刷その他の印刷等を施すことにより、図1に示すように、たとえば、タイヤ周方向の全周にわたって円環状に延びる、文字、図形、バーコードを含む記号、模様等からなる装飾もしくは標章としての塗料層6を設ける。図に示すところでは、タイヤ側面に実際に描かれた模様等は省略しており、円環状の部分6を塗料層としている。
この塗料層6は、様々な色の塗料で形成することができる他、図示の円環状の形態に加えて、または、該形態に代えて、サイド部外表面の、タイヤ周方向及び/またはタイヤ半径方向の一箇所または複数個所に存在する様々な形状をなす形態で設けることができる。なお、図示は省略するが、例えば、相互に大きさの異なる円環状の塗料層を複数個設けることもできる。
このような塗料層6を設けたタイヤ1では、該塗料層6による装飾性や、標章の視認性を有効に発揮することができるも、タイヤ1の使用に伴い、塗料層6が縁石に擦り付けられること等により、塗料層6に損傷や剥離、劣化が生じる結果として、塗料層6が、所期した装飾性、視認性を発揮し得なくなることがある。
ここにおいて、この発明では、上記のように損傷・剥離等が生じた塗料層6を、たとえば、塗料の塗り直しによる再塗装等によって新たな塗料層に置き換える再塗装工程に先立って、白色層形成工程で、図2に例示するように、塗料層6に重ねて明度が80%以上の白色塗料によって白色層10を形成する。この白色層10によって、その上に設けられる新たな塗料層の発色性を十分に確保することができる。
ところで、白色層10は、たとえば、サイド部5の外表面に、インクジェットプリンタのヘッドから、インキを含む塗料を噴射して、該表面上に印刷することで形成することができる。
なお、白色塗料には、光重合開始剤、オリゴマー、モノマー、着色剤を主要成分とし、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、分散剤を配合したUVインキ(紫外線硬化型インキ)を使用することが、インキを塗布した後の乾燥時間が不要となって、補修の効率を向上させることができる点から好ましい。また粘度を調整するため、UVインキを溶剤で希釈することもできる。
ここで、前記UVインキに含まれる光重合開始剤としては、ラジカル光重合開始剤が一般に使用され、例えばベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4−(ジエチルアミノ)安息香酸メチル等の水素引き抜き型開始剤;ベンゾインエーテル、ベンゾイルプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等の分子内開裂型開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン型開始剤;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン型開始剤;及びアシルフォスフィンオキサイドを挙げることができる。光重合開始剤は上記のものを単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
またここで、前記UVインキに含まれるオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル樹脂の(メタ)アクリレート等反応性オリゴマーの他、反応性官能基を持たない化合物も適宜使用することができる。なお、ここでいう「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートを含むものである。
そしてまた、前記UVインキに含まれるモノマーとしては、アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマー等を適宜使用することができるが、これらは、各種高分子材料との接着性向上、弾性率制御の役割を担っており、接着剤の塗布液の粘度調整にも必要である。その配合量は、使用するオリゴマーによって適宜調整して決定される。モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート(アクリロイルモルホリン)、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の1官能性モノマー;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートトリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性モノマーを挙げることができる。
なお、上記のUVインキには、耐候性、耐熱性等の向上、粘度調整などのため適宜、その他の配合剤を配合することができる。
また、白色塗料としてのUVインキの着色剤としては、酸化チタン等を挙げることができる。
ところで、白色層形成工程では、図2に示すように、少なくとも塗料層6が設けられた全領域、さらには、当該全領域に加えて塗料層6が設けられていない領域にも、白色層10を形成することができる。この場合には、白色層が塗料層6の全体を覆い隠し、さらには周囲のゴムをも隠すことで、白色層10上に装飾性または標章の視認性に新たな装飾層を形成することができる。また、一方で、必要に応じ、塗料層6の一部の領域上にのみ白色層10を形成しても良い。
白色層形成工程で白色層10を形成した後には、再塗装工程で、上述したUVインキ等の塗料によって、白色層10の上に新たな塗料層を形成することができる。
白色層10が補修前の塗料層6を隠すことで、白色層10上に形成された新たな塗料層10が塗料層6に影響されなくなり、装飾性または標章の視認性を向上することができる。
ところで、再塗装後の、既存の塗料層6を含む塗料層の総厚さを、例えば500μm以下とすることができる。
また、白色層形成工程と再塗装工程とを、それぞれ別の場所で実施することもできる。
そして、再塗装工程後に、塗料により形成された新たな塗料層に重ねて、OPニスもしくは水系ウレタン樹脂材料等で形成される、図示しない保護層を設けることもできる。この保護層を形成する上記の水系ウレタン樹脂材料の一の例としては、ポリオール成分及び多塩基成分を反応させて得られる水酸基含有ポリエステルと、ポリイソシアネートとを含有し、当該ポリオール成分及び多塩基成分のうちの少なくともポリオール成分が、その成分の分子内に脂環構造を有するものとした水系ウレタン樹脂が挙げられる。また、前記水系ウレタン樹脂材料の他の例としては、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて得られる水酸基価100〜300の水溶性ウレタンポリオールと、親水性基含有ポリイソシアネートと、必要に応じて水分散性ウレタン樹脂又は水分散性アクリル樹脂とを含む水系ウレタン樹脂であって、前記ポリオール成分の一部が、ポリオールと多塩基酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールを含み、前記ポリオールおよび前記多塩基酸の少なくとも一方が脂環構造を有する水系ウレタン樹脂が挙げられる。
上記のような保護層は弾力性があり、耐衝撃性、耐摩耗性、耐汚染性、耐水性に優れるため、タイヤの負荷転動時や、悪路走行時や洗車時に、保護層の内側の塗料層及びゴムに疵や剥離が生じることを有効に防止して、装飾性または標章の視認性を長期間維持することができる。
なお、この発明のタイヤサイド部の塗料層補修方法を実施するに先立って、塗料層6のタイヤ内面側に白色層が、また当該塗料層6の外表面に保護層がすでに形成されている場合でも、これらが損傷等を受けた場合には、そのような白色層、塗料層や保護層に重ねて、新たに白色層10を形成することができる。
ここで、白色層形成工程では、白色層10の厚みTを50μm以上とすることが好ましい。この場合には、白色層10が塗料層6を十分に隠して、白色層10上に塗料により形成される新たな塗料層の装飾性又は標章の視認性を一層有効に向上させることができる。
また、白色層形成工程では、明度100%の純白の塗料を塗布して白色層10を形成することができる。この場合には、純白の塗料によって、塗料層6の色彩がほぼ完全に隠されることで、白色層10上に、塗料により形成される新たな塗料層の装飾性又は標章の視認性を、より一層向上させることができる。
ところで、白色層形成工程の前に、タイヤ1のサイド部5を洗浄して、サイド部5の表面に付着した塵芥を除去する洗浄工程を実施することが好ましい。この場合には、形成される白色層10に異物が埋め込まれることで、装飾性または標章の視認性が低下したり、タイヤ1の負荷転動時に白色層10が剥離したりすることを有効に防止することができる。
ここで、洗浄に当っては、たとえば高温・高圧の蒸気を噴出するスチームクリーナーを使用することができ、また、不織布やガーゼに、イソプロピルアルコール(IPA)等の溶剤を浸して、サイド部5を拭掃することで洗浄することもできる。
なお、白色層10を形成した後、塗料による新たな塗料層を形成する施す前に、上記と同様の、塵芥を除去する洗浄を行うこともできる。
1 タイヤ
2 ビード部
3 サイドウォール部
4 トレッド部
5 タイヤサイド部
6 塗料層
10 白色層

Claims (4)

  1. タイヤのビード部、および、該ビード部に連なって延びるサイドウォール部を含むタイヤサイド部の外表面の少なくとも一部に、塗料を塗布してなる塗料層を設けたタイヤの、前記塗料層を補修するタイヤサイド部の塗料層補修方法であって、
    明度が80%以上の白色塗料による白色層を前記塗料層上に形成する白色層形成工程を含み、
    前記白色層の外表面に塗料による新たな塗料層を形成する再塗装工程を、前記白色層形成工程の後にさらに含むことを特徴とする、タイヤサイド部の塗料層補修方法。
  2. 前記白色層の厚みが50μm以上である、請求項1に記載のタイヤサイド部の塗料層補修方法。
  3. 前記白色塗料の明度が100%である、請求項1または2に記載のタイヤサイド部の塗料層補修方法。
  4. 前記タイヤサイド部を洗浄する洗浄工程を、前記白色層形成工程の前にさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のタイヤサイド部の塗料層補修方法。
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