以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。さらに、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値から求めたものをいう。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)光重合性化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)と、(D)メラミン誘導体(以下、場合により「(D)成分」という)と、(E)ジシアンジアミド類(以下、場合により「(E)成分」という)と、を含有する。以下、(A)〜(E)成分について、詳細に説明する。
<(A)成分>
(A)成分はカルボキシル基を分子内に1個以上有するポリマーであれば特に限定されないが、アルカリ性水溶液に対する溶解性を有することが好ましい。また、(A)成分の重量平均分子量は、20000〜300000であることが好ましく、30000〜150000であることがより好ましく、40000〜100000であることが更に好ましい。重量平均分子量が、20000未満であるとフィルム性が低下する傾向があり、300000を超えると現像性が低下する傾向がある。
(A)成分としては、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体が挙げられる。当該共重合体は、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体とをラジカル重合させることにより製造することができる。
カルボキシル基を有する重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体;マレイン酸、フマル酸;ケイ皮酸;α−シアノケイ皮酸;イタコン酸;クロトン酸;プロピオール酸が挙げられる。これらのなかでも現像性の観点から(メタ)アクリル酸、マレイン酸が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
カルボキシル基を有する重合性単量体とのラジカル重合反応に用いられる、その他の重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ベンジルエステル;スチレン;ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のα−位もしくは芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;N−ビニルピロリドン;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル;マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル;スチレン/マレイン酸共重合体のハーフエステルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(A)成分は、アクリル樹脂を含有することが好ましい。(A)成分がアクリル樹脂を含有すると、感光性樹脂組成物のフィルム化が容易となる傾向にあり、かつ、感光性樹脂組成物の安定性を向上させることができる。
上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸を単量体単位として有する樹脂であることがより好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物等が挙げられる。
CH2=C(R7)−COOR8 (I)
式(I)中、R7は水素原子又はメチル基を示す。また、R8は炭素数1〜12のアルキル基を示し、当該アルキル基における水素原子は、水酸基、エポキシ基、ハロゲン原子等に置換されていてもよい。
(A)成分の酸価は、30〜250mgKOH/gであることが好ましく、50〜200mgKOH/gであることがより好ましい。この酸価が30mgKOH/g未満であると現像時間が遅くなる傾向があり、250mgKOH/gを超えると光硬化したレジストの耐現像液性が低下する傾向がある。
<(B)成分>
(B)成分である光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ウレタンオリゴマー又はモノマー;(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ノニルフェニルジオキシレン(メタ)アクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート;β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート;β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。これらの光重合性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
これらの光重合性化合物の中でも特に、(B1)ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート(以下、場合により「(B1)成分」という)、及び(B2)ウレタンオリゴマー又はモノマー(以下、場合により「(B2)成分」という)が好ましい。
(B1)ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート、すなわち(B1)成分は、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
式(2)中、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Y及びZはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基を示し、p1、p2、q1及びq2は、p1+p2+q1+q2が0〜40の整数となるように選ばれる0〜20の整数を示す。
上記光重合性化合物は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能なビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2’−ビス((4−メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンであるBPE−500(商品名、新中村化学工業株式会社製)、及びFA−321M(商品名、日立化成工業株式会社製)が挙げられる。
(B)成分として(B1)成分を用いる場合、(B1)成分の固形分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましく、15〜30質量部であることが更に好ましい。(B1)成分の固形分の含有量が上述の範囲内であると解像性がより向上する。
(B2)ウレタンオリゴマー又はモノマー、すなわち(B2)成分は、分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する化合物であれば特に制限されない。(B2)成分としては、例えば、(i)分子中にヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物と(ii)ジイソシアネート化合物との付加反応物;(iii)ジヒドロキシ化合物及び(ii)ジイソシアネート化合物の付加反応物に(i)分子中にヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加反応させて得られる化合物等が挙げられる。
(i)分子中にヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、これのカプロラクトン付加物又は酸化アルキレン付加物、グリセリン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物が挙げられる。
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのカプロラクトン付加物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物が挙げられ、酸化アルキレン付加物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・酸化アルキレン付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・酸化プロピレン付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・酸化ブチレン付加物が挙げられる。また、グリセリン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物としては、例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの酸化エチレン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの酸化プロピレン付加物のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
(ii)ジイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート;トリレン−2,6−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート;4,4’−〔2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、及びノルボルナン−ジイソシアネートメチルが挙げられる。
(iii)ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、シリコーンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂環式炭化水素骨格を有するジヒドロキシ化合物、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応により得られるエポキシアクリレート化合物、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸等のカルボキシル基を有するジオール化合物が挙げられる。
(B2)成分としては、例えば、TMCH−5(商品名、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート/1,4ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン/2−ヒドロキシエチルアクリレート=8.15/1.95/12(mol比)、重量平均分子量950、日立化成工業株式会社製)、UA−11(商品名、新中村化学工業株式会社製)等が商業的に入手可能である。
(B2)成分は、(b1)(iii−1)下記一般式(3)で表されるポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールと、(ii)ジイソシアネート化合物と、(i−1)ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得られるウレタンオリゴマー(以下、場合により「b1ウレタンオリゴマー」という);並びに(b2)(i−2)2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応により得られるエポキシアクリレート化合物、(ii)ジイソシアネート化合物、及び(iii−3)カルボキシル基を有するジオール化合物の反応により得られるウレタンオリゴマー(以下、場合により「b2ウレタンオリゴマー」という)であることがより好ましい。
式(3)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、mは、1〜20の整数である。
b1ウレタンオリゴマーは、(iii−1)上記一般式(3)で表されるポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールと、(ii)ジイソシアネート化合物とを反応させて得られる化合物(以下、「b1ウレタンオリゴマー前駆体」という)を得た後、当該b1ウレタンオリゴマー前駆体に、(i−1)ヒドロキシ(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。
b1ウレタンオリゴマー前駆体は、両末端にイソシアナート基を有することが好ましく、この場合、上記の反応においてポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールの総量1モルに対して、ジイソシアネート化合物の配合量を1.01〜2.0モルとすることが好ましく、1.1〜2.0とすることがより好ましい。ジイソシアネート化合物の配合量が1.01モル未満又は2.0モルを超えると、両末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物を安定的に得られない傾向がある。なお、ウレタン化合物を合成する反応では、触媒として、ジブチルチンジラウレートを加えることが好ましい。反応温度は60〜120℃とすることが好ましい。60℃未満であると、反応が十分に進まない傾向があり、120℃を超えると、急激に発熱する傾向がある。
上述のとおり、一般式(3)で表されるポリカーボネートジオールは、アルキレン基がカーボネート結合を介して主鎖に並んだ構造を有する。当該ポリカーボネートジオールは、如何なる方法によって得てもよいが、例えば、ホスゲン法により得ることができる。ホスゲン法によって、ポリカーボネートジオールを得る場合は、ジオール化合物とホスゲンとを反応させる。
上記ジオール化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エリレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、3,3,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチル−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。なお、これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、上述の反応においては、ジオール化合物以外に、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール化合物が更に含まれてもよい。
上記一般式(3)で表されるポリカーボネートジオールは、1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオールに由来する下記式(II)で表されるヘキサメチレンカーボネート構造及び下記式(III)で表されるペンタメチレンカーボネート構造を含むものが好ましい。
−(CH2)6−O−CO−O− (II)
−(CH2)5−O−CO−O− (III)
また、この場合、ヘキサメチレンカーボネート構造及びペンタメチレンカーボネート構造のモル比率は、ヘキサメチレンカーボネート構造/ペンタメチレンカーボネート構造=1/9〜9/1であることが好ましい。この含有比率が上記範囲外であると、光硬化物の伸び及び強度が低下する傾向がある。
上記ポリエステルジオールは、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合による公知の方法により得ることができる。多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの芳香族や脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのようなグリコール類が挙げられる。
上記ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールの重量平均分子量は600〜1000であるものが好ましい。この重量平均分子量が上記範囲外であると、光硬化物の伸び及び強度が低下する傾向がある。
(ii)ジイソシアネート化合物としては、例えば、アルキレン基等の2価の脂肪族基を有する脂肪族ジイソシアネート化合物、シクロアルキレン等の2価の脂環式基を有する脂環式ジイソシアネート化合物、及び芳香族ジイソシアネート化合物、並びに、これらのイソシアヌレート化変性物、カルボジイミド化変性物、及びビウレット化変性物が好ましい。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
上記b1ウレタンオリゴマー前駆体への(i−1)ヒドロキシ(メタ)アクリレートの付加反応においては、b1ウレタンオリゴマー前駆体1モルに対する(i−1)ヒドロキシ(メタ)アクリレートの配合量を2.0〜2.4モルとすることが好ましい。(i−1)ヒドロキシ(メタ)アクリレートの配合量が2.0モル未満であると、光重合性が不十分となる傾向があり、2.4モルを超えると、光硬化物の伸び及び強度が低下する傾向がある。上記付加反応は、例えば、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−ヒドロキシ−トルエン等の存在下で行うことが好ましく、その他に、触媒として、ジブチルチンジラウレートを加えることが好ましい。反応温度としては、60〜90℃とすることが好ましい。60℃未満であると、反応が十分に進まない傾向があり、90℃を超えると、急激な発熱により、ゲル化する傾向がある。なお、反応の終点は、例えば、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基が消失する時点とすればよい。
b1ウレタンオリゴマーとしては、例えば、UF−8003M、UF−8001G−20M、UF−TCB−50、UF−TC4−55(以上商品名、共栄社化学株式会社製)、ヒタロイド9082−95(商品名、日立化成工業株式会社製)等が商業的に入手可能である。
(B2)成分は、現像後の後露光の工程も省いても耐めっき性を向上できる観点からは、b2ウレタンオリゴマーを含むことが好ましい。
(i−2)2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応により得られるエポキシアクリレート化合物と、(ii)ジイソシアネート化合物と、(iii−3)カルボキシル基を有するジオール化合物との反応により得られるb2ウレタンオリゴマー;又は同様の反応により得られるモノマーとしては、例えば、下記一般式(4)で表される構造単位を有する化合物が挙げられる。
ここで、式(4)中、R11はエポキシアクリレートの残基、R12はジイソシアネートの残基、R13は炭素数1〜5のアルキル基、R14は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。また、式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
上記2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型とエピクロルヒドリンとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型又は水添ビスフェノールF型とエピクロルヒドリンとの反応により得られる水添ビスフェノール型エポキシ化合物、アミノ基含有エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
また、(iii−3)カルボキシル基を有するジオール化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。
b2ウレタンオリゴマーとしては、例えば、UXE−3011、UXE−3012、UXE−3024(以上、日本化薬(株)製、商品名)が商業的に入手可能である。
(B2)成分の重量平均分子量は500〜100000であることが好ましく、1000〜70000であることがより好ましく、3500〜20000であることが更に好ましい。この重量平均分子量が2000未満であると、光硬化物の耐めっき性が低下する傾向にあることに加え、光硬化物の伸び及び強度が不十分となることに起因して可とう性が低下し、他方、100000を超えると、上述の(A)成分との相溶性が低下する。
(B)成分として(B2)成分を用いる場合、(B2)成分の固形分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、10〜60質量部とすることが好ましく、20〜50質量部とすることがより好ましく、30〜45質量部とすることが更に好ましい。(B2)成分の固形分の含有量が上述の範囲内であると感光性樹脂組成物の光硬化後の可とう性(耐折性)がより向上する。
<(C)成分>
(C)成分としての光重合開始剤は、活性光により遊離ラジカルを生成するものであれば特に制限はないが、例えば、芳香族ケトン、キノン類、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。
芳香族ケトンとしては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(すなわちミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンが挙げられる。
キノン類としては、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノンが挙げられる。
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルが挙げられる。
ベンジル誘導体としては、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタールが挙げられる。
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、2−(2−クロロフェニル)−1−〔2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル〕−4,5−ジフェニルイミダゾール等の2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
アクリジン誘導体としては、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンが挙げられる。
また、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体において、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールに置換した置換基は同一でも相違していてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸との組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。
(C)成分は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な(C)成分としては、例えば、イルガキュア−369(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、イルガキュア−907(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)が挙げられる。
上記光重合開始剤は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
<(D)成分>
(D)成分であるメラミン誘導体は、分子内にトリアジン骨格を有する化合物であり、例えば、下記一般式(1)で表される化合物及びメラミン樹脂等が挙げられる。
中でも(D)成分は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。(D)成分が、このような構造の化合物を含むと、加熱後の基板変色が抑制され、耐めっき性が向上する。
式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜10のアルコキシメチル基を示す。
耐めっき性をより向上できる観点からは、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つがヒドロキシメチル基であることが好ましい。
現像残渣を低減できる観点からは、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つが炭素数1〜10のアルコキシメチル基であることが好ましい。
炭素数1〜10のアルコキシメチル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等が挙げられる。また、現像残渣低減の観点からは、アルコキシメチル基の炭素数は、1〜5であるとより好ましく、1〜3であると更に好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン;及びこれらのメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜10のアルコキシメチル基で置換したアルコキシメチル化メラミン;並びにメチル化メラミン、エチル化メラミン、ブチル化メラミン等のアルキル化メラミンが挙げられる。このような化合物としては、例えば、サイメル300、303、325、327、350、730、736、738(商品名、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)、メラン22(商品名、日立化成工業(株)製)が商業的に入手可能である。なお、これらのメラニン誘導体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、上記メチロールメラミンは、例えば、メラミンとホルムアルデヒドをアルカリ条件下で縮合させることにより得ることができる。
<(E)成分>
(E)成分のジシアンジアミド類としては、例えば、ジシアンジアミド、アクリロイルジシアンジアミド、メタクリロイルジシアンジアミド及びこれらの有機酸塩等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。これらのなかでも、耐薬品性及び耐めっき性をより高水準に達成する観点からジシアンジアミドが好ましい。
これらの特性を高水準に達成できる主因は、基板に設けられた表面の金属部分の表面とジシアンジアミドが有するグアニジン骨格との強い相互作用によって、該金属部分と光硬化物との密着性が向上するためと考えられる。なお、ジシアンジアミドはシアナミドとカルボジイミドとを反応させることで得ることができる。
(E)成分は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な(E)成分としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社製のジシアンジアミド(DICY)が挙げられる。
上記感光性樹脂組成物における(A)成分の固形分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、30〜80質量部とすることが好ましく、35〜70質量部とすることがより好ましく、40〜60質量部とすることが特に好ましい。この含有量が30質量部未満では光硬化物が脆くなり易く、感光性フィルムとして用いた場合に、塗膜性が劣る傾向があり、80質量部を超えると光感度が不十分となる傾向がある。
上記感光性樹脂組成物における(B)成分の固形分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、20〜70質量部とすることが好ましく、30〜65質量部とすることがより好ましく、40〜60質量部とすることが特に好ましい。この含有量が20質量部未満では光感度が不十分となる傾向があり、70質量部を超えると光硬化物が脆くなる傾向がある。
上記感光性樹脂組成物における(C)成分の固形分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。この含有量が0.1質量部未満では光感度が不十分となる傾向があり、20質量部を超えると露光の際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不十分となる傾向がある。
上記感光性樹脂組成物における(D)成分の固形分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、1〜30質量部とすることが好ましく、5〜25質量部とすることがより好ましく、10〜20質量部とすることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部未満では耐めっき性が低下する傾向があり、30質量部を超えると現像残りが発生する傾向がある。
上記感光性樹脂組成物における(E)成分の固形分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.3〜2.0質量部とすることがより好ましく、0.5〜1.5質量部とすることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部未満では耐薬品性及び耐めっき性が低下する傾向があり、10質量部を超えると現像残りが発生する傾向がある。
上述のとおり、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を含有する。このような感光性樹脂組成物によれば、可とう性、耐めっき性、及び耐薬品性に優れる永久マスクレジストを形成できる。また、当該感光性樹脂組成物は、アルカリ性水溶液によって現像可能であることが好ましい。なお、アルカリ性水溶液による現像性は感光性樹脂組成物の種々のパラメータを調整することで達成される。例えば、(A)成分の酸価を調整することによりアルカリ性水溶液による現像性を調整できる。
上記感光性樹脂組成物は、必要に応じて、ブロック剤(閉塞硬化剤)、染料、顔料等の熱硬化成分、可塑剤、安定剤などを更に含有することができる。
上記感光性樹脂組成物は、例えば、フレキシブルプリント配線板等の永久マスク用感光性フィルム等に用いることができる。
図1は、感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性フィルム1は、支持体10と、支持体10上に設けられた感光性樹脂組成物層20と、感光性樹脂組成物層20上に設けられた保護フィルム30で構成される。感光性樹脂組成物層20は、上述した感光性樹脂組成物からなる。
感光性樹脂組成物層20は、本実施形態の感光性樹脂組成物を溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液を調製した後、調製した溶液を支持体10上に塗布して塗布層を形成し、さらに、当該塗布層を乾燥させる方法により形成することが好ましい。なお、塗布層の乾燥方法としては、例えば、加熱及び/又は熱風吹き付けが挙げられる。
上記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのエーテル系溶剤、ジクロロメタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素系溶剤、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶剤又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
感光性樹脂組成物層20の厚さは、用途により異なるが、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。この厚みが10μm未満では工業的に塗工困難となる傾向があり、100μmを超えると光硬化物の可とう性が低下する傾向がある。
支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等からなる重合体フィルムなどが挙げられる。これらのなかでもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
支持体10の厚さは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満であると被覆性が低下する傾向があり、100μmを超えると解像度が低下する傾向がある。
保護フィルム30としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが挙げられる。また、保護フィルム30は多層構造を有していてもよく、片面にエンボスなどの処理を施してあってもよい。
保護フィルム30は、厚みが5〜30μmであることが好ましく、10〜28μmであることがより好ましく、15〜25μmであることが更に好ましい。この厚みが5μm未満であるとラミネートの際、保護フィルム30が破れやすくなる傾向にあり、30μmを超えると廉価性に劣る傾向にある。
こうして得られた感光性フィルム1は、例えば、そのままの平板状の形態で、又は、円筒状などの巻芯に巻きとり、ロール状の形態で貯蔵することができる。なお、感光性フィルム1は、必ずしも上述した保護フィルム30を有していなくてもよく、支持体10と感光性樹脂組成物層20との2層構造であってもよい。
支持体10及び保護フィルム30は、後に感光性樹脂組成物層20から除去可能でなくてはならないため、除去が不可能となるような表面処理が施されていないものが好ましい。かかる表面処理以外の処理としては、特に制限はなく、例えば、支持体10、保護フィルム30は必要に応じて帯電防止処理が施されていてもよい。
感光性フィルム1は、回路形成用基板等の基板上にレジストパターンを形成するために好適に用いられる。この場合、レジストパターンは、例えば、感光性フィルム1から保護フィルム30を除去する除去工程と、回路形成用基板上に感光性フィルム1を感光性樹脂組成物層20が回路形成用基板と隣接するように積層する積層工程(形成工程)と、活性光線を感光性樹脂組成物層20の所定部分に照射して、感光性樹脂組成物層20に光硬化部を形成させる露光工程と、光硬化部以外の感光性樹脂組成物層20を除去する現像工程とを備える方法によって、形成される。
ここで、上記回路形成用基板は、絶縁層と、絶縁層上に形成された導電体層(銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金からなる)とを備えた基板をいう。
積層工程においては、例えば、感光性樹脂組成物層20を、加熱しながら回路形成用基板に圧着する方法により積層する。これにより、回路形成用基板上に本実施形態の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層が形成される。積層の際の雰囲気は特に制限されないが、密着性及び追従性等の見地から、減圧下で積層することが好ましい。積層される表面は、通常、回路形成用基板の導電体層の面であるが、導電体層以外の面であってもよい。感光性樹脂組成物層20の加熱温度は90〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.2〜1.0MPaとすることが好ましく、周囲の気圧は4000Pa(30mmHg)以下とすることがより好ましい。また、感光性樹脂組成物層20を上記のように90〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性を更に向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
露光工程においては、感光性樹脂組成物層20の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成せしめる。光硬化部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。この際、支持体10が透明の場合には、支持体10を積層したまま活性光線を照射してもよい。支持体10が不透明の場合には、これを除去した後に感光性樹脂組成物層20に活性光線を照射する。
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものを用いることができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いることもできる。
露光後、感光性樹脂組成物層20上に支持体10が存在している場合には支持体10を除去した後、アルカリ性水溶液を用いて光硬化部以外の感光性樹脂組成物層20を除去することにより現像して、レジストパターンを形成させる(現像工程)。現像工程においては、感光性樹脂組成物に対応したアルカリ性水溶液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。現像液としてアルカリ性水溶液を使用すると、安全かつ安定であり、操作性が良好である。アルカリ性水溶液のpHは、9〜11とすることが好ましい。また、現像温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調整すればよい。なお、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるために少量の有機溶剤等を添加することができる。
上述の形成方法により得られたレジストパターンは、フィルム状の基材上に可とう性を有する樹脂層を形成するために用いられると好ましく、フィルム状の基材上に形成される永久マスクとして使用されるとより好ましい。例えば、FPCの永久マスク(カバーコート)として用いる場合は、上記現像工程終了後、FPCの永久マスクとしてのはんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は、その照射量を、例えば0.2〜10J/cm2程度の照射量に調整する。レジストパターンを加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程加熱することが好ましい。紫外線照射と加熱とをともに施してもよい。この場合、紫外線照射と加熱を同時に行ってもよいし、いずれか一方を行った後、他方を行ってもよい。紫外線の照射と加熱とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、下記例中の「%」は、特に断わらない限り「質量%」を意味する。
[感光性樹脂組成物の調製]
(実施例1〜5、比較例1,2)
まず、下記のとおりの材料を準備した。
((A)成分)
(A)成分として、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル(質量比:22/71/7)の共重合体(重量平均分子量:80000)のメチルセルソルブ/トルエン溶液を準備した。なお、溶液中の固形分を40質量%とし、メチルセルソルブ/トルエンの比率は質量比で60/40とした。
((B)成分)
(B)成分として、下記に示す材料を準備した。
・FA−321M(商品名、日立化成工業(株)製、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート);
・UF−8001G−20M(商品名、共栄社化学株式会社製、20%メチルエチルケトン溶液);
・UXE−3024(商品名、日本化薬(株)製、重量平均分子量:10000、(b2)(iii−2)2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応により得られるエポキシアクリレート化合物、(ii)ジイソシアネート化合物、及び(iii−3)カルボキシル基を有するジオール化合物との反応により得られるウレタンオリゴマー);
・CCR−1171H(商品名、日本化薬(株)製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させて得られるエポキシアクリレート)
なお、UF−8001G−20Mの固形分は、末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物に、2−ヒドロキシエチルアクリレート2モルを反応させて得られた光重合性化合物からなり、重量平均分子量は4500である。ここで、上記ウレタン化合物は、繰返し単位として、ヘキサメチレンカーボネート構造/ペンタメチレンカーボネート構造=5/5(モル比)を含み、末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物(重量平均分子量が790)3モルとイソホロンジイソシアネート4モルとを付加重合反応させて得られたものである。
((C)成分)
(C)成分として、イルガキュア−369(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1)を準備した。
((D)成分)
(D)成分として以下の材料を準備した。
・サイメル300(商品名、日本サイテックインダストリーズ株式会社製、下記式(D−1)で表されるメラミン誘導体)
・サイメル350(商品名、日本サイテックインダストリーズ株式会社製、下記式(D−2)で表されるメラミン誘導体)
・メラン22(商品名、日立化成工業株式会社製、下記式(D−3)で表されるメラミン誘導体)
((E)成分)
(E)成分として、ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン株式会社製)を準備した。
(代替(D)成分)
(D)成分の代替成分として、デスモジュールBL−3175(商品名、住化バイエル株式会社製)を準備した。なお、デスモジュールBL−3175(以下、「BL−3175」と表す)は、下記式(IV)で表されるイソシアネート化合物と、下記式(V)で表されるメチルエチルケトオキシム化合物とを反応させて得られるブロック化イソシアネート化合物である。
(代替(E)成分)
(E)成分の代替成分として、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールを準備した。
(その他の成分)
上記以外の成分として、MHIイエロー#220(商品名、御国色素株式会社製)を準備した。
(溶剤)
溶剤として、メチルエチルケトン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミドを準備した。
そして、上述のように準備した材料を表1に示すとおりの質量部となるように混合し感光性樹脂組成物を調製した。
表1中、溶剤以外の成分((A)〜(E)成分、代替(D)成分、代替(E)成分及びその他成分)の数値は固形分の質量部を示す。
[感光性樹脂組成物の評価]
上述のように調整した感光性樹脂組成物を、それぞれ、25μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し塗布層を形成した後、当該塗布層を100℃の熱風循環式乾燥器で5分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層の厚さは、40μmであった。
次いで、感光性樹脂組成物層の上に、ポリエチレンフィルムを保護フィルムとして貼り合わせ、感光性フィルムを作製した。
別に、35μm厚銅箔をポリイミド基材に積層したFPC用基板(ニッカン工業(株)製、商品名、F30VC125RC11)の銅表面を砥粒ブラシで研磨、水洗し、乾燥した。
次いで、感光性フィルムから保護フィルムをはく離し、感光性樹脂組成物層を上記基板の銅箔側に向け、真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製型式MVLP−500)を用いて、感光性フィルムを基板にラミネートし、評価用積層体を作製した。
この際のラミネータの成形温度は60℃、成形圧力は0.4MPa(4kgf/cm2)、真空時間及び加圧時間をそれぞれ20秒とした。
[解像性評価]
上述のラミネートが終了した後、評価用積層体を23℃まで冷却し、1時間以上放置した。そして、高圧水銀灯ランプを有する散乱光露光機(オーク製作所(株)製)HMW−201GXを用いて、解像性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が400/30〜400/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールを密着させ所定の露光量を露光した。ここで、露光量は、ストーファーの41段ステップタブレットを用いて、29段まで残る露光量とした。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で100秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して解像性を評価した。解像性は現像液に剥離せずに残ったラインの幅(μm)で表され、この解像性の数値が小さい程、細いラインでも銅箔から剥離せずに銅箔に密着していることから解像性が高いことを示す。結果は表2に示す。
[現像性評価]
上記解像性評価において未露光部分を除去した後の基板を目視で観察し、現像性を評価した。なお、当該現像性の評価においては、感光性樹脂組成物の残さが見られなかったものを「A」、残さが見られたものを「B」とした。結果を表2に示す。
[可とう性(耐折性)の評価]
上述のようにして得られた評価用積層体の感光性樹脂組成物層に対して、ストーファーの21段ステップタブレットを使用して、(株)オーク製作所製、HMW−201GX型露光機で、所定の露光量で露光した後、常温で30分間放置した。ここで、露光量は、ストーファーの41段ステップタブレットを用いて、29段まで残る露光量とした。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で100秒間スプレー現像した。次いで、未露光部分を除去した評価用積層体に対して、オーク社製ORM−2317−F−00型露光機を用いて1J/cm2のエネルギー量で紫外線照射を行い(後露光)、更に160℃で60分間の加熱処理を行い、ネガフィルムに相当する永久レジスト(カバーレイ)を形成した。
永久レジストが形成された評価用積層体を、260℃のはんだ浴中に10秒間浸漬してはんだ処理を行った後、ハゼ折りで180°折り曲げ、折り曲げた際の永久レジストのクラックの発生状況を目視で観察した。クラックが発生しなかったものを「良好」、クラックが発生したものを「不良」として評価した。結果を表2に示す。
[耐めっき性の評価]
上述のようにして得られた評価用積層体の感光性樹脂組成物層に対して、5mm×5mmの格子状パターンを有するマスクを置き、所定の露光量で露光した。ここで、露光量は、ストーファーの41段ステップタブレットを用いて、29段まで残る露光量とした。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で100秒間スプレーすることにより未露光部分を除去した。そして、未露光部分を除去した評価用積層体に対して、オーク社製ORM−2317−F−00型露光機を用いて1J/cm2のエネルギー量で紫外線照射を行い(後露光)、更に160℃で60分間加熱処理し、5mm角のレジストパターンを有する耐めっき性評価用基板を作製した。
上述のようにして作製した耐めっき性評価用基板を、以下の工程でめっき処理した。まず、脱脂・5分浸漬、水洗、ソフトエッチング・2分浸漬、水洗、酸洗・3分浸漬、水洗、プレディップ・90秒浸漬、無電解ニッケルめっき・23分処理、水洗、無電解金めっき・15分処理、水洗、乾燥した。なお、各工程に用いた材料は以下のとおりである。
脱脂:PC−455(メルテックス社製)25質量%の水溶液;
ソフトエッチング:過硫酸アンモニウム150g/Lの水溶液;
酸洗:5体積%硫酸水溶液;
無電解ニッケルめっき:ニムデンNPR−4(上村工業株式会社製);
無電解金めっき:ゴブライトTAM−55(上村工業株式会社製)。
乾燥後、耐金めっき性を評価する為に、直ちにセロテープ(登録商標)を貼り、これを垂直方向に引き剥がして(90°ピールオフ試験)、レジストの剥れの有無を目視で観察した。そして、レジストの剥れが確認されなかったものを「A」、レジストの剥れが確認されたものを「B」として、耐めっき性(剥れ)を評価した。結果を表2に示す。
次に、耐めっき性(もぐり)の評価として、金めっきのもぐりの有無を観察した。耐めっき性(もぐり)は、5mm×5mmの格子状パターン10個について、パターンエッジ部から浸透した金めっきの距離を光学顕微鏡により目視で測定し、その平均値を算出して以下の評価基準(A〜C)で評価した。なお、金めっきのもぐりを生じた場合、透明なレジストを介して、その下にめっきにより析出した金が観察される。結果を表2に示す。
A:0μm以上50μm以下;
B:50μm超100μm以下;
C:100μm超。
[熱圧着試験]
耐熱性試験として、熱圧着試験を実施した。まず、可とう性の評価と同様の方法で、永久レジスト(カバーレイ)が形成された評価用積層体を作製した。そして、永久レジストを形成した基材を250℃に熱し、その上から3mm角のシリコンチップを乗せて2.5Kg/cm2の圧力を3秒間かけた。その後、常温まで基材を冷却したあと、基材への貼り付き性を確認した。貼り付き無しのものを「A」、貼り付きがあるものを「B」とした。結果を表2に示す。
[銅の変色の評価]
上記解像性評価において未露光部分を除去した後の基板を用いて評価した。当該基板を、280℃となるように設定したIRリフロー炉(アサヒエレクトロニクス株式会社製Ba−300N2)に3回通し、銅表面の変色の程度を目視で評価した。銅の変色がないものを「A」、変色があるものを「B」とした。結果を表2に示す。
[耐薬品性の評価]
可とう性の評価と同様の方法で、永久レジストが形成された評価用積層体を作製した。そして、当該評価用積層体を2N−塩酸水溶液又は2N−水酸化ナトリウム水溶液にそれぞれ30分間浸漬した後、永久レジストパターンの開口部を目視で観察した。そして、基板と永久レジストとの界面への薬品の染み込み及び浮きの発生状況により耐薬品性の評価を行った。界面に薬品の染み込み及び浮きの発生が無いものを「A」、界面に薬品の染み込み及び浮きの発生があるものを「B」と評価した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合には、可とう性、耐薬品性及び耐めっき性に優れた永久レジストが得られることが確認された。また、実施例4及び5の感光性樹脂組成物は、後露光を行わなくても、耐めっき性が優れる。