JP5835314B2 - 紙の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水溶性ポリマーを用いた紙の製造方法に関する。
紙の製造においては、紙の印刷適性、強度、平滑度(地合)、及び白色度等の紙質を改善する目的で、パルプを含有する紙料に対して、フィラーや、サイズ剤、紙力増強剤、歩留向上剤及び濾水性向上剤等の製紙用薬品を添加することが行われている。
そして、近年では、紙の製造時のエネルギー削減、パルプ繊維の節約、紙の品質向上等を目的として、フィラーを多く使用する傾向にある。
また、紙の製造は、一般的に、水分を多く含む紙料を網(ワイヤー)の上に流して薄く平らにすることで湿紙を作る工程であるワイヤーパートを備える抄紙機により行われている。
抄紙機におけるワイヤー上でのフィラーの歩留が低い場合、フィラー添加による紙質向上の効果が低下する可能性がある。さらにこの場合、ワイヤーを通過するフィラーの増加により、ワイヤーの磨耗を増大させる可能性があり、また、原料回収循環系内の汚れを引き起こしかねず、白水の処理の負担が増加する可能性もある。そのため、抄紙機のワイヤー上でのフィラーの歩留は、抄紙において重要な要素となっている。
例えば、特許文献1及び2には、カチオン系デンプン凝集剤をフィラーに加える技術が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載のあるように、特許文献1及び2に開示された技術では、凝集剤の添加量が多く、凝集されたフィラー粒子のサイズが不均一なうえ、シェアに弱く、所望の歩留率が再現性よく得られないという問題点がある。
特許文献3には、フィラーの歩留率及び濾水性の向上を目的として、水溶性両性ポリマーを、フィラー含有スラリーに添加し、予備凝集させ、得られた予備凝集フィラースラリーをパルプ繊維スラリーと混合し、ワイヤー上でシートを形成させる紙の製造方法が提案されている。
米国特許第4,799,964号明細書 特開2000−129589号公報 特開2005−194651号公報
上述の通り、製紙における抄紙機のワイヤー上でのフィラーの歩留が低い場合に起こり得る問題に鑑みて、フィラーの歩留のさらなる向上が求められている。
そこで、本発明は、抄紙工程において、フィラーの歩留率が向上する紙の製造方法を提供することを主目的とする。
すなわち、本発明は、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーと、パルプスラリーとが混合された紙料をワイヤー上で抄紙する工程を備える紙の製造方法であって、前記水溶性ポリマーは、下記一般式(I)で表されるカチオン性ビニルモノマー、及び該カチオン性ビニルモノマーと共重合可能なノニオン性ビニルモノマーを含む単量体成分を重合して得られるカチオン性ポリマー100質量部と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムを5〜40mol%含む単量体成分を重合して得られる、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が10dl/g以上であるアニオン性ポリマー0.1〜2質量部と、を含み、前記水溶性ポリマー又は前記カチオン性ポリマーの30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が8dl/g以上である、紙の製造方法を提供する。
Figure 0005835314
上記一般式(I)中、RはH又はCHであり、AはO又はNHであり、Rはヒドロキシル基を置換基として有していてもよい炭素数2〜4のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して、H又は炭素数1〜3のアルキル基であり、RはH、ヒドロキシル基を置換基として有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、又はベンジル基であり、Xはハロゲンイオン、スルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、又は水酸化物イオンである。
この紙の製造方法では、前記水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーを予備凝集させる工程と、その予備凝集されたスラリーと前記パルプスラリーとを混合する工程と、を備えていてもよい。
前記水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーは、前記水溶性ポリマーが添加される前のフィラー含有スラリーの固形分100質量部に対し、前記水溶性ポリマーを0.01〜0.5質量部含んでいてもよい。
この紙の製造方法では、前記カチオン性ポリマーと、前記アニオン性ポリマーとをフィラー含有スラリーに添加して、前記水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーを得る工程を備えていてもよい。
また、前記水溶性ポリマーは、前記アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーの溶液中で前記カチオン性ビニルモノマー及び前記ノニオン性ビニルモノマーを含む単量体成分を重合して得られたカチオン性ポリマーと、を含むものとしてもよい。
なお、本開示において、「(メタ)アクリル」との記載は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を意味する。
また、本開示において製造される紙には、板紙も含まれる。
本発明によれば、抄紙工程において、フィラーの歩留率が向上する紙の製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明に係る実施形態の紙の製造方法は、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーと、パルプスラリーとが混合された紙料をワイヤー上で抄紙する工程を備える。
まず、この紙の製造方法で使用される「水溶性ポリマー」、「フィラー含有スラリー」、及び「パルプスラリー」について説明する。
<水溶性ポリマー>
本実施形態で用いられる水溶性ポリマーは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを含むものであり、それらポリマーを含むポリマー混合物とすることもできる。
この水溶性ポリマーは、後記の一般式(I)で表されるカチオン性ビニルモノマーとノニオン性ビニルモノマーとを共重合して得られるカチオン性ポリマーと、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムを5〜40mol%含む単量体成分を重合して得られるアニオン性ポリマーとを含む。ここで、アニオン性ポリマーの30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度は、8dl/g以上である。また、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの割合は、カチオン性ポリマー100質量部に対してアニオン性ポリマー0.1〜2質量部である。
水溶性ポリマーは、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーがそれぞれ別々に合成されて混合されたもの、並びにアニオン性ポリマーの溶液中に、該溶液中で合成されたカチオン性ポリマーを含むものを用いることができる。
カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーがそれぞれ別々に合成されて混合された水溶性ポリマー(ポリマー混合物)が用いられる場合、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が8dl/g以上であるカチオン性ポリマーが用いられる(後述の第一の態様)。
また、アニオン性ポリマーの溶液中に、該溶液中で合成されたカチオン性ポリマーを含む水溶性ポリマーが用いられる場合、そのカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを含む水溶性ポリマーとしては、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が8dl/g以上である水溶性ポリマー(ポリマー混合物)が用いられる(後述の第二の態様)。
本実施形態における第一の態様に係る水溶性ポリマーは、下記一般式(I)で表されるカチオン性ビニルモノマー、及び該カチオン性ビニルモノマーと共重合可能なノニオン性ビニルモノマーを含む単量体成分を重合して得られ、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が8dl/g以上であるカチオン性ポリマーと、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムを5〜40mol%含む単量体成分を重合して得られ、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が10dl/g以上であるアニオン性ポリマーとを含む。
そして、本実施形態の水溶性ポリマーは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとをカチオン性ポリマー100質量部に対してアニオン性ポリマー0.1〜2質量部の割合で含んでいる。
Figure 0005835314
上記一般式(I)において、RはH又はCHであり、AはO又はNHであり、Rはヒドロキシル基を置換基として有していてもよい炭素数2〜4のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して、H又は炭素数1〜3のアルキル基であり、RはH、ヒドロキシル基を置換基として有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、又はベンジル基であり、Xはハロゲンイオン、スルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、又は水酸化物イオンである。
カチオン性ポリマーは、上記一般式(I)で表されるカチオン性ビニルモノマーと、そのカチオン性ビニルモノマーと共重合可能なノニオン性ビニルモノマーを含む単量体成分を共重合して得られる。このことから、このカチオン性ポリマーは、分子中に、上記一般式(I)で表されるカチオン性ビニルモノマーに由来する構造単位と、そのカチオン性ビニルモノマーと共重合可能なノニオン性ビニルモノマーに由来する構造単位と、を有する共重合体ともいえる。
カチオン性ポリマーの原料となる単量体成分を構成するカチオン性ビニルモノマーは、上記一般式(I)で表される化合物を用いることができる。
上記一般式(I)において、RとしてはHがより好ましく、AとしてはOがより好ましい。また、Rとしては、(置換基を有さない)炭素数2〜4のアルキル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。Rとしては、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。Rとしては、H、及び(置換基を有さない)炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。Xとしては、ハロゲンイオンがより好ましく、塩化物イオンがさらに好ましい。
上記一般式(I)で表されるカチオン性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルのような(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル、その4級塩及び酸塩、並びに、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、その4級塩及び酸塩を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル並びにその4級塩及び酸塩としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩などを挙げることができる。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド並びにそれらの4級塩及び酸塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド塩酸塩などを挙げることができる。
これらのカチオン性ビニルモノマーは、1種又は2種以上を用いることができる。
カチオン性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル4級塩が好適であり、このうち、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩が好ましく、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドがさらに好ましい。
カチオン性ポリマーの原料となる単量体成分を構成するノニオン性ビニルモノマーは、カチオン性ビニルモノマーと共重合可能であれば特に限定されない。
ノニオン性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、並びにダイアセトンアクリルアミド等の水溶性であるN置換低級アルキルアクリルアミド、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、アルキルアクリレート、ヒドロキシアクリレート、及び酢酸ビニルなどが挙げられる。これらのうち、例えば、(メタ)アクリルアミドが好適であり、アクリルアミドがより好ましい。
ノニオン性ビニルモノマーは、1種又は2種以上を用いることができる。
カチオン性ポリマーの原料となる単量体成分は、カチオン性ビニルモノマー及びノニオン性ビニルモノマーの他に、架橋性ビニルモノマーを含んでいてもよい。
架橋性ビニルモノマーは、カチオン性ポリマーに分岐構造をもたらすものであり、1分子中に2個以上の二重結合を有するモノマーを用いることができる。
代表的な好ましい架橋性ビニルモノマーとしては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−メチレンビスメタクリルアミド、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、及びジメタクリル酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらのうち、N,N−メチレンビスアクリルアミドが好ましい。
これらの架橋性ビニルモノマーは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
カチオン性ポリマーの製造方法は、ラジカル重合であれば特に限定されず、水溶液重合、懸濁重合及び乳化重合など、必要に応じて選択することができる。
ラジカル重合において使用する重合開始剤は、特に限定されないが、水溶性のものが好ましい。重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩系及び過酸化物系では、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、及びtert−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
重合開始剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよいが、1種を単独で使用することが好ましい。また、重合開始剤を還元剤と組合せてレドックス系重合開始剤として使用してもよい。この場合の還元剤としては、例えば亜硫酸、亜硫酸塩並びに亜硫酸水素塩、鉄、銅、並びにコバルト等の低次イオン価の塩、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、更にはアルドース、ケトース等の還元糖などを挙げることができる。
重合開始剤として、アゾ化合物を用いることもできる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)−プロパン及びその塩などを使用することができる。これらのアゾ化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
カチオン性ポリマーを合成する際に、合成するカチオン性ポリマーの分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用してもよい。
連鎖移動剤は特に限定されず、代表的な連鎖移動剤としては、例えば、アルコール、硫黄化合物、カルボン酸及びその塩、次亜リン酸ナトリウムなどのリン酸塩リン酸塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブチルアルコール及びグリセロールなどが挙げられ、これらのうち、2−プロパノールが好ましい。
硫黄化合物としては、アルキルチオール、チオウレア、亜硫酸塩及び二硫化物などのスルホン酸化合物が挙げられ、これらのうち、エタンチオール、チオウレア及び重亜硫酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
カルボン酸及びその塩としては、ギ酸及びリンゴ酸並びにそれらの塩が挙げられ、これらのうち、ギ酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
これらの連鎖移動剤としては、次亜リン酸ナトリウム及び/又はギ酸ナトリウムを用いるのがより好ましい。
カチオン性ポリマーの重合方法としては、カチオン性ポリマーの原料となる全単量体成分を反応容器に一括で仕込んで重合する回分(バッチ)重合法が挙げられ、この際、重合開始剤は、重合器に予め又は重合時に一括添加してもよく、重合中に連続的又は間欠的に供給してもよい。重合時に供給する場合は必要に応じて添加速度を変更することができる。
カチオン性ポリマーを合成する際の重合温度は、単一の重合開始剤を用いる場合、一般に30〜100℃であり、レドックス系重合開始剤の場合はより低く、一般に5〜90℃である。重合温度は重合中一定に保っても変動させてもよく、必要に応じて冷却、加熱を実施することができる。
重合容器内の雰囲気は特に制限はないが、重合を速やかに行わせるには窒素ガスのような不活性ガスで置換した方が好ましい。
上記一般式(I)で表されるカチオン性ビニルモノマー及びノニオン性ビニルモノマーを含む単量体成分を重合して得られるカチオン性ポリマーは、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度(以下、「固有粘度」と略記することがある。)が8dl/g以上である性質を有する。カチオン性ポリマーの固有粘度が8dl/g以上であることにより、このカチオン性ポリマーは、分子量が高く、高い凝集力を有する。
カチオン性ポリマーの固有粘度の上限は特に限定されるものではないが、実際に製造可能なカチオン性ポリマーを考慮すると、20dl/g程度以下が好ましい。カチオン性ポリマーの固有粘度の範囲は、8〜20dl/gが好ましく、9〜20dl/gがより好ましく、10〜20dl/gがさらに好ましい。
なお、本開示において、「固有粘度」は、キャノンフェンスケ型粘度計を使用して流下時間を測定し、その測定値から、Hugginsの式及びMead−Fuossの式を用いて算出した値である。
また、カチオン性ポリマーは水溶性であることが好ましい。カチオン性ポリマーの分子構造は直鎖構造及び分岐構造のいずれであってもよい。
カチオン性ポリマーの原料となる単量体成分中のカチオン性ビニルモノマーの使用量(含有量)は、特に限定されないが、5〜50mol%が好ましく、5〜30mol%がより好ましく、5〜25mol%がさらに好ましい。
また、カチオン性ポリマーの原料となる単量体成分中のノニオン性ビニルモノマーの使用量(含有量)は、特に限定されないが、50〜95mol%が好ましく、70〜95mol%がより好ましく、75〜95mol%がさらに好ましい。
カチオン性ポリマーの原料となるカチオン性ビニルモノマー及びノニオン性ビニルモノマーの使用比率は、処理対象となる水質に応じて、任意に選定することができる。例えば、カチオン性ビニルモノマー:ノニオン性ビニルモノマーは、モル比で5:95〜95:5が好ましく、5:95〜50:50がより好ましく、5:95〜35:65がさらに好ましい。
カチオン性ポリマーの合成に際し、架橋性ビニルモノマーを使用する場合、架橋性ビニルモノマーの導入比率は、カチオン性ポリマーの原料となる単量体成分の全単量体に対して、5.0×10−3mol%以下が好ましく、2.0×10−3mol%以下がより好ましい。架橋性ビニルモノマーの導入比率が上記範囲であることにより、カチオン性ポリマーが不溶化し難く、また、固有粘度が8dl/g以上のカチオン性ポリマーが得易くなる。
本実施形態の水溶性ポリマーは、カチオン性ポリマーと共に、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムを5〜40mol%含む単量体成分を重合して得られるアニオン性ポリマーを含む。このことから、アニオン性ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムに由来する構造単位を有する重合体又は共重合体といえる。
アニオン性ポリマーの原料となる単量体成分は、全単量体成分中、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムを5〜40mol%含むことにより、得られるアニオン性ポリマーにおいて、良好なアニオン性基の作用を有し易い。(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムが5mol%未満であると、アニオン性基の作用を有し難くなり、40mol%を超えるとアニオン性が強過ぎるため、カチオン性ポリマーと反応してコンプレックスを生成し、カチオン及びアニオンの官能基の有効濃度が低下するおそれがある。アニオン性ポリマーの原料となる単量体成分は、全単量体成分中、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムを10〜40mol%含むことがより好ましく、10〜30mol%含むことがさらに好ましい。
アニオン性ポリマーの原料となる単量体成分には、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ナトリウムの他に、ノニオン性モノマーを含んでいてもよい。このノニオン性モノマーの含有量は特に限定されないが、アニオン性ポリマーの原料となる全単量体成分中、60〜95mol%が好ましく、70〜90mol%がより好ましい。
この場合のノニオン性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、及びダイアセトンアクリルアミドなどの水溶性であるN置換低級アルキルアクリルアミド等が挙げられる。
これらのノニオン性モノマーは1種又は2種以上を用いることができる。これらのノニオン性モノマーのうち、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
なお、アニオン性ポリマーを合成する際にも、カチオン性ポリマーの説明で述べた重合開始剤を用いて、アニオン性ポリマーの原料となる単量体成分を重合することが可能である。
アニオン性ポリマーは、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が10dl/g以上である。固有粘度が10dl/g以上のアニオン性ポリマーを用いることにより、カチオン性ポリマーとの相乗効果が得易くなる。
アニオン性ポリマーの固有粘度の上限は特に限定されないが、実際に製造可能なアニオン性ポリマーを考慮すると、30dl/g以下であることが好ましい。アニオン性ポリマーの固有粘度の範囲は、10〜30dl/gが好ましく、10〜25dl/gがより好ましく、11〜25dl/gがさらに好ましい。
本実施形態の紙の製造方法に用いられる水溶性ポリマーは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを、カチオン性ポリマー100質量部に対してアニオン性ポリマー0.1〜2質量部の割合で含む。この割合でカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを併用しているため、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの併用による相乗効果が奏され、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの反応による析出物(ポリイオンコンプレックス)が生成し難くなり、その結果、有効成分の濃度を高めることが可能となる。
カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを混合した、第一の態様の製紙用添加剤では、その固有粘度の範囲は特に限定されないが、8〜20dl/gが好ましい。
第一の態様の水溶性ポリマーは、例えば、上述のようにカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーをそれぞれ別々に合成する工程と、カチオン性ポリマー100質量部に対してアニオン性ポリマー0.1〜2質量部の割合で、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを混合する工程と、を行うことで製造することができる。
カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの混合は、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーをそれぞれ合成したときの形態(例えば、粉末状、エマルション状及び液状など)で行ってもよい。また、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーを混合した後に溶解液を調製してもよく、各形態のそれぞれのポリマーを各々別に溶解し、その後に各溶解液を混合して一液とし、フィラー含有スラリーに添加してもよい。この場合、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを含む水溶性ポリマーは、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が8dl/g以上であることが好ましく、8dl/g〜20dl/gであることが好ましい。
次に本実施形態における第二の態様に係る水溶性ポリマーについて説明する。
第二の態様の水溶性ポリマーは、アニオン性ポリマーの溶液中で、カチオン性ポリマーを合成し、その結果得られる、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーを含むものである。この水溶性ポリマーは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとが、カチオン性ポリマー100質量部に対してアニオン性ポリマー0.1〜2質量部の割合で含まれている。また、この水溶性ポリマーは、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が8dl/g以上である。
第二の態様の水溶性ポリマーにおいて、カチオン性ポリマーの原料となる単量体成分としてのカチオン性ビニルモノマー、ノニオン性ビニルモノマー及び架橋性ビニルモノマー、並びにカチオン性ポリマーの合成に用いられ得る重合開始剤及び連鎖移動剤は、上述の第一の態様の水溶性ポリマーの説明で述べたものと同様である。また、第二の態様の水溶性ポリマーに用いられるアニオン性ポリマーも、上述の第一の態様の水溶性ポリマーの説明で述べたアニオン性ポリマーと同様です。
第二の態様の水溶性ポリマーの固有粘度の上限は特に限定されないが、その水溶性ポリマーを実際に製造することを考慮すると、20dl/g以下であることが好ましい。この水溶性ポリマーの固有粘度の範囲は、8〜20dl/gが好ましく、9〜20dl/gがより好ましく、10〜20dl/gがさらに好ましい。
アニオン性ポリマーの溶液を調製するための溶媒は特に限定されず、例えば、水を用いることができ、アニオン性ポリマーの溶液として、アニオン性ポリマーを希釈溶解した水溶液を用いることができる。この場合、アニオン性ポリマーの溶液中のアニオン性ポリマーの濃度は、特に限定されないが、例えば、0.01〜0.5質量%とすることが好ましく、0.1〜0.3質量%とすることがより好ましい。
第二の態様の水溶性ポリマーは、アニオン性ポリマーの溶液中で、カチオン性ポリマーを合成するにあたり、カチオン性ポリマー100質量部に対してアニオン性ポリマー0.1〜2質量部の割合で、かつ、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が8dl/g以上となるように、カチオン性ポリマーを合成する方法にて製造することができる。例えば、カチオン性ポリマーを合成する際に用いられる重合開始剤の添加量を調整することで、得られる水溶性ポリマーに所望の固有粘度をもたせることが可能である。
この第二の態様の水溶性ポリマーの製造方法では、アニオン性ポリマーの溶液中でカチオン性ポリマーを合成することから、カチオン性ポリマーの合成に伴い、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの混合が行われ、高効率で水溶性ポリマーを製造することができる。
さらには、第二の態様の水溶性ポリマーの製造方法を製紙工程の現場において採用することで、水溶性ポリマーの製造と製紙とが一貫して行われ、紙の製造も効率的に行うことが可能となる。
上述の水溶性ポリマーは、カチオン性ポリマー100質量部とアニオン性ポリマー0.1〜2質量部とを含むことで、水溶性を保ったまま緩やかな架橋構造(ネットワーク構造)を形成していると考えられる。その結果、パルプ繊維や炭酸カルシウムなどの無機微粒子を捕捉する効果が向上するものと考えられ、優れた歩留り、濾水性を示すものと考えられる。よって、水溶性ポリマーは、歩留・濾水性向上剤として好適に用いられる。
なお、本実施形態の水溶性ポリマーは、凝集効果に優れることから、例えば、白水に含まれるパルプ繊維を再利用するために、水溶性ポリマーを白水に添加してパルプ繊維を凝集させ、これを回収する用途にも用いることができる。この際には、白水の質量に対して、例えば1〜2ppm程度の水溶性ポリマーを添加することによってパルプ繊維を凝集させることができる。
<フィラー含有スラリー>
上述の水溶性ポリマーは、フィラー含有スラリーに添加され、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーが調整される。フィラー含有スラリーは、フィラー及び水を含有するスラリーである。
フィラー含有スラリーに含まれるフィラーは、特に限定されず、一般的に製紙用に用いられているものが挙げられる。無機化合物のフィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、クレー類(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、非晶質二酸化ケイ素及びケイ酸カルシウム等の非晶質シリカ(通称ホワイトカーボン)、シリカ/炭酸カルシウム複合体、シリカ/二酸化チタン複合体、白土、ベントナイト、珪藻土、並びに硫酸カルシウムなどが挙げられる。有機化合物のフィラーとしては、例えば、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の微小中空粒子、アクリルアミド複合体などが挙げられる。フィラーは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フィラーの形状及び粒子径は、特に限定されず、製造する紙の種類に応じて適宜選択される。
フィラーの形状としては、例えば、球状、粒状、板状、鱗片状、針状、柱状、紡錘状、無定形など種々のものを使用することができる。また、フィラーの粒径については、例えば、平均粒子径で100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。なお、本開示において、平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いた粒子径分布測定により求められる乾式粒度分布における積算体積分布が50%となる粒子径をいう。
フィラー含有スラリーを調整する際、フィラー含有スラリーの固形分(乾燥フィラー質量)の濃度は、特に限定されず、例えば、0.05〜50質量%の範囲で製造する紙の種類及び性質等に応じて適宜選択することができる。
また、フィラー含有スラリーに水溶性ポリマーが添加された「水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリー」は、水溶性ポリマーが添加される前のフィラー含有スラリーの固形分(乾燥フィラー質量)100質量部に対して、水溶性ポリマーをその固形分として0.01〜0.5質量部含むことが好ましい。この水溶性ポリマーの含有割合は、0.1〜0.5質量部がより好ましく、0.1〜0.4質量部がさらに好ましい。フィラー含有スラリーに対する水溶性ポリマーの含有割合が上記範囲のように少量であっても、フィラーの歩留率及び濾水性を向上することができる。水溶性ポリマーの含有割合を少量に抑えることが可能であることから、製造される紙製品の地合低下や製造コストを抑制することが可能となる。なお、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーにおいて、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーは、上述の通り、カチオン性ポリマー100質量部に対して、アニオン性ポリマー0.1〜2質量部の割合で含まれている。
<パルプスラリー>
上述のフィラー含有スラリーと混合されるパルプスラリーは、パルプ繊維(本開示において単に「パルプ」とも称する。)及び水を含有するスラリーである。
パルプは、製造する紙の種類により適宜選択され、機械パルプ、化学パルプ、及び機械パルプと化学パルプの両面を併せ持つ半化学パルプを用いることができる。
より具体的には、パルプとしては、例えば、針葉樹漂白パルプ(NBKP)、広葉樹漂白パルプ(LBKP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP) 、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、デインキングパルプ(DIP)、及びウェストパルプ(WP)等が挙げられる。これらのパルプのうち、1種又は2種以上を用いることができる。
パルプスラリーのパルプ濃度は、特に限定されないが、乾燥質量基準で例えば0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましく、0.3〜1.5質量%がさらに好ましい。
<製造工程>
次に本実施形態の紙の製造方法における製造工程と、上述の水溶性ポリマー、フィラー含有スラリー及びパルプスラリー以外の添加剤などについて説明する。
本実施形態の紙の製造方法では、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーと、パルプスラリーとが混合された紙料を抄紙機のワイヤーパートにおけるワイヤー上で抄紙する工程(抄造工程)を備える。
抄紙機のワイヤーパートの型式は、特に限定されず、例えば、長網式抄紙機、円網式抄紙機、多層式抄紙機、並びにギャップフォーマー型及びオントップワイヤー型等のツインワイヤー式抄紙機などを用いることができる。
抄紙機は、一般に、ストックインレット(紙料流出部)、ワイヤーパート(脱水部)、及びプレスパート(圧搾・搾水部)を有するウェットパート、並びにドライヤーパート(乾燥部)等を備えて構成される。抄紙機を用いた抄造工程では、抄紙機における各パートの工程を経て、紙の製造を行うことができる。より具体的には、調成された紙料は、ストックインレットに送られた後、ワイヤーパートに供給され、ワイヤーパートにおいて脱水されて紙層が形成される。ワイヤーパートの工程を経た紙層はプレスパートにおいて圧力によりさらに脱水され、その後ドライヤーパートにおいて乾燥されることで抄造される。なお、通常、ドライヤーパートの工程を経た後、サイズプレスパート(塗工部)、カレンダー(光沢部)・リールパート(巻取部)の各工程を経て、仕上げ・加工が施される。
本実施形態の紙の製造方法では、抄造工程の前に、抄紙に用いられる原料を調整、配合する調成工程を備えていてもよい。
例えば、本実施形態の紙の製造方法では、水溶性ポリマーが添加される前のフィラー含有スラリーに、水溶性ポリマーを添加して、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーを得る添加工程を備えていてもよい。
また、この紙の製造方法では、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーと、パルプスラリーとを混合して紙料を得る混合工程を備えていてもよい。この混合工程の前には、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーを予備凝集させる予備凝集工程を備えることが好ましく、この混合工程は、予備凝集されたスラリーと、パルプスラリーとを混合する工程とすることが好ましい。
上記添加工程では、フィラー含有スラリーの固形分(乾燥フィラー質量)100質量部に対する水溶性ポリマーの添加量は、水溶性ポリマーの固形分として、0.01〜0.5質量部が好ましく、0.1〜0.5質量部がより好ましく、0.1〜0.4質量部がさらに好ましい。
上述の第一の態様の水溶性ポリマーが用いられる場合、添加工程は、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとをそれぞれフィラー含有スラリーに添加することにより行われる。また、上述の第二の態様の水溶性ポリマーが用いられる場合、添加工程は、アニオン性ポリマーの溶液中で合成されたカチオン性ポリマーを含む当該アニオン性ポリマーの溶液をフィラー含有スラリーに添加することにより行われる。この際、第一の態様及び第二の態様ともに、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーは、上述の通り、カチオン性ポリマー100質量部に対して、アニオン性ポリマー0.1〜2質量部の割合で添加される。
上記予備凝集工程は、例えば、フィラー含有スラリーを撹拌する等の手段により、せん断を加えることにより行うことができる。フィラー含有スラリーの撹拌は、例えば、ホモジナイザー、撹拌ミル、撹拌式湿式粉砕装置、振動ミルなどにより行うことができる。
水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーを予備凝集させて、予備凝集スラリーとすることで、製造される紙の地合、強度等を向上することが可能となる。
上記混合工程では、水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリー(又は予備凝集スラリー)とパルプスラリーとを、パルプスラリー中のパルプの乾燥質量に対して、乾燥質量基準でフィラーが0.5〜50質量%の割合となるように混合することが好ましい。このパルプの乾燥質量に対するフィラーの割合は、1〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%がさらに好ましい。フィラーの割合が多いと紙の白色度や重量感が増し、逆にフィラーの割合が少ないと紙の柔軟性や強度が増すため、製造する紙の種類や所望の性質などに応じて、適したフィラーの割合とすることが好ましい。
なお、上記調成工程においては、例えば、紙料原料(パルプ)の叩解、染料の添加、紙力増強剤、サイズ剤、歩留向上剤、消泡剤、及びスライムコントロール剤等の製紙用薬品の添加、並びに紙料原料の除塵及び脱気などの工程が行われてもよい。
紙力増強剤としては、例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、及びポリビニルアミン等が挙げられる。
サイズ剤としては、例えば、ロジン、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。
歩留向上剤としては、例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリアクリルアミド、及びデンプン類等が挙げられる。
以上詳述した本実施形態の紙の製造方法は、フィラーの歩留率及び濾水性を向上することが可能である。水溶性ポリマーは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを特定比率で含むため、部分的にカチオン基とアニオン基の反応は起こっているものの、ポリイオンコンプレックスの生成によるポリマーの沈殿、析出までには至らず、水溶性を保ったまま緩やかなネットワーク構造を形成していると考えられる。この水溶性ポリマーがフィラー含有スラリーに添加された際、その形成されたネットワークがフィラー粒子を取り込み、さらにそのフィラー粒子表面がポリマーによって改質されたことによって、パルプ繊維と反応し、高い歩留効果を得ることができると考えられる。前記特許文献1及び2のようなカチオン系デンプン凝集剤や、従来のアニオン性ポリマー凝集剤では、このようなネットワークは形成されない。本実施形態の紙の製造方法によれば、上記ネットワーク構造を形成することにより、水溶性ポリマーの使用量が少量であっても、優れたフィラーの歩留率及び濾水性で紙を製造することができると考えられる。
以下に、試験例を挙げて本実施形態の紙の製造方法による効果を説明する。
アクリル酸ナトリウム及びアクリルアミドを所定量含む単量体成分を重合して得たアニオン性ポリマーを用いた。このアニオン性ポリマーとしては、単量体成分の組成が異なり、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が異なる4種を用いた。使用したアニオン性ポリマーの組成と固有粘度を表1に示した。以下、使用したアニオン性ポリマーは、表1記載のサンプル番号(No.)を用いて示す。なお、表1に記載の「NaA」はアクリル酸ナトリウムを表し、「AAm」はアクリルアミドを表す。
Figure 0005835314
<製造例1>
アニオン性ポリマーA1の0.1質量%水溶液に、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(以下「DAA」と略す、分子量193.5)の80質量%水溶液10.9g、粉末アクリルアミド(以下「AAm」と略す、分子量71)18.5g、及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド(以下「MBA」と略す、分子量140)の0.009質量%水溶液2.5mlを混合し、最終的にA1の0.1%水溶液にて全体を100mlにメスアップした。その水溶液を、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた300mlセパラブルフラスコに入れ、窒素バブリング後、1.36質量%に調製した過硫酸カリウム(以下「KPS」と略す)水溶液を1ml添加し、40℃に加熱して重合を12時間行った。
得られた重合ゲルの一部をアセトンで沈殿させ、析出物を真空乾燥することにより求めた固形物濃度は26.6質量%で、重合率は99.3%であった。このポリマー混合物の固有粘度は、12.9dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA1」とする。
なお、カチオン性ポリマーの組成比は、DAA/AAm/MBA=15/85/5×10−4(mol%)で、このカチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA1の比率は0.373質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A1は0.373質量部)である。このカチオン性ポリマーの組成比において、MBAの比率は、DAA及びAAmに比べて微量のため、DAAとAAmの合計に対するモル%として記し、後記表2及び表3の記載も同様とした。
<製造例2>
製造例1におけるアニオン性ポリマーA1をアニオン性ポリマーA2とした以外は製造例1と同じ条件で合成を行い、ポリマー混合物を得た。固形物濃度は26.9質量%、重合率は100.2%、固有粘度は、11.6dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA2」とする。
なお、このポリマー混合物では、カチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA2の比率は0.373質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A2は0.373質量部)であった。
<製造例3>
MBAを用いなかった以外は製造例1と同じ条件で合成を行い、ポリマー混合物を得た。固形物濃度は27.1質量%、重合率は101.8%、固有粘度は、11.3dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA3」とする。
なお、このポリマー混合物では、カチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA1の比率は0.373質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A1は0.373質量部)であった。
<製造例4>
製造例1におけるアニオン性ポリマーA1をアニオン性ポリマーA2とし、カチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA2の比率を2.0質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A2は2.0質量部)とした以外は製造例1と同じ条件で合成を行い、ポリマー混合物を得た。固形物濃度は27.5質量%、重合率は100.1%、固有粘度は、13.0dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA4」とする。
<製造例5>
製造例1におけるアニオン性ポリマーA1の代わりにアニオン性ポリマーA3を用いた以外は製造例1と同じ条件で合成を行い、ポリマー混合物を得た。固形物濃度は26.7質量%、重合率は99.6%、固有粘度は、10.8dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA5」とする。
なお、このポリマー混合物では、カチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA3の比率は0.373質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A2は0.373質量部)であった。
<製造例6>
製造例1におけるKPS水溶液の添加量1mlを10mlに変更した以外は製造例1と同じ条件で合成を行い、ポリマー混合物を得た。固形物濃度は26.9質量%、重合率は100.4%、固有粘度は、6.9dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA6」とする。
なお、このポリマー混合物では、カチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA1の比率は0.373質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A1は0.373質量部)であった。
<製造例7>
DAAの80質量%水溶液を10.9g、AAm18.1g、MBAの0.009質量%水溶液を2.5ml、及び1.36質量%KPS水溶液を1ml用い、これらを混合し、100mlにメスアップした混合液に、撹拌下、アニオン性ポリマーA2粉末を2.5gを溶かしこみ、窒素バブリング後、40℃に加熱して重合を12時間行った。なお、器具類、基本的な操作は製造例1と同条件で行った。固形物濃度は26.1質量%、重合率は97.4%、固有粘度は、9.8dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA7」とする。
なお、このポリマー混合物では、カチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA2の比率は0.373質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A2は0.373質量部)であった。
<製造例8>
製造例1においてアニオン性ポリマーA1の水溶液濃度0.1質量%を0.05質量%とした以外は、製造例1と同じ条件で合成を行い、ポリマー混合物を得た。固形物濃度は27.0質量%、重合率は100.7質量%、固有粘度は、10.6dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA8」とする。
なお、このポリマー混合物では、カチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA1の比率は0.05質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A1は0.05質量部)であった。
<製造例9>
製造例1におけるアニオン性ポリマーA1をアニオン性ポリマーA4とした以外は、製造例1と同じ条件で合成を行い、ポリマー混合物を得た。固形物濃度は27.1質量%、重合率は101.1%、固有粘度は、8.1dl/gであった。このポリマー混合物のサンプル名を「DA9」とする。
なお、このポリマー混合物では、カチオン性ポリマーに対するアニオン性ポリマーA4の比率は0.373質量%(カチオン性ポリマー100質量部に対し、A4は0.373質量部)であった。
<製造例10>
アニオン性ポリマー及びMBAを用いなかった以外は製造例1と同じ条件で合成を行い、カチオン性ポリマーを得た。固形物濃度は26.9質量%、重合率は100.4%、固有粘度は、13.4dl/gであった。このカチオン性ポリマーのサンプル名を「D1」とする。
<製造例11>
アニオン性ポリマーを用いなかった以外は製造例1と同じ条件で合成を行い、カチオン性ポリマーを得た。固形物濃度は26.8質量%、重合率は100.0%、固有粘度は、11.8dl/gであった。このカチオン性ポリマーのサンプル名を「D2」とする。
<製造例12>
製造例1におけるKPS水溶液の添加量1mlを10mlに変更すると共に、アニオン性ポリマーを用いなかった以外は、製造例1と同じ条件で合成を行い、カチオン性ポリマーを得た。固形物濃度は26.7質量%、重合率は99.6%、固有粘度は、7.4dl/gであった。このカチオン性ポリマーのサンプル名を「D3」とする。
以上述べた各製造例のサンプル一覧を表2に示す。
Figure 0005835314
<濾水試験>
製造例で製造した各ポリマーを用いて濾水試験を行った。なお、各試験例で使用した水溶性ポリマーについては後述する。
濾水試験では、カナディアン・スタンダード・フリーネス(CSF)450mlに叩解した新聞故紙を絶乾質量が0.6質量%になるように添加した後、これに軽質炭酸カルシウム(ブリリアント1500 白石工業株式会社製)を絶乾紙料に対して40質量%になるように加えたものを紙料とした。
パルプスラリー180mlを容量300mlのポリビーカーにとり、そこに後述する各試験例で用いた「添加剤」の0.1質量%水溶液を添加し、タービン羽根を備えた撹拌機を用いて、250rpmで20秒間撹拌を行う。次いで、ナイロン濾布を敷いたヌッチェロートに、内径50mmの金属製の円筒を置き、その中へ凝集したパルプスラリーを注ぎ込み、メスシリンダーを用いて10秒後のろ液量を測定する。さらに、濾布上に残った湿紙をポリエステル濾布にとり、3.0kg/cmの圧力をかけて60秒圧搾し、プレス後の湿紙の含水率を測定する。
<試験例1〜4>
試験例1では、ポリマー混合物「DA1」を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
試験例2では、ポリマー混合物「DA2」を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
試験例3では、ポリマー混合物「DA3」を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
試験例4では、ポリマー混合物「DA4」を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
<試験例5〜7>
試験例5では、カチオン性ポリマーD1と、このD1の100質量部に対してアニオン性ポリマーA1を1.0質量部(D1に対してA1を1.0質量%)ブレンドしたポリマー混合物を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
試験例6では、カチオン性ポリマーD2と、このD2の100質量部に対してアニオン性ポリマーA2を0.4質量部(D2に対してA2を0.4質量%)ブレンドしたポリマー混合物を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
試験例7では、カチオン性ポリマーD2と、このD2の100質量部に対してアニオン性ポリマーA1を0.1質量部(D2に対してA1を0.1質量%)ブレンドしたポリマー混合物を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
<比較試験例1〜4>
比較試験例1ではポリマー混合物「DA5」を、比較試験例2ではポリマー混合物「DA6」を、比較試験例3ではポリマー混合物「DA7」を、比較試験例4ではポリマー混合物「DA8」を、それぞれ添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
<比較試験例5及び6>
比較試験例5ではカチオン性ポリマー「D1」を、比較試験例6ではカチオン性ポリマー「D2」をそれぞれ添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
<比較試験例7及び8>
比較試験例7では、カチオン性ポリマー「D1」と、このD1の100質量部に対してアニオン性ポリマー「A3」を0.5質量部(D1に対してA3を0.5質量%)ブレンドしたポリマー混合物を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
比較試験例8では、カチオン性ポリマー「D3」と、このD3の100質量部に対してアニオン性ポリマー「A1」を0.5質量部(D3に対してA1を0.5質量%)ブレンドしたポリマー混合物を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
<比較試験例9及び10>
比較試験例9では、カチオン性ポリマー「D2」と、このD2の100質量部に対してアニオン性ポリマー「A1」を2.5質量部(D2に対してA1を2.5質量%)ブレンドしたポリマー混合物を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
比較試験例10では、カチオン性ポリマー「D2」と、このD2の100質量部に対してアニオン性ポリマー「A1」を0.08質量部(D2に対してA1を0.08質量%)ブレンドしたポリマー混合物を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
<比較試験例11>
比較試験例11では、ポリマー混合物「DA9」を添加剤として用い、パルプスラリーの濾水試験を行った。
各試験例の試験条件一覧を表3に示し、各試験結果を表4に示す。
Figure 0005835314
Figure 0005835314
試験例1〜7においては、比較試験例1〜11よりも、10秒後のろ液量が多く、プレス後の含水率が低いことが確認された。この結果、試験例1〜6の水溶性ポリマーは、少ない添加量でも濾水性を向上できることが確認された。そのため、抄紙する際に、試験例1〜6の水溶性ポリマーを用いることで、紙製品の地合低下や製造コストを抑制することが可能になると考えられる。
<歩留試験>
次に、以下の実施例及び比較例により、製造例で製造した各ポリマー等を用いて歩留試験を行った。
(実施例1〜7)
製紙工場より、DIP、NBKP、TMPの各パルプ試料及び実機の白水を採取し、DIP60質量%、NBKP10質量%、TMP30質量%(全て乾燥質量基準、以下同じ)となるように調整し、パルプスラリーとした。これを紙料(A)とする。紙料(A)のパルプスラリー濃度は0.65質量%であった。
次に、フィラーとしてホワイトカーボン(株式会社トクヤマ製の商品名:トクシール(登録商標)GU−N)を使用し、製造例で製造した水溶性ポリマーをホワイトカーボンに対し0.1質量%添加し、その後800rpm、10秒の条件にて、攪拌機によりせん断力を加え、予備凝集フィラースラリーを調製した。これを紙料(B)とする。紙料(B)の水中フィラー濃度は、0.11質量%(対紙料B)であった。
なお、水溶性ポリマーとしては、実施例1では「DA1」、実施例2では「DA2」、実施例3では「DA3」、実施例4では「DA4」、実施例5では「D1」の100質量部と「A1」の1質量部との組み合わせ、実施例6では「D2」の100質量部と「A2」の0.4質量部との組み合わせ、実施例7では「D2」の100質量部と「A1」の0.1質量部との組み合わせをそれぞれ用いた。
続いて、紙料(A)を、ミューテック社製の濾水歩留試験機DFS(ダイナミックフィルトレーションシステム)に投入し、硫酸バンドを対乾燥パルプ3.5質量%、サイズ剤(星光PMC株式会社製の商品名:AL120)を対乾燥パルプ0.2質量%、紙力剤(ハリマ化成グループ株式会社製の商品名:EX230)を対乾燥パルプ0.3質量%、上記紙料(B)をホワイトカーボンが対乾燥パルプ4質量%となるようにこの順に添加し、さらにカチオン性歩留剤(栗田工業株式会社製の商品名:ハイホールダー(登録商標)220)を対乾燥パルプ0.015質量%加え、ろ液(C)を採取した。なお、DFSの設定条件は、ミューテック社の推奨に従った。
採取したろ液(C)中のフィラー(フィラー分は灰分の測定方法ISO1762−1974に従った)の濃度を測定し、下記の式に従い、フィラーの歩留率を算出した。結果を表5に示す。
・SSのFPR=[1−ろ液(C)のSS濃度/紙料(B)のSS濃度]×100(%)
(SS:懸濁固形分(Suspended Solid)、FRP:一次歩留率(First Pass Retention))
・フィラーのFPAR=[1−ろ液(C)の灰分濃度/紙料(B)の灰分濃度]×100(%)
(FPAP:灰分一次歩留率(First Pass Ash Retention))
なお、紙料(B)のSS濃度、及び紙料(B)の灰分濃度は、それぞれインレットにおける紙料(B)のSS濃度及び灰分濃度であり、これらもあわせて表5に示した。
(比較例1〜15)
比較例1では、実施例で用いた紙料(B)を、製造例で製造した水溶性ポリマーを添加しない紙料(B)としたこと、及び実施例で用いたカチオン性歩留剤を添加しなかったこと以外は、実施例と同様の試験を行った。
比較例2では、実施例で用いた紙料(B)を、製造例で製造した水溶性ポリマーを添加しない紙料(B)とした以外は、実施例と同様の試験を行った。
比較例3では、実施例で用いた紙料(B)における水溶性ポリマーをカチオン化デンプン(日本エヌエスシー株式会社製の商品名:Cato302)に変更した以外は、実施例と同様の試験を行った。
比較例4では、実施例で用いた紙料(B)における水溶性ポリマーをカチオン性歩留剤(栗田工業株式会社製の商品名:ハイホールダー220)に変更した以外は、実施例と同様の試験を行った。
比較例5〜15では、実施例で用いた紙料(B)における水溶性ポリマーを、本発明の範囲外の水溶性ポリマーに変更した以外は、実施例と同様の試験を行った。具体的には、比較例5では「DA5」、比較例6では「DA6」、比較例7では「DA7」、比較例8では「DA8」、比較例9では「D1」、比較例10では「D2」、比較例15では「DA8」をそれぞれ用いた。
比較例11では「D1」の100質量部と「A3」の0.5質量部との組み合わせ、比較例12では「D3」の100質量部と「A1」の0.5質量部との組み合わせ、比較例13では「D2」の100質量部と「A1」の2.5質量部との組み合わせ、比較例14では「D2」の100質量部と「A1」の0.08質量部との組み合わせ、比較例15では「DA9」をそれぞれ用いた。
比較例1〜15の結果もあわせて表5に示す。
Figure 0005835314
(実施例8〜14)
製紙工場より、DIP、NBKP、LBKPの各パルプ試料および実機の白水を採取し、DIP20質量%、NBKP10質量%、LBKP70質量%(全て乾燥質量基準、以下同じ)となるように調整し、パルプ繊維スラリーとした。これを紙料(D)とする。紙料(A)のパルプ繊維濃度は0.93質量%であった。
次に、フィラーとしてクレー(白石カルシウム株式会社製の商品名:KAOGLOSS)を使用し、製造例で製造した水溶性ポリマーをクレーに対し0.4質量%添加し、その後800rpm、40秒の条件にて、攪拌機によりせん断力を加え、予備凝集フィラースラリーを調製した。これを紙料(E)とする。紙料(E)の水中フィラー濃度は、0.19質量%であった。
なお、水溶性ポリマーとしては、実施例8では「DA1」、実施例9では「DA2」、実施例10では「DA3」、実施例11では「DA4」、実施例12では「D1」の100質量部と「A1」の1.0質量部との組み合わせ、実施例13では「D2」の100質量部と「A2」の0.4質量部との組み合わせ、実施例14では「D2」の100質量部と「A1」の0.1質量部との組み合わせをそれぞれ用いた。
続いて、紙料(D)を、ミューテック社製の濾水歩留試験機DFS(ダイナミックフィルトレーションシステム)に投入し、硫酸バンドを対乾燥パルプ4質量%、カチオン化デンプン(日本エヌエスシー株式会社製の商品名:Cato302)を対乾燥パルプ0.8質量%、AKD(アルキルケテンダイマー)を対乾燥パルプ0.1質量%、サイズ剤(星光PMC株式会社製の商品名:AS262)を対乾燥パルプ0.1質量%、上記紙料(E)をクレーが対乾燥パルプ6質量%となるようにこの順に添加し、さらにカチオン性歩留剤(栗田工業株式会社製の商品名:ハイホールダー(登録商標)220)を対乾燥パルプ0.02質量%、ベントナイト(Ciba Specialty Chemicals社製の商品名:Organosorb O)を対乾燥パルプ0.1質量%加え、ろ液(F)を採取した。なお、DFSの設定条件は、ミューテック社の推奨に従った。
採取したろ液(F)中のフィラー(フィラー分は灰分の測定方法ISO1762−1974に従った)の濃度を測定し、下記の式に従い、フィラーの歩留率を算出した。結果を表6に示す。
・SSのFPR=[1−ろ液(F)のSS濃度/紙料(E)のSS濃度]×100(%)
(SS:懸濁固形分(Suspended Solid)、FRP:一次歩留率(First Pass Retention))
・フィラーのFPAR=[1−ろ液(F)の灰分濃度/紙料(E)の灰分濃度]×100(%)
(FPAP:灰分一次歩留率(First Pass Ash Retention))
なお、紙料(E)のSS濃度、及び紙料(E)の灰分濃度は、それぞれインレットにおける紙料(E)のSS濃度及び灰分濃度であり、これらもあわせて表6に示した。
(比較例16〜30)
比較例16では、実施例8〜14で用いた紙料(E)を、製造例で製造した水溶性ポリマーを添加しない紙料(E)としたこと、及び実施例8〜14で用いたカチオン性歩留剤を添加しなかった以外は、実施例8〜14と同様の試験を行った。
比較例17では、実施例8〜14で用いた紙料(E)を、製造例で製造した水溶性ポリマーを添加しない紙料(E)としたこと以外は、実施例8〜14と同様の試験を行った。
比較例18では、実施例8〜14で用いた紙料(E)における水溶性ポリマーをカチオン化デンプン(日本エヌエスシー株式会社製の商品名:Cato302)に変更した以外は、実施例8〜14と同様の試験を行った。
比較例19では、実施例8〜14で用いた紙料(E)における水溶性ポリマーをカチオン性歩留剤(栗田工業株式会社製の商品名:ハイホールダー220)に変更した以外は、実施例8〜14と同様の試験を行った。
比較例20〜30では、実施例8〜14で用いた紙料(E)における水溶性ポリマーを、本発明の範囲外の水溶性ポリマーに変更した以外は、実施例8〜14と同様の試験を行った。具体的には、比較例20では「DA5」、比較例21では「DA6」、比較例22では「DA7」、比較例23では「DA8」、比較例24では「D1」、比較例25では「D2」、比較例26では「D1」の100質量部と「A3」の0.5質量部との組み合わせ、比較例27では「D3」の100質量部と「A1」の0.5質量部との組み合わせ、比較例28では「D2」の100質量部と「A1」の2.5質量部との組み合わせ、比較例29では「D2」の100質量部と「A1」の0.08質量部との組み合わせ、比較例30では「DA9」をそれぞれ用いた。
比較例16〜30の結果もあわせて表6に示す。
Figure 0005835314
以上の結果から、比較例1〜30に比べて、実施例1〜14で用いた水溶性ポリマーをフィラー含有スラリーに添加した場合、優れた歩留率が得られることが確認された。
この結果、本発明によれば、上述のカチオン性ポリマーと上述のアニオン性ポリマーとを特定量にて含む水溶性ポリマーを製紙用添加剤として抄紙工程に用いることで、フィラーの歩留率及び濾水性を向上することができる。

Claims (5)

  1. 水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーと、パルプスラリーとが混合された紙料をワイヤー上で抄紙する工程を備える紙の製造方法であって、
    前記フィラーは、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、クレー類及び非晶質シリカから選ばれる1種又は2種以上であり、
    前記水溶性ポリマーは、
    下記一般式(I)で表されるカチオン性ビニルモノマー、及び該カチオン性ビニルモノマーと共重合可能なノニオン性ビニルモノマーを含む単量体成分を重合して得られるカチオン性ポリマー100質量部と、
    (メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムを5〜40mol%含む単量体成分を重合して得られる、30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が10dl/g以上であるアニオン性ポリマー0.1〜2質量部と、を含み、
    前記水溶性ポリマー又は前記カチオン性ポリマーの30℃の1規定NaCl水溶液中における固有粘度が8dl/g以上である、
    紙の製造方法。
    Figure 0005835314
    (上記一般式(I)中、RはH又はCHであり、AはO又はNHであり、Rはヒドロキシル基を置換基として有していてもよい炭素数2〜4のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して、H又は炭素数1〜3のアルキル基であり、RはH、ヒドロキシル基を置換基として有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、又はベンジル基であり、Xはハロゲンイオン、スルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、又は水酸化物イオンである。)
  2. 前記水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーを予備凝集させる工程と、
    その予備凝集されたスラリーと前記パルプスラリーとを混合する工程と、
    を備える請求項1に記載の紙の製造方法。
  3. 前記水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーは、前記水溶性ポリマーが添加される前のフィラー含有スラリーの固形分100質量部に対し、前記水溶性ポリマーを0.01〜0.5質量部含む、請求項1又は2に記載の紙の製造方法。
  4. 前記カチオン性ポリマーと、前記アニオン性ポリマーとをフィラー含有スラリーに添加して、前記水溶性ポリマーを含むフィラー含有スラリーを得る工程を備える請求項1〜3の何れか1項に記載の紙の製造方法。
  5. 前記水溶性ポリマーは、前記アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーの溶液中で前記カチオン性ビニルモノマー及び前記ノニオン性ビニルモノマーを含む単量体成分を重合して得られたカチオン性ポリマーとを含むものである、請求項1〜4の何れか1項に記載の紙の製造方法。
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