JP5241446B2 - 塗工紙の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塗工紙及びその製造方法に関する。
近年、印刷物のビジュアル化やカラー化が急速に進み、非塗工印刷用紙と比較し、紙表面に平滑な塗工層をインキ受理層とする塗工紙の需要も年々増加している。また、近年の低コスト化指向により、従来の紙厚、印刷品質を維持しながら軽量化する要望が増してきている。塗工紙の印刷品質には塗工層の平滑性が重要となり、一般的にスーパーカレンダーやソフトニップカレンダー等で表面平滑化処理を施している。しかしこの処理は用紙を加圧して表面の平滑性を高めるものであるため同時に密度が増し、紙厚が低下する。このため紙厚を維持しようとすると紙の重量が増加する。
そこで、高い光沢度と平滑性を有した、低密度で紙厚が厚い紙の開発が試みられている。例えば、密度0.30〜1.00g/cm3の紙に有機高分子ゲルの乾燥皮膜層を形成させた後、親水性塗料を塗工する技術(特許文献1)、特定のガラス転移点を有し、平均粒子径が100〜200nmのスチレン含有量が30重量%以上の共重合体ラテックスを含有する塗工層を、該塗工層を有する塗工紙の水分率を3〜8重量%に調整して、熱カレンダーにて平坦化処理をする技術(特許文献2)、片面当り1.5〜10g/m2の塗工層を設けてなる塗工紙の製造方法において、塗工装置の前で原紙の水分含有量2〜8重量%で特定のロールから構成されるカレンダー装置で平滑化処理をする技術(特許文献3)等が開示されている。
特開2007−107171号公報 特開2006−188783号公報 特開平6−146197号公報
しかしながら、特許文献1では多価金属イオンを含有させた紙と特定の水溶性高分子溶液処理が必要であり、特許文献2では特定の塗工液に限定される。また、特許文献3では、塗工前に特定のロールによる平滑化処理の工程が必要である。
本発明の課題は、光沢度の高い塗工紙が得られる塗工紙の製造方法を提供することである。
本発明は、パルプを主原料とする未塗工原紙に、高分子化合物を含有する表面処理剤を塗工して塗工原紙を得る表面処理工程と、前記塗工原紙に、顔料と結着剤と水とを含有する顔料スラリーを塗工してカレンダー前塗工紙を得る塗工工程と、前記カレンダー前塗工紙をカレンダー処理し、カレンダー後塗工紙を得るカレンダー工程とを有する、白紙光沢度が40%以上である塗工紙の製造方法であって、
前記高分子化合物は、5重量%の水溶液の25℃におけるB型粘度が1800mPa・s以上120000mPa・s以下であり、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paであり、
前記顔料スラリー中の水の比率(重量%)と前記高分子化合物の片面あたりの塗工量(g/m2)との比(顔料スラリー中の水の比率/高分子化合物の片面あたりの塗工量)が25〜1000の範囲である、
塗工紙の製造方法に関する。
また、本発明は、上記本発明の塗工紙の製造方法を用いて得られる、密度が1.15g/cm3以下である塗工紙に関する。
本発明の表面処理剤を原紙表面に塗工・乾燥したとき、上記課題が解決される理由は明らかではないが、上記高分子化合物が原紙表面に存在することにより、顔料と結着剤を主成分とした顔料スラリーを塗工した際、顔料スラリー中の水分と、原紙表面に存在する上記高分子化合物とが、ゲルを形成することにより、顔料スラリー中の顔料が紙内部へ浸透することを抑制しているためと推定される。
本発明によれば、原紙内部への塗料の浸透を抑制することができるため、高光沢性の塗工紙の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、少ない塗料塗布量でも高光沢性の塗工紙が得られるため、より軽量な塗工紙を提供しうる。
塗工紙は、例えば、パルプ原料の希薄液から金網上で紙層を形成させた後、プレス工程、乾燥工程、サイズ工程、乾燥工程、塗工工程、乾燥工程及びカレンダー工程を経て、要すればさらに調湿工程を経て製造される。本発明では、これらの工程の中で、塗工工程以前に特定の表面処理剤を使用する点に特徴の一つを有する。ここで、本発明では、表面処理工程の前の紙を未塗工原紙、表面処理工程後であって塗工工程前の紙を塗工原紙、塗工工程後であってカレンダー工程前の紙をカレンダー前塗工紙、カレンダー工程後(調湿工程がある場合は調湿工程前)の紙をカレンダー後塗工紙という。なお、本発明において塗工紙とは、カレンダー工程後塗工紙及び調湿工程後塗工紙の両方を含む。
[表面処理工程]
本発明に係る表面処理工程は、パルプを主原料とする未塗工原紙に所定の高分子化合物を含有する表面処理剤を塗工して塗工原紙を得る工程である。表面処理剤の塗布は未塗工原紙の片面及び両面のいずれであってもよい。
表面に表面処理剤を塗布された塗工原紙を用いると、顔料スラリーを塗布した際に顔料の原紙中への浸透が抑制され、塗工層の厚さが増加し、カレンダー処理で塗工層の表面がより平坦化されるため、得られる塗工紙の光沢が向上するものと推定される。
本発明に係る高分子化合物は、塗工紙の光沢性向上の観点から、5重量%の水溶液の25℃におけるB型粘度が1800mPa・s以上120000mPa・s以下である。この粘度は、高分子化合物の5重量%の水溶液について、BM型粘度計を用いて回転数60rpm、25℃で測定されたものであるが、この方法では高粘度領域の粘度を正しく測定できない場合がある。その場合は、高分子化合物の5重量%の水溶液について、B8R型粘度計を用いて回転数5rpm、25℃で測定された粘度を採用してもよい。従って、本発明では、高分子化合物の5重量%水溶液について、(I)BM型粘度計を用いて回転数60rpm、25℃で測定された粘度〔以下、粘度(I)という〕及び(II)B8R型粘度計を用いて回転数5rpm、25℃で測定された粘度〔以下、粘度(II)という〕の少なくとも一方が、1800mPa・s以上120000mPa・s以下であればよい。一般的には、粘度(I)の方法は、10000mPa・s以下の粘度の測定に適しており、また、粘度(II)方法は、10000mPa・s以上の粘度の測定に適している。
これら粘度(I)、(II)は、詳細には実施例に記載の方法により測定される値である。
本発明に係る高分子化合物は、5重量%の水溶液の25℃におけるB型粘度が、好ましくは2400mPa・s以上、より好ましくは3000mPa・s以上であり、好ましくは110000mPa・s以下、より好ましくは100000mPa・s以下である。
本発明に係る高分子化合物は、塗工紙の光沢性向上及び高分子化合物の曳糸性低減の観点から、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paであり、より好ましくは10〜2200Paであり、より好ましくは50〜2000Pa、さらに好ましくは100〜1800Paである。一般に、線状高分子は、ずり応力を加えると、ずり方向と法線方向に力が働く。この法線方向に働く力は法線応力と呼ばれ、線状高分子のような分子間の絡み合いが強いものでは法線応力が大きくなる。一方、分子内に架橋構造を有するような高分子化合物では分子間の絡み合いが少ないため、法線応力としては、低い値を示すと推定される。ここで、剪断速度1000(1/秒)における粘度300mPa・sでの法線応力は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明に係る高分子化合物は、前述の粘度及び法線応力を満足するものであれば特に限定されないが、具体例としては、(i)ポリアクリルアミド、(ii)変性ポリアクリルアミド、(iii)ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノ基を有するスチレン、ビニルピリジン、N−ビニル複素環化合物、アミノ基を有する単量体の酸中和物あるいは4級アンモニウム塩、ジアリル型4級アンモニウム塩等のカチオン性基含有ビニル単量体と、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)置換(メタ)アクリルアミド等の親水性ノニオン性基含有ビニル単量体あるいはオレフィン系不飽和カルボン酸またはその塩、オレフィン系不飽和カルボン酸エステル、オレフィン系不飽和スルホン酸またはその塩、オレフィン系不飽和リン酸またはその塩、オレフィン系不飽和リン酸エステル等の重合性不飽和基を有するアニオン性基含有ビニル単量体と、からそれぞれ選ばれる少なくとも一種以上を含む単量体を重合して得られるビニル共重合体等のカチオン性基含有ビニル共重合体、(iv)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びカチオン化セルロース等のセルロース化合物、(v)澱粉、エーテル化澱粉(カルボキシメチル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、カチオン化澱粉等)、エステル化澱粉(酢酸澱粉およびリン酸澱粉等)、両性化澱粉、及び前記澱粉の架橋体(メチロール架橋、リン酸架橋、尿素リン酸エステル架橋、ジカルボン酸架橋、エピクロ架橋等)等の澱粉類、(vi)ショ糖、乳糖等の糖類、(vii)グアガム、アラビアガム、キサンタンガム、ヒドロキシアルキル化グアガム、カチオン化グアガム等のグアガム変成物、(viii)にかわ、ゼラチン、寒天等の上記以外の天然高分子類が挙げられる。
前記ビニル単量体は、単独または2種以上を混合して用いることができる。前記(iii)におけるビニル共重合体としては、カチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体或いはアニオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体がより好ましく、カチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体或いはアニオン性基含有ビニル単量体とを主成分とする単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体がさらに好ましい。また、少なくとも2個のビニル基等を分子中に有する架橋性ビニル単量体を構成成分として前記ビニル共重合体中に含むビニル共重合体も挙げられる。カチオン性基含有共重合体は、構成単量体中、前記親水性ノニオン性基含有ビニル単量体或いは前記アニオン性基含有ビニル単量体と前記カチオン性基含有ビニル単量体の合計が80〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは90〜99.9モル%である。
これらの中でも、カチオン性基含有ビニル共重合体(なかでもカチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体とを主成分とする単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体)、セルロース化合物及び澱粉類から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
表面処理工程に用いられる表面処理剤は、前記所定の高分子化合物と水とを含有する液状混合物、なかでも水溶液が好ましい。表面処理剤、なかでも高分子化合物と水とを含有する水溶液における高分子化合物の濃度は0.5〜4重量%が好ましく、更に1〜3重量%が好ましい。また、表面処理剤、中でも高分子化合物水溶液は、塗工紙の軽量化の観点から、顔料スラリーと異なる組成のものが用いられる。
本発明に係る表面処理剤は、これら所定の高分子化合物と水とを含有する水溶液であることが好ましく、該水溶液の粘度(40℃)は、塗布のしやすさの観点から1〜5000mPa・sが好ましく、1〜4000mPa・sがより好ましい。
本発明では、10〜90℃の表面処理剤を未塗工原紙に塗工することが好ましい。この温度は、塗工の際の表面処理剤の温度(液温)であり、光沢度向上の観点から、20〜80℃、更に30〜75℃、より更に40〜70℃、より更に50〜70℃が好ましい。
表面処理剤の塗布は通常の製紙用塗工装置を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、塗工装置としては2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、キスコーター、ロッド(バー)コーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーなどが挙げられるが、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター等の塗工装置による塗布法が表面処理剤を紙表面に多く留めることができるので、より好ましく使用される。なお、これらの製紙用塗工装置には、通常、塗工液(表面処理剤)の温度を調整できる手段が備えられているため、上記温度で表面処理剤を用いるのにも適している。
表面処理剤の塗布量は特に限定されないが、紙の軽量化の観点から、未塗工原紙の片面あたり、高分子化合物の乾燥重量として1g/m2以下が好ましく、0.8g/m2以下がより好ましい。また、光沢度向上の観点からは、0.05g/m2以上が好ましく、0.1g/m2以上がより好まく、0.2g/m2以上が更に好ましく、0.25g/m2以上がより更に好ましい。よって、未塗工原紙の片面あたり0.05〜1g/m2が好ましい。
表面処理剤を塗布する未塗工原紙としては、通常の塗工紙用の原紙を用いることができる。未塗工原紙を得るための抄紙方法は、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式、及び傾斜ワイヤー式抄紙機等の一般的な抄紙機を用いることができる。特に紙の表裏差を少なくする観点からツインワイヤー式が好ましい。
原紙に用いるパルプとしては、植物性繊維である木材や草木の繊維を原料とするいずれのパルプも使用できる。すなわち、晒化学パルプ(NBKP、LBKP等)や機械パルプ(TMP、BCTMP、GP、RGP等及びその漂白処理をしたパルプ)、高収率パルプ(SCP、CGP等及びその漂白処理をしたパルプ)並びに、古紙パルプ及び脱墨古紙パルプ(DIP)及びその漂白処理をしたパルプ(BDIP)等の回収パルプを使用することができる。塗工紙の光沢の点から、使用するパルプ中、化学パルプを50重量%以上含有することが好ましく、90重量%以上含有することがより好ましい。
なお、抄紙時には必要に応じて、一般に用いられるサイズ剤、填料、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤等を添加してもよい。サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤等が挙げられる。填料として炭酸カルシウム等が挙げられる。
さらに、低密度の観点から、未塗工原紙が、パルプスラリーに繊維結合阻害剤を添加後、抄紙して得られたものであることが好ましい。
繊維結合阻害剤は、パルプ繊維間結合を阻害する作用を有する化合物である。繊維結合阻害剤としては、疎水基と親水基を持つ界面活性剤として用いられる化合物が挙げられ、例えば、紙用嵩高剤を用いることができる。紙用嵩高剤は親水基がパルプ表面に吸着し、疎水基によりパルプ繊維間の結合が阻害されると推定される。そして、紙用嵩高剤を添加しない場合より未塗工原紙中の空隙が大きく保たれるため、低密度になると考えられる。繊維結合阻害剤は、いわゆる製紙用の内添薬剤として捉えることができ、そのパルプスラリーへの添加は、水に乳化又は分散させたものを用いることができる。化合物としては、多価アルコールと脂肪酸のエステルである脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステルのポリオキシアルキレン付加物、高級脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン付加物、多価脂肪酸とアルコールのエステルである多価脂肪酸アルコールエステル、多価脂肪酸アルコールエステルのポリオキシアルキレン付加物、ポリアミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸又はヒドロキシルカルボン酸とのエステル化合物の該ヒドロキシル基にアニオン基を導入してなる化合物、直鎖状脂肪酸アミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、高級アルコールのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、等のエステル系化合物及びその誘導体;脂肪酸モノアミド、脂肪酸アミドアミンのポリオキシアルキレン付加物、脂肪酸ポリアミドアミン、脂肪酸ジアミドアミン、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・尿素縮合物、多価脂肪酸とポリアミンとのアミド化合物、多価脂肪酸と直鎖状アミンとのアミド化合物、等のアミド化合物及びその誘導体;脂肪酸アミドアミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、等の分子内にアミド結合とエステル結合を有する化合物;高級アルコールまたは高級脂肪酸のポリオキシアルキレン付加物、多価アルコール型非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤、油脂系非イオン界面活性剤、等の上記以外のポリオキシアルキレン付加物及びその誘導体;その他の化合物として、高級アルコール、スルホコハク酸誘導体、界面活性能を有する部位を含む構成単位とアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの1種以上に由来する構成単位とを有する重合体、等を使用することができる。これらの中でも塗工紙の密度の低下の観点から、エステル系化合物及びその誘導体、アミド化合物及びその誘導体、前記以外のポリオキシアルキレン付加物及びその誘導体を使用することが好ましく、中でも、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸モノアミド、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・尿素縮合物、高級アルコールのポリオキシアルキレン付加物、等を使用することがより好ましい。
繊維結合阻害剤はパルプ100重量部に対して0.01〜10重量部、更に0.1〜5重量部の割合で用いられることが好ましい。なお、繊維結合阻害剤を使用する場合は、ポリアクリルアミド重合物、カチオン化澱粉、硫酸バンド等の繊維結合阻害剤のパルプへの定着を促進する定着促進剤を併用することが好ましい。
本発明においては、塗工紙の光沢向上の観点から、表面処理剤を塗工する前の未塗工原紙にカレンダー処理を行うことが好ましい。カレンダー処理としては、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用いることができ、これらの装置の中でマシンカレンダーが好ましい。
また、表面処理剤を塗工する前の未塗工原紙のJIS−P8119によるベック平滑度は、塗工紙の光沢向上の観点から、5〜100秒が好ましく、20〜100秒がより好ましい。
[塗工工程]
本発明に係る塗工工程は、表面処理剤が塗工された塗工原紙に、顔料と結着剤を主成分とする顔料スラリーを塗工してカレンダー前塗工紙を得る工程である。顔料スラリーは、塗工原紙の表面処理剤が塗工された面に塗布される。
顔料スラリーとしては、例えば顔料塗料(コーティングカラー)が挙げられ、顔料としては、カオリン、沈降性炭酸カルシウム、微粉砕した重質炭酸カルシウム、ろう石クレー、二酸化チタン、サチンホワイト、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等の無機顔料や、プラスチックピグメント等の有機顔料を用いることができる。これらの中でも、経済性の観点から無機顔料が好ましい。
また、顔料スラリーは結着剤(バインダー)を含有する。結着剤として、カゼイン、澱粉誘導体、繊維素誘導体等の高分子の水溶液やSBR(スチレンブタジエンラバー)、MBR(メチルメタクリレートブタジエンラバー)等の合成ラテックスエマルジョン等が例示される。顔料と結着剤の比率は、顔料の種類や用途によって調整可能であるが、顔料100重量部に対して結着剤を10〜50重量部配合するのが好ましい。顔料スラリーには、顔料、結着剤以外にも染料、消泡剤、潤滑剤、分散剤、粘度調整剤、pHコントロール剤などの塗料用添加剤を併用することができる。顔料スラリーの固形分濃度は、50〜75重量%が好ましく、水は顔料スラリーの残部である。塗工層の厚さは特に限定されず、塗工紙の用途、品質等により設定されるが、光沢の高い紙を得る観点から、顔料スラリーの塗布量(固形分換算)は、塗工原紙の片面あたり、1〜30g/m2が好ましく、8〜25g/m2がより好ましく、より更に好ましくは12〜20g/m2である。一般に、高い光沢を得るためには、顔料スラリーの塗布量を多くする必要があるが、本発明では、カレンダー処理後の光沢度を向上させることができるため、顔料スラリーの塗布量を減少でき、軽量な紙を得ることができる。
塗工原紙への顔料スラリーの塗布は通常の製紙用塗工装置を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、塗工装置としては2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、キスコーター、ロッド(バー)コーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーなどが挙げられ、顔料スラリーを、ブレードコーターを用いて塗工するのが好ましい。
本発明に係る塗工工程における、塗工原紙の含水率は特に限定されないが、塗工紙の光沢度向上の観点から、塗工原紙の含水率を0〜10重量%にして塗工処理することが好ましく、1〜8重量%がより好ましく、2〜7重量%が更に好ましく、3〜6重量%がより更に好ましい。
本発明では、顔料スラリー中の水と、原紙表面に処理された高分子化合物とのゲル形成による顔料浸透抑制の観点から、顔料スラリー中の水の比率(重量%)と高分子化合物の塗工量(g/m2)との比(顔料スラリー中の水の比率/高分子化合物の塗工量)が25〜1000、好ましくは30〜900、より好ましくは35〜800の範囲である。よって、表面処理剤で処理する際の高分子化合物の塗工量に応じて顔料スラリー中の水分量を調整する必要がある。
また、本発明では、光沢紙を得る観点から、塗工紙の白紙光沢度(%)と顔料スラリーの塗工量(g/m2)との比(塗工紙の白紙光沢度/顔料塗工スラリーの塗工量)が好ましくは3.5〜11.0、より好ましくは3.5〜10.0、更に好ましくは3.5〜9.0の範囲である。前記範囲に制御するには、顔料スラリーの塗工量、カレンダー線圧及びカレンダー温度を調整することが好ましい。
[カレンダー工程]
本発明に係るカレンダー工程における、カレンダー前塗工紙の含水率は特に限定されない。しかし、塗工紙の軽量化の観点からは、カレンダー前塗工紙の含水率を0〜5.5重量%にしてカレンダー処理することが好ましく、1〜4.5重量%がより好ましく、2〜4重量%がさらに好ましい。なお、カレンダー処理を複数回行う場合、それぞれのカレンダー前の含水率は、少なくとも1回0〜5.5重量%として行うことが好ましい。より好ましくは全てのカレンダー処理を0〜5.5重量%で行う。
カレンダー前塗工紙の含水率の調整方法は、例えば、カレンダー工程前の乾燥工程の条件(温度、湿度、風量、時間等)を調整する方法が挙げられる。乾燥方法としては、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等が挙げられる。一般的な製紙工程では、カレンダー前塗工紙の含水率は6〜7重量%程度である。
また、カレンダー前塗工紙の含水率は、BM計〔Basis weight/Moisture(坪量・水分)計〕を用いた測定や、未塗工紙を絶乾し重量減を測定することより知ることができる。
カレンダー処理においては、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、マシンカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用いることができ、これらを併用してもよい。カレンダーの表面温度は特に限定はないが、25℃以上で行うことが好ましく、50℃以上で行うことがより好ましく、70℃以上で行うことが更に好ましい。光沢の高い塗工紙を得る観点からスーパーカレンダー装置を用いることが好ましい。
本発明に係るカレンダー前塗工紙は、カレンダー前の含水率を0〜5.5重量%にするとカレンダーで圧縮されにくいので、カレンダー圧(実施例記載の方法により測定した紙にかかる圧力)を9〜80MPa、さらには9〜50MPaとすることができる。塗工紙の光沢と低密度化の観点から、カレンダー圧は、25〜80MPa、さらには25〜50MPaが好ましい。また、カレンダー処理回数は、光沢を高める観点から2回以上が好ましい。
[調湿工程]
本発明の製造方法において、カレンダー前塗工紙の含水率を0〜5.5重量%にしてカレンダー処理した時は、さらに、カレンダー工程の後に、カレンダー後塗工紙(塗工紙)の含水率を上げる調湿工程を有することが好ましい。調湿工程を経ることで、カレンダー工程により増加した密度が低下し、より低密度な塗工紙が得られる。これは、カレンダー工程により圧縮された塗工紙が、再び水を介したパルプ間の水素結合により膨潤するためと推定される。含水率はカレンダー前塗工紙の含水率よりも重量%単位で0.1〜9ポイント上げることが好ましく、1〜7ポイント上げることがより好ましく、1〜6ポイント上げることが更に好ましい。すなわち、(カレンダー前塗工紙の含水率値+0.1)〜(カレンダー前塗工紙の含水率値+9)(重量%)とすることが好ましく、(カレンダー前塗工紙の含水率値+1)〜(カレンダー前塗工紙の含水率値+7)(重量%)とすることがより好ましく、(カレンダー前塗工紙の含水率値+1)〜(カレンダー前塗工紙の含水率値+6)(重量%)とすることが更に好ましい。
調湿装置としては、水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置等を前記カレンダーとともに配置することができ、適宜組み合わせて使用することもできる。
[塗工紙]
本発明の塗工紙の白紙光沢度は40%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。本発明において、塗工紙の白紙光沢度は、JIS−P8142に従って測定したときの値である。
本発明の塗工紙は、上記のような本発明の製造方法により得られたものであり、密度が好ましくは1.3g/cm3以下のものであり、より好ましくは1.15g/cm3以下のものであり、更に好ましくは1.1g/cm3以下のものであり、より更に好ましくは1.05g/cm3以下のものである。
本発明の塗工紙は、各種の紙に適用できる。例えば、書籍用紙や雑誌などに用いられる塗工紙、カタログ、ポスターに用いられる塗工紙といった印刷用紙、あるいは、インクジェット用紙、あるいは包装用紙など、酸性、中性又はアルカリ性抄紙した紙を挙げることができる。
さらに具体的には、例えばA0アート紙、A1アート紙、A2コート紙、A3コート紙、中質コート紙、微塗工紙などに好適である。
<実施例1、2及び比較例1、2>
(1)未塗工原紙の製造
パルプ原料として、化学パルプLBKP(広葉樹晒パルプ)を用い、25℃で叩解機にて離解、叩解してパルプ濃度2.2重量%のLBKPスラリーとした。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は450mlであった。このLBKPスラリーを、抄紙後のシートの坪量が約80g/m2になるように計り取り、その後パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈し、攪拌後角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。抄紙後の湿潤シートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥してパルプシートを得た。得られたパルプシートを23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿後、原紙の表面粗さを揃える目的で下記条件でパルプシートのカレンダー処理を行い、未塗工原紙を得た。調湿後の未塗工原紙の含水率は7重量%であり、JIS−P8119によるベック平滑度は30秒であった。
<パルプシートのカレンダー処理条件>
ラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いて23℃、相対湿度50%の条件下、カレンダー加工(線圧10kg/cm、処理速度10m/min、ロール温度80℃、処理回数2回)した。
(2)塗工原紙の製造(表面処理工程)
バーコーターを用いて、表1及び表2に示した高分子化合物及び水を含有する表面処理剤(高分子化合物濃度:高分子化合物A及びB 0.6重量%、高分子化合物A及びB以外は2重量%)を塗り拡げ、キャスティング皮膜をガラス板上に形成した。このとき表面処理剤の温度を温度計で測定したところ40℃であった。次いで上記で得られた未塗工原紙(幅12cm×長さ12cm)をキャスティング皮膜上にのせ、100g/m2のろ紙一枚でカバーし、ロール(直径200mm、幅200mm、線圧230g/cm)を転がし、表面処理剤の液膜をガラス板上から原紙表面に転写した。次いで鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。これらの一連の操作は間髪を入れずすみやかに操作した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿した。なお、この操作は表面、裏面の両方について行い、両面処理紙とした。なお、キャスティング皮膜の厚み等は高分子化合物の塗工量(固形分換算)が表中の数値となるようにバーコーターの溝幅を調整した。また、用いた高分子化合物は、以下のものである。
・高分子化合物A:以下の製造例により得られた高分子化合物
*高分子化合物Aの製造例
1Lビーカーにイオン交換水267.4g、MOEDES(ジメチルアミノエチルメタクリレートとジメチル硫酸の当モル付加物。いずれも試薬、和光純薬(株)製)185.63g、DMAAm(N,N−ジメチルアクリルアミド、試薬、和光純薬(株)製)110.46g、NK−14G(架橋剤、ポリエチレングリコールジメタクリレート、親中村化学(株)製)0.415g、V−50(重合開始剤、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)・2塩酸塩、和光純薬(株)社製)0.952gを混合し、モノマー水溶液aとした。
5Lのガラス容器にシクロヘキサン1648g、分散剤としてシュガーエステルS−770(三菱化成(株)製)を1.94g仕込み、60℃で1時間かけ均一に溶解せしめた。溶解後、30℃に冷却し、分散剤溶液bとした。
分散剤溶液bに、前記モノマー水溶液aを加え、ホモミキサー(ROBOMICS、特殊機化工業(株)製)にセットし、9000回転で4分間攪拌し、平均粒子径5μmのモノマー分散液を得た。全量を5Lの攪拌機と温度計、冷却管の付いたSUS槽に仕込み、窒素置換後、昇温し、55℃で1時間重合した。さらに70℃で1時間熟成した後、冷却管付きの脱水管を装着し、系内から水269gを除去した。脱水が進むにつれ、槽内温度は70℃から90℃に上昇した。ついで40℃以下に冷却し、内容物をステンレス製トレーに移し、80℃、熱風乾燥させた。その後、家庭用コーヒーミルで約1秒間、軽く粉砕し平均粒子径4.0μmの高分子化合物Aを得た。
・高分子化合物B:以下の製造例により得られた高分子化合物
*高分子化合物Bの製造例
1Lビーカーにイオン交換水 123.9g、MOEDES(ジメチルアミノエチルメタクリレートとジメチル硫酸の当モル付加物(有効分90%)。いずれも試薬、和光純薬工業(株)製)76.3g(有効分68.7g)、アクリル酸(東亞合成(株)製(有効分80.6%))19.8g(有効分15.9g)、NK−14G(架橋剤、ポリエチレングリコールジメタクリレート、新中村化学(株)製)0.129g、V−50(重合開始剤、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・2塩酸塩、和光純薬工業(株)製)0.131gを混合し、モノマー水溶液Aとした。3Lのガラス容器にシクロヘキサン777g、S−770(分散剤、シュガーエステル、三菱化成(株)製)0.840g仕込み、50℃で1時間かけ均一に溶解せしめた。溶解後、30℃に冷却し、分散剤溶液Bとした。
分散剤溶液Bに、前記モノマー水溶液Aを加え、ホモミキサー(ROBOMICS、特殊機化工業(株)製)にセットし、9000回転で4分間攪拌し、平均粒子径5μmのモノマー分散液を得た。全量を2Lの攪拌機と温度計、冷却管の付いたガラス槽に仕込み、窒素置換後、昇温し、65℃で1時間重合した。さらに70℃で1時間熟成した後、冷却管付きの脱水管を装着し、約3時間かけて系内から水 115gを除去した。内容物をステンレス製トレーに移し、真空乾燥で溶媒を除去し、高分子化合物Bを得た。
得られた高分子化合物A及びBの水溶液を以下の方法で調製した。
*高分子化合物A及びBの水溶液の調製方法
500mlのビーカーにイオン交換水347.9gを加えて、液温を80℃まで昇温させた。ついで、高分子化合物A 2.1gを加えて、80℃に維持して1時間攪拌を行った。ついで、5℃/分の速度で前記高分子化合物Aの水溶液を冷却し、0.6重量%の高分子化合物Aの水溶液(表面処理剤として用いる水溶液)を得た。また、水溶液の濃度が5重量%になるように、高分子化合物Aとイオン交換水を加えた以外は、前記に準じた操作を行い、5重量%の高分子化合物Aの水溶液(粘度の測定に用いる水溶液)を得た。高分子化合物Bについても、前記方法に準じて水溶液を調製した。
・高分子化合物C:以下の製造例により得られた高分子化合物
*高分子化合物Cの製造例
ヒドロキシプロピルコーン澱粉1,000gを、1,500mlの水に溶解し、pHを水酸化ナトリウムの水溶液(4重量%)を用いて11.2〜11.5に調整した。43℃に維持した澱粉スラリー中に、カチオン化剤として四級アンモニウム塩導入剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの60重量%溶液を対澱粉4.8重量%添加した後、20時間攪拌下でカチオン化反応を行った。反応後、澱粉スラリーを10重量%HCl水溶液でpH7.0に調整し、常法により精製、脱水した後、室温で乾燥させた。対澱粉9.0重量%の尿素と、対澱粉2.4重量%の正燐酸を少量の水に溶解し、10重量%NaOH水溶液でpH8.0に調整して得た溶液を上記のカチオン澱粉に攪拌しながら添加して十分に混合した。次いで熱風循環乾燥機中で50℃で乾燥させ、水分を4.0重量%に調節した。次いで前記カチオン澱粉を固形分重量にして380gナス型フラスコに採り、140℃に加熱したオイルバス中で5分間加熱させて尿素燐酸化反応を施し、次いで室温まで冷却して高分子化合物Cを得た。得られた高分子化合物Cの水溶液を以下の方法で調製した。
*高分子化合物Cの水溶液の調製方法
500mlのビーカーにイオン交換水343g、高分子化合物C 7gを加えて、高分子化合物Cの水性懸濁液を調製し、攪拌しながら90℃まで昇温させた。ついで、当該温度に維持して1時間攪拌を行った。ついで、5℃/分の速度で前記高分子化合物Cの水溶液を冷却し、2重量%の高分子化合物Cの水溶液(表面処理剤として用いる水溶液)を得た。また、水溶液の濃度が5重量%になるように、高分子化合物Cとイオン交換水を加えた以外は、前記に準じた操作を行い、5重量%の高分子化合物Cの水溶液(粘度の測定に用いる水溶液)を得た。
・ポイズC-80M:カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、花王(株)製、水溶液は以下の方法で調製した。
*ポイズC-80Mの水溶液の調製方法
500mlのビーカーにイオン交換水343g、ポイズC-80M 7gを加えて、ポイズC-80Mの水性懸濁液を調製し、攪拌しながら80℃まで昇温させた。ついで、当該温度に維持して1時間攪拌を行った。ついで、5℃/分の速度で前記ポイズC-80Mの水溶液を冷却し、2重量%のポイズC-80Mの水溶液(表面処理剤として用いる水溶液)を得た。また、水溶液の濃度が5重量%になるように、ポイズC-80Mとイオン交換水を加えた以外は、前記に準じた操作を行い、5重量%のポイズC-80Mの水溶液(粘度の測定に用いる水溶液)を得た。
・比較の高分子化合物
エースA:酸化澱粉、王子コンスターチ(株)製
cato308:カチオン化澱粉、紙力増強・紙質改善剤、日本エヌエスシー(株)製
cato315:両性化澱粉、紙力増強・紙質改善剤、日本エヌエスシー(株)製
*これら比較の高分子化合物の水溶液の調製は、前記高分子化合物Cの水溶液調製方法に準じた方法で行った。
(3)塗工紙の製造(塗工工程、カレンダー工程及び調湿工程)
前記表面処理剤を塗布した塗工原紙(パルプシート)の第1面に、重質炭酸カルシウムを50重量部、微粒カオリンを50重量部、分散剤(ポイズ535M:花王製)0.075重量部、水酸化ナトリウムを0.02重量部、ラテックスを11重量部、澱粉を3重量部に水を加えて得られた顔料スラリーを、ラボブレードコーター(熊谷理機工業製、速度25m/min)で片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。表1における顔料スラリーの固形分濃度は65重量%、水分量は35重量%であり、表2における顔料スラリーの固形分濃度は55重量%、水分量は45重量%であった。
塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させた。次いで、前記片面塗工紙の未だ塗工されていない第2面(第1面の反対面で、未塗工面)に前記顔料スラリーを前記ラボブレードコーターで片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させ、両面塗工紙(カレンダー前塗工紙)を得た。
次いで、得られた両面塗工紙を、乾燥させて表1、2記載の含水率に調整して、第1面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行った。次いで、前記両面塗工紙を、乾燥させて表1、2記載の含水率に調整して、第2面が金属ロールに接するように下記条件で両面塗工紙のカレンダー処理を行い、23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿して紙中の含水率6.0重量%の塗工紙を得た。
<両面塗工紙のカレンダー処理条件>
ラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いて23℃、相対湿度50%の条件下、カレンダー加工(線圧200kg/cm、処理速度10m/min、ロール温度80℃、処理回数1回)した。カレンダー装置の金属ロール表面温度は、装置の温度設定を用いた。また念の為、温度計(DIGIITAL THERMOMETER MODEL 2455(iuchi))で測定して温度が正しいことを確認した。
なお、カレンダー前塗工紙の含水率(表中、カレンダー前含水率と表記する)は、次のように測定されたものである。カレンダー前塗工紙を12cm×12cmの大きさにカットし、200mlのメディアバイアルに入れて105℃で30分間乾燥後、フタで密閉して室温まで冷却し、カレンダー前塗工紙を得、この時のカレンダー前塗工紙の含水率を0重量%とした。次いで、前記含水率が0重量%のカレンダー前塗工紙を23℃、相対湿度65%の条件で調湿し、重量増加をチェックしながら所望の含水率となった時点で、前記(3)におけるカレンダー処理を行い、この時の含水率をカレンダー前塗工紙の含水率とする。含水率は、紙の重量に対する水の重量%を表わすものである。
また、前記ラボカレンダー装置の線圧と紙にかかる圧力との関係を下記の方法により求めた。前記条件にて線圧を変えて感圧紙「プレスケール」(富士フイルム社製)をラボカレンダー装置に通し、その時の感熱紙の発色の程度から圧力を求めた。感圧紙として線圧100kg/cm未満の場合は中圧用を、線圧100kg/cm以上の場合は高圧用を用いた。その結果、線圧21kg/cmで圧力9MPa、線圧42kg/cmで圧力25MPa、線圧200kg/cmで圧力49MPa、線圧250kg/cmで圧力56MPa、線圧500kg/cmで圧力80MPaであった。
<評価>
表1、2の実施例及び比較例で得られた塗工紙について、JIS−P8118に従って密度を測定し、また、JIS−P8142に従って表面の白紙光沢度を測定した。また、高分子化合物の粘度及び法線応力の測定方法は以下の通りである。結果を表1、2に示す。
〔粘度(I)の測定方法〕
粘度測定は、B型粘度計(型式:BM、東機産業社製)を用いて、以下に示す方法で行った。前述の調製方法により調製した5重量%濃度の高分子化合物水溶液をビーカーに加え、25℃の水浴に1時間以上浸漬させた。高分子化合物水溶液の温度が25℃に達したことを温度計で確認後、高分子化合物水溶液の粘度に応じたローターを選び、粘度計に取り付けた。所定の位置まで高分子化合物水溶液の入ったビーカーを移動させ、ローターを試料中に15分間漬け、ローターの温度を25℃に合わせた。粘度は、ローターを回転数60rpmで1分間回転させ、停止させた時の指示値を読み取り、換算式により求めた。
〔粘度(II)の測定方法〕
粘度測定は、B型粘度計(型式:B8R、TOKIMEC社製)を用いて、以下に示す方法で行った。前述の調製方法により調製した5重量%濃度の高分子化合物水溶液をビーカーに加え、25℃の水浴に1時間以上浸漬させた。高分子化合物水溶液の温度が25℃に達したことを温度計で確認後、高分子化合物水溶液の粘度に応じたローターを選び、粘度計に取り付けた。所定の位置まで高分子化合物水溶液の入ったビーカーを移動させ、粘度測定を行った。粘度は、ローターを回転数5rpmで1分間回転させ、停止させた時の指示値を読み取り、換算式により求めた。
〔法線応力の測定方法〕
法線応力は、以下に示す方法で測定を行った。対象となる化合物をイオン交換水で希釈し、前述の調製方法に準じて水溶液(0.2重量%〜18重量%)を調製する。これを25℃にて粘弾性測定装置(Anton Paar社製、Physica MCR300)を用いて、コーンプレート(Diameter:50mm、Angle:1°、Truncation:52μm、Anton Paar社製、CP50-1)を使用し、剪断速度の変化を0.01〜1000(1/秒)に設定し、法線応力と粘度の測定を行なった。各水溶液濃度(0.2重量%〜18重量%)での、剪断速度1000(1/秒)における法線応力と粘度の値を読み取り、粘度と法線応力の近似式を作成し、得られた近似式から粘度300mPa・sでの法線応力を算出し、剪断速度1000(1/秒)での法線応力値とした。
Figure 0005241446
Figure 0005241446
高分子化合物の塗工量及び顔料スラリーの塗工量は、いずれも片面あたりの固形分換算の塗工量である(以下同様)。
実施例と比較例とを比べると、特定の粘度挙動及び法線応力を有する高分子化合物を表面処理剤として使用し、かつ顔料スラリー水分量と高分子化合物の使用量を所定範囲とした場合、実施例の方が光沢度の高い塗工紙を製造できることがわかる。
<実施例3>
表3の表面処理剤を用いて実施例1、2及び比較例1、2と同様に塗工紙を製造し、同様の評価を行った。ただし、塗工の際の表面処理剤の温度は表3の通りとした。結果を表3に示す。なお、本例は、実施例1−2の表面処理剤の温度による効果の相違を評価したものである。
Figure 0005241446
表3の結果から、白紙光沢度は表面処理剤の塗布温度が60℃で最も高くなり、次いで40℃、20℃の順となることがわかる。

Claims (7)

  1. パルプを主原料とする未塗工原紙に、高分子化合物を含有する表面処理剤を塗工して塗工原紙を得る表面処理工程と、前記塗工原紙に、顔料と結着剤と水とを含有する顔料スラリーを塗工してカレンダー前塗工紙を得る塗工工程と、前記カレンダー前塗工紙をカレンダー処理し、カレンダー後塗工紙を得るカレンダー工程とを有する、白紙光沢度が40%以上である塗工紙の製造方法であって、
    前記高分子化合物は、5重量%の水溶液の25℃におけるB型粘度が3000mPa・s以上120000mPa・s以下であり、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paであり、
    前記高分子化合物が、カチオン性基含有ビニル共重合体から選ばれる1種以上の化合物であり、
    前記顔料スラリー中の水の比率(重量%)と前記高分子化合物の片面あたりの塗工量(g/m2)との比(顔料スラリー中の水の比率/高分子化合物の片面あたりの塗工量)が25〜1000の範囲である、
    塗工紙の製造方法。
  2. カレンダー前塗工紙の含水率が0〜5.5重量%である、請求項1記載の塗工紙の製造方法。
  3. 前記カチオン性基含有ビニル共重合体が、架橋性ビニル単量体を構成成分として含む、請求項1又は2記載の塗工紙の製造方法。
  4. 顔料スラリーの塗布量(固形分換算)が、塗工原紙の片面あたり1〜30g/m2である、請求項1〜3いずれか記載の塗工紙の製造方法。
  5. 前記塗工紙の白紙光沢度(%)と前記顔料スラリーの塗工原紙片面あたりの塗布量(g/m2)との比(塗工紙の白紙光沢度/顔料塗工スラリーの片面あたりの塗工量)が3.5〜11.0である、請求項1〜4いずれか記載の塗工紙の製造方法。
  6. 前記カチオン性基含有共重合体が、構成単量体として、カチオン性基含有ビニル単量体と、親水性ノニオン性基含有ビニル単量体或いは重合性不飽和基を有するアニオン性基含有ビニル単量体と、からそれぞれ選ばれる少なくとも一種以上を含み、
    該カチオン性基含有共重合体の構成単量体中、カチオン性基含有ビニル単量体と、親水性ノニオン性基含有ビニル単量体或いは前記アニオン性基含有ビニル単量体との合計が80〜99.9モル%である、
    請求項1〜5いずれか記載の塗工紙の製造方法。
  7. 請求項1〜いずれか記載の塗工紙の製造方法を用いて得られる、密度が1.3g/cm3以下である塗工紙。
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