JP5835313B2 - 成膜装置 - Google Patents
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Description
本発明は、静電噴霧によって対象物に被膜を形成する成膜装置に関するものである。
従来より、いわゆる静電噴霧法を用いて原料液を霧化し、霧化した原料液を対象物に付着させることにより被膜を形成する成膜装置が知られている。特許文献1には、広い面に被膜を形成するために、一列に並んだ複数の開口から原料液を噴霧する成膜装置が開示されている。
ところで、静電噴霧法を用いて原料液を霧化する場合、開口から噴霧された原料液は帯電している。このため、隣り合う開口の間隔が小さすぎると、開口から噴霧された原料液に互いに反発するクーロン力が作用し、開口から放射状に拡がる原料液の噴霧領域も狭くなる。このようにして原料液の噴霧領域が狭くなると、対象物の表面の一部に原料液が局所的に噴霧される。この結果、対象物の表面に付着した原料液の分布にむらが生じてしまい、被膜の厚さが不均一化されてしまうという問題が生じる。
一方、原料液が噴霧される複数の開口の間隔を大きくすることで、各開口から噴霧された原料液の反発を防止できる。しかし、このように各開口の間隔が大きくなると、これらの開口の噴霧領域の間隔が拡がってしまう。このため、対象物の表面では、各開口に対応する原料液の付着領域の間に隙間が形成されてしまい、対象物の表面の全体に均一な厚さの被膜を形成できなくなってしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象物の表面に均一な被膜を形成できる成膜装置を提供することである。
第1の発明は、対象物(20)に原料液を噴霧することによって該対象物(20)の表面に被膜を形成する静電噴霧型の成膜装置を対象とし、複数のノズル(57)を有する噴霧機構(30)と、上記原料液が帯電した液滴となって上記ノズル(57)から上記対象物(20)へ噴霧されるように該ノズル(57)と上記対象物(20)の間に電圧を印加する電圧印加部(70)と、上記対象物(20)と上記噴霧機構(30)の一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構(15)とを備え、上記噴霧機構(30)では、上記移動機構(15)の移動方向と交わる方向に配列される複数のノズル(57)からなるノズル列(L)が、該移動機構(15)の移動方向に複数配列され、上記噴霧機構(30)は、同じノズル列(L)間で隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互い反発しないように構成され、異なるノズル列(L)間の複数のノズル(57)は、上記移動機構(15)の移動方向と交わる方向に互いにずれて配置され、上記所定のノズル列(L)と、該所定ノズル列(L)のノズル(57)に対して上記移行機構(15)の移動方向に交わる方向にずれる距離が最も小さい他のノズル列(L)と、両者のノズル列(L)の間に配置される1列以上のノズル列(L)を含む3つ以上のノズル列(L)は、各々が等間隔置きに隣接して配列されるとともに、上記3つ以上のノズル列(L)の各ノズル(57)から同時に原料液が噴霧されるように構成されることを特徴とする。
第1の発明では、移動機構(15)が、対象物(20)と噴霧機構(30)の一方を他方に対して相対的に移動させる。この際、電圧印加部(70)がノズル(57)と対象物(20)との間に電圧を印加すると、ノズル(57)の先端から帯電した液滴が噴霧され、この液滴が対象物(20)へ付着する。この結果、対象物(20)には、移動機構(15)の移動方向に沿って延びる帯状の付着領域(A2)が形成されていく。
本発明の噴霧機構(30)では、移動機構(15)の移動方向と交わる方向に複数のノズル(57)が配列され、これらの複数のノズル(57)がノズル列(L)を構成する。噴霧機構(30)では、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互いに反発しないように、各ノズル(57)の間隔が設定される。これにより、各ノズル列(L)では、ノズル(57)から噴霧される原料液の噴霧が大きくなり、対象物(20)の表面に低密度の原料液が広範囲に付着する。この結果、対象物(20)の表面に形成された付着領域(A2)では、原料液の分布のムラが小さくなる。
一方、このようにして同じノズル列(L)間で隣接するノズル(57)の間隔が比較的大きくなると、これらのノズル(57)対応する付着領域(A2)の間に原料液が付着しない隙間が形成され易くなる。しかし、本発明の噴霧機構(30)では、移動機構(15)の移動方向に複数のノズル列(L)を配列し、異なるノズル列(L)間では、複数のノズル列(L)が移動機構(15)の移動方向に交わる方向に互いにずれて配置される。つまり、噴霧機構(30)では、同じノズル列(L)に対応する付着領域(A2)の隙間を埋めるように、他のノズル列(L)のノズル(57)から原料液が噴霧される。この結果、対象物(20)の表面では、全域に亘って均一な厚みの被膜が形成される。
第1の発明では、移動機構(15)の移動方向に交わる方向にずれる距離が最も小さい2つのノズル列(L)の間に、1つ以上のノズル列(L)が配置される。互いにずれる距離が最も小さい2つのノズル列(L)が、移動機構(15)の移動方向に隣り合う並びになると、これらのノズル列(L)の各ノズル(57)の間隔が小さくなる。このため、これらのノズル(57)間での原料液の反発を防止するために、ノズル列(L)の間隔を広く確保する必要がある。この結果、噴霧機構(30)が移動機構(15)の移動方向に大型化されてしまう。
これに対し、本発明では、最もずれの小さい2つのノズル列(L)の間に他のノズル列(L)が配置されるため、隣接するノズル列(L)の各ノズル(57)の間隔が広くなる。この結果、隣り合うノズル列(L)の間隔を狭くできるため、噴霧機構(30)を移動機構(15)の移動方向に小型化される。
第2の発明は、 第1の発明において、上記噴霧機構(30)は、異なるノズル列(L)間で隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互いに反発しないように構成されることを特徴とする。
第2の発明の噴霧機構(30)では、同じノズル列(L)で隣接するノズル(57)だけでなく、異なるノズル列(L)間で隣接するノズル(57)から噴霧される原料液も電気的に互いに反発しないように、隣接するノズル列(L)の間隔が設定される。この結果、ノズル(57)の噴霧範囲が更に拡がり、対象物(20)の表面に低密度の原料液が広範囲に付着する。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記噴霧機構(30)は、異なるノズル列(L)のノズル(57)から噴霧された原料液が対象物(20)に付着することで形成される帯状の付着領域(A2)の一部が互いに重なるように上記ノズル(57)が配列されることを特徴とする。
第3の発明では、異なるノズル列(L)のノズル(57)に対応する帯状の付着領域(A2)の一部が互いに重なる。つまり、対象物(20)の表面では、異なるノズル列(L)のノズル(57)から噴霧された原料液が複数回塗りつけられる領域が形成される。
同じノズル列(L)の隣接するノズル(57)から噴霧される原料液は互いに反発しないため、このノズル列(L)に対応する付着領域(A2)では、低密度の原料液が広範囲に亘って分布する。この結果、対象物(20)の表面に1回のみ原料液が付着されただけでは、最終的に得られる被膜の厚さを十分に確保できず、被膜の耐久性が損なわれてしまう。また、対象物(20)の表面に1回のみ原料液を吹き付ける場合、帯電した原料液の分子が互いに反発するため、付着領域(A2)に付着した原料液の分子間に隙間が形成され易い。この結果、付着領域(A2)では、原料液の分子を密に付着させることができず、均一な被膜を形成できない可能性がある。
これに対し、本発明では、異なるノズル列(L)のノズル(57)から噴霧される原料液が複数回に亘って対象物(20)の表面に吹き付けられるため、対象物(20)の表面に原料液を密に付着させることができる。この結果、本発明では、対象物(20)の表面に耐久性に優れた被膜を形成することができる。
第4の発明では、上記付着領域(A2)における上記移動機構(15)の移動方向に交わる方向の塗布幅をDとし、該移動機構(15)の移動方向に交わる方向のずれが最も小さい2つのノズル列(L)間のずれる距離をP2とすると、上記噴霧機構(30)は、上記距離P2が、塗布幅Dの1/2よりも小さくなるように上記複数のノズル(57)が配列されることを特徴とする。
第4の発明では、各ノズル(57)に対応する付着領域(A2)の塗布幅がDとなる。つまり、付着領域(A2)では、ノズル(57)から、該ノズル(57)を挟んで幅方向(移動機構(15)の移動方向と交わる方向)の両側までの距離が1/2×Dとなる。これに対し、異なるノズル列(L)のうち幅方向にずれる距離が最も小さい2つのノズル列(L)では、このずれる距離P2が、1/2×Dより小さい。この結果、これらのノズル列(L)間では、各々に対応する付着領域(A2)が確実に重なりあうことになり、密な被膜を形成することができる。
本発明では、同じノズル列(L)間において、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互いに反発しないようにしたので、これらのノズル(57)から広範囲に亘って低密度の原料液を噴霧できる。この結果、これらのノズル(57)から噴霧された原料液の付着領域(A2)では、原料液の分布が均一化され、この付着領域(A2)に対応する被膜の厚みが均一化される。また、このようにして低密度の原料液を広範囲に亘って噴霧することで、原料液の無駄な消費を抑えることができる。
具体的に、例えば対象物(20)の表面に高密度の原料液が局所的に噴霧されると、噴霧された原料液分子の一部が対象物(20)と接触・反応しないことがある。この場合、未反応の原料液は有効な被膜の形成に寄与しないため、原料液を無駄に消費してしまうことになる。これに対し、本発明では、同じノズル列(L)において、ノズル(27)から低密度の原料液を広範囲に亘って噴霧するため、原料液と対象物の接触面積が拡大し、原料液と対象物の反応を促すことができる。この結果、対象物(20)と反応しない原料液の量を低減でき、原料液の無駄な消費を抑えることができる。
また、本発明では、異なるノズル列(L)間において、各ノズル(57)が移動機構(15)の移動方向に交わる方向に互いにずれて配置される。これにより、1つのノズル列(L)の各ノズル(57)に対応する付着領域(A2)の隙間を、他のノズル列(L)の各ノズル(57)に対応する原料液によって埋めることができる。この結果、対象物(20)の表面の全域に亘って比較的均一な膜厚の被膜を形成することができる。
第1の発明では、隣接するノズル列(L)の間隔を狭できるため、噴霧機構(30)の小型化を図ることができる。
第2の発明では、異なるノズル列(L)間で隣接するノズル(57)から噴霧される原料液も電気的に互いに反発しないため、各ノズル(57)から更に低密度の原料液を広範囲に亘って噴霧できる。この結果、被膜の厚みを更に均一化できる。また、対象物の表面に原料液が付着し易くなるため、原料液と対象物(20)の反応が更に促進され、原料液の無駄な消費を抑えることができる。
第3及び第4の発明では、各ノズル列(L)のノズル(57)から噴霧される低密度且つ広範囲の原料液が、対象物(20)の表面に複数回吹き付けられる。このため、対象物(20)の表面では、原料液分子が密に付着した十分な厚みの被膜を形成でき、被膜の耐久性の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本実施形態の成膜装置(10)は、タッチパネルのガラス基板(20)の表面に防汚用の被膜を形成するためのものである。また、本実施形態の成膜装置(10)は、いわゆる静電噴霧法によって噴霧した原料液を対象物であるガラス基板(20)の表面に付着させて被膜を形成する静電噴霧型の成膜装置(10)である。
−成膜装置の全体構成−
図1に示すように、成膜装置(10)には、前処理ゾーン(11)と、噴霧ゾーン(12)と、後処理ゾーン(13)とが形成されている。また、成膜装置(10)は、コントローラ(14)を備えている。コントローラ(14)は、成膜装置(10)の運転を制御する。
図1に示すように、成膜装置(10)には、前処理ゾーン(11)と、噴霧ゾーン(12)と、後処理ゾーン(13)とが形成されている。また、成膜装置(10)は、コントローラ(14)を備えている。コントローラ(14)は、成膜装置(10)の運転を制御する。
成膜装置(10)には、ガラス基板(20)を搬送するためのベルトコンベア(15)が設けられている。ベルトコンベア(15)は、前処理ゾーン(11)と噴霧ゾーン(12)と後処理ゾーン(13)とに亘って設けられ、導電板(25)の上に載せられたガラス基板(20)を、前処理ゾーン(11)、噴霧ゾーン(12)、後処理ゾーン(13)の順に搬送する。つまり、ベルトコンベア(15)は、図1の左から右へ向かって、ガラス基板(20)を真っ直ぐに搬送する。このベルトコンベア(15)は、後述する噴霧機構(30)に対してガラス基板(20)を相対的に移動させる移動機構である。
前処理ゾーン(11)では、基板の表面を洗浄する工程が行われる。噴霧ゾーン(12)では、基板の表面に原料液を付着させる工程が行われる。噴霧ゾーン(12)には、噴霧機構(30)が設けられる。後処理ゾーン(13)では、ガラス基板(20)に被膜を定着される工程が行われる。具体的に、後処理ゾーン(13)では、原料液の付着したガラス基板(20)が加熱される。
−噴霧機構の全体構成−
図2に示すように、噴霧機構(30)は、ステー(31)と、ステー(31)の内部に支持される一対のユニット支持板(32)と、該一対のユニット支持板(32)に支持される複数の噴霧ユニット(40)とを備えている。
図2に示すように、噴霧機構(30)は、ステー(31)と、ステー(31)の内部に支持される一対のユニット支持板(32)と、該一対のユニット支持板(32)に支持される複数の噴霧ユニット(40)とを備えている。
ステー(31)は、複数本のフレームが組み合わされて構成され、ベルトコンベア(15)を跨ぐように配置される。ステー(31)の内部には、ベルトコンベア(15)が移動する空間が形成される。つまり、ステー(31)の内部では、ベルトコンベア(15)に搬送されるガラス基板(20)が移動する。
一対のユニット支持板(32)は、互いに平行で且つ鉛直な姿勢でステー(31)の内部に支持される。これらのユニット支持板(32)は、ベルトコンベア(15)の移動方向に所定の間隔を置いて互いに対向して配置される。これらのユニット支持板(32)は、ベルトコンベア(15)の前側寄りに位置する第1ユニット支持板(32a)と、ベルトコンベア(15)の後側寄りに位置する第2ユニット支持板(32b)とで構成される。
本実施形態の噴霧機構(30)は、複数(本実施形態では16つ)の噴霧ユニット(40)を備えている。噴霧ユニット(40)の数量は単なる例示であり、これに限られるものではない。噴霧ユニット(40)の数量は、ガラス基板(20)の幅(ベルトコンベア(15)の移動方向と直交する方向の長さ)に応じて決定される。複数の噴霧ユニット(40)は、ベルトコンベア(15)の移動方向と直交する方向に互いに隣接して配列される。つまり、複数の噴霧ユニット(40)は、一対のユニット支持板(32)の内壁面に沿って配列される。各噴霧ユニット(40)は、一対のユニット支持板(32)に着脱自在に支持される。つまり、ユニット支持板(32)は、複数の噴霧ユニット(40)をそれぞれ着脱自在に保持するユニット保持部を構成する。
同図に示すように、噴霧機構(30)は、ガラス基板(20)が載せられる導電板(25)を備えている。導電板(25)は、ベルトコンベア(15)に設置され、真っ直ぐに移動する。ガラス基板(20)及び導電板(25)は、いずれも矩形平板状に形成される。
−噴霧ユニットの詳細構成−
噴霧ユニット(40)の詳細構成について図3及び図4に基づき説明する。噴霧ユニット(40)は、枠部(41)と、該枠部(41)の上側に設置される収容部(50)とを備えている。
噴霧ユニット(40)の詳細構成について図3及び図4に基づき説明する。噴霧ユニット(40)は、枠部(41)と、該枠部(41)の上側に設置される収容部(50)とを備えている。
枠部(41)は、一対の側板(42)と、天板(43)と、ノズル支持板(44)とを備えている。これらの側板(42)は、ベルトコンベア(15)の前側寄りの第1側板(42a)と、ベルトコンベア(15)の後側寄りの第2側板(42b)とで構成される。これらの側板(42)は、上下に延びる縦長の板状に形成される。天板(43)は、一対の側板(42)の各上端に亘って形成される。天板(43)は、前後に延びる横長の板状に形成される。ノズル支持板(44)は、一対の側板(42)の各下端に亘って形成される。ノズル支持板(44)は、前後に延びる横長の板状に形成される。ノズル支持板(44)には、複数(本実施形態では8つ)の噴霧器(55)が支持される。ノズル支持板(44)及び噴霧器(55)の詳細は後述する。
枠部(41)の内部には、2本の支持棒(45)と、1枚の中間支持板(46)とが設けられる。2本の支持棒(45)は、枠部(41)の側板(42)に沿うように上下に延びる棒状の部材である。各支持棒(45)の上端はそれぞれ天板(43)に固定され、各支持棒(45)の下端はそれぞれノズル支持板(44)に固定される。中間支持板(46)は、各支持棒(45)に締結部材(図示省略)を介して支持される。中間支持板(46)は、各支持棒(45)に跨がるように、前後に延びる横長の板状に形成される。中間支持板(46)には、複数(本実施形態では8つ)の中継コネクタ(66)が支持される。
収容部(50)は、枠部(41)の天板(43)の上側に設置されている。収容部(50)は、天板(43)に沿って前後に延びた横長の箱状に形成される。図4に示すように、収容部(50)の内部には、ポンプ(60)と電圧印加部(70)とが収容される。
ポンプ(60)は、原料液供給ライン(61)の原料液を搬送する液搬送部を構成している。原料液は、防汚用の被膜を形成する物質を溶剤で希釈したものである。原料液供給ライン(61)には、例えば原料液が貯留された貯留タンクが接続される。
ポンプ(60)は、収容部(50)の内部の液流路(62)に接続されている。液流路(62)は、ポンプ(60)の流入側に接続される流入路(62a)と、ポンプ(60)の流出側に接続される流出路(62b)とで構成される。流入路(62a)の流入端は、液接続ポート(51)を介して原料液供給ライン(61)と接続している。流出路(62b)の流出端は、天板(43)に支持された上流側分流部(64a)(分流部)に接続している。
電圧印加部(70)には、電源供給ライン(71)及び電気接続ポート(52)を経由して電力が供給される。電圧印加部(70)は、直流式の電源(72)を備えている。電源(72)の出力電圧は5kV程度である。電源(72)の正極は、複数の噴霧器(55)の各ノズル(57)に電気的に接続している。電源(72)の負極は接地されており、導電板(25)に電気的に接続している。つまり、導電板(25)は、ゼロ電位になっている。電源(72)の出力電圧は、2kV〜7kVの範囲であることが好ましい。
噴霧機構(30)は、液流路(62)の原料液を複数の噴霧器(55)に分配するための分流機構(63)を備えている。分流機構(63)は、天板(43)と中間支持板(46)との間に配置される。なお、図3において、分流機構(63)の図示を省略している。
分流機構(63)は、上流側分流部(64a)と中間分流部(64b)と下流側分流部(64c)と上流側分流管(65a)と中間分流管(65b)と下流側分流管(65c)とを備えている。上流側分流部(64a)は、天板(43)の中央部に支持されている。各上流側分流管(65a)の流出端には、中間分流部(64b)が1つずつ接続される。各中間分流部(64b)の流出端には、2本の中間分流管(65b)がそれぞれ接続される。各中間分流管(65b)の流出端には、下流側分流部(64c)が1つずつ接続される。各下流側分流部(64c)の流出端には、2本の下流側分流管(65c)がそれぞれ接続される。各下流側分流管(65c)の流出端は、中継コネクタ(66)の流入端にそれぞれ接続される。
噴霧機構(30)は、8本のキャピラリーチューブ(67)を備えている。これらのキャピラリーチューブ(67)は、中間支持板(46)とノズル支持板(44)との間に亘って配置される。これらのキャピラリーチューブ(67)は、中継コネクタ(66)の流出端と、噴霧器(55)の流入端との間に接続される。このようにして、噴霧機構(30)では、分流機構(63)の上流側分流部(64a)から各噴霧器(55)の先端までの間に8本の分流路(C)が形成される。
キャピラリーチューブ(67)の内部には、原料液を減圧するように流路断面が縮小された内部通路(キャピラリー通路)が形成される。つまり、各キャピラリーチューブ(67)は、対応する分流路(C)に抵抗を付与している。キャピラリーチューブ(67)によって分流路(C)に付与される流路抵抗Rcは、対応する分流路(C)の全体の流路抵抗のうち9割以上を占めている。また、各キャピラリーチューブ(67)の流路抵抗Rcは、概ね同じ値に設定されている。
また、キャピラリーチューブ(67)は、各分流路(C)における原料液の偏流を防止する(各分流路(C)における原料液の供給量を均一化する)ように、対応する分流路(C)にそれぞれ流路抵抗Rcを付与している。具体的に、キャピラリーチューブ(67)は、複数の分流路(C)間での流路抵抗の比の差が小さくなるように流路抵抗Rcを付与している。より詳細に、キャピラリーチューブ(67)は、各分流路(C)の流路抵抗をRcとし、これらの流路抵抗Rcの合計をtotal-Rとした場合に、各分流路(C)の流路抵抗Rcの合計total-Rに対する各分流路(C)の流路抵抗Rcの比率(Rc/total-R)が互いに近づくように各分流路(C)に抵抗を付与している。
噴霧器(55)は、キャピラリーチューブ(67)の流出端に接続する中空円筒状の基部(56)と、該基部(56)の軸方向の下端部に接続する針状のノズル(57)とを備えている。基部(56)は、非導電性の樹脂材料で構成される。基部(56)は、その軸方向が垂直となるように枠部(41)のノズル支持板(44)に支持される。
ノズル(57)は、導電性の金属材料で構成され、電源(72)の正極と導通している。ノズル(57)は、外径が0.3mm程度で内径が0.1mm程度の細径管である。ノズル(57)は、基部(56)と同軸となるように該基部(56)に連結している。つまり、ノズル(57)は、ガラス基板(20)及び導電板(25)と略垂直な(約90度をなす)姿勢となっている。ノズル(57)の先端とガラス基板(20)の間には、所定の間隔dが確保されている。この間隔dは、30mmから100mmの範囲であることが好ましい。
各噴霧ユニット(40)は、噴霧器(55)のノズル(57)の目詰まりを検知するための詰まり検知部(75)をそれぞれ備えている。図4に示すように、各詰まり検知部(75)は、検出流路(76)と圧力センサ(77)と判定部(78)と出力部(79)とをそれぞれ備えている。
検出流路(76)は、液流路(62)における流出路(62b)(即ち、ポンプ(60)の吐出側)に接続している。圧力センサ(77)は、検出流路(76)に設けられ、液流路(62)の原料液の圧力を検出する。判定部(78)は、圧力センサ(77)で検出された圧力に基づいて、ノズル(57)の目詰まりの有無を判定する。出力部(79)は、判定部(78)によってノズル(57)の目詰まりが判定されたときに、対応する噴霧ユニット(40)のノズル(57)が目詰まりしたことを示す異常信号を出力する。この異常信号が出力されると、例えば表示部(図示省略)により、対応する噴霧ユニット(40)のノズル(57)が目詰まりしたことがユーザに知らされる。
〈ノズル支持板の詳細構成〉
噴霧ユニット(40)のノズル支持板(44)の詳細構成について図3及び図5を参照しながら詳細に説明する。
噴霧ユニット(40)のノズル支持板(44)の詳細構成について図3及び図5を参照しながら詳細に説明する。
各噴霧ユニット(40)の各ノズル支持板(44)は、ベルトコンベア(15)の移動方向に延びる板状に形成される。各ノズル支持板(44)は、8枚の矩形状の板部(44a,44b,44c,44d,44e,44f,44g,44h)が一体に連続して構成される。具体的に、各ノズル支持板(44)では、前側から後側に向かって、第1〜第8板部(44a,44b,44c,44d,44e,44f,44g,44h)が順に配列される。
第1板部(44a)及び第8板部(44h)は前後に縦長の長方形板状に形成される。第1板部(44a)は、第1側板(42a)の下端部に固定される。第8板部(44h)は、第2側板(42b)の下端部に固定される。第2〜第7板部(44b,44c,44d,44e,44f,44g)は、略正方形の板状に形成される。第2板部(44b)は第1板部(44a)よりも左側にシフトし、第3板部(44c)は第2板部(44b)よりも右側にシフトし、第4板部(44d)は第3板部(44c)よりも左側にシフトし、第5板部(44e)は第4板部(44d)よりも右側にシフトし、第6板部(44f)は、第5板部(44e)よりも右側にシフトし、第7板部(44g)は、第6板部(44f)よりも左側にシフトし、第8板部(44h)は、第7板部(44g)よりも右側にシフトしている。
第2板部(44b)の右側面には、左側に向かって凹んだ第1凹部(47a)が形成される。第1凹部(47a)は、右側に隣り合う噴霧ユニット(40)の第2板部(44b)の外縁に沿うように形成される。第3板部(44c)の左側面には、右側に向かって凹んだ第2凹部(47b)が形成される。第2凹部(47b)は、左側に隣り合う噴霧ユニット(40)の第3板部(44c)の外縁に沿うように形成される。第4板部(44d)の右側面には、左側に向かって凹んだ第3凹部(47c)が形成される。第3凹部(47c)は、右側に隣り合う噴霧ユニット(40)の第4板部(44d)の外縁に沿うように形成される。第6板部(44f)の左側面には、右側に向かって凹んだ第4凹部(47d)が形成される。第4凹部(47d)は、左側に隣り合う噴霧ユニット(40)の第6板部(44f)の外縁に沿うように形成される。第7板部(44g)の右側面には、左側に向かって凹んだ第5凹部(47e)が形成される。第5凹部(47e)は、右側に隣り合う噴霧ユニット(40)の第7板部(44g)の外縁に沿うように形成される。
〈各噴霧ユニットのノズルの配列パターン〉
各噴霧ユニット(40)における噴霧器(55)のノズル(57)の配列パターンについて、図5及び図6を参照しながら説明する。8つの噴霧器(55)は、ノズル支持板(44)の8枚の板部(44a,44b,44c,44d,44e,44f,44g,44h)に対応して1つずつ配置される。具体的に、ノズル支持板(44)には、ベルトコンベア(15)の前側から後側に向かって、第1〜第8噴霧器(55a,55b,55c,55d,55e,55f,55g,55h)が順に配列される。つまり、第1噴霧器(55a)は第1板部(44a)に、第2噴霧器(55b)は第2板部(44b)に、第3噴霧器(55c)は第3板部(44c)に、第4噴霧器(55d)は第4板部(44d)にそれぞれ支持される。第5噴霧器(55e)は第5板部(44e)に、第6噴霧器(55f)は第6板部(44f)に、第7噴霧器(55g)は第7板部(44g)に、第8噴霧器(55h)は第8板部(44h)に支持される。第1〜第8噴霧器(55a,55b,55c,55d,55e,55f,55g,55h)は、対応する第1〜第8までのノズル(n1,n2,n3,n4,n5,n6,n7,n8)を有している。
各噴霧ユニット(40)における噴霧器(55)のノズル(57)の配列パターンについて、図5及び図6を参照しながら説明する。8つの噴霧器(55)は、ノズル支持板(44)の8枚の板部(44a,44b,44c,44d,44e,44f,44g,44h)に対応して1つずつ配置される。具体的に、ノズル支持板(44)には、ベルトコンベア(15)の前側から後側に向かって、第1〜第8噴霧器(55a,55b,55c,55d,55e,55f,55g,55h)が順に配列される。つまり、第1噴霧器(55a)は第1板部(44a)に、第2噴霧器(55b)は第2板部(44b)に、第3噴霧器(55c)は第3板部(44c)に、第4噴霧器(55d)は第4板部(44d)にそれぞれ支持される。第5噴霧器(55e)は第5板部(44e)に、第6噴霧器(55f)は第6板部(44f)に、第7噴霧器(55g)は第7板部(44g)に、第8噴霧器(55h)は第8板部(44h)に支持される。第1〜第8噴霧器(55a,55b,55c,55d,55e,55f,55g,55h)は、対応する第1〜第8までのノズル(n1,n2,n3,n4,n5,n6,n7,n8)を有している。
図6に示すように、噴霧ユニット(40)では、前後に隣接する各ノズル(57)の前後方向(縦方向)の間隔(ピッチP1)が互いに等しくなっている。即ち、噴霧ユニット(40)では、各ノズル(n1〜n8)の中心を通る左右方向(横方向)の仮想平面の間隔P1が互いに等しくなっている。本実施形態では、このピッチP1が37mmに設定される。
噴霧ユニット(40)では、全てのノズル(57)が横方向に所定距離(ピッチP2)だけずれて配置される。具体的に、噴霧ユニット(40)では、該噴霧ユニット(40)の左端から右端に向かって、第4ノズル(n4)、第7ノズル(n7)、第2ノズル(n2)、第5ノズル(n5)、第8ノズル(n8)、第3ノズル(n3)、第6ノズル(n6)、第1ノズル(n1)が順に配列される。これらのノズル(n1〜n8)のずれる距離P2は互いに等しくなっている。即ち、噴霧ユニット(40)では、各ノズル(n1〜n8)の中心を通る前後方向の仮想平面の仮想平面の間隔P2が互いに等しくなっている。
〈噴霧ユニットの取付構造について〉
噴霧機構(30)における複数の噴霧ユニット(40)の取付構造について図2、図3、図7、図8を参照しながら詳細に説明する。噴霧機構(30)の一対のユニット支持板(32)には、複数の縦溝(33)が形成される。具体的に、第1ユニット支持板(32a)の後側の内壁面には、複数の第1縦溝(33a)が形成される。また、第2ユニット支持板(32b)の前側の内壁面には、複数の第2縦溝(33b)が形成される。各縦溝(33)は、上下に縦長の直方体形状に形成される。各縦溝(33)は、ユニット支持板(32)の上端から該ユニット支持板(32)の下部(ユニット支持板(32)の下端よりもやや上方の部分)まで垂直方向に延びている。つまり、ユニット支持板(32)の上端面には、各縦溝(33)の上端を構成する開口部(34)が形成される。また、各縦溝(33)の下端には、矩形状の底壁部(35)が形成される。
噴霧機構(30)における複数の噴霧ユニット(40)の取付構造について図2、図3、図7、図8を参照しながら詳細に説明する。噴霧機構(30)の一対のユニット支持板(32)には、複数の縦溝(33)が形成される。具体的に、第1ユニット支持板(32a)の後側の内壁面には、複数の第1縦溝(33a)が形成される。また、第2ユニット支持板(32b)の前側の内壁面には、複数の第2縦溝(33b)が形成される。各縦溝(33)は、上下に縦長の直方体形状に形成される。各縦溝(33)は、ユニット支持板(32)の上端から該ユニット支持板(32)の下部(ユニット支持板(32)の下端よりもやや上方の部分)まで垂直方向に延びている。つまり、ユニット支持板(32)の上端面には、各縦溝(33)の上端を構成する開口部(34)が形成される。また、各縦溝(33)の下端には、矩形状の底壁部(35)が形成される。
各ユニット支持板(32)には、多数の縦溝(33)がそれぞれ形成される。これらの縦溝(33)は、ベルトコンベア(15)の移動方向と直交する方向(複数の噴霧ユニット(40)の配列方向)に所定の間隔を置いて等間隔に配列される。
各噴霧ユニット(40)の一対の側板(42)には、縦溝(33)に対応するように複数の締結部材(36)が設けられる。具体的に、第1側板(42a)には、天板(43)寄りに第1上部締結部材(36a)が取り付けられ、ノズル支持板(44)寄りに第1下部締結部材(36b)が取り付けられる。また、第2側板(42b)には、天板(43)寄りに第2上部締結部材(36c)が取り付けられ、ノズル支持板(44)寄りに第2下部締結部材(36d)が取り付けられる。
これらの締結部材(36)は、ボルト(38)及びナット(39)で構成される。ボルト(38)は、その頭部(38a)が側板(42)の外側に位置するように、各側板(42)の挿通孔(42c)に挿入される。ナット(39)は、側板(42)の内側に位置し、対応するボルト(38)に締結される。ボルト(38)の頭部(38a)は、側板(42)から外方へ突出しており、縦溝(33)に嵌合する凸部を構成する。ボルト(38)の頭部(38a)の外径は、縦溝(33)の左右方向の幅よりも僅かに小さい。
噴霧ユニット(40)を噴霧機構(30)に取り付ける際には、噴霧ユニット(40)を一対のユニット支持板(32)の内部に差し込んでいく。具体的に、ユニット支持板(32)の上方に噴霧ユニット(40)を位置させ、一対の縦溝(33)の内部に噴霧ユニット(40)の各ボルト(38)の頭部(39)を嵌合させる。より詳細には、第1ユニット支持板(32a)の開口部(34)に第1下部締結部材(36b)の頭部(39)を挿入すると同時に、第2ユニット支持板(32b)の開口部(34)に第2下部締結部材(36d)の頭部(39)を挿入する。そして、これらの下部締結部材(36b,36d)を各縦溝(33)に沿って下方にスライドさせる。次いで、第1ユニット支持板(32a)の開口部(34)に第1上部締結部材(36a)の頭部(39)を挿入すると同時に、第2ユニット支持板(32b)の開口部(34)に第2上部締結部材(36c)の頭部(39)を挿入する。噴霧ユニット(40)が更に下方へスライドすると、第1及び第2下部締結部材(36b,36d)が各縦溝(33)の底壁部(35)に当接する。この結果、2つのユニット支持板(32)の間において、噴霧ユニット(40)の位置が決定される。
このように、本実施形態の噴霧機構(30)では、一対のユニット支持板(32)の間に所望とする数の噴霧ユニット(40)を適宜取り付けることができる。これにより、噴霧機構(30)では、ガラス基板(20)の幅に応じて、噴霧ユニット(40)の数量(即ち、噴霧機構(30)での原料液の噴霧範囲)を適宜調整することができる。
〈噴霧機構の全体の噴霧器の配列パターン〉
噴霧機構(30)に複数の噴霧ユニット(40)が取り付けられた状態では、複数の噴霧器(55)が次のような配列パターンを構成する。この配列パターンについて、図6及び図9を参照しながら説明する。
噴霧機構(30)に複数の噴霧ユニット(40)が取り付けられた状態では、複数の噴霧器(55)が次のような配列パターンを構成する。この配列パターンについて、図6及び図9を参照しながら説明する。
本実施形態の噴霧機構(30)では、ベルトコンベア(15)の移動方向と直交する方向に複数(本実施形態では16つ)の噴霧器(55)が配列される。これらの噴霧器(55)の各ノズル(57)は、横方向に一直線に並ぶノズル列(L1)を構成する。噴霧機構(30)では、これらのノズル列(L)がベルトコンベア(15)の移動方向に8列配列される。具体的に、噴霧機構(30)では、ベルトコンベア(15)の移動方向の前側から後側に向かって順に、第1〜第8までのノズル列(L1〜L8)が配列される。
第1ノズル列(L1)は、各噴霧ユニット(40)の第1ノズル(n1)によって構成され、第2ノズル列(L2)は、各噴霧ユニット(40)の第2ノズル(n2)によって構成され、第3ノズル列(L3)は、各噴霧ユニット(40)の第3ノズル(n3)によって構成され、第4ノズル列(L4)は、各噴霧ユニット(40)の第4ノズル(n4)によって構成される。第5ノズル列(L5)は、各噴霧ユニット(40)の第5ノズル(n5)によって構成され、第6ノズル列(L6)は、各噴霧ユニット(40)の第6ノズル(n6)によって構成され、第7ノズル列(L7)は、各噴霧ユニット(40)の第7ノズル(n7)によって構成され、第8ノズル列(L8)は、各噴霧ユニット(40)の第8ノズル(n8)によって構成される。
各ノズル列(L1〜L8)では、横方向に隣接する各ノズル(57)の間隔(ピッチP3)が等しくなっている。本実施形態では、これらのピッチP3が約40mmに設定される。また、噴霧機構(30)では、前後方向に隣接する各ノズル列(L)の間隔(ピッチP1)が等しく設定される。このピッチP1は、各噴霧ユニット(40)の各ノズル(57)の縦方向のピッチに相当し、上述したように37mmに設定される。
噴霧機構(30)では、異なるノズル列(L1〜L8)間の複数のノズル(57)が、横方向(即ち、ベルトコンベア(15)の移動方向と直交する方向)に互いにずれている。つまり、上述したように、各噴霧ユニット(40)では、第1〜第8のノズル(n1〜n8)がピッチP2(5mm)を介して横方向にずれている(図6を参照)。これに対応するように、噴霧機構(30)では、各ノズル列(L1〜L8)の複数のノズル(57)がピッチP2を介して互いにずれることになる。噴霧機構(30)のノズル列(L)の列数Nは、各ノズル列(L)の隣接するノズル(57)のピッチP3を、このピッチP2で除することで求められる。
噴霧機構(30)では、前後に隣接するノズル(57)の横方向の距離も等しく設定される。具体的に、噴霧機構(30)では、前後に隣接する2つのノズル(57)のうち短い方の横方向のピッチP4が15mmに設定され、前後に隣接する2のノズル(57)のうち長い方の横方向のピッチP5が25mmに設定される。
噴霧機構(30)では、所定のノズル列(L)と、該所定のノズル列(L)のノズル(57)に対して横方向にずれる距離P2が最も小さいノズル(57)を有する他のノズル列(L)との間に1列以上のノズル列(L)が配置される。
具体的には、例えば図6に示す第5ノズル列(L5)を基準とすると、該第5ノズル列(L5)の第5ノズル(n5)に対して横方向にずれる距離が最も小さいのは、ピッチP2を介して左側にずれた第2ノズル列(L2)と、ピッチP2を介して右側にずれた第8ノズル列(L8)となる。噴霧機構(30)では、第5ノズル列(L5)と第2ノズル列(L2)との間に2つのノズル列(第3ノズル列(L3)と第4ノズル列(L4))が介在し、第5ノズル列(L5)と第8ノズル列(L8)との間にも2つのノズル列(第6ノズル列(L6)と第7ノズル列(L7))が介在する。このように、噴霧機構(30)では、横方向にずれる距離が最も小さいノズル列(L)同士が前後に隣接しない配列パターンが形成されている。
噴霧機構(30)では、前後に隣接するノズル(57)の斜め方向の間隔が、ピッチP3と同じかそれよりも大きくなっている。具体的には、例えば図9に示すように、第1ノズル列(L1)の第1ノズル(n1-1)の後側には、2つの第2ノズル(n2-1,n2-2)が隣接する。これらの第2ノズル(n2-1,n2-2)のうち第1ノズル(n1-1)との距離が短い側の第2ノズル(n2-1)と、第1ノズル(n1)との間隔(ピッチP6)は、ピッチP3と等しい40mmに設定されている。また、これらの第2ノズル(n2-1,n2-2)のうち第1ノズル(n1)との距離が長い方の第2ノズル(n2-1)と、第1ノズル(n1)との間隔(ピッチP7)は、ピッチP3よりも長い距離(44.7mm)に設定されている。このように本実施形態の噴霧機構(30)では、全てのノズル(57)と、該ノズル(57)の周囲に隣接する他のノズル(57)との間に40mm以上の間隔が確保されている。
隣接するノズル(57)の間隔が30mmより小さくなると、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互いに反発してしまうことが実験的に求められている(詳細は後述する)。これに対し、本実施形態では、隣接するノズル(57)の間隔が30mm以上に確保されているため、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が互いに電気的に反発してしまうことがない。このように、噴霧機構(30)は、同じノズル列(L)間の複数のノズル(n)から噴霧される原料液が互いに電気的に互いに反発せず、且つ異なるノズル列(L)間のノズル(57)から噴霧される原料液が互いに電気的に反発しないように構成される。
−成膜装置の運転動作−
上述したように、成膜装置(10)は、前処理ゾーン(11)においてガラス基板(20)を洗浄する工程を、噴霧ゾーン(12)においてガラス基板(20)に原料液を付着させる工程を、後処理ゾーン(13)においてガラス基板(20)に被膜を定着させる工程を、それぞれ行う。ここでは、噴霧ゾーン(12)においてガラス基板(20)に原料液を付着させるために成膜装置(10)が行う動作について説明する。成膜装置(10)は、以下で説明するような成膜方法を実行する。
上述したように、成膜装置(10)は、前処理ゾーン(11)においてガラス基板(20)を洗浄する工程を、噴霧ゾーン(12)においてガラス基板(20)に原料液を付着させる工程を、後処理ゾーン(13)においてガラス基板(20)に被膜を定着させる工程を、それぞれ行う。ここでは、噴霧ゾーン(12)においてガラス基板(20)に原料液を付着させるために成膜装置(10)が行う動作について説明する。成膜装置(10)は、以下で説明するような成膜方法を実行する。
〈原料液を噴霧する動作〉
先ず、噴霧機構(30)から原料液を噴霧する動作について、図4を参照しながら説明する。噴霧機構(30)の運転中には、各噴霧ユニット(40)のポンプ(60)が運転されるとともに、電源(72)の正極と噴霧器(55)とが通電状態となる。
先ず、噴霧機構(30)から原料液を噴霧する動作について、図4を参照しながら説明する。噴霧機構(30)の運転中には、各噴霧ユニット(40)のポンプ(60)が運転されるとともに、電源(72)の正極と噴霧器(55)とが通電状態となる。
ポンプ(60)が作動すると、原料液供給ライン(61)の原料液が液流路(62)に流入し、ポンプ(60)を通過した後、上流側分流部(64a)へ流出する。上流側分流部(64a)の原料液は、2本の上流側分流管(65a)に分流し、各中間分流部(64b)へ流出する。各中間分流部(64b)の原料液は、それぞれ2本の中間分流管(65b)に分流し、各下流側分流部(64c)へ流出する。各下流側分流部(64c)の原料液は、それぞれ2本の下流側分流管(65c)に分流する。以上のようにして、分流機構(63)では、液流路(62)を流出した原料液が8つの分流路(C)に分配される。
各下流側分流管(65c)に流入した各原料液は、それぞれキャピラリーチューブ(67)を通過して減圧された後、各噴霧器(55)へ供給される。これらの噴霧器(55)の各ノズル(57)は、電源(72)の正極と導通している。また、電源(72)の負極は、接地された状態でガラス基板(20)を載せた導電板(25)と導通している。このため、噴霧器(55)のノズル(57)とガラス基板(20)との間に電圧が印加される。
ノズル(57)とガラス基板(20)の間に電圧が印加されると、ノズル(57)の先端付近の空間に電界が形成される。すると、ノズル(57)の先端では、原料液が電界に引っ張られていわゆるテイラーコーンが形成される。このテイラーコーンの先端から原料液が引きちぎられることによって概ね数μmから100μm程度の大きさの液滴が生成する。
ノズル(57)は電源(72)の正極に導通しているため、ノズル(57)から噴霧された液滴状の原料液も正の電荷に帯電している。これに対し、ガラス基板(20)は実質的にゼロ電位となっている。このため、液滴状の原料液は、クーロン力によってガラス基板(20)へ向かって(本実施形態では下へ向かって)飛んでゆき、ガラス基板(20)の表面に付着する。この結果、ガラス基板(20)の表面には、所定の領域に防汚用の被膜が形成される。
〈ノズルの目詰まりを検出する動作〉
上述したように、噴霧機構(30)では、各噴霧ユニット(40)から原料液を噴霧する動作が行われる。図4に示す噴霧機構(30)の運転中には、各噴霧ユニット(40)においてノズル(57)の目詰まりが検出される。具体的に、複数の噴霧ユニット(40)のうちの1つの噴霧ユニット(40)のノズル(57)に異物が侵入し、このノズル(57)が詰まったとする。この場合、原料液が搬送される液流路(62)では、ポンプ(60)の吐出側の圧力が上昇する。この結果、液流路(62)の流出路(62b)に連通する検出流路(76)の圧力も上昇し、圧力センサ(77)の検出圧力も上昇する。
上述したように、噴霧機構(30)では、各噴霧ユニット(40)から原料液を噴霧する動作が行われる。図4に示す噴霧機構(30)の運転中には、各噴霧ユニット(40)においてノズル(57)の目詰まりが検出される。具体的に、複数の噴霧ユニット(40)のうちの1つの噴霧ユニット(40)のノズル(57)に異物が侵入し、このノズル(57)が詰まったとする。この場合、原料液が搬送される液流路(62)では、ポンプ(60)の吐出側の圧力が上昇する。この結果、液流路(62)の流出路(62b)に連通する検出流路(76)の圧力も上昇し、圧力センサ(77)の検出圧力も上昇する。
このようにして、圧力センサ(77)の検出圧力が上昇変化すると、出力部(79)から異常信号が出力される。具体的に、判定部(78)は、圧力センサ(77)の検出圧力の上昇変化量が所定値を越えると、この圧力センサ(77)に対応する噴霧ユニット(40)のいずれかノズル(57)が詰まったと判定する。そして、この圧力センサ(77)に対応する噴霧ユニット(40)の出力部(79)から異常信号が出力される。この異常信号は、例えばコントローラ(14)に入力される。コントローラ(14)では、異常信号が出力された出力部(79)に対応する噴霧ユニット(40)のノズル(57)が詰まっていることが、表示部等により表示される。これにより、ユーザは、どの噴霧ユニット(40)のノズル(57)が詰まっているかを特定することができる。ノズル(57)の目詰まりを知ったユーザは、ノズル(57)の清掃を行う、あるいはノズル(57)の詰まりがある噴霧ユニット(40)を別の噴霧ユニット(40)と交換する。
〈ガラス基板の全面に被膜を形成するための動作〉
成膜装置(10)では、ガラス基板(20)を載せた導電板(25)が、ベルトコンベア(15)によって搬送される。成膜装置(10)の噴霧ゾーン(12)では、水平方向へ真っ直ぐに移動するガラス基板(20)に対して、噴霧機構(30)が原料液を噴霧する。その結果、矩形状のガラス基板(20)の表面全体に原料液が付着し、ガラス基板(20)の表面全体に防汚用の被膜が形成される。ここでは、ガラス基板(20)の全面に被膜を形成するための動作について、図10〜図13を参照しながら説明する。
成膜装置(10)では、ガラス基板(20)を載せた導電板(25)が、ベルトコンベア(15)によって搬送される。成膜装置(10)の噴霧ゾーン(12)では、水平方向へ真っ直ぐに移動するガラス基板(20)に対して、噴霧機構(30)が原料液を噴霧する。その結果、矩形状のガラス基板(20)の表面全体に原料液が付着し、ガラス基板(20)の表面全体に防汚用の被膜が形成される。ここでは、ガラス基板(20)の全面に被膜を形成するための動作について、図10〜図13を参照しながら説明する。
ガラス基板(20)は、噴霧機構(30)から噴霧される原料液の範囲に対して、幅方向(ベルトコンベア(15)の移動方向と直交する方向)の内側寄りにオフセットして配置される。具体的には、図10に示すように、ガラス基板(20)の幅方向の一方の側端面(例えば図10における左端面(20a))は、噴霧機構(30)の最も左端のノズル(n2)(図10に示す一点鎖線Y1よりも内側(右側)にずれて配置される。同様に、図示しないが、ガラス基板(20)の幅方向の他方の側端面(右端面)は、噴霧機構(30)の最も右端のノズル(n1)よりも内側(左側)にずれて配置される。これにより、ガラス基板(20)の表面の左右の側端部においても、所望とする塗り重ね回数(詳細は後述する)で原料液を付着させることができる。
噴霧ゾーン(12)では、ガラス基板(20)を載せた導電板(25)が、ベルトコンベア(15)によって搬送されてくる。噴霧ゾーン(12)では、ガラス基板(20)の前縁が、第8ノズル列(L8)、第7ノズル列(L7)、第6ノズル列(L6)、第5ノズル列(L5)、第4ノズル列(L4)、第3ノズル列(L3)、第2ノズル列(L2)、及び第1ノズル列(L1)の順に通過する。各ノズル列(L)のノズル(57)からは、図10のハッチングを付した範囲(噴霧領域(A1))において、原料液が噴霧される。この結果、図11に示すように、ガラス基板(20)が各ノズル列(L)を通過していくと、ガラス基板(20)の表面には、この噴霧領域(A1)に左右の幅に沿うようにして帯状の付着領域(A2)が形成されていく。なお、ここでいう付着領域(A2)は、ガラス基板(20)の表面上において、被膜の性能を達成できる程度に原料液が実質的に均一に付着した領域を意味する。また、上記噴霧領域(A1)は、この付着領域(A2)を形成するために要する原料液の噴霧範囲である。
この噴霧機構(30)では、各ノズル列(L)の各ノズル(57)間の距離(ピッチP2、ピッチP6、ピッチ7)が40mm以上に設定されている。仮にこれらのピッチが30mmよりも小さくなると、隣り合うノズル(57)から噴霧された原料液の間に斥力(反発力)が作用してしまう。この場合、各ノズル(57)の先端から放射状に拡がる原料液の噴霧領域(A1)が狭くなり、ひいては各ノズル(57)に対応する付着領域(A2)も狭くなってしまう。これに対し、本実施形態では、隣接するノズル(57)のピッチが40mm以上に設定される。これにより、隣接するノズル(57)から噴霧された原料液が反発せず、付着領域(A2)を拡大できる。この点について図12を参照しながら詳細に説明する。
図12は、隣接するノズル(57)のピッチと、ガラス基板(20)の付着領域(A2)の塗布幅Dとの関係を実験的に求めたものである。ここで、この塗布幅Dは、ガラス基板(20)の表面で形成される帯状の付着領域(A2)のうちベルトコンベア(15)の移動方向と直交する方向の距離を意味する。同図に示すように、隣接するノズル(57)のピッチが30mm〜50mmの範囲では、付着領域(A2)の塗布幅Dは18mmと一定になる。このことは、隣接するノズル(57)のピッチが30mm以上であれば、隣接するノズル(57)から噴霧された原料液が電気的に反発せず、最大の塗布幅Dが得られることを意味する。
一方、隣接するノズル(57)のピッチが30mmより小さくなっていくと、付着領域(A2)の塗布幅Dも徐々に小さくなっていく。このピッチが小さくなるにつれて、原料液間の反発力が大きくなり、これに伴い噴霧領域(A1)、ひいては付着領域(A2)の塗布幅Dも小さくなっていくからである。なお、図12に示す例では、隣接するノズル(57)のピッチが約20mmであると、付着領域(A2)の塗布幅Dが約13mmとなり、このピッチが約10mmであると、付着領域(A2)の塗布幅Dが約6mmとなる。
本実施形態では、上述したように隣接するノズル(57)間のピッチが全て30mm以上に設定されているため、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互いに反発しない。このため、各ノズル(57)に対応する付着領域(A2)の塗布幅Dが約18mmとなる。これにより、例えばピッチが10mmや20mmである場合と比較すると、比較的広い範囲の付着領域(A2)に原料液を分散して付着させることができる。この結果、付着領域(A2)では、原料液の分布ムラが小さくなるため、ガラス基板(20)の表面に形成される被膜の均一化を図ることができる。
また、このようにして広範囲に原料液を噴霧するようにすると、原料液の無駄に消費してしまうことを防止できる。ガラス基板(20)の表面においては、ガラス基板(20)に原料液が付着することで、ガラス基板(20)と原料液とが反応し、これにより原料液が有効な被膜の形成に寄与することになる。つまり、ガラス基板(20)に付着しない原料液は、例えば蒸発してガラス基板(20)上から無くなるか、あるいはガラス基板(20)上に残存したとしてもすぐに剥がれ落ちてしまうため、有効な被膜の形成に寄与しない。このため、仮にガラス基板(20)の狭い範囲に原料液が密に噴霧されると、この原料液の一部がガラス基板(20)と接触・反応しないことがあり、有効な被膜の形成に寄与しないことになる。この結果、無駄に原料液を消費してしまうことになる。
一方、本実施形態では、上述のように広範囲に亘って原料液が分散して噴霧されるため、ガラス基板(20)と原料液とが接触及び反応を促進できる。このため、噴霧した原料液の多くが被膜の形成に寄与することとなり、原料液の無駄な消費を抑制できる。
一方、各ノズル列(L)において、原料液の反発を防止するように隣接するノズル(57)のピッチP3を40mmに設定すると、このピッチP3は塗布幅D(=18mm)よりも大きくなってしまう。このため、噴霧機構(30)が1つのノズル列(L)だけを有する構成とした場合、各付着領域(A2)の間に原料液が付着しない領域が形成されてしまい、ガラス基板(20)の全域に被膜を形成できなくなる。これに対し、本実施形態の噴霧機構(30)では、縦方向に複数のノズル列(L1〜L8)を配列し、且つ各ノズル列(L1〜L8)のノズル(57)が横方向に互いにずれる配列パターンとなる。このため、例えば図11に示すように、各ノズル列(L1〜L8)に対応する付着領域(A2)も横方向に互いにずれることとなり、ガラス基板(20)の全域に隙間なく原料液を付着させることができる。
また、本実施形態の噴霧機構(30)では、例えば図11に示すように、異なるノズル列(L)のノズル(57)に対応する付着領域(A2)の一部がガラス基板(20)の表面上で重なるように各ノズル(57)が配列されている(図11では、複数の付着領域(A2)が重なった領域に破線のハッチングを付している)。具体的に、噴霧機構(30)では、各ノズル列(L)のノズル(57)の横方向にずれる距離(P2=5mm)が、付着領域(A2)の塗布幅D×1/2(D=18mm)よりも小さくなっている。このため、ガラス基板(20)の表面では、同じ領域において原料液が複数回吹き付けられるため、付着領域(A2)に原料液を密に付着させることができる。
つまり、例えばガラス基板(20)の表面上に1回のみ原料液を吹き付けた場合、付着領域(A2)での原料液の密度が不十分となり、得られる被膜の耐久性も不十分となることがある。また、ノズル(57)から噴霧された原料液分子は、同じ電荷に帯電しているため、これらの原料液分子は互いに反発しながらガラス基板(20)に付着する。このため、1回の原料液の吹きつけで得られる付着領域(A2)では、厳密には、原料液の分子同士が僅かに離れることとなり、均一且つ密な被膜を形成できない可能性がある。これに対し、本実施形態のように、ガラス基板(20)に付着領域(A2)を重ねて形成することで、ガラス基板(20)の表面に十分な量の原料液を密に付着させることができる。
より詳細に、本実施形態の噴霧機構(30)は、ガラス基板(20)の全ての領域において、原料液が3回以上に亘って吹き付けられるように構成されている。具体的には、例えばガラス基板(20)の表面上において、複数の部分a〜fをプロットとしたとする。これらの部分は、いずれも噴霧機構(30)の噴霧領域(A1)を3回以上通過することになる。従って、ガラス基板(20)の表面では、これらの部分に原料液が3回以上塗り重ねられることになる。この結果、本実施形態では、十分な耐久性を有する被膜を得ることができる。
図13は、原料液の重ね塗り回数が異なる4つのガラス基板A〜Dについて擦り試験を行い、その際のガラス基板の表面張力を接触角により検証した結果を示すものである。擦り回数が3000回を越えると、ガラス基板A(重ね塗り回数が1回)及びガラス基板B(重ね塗り回数が2回)の接触角が低下していく。そして、擦り回数が5000回を越えると、ガラス基板A及びBの接触角が大幅に低下する。これに対し、ガラス基板C(重ね塗り回数が3回)及びガラス基板D(重ね塗り回数が4回)では、擦り回数が5000回に至っても接触角はほとんど低下しない。このため、ガラス基板(20)の重ね塗りの回数は3回以上であることが好ましく、4回以上であることが更に好ましい。本実施形態の噴霧機構(30)で得られるガラス基板(20)は、全域に亘って3回以上の重ね塗りが行われる。このため、ガラス基板(20)の全域に亘って、十分な耐久性を有する被膜を形成することができる。
−実施形態の効果−
上記実施形態では、同じノズル列(L)間において、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互いに反発しないようにしたので、これらのノズル(57)から広範囲に亘って低密度の原料液を噴霧できる。この結果、これらのノズル(57)から噴霧された原料液の付着領域(A2)では、原料液の分布が均一化されるため、被膜の厚みを均一化できる。また、このようにして原料液を広範囲に亘って噴霧することで、原料液のガラス基板(20)の反応を促進でき、原料液の無駄な消費を抑えることができる。
上記実施形態では、同じノズル列(L)間において、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互いに反発しないようにしたので、これらのノズル(57)から広範囲に亘って低密度の原料液を噴霧できる。この結果、これらのノズル(57)から噴霧された原料液の付着領域(A2)では、原料液の分布が均一化されるため、被膜の厚みを均一化できる。また、このようにして原料液を広範囲に亘って噴霧することで、原料液のガラス基板(20)の反応を促進でき、原料液の無駄な消費を抑えることができる。
また、上記実施形態によれば、異なるノズル列(L)間において、各ノズル(57)がベルトコンベア(15)の移動方向と直交する方向に互いにずれて配置される。これにより、1つのノズル列(L)に対応する原料液の付着領域(A2)の隙間を、他のノズル列(L)に対応する原料液によって埋めることができる。この結果、ガラス基板(20)の全域に亘って比較的均一な膜厚の被膜を形成することができる。
また、上記実施形態によれば、各ノズル列(L)のノズル(57)から噴霧される低密度且つ広範囲の原料液が、対象物(20)の表面に複数回吹き付けられる。このため、対象物(20)の表面では、原料液分子が密に付着した十分な厚みの被膜を形成でき、被膜の耐久性の向上を図ることができる。
また、上記実施形態のノズル(57)の配列パターンでは、図6に示すように、ピッチP2(5mm)だけ互いにずれた2つのノズル列(L)の間に1つ以上の他のノズル列(L)が配置される。つまり、噴霧機構(30)では、横方向にずれる距離が最も小さいノズル列(L)同士が前後に互いに隣接しない配列パターンとなっている。このため、これらのノズル列(L)同士が互いに隣接する配列パターンと比較すると、前後に隣接するノズル(57)の距離(図9のピッチP6)が長くなる。これにより、このピッチP6を十分に確保しつつ、各ノズル列(L)の縦方向のピッチP1を狭でき、ひいては噴霧機構(30)を縦方向に小型化できる。
−実施形態の変形例−
上述した実施形態の噴霧機構(30)では、次のような噴霧器(55)のノズル(57)を以下のような配列パターンで配置してもよい。
上述した実施形態の噴霧機構(30)では、次のような噴霧器(55)のノズル(57)を以下のような配列パターンで配置してもよい。
〈変形例1〉
図14に示す変形例1の噴霧機構(30)には、前後方向に9つのノズル列(L1〜L9)が配列される。また、噴霧機構(30)では、第1〜第9までのノズル(n1〜n9)を有する15つの噴霧ユニット(40)が左右に隣接して配置される。
図14に示す変形例1の噴霧機構(30)には、前後方向に9つのノズル列(L1〜L9)が配列される。また、噴霧機構(30)では、第1〜第9までのノズル(n1〜n9)を有する15つの噴霧ユニット(40)が左右に隣接して配置される。
噴霧機構(30)では、縦方向に隣接するノズル列(L)のピッチP1が40.3mmに設定される。異なるノズル列(L)が横方向にずれる距離(ピッチP2)は、5mmに設定される。各ノズル列(L)で横方向に隣接するノズル(57)のピッチP3は、45mmに設定される。前後に隣接するノズル(57)の横方向の短い方のピッチP4は20mmに設定され、長い方のピッチP5は25mmに設定される。前後に隣接するノズル(57)の斜め方向の短い方のピッチP6は45mmに設定され、短い方のピッチP7は47.4mmに設定される。
変形例1では、隣接するノズル(57)の間に45mm以上の間隔が確保される。このため、変形例1においても、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が互いに反発しない。これにより、変形例1においても、各ノズル(57)の噴霧領域(A1)の外径、ないし付着領域(A2)の塗布幅Dが18mmとなる。これに対し、各ノズル列(L)の横方向のずれる距離P2は、5mmであり、1/2×Dよりも小さい。このため、上述した実施形態と同様、ガラス基板(20)の表面では、原料液が複数回に亘って重ね塗りされる。
また、変形例1の噴霧機構(30)の各噴霧ユニット(40)では、左側から右側に向かって、第4ノズル(n4)、第2ノズル(n2)、第7ノズル(n7)、第5ノズル(n5)、第3ノズル(n3)、第1ノズル(n1)、第8ノズル(n8)、第6ノズル(n6)の順に配列される。つまり、変形例1においても、横方向にずれる距離P2が最も小さい2つのノズル列(L)の間に1つ以上の他のノズル列(L)が配置される。この結果、前後で隣接するノズル(57)間のピッチP6が長くなるため、各ノズル列(L)の縦方向のピッチP1を短くできる。
〈変形例2〉
図15に示す変形例2の噴霧機構(30)には、前後方向に9つのノズル列(L1〜L9)が配列される。また、噴霧機構(30)では、第1〜第9までのノズル(n1〜n9)を有する12つの噴霧ユニット(40)が左右に隣接して配置される。
図15に示す変形例2の噴霧機構(30)には、前後方向に9つのノズル列(L1〜L9)が配列される。また、噴霧機構(30)では、第1〜第9までのノズル(n1〜n9)を有する12つの噴霧ユニット(40)が左右に隣接して配置される。
噴霧機構(30)では、縦方向に隣接するノズル列(L)のピッチP1が47.7mmに設定される。異なるノズル列(L)が横方向にずれる距離(ピッチP2)は、5mmに設定される。各ノズル列(L)で横方向に隣接するノズル(57)のピッチP3は、50mmに設定される。前後に隣接するノズル(57)の横方向の短い方のピッチP4は15mmに設定され、長い方のピッチP5は30mmに設定される。前後に隣接するノズル(57)の斜め方向の短い方のピッチP6は50mmに設定され、短い方のピッチP7は59.1mmに設定される。
変形例2では、隣接するノズル(57)の間に50mm以上の間隔が確保される。このため、変形例2においても、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が互いに反発しない。これにより、変形例2においても、各ノズル(57)の噴霧領域(A1)の外径、ないし付着領域(A2)の塗布幅Dが18mmとなる。これに対し、各ノズル列(L)の横方向のずれる距離P2は、5mmであり、1/2×Dよりも小さい。このため、上述した実施形態と同様、ガラス基板(20)の表面では、原料液が複数回に亘って重ね塗りされる。
また、変形例2の噴霧機構(30)の各噴霧ユニット(40)では、左側から右側に向かって、第4ノズル(n4)、第1ノズル(n1)、第8ノズル(n8)、第2ノズル(n2)、第9ノズル(n9)、第6ノズル(n6)、第3ノズル(n3)、第7ノズル(n7)の順に配列される。つまり、変形例2においても、横方向にずれる距離P2が最も小さい2つのノズル列(L)の間に1つ以上の他のノズル列(L)が配置される。この結果、前後で隣接するノズル(57)間のピッチP6が長くなるため、各ノズル列(L)の縦方向のピッチP1を短くできる。
〈変形例3〉
図16に示す変形例3の噴霧機構(30)には、前後方向に7つのノズル列(L1〜L7)が配列される。また、噴霧機構(30)では、第1〜第7までのノズル(n1〜n7)を有する16つの噴霧ユニット(40)が左右に隣接して配置される。
図16に示す変形例3の噴霧機構(30)には、前後方向に7つのノズル列(L1〜L7)が配列される。また、噴霧機構(30)では、第1〜第7までのノズル(n1〜n7)を有する16つの噴霧ユニット(40)が左右に隣接して配置される。
噴霧機構(30)では、縦方向に隣接するノズル列(L)のピッチP1が31.6mmに設定される。異なるノズル列(L)が横方向にずれる距離(ピッチP2)は、5mmに設定される。各ノズル列(L)で横方向に隣接するノズル(57)のピッチP3は、35mmに設定される。前後に隣接するノズル(57)の横方向の短い方のピッチP4は15mmに設定され、長い方のピッチP5は20mmに設定される。前後に隣接するノズル(57)の斜め方向の短い方のピッチP6は35mmに設定され、短い方のピッチP7は37.4mmに設定される。
変形例3では、隣接するノズル(57)の間に30mm以上の間隔が確保される。このため、変形例3においても、隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が互いに反発しない。これにより、変形例3においても、各ノズル(57)の噴霧領域(A1)の外径、ないし付着領域(A2)の塗布幅Dが18mmとなる。これに対し、各ノズル列(L)の横方向のずれる距離P2は、5mmであり、1/2×Dよりも小さい。このため、上述した実施形態と同様、ガラス基板(20)の表面では、原料液が複数回に亘って重ね塗りされる。
また、変形例3の噴霧機構(30)の各噴霧ユニット(40)では、左側から右側に向かって、第4ノズル(n4)、第2ノズル(n2)、第7ノズル(n7)、第5ノズル(n5)、第1ノズル(n1)、第6ノズル(n6)の順に配列される。つまり、変形例3においても、横方向にずれる距離P2が最も小さい2つのノズル列(L)の間に1つ以上の他のノズル列(L)が配置される。この結果、前後で隣接するノズル(57)間のピッチP6が長くなるため、各ノズル列(L)の縦方向のピッチP1を短くできる。
〈その他の実施形態〉
上述した原料液は、オプツール(登録商標)DSX−E(ダイキン工業社製)のパーフルオロブチルエチルエーテル溶液(有効成分1mass%)を用いることができる。
上述した原料液は、オプツール(登録商標)DSX−E(ダイキン工業社製)のパーフルオロブチルエチルエーテル溶液(有効成分1mass%)を用いることができる。
また、原料液は、少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物からなる表面処理剤を含有することができる。
この表面処理剤は、具体的には、WO97/07155、特表2008−534696、WO2013/146110、特開2010−217915、特開2013−117012、特開2002−348370、特開2012−72272、特開2003−238577、特開2000−143991、WO2013/121984、WO2013/121985、WO2013/121986等に記載されている化合物が挙げられる。
また、市販の表面処理剤としては、KY−130(信越化学工業社製)、KY−164(信越化学工業社製)、KY−178(信越化学工業社製)、KY−185(信越化学工業社製)、オプツールDSX−E(ダイキン工業社製)、オプツールAES−4E(ダイキン工業社製)、DC2634(ダウ・コーニング社製)が例示される。
原料液は、表面処理剤を溶媒で希釈し、基材表面に適用されるものである。原料液の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される。
炭素数5〜12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン)、ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)、ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子社製のアサヒクリン(登録商標)AC−6000)、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン社製のゼオローラ(登録商標)H)、ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えばパーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム社製のNOVEC(登録商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム社製のNOVEC7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム社製のNOVEC7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム社製のNOVEC7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい。)、あるいはCF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子社製のアサヒクリンNOVECAE−3000))など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)および/またはパーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)が特に好ましい。
また、上記後処理ゾーン(13)で行われる後処理工程は、例えば、水分供給および乾燥加熱を逐次的に実施するものであってよい 。水分供給および乾燥加熱は、過熱水蒸気を用いることにより連続的に実施してもよい。
以上説明したように、本発明は、静電噴霧によって対象物に被膜を形成する成膜装置について有用である。
15 ベルトコンベア(移動機構)
20 ガラス基板(対象物)
30 噴霧機構
40 噴霧ユニット
55 噴霧器
57 ノズル
60 ポンプ(搬送機構)
70 電圧印加部
L ノズル列
A2 付着領域
20 ガラス基板(対象物)
30 噴霧機構
40 噴霧ユニット
55 噴霧器
57 ノズル
60 ポンプ(搬送機構)
70 電圧印加部
L ノズル列
A2 付着領域
Claims (4)
- 対象物(20)に原料液を噴霧することによって該対象物(20)の表面に被膜を形成する静電噴霧型の成膜装置であって、
複数のノズル(57)を有する噴霧機構(30)と、
上記原料液が帯電した液滴となって上記ノズル(57)から上記対象物(20)へ噴霧されるように該ノズル(57)と上記対象物(20)の間に電圧を印加する電圧印加部(70)と、
上記対象物(20)と上記噴霧機構(30)の一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構(15)とを備え、
上記噴霧機構(30)では、上記移動機構(15)の移動方向と交わる方向に配列される複数のノズル(57)からなるノズル列(L)が、該移動機構(15)の移動方向に複数配列され、
上記噴霧機構(30)は、同じノズル列(L)間で隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互い反発しないように構成され、
異なるノズル列(L)間の複数のノズル(57)は、上記移動機構(15)の移動方向と交わる方向に互いにずれて配置され、
上記噴霧機構(30)では、所定のノズル列(L)と、該所定のノズル列(L)のノズル(57)に対して移動機構(15)の移動方向に交わる方向にずれる距離が最も小さい他のノズル列(L)との間に1列以上のノズル列(L)が配置され、
上記所定のノズル列(L)と、該所定ノズル列(L)のノズル(57)に対して上記移行機構(15)の移動方向に交わる方向にずれる距離が最も小さい他のノズル列(L)と、両者のノズル列(L)の間に配置される1列以上のノズル列(L)を含む3つ以上のノズル列(L)は、各々が等間隔置きに隣接して配列されるとともに、上記3つ以上のノズル列(L)の各ノズル(57)から同時に原料液が噴霧されるように構成される
ことを特徴とする静電噴霧型の成膜装置。 - 請求項1において、
上記噴霧機構(30)は、異なるノズル列(L)間で隣接するノズル(57)から噴霧される原料液が電気的に互いに反発しないように構成されることを特徴とする静電噴霧型の成膜装置。 - 請求項1又は2において、
上記噴霧機構(30)は、異なるノズル列(L)のノズル(57)から噴霧された原料液が対象物(20)に付着することで形成される帯状の付着領域(A2)の一部が互いに重なるように上記ノズル(57)が配列される
ことを特徴とする静電噴霧型の成膜装置。 - 請求項3において、
上記付着領域(A2)における上記移動機構(15)の移動方向に交わる方向の塗布幅をDとし、該移動機構(15)の移動方向に交わる方向のずれが最も小さい2つのノズル列(L)間のずれる距離をP2とすると、
上記噴霧機構(30)は、上記距離P2が、塗布幅Dの1/2よりも小さくなるように上記複数のノズル(57)が配列される
ことを特徴とする静電噴霧型の成膜装置。
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