以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
[実施の形態1]
以下の説明で明らかとなるように、本発明の実施の形態は、電源システムにおけるプリチャージ制御に関するものである。まず、本発明の実施の形態による電源システムの回路構成および回路動作について説明し、その後、当該電源システムの起動時におけるプリチャージ制御について説明することとする。
(回路構成)
図1は、本発明の実施の形態による電源システムの構成例を示す回路図である。
図1を参照して、電源システム5は、直流電源10と、直流電源20と、電力変換器50とを備える。
本実施の形態において、直流電源10は、たとえばリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池のような二次電池で構成される。一方、直流電源20は、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の出力特性に優れた直流電圧源要素により構成される。すなわち、直流電源20は、プリチャージおよびディスチャージの対象となる「第2の直流電源」に対応し、直流電源10は、プリチャージおよびディスチャージの対象との間で充放電を行う「第1の直流電源」に対応する。
電力変換器50は、直流電源10および直流電源20と、負荷30との間に接続される。電力変換器50は、負荷30と接続された電源配線PL上の直流電圧(以下、出力電圧Voとも称する)を電圧指令値Vo*に従って制御するように構成される。
負荷30は、電力変換器50の出力電圧Voを受けて動作する。電圧指令値Vo*は、負荷30の動作に適した電圧に設定される。電圧指令値Vo*は、負荷30の状態に応じて可変に設定されてもよい。さらに、負荷30は、回生発電等によって、直流電源10,20の充電電力を発生可能に構成されてもよい。
電力変換器50は、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する)S1〜S4と、リアクトルL1,L2とを含む。本実施の形態において、スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子S1〜S4に対しては、逆並列ダイオードD1〜D4が配置されている。また、スイッチング素子S1〜S4は、図示しない制御信号に応答して、オンオフを制御することが可能である。
スイッチング素子S1は、電源配線PLおよびノードN1の間に電気的に接続される。リアクトルL2は、ノードN1と直流電源20の正極端子との間に接続される。スイッチング素子S2はノードN1およびN2の間に電気的に接続される。ノードN1は、スイッチング素子S1およびS2の接続ノードに対応する。
リアクトルL1はノードN2と直流電源10の正極端子との間に接続される。以下では、リアクトルL1,L2のインダクタンス値についても、単にL1,L2と表記するものとする。
スイッチング素子S3は、ノードN2およびN3の間に電気的に接続される。すなわち、ノードN2は、スイッチング素子S2およびS3の接続ノードに対応する。ノードN3は、直流電源20の負極端子と電気的に接続される。スイッチング素子S4は、ノードN3および接地配線GLの間に電気的に接続される。接地配線GLは、負荷30および、直流電源10の負極端子と電気的に接続される。
図1から理解されるように、電力変換器50は、直流電源10および直流電源20の各々に対応して昇圧チョッパ回路を備えた構成となっている。すなわち、直流電源10に対しては、スイッチング素子S1,S2を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S3,S4を下アーム素子とする電流双方向の第1の昇圧チョッパ回路が構成される。同様に、直流電源20に対しては、スイッチング素子S1,S4を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S2,S3を下アーム素子とする電流双方向の第2の昇圧チョッパ回路が構成される。
そして、第1の昇圧チョッパ回路によって、直流電源10および電源配線PLの間に形成される電力変換経路と、第2の昇圧チョッパ回路によって、直流電源20および電源配線PLの間に形成される電力変換経路との両方に、スイッチング素子S1〜S4が含まれる。
制御装置40は、負荷30への出力電圧Voを制御するために、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを制御する制御信号SG1〜SG4を生成する。なお、図1では図示を省略しているが、直流電源10の電圧(以下、V[1]と表記する)および電流(以下、I[1]と表記する)、直流電源20の電圧(以下、V[2]と表記する)および電流(以下、I[2]と表記する、ならびに、出力電圧Voの検出器(電圧センサ,電流センサ)が設けられている。さらに、直流電源10および20の温度(以下、T[1]およびT[2]と表記する)の検出器(温度センサ)についても配置することが好ましい。これらの検出器の出力は、制御装置40へ与えられる。ただし、後述するように、電流センサについては、直流電源10,20のいずれか一方のみに設ける構成とすることが可能である。
図2は、負荷30の構成例を示す概略図である。
図2を参照して、負荷30は、たとえば電動車両の走行用電動機を含むように構成される。負荷30は、平滑コンデンサCHと、インバータ32と、モータジェネレータ35と、動力伝達ギヤ36と、駆動輪37とを含む。
モータジェネレータ35は、車両駆動力を発生するための走行用電動機であり、たとえば、複数相の永久磁石型同期電動機で構成される。モータジェネレータ35の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギヤ36を経由して、駆動輪37へ伝達される。駆動輪37に伝達されたトルクにより電動車両が走行する。また、モータジェネレータ35は、電動車両の回生制動時には、駆動輪37の回転力によって発電する。この発電電力は、インバータ32によってAC/DC変換される。この直流電力は、電源システム5に含まれる直流電源10,20の充電電力として用いることができる。
なお、モータジェネレータの他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ35を協調的に動作させることによって、電動車両に必要な車両駆動力が発生される。この際には、エンジンの回転による発電電力を用いて直流電源10,20を充電することも可能である。
このように、電動車両は、走行用電動機を搭載する車両を包括的に示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車と、エンジンを搭載しない電気自動車および燃料電池車との両方を含むものである。
電動車両では、走行に必要なパワーの確保と、走行可能距離の拡大とを両立する観点から、直流電源20として、ある程度大容量のキャパシタが必要となる。このため、プリチャージ専用の抵抗素子を設ける構成では、大型化およびコスト増大が懸念される。
図3は、直流電源10および20の特性の一例を示す概念図である。図3には、横軸にエネルギ、縦軸に電力をプロットした、いわゆるラゴンプロットが示される。一般的に、直流電源の出力パワーおよび蓄積エネルギはトレードオフの関係にあるため、高容量型の電源では高出力を得ることが難しく、高出力型の電源では蓄積エネルギを高めることが難しい。
上述のように、代表的にはキャパシタで構成される直流電源20は、出力パワーが高い、いわゆる高出力型の電源である。一方、二次電池で構成される直流電源10は、いわゆる高容量型の電源である。このようにすると、高容量型の直流電源10に蓄積されたエネルギを平準的に長期間使用する一方で、高出力型の直流電源20をバッファとして使用して、高容量型の電源による不足分を出力することができる。
図3に示されるように、直流電源10の動作領域110は、直流電源20の動作領域120と比較して、出力可能な電力範囲が狭い。一方で、動作領域120は、動作領域110と比較して、蓄積可能なエネルギ範囲が狭い。
負荷30の動作点101では、高パワーが短時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点101は、ユーザのアクセル操作による急加速時に対応する。これに対して、負荷30の動作点102では、比較的低パワーが長時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点102は、継続的な高速定常走行に対応する。
動作点101に対しては、主に、高出力型の直流電源20からの出力によって対応することができる。一方で、動作点102に対しては、主に、高容量型の直流電源10からの出力によって対応することができる。これにより、電動車両では、高容量型のバッテリに蓄積されたエネルギを長時間に亘って使用することによって、電気エネルギによる走行距離を延ばすことができるとともに、ユーザのアクセル操作に対応した加速性能を速やかに確保することができる。
図1に示した電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4の制御によって、並列接続された直流電源10,20が負荷30との間で電力の授受を行なうパラレル接続モードと、直流電源10,20が直列接続されて負荷30との間で電力の授受を実行するシリーズ接続モードとが切換えられることを特徴とする。
パラレル接続モードでは、電源配線PLの出力電圧Voを制御するように、負荷30に対して直流電源10および20が並列に直流電圧変換(DC/DC変換)を実行する。シリーズ接続モードでは、直流電源10,20が直列接続された状態で、電源配線PLの出力電圧Voを制御するための直流電圧変換が実行される。
以下では、電力変換器50の各動作モードでの基本的な回路動作について説明する。まず、電力変換器50のパラレル接続モードでの動作について説明する。
(パラレル接続モードでの回路動作および制御)
図4および図5に示されるように、スイッチング素子S4またはS2をオンすることによって、直流電源10および20を電源配線PLに対して並列に接続することができる。ここで、パラレル接続モードでは、直流電源10の電圧V[1]と直流電源20の電圧V[2]との高低に応じて等価回路が異なってくる。
図4(a)に示されるように、V[2]>V[1]のときは、スイッチング素子S4をオンすることにより、スイッチング素子S2,S3を介して、直流電源10および20が並列に接続される。このときの等価回路が図4(b)に示される。
図4(b)を参照して、直流電源10および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源20および電源配線PLの間では、スイッチング素子S2,S3を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
一方、図5(a)に示されるように、V[1]>V[2]のときには、スイッチング素子S2をオンすることにより、スイッチング素子S3,S4を介して、直流電源10および20が並列に接続される。このときの等価回路が図5(b)に示される。
図5(b)を参照して、直流電源20および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
次に、図6および図7を用いて、電力変換器50のパラレル接続モードにおける昇圧動作について詳細に説明する。
図6には、パラレル接続モードにおける直流電源10に対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
図6(a)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオンし、スイッチング素子S1,S2のペアをオフすることによって、リアクトルL1にエネルギを蓄積するための電流経路150が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図6(b)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S2のペアをオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10のエネルギとともに出力するための電流経路151が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S2の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S2のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S3,S4の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図6(a)の電流経路150および図6(b)の電流経路151が交互に形成される。
この結果、スイッチング素子S1,S2のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S3,S4のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10に対して構成される。図6に示されるDC/DC変換動作では、直流電源20への電流流通経路がないため、直流電源10および20は互いに非干渉である。すなわち、直流電源10および20に対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
このようなDC/DC変換において、直流電源10の電圧V[1]と、電源配線PLの出力電圧Voとの間には、下記(1)式に示す関係が成立する。(1)式では、スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる期間のデューティ比をDaとする。
Vo=1/(1−Da)・V[1] …(1)
図7には、パラレル接続モードにおける直流電源20に対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
図7(a)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオンし、スイッチング素子S1,S4のペアをオフすることによって、リアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路160が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図7(b)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S4のペアをオンすることによって、リアクトルL2の蓄積エネルギを直流電源20のエネルギとともに出力するための電流経路161が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S4の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S2,S3の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図7(a)の電流経路160および図7(b)の電流経路161が交互に形成される。
この結果、スイッチング素子S1,S4のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S2,S3のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源20に対して構成される。図7に示されるDC/DC変換動作では、直流電源10を含む電流経路がないため、直流電源10および20は互いに非干渉である。すなわち、直流電源10および20に対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
このようなDC/DC変換において、直流電源20の電圧V[2]と、電源配線PLの出力電圧Voとの間には、下記(2)式に示す関係が成立する。(2)式では、スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる期間のデューティ比をDbとする。
Vo=1/(1−Db)・V[2] …(2)
(シリーズ接続モードでの回路動作)
次に、図8および図9を用いて、電力変換器50のシリーズ接続モードでの回路動作について説明する。
図8(a)に示されるように、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10および20を電源配線PLに対して直列に接続することができる。このときの等価回路が図8(b)に示される。
図8(b)を参照して、シリーズ接続モードでは、直列接続された直流電源10および20と電源配線PLとの間では、スイッチング素子S2,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、スイッチング素子S2,S4のオフ期間にオンされることによって、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。また、オン固定されたスイッチング素子S3により、リアクトルL1をスイッチング素子S4と接続する配線15が等価的に形成される。
次に、図9を用いて、シリーズ接続モードにおけるDC/DC変換(昇圧動作)を説明する。
図9(a)を参照して、直流電源10,20を直列接続するためにスイッチング素子S3がオン固定される一方で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンし、スイッチング素子S1がオフされる。これにより、リアクトルL1,L2にエネルギを蓄積するための電流経路170,171が形成される。この結果、直列接続された直流電源10,20に対して、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図9(b)を参照して、スイッチング素子S3をオン固定したままで、図9(a)とは反対に、スイッチング素子S2,S4のペアがオフし、スイッチング素子S1がオンされる。これにより、電流経路172が形成される。電流経路172により、直列接続された直流電源10,20からのエネルギと、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギとの和が電源配線PLへ出力される。この結果、直列接続された直流電源10,20に対して、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S3がオン固定された下で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる一方でスイッチング素子S1がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1がオンされる一方でスイッチング素子S2,S4がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図9(a)の電流経路170,171および図9(b)の電流経路172が交互に形成される。
シリーズ接続モードのDC/DC変換では、直流電源10の電圧V[1]、直流電源20の電圧V[2]、および、電源配線PLの出力電圧Voの間には、下記(3)式に示す関係が成立する。(3)式では、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる第1の期間のデューティ比をDcとする。
Vo=1/(1−Dc)・(V[1]+V[2]) …(3)
ただし、V[1]およびV[2]が異なるときや、リアクトルL1,L2のインダクタンスが異なるときには、図9(a)の動作終了時におけるリアクトルL1,L2の電流値がそれぞれ異なる。したがって、図9(b)の動作への移行直後には、リアクトルL1の電流の方が大きいときには電流経路173を介して差分の電流が流れる。一方、リアクトルL2の電流の方が大きいときには電流経路174を介して、差分の電流が流れる。
次に、電力変換器50の各動作モードでの制御動作について説明する。まず、図10〜図15を用いて、パラレル接続モードにおける制御動作を説明する。
(パラレル接続モードにおける制御動作)
図10には、パラレル接続モードにおける負荷側から見た等価回路が示される。
図10を参照して、パラレル接続モードでは、直流電源10と負荷30との間で直流電力変換を実行する電源PS1と、直流電源20と負荷30との間で直流電力変換を実行する電源PS2とは、負荷30に対して並列に電力を授受する。電源PS1は、図6に示した直流電圧変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。同様に、電源PS1は、図7に示した直流電圧変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。
すなわち、電源PS1は、直流電源10の電圧V[1]および出力電圧Voの間で、式(1)に示した電圧変換比による直流電圧変換機能を有する。同様に、電源PS2は、直流電源10の電圧V[2]および出力電圧Voの間で、式(2)に示した電圧変換比による直流電圧変換機能を有する。
パラレル接続モードでは、両方の電源で共通の制御(出力電圧Voの電圧制御)を同時に実行すると、負荷側で、電源PS1およびPS2が並列接続される形になるため、回路が破綻する可能性がある。したがって、電源PS1および電源PS2の一方の電源が、出力電圧Voを制御する電圧源として動作する。そして、電源PS1および電源PS2の他方の電源は、当該電源の電流を電流指令値に制御する電流源として動作する。各電源PS1,PS2での電圧変換比は、電圧源または電流源として動作するように制御される。
電源PS1を電流源とし電源PS2を電圧源として制御した場合には、直流電源10の電力P[1]、直流電源20の電力P[2]、負荷30の電力Poおよび、電流源における電流指令値Ii*の間には、下記(4)式の関係が成立する。
P[2]=Po−P[1]=Po−V[1]・Ii* …(4)
直流電源10の電圧V[1]の検出値に応じて、P*=V[1]・Ii*が一定になるように電流指令値Ii*を設定すれば、電流源を構成する直流電源10の電力P[1]を電力指令値Pi*に制御できる。
これに対して、電源PS2を電流源とし電源PS1を電圧源として制御した場合には、下記(5)式の関係が成立する。
P[1]=Po−P[2]=Po−V[2]・Ii* …(5)
同様に、電流源を構成する直流電源20の電力P[2]についても、P*=V[2]・Ii*が一定になるように電流指令値Ii*を設定すれば、電力指令値Pi*に制御できる。
図11には直流電源10に対応する電源PS1の具体的な制御動作例を説明するための波形図が示される。
図11を参照して、電源PS1でのデューティ比Da(式(1)参照)は、電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図13)または電流源として動作するための電流フィードバック制御(図14)によって算出される。なお、図11中では、デューティ比Daを示す電圧信号を、同一の符号Daで示している。
電源PS1の制御パルス信号SDaは、デューティ比Daと、周期的なキャリア信号25との比較に基づくパルス幅変調(PWM)制御によって生成される。一般的に、キャリア信号25には、三角波が用いられる。キャリア信号25の周期は、各スイッチング素子のスイッチング周波数に相当し、キャリア信号25の振幅は、Da=1.0に対応する電圧に設定される。
制御パルス信号SDaは、デューティ比Daを示す電圧が、キャリア信号25の電圧よりも高いときに論理ハイレベル(以下、Hレベル)に設定される一方で、キャリア信号25の電圧よりも低いときに論理ローレベル(以下、Lレベル)に設定される。制御パルス信号/SDaは、制御パルス信号SDaの反転信号である。デューティ比Daが高くなると、制御パルス信号SDaのHレベル期間が長くなる。反対に、デューティ比Daが低くなると、制御パルス信号SDaのLレベル期間が長くなる。
したがって、制御パルス信号SDaは、図6に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。すなわち、制御パルス信号SDaのHレベル期間で下アーム素子がオンされる一方で、Lレベル期間で下アーム素子がオフされる。一方、制御パルス信号/SDaは、図6に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
図12には直流電源20に対応する電源PS2の具体的な制御動作例を説明するための波形図が示される。
図12を参照して、電源PS2においても、電源PS1と同様のパルス幅変調制御によって、デューティ比Db(式(2)参照)に基づいて、制御パルス信号SDbおよび、その反転信号/SDbが生成される。したがって、制御パルス信号SDbは、図7に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。制御パルス信号/SDbは、図7に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
なお、デューティ比Dbは、電源PS1が電圧源として動作するときには、電源PS2が電流源として動作するための電流フィードバック制御(図14)によって算出される。反対に、デューティ比Dbは、電源PS1が電流源として動作するときには、電源PS2が電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図13)によって算出される。
図13には、電圧源として動作する電源の制御ブロック201の構成例が示される。
図13を参照して、制御ブロック201は、電圧指令値Vo*と、出力電圧Voの偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DvFFとの和に従って、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvを生成する。伝達関数Hvは、電圧源として動作する電源PS1またはPS2の伝達関数に相当する。
図14には、電流源として動作する電源の制御ブロック202の構成例が示される。
図14を参照して、制御ブロック202は、電流指令値Ii*と、電流制御される直流電源10または20の電流Iiとの偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DiFFとの和に従って、電流制御のためのデューティ比指令値Diを生成する。伝達関数Hiは、電流源として動作する電源PS2またはPS1の伝達関数に相当する。
図15には、パラレル接続モードにおける各制御データの設定が示される。図15の左欄には、電源PS1(直流電源10)を電流源とし電源PS2(直流電源20)を電圧源として制御した場合の各制御データの設定が示される。
図15の左欄を参照して、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、電源PS2(直流電源20)のデューティ比Dbに用いられるとともに、電流制御のためのデューティ比指令値Diが、電源PS1(直流電源10)のデューティ比Daに用いられる。電流制御によって制御される電流Iiは、直流電源10の電流I[1]となる。なお、電圧制御によって制御される電圧は、電源PS1,PS2のいずれを電圧源としても出力電圧Voである。
図15中の伝達関数Hvは、図7に示した直流電源20に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。また、図14中の伝達関数Hiは、図6に示した直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。
電圧制御におけるフィードフォワード制御量DvFFは、下記(6)式に示すように、出力電圧Voと直流電源20の電圧V[2]との電圧差に応じて設定される。また、電流制御におけるフィードフォワード制御量DiFFは、下記(7)式に示すように、出力電圧Voと直流電源10の電圧V[1]との電圧差に応じて設定される。
DvFF=(Vo−V[2])/Vo …(6)
DiFF=(Vo−V[1])/Vo …(7)
デューティ比Da(Da=Di)に応じて、図11に示した制御パルス信号SDaおよび/SDaが生成される。同様に、デューティ比Db(Db=Dv)に応じて、図12に示した制御パルス信号SDbおよび/SDbが生成される。
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、電源PS1の電流制御のための制御パルス信号と、電源PS2の電圧制御のための制御信号パルスの論理和をとる態様で設定される。
スイッチング素子S1は、図6および図7の昇圧チョッパ回路の各々で上アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S1のオンオフを制御する制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。すなわち、制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの少なくとも一方がHレベルの期間でHレベルに設定される。そして、制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの両方がLレベルの期間でLレベルに設定される。
この結果、スイッチング素子S1は、図6の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の上アーム素子および、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
スイッチング素子S2は、図6の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成し、図7の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S2のオンオフを制御する制御信号SG2は、制御パルス信号/SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S2は、図6の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の上アーム素子および、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
同様にして、スイッチング素子S3の制御信号SG3は、制御パルス信号SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S3は、図6の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の下アーム素子および、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
また、スイッチング素子S4の制御信号SG4は、制御パルス信号SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S4は、図6の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の下アーム素子および、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
図15の右欄には、電源PS1(直流電源10)を電圧源とし電源PS2(直流電源20)を電流源として制御した場合の各制御データの設定が示される。
図15の右欄を参照して、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、電源PS1(直流電源10)のデューティ比Daに用いられるとともに、電流制御のためのデューティ比指令値Diが、電源PS2(直流電源20)のデューティ比Dbに用いられる。電流制御によって制御される電流Iiは、直流電源20の電流I[2]となる。電圧制御によって制御される電圧は、出力電圧Voである。
図14中の伝達関数Hvは、図6に示した直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。また、図14中の伝達関数Hiは、図7に示した直流電源20に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。
電圧制御におけるフィードフォワード制御量DvFFは、下記(8)式に示すように、出力電圧Voと直流電源20の電圧V[1]との電圧差に応じて設定される。また、電流制御におけるフィードフォワード制御量DiFFは、下記(9)式に示すように、出力電圧Voと直流電源10の電圧V[2]との電圧差に応じて設定される。
DvFF=(Vo−V[1])/Vo …(8)
DiFF=(Vo−V[2])/Vo …(9)
デューティ比Da(Da=Dv)に応じて、図11に示した制御パルス信号SDaおよび/SDaが生成される。同様に、デューティ比Db(Db=Di)に応じて、図12に示した制御パルス信号SDbおよび/SDbが生成される。
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、電源PS1の電圧制御のための制御パルス信号と、電源PS2の電流制御のための制御信号パルスの論理和をとる態様で設定される。したがって、スイッチング素子S1〜S4の制御信号SG1〜SG4は、図15の左欄と同様に生成される。
パラレル接続モードでは、制御信号SG2およびSG4が相補のレベルに設定されているので、スイッチング素子S2およびS4は相補的にオンオフされる。これにより、図4に示したV[2]>V[1]のときの動作と、図5に示したV[1]>V[2]の動作とが、自然に切替えられる。さらに、各動作において、スイッチング素子S1,S3が相補にオンオフされることにより、電源PS1,PS2のそれぞれにおいて、デューティ比Da,Dbに従った直流電圧変換が実行できる。
パラレル接続モードでは、出力電圧Voの制御ととともに、一方の直流電源の電流制御によって、直流電源10,20の出力電力を制御することが可能である。したがって、パラレル接続モードでは、直流電源10,20の電力管理性が向上する。また、直流電源10,20を並列に用いるので、負荷30からの充放電要求への対応性にも優れる。
(シリーズ接続モードにおける制御動作)
次に、図16〜図19を用いて、シリーズ接続モードにおける制御動作を説明する。
図16には、シリーズ接続モードにおける負荷側から見た等価回路が示される。
図16を参照して、シリーズ接続モードでは、負荷30に対して、電源PS1および電源PS2が直列に接続される。このため、電源PS1およびPS2を流れる電流は共通となる。したがって、出力電圧Voを制御するためには、電源PS1およびPS2は、共通に電圧制御されることが必要である。
直列接続された電源PS1およびPS2は、図9に示した直流電圧変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。すなわち、電源PS1,PS2は、直流電源10,20の電圧V[1]およびV[2]の和と、出力電圧Voとの間で、式(3)に示した電圧変換比による直流電圧変換機能を有する。
シリーズ接続モードでは、直流電源10の電力P[1]および直流電源20の電力P[2]を直接制御することはできない。直流電源10の電力P[1]および電圧V[1]と、直流電源20の電力P[2]および電圧V[2]との間には、下記(10)式の関係が成立する。なお、電力P[1]および電力P[2]の和が、負荷30の電力Poとなる点(Po=P[1]+P[2])は、パラレル接続モードと同様である。
P[1]:P[2]=V[1]:V[2] …(10)
図17を参照して、電源PS1,PS2に共通のデューティ比Dc(式(3)参照)は、電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図18)によって算出される。なお、図17中では、デューティ比Dcを示す電圧信号を、同一の符号Dcで示している。
制御パルス信号SDcは、図11および図12と同様のパルス幅変調制御によって、デューティ比Dc(式(3)参照)に基づいて生成される。制御パルス信号/SDcは、制御パルス信号SDcの反転信号である。制御パルス信号SDcは、図9に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。一方、制御パルス信号/SDcは、図9に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
図18には、シリーズ接続モードにおける制御ブロック203の構成例が示される。
図18を参照して、制御ブロック203は、出力電圧Voの電圧指令値Vo*と、出力電圧Voの偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DvFFとの和に従って、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvを生成する。伝達関数Hvは、直列接続された電源PS1,PS2の伝達関数に相当する。
図19には、シリーズ接続モードにおける各制御データの設定が示される。
図19を参照して、図18に示した電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、デューティ比Dcに用いられる。電圧制御によって制御される電圧は、出力電圧Voである。図18中の伝達関数Hvは、図11に示した昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。また、フィードフォワード制御量DvFFは、下記(11)に示すように、直列接続された電源電圧V[1]+V[2]と、出力電圧Voとの電圧差に応じて設定される。
DvFF=(Vo−(V[2]+V[1]))/Vo …(11)
デューティ比Dc(Dc=Dv)に応じて、図17に示した制御パルス信号SDcおよび/SDcが生成される。
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDcおよび/SDcに従って、図9に示した昇圧チョッパ回路を制御するように設定される。
シリーズ接続モードでは、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10および20が直列に接続される。したがって、制御信号SG3は、Hレベルに固定される。
スイッチング素子S1は、図9の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成する。したがって、制御パルス信号/SDcが制御信号SG1として用いられる。また、スイッチング素子S2,S4は、図9の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、制御パルス信号SDcが制御信号SG2,SG4として用いられる。
シリーズ接続モードでは、V[1]+V[2]と出力電圧Voとの間での直流電圧変換が実行されるため、昇圧チョッパ回路のデューティ比が、パラレル接続モードよりも低くなる。したがって、直流電源10,20の蓄積エネルギ(SOC:State of Charge)が低下して、電圧V[1],V[2]が低下しても、直流電圧変換を実行できる。したがって、直流電源10,20の蓄積エネルギを効率的に使い切る観点から有利である。また、シリーズ接続モードおよびパラレル接続モードの間では、同一電力を入出力する際の電流は、シリーズ接続モードの方が小さくなる。したがって、シリーズ接続モードは、効率面から有利である。
なお、上述のように、パラレル接続モードでは、いずれか一方の直流電源について電流制御が実行される。また、シリーズ接続モードでは、各直流電源を流れる電流は同一である。したがって、電流センサについては、パラレル接続モードで電流制御の対象ではない直流電源への配置を省略することによって、低コスト化を図ることが好ましい。一般的には、高容量型の直流電源を電流制御の対象として、蓄積エネルギを平準的に使用することが好ましい。したがって、本実施の形態では、直流電源10に対してのみ電流センサを配置する構成とすることが好ましい。すなわち、直流電源20の電流I[2]を検出するための電流センサについては配置されないことになる。
(プリチャージ制御)
図20には、プリチャージ対象の直流電源20のSOCおよび出力電圧の間の関係が示される。
図20を参照して、代表的にはキャパシタで構成される直流電源20の出力電圧(V[2])は、SOC(すなわち、蓄積エネルギ)に応じて大きく変化する。特に、SOC=0のときには、V[2]=0となる。電源システム5の停止中における自然放電や、安全上あるいは劣化防止の観点からの意図的なディスチャージによって、直流電源20のSOCがほぼ零となることが想定される。
したがって、電源システム5の起動時には、直流電源10の蓄積エネルギによって直流電源20を充電するプリチャージが実行される。そして、プリチャージの完了後に、上述したパラレル接続モードまたはシリーズ接続モードによって、負荷30が駆動される。
プリチャージの際には、直流電源10および20の間の経路に過大電流が流れることを防止する必要がある。本実施の形態では、プリチャージ専用の回路素子を設けることなく、電力変換器50におけるスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御によってプリチャージ時の電流を抑制する、プリチャージ制御を実行する。特に、直流電源20の電流I[2]のフィードバックに依ることなく、すなわち、直流電源20の電流センサを設けることなく、プリチャージ電流を確実に抑制することが可能な制御を実現する。
図21には、本実施の形態による電源システムにおけるプリチャージ制御での各スイッチング素子の制御が示される。
図21を参照して、プリチャージ制御では、スイッチング素子S3をオンに固定し、スイッチング素子S2をオフに固定するために、制御信号SG3がHレベルに固定されるとともに、制御信号SG2がLレベルに設定される。
さらに、スイッチング素子S1およびS4は、出力電圧Voと電圧V[1],V[2]との間の電圧変換比に応じて、スイッチング制御される。プリチャージ制御中には出力電圧Voの電圧指令値Vo*と電圧V[1],V[2]との電圧比に従って、デューティ比Da,Dbを設定することができる。たとえば、(1)式および(2)式を変形した下記の式(12),(13)に従って、デューティ比Da,Dbが算出される。
Da=(Vo*−V[1])/Vo* …(12)
Db=(Vo*−V[2])/Vo* …(13)
ここで、プリチャージ制御時には、電圧指令値Vo*は、V[1]+Vp*に設定される。Vp*は、プリチャージ完了レベルのSOCでの直流電源20の電圧V[2]に相当する。たとえば、Vp*=V[1]である。
制御パルス信号SDaは、デューティ比Daに従って、図11に示したPWM制御によって生成される。同様に、制御パルス信号SDbは、デューティ比Dbに従って、図12に示したPWM制御によって生成される。
スイッチング素子S1の制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの論理和に従って設定される。したがって、スイッチング素子S1は、直流電源10および電源配線PLの間で直流電圧変換を実行する昇圧チョッパ回路(図6)および、直流電源20および電源配線PLの間で直流電圧変換を実行する昇圧チョッパ回路(図7)の両方で上アーム素子を構成するように動作する。
スイッチング素子S4は、直流電源10および電源配線PLの間で直流電圧変換を実行する昇圧チョッパ回路(図6)において下アーム素子を構成する。一方、プリチャージ制御では、直流電源20に負荷30からの電力を回生するときには、パラレル接続モードとは異なり、直流電源10および20を直列接続した経路に電流I[1](=I[2])を流すことによって、プリチャージ電流の抑制を図る。したがって、スイッチング素子S4は、直流電源20に対応する昇圧チョッパ回路(図7)の上アーム素子としてはオフ固定されるとともに、直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路(図6)の下アーム素子として、デューティ比Daに従ってオンオフ制御される。すなわち、制御信号SG4は、制御パルス信号SDaに従って設定される。
図1および図21から理解されるように、プリチャージ制御時には、スイッチング素子S3がオンに固定される一方で、スイッチング素子S2がオフに固定される。そしてスイッチング素子S1およびS4がオンオフ制御されることにより電流経路が切換わる。
図22には、プリチャージ制御時における電流波形の例が示される。
図22を参照して、時刻t0〜t2の期間では、スイッチング素子S4がオンされる一方でスイッチング素子S1はオフされる。したがって、図23(a)に示すように、直流電源10の電流I[1]が、図6に示した電流経路150を形成する。図22に示されるように、電流I[1]は、V[1]/L1の傾きで上昇する。時刻t1まではI[1]<0であるため、直流電源10を充電するように電流I[1]が流れる。時刻t0〜t1では、直流電源10からのエネルギがリアクトルL1に蓄積される。一方で、時刻t1〜t2では、電流I[1]が上昇を続けることにより、直流電源10を放電するように電流I[1]が流れる(I[1]>0)。
図23(a)に示されるように、直流電源20の電流I[2]は、ダイオードD2,D3を介して、図7に示した電流経路160を形成する。図22に示されるように、電流I[2]は、V[2]/L2の傾きで上昇を続けるが、I[2]<0のため直流電源20を充電するように流れる。
時刻t2において、スイッチング制御が切換えられて、スイッチング素子S4がターンオフする一方でスイッチング素子S1がターンオンする。これにより、図23(b)に示されるように、電流I[1]は、図6の電流経路151を形成する。すなわち、直流電源10およびリアクトルL1から電流I[1]が負荷に供給されるため、図22に示されるように、電流I[1]は(Vo−V[1])/L1の傾きで低下する。時刻t2〜t3では、直流電源10およびリアクトルL1から負荷30へ電流が供給されることになる。一方で、直流電源20の電流I[2]は時刻t2以前と同様に上昇を続けるが、I[2]<0のため直流電源20の充電が継続される。
再び図22を参照して、時刻t3において、下降を続けるI[1]が零に達する。これにより、ダイオードD1がオフされる。これにより、図24(a)に示されるように、負荷30への電流供給が停止されて、電流I[1]は、時刻t0と同様の電流経路を形成する。時刻t3以降では、低下を続ける電流I[1](I[1]<0)によって、直流電源10が充電される。時刻t3以降においても、電流I[2]は、図24(a)に示された電流経路により、さらに上昇を続ける。
再び図22を参照して、時刻t4において、電流I[1]およびI[2]が等しくなる。これにより、図24(b)に示されるように、共通の電流(I[1]=I[2])が、直流電源10および20を流れる電流経路が形成される。この状態ではI[1](I[2])<0であるので、負荷30から直流電源10および20を充電する向きに電流が流れる。すなわち、時刻t4〜t5では、直流電源10,20およびリアクトルL1,L2が直列接続された経路に、負荷30からの電流が供給される。時刻t4〜t5の期間では、電流I[2]は、(Vo−V[1]−V[2])/(L1+L2)の傾きで低下する。
再び図22を参照して、時刻t5において、スイッチング素子S1,S4のオンオフが入れ換えられることによって、時刻t0と同様の状態が再現される。時刻t5以降では、時刻t4〜t5の期間でリアクトルL2に蓄積されたエネルギによって、直流電源20が充電される。
このように、制御周期(スイッチング周期)Tc毎に、図21に従ってスイッチング素子S1〜S4を制御することによって、図22に示された電流波形に従って、直流電源10からの電力によって直流電源20が充電されることが理解される。すなわち、制御周期Tcは、スイッチング素子S1〜S4のスイッチング周期に相当する。
プリチャージ時には、直流電源10が負荷30を含む電流経路によって充放電される期間(図23(b)および図24(b)参照)を有するように、電流I[1]は、周期的に方向が変化する。すなわち、直流電源10は周期的に充放電を繰返す。一方で、直流電源20は、直流電源10から電流を直接供給されるのではなく、図22の時刻t4〜t5の期間に、負荷30を介して供給された電流(図24(b))によってプリチャージされる。そして、当該期間でリアクトルL2に蓄えた電流によって、スイッチング素子S1がオフされている期間においても、直流電源20が継続的にプリチャージされている。すなわち、電流I[2]は、常に直流電源20を充電する方向(I[2]<0)に流れている。
電流I[2]の絶対値であるプリチャージ電流は、時刻t4〜t5の期間で増加する一方で、その他の期間では減少する。したがって、プリチャージ電流の最大値は、電流I[2]が下限値となる時刻t5における|I[2]|に相当する。以下では、電流I[2]の下限値をI[2]minとも表記する。I[2]min<0であるから、プリチャージ電流最大値Ipmaxは、Ipmax=|I[2]min|で示される。
I[2]minは、電流I[1]のリプル幅で規定されるので大きな突入電流とならないことが理解できる。Ipmaxは、回路定数L1,L2および制御周期Tcを用いて、下記(14)式によって示される。
Ipmax=V[1]/Vo・(Vo−V[1])/L1・(Tc/2) …(14)
図25には、プリチャージ終了時における電流波形が示される。図22に示したプリチャージ動作を周期的に実行し、直流電源20の電圧が上昇して、V[2]=Vp*となると、図25に示した電流波形となる。
図25を参照して、時刻t6〜t8での電流挙動は、図22での時刻t0〜t2と同様である。すなわち、スイッチング素子S1がオフされる一方でスイッチング素子S4がオンされることにより、電流I[1]およびI[2]は一定の傾きで上昇していく。プリチャージが進むにつれて電圧V[2]が上昇するため、電流I[2]の傾きは、図22と比較して大きくなる。
時刻t8では、図22の時刻t2と同様に、スイッチング素子S4がオフされる一方でスイッチング素子S1がターンオンされる。これにより、図26(a)に示されるように、正方向の電流I[1]が、負荷30に対して供給される電流経路が形成される。この結果、電流I[1]は低下を始める。一方、電流I[2]は、単調に上昇を続ける。
再び図25を参照して、時刻t9において、上昇を続けるI[2]が零に達する。時刻t8〜t9では、図26(b)に示すように、図26(a)と同様に電流I[1]の経路が形成される一方で、ダイオードD2が導通していることから、直流電源20を放電する方向の電流I[2]の経路が形成される。
再び図25を参照して、時刻t9〜t10では、時刻t9までと同じ傾きで、電流I[1]が低下する一方で、電流I[2]が上昇する。そして、時刻t10において、I[1]=I[2]となる。
時刻t10からは、図27(a)に示されるように、リアクトルL2、直流電源20、リアクトルL1および直流電源10が直列接続された経路によって、負荷30へ電流が供給される(I[1]=I[2]>0)。これにより、図25に示されるように、電流I[1],I[2]は同じ傾きで低下する。
時刻t11において、電流I[1],I[2]は零に達し、さらに低下を続ける。時刻t11以降では、図27(b)に示されるように、リアクトルL2、直流電源20、リアクトルL1および直流電源10が直列接続された経路に、負荷30から電流が供給される(I[1]=I[2]<0)。
図25における電流I[2]の平均値は、図22における電流I[2]の平均値よりも零に近い。すなわち、本実施の形態によるプリチャージ制御では、プリチャージの進行に伴って電圧V[2]が上昇するのに応じて、プリチャージ電流が自然に減少することが理解される。そして、V[1]=V[2]となるまで、安定的にプリチャージ制御を継続することができる。
この際に、プリチャージ電流最大値Ipmaxは、上記(14)式に示したように、電圧V[1],Vo、回路定数L1およびスイッチング周期Tcによって決まるため、電流センサを設けて電流I[2]を直接測定しなくても、プリチャージ電流を一定レベル以下に確実に抑制することができる。
このように、本実施の形態による電源システムでは、上述したスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御によるプリチャージ制御によって、プリチャージ専用の回路素子およびプリチャージ電流(I[2])を測定するセンサを配置することなく、過電流の発生を防止して直流電源20をプリチャージすることができる。
[実施の形態2]
実施の形態2では、図1に示した電源システム5におけるシステム終了時のディスチャージ制御について説明する。
上述のように、安全上あるいは直流電源の劣化防止の観点から、システム停止時には、必要に応じて、直流電源20の電荷を完全に放電することが好ましい。特に、大容量かつ高出力型の直流電源としてキャパシタを用いるときには、蓄積エネルギが大きくなるため、ディスチャージの必要性が高くなる。
ディスチャージの際にも、プリチャージと同様に、過大電流が発生することを防止する必要がある。また、センサや専用回路を追加することなく、ディスチャージ電流を抑制することが好ましい。さらに、ディスチャージした電力を他の直流電源によって回収することがエネルギ効率上好ましい。
したがって、本実施の形態では、ディスチャージ専用の回路素子を設けることなく、電力変換器50におけるスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御によって、直流電源20の放電電流を抑制するためのディスチャージ制御を実行する。特に、直流電源20の電流I[2]のフィードバックに依ることなく、すなわち、直流電源20の電流センサを設けることなく、ディスチャージ電流を確実に抑制することが可能な制御を実現する。
図28は、本発明の実施の形態による電源システムのディスチャージ制御における各スイッチング素子のオンオフ制御を説明するための図表である。
図28を参照して、ディスチャージ制御では、スイッチング素子S3をオンに固定し、スイッチング素子S4をオフに固定するために、制御信号SG3がHレベルに固定されるとともに、制御信号SG4がLレベルに設定される。
スイッチング素子S4が常にオフされるため、直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路(図6)では、下アーム素子が常にオフされる状態となる。このため、直流電源10の電圧V[1]を昇圧して電源配線PLへ供給する動作は実行されない。
スイッチング素子S1およびS2は、出力電圧Voと電圧V[1],V[2]との間の電圧変換比に応じて、スイッチング制御される。ディスチャージ制御中には、出力電圧Voの電圧指令値Vo*と電圧V[1],V[2]との電圧比に基づいて、上述の式(12),(13)に従って、デューティ比Da,Dbを設定する。ディスチャージ制御時には、直流電源20が完全に放電された状態での出力電圧Voに対応させて、電圧指令値Vo*=V[1]に設定される。
スイッチング素子S1の制御信号SG1は、は、プリチャージ制御時(図21)と同様に、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの論理和に従って設定される。したがって、スイッチング素子S1は、直流電源10および電源配線PLの間で直流電圧変換を実行する昇圧チョッパ回路(図6)および、直流電源20および電源配線PLの間で直流電圧変換を実行する昇圧チョッパ回路(図7)の両方で上アーム素子を構成するように動作する。
スイッチング素子S2は、直流電源10および電源配線PLの間で直流電圧変換を実行する昇圧チョッパ回路(図6)において下アーム素子を構成する。一方、ディスチャージ制御では、直流電源10に負荷30からの電力を回生するときには、パラレル接続モードとは異なり、直流電源10および20を直列接続した経路に電流I[1](=I[2])を流すことによって、ディスチャージ電流の抑制を図る。したがって、スイッチング素子S2は、直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路(図6)の上アーム素子としてはオフ固定されるとともに、直流電源20に対応する昇圧チョッパ回路(図7)の下アーム素子として、デューティ比Dbに従ってオンオフ制御される。すなわち、制御信号SG2は、制御パルス信号SDbに従って設定される。
図1および図28から理解されるように、ディスチャージ制御時には、スイッチング素子S3がオンに固定される一方で、スイッチング素子S4がオフに固定される。そしてスイッチング素子S1およびS2がオンオフ制御されることにより電流経路が切換わる。
図29には、ディスチャージ制御時における電流波形例が示される。
図29を参照して、時刻taにおいて、スイッチング素子S1〜S3がオンされる。これにより、図30(a)に示されるように、直流電源20からリアクトルL2にエネルギを供給するように、電流I[2]の経路が形成される。これにより、電流I[2]は、図29に示されるように、V[2]/L2の傾きで上昇を続ける。
一方で、図30(a)に示されるように、直流電源10およびリアクトルL1から負荷30へ電流を供給するように、電流I[1]の経路が形成される。これにより、図29に示されるように、電流I[1]は、(Vo−V[1])/L1の傾きで低下する。
電流I[1]は、時刻tbにおいて零に達し、さらに低下する。これにより、時刻tb〜tcにおいて、図30(b)に示すように、電流I[1]は、負荷30から回生された電力によって直流電源10を充電するように流れる。すなわち、時刻tbまでに負荷30へ供給された電力によって、負荷30からリアクトルL1および直流電源10へ電流が流れる。
一方で、図29に示されるように、電流I[2]は、時刻tb〜tcにおいても、時刻ta〜tbと同様に、一定の傾きで上昇を続ける。
時刻tcにおいて、スイッチング素子S1がターンオフされると、図30(c)に示されるように、負荷30からの電流経路(回生)が遮断される。これにより、電流I[1]は、上昇に転じる。図29に示されるように、時刻tc以降では、電流I[1]は、V[1]/L1の傾きで上昇する。電流I[2]は、時刻tb〜tcと同様に、上昇を続ける。
時刻tdにおいて、スイッチング素子S2がターンオフされると、図31(a)に示されるように、電流I[2]の経路は、直流電源20およびリアクトルL2からの電流を負荷30へ供給するように切換えられる。これにより、図29に示されるように、電流I[2]は、(Vo−V[2])/L2の傾きで減少を始めるが、I[2]>0のため、直流電源20の放電が継続される。
電流I[1]は、時刻td以降でも、時刻tc〜tdと同様の傾きで上昇を続けて、時刻teにおいてI[1]=0に達する。時刻te以降では、図31(b)に示すように、ダイオードD4が導通していることから、直流電源10を放電する方向に電流I[1]の経路が形成される。電流I[2]は、時刻te以前と同じ傾きで低下を続ける。I[2]>0のため、直流電源20の放電が継続される。
再び図29を参照して、時刻tfにおいて、電流I[1]およびI[2]が等しくなる。これにより、図31(c)に示されるように、共通の電流(I[1]=I[2])により、直流電源10および20が放電するように、負荷30へ電力が供給される。すなわち、時刻tf〜tgの期間では、直流電源10,20およびリアクトルL1,L2が直列接続された経路によって、負荷30へ電流が供給される。これにより、電流I[1],I[2]は、(Vo−V[1]−V[2])/(L1+L2)の傾きで低下する。
再び図29を参照して、時刻tgにおいて、スイッチング素子S2がターンオンされることによって、時刻taと同様の状態が再現される。すなわち、制御周期Tc毎に図28に従ってスイッチング素子S1〜S4を制御することによって、図29に示された電流波形に従う回路動作が繰り返される。
図29から理解されるように、電流I[1]は周期的に方向が変化するので、直流電源10は、周期的に充放電を繰返す。一方で、電流I[2]は常に正なので、直流電源20は継続的に放電される。そして、上述のように、スイッチング素子S4がオフ固定されるため、直流電源10から電源配線PLへの昇圧動作は実行されず。出力電圧Voは、電圧V[1]へ近付くように制御される。
図29に示された電流波形が周期的に繰り返されることにより、直流電源10は、直流電源20から放電されたエネルギを、負荷30を介して回生する。また、ディスチャージが進行して、直流電源20の電圧V[2]が低下するのに応じて、デューティ比Dbが1に近づく。これにより、スイッチング素子S2のオン期間が長くなるとともに、スイッチング素子S1は、デューティ比Daに従って制御されるようになる。この結果、Vo=V[1]かつ、V[2]=0になるまで、図28に従ったスイッチング制御が継続されることにより、直流電源20をディスチャージすることができる。
ディスチャージ制御では、各スイッチング周期Tsにおいて、電流I[1]およびI[2]が等しくなって、直流電源10,20およびリアクトルL1,L2が直列接続された経路によって直流電源20を放電する期間(時刻tf〜tg)が設けられる。これにより、放電電流(電流I[2])の増大が抑制されることが理解される。
ディスチャージ電流の最大値Idmaxは、電流I[2]の最大値に相当する。ディスチャージ制御においても、電流I[2]の最大値は、電流I[1]のリプル幅で規定されるので大きな突入電流とならないことが理解できる。Idmaxは、プリチャージ電流最大値と同様に、回路定数L1,L2および制御周期(すなわち、スイッチング周期)Tcによって決まることになる。したがって、電流センサを設けて電流I[2]を直接測定しなくても、ディスチャージ電流を一定レベル以下に確実に抑制することができる。
このように、本実施の形態による電源システムでは、上述したスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御によるディスチャージ制御によって、ディスチャージ専用の回路素子およびディスチャージ電流(I[2])を測定するセンサを配置することなく、過電流の発生を防止して直流電源20をディスチャージすることができる。さらに、直流電源20をディスチャージした電力を直流電源10によって回収できるので、エネルギ効率を高めることができる。
[実施の形態3]
実施の形態3では、実施の形態1で説明したプリチャージ制御および実施の形態2で説明したディスチャージ制御を組合せた、電源システムの起動および停止の一連の処理について説明する。
図32には、本実施の形態による電源システムの起動および停止の一連の制御処理を説明するためのフローチャートが示される。図32に示す制御処理は、制御装置40によるハードウェア処理および/またはソフトウェア処理によって実行することができる。
図32を参照して、制御装置40は、ステップS100により、電源システム5の起動指令が発せられたかどうかを判定する。たとえば、ユーザによる所定スイッチの操作によって電源システム5の起動が指令される。
制御装置40は、システム起動が指令されていないとき(S100のNO判定時)には、ステップS240に処理を進めて、電源システム5を放置する。これにより、現在の状態が保持される。
制御装置40は、システム起動時(S100のYES判定時)には、ステップS110によって、プリチャージの要否を判定する。プリチャージは、負荷30の駆動開始前に、直流電源20の電圧を一定レベルまで上昇させることを目的とする。たとえば、ステップS110では、直流電源20のSOC(SOC[2])が、所定値Spに達しているかどうかで判定される。所定値Spは、SOC[2]=Spとなったときの電圧V[2]において、負荷30の駆動を開始したときに過大な電流が流れないようなレベルに予め定めることができる。たとえば、V[1]=V[2]となるSOCに対応させて判定値Spが設定される。
制御装置40は、直流電源20のSOC[2]が判定値Spよりも低いときには(S110のYES判定時)、ステップS120により、実施の形態1で説明したプリチャージ制御を実行する。これにより、システム起動時において、直流電源20のSOC[2]がSpに達するまで、プリチャージ制御が継続的に実行される。
制御装置40は、プリチャージ制御によってSOC[2]が判定値Spに達すると(S110のNO判定時)、ステップS130に処理を進めて、プリチャージが完了したと判断して、負荷30の駆動を開始する。これにより、パラレル接続モードあるいはシリーズ接続モードによって電力変換器50が動作することにより、負荷30に対する電力の供給が開始される。
制御装置40は、負荷30の駆動中には、ステップS140により、直流電源20のSOC[2]を直流電源20の強制充電の要否についての判定値Scと比較する。判定値Scは、SOC[2]の制御中心値よりも低い所定値に設定される。
制御装置40は、SOC[2]が判定値Scよりも低いときには(S140のYES判定時)、直流電源20の強制的な充電が必要であると判断して、ステップS160へ処理を進める。ステップS160では、パラレル接続モードで電力循環制御を実行する。具体的には、直流電源10の電力指令値P*を、負荷30が要求する出力電力Poよりも大きく設定する。これにより、電力変換器50は、余剰分の電力(P*−Po)によって直流電源20が充電されるように動作することになる。
なお、プリチャージの時間を短縮して負荷30を早期に駆動するために、判定値Spについて、電圧V[2]が電圧V[1]よりも低い状態でプリチャージ制御が終了するように設定することも可能である。この場合にも、電力循環制御を通じて直流電源20のSOCを上昇させることが可能である。
制御装置40は、SOC[2]が判定値Scよりも高いときには(S140のNO判定時)には、ステップS150により、直流電源20の強制充電を実行することなく、通常の電力配分制御によって、負荷30へ電力を供給する。この場合には、直流電源10の出力電力が電力指令値Po*(たとえば、Po>0のときはP*<Po)に従って制御されるとともに、直流電源20から電力(Po−P*)が入出力されるように、電力変換器50は動作する。
制御装置40は、負荷30の駆動中には、ステップS200により、電源システム5の停止指示がユーザによって発せられているかどうかを判定する。ステップS200のNO判定時、すなわち負荷30の駆動が開始されてからシステム停止指示が発せられるまでの間、ステップS140〜S160の処理が繰返し実行される。これにより、パラレル接続モードでは、必要に応じて直流電源20を強制充電しながら、負荷30へ電力が供給される。
なお、負荷30の駆動中に、シリーズ接続モードが選択され得るが、上述のように、シリーズ接続モードでは電力制御は実行できない。したがって、SOC[2]<S2となっても、電力循環制御による強制充電は実行できない。
制御装置40は、システム停止が指示されると(S200のYES判定時)、ステップS210によりディスチャージ指令の有無を確認する。たとえば、ディスチャージ指令は、長期間の放置を意図するとき、あるいは、メンテナンス対応等のために、ユーザ操作により入力される。
制御装置40は、ユーザ操作によってディスチャージ指令が入力されているときには(S210のYES判定時)、システム停止に応答してステップS220に処理を進める。これにより、実施の形態2で説明したディスチャージ制御によって、直流電源20が放電される。
ディスチャージ制御中において、制御装置40は、ステップS230により、直流電源20のSOC[2]を判定値Sdと比較する。たとえば、判定値Sdは、完全な放電状態に対応させて設定される。
SOC[2]<Sdとなるまでの間(S230のNO判定時)、ディスチャージ制御が継続される。制御装置40は、SOC[2]<Sdになると(S230のYES判定時)、ディスチャージ制御を終了して、ステップS240に処理を進める。そして、電源システム5は、再び起動指令が発せられるまで放置される。
このように本実施の形態による電源システムを用いれば、実施の形態1,2で説明したプリチャージ制御およびディスチャージ制御によって、プリチャージおよびディスチャージ専用の回路素子、ならびに、プリチャージ電流およびディスチャージ電流(I[2])を測定するセンサを配置することなく、システム起動時におけるプリチャージおよびシステム停止時におけるディスチャージを安全に実行することができる。
なお、本実施の形態およびその変形例では、直流電源10および直流電源20について、二次電池および電気二重層キャパシタに代表される、異なる種類の直流電源を適用する例を説明したが、同一タイプの直流電源を主電源および副電源として用いる場合にも、本発明による電源システムを構成することが可能である点について確認的に記載する。すなわち、複数の直流電源のうちの1つをプリチャージおよび/またはディスチャージする際に、本発明の適用が可能である。
また、本実施の形態による電源システム5に含まれる電力変換器50は、直流電源10および20を直列に接続して両者を共通に充放電する第1の動作と、直流電源10および20を別個に充放電させる第2の動作とを切換えることが可能である。そして、本実施の形態によるプリチャージ制御およびディスチャージ制御の適用には、電力変換器50がスイッチング素子の制御によって、上記第1の動作および第2の動作を切換え可能であることが必要である。
たとえば、図33に比較例として示される電力変換器50♯に対しては、本実施の形態によるプリチャージ制御およびディスチャージ制御を適用することができない。
図33を参照して、比較例の電力変換器50♯は、昇圧チョッパ回路6,7を有する昇圧チョッパ回路6は、直流電源10と、負荷30と接続された電源配線PLとの間で双方向のDC/DC変換を実行する。昇圧チョッパ回路6は、スイッチング素子S1,S2およびリアクトルL1を含む。昇圧チョッパ回路7は、直流電源20と、負荷30と接続された電源配線PLとの間で双方向のDC/DC変換を実行する昇圧チョッパ回路7は、スイッチング素子S3,S4およびリアクトルL2を含む。電力変換器50♯は、本実施の形態による電力変換器50とは異なり、直流電源10および20のそれぞれに対して独立に昇圧チョッパ回路6,7が設けられた構成となっている。昇圧チョッパ回路6および7は、独立に制御することができる。
電力変換器50♯では、昇圧チョッパ回路6,7を並列に動作させることによって、電力変換器50のパラレル接続モードと同様に、直流電源10,20と負荷30との間で並列にDC/DC変換を実行することができる。しかしながら、電力変換器50♯では、直流電源10および20を直列に接続して両者を共通に充放電する電流経路を形成することができない。すなわち、電力変換器50における上記第1の動作を実現することができないため、本実施の形態によるプリチャージ制御およびディスチャージ制御を適用することができない。
逆に言えば、スイッチング素子の制御によって上記第1の動作および第2の動作を切換え可能であれば、図1に例示された電力変換器50とは異なる回路構成においても、本実施の形態によるプリチャージ制御およびディスチャージ制御を適用することが可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。