JP5830803B2 - 建造物の補強構造 - Google Patents

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Description

この発明は、柱と梁との交差部を補強する建造物の補強構造に関する。
従来から、柱と梁の交差部を補強する建造物の補強構造が知られている。
例えば、特許文献1には、柱及びこの柱を挟んで同一軸線上に設けた梁を備えた建造物に対する補強構造が開示されているが、この構造を図10,11に示した。この補強構造は、柱1の一面を、所定の間隔を保持して柱用枠体3で囲むとともに、柱1と梁2との交差部であって、上記柱用枠体3で囲った面と対応する面を、その面と所定の間隔を保持して交差部用枠体4で覆っている。
また、上記柱用枠体3及び交差部用枠体4のそれぞれは、一対の囲い鋼板の端部を重ね合わせて構成され、これら柱用枠体3及び交差部用枠体4の外周には帯状シート5を接着し、この帯状シート5によって隣り合う囲い鋼板を結合している。そして、柱用枠体3内には2本の縦筋7を配置しているが、この縦筋7は、上記交差部用枠体4内にも延長させている。
上記のようにした柱用枠体3及び交差部用枠体4と、柱1及び梁2との間に形成された間隔内にグラウト材6を充填し、柱1と梁2とを上記枠体3,4及びグラウト材6で一体的に囲んで補強する。
なお、上記柱1及び梁2の表面であって上記グラウト材6で覆われる部分には、あらかじめ多数のアンカー部材9を打ち込んでいるが、このアンカー部材9は、それにグラウト材6が絡み付くことによってグラウト材6と柱1及び梁2の表面との密着性を高める機能を果たしている。
また、このような補強構造の上記交差部用枠体4内には、上記縦筋7と交差する横筋8を配置するが、この横筋8は、所定のアンカー部材9間に架け渡すとともに、横筋8とアンカー部材9との交差部を、図11に示すようにワイヤー10で結束している。ただし、場合によっては上記横筋8とアンカー部材9との交差部を溶接することもある。
上記横筋8は、交差部における梁2の曲げ耐力を上げて、柱1と梁2との交差部近傍の補強強度を高める機能を果たすが、この横筋8の本数や配置箇所は、補強する既存構造物に応じて異なる。具体的には、補強工事前に行われる構造計算によって、横筋の必要な本数及び配置箇所があらかじめ決められる。
特開2011−026786号公報 特開平10−131516号公報の図2
上記のように横筋8の本数及び配置箇所は、事前の構造計算によってあらかじめ決められるが、その配置箇所や梁2との平行度が正確に保たれていないと、構造計算上の曲げ耐力を発揮できなくなる。
一方、上記横筋8を支えるアンカー部材9は、必要本数が所定の間隔を保って打ちこまれていれば、既存構造物と上記両枠体3,4内に充填したグラウト材6との密着度は保たれるので、施工現場において、アンカー部材9の打ち込み位置が厳密に設定されるわけではない。
このような状況の中で、横筋8をアンカー部材9上に架け渡す従来の補強構造では、構造計算でどんなに適切な横筋8の配置箇所が決められたとしても、施工現場では、位置設定が曖昧なアンカー部材9に架け渡さざるを得ない。そのため、アンカー部材9の設定箇所によっては、横筋8を構造計算上の適切な箇所に配置できないことがあった。
また、横筋8を適切な箇所に配置できないだけでなく、当該横筋8を梁2の軸線に平行に配置することも難しいのが現状であった。
もし、横筋8が構造計算で必要とされた箇所に配置されなければ、柱1と梁2との交差部において構造計算上の曲げ耐力が得られなくなる。
また、横筋8が梁2の軸線に対して平行に配置されないと、例えば、梁2の軸線方向から作用した曲げ力が横筋8に対して分散して作用してしまうので、横筋8の曲げ耐力が上記交差部における曲げ耐力補強として機能しなくなってしまう。
さらに、横筋8を上記アンカー部材9にワイヤー10で結びつけた後、グラウト材6を充填する工程で、グラウト材6の圧力で横筋8がずれてしまうこともある。横筋8がずれてしまえば、やはり構造計算上期待した強度が得られないことになる。
しかも、グラウト材6を充填した後では、横筋8の位置がずれたかどうかは分からない。そのため、グラウト材6の充填時などに横筋8がずれても、そのまま放置されることになって、交差部に設けた横筋8の効果が発揮されないという問題があった。
この発明の目的は、柱と梁との交差部を覆うグラウト材内に埋設する横筋を、構造計算上決められた位置に設けることができ、目的の補強効果を安定して実現できる建造物の補強構造を提供することである。
第1の発明は次の構造上の特徴を有する。すなわち、柱とこの柱を挟んで同一軸線上に設けた梁との交差部を覆う枠体は、柱及び梁の側面と対向する対向片と、この対向片の両脇において上記対向片と交差して、上記対向片と梁との間隔を保つ一対の側面片とからなり、上記枠体と柱及び梁との間にグラウト材を充填するとともに、上記グラウト材内に上記梁に沿った横筋を設けた建造物の補強構造を前提とし、上記枠体の側面片にはその側面片に直交して連続する取付け片を設け、この取付け片を上記梁に固定して、梁に対する枠体の位置決めをするとともに、上記側面片には、上記横筋が架け渡される構造計算上決められた位置に、上下に間隔を保って配置された少なくとも一対の位置決め孔を形成し、これら位置決め孔に上記横筋を貫通して上記位置決め孔間に上記横筋を架け渡したことを特徴とする。
上記構造計算上決められた位置とは、この補強構造が目的とする補強強度を実現するために横筋を設置すべき位置のことであり、建造物の条件に応じて決められるものである。
第2の発明は、上記枠体における一対の側面片のそれぞれに、複数の横筋を平行に架け渡すための複数の位置決め孔を形成したことを特徴とする。
第3の発明は、柱とこの柱に交わる少なくとも3本の梁とを備え、これら少なくとも3本の梁は同一軸線上に位置する一対の梁と、これら一対の梁と直交する梁とからなり、上記柱を介して直交する一対の梁間に、各梁と柱との交差部を覆う枠板を設けるとともに、この枠板は、直角にした一対の囲い片からなり、上記柱を挟んで同一軸線上に位置する上記梁に対して平行にした横筋を上記枠板内に配置し、これら枠板と柱及び梁との間にグラウト材を充填した建造物の補強構造を前提とする。
そして、上記柱を介して同一軸線上に位置する一対の梁に対して直交する梁を挟んで隣り合う上記枠板であって、上記直交する梁を挟んで互いに対向する囲い片のそれぞれにその囲い片に直交して連続する取付け片を設け、この取付け片を上記梁に固定して、梁に対する枠体の位置決めをするとともに、上記囲い片には、上記横筋が架け渡される構造計算上決められた位置に、上下に間隔を保って配置された少なくとも一対の位置決め孔を形成し、これら位置決め孔に横筋を貫通して上記位置決め孔間に上記横筋を架け渡した点に特徴を有する。
なお、上記枠板を構成する、直角にした一対の囲い片は、鋼板やその他の板材を折り曲げ加工などによって形成し、交差角度がわずかに直角からずれたものや、交差部に丸みを帯びたものなども含まれるものとする。
第4の発明は、上記柱を介して同一軸線上に位置する上記梁に対して直交する上記梁であって、上記横筋を架け渡す一対の位置決め孔を結ぶ直線上に貫通孔を形成し、この貫通孔を貫通した横筋が上記位置決め孔に架け渡される構成にしたことを特徴とする。
第5の発明は、上記横筋を架け渡す一対の位置決め孔を結ぶ直線が、上記柱を介して同一軸線上に位置する上記梁に対して直交する上記梁よりも下方になる関係位置を保つように、上記一対の位置決め孔を形成し、これら一対の位置決め孔間に架け渡した横筋が、上記柱を介して同一軸線上に位置する上記梁と直交する上記梁よりも下方に架け渡される構成にしたことを特徴とする。
第1の発明によれば、柱と梁との交差部を覆う枠体に設けた位置決め孔を利用して、構造計算上横筋が架け渡されるべき位置に確実に横筋を架け渡すことができる。そのため、横筋の耐力が十分に発揮され、構造計算上期待される目的の補強強度を安定的に実現することができる。
また、横筋を配置する位置が位置決め孔によってあらかじめ明確に決められているので、施工現場において横筋の設定位置を決める必要がない。言い換えれば、取付け片を梁における所定の箇所に取付けさえすれば、上記位置決め孔の位置決めができる。このようにして位置決めされた位置決め孔間に横筋を架け渡せば、当該横筋は、必然的に構造計算上の位置に設定されることになる。したがって、横筋を配置する際の作業性が向上する。
また、横筋は位置決め孔を貫通してしっかりと架け渡されるので、グラウト材の充填時にも横筋の位置がずれたりしない。万が一にも、グラウト材の充填時に横筋が構造計算上の位置からずれたとしても、そのときには当該横筋が位置決め孔から外れることになるので、それを枠体の外側から確認することができる。したがって、従来のように、横筋のずれが分からないまま放置されるようなことはほとんどない。
第2の発明によれば、複数の横筋を、構造計算上決められた位置に簡単に架け渡すことができる。特に、同一軸線上に位置する梁の軸線に沿った力が、一方向の梁から柱に向かって作用したときには、上記一方の梁と柱との交差部における梁の下端側に曲げ応力が集中し、他方の梁と柱との交差部では梁の上端側に曲げ応力が集中することになる。そして、上記軸線に沿った力の方向が反対になった場合には、曲げ応力が集中する位置が上下反対になる。したがって、反対方向の力が交互に作用する場合には、各梁の上下端側に交互に応力の集中箇所ができることになる。
上記のような曲げ応力の集中を前提にすれば、少なくとも2本の横筋を上下に平行に配置することが望ましいが、構造計算上も少なくとも2本の横筋が上下に平行に配置されることが求められる。
したがって、上記枠体の一対の側面片それぞれに、構造計算で決められた複数の位置決め孔を形成しておくことによって、構造計算上必要とされる曲げ耐力補強が可能になる。
しかも、各横筋は、枠体に形成された位置決め孔に架け渡すことによって簡単に位置決めできるので、横筋の本数が増えても横筋を設置する際の作業性が落ちることはない。
第3の発明によれば、柱とこの柱に直交する少なくとも3本の梁とを備えた建造物においても、第1、2の発明と同様に、構造計算で決められた位置に正確に横筋を設置することができる。
また、第4の発明によれば、位置決め孔を形成した対向する囲い片間に梁が介在していても、横筋を架け渡すことができるので、構造計算上の必要な箇所に横筋を架け渡すことができる。
さらに、第5の発明によれば、構造計算上必要であれば、梁よりも下方となる位置にも横筋を架け渡すことができる。
図1は第1実施形態の斜視図であり、グラウト材を充填する前の状態である。 図2は第1実施形態の正面図である。 図3は第1実施形態の交差部の断面図である。 図4は第2実施形態の交差部の断面図である。 図5は第3実施形態の交差部周辺の外観の斜視図である。 図6は第3実施形態の枠板の斜視図である。 図7は第3実施形態の交差部の平面図である。 図8は図7のVIII-VIII線断面図である。 図9は第4実施形態の交差部周辺の斜視図である。 図10は従来の補強構造の正面図である。 図11は従来の補強構造の交差部の断面図である。
図1〜図3に示す第1実施形態は、柱1を挟んだ両側に、同一軸線上に位置する梁22を設けた交差部を備えた建造物の補強構造に関する。なお、ここでは、柱1の一つの側面とその両脇に連続する一対の梁2とが同一平面となる場合について説明するが、上記同一平面側を以下には前面という。また、図10,11に示した従来の補強構造と同じ構成要素には、以下でも同じ符号を用いることにする。
この第1実施形態では、柱用枠体11と交差部用枠体12とを備えている。そして、柱用枠体11は柱1の前面のみを囲う。また、交差部用枠体12は、梁2に固定した止めボルト16に仮止めし、この止めボルト16にナット17を締め付けて、梁2に固定するとともに、この状態で柱1の前面側における柱1と梁2との交差部を囲うものである。
さらに、上記柱用枠体11及び交差部用枠体12で柱1及び交差部を囲うときには、これら枠体11,12と柱1及び梁2との間に間隔を設け、この間隔には、図示していないグラウト材を充填し、このグラウト材と柱1及び交差部とを一体化して、当該柱1及び上記交差部を補強する。ただし、図1,3はグラウト材を充填する前の状態を示している。
また、上記柱1及び梁2の前面であって、グラウト材を充填する空間に対応する面には、図2に示すように予め複数のアンカー部材9を所定の間隔を保って打ち込んでおく。このアンカー部材9によって、上記のように充填されたグラウト材と柱1及び梁2の前面との密着性を高め、柱1及び上記交差部の補強強度を保つようにしている。
さらに、上記両枠体11,12の内側であって、柱1の前面との対向間隔には、柱1の軸線に沿った縦筋7を配置しているが、図2に示すようにスラブ18がある場合には、縦筋7を複数の階層のスラブ18を貫通させる。これにより、柱1は複数階にわたって、大きな曲げ耐力を得ることになる。
次に、上記柱用枠体11及び交差部用枠体12について説明する。
上記柱用枠体11は、それらを複数備え、それらを柱1の長さ方向であって梁下まで積層している。また、個々の柱用枠体11は、鋼板を折り曲げて断面形状をコの字状にした一部材で構成され、柱1の前面に平行に配置される対向片11aと、これに直交する側面片11b11cとを備えている。
また、上記柱用枠体11の表面には、上記した従来と同様に、帯状シート5を巻くようにして接着しているが、このとき軸方向に積層された柱用枠体11の接合部分を帯状シート5がまたぐようにして覆い、それら柱用枠体11を軸方向に一体化させている。このように帯状シート5で柱用枠体11を一体化したので、帯状シート5の靱性を利用した補強効果を上げることができる。
一方、上記のように交差部を構成する梁2に固定する交差部用枠体12は、図13に示すように上記柱1及び梁2の前面に平行に配置される対向片12aと、これに直交する側面片12b,12cと、これら側面片12b,12cに直交して連続する取付け片12d,12eとを備えている。この交差部用枠体12も鋼板を曲げ加工して形成することができる。
ただし、この交差部用枠体12及び上記柱用枠体11は、鋼板に限らず、例えば、非鉄金属や合金、強化樹脂、木の板、強化ガラスなどで構成してもよい。
そして、上記取付け片12d,12eを上記のように止めボルト16に仮止めするとともに、この止めボルト16にナット17を締め付けて、上記交差部用枠体12を、交差部を構成する梁2に固定する。
さらに、上記対向片12a及び側面片12b12cの下端であって図1に示す柱用枠体11から外れた位置には、図3に示す底板12f12gを設けている。このようにした底板12f,12gは、上記交差部用枠体12を上記のように梁2に固定したとき、梁2の前面に接触し、交差部用枠体12の底をふさぐものである。
また、上記交差部用枠体12の一方の側面片12bには、間隔を保って上下に配置された一対の位置決め孔13a,13bを形成し、他方の側面片12cには上記位置決め孔13a,13bと正対する位置決め孔14a,14bを形成している。
これら位置決め孔13a,13b、14a,14bは、この交差部用枠体12を梁2,2の所定の箇所に固定したとき、この位置決め孔13a,14a間、13b,14b間に架け渡した横筋8,8が構造計算上決められた位置になるように形成されている。
このような交差部用枠体12の対向する位置決め孔13a,14a間、13b,14b間のそれぞれに横筋8,8を架け渡すが、例えば、交差部用枠体12を上記のように梁2に固定した後に、外部から上記位置決め孔13a,14a及び13b,14bに横筋8,8を通すようにしてもよいし、あらかじめ横筋8,8を架け渡した交差部用枠体12を梁2に固定するようにしてもよい。
また、この交差部用枠体12の表面にも上記帯状シート5を接着している。このようにした帯状シート5は、上記したと同様にその靱性を利用するものである。
ただし、この第1実施形態における交差部用枠体12は1枚板で構成されているので、通常状態で帯状シート5の靱性は機能しない。地震力が作用して交差部用枠体12が変形しようとしたときには、帯状シート5の靱性でその変形を抑えることが期待できる。
さらに、上記柱用枠体11と交差部用枠体12との連続部分にも適当な長さにカットした上記帯状シート5を接着して、両枠体11,12を一体化するようにしてもよい。
なお、図中符号15は板座金であり、この板座金15で、帯状シート5を押さえてからナット17を締め付けている。板座金15で、側面片12b,12cと取付け片12d,12eとで形成される角から帯状シート5が浮き上がらないようにしている。ただし、上記ナット17を締め付けてから、交差部用枠体12を固定し、その上から帯状シート5を接着するようにしてもよい。
また、上記横筋8は、上記位置決め孔13a,14a間及び位置決め孔13b,14b間に架け渡されたとき、その両端を上記位置決め孔13a,14a及び13b,14bから外方へ突出させるようにしている。そのため、交差部用枠体12の側面片12b,12cに上記帯状シート5を貼りつける際には、上記位置決め孔13a,14a及び13b,14bに対応する部分で帯状シート5の繊維を寄せて、上記横筋8の端部を突出させるための隙間を形成するようにしている。
上記のようにして、上記位置決め孔13a,14a及び13b,14bから横筋8の両端を突出させたら、この突出部に形成された雄ねじにナット17を結合する。このナット17を上記側面片12b12cの外側面に接触するまで締め付けることによって横筋8の軸方向のずれを防止する。
上記のように、第1実施形態では、上記位置決め孔13a,14a間及び13b,14b間に横筋8,8を架け渡すことによって、上下一対の構造計算上決められた位置に、横筋8,8を正確に位置決めすることができる。
このように横筋8を位置決めしたら、柱用枠体11及び交差部用枠体12で囲まれた内側にグラウト材を充填する。これによって、上記交差部用枠体12と交差部との間に充填されたグラウト材内において、構造計算上決められた位置に横筋8を埋設することができる。
従来のように、アンカー部材9に横筋8を架け渡した場合には、アンカー部材9の位置によって横筋8の設置位置が決まるので、アンカー部材9の位置によっては、構造計算上決められた位置と一致しないことが多かった。しかし、この第1実施形態では、上記取付け片12d,12eを梁2における所定の箇所に取付けさえすれば、上記位置決め孔13a,14a及び13b,14bによって横筋8の位置決めができる。つまり、アンカー部材9の打ち込み位置に係らず、いつでも簡単に、構造計算上決められた位置に横筋8を架け渡すことができて、横筋8による目的の補強強度を安定的に実現することができる。
また、この第1実施形態では、各側面片12b,12cにそれぞれ上下一対の位置決め孔13a,13b、14a,14bを形成することによって、一対の横筋8,8を位置決めしているが、このように上下に一対の横筋8,8を設けることで、より有効に曲げ耐力を補強することができる。なぜなら、梁2に曲げ力が作用したとき、曲げ応力が集中する位置は、柱1との交差部における梁2の上下端近傍になるが、上下一対の位置決め孔を形成すれば、曲げ応力が最大となる梁2の上端及び下端それぞれの近傍に、横筋8,8を配置できるからである。
ただし、梁2,2の上部に設けられたスラブ18の強度が十分な場合には、上側の位置決め孔13a,14aを省略し、下方の位置決め孔13b,14bだけを形成し、そこに架け渡す1本の横筋8だけで十分な曲げ耐力を実現することもできる。
また、曲げ耐力ではなく、交差部における引っ張り耐力を補強する場合には、横筋8は、特に梁2の上下端近傍に配置しなくてもよく、例えば梁2の幅方向の中央付近に1本の横筋8を配置するだけでもよい。
いずれにしても、この第1実施形態では、対向する側面片12b,12cにおける構造計算上決められた位置に位置決め孔を形成することによって、横筋8を簡単かつ正確に位置決めすることができる。
さらに、この第1実施形態では、位置決め孔13a,14a及び13b,14bから突出させた横筋8の両端をナット17で固定しているため、グラウト材充填時に、グラウトの圧力によって横筋8がずれてしまうようなことがない。
なお、上記ナット17を用いなくても、両端を位置決め孔13a,14a及び13b,14bから突出させておくだけでも、位置決めされた横筋8をずれにくくすることができるとともに、グラウト材の充填後に横筋8が決められた位置に保たれていることを確認することができる。仮に、横筋8が位置決め孔から脱落した場合には、横筋8の突出がなくなるので、交差部用枠体12の外部からもそのことが分かり、横筋8がずれたことを知らずに放置されるようなことはない。
図4に示す第2実施形態は、上記交差部用枠体12の代わりに、一対の囲い板20,21で構成された交差部用枠体19を用いている。これら囲い板20,21も、上記交差部用枠体12と同様に、鋼板のほか様々な材質で構成することができる。
上記囲い板20,21は、その端部を重ねてこの発明の対向片を構成する前面片20a,21aと、これに直交して連続し、この発明の側面片を構成する側面片20b,21bと、これら側面片20b,21bに直交して梁2,2の前面に固定される取付け片20c,21cとこの交差部用枠体19の底をふさぐ底板20d,21dとを備えている。
このような交差部用枠体19の取付け片20c21cを、梁2に固定するとともに、上記側面片20b,21b間に横筋8を架け渡す構造は、上記第1実施形態と同様である。したがって、上記第1実施形態と同じ構成要素には、第1実施形態と同じ符号を用いるとともに、同様の構成要素についての詳細な説明は省略する。なお、図4も、グラウト材を充填する前の状態を示している。
一方の囲い板20の側面片20bには上下に一対の位置決め孔13a,13bを形成し、他方の囲い板21の側面片21bには位置決め孔14a,14bを形成している。これら位置決め孔13a,13bと、14a,14bとは、一対の囲い板20,21からなる上記交差部用枠体19を梁2,2の所定の箇所に固定したとき正対する位置であって、横筋8を架け渡すべき位置として、構造計算上決められた位置に形成されている。
上記正対する位置決め孔13a,14a間と、位置決め孔13b,14b間とに横筋8を架け渡し、図4には表われていないが、2本の横筋8が上下に平行に配置される。
上記横筋8,8は上記第1実施形態と同様に、交差部用枠体19を梁2に固定してから位置決め孔13a,14a間、及び13b,14b間とに架け渡すようにしてもよいし、あらかじめ横筋8,8を架け渡した交差部用枠体19を梁2に固定するようにしてもよい。
ただし、図4に示すように、上記横筋8の雄ねじに、対向する側面片20b21bの間隔を保って、プレートナット22,23を取り付ける場合には、交差部用枠体19を固定する前に横筋8を挿入する。上記位置決め孔13a,13b、14a,14bに横筋8を挿入して外部にナット17を締め付ければ、側面片20b、21bの間隔を保持した交差部用枠体19を組み立ててからそれを梁2に取り付けることもできる。
この第2実施形態においても、位置決め孔13a,13bと14a,14bとによって、上記横筋8が構造計算上決められた位置に正確に位置決めされ、その位置を保つことができる。
また、上下に間隔を保って設けた一対の横筋8,8によってより効果的に曲げ耐力を補強できる点も、上記第1実施形態と同じである。
そして、各位置決め孔13a,13b、14a,14bから突出した横筋8の端部にナット17を固定すれば、横筋8,8のずれを防止できるとともに、この横筋8,8がタイバーとしても機能する。
さらに、この第2実施形態では、横筋8を架け渡す側面片20a,21aの対向間隔を現場で調整することもできるとともに、個々の部品の重量が軽くなるため運搬作業が容易になる。
上記第1,2実施形態では、交差部用枠体の対向片及び側面片の上下方向の幅を梁2の幅と一致させ、底板を梁の前面に接触させているが、底板を梁2よりも下方に設けるようにしてもよい。その場合には、梁2の下端に対応する位置よりも下方にもグラウト材が充填され、その中に横筋8を設けることができる。つまり、構造計算上決められた位置が、既存の梁2より下方であっても、その位置に位置決め孔を形成し、横筋8を位置決めすることができる。
図5〜8に示す第3実施形態は、柱1を挟んで同一軸線上に設けられた一対の梁2,2のほかに、この梁2に直交する梁24,24を備えた建造物を補強するための補強構造である。
図5に示すように、柱1の外周を、所定の間隔を保って柱用枠体25で囲み、柱1と梁2及び梁24との交差部を、柱1の四隅を覆う、第1〜4枠板26,27,28,29で囲うようにしている。
そして、上記柱用枠体25及び第1〜4枠板26〜29の外表面には帯状シート5を接着するとともに、内側には、後で説明するように横筋8を設けてからグラウト材を充填する。
ただし、図5,7,8はグラウト材を充填していない状態を示し、図5では、上記第1〜4枠板26〜29の位置関係を明確に示すため、帯状シート5、板座金15などを省略している。
さらに、図5〜8では省略しているが、梁2,24及び柱1の側面であって、上記第1〜4枠板26〜29で覆われる部分には、図2に示す第1実施形態と同様に複数のアンカー部材9を打ち込み、柱用枠体25の内側には柱1の軸線に沿った縦筋を設けている。そして、上記他の実施形態と同様の構成要素には、上記と同じ符号を用いている。
なお、上記柱用枠体25は、柱1との間にグラウト材を充填できればどのようなものでもよいが、例えば、断面をL字状にした4つの枠板を組み合わせて筒状に構成するとともに、この筒状にした枠板のセットを柱1の軸方向に沿って積層して構成する。そして、その外周に帯状シート5を接着して、周方向及び軸方向に連続する枠板を連結して柱用枠体25を構成することができる。
一方、上記第1〜4枠板26,27,28,29は、鋼板を曲げ加工等によって、ほぼ同一形状に形成されている。
厳密には、梁2又は24を介して隣り合う枠板はそれぞれ、上記梁2又は24の軸線を中心とする線対称形であるが、全ての枠板26〜29は同じ構成要素を備えているので、まず、第1枠板26について説明する。
第1枠板26は、図5〜7に示すように、梁2に固定するための第1取付け片26aと、この第1取付け片26aに連続して直交する第1囲い片26bと、この第1囲い片26bに連続して直交する第2囲い片26cと、この第2囲い片26cに連続して直交し、梁24に固定するための第2取付け片26dとを備えている。また、第1,2側面片26b,26cの下端には、第1,2側面片26b,26cと、上記柱用枠体25との隙間をふさぎ、梁2,24の下方に突出する底板26eを備えている。
上記第1,2囲い片26b,26cは、その高さ方向の寸法を上記梁2,24の上下方向の幅よりも大きくし、上記底板26eに沿って上記第1,2取付け片26a,26dより外方へ突出した突出部を備え、第1,2枠板26,27を所定の箇所に取り付けたとき、これら突出部が上記梁24,24の梁下に設けられるようにしている。
また、第1囲い片26bには、上記梁2に沿って配置される横筋8,8を架け渡すための位置決め孔30,31を上下に形成し、第2囲い片26cには梁24に沿って配置される横筋8を架け渡すための位置決め孔32を形成している。
これら位置決め孔30〜32は、後で説明するように、上記第1〜4枠板26〜29を所定の箇所に設けたとき、対向する位置決め孔30,30間、31,31間、32,32間に架け渡した横筋8が構造計算上決められた位置に配置されるように形成されている。
第2〜4枠板は上記第1枠板26と同様に、第1取付け片27a〜29aと、第1囲い片27b〜29bと、第2囲い片27c〜29cと、第2取付け片27d〜29dと、底板27e〜29eとを備えている。そして、各第1囲い片27b〜29bには、それぞれ一対の位置決め孔30,31が形成され、第2囲い片27c〜29cには、それぞれ位置決め孔32が形成されている。
なお、この第3実施形態では、上記したように、第1,2囲い片26b〜29b、26c〜29cの高さ方向の寸法を、梁2,24の幅よりも大きくし、上記梁2や梁24の下方に突出した、隣り合う枠板の囲い片及び底板の端部を当接させている。これによって、上記梁2の下端及び梁24の下端と上記底板26e〜29eとの間に、グラウト材が充填される間隔が保たれるようにしている。
例えば、図8に示すように、梁24を挟んで隣り合う第1,2枠板26,27の底板26eと底板27eとが、梁24の下方で当接する。そして、その当接部には継手板部材33を重ねるとともに、その外周に帯状状シート5を接着して両底板26e,27eを連結している。
上記のような第1〜4枠板26〜29の第1取付け片26a,27a,28a,29aを梁2に、第2取付け片26d,27d,28d,29dを梁24に、それぞれ止めボルト16及びナット17で固定することにより、各枠板26〜29をそれぞれ所定の箇所に設けている。
上記のような第1〜4枠板26〜29を柱1と梁2,24との交差部に設けて補強構造を構成するが、図5において梁2を境にして左下となる梁2の一方の側面側では、梁2と直交する上記梁24の両側面と梁2との間における所定の箇所に上記第1枠板26と第2枠板27とを設けている。
そして、上記梁24を挟んで隣り合う第1、2枠板26,27であって、上記梁24を挟んで対向する第1囲い片26b,27bに形成されている、位置決め孔30,30間及び、位置決め孔31,31間に、梁2の軸線に沿った横筋8,8を架け渡す。これら対向する位置決め孔30,30間と31,31間に架け渡された横筋8は、それぞれ構造計算上決められた位置に配置される。
なお、この第3実施形態では、上方の位置決め孔3030を結ぶ直線上に、上記梁24が位置するため、この梁24には、上記横筋8の外径より大きい内径の貫通孔24aを形成し、上記横筋8をこの貫通孔24aを貫通して上記位置決め孔30,30間に架け渡している。
上記貫通孔24aは、上記位置決め孔30,30に対応する位置に形成されているが、その内径を、横筋8の外径に比べて十分に大きくしておけば、貫通孔24aの形成位置をそれほど正確に管理しなくても、横筋8を貫通させることができる。
また、上記貫通孔24aの内径を十分に大きくして、挿入された横筋8と貫通孔24aの内周との間に隙間が保たれるようにすれば、第1,2枠板26,27内に充填するグラウト材が貫通孔24a内に入り込み、空隙を埋めるとともに横筋8と梁24とを一体化してさらに強度を高めることができる。
一方、下方の位置決め孔31,31を結ぶ直線は、梁24の下方に位置するように構成されている。そのため、上記位置決め孔31,31間に架け渡された横筋8は、図8に示すように梁24の下方を通過し、梁下に充填したグラウト材内に埋設される。
このように、梁2に沿った横筋8を、位置決め孔30,30及び31,31によって正確に位置決めし、各横筋8を構造計算上決められた位置に配置することができる。
特に、梁24の下方において上記位置決め孔31,31間に架け渡された横筋8は、まげ応力が集中する梁2の下端に近づけることができるため、梁2の曲げ耐力をより効果的に補強することができる。
また、上記梁2を介して上記第1,2枠板26,27と反対側においては、上記第3枠板28と第4枠板29とを、上記梁24と梁2との間における所定の箇所に設ける。そして、上記梁24を挟んで隣り合う第3,4枠板28,29であって、上記梁24を挟んで対向する第1囲い片28b及び第1囲い片29bに形成された位置決め孔30,30間と、位置決め孔31,31間に梁2に沿った横筋8,8を架け渡す。
こちら側の面においても、上記位置決め孔30,30を結ぶ直線上に位置する梁24には横筋8の外径よりも十分に大きい内径の貫通孔24bを形成し、横筋8をこの貫通孔24bを貫通させて上記位置決め孔30,30間に架け渡す。
また、位置決め孔31,31を結ぶ直線は梁24の下方に位置し、これら位置決め孔31,31間に架け渡した横筋8は、上記梁24の下方でグラウト材に埋設される。
このように、第3,4枠板28,29を設けた側においても、梁2に沿った横筋8を位置決め孔30,30及び31,31によって正確に位置決めできる。
したがって、梁2,2の軸線の両側面において、梁2に沿った横筋8を構造計算上決められた位置に配置することができる。
さらに、柱1を挟んで同一軸線上に設けられた一対の梁24,24も、上記梁2と同様に補強される。この場合、上記梁2が、この発明の同一軸線上に位置する梁24,24に直交する梁に相当する。
図7において、梁24の左側では、第1,4枠板26,29が、一対の梁24,24と直交する梁2と間に設けられ、梁2を挟んで隣り合うことになる。そして、梁2を挟んで互いに対向する上記第1枠板26の第2囲い片26cと第4枠板29の第2囲い片29cとに形成された位置決め孔32,32間に横筋8を架け渡す。
ただし、上記位置決め孔32,32を結ぶ直線上には梁2が位置するので、梁2の対応する位置には横筋8の外径よりも十分大きい内径の貫通孔2aを形成し、横筋8をこの貫通孔2aに貫通させて上記位置決め孔32,32間に架け渡すようにする。
一方、図7における上記梁24の右側では、上記第2,3枠板27,28が、一対の梁24,24と直交する梁2との間に設けられ、梁2を挟んで隣り合う。そして、上記梁2を挟んで互いに対向する上記第2枠板27の第2囲い片27cと第3枠板28の第2囲い片28cとに形成された位置決め孔32,32間に横筋8を架け渡す。
こちら側においても、上記位置決め孔32,32を結ぶ直線上に対応する梁2の部分には、横筋8の外径よりも十分大きい内径の貫通孔2bを形成し、横筋8をこの貫通孔2bを貫通させて、上記位置決め孔32,32間に架け渡すようにする。
なお、この第3実施形態では、上記位置決め孔32,32に架け渡した横筋8,8が貫通孔2a,2bを貫通するようにしているが、上記横筋8を梁2の下方に架け渡すことも可能である。いずれにしても、対向する位置決め孔32,32によって梁24に沿った横筋8を正確に位置決めすることができる。
したがって、上記一対の梁24の両側においても、梁24に沿った横筋8を構造計算上決められた位置に配置することができる。
なお、この第3実施形態では、梁24に沿った横筋8は、梁24のそれぞれの側面側において梁2を貫通する1本だけである。横筋8の曲げ耐力をより有効に利用する場合には、梁24の上下端に対応する位置に近づけて配置することが好ましいが、スラブ18の強度を利用でき、目的とする補強強度によっては構造計算上、1本の横筋8で足りることもある。
上記したように、上記第1〜4枠板26〜29の第1囲い片26b〜29bは、上記一対の梁2,2に沿った横筋8を架け渡すための位置決め孔30,31を形成する互いに対向する囲い片となり、第2囲い片26c〜29cは、上記一対の梁24に沿った横筋8を架け渡すための位置決め孔32を形成する互いに対向する囲い片となる。
そのため、この第3実施形態では、互いに軸線が直交する梁2,24を柱1に結合した構造において、アンカー部材の打ち込み位置にかかわりなく、梁2及び24に沿った横筋8を、構造計算上決められた位置に簡単かつ正確に位置決めすることができる。そのため、横筋8による補強効果を目的通りに発揮させることができる。
ただし、軸線が直交する梁2,24を柱1に結合した建造物であっても、いずれか一方の梁の強度が十分な場合には、一方の軸線に沿った横筋8のみを設け、梁2または24のいずれか一方の交差部のみを補強することもできる。
なお、この第3実施形態における上記第1〜4枠板26,27,28,29及び継手板部材33は、鋼板だけでなく、非鉄金属や合金、強化樹脂、木の板、強化ガラスなど、必要な強度を維持できれば様々な材料で構成することができる。
上記では、例えばコンクリート製などで、断面形状が長方形の柱及び梁からなる交差部を補強対象とした例を説明している。しかし、上記第1〜3実施形態の補強構造は、柱及び梁の材質や断面形状にかかわりなく、様々な交差部に適用可能である。
図9は、角型鋼管からなる柱34と、この柱34の両側に結合し、同一直線上に設けた一対のH型鋼からなる梁35,35との交差部を補強する第4実施形態を示している。
この第4実施形態では、柱34であって梁35より下の分を柱用枠体36で覆い、柱34と梁35との交差部を交差部用枠体37で覆っている。
なお、一対の梁35,35に沿った両側面には、それぞれ同一形状の上記交差部用枠体37を設けている。
また、柱34及び梁35の表面にはアンカー部材を設けるとともに、枠体36及び37の内側に、柱34に沿って軸方向筋を配置してからグラウト材を充填するが、図9では、これらアンカー部材、軸方向筋及びグラウト材を省略している。
上記柱用枠体36は、その詳細は図示していないが、鋼板を折り曲げて断面形状をL字状にした4枚の枠板で構成される。このような柱用枠体36を複数備え、それらを柱34の長さ方向であって梁下まで積層している。なお、上記柱用枠体36は、鋼板ではなく、他の材質で形成してもよい。
一方、上記交差部用枠体37は、柱34及び梁35の前面に平行に配置される対向片37aと、これに直交する側面片37b,37cとを備えている。
また、上記側面片37b,37cに連続する連結部37d,37eを備え、これら連結部37d,37eを、梁35を構成するH型鋼のフランジ35a,35b間に挿入してウエブ35cに突き当て、その周囲を溶接している。
さらに、上記対向片37a及び側面片37b37cの下端であって柱用枠体36から外れた位置には、底板37fを設けている。
また、上記側面片37bには、間隔を保って上下に配置された一対の位置決め孔38a,39aを形成し、他方の側面片37cには、上記位置決め孔38a,39aと正対する位置決め孔38b,39bを形成している。
これら位置決め孔38a,38b、39a,39bは、この交差部用枠体37を梁35,35の所定の箇所に固定したとき、位置決め孔38a,38b間、39a,39b間に架け渡した図示しない横筋が構造計算上決められた位置になるように形成されている。
したがって、これら位置決め孔38a,38b間、39a,39b間に横筋を架け渡せば、それらの横筋が構造計算上決められた位置に配置されることになる。
なお、上記交差部用枠体37も鋼板を曲げ加工して形成することができるが、上記他の実施形態の枠体と同様に、鋼板に限らず、例えば、非鉄金属や合金、強化樹脂、木の板、強化ガラスなどで構成してもよい。
ただし、交差部用枠体37を梁35に溶接できない材質で形成した場合には、上記連結部37d,37eから外方へ向けた取付け片を設けて、この取付け片を梁35のウエブ35cにボルトなどで固定すればよい。
また、図9では省略しているが、上記柱部用枠体36及び交差部用枠体37の表面には、上記した他の実施形態と同様に帯状シートを接着する。このとき軸方向に積層された柱用枠体36の接合部分を帯状シートがまたぐようにして覆い、それら柱用枠体36を軸方向に一体化させている。このように帯状シートで柱用枠体36を一体化するとともに、交差部用枠体37と連結したので、帯状シートの靱性を利用した補強効果を上げることができる。
ただし、溶接や接着などによって柱用枠体36や、交差部用枠体37が一体化でき、強度が保てれば、上記帯状シートは必須ではない。この点は、上記他の実施形態においても同様である。
さらに、梁35のウエブ35c及び柱34の前面に設ける複数のアンカー部材は、溶接によって取り付けたり、ウエブを貫通させて取り付けたりすることができる。
ここでは、角型鋼管からなる柱34の両側に同一線上に設けられたH型鋼からなる梁35との交差部を補強する例を説明したが、柱や梁を構成する鋼材の形状は上記のものに限らない。
また、上記交差部用枠体37も、隣接する複数の枠板部材で構成するなど、様々な態様が可能である。
なお、上記いずれの実施形態においても、柱1,34を挟んで設けられた一対の梁に沿って設置する横筋の本数は、特に限定されない。例えば、同じ耐力を実現するために、横筋の本数を多く、各横筋の直径を小さくすることもできるし、直径を大きくして本数を少なくすることもできる。このような横筋の本数や直径も、建造物全体の構成や強度など様々な条件に応じて、目的の強度を実現するために必要な位置決め孔の位置と同様にして構造計算によって決められるものである。
また、上記第1〜4実施形態では、梁との交差部以外の柱1,34の部分を、柱用枠体で覆うようにしているが、柱部分のみの補強構造はどのようなものでもかまわない。例えば、上記柱用枠体を用いないで、グラウト材が硬化したら、取り除く型枠のみを用いて柱1,34の補強部を形成するようにしてもよいし、柱部分は補強しないで、交差部のみを補強するようにしてもよい。
柱と梁とが交差する様々な形態の建造物の補強に適用できる。
1 柱
2 梁
2a,2b 貫通孔
8 横筋
12 交差部用枠体
12a 対向片
12b 側面片
13a13b 位置決め孔
14a14b 位置決め孔
19 交差部用枠体
20 囲い板
20a 前面片
20b 側面片
21 囲い板
21a 前面片
21b 側面片
24 梁
24a,24b 貫通孔
26〜29 第1〜4枠板
26b〜29b 第1囲い片
26c〜29c 第2囲い片
30,31,32 位置決め孔
34 柱
35 梁
37 交差部用枠板
37a 対向片
37b37c 側面片
38a,38b 位置決め孔
39a,39b 位置決め孔

Claims (5)

  1. 柱とこの柱を挟んで同一軸線上に設けた梁との交差部を覆う枠体は、柱及び梁の側面と対向する対向片と、この対向片の両脇において上記対向片と交差して、上記対向片と梁との間隔を保つ一対の側面片とからなり、上記枠体と柱及び梁との間にグラウト材を充填するとともに、上記グラウト材内に上記梁に沿った横筋を設けた建造物の補強構造において、
    上記枠体の側面片にはその側面片に直交して連続する取付け片を設け、この取付け片を上記梁に固定するとともに、上記側面片には、上記横筋が架け渡される構造計算上決められた位置に、上下に間隔を保って配置された少なくとも一対の位置決め孔を形成し、これら位置決め孔に上記横筋を貫通して上記位置決め孔間に上記横筋を架け渡した建造物の補強構造。
  2. 上記枠体における一対の側面片のそれぞれには、複数の横筋を平行に架け渡すための複数の位置決め孔を形成した請求項1に記載の建造物の補強構造。
  3. 柱とこの柱に交わる少なくとも3本の梁とを備え、これら少なくとも3本の梁は同一軸線上に位置する一対の梁と、これら一対の梁と直交する梁とからなり、上記柱を介して直交する一対の梁間に、各梁と柱との交差部を覆う枠板を設けるとともに、この枠板は、直角にした一対の囲い片からなり、上記柱を挟んで同一軸線上に位置する一対の梁に対して平行にした横筋を上記枠板内に配置し、これら枠板と柱及び梁との間にグラウト材を充填した建造物の補強構造において、
    上記柱を介して同一軸線上に位置する一対の梁に対して直交する梁を挟んで隣り合う上記枠板であって、上記直交する梁を挟んで互いに対向する囲い片のそれぞれにその囲い片に直交して連続する取付け片を設け、この取付け片を上記梁に固定するとともに、上記囲い片には、上記横筋が架け渡される構造計算上決められた位置に、上下に間隔を保って配置された少なくとも一対の位置決め孔を形成し、これら位置決め孔に横筋を貫通して上記位置決め孔間に上記横筋を架け渡した建造物の補強構造。
  4. 上記柱を介して同一軸線上に位置する上記梁に対して直交する上記梁であって、上記横筋を架け渡す一対の位置決め孔を結ぶ直線上に貫通孔を形成し、この貫通孔を貫通した横筋が上記位置決め孔に架け渡される構成にした請求項3に記載の建造物の補強構造。
  5. 上記横筋を架け渡す一対の位置決め孔を結ぶ直線が、上記柱を介して同一軸線上に位置する上記梁に対して直交する上記梁よりも下方になる関係位置を保つように、上記一対の位置決め孔を形成し、これら一対の位置決め孔間に架け渡した横筋が、上記柱を介して同一軸線上に位置する上記梁に対して直交する上記梁よりも下方に架け渡される構成にした請求項3又は4に記載の建造物の補強構造。
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