JP5830412B2 - 水難溶性薬物と賦形剤との粉砕物の製造方法、造粒粒子の製造方法、錠剤の製造方法 - Google Patents
水難溶性薬物と賦形剤との粉砕物の製造方法、造粒粒子の製造方法、錠剤の製造方法 Download PDFInfo
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Description
造粒粒子の製造においては一般的に、薬物の溶出性や吸収性の制御、服用性の改善等のために種々の工夫が行われている。特に、薬物が水難溶性薬物(たとえばイブプロフェン等の非ステロイド抗炎症剤)である場合、該水難溶性薬物を含有する造粒粒子や該造粒粒子を配合した錠剤から薬物が溶出しにくく、生物学的利用能が低いため、製剤上の工夫が重要となる。
水難溶性薬物の溶出性を向上させるために様々な方法が研究開発されている。その一つとして、水難溶性薬物を微細化する方法がある。微細化することで表面積が増大し、溶出性が向上する。この方法は、薬物の結晶形の変化が少ない、有機溶媒を用いる必要がない、コストが安い、操作が簡単である等の利点がある。
微細化による溶出性向上技術を利用した造粒粒子の製造方法として、特許文献1には、水難溶性薬物を賦形剤とともに粉砕し、その粉砕物(共粉砕物)に、水溶性または水膨潤性の高分子化合物を含有する水性液を噴霧しながら湿式造粒する方法が開示されている。また、特許文献2〜3には、該方法により造粒粒子を製造する際に、共粉砕物の体積平均粒子径を0.01〜35μmとすることが開示されている。このように水難溶性薬物を賦形剤とともに粉砕すると、水難溶性薬物を単独で粉砕する場合に比べて、得られる造粒粒子やこれを含有する錠剤からの水難溶性薬物の溶出性が向上し、また、水難溶性薬物の粉砕を良好に行うことができるとされている。
粉砕機への付着が発生すると、エネルギー効率が悪化するだけでなく、粉砕前投入粉体に対する収率も低下する。粉砕機への固着物をヘラやブラシで回収すれば収率は向上するが、それは実生産において操作上及び安全性上非常に困難である。
さらに、粉砕機を長時間に渡って連続運転することが難しい問題もある。連続運転を行うと、粉砕機と粉体との摩擦により発熱する。この熱により粉体が粉砕機に固着するため、実生産においては、粉砕機を冷却するために断続運転が余儀なくされていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水難溶性薬物を賦形剤とともに粉砕する際の粉砕機への付着が低減され、それらの粉砕物を高い収率で得られる製造方法、該製造方法により得られる粉砕物、該粉砕物を用いて得られる造粒粒子および錠剤を提供することを目的とする。
[1](A)水難溶性薬物と(B)賦形剤との粉砕物を製造する方法であって、
(A)水難溶性薬物と(B)賦形剤と(C)水との合計に対する(C)水の割合が4〜35質量%である混合物に粉砕処理を施す工程を有することを特徴とする、共粉砕物の製造方法。
[2](B)賦形剤と(C)水とを混合した後に(A)水難溶性薬物を添加することにより前記混合物を調製する、[1]に記載の粉砕物の製造方法。
[3][1]または[2]に記載の粉砕物の製造方法により得られる粉砕物。
[4][3]に記載の粉砕物を含有する造粒粒子。
[5][4]に記載の造粒粒子を含有する錠剤。
本発明の粉砕物の製造方法は、(A)水難溶性薬物(以下、(A)成分という。)と(B)賦形剤(以下、(B)成分という。)との粉砕物(以下、共粉砕物という。)を製造する方法であって、(A)成分と(B)成分と(C)水との合計に対する(C)水の割合が4〜35質量%である混合物に粉砕処理を施す工程を有することを特徴とする。
本発明の粉砕物の製造方法は、より具体的には、前記混合物を調製する混合工程と、該混合物に粉砕処理を施す共粉砕工程とを行うことにより実施できる。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
混合工程では、(A)成分と(B)成分と(C)水とを混合して、(A)成分と(B)成分と(C)水との合計に対する(C)水の割合が4〜35質量%である混合物を調製する。
本発明において、「水難溶性薬物」とは、20℃の水に対する溶解度が0〜30mg/mLである薬物を示す。(A)成分としては、20℃の水に対する溶解度が0〜10mg/mLである薬物が好ましい。
(A)成分としては、通常、粉末状のものが用いられる。混合物の調製に用いる(A)成分の平均粒子径(共粉砕前の平均粒子径)は、製造しようとする共粉砕物の体積平均粒子径よりも大きければよく、特に限定されないが、通常、15〜100μmの範囲内である。
(A)成分の種類は特に限定されず、具体的には、アセトアミノフェン、非ステロイド抗炎症剤等の解熱鎮痛剤;ニトラゼパム、トリアゾラム、フェノバルビタ−ル、アミバルビタ−ル等の催眠・鎮静剤;フェニトイン、メタルビタ−ル、プリミドン、クロナゼパム、カルバマゼピン、バルプロ酸等の抗てんかん剤;塩酸メクリジン、ジメンヒドリナート等の鎮うん剤;イミプラニン、ノキシプチリン、フェネルジン等の抗うつ剤;ハロペリドール、メプロバメート、クロルジアゼポキシド、ジアゼバム、オキサゼバム、スルピリド等の精神神経用剤;パパベリン、アトロピン、エトミドリン等の鎮けい剤;ジゴキシン、ジギトキシン、メチルジゴキシン、ユビデカレノン等の強心剤;ピンドロール、アジマリン、ジソピラミド等の不整脈剤;ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、フロセミド、ブメタニド等の利尿剤;レセルピン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、塩酸プラゾシン、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール等の抗高血圧剤;ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ジルチアゼム、ニフェジピン、ジピリダモール等の冠血管拡張剤;ノスカピン、サルブタモール、プロカテロール、ツロプテロール、トラニラスト、ケトチフェン等の鎮咳剤;塩酸ブロムヘキシン、グアイフェネシン等の去痰剤;ニカルジピン、ピンポセチン等の脳循環改善剤;エリスロマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、リファンピシン、グリセオフルビン等の抗生物質;ジフェンヒドラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン等の抗ヒスタミン剤;トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニソロン、ダナゾール、メチルテストステロン、酢酸クロルマジノン等のステロイド剤;ビタミンA類、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類、葉酸(ビタミンM類)等の脂溶性ビタミン剤;ジメチコン、ファモチジン、シメチジン、ニザチジン、メトクロプラミド、ファモチジン、オメプラゾール、スルピリド、トレピブトン、スクラルファート等の消化器系疾患治療剤;カフェイン、ジクマロール、シンナリジン、クロフィブラート、ゲファルナート、ブロベネシド、メルカプトプリン、メトトレキサート、ウルソデスオキシコール酸、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、などが挙げられる。
非ステロイド抗炎症剤としては、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ブフェキサマック、アスピリン、ジクロフェナック、アルクロフェナック、フェンクロフェナック、エトドラック、メフェナミック、メクロフェナミック、ピロキシカム等が挙げられる。
これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(A)成分としては、上記のなかでも、本発明の効果が特に顕著に得られることから、解熱鎮痛剤、カフェインから選ばれる少なくとも1種が好ましく、イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、カフェインから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、イブプロフェン、アスピリンから選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、イブプロフェンが特に好ましい。
混合物中、(A)成分の割合は、特に限定されないが、最終的に得られる共粉砕物中の(A)成分の含有量が20〜94質量%程度となる量が好ましい。
(B)成分は賦形剤である。
(B)成分としては、通常、粉末状のものが用いられる。混合物の調製に用いる(B)成分の平均粒子径(共粉砕前の平均粒子径)は、製造しようとする共粉砕物の体積平均粒子径よりも大きければよく、特に限定されないが、通常、15〜100μmの範囲内である。
(B)成分の種類は特に限定されず、造粒粒子、錠剤等の固形製剤の製造に用いられている公知の賦形剤が使用できる。吸水作用があるという点で、セルロース類およびデンプン類から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
セルロース類としては、結晶セルロース、粉末セルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が好ましく挙げられる。セルロース類としては、これらの中でも、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロースが好ましく、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが最も好ましい。
デンプン類としては、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、バレイショデンプン(ポテトスターチ)、コムギデンプン、コメデンプン等のデンプン;ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプン等のデンプン誘導体等が好ましく挙げられる。これらの中でも、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)が好ましい。
上記のなかでも、セルロース類およびデンプン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、セルロース類から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、薬物溶出性の点から低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
混合物中、(B)成分の割合は、(C)水に対して0.5〜19質量倍であることが好ましい。該範囲の下限値以上であると、当該混合物に対して粉砕処理を行う際の(A)成分の粉砕機への付着が抑えられ、粉砕性や共粉砕物の回収率が向上する。他方、上限値以下であると、粉砕処理中に水分が染み出すことによる粉砕機への粉体の付着、回収率の低下を回避することができ、本発明の効果が向上する。
また、混合物中、(B)成分の割合は、(A)成分に対して0.01〜10質量倍であることが好ましく、0.05〜5質量倍であることがより好ましく、0.2〜2質量倍であることがさらに好ましい。
水としては精製水、イオン交換水、蒸留水、超ろ過水等を好適に使用できる。
混合物中、(A)成分と(B)成分と(C)水との合計に対する(C)水の割合は4〜35質量%であることが好ましい。4質量%未満であると、当該混合物に対して粉砕処理を行う際に(A)成分の粉砕機への付着量が多くなり、粉砕性が低下したり、共粉砕物の回収率が90%を下回るおそれがある。他方、35質量%を超えると、粉砕処理中に水分が染み出して粉砕機への粉体の付着量が増大し、回収率が低下する。
本発明においては特に、(B)成分と(C)水とを混合した後に(A)成分を添加することにより前記混合物を調製することが好ましい。これにより、一括混合する場合や(A)成分と(C)水とを先に混合する場合に比べて、得られる共粉砕物の体積平均粒子径が小さくなり、(A)成分の溶出性がさらに向上する。
混合は、公知の混合装置、たとえばリボンミキサー、ボーレコンテナミキサー、V型混合機、ダブルコーンミキサー等を用いて実施できる。
共粉砕工程では、前記混合工程で調製した混合物に対して粉砕処理を施す。これにより、(A)成分と(B)成分との共粉砕物が得られる。
粉砕処理に用いられる粉砕機の機種は、特に限定されず、ハンマーミル、サンプルミル、ディスクミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機;ジェット粉砕機等の乾式微粉砕機、シリンダー粉砕機、ローラー粉砕機等が挙げられる。これらのなかでも衝撃式粉砕機が好ましく、ピンミルがより好ましい。
粉砕処理は、得られる共粉砕物の体積平均粒子径が、0.01〜35μmとなるように行うことが好ましい。該体積平均粒子径は、0.1〜30μmがより好ましく、1〜25μmがさらに好ましい。体積平均粒子径が35μm以下であることにより(A)成分の表面積が充分に大きくなって、溶出性が向上する。また、共粉砕物を構成する粒子の粒子径が均一になりやすい。他方、体積平均粒子径が0.01μm以上であることにより、溶出性が向上する。また、共粉砕物を造粒粒子とする際の造粒性が向上する。
なお、本発明において「体積平均粒子径」は、レーザー回折法により測定される値であり、たとえば、ベックマン・コールター社製のLS13 320(製品名)等を用いて測定できる。
共粉砕物の体積平均粒子径は、粉砕処理条件(粉砕時間、処理量、粉砕機回転数等)により調節できる。
上記のようにして得られた共粉砕物は、微細化された(A)成分および(B)成分を含有しており、(C)水も残留している。粉砕処理直後の共粉砕物の水分は、(C)水の添加量や粉砕条件によって異なるが、2〜30質量%程度である。
粉砕処理後、さらに、乾燥処理を行ってもよい。
また、通常、粉体の粉砕を連続して行うと、粉体との摩擦により粉砕機の表面温度が上昇する。該熱による粉体の固着を防止するため、実生産においては、粉砕を断続的に行って粉砕機を冷却する必要があったが、本発明においては、粉砕時に(C)水の蒸発潜熱によって粉砕機および粉体の表面温度の上昇が抑制されるため、長時間の連続運転が可能である。
さらに、本発明の共粉砕物の製造方法により得られる共粉砕物は、(C)水を添加せずに製造されたものに比べて、造粒粒子としたときや、該造粒粒子をさらに錠剤としたときの(A)成分の溶出性に優れており、造粒粒子製造用または錠剤製造用として有用である。
本発明の造粒粒子は、前記本発明の共粉砕物の製造方法により得られる共粉砕物を含有するものである。
造粒粒子中、前記共粉砕物の含有量は、共粉砕物中の(A)成分の割合等によっても異なるが、造粒粒子の総質量に対し、30〜90質量%が好ましく、40〜75質量%がより好ましい。
「水溶性高分子化合物」とは、20℃の水に対する溶解度が1mg/mL以上である高分子化合物を示す。該溶解度は、10mg/mL以上が好ましい。
「水膨潤性高分子化合物」とは、水を加えると膨潤し、澄明、混濁または懸濁性の粘稠な液性を示す高分子化合物を意味する。
(D)成分としては、たとえば、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。
(1)2質量%水溶液の20℃における粘度が50mPa・s以下である。
(2)けん化度が96mol%以下である。
該粘度は、1〜50mPa・sがより好ましく、1〜25mPa・sがさらに好ましく、1.2〜10mPa・sが特に好ましく、1.5〜5.0mPa・sが最も好ましい。
(1)および/または(2)を満たす(D)成分として具体的には、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。
なお、ここでいう「水溶液」とは、高分子化合物が水に溶解した液、高分子化合物が水を吸収して膨潤した均一な液などを包含するものとする。
また、「粘度」は、B型粘度計、ブルックスフィールド型粘度計(LVDVII+PRO(BROOK FIELD社製:単一円筒形回転粘度計)、スピンドルNo.ULA、回転数:60rpm、測定時間:4分間、測定温度:20℃)により測定される値である。
造粒粒子中、(D)成分の含有量は、造粒粒子の総質量に対し、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。該範囲の下限値以上であることにより当該造粒粒子からの(A)成分の溶出性向上効果に優れる。他方、上限値以下であることにより造粒性が向上する。
任意成分としては、たとえば薬物が挙げられる。
薬物の種類は特に限定されず、水難溶性薬物であってもよく、水溶性薬物であってもよいが、(A)成分と同様に、水難溶性薬物が好ましい。該水難溶性薬物としては(A)成分と同様のものが挙げられ、具体的には、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブフェキサマック、アスピリン、アセトアミノフェン、カフェイン、ジクロフェナック、アルクロフェナック、フェンクロフェナック、エトドラック、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メフェナミック、メクロフェナミック、ピロキシカムなどの薬物を挙げることができる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、カフェインから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
水溶性賦形剤としては、たとえば、糖類などが挙げられる。糖類としては、単糖類(キシロース等)、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖など)、乳糖、マルトース、スクロース、トレハロース、異性化乳糖、その他各種オリゴ糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール,マンニトール等)、水飴、異性化糖類、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が好ましく挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
たとえば当該造粒粒子を用いて錠剤を製造する場合、その体積平均粒子径は、100〜1000μmであることが好ましく、150〜700μmであることがより好ましい。
乾式造粒法による造粒は、たとえば乾式圧縮法により実施でき、具体的には、前記共粉砕物およびその他の任意成分を混合した後、該混合物を圧縮して造粒する方法が挙げられる。
湿式造粒法による造粒は、たとえば、前記共粉砕物に、前記(D)成分を含有する水性液を添加しながら造粒する方法により実施できる。このとき、必要に応じて、他の任意成分(薬物、水溶性賦形剤等)を添加してもよい。たとえば粉末状の薬物を前記共粉砕物に添加してもよく、水溶性賦形剤を前記水性液に溶解させてもよい。
湿式造粒法として具体的には、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出し造粒法、転動造粒法、捏和・破砕造粒等が挙げられる。
上記の中でも、湿式造粒法が好ましく、特に、流動層造粒法または攪拌造粒法が好ましい。
流動層造粒法による造粒粒子の製造は、例えば、攪拌型流動造粒装置(たとえば(株)パウレック社製のマルチプレックスやフロンイント産業(株)社製のスパイラフロー)を用いて、前記水性液を噴霧しながら造粒することにより実施できる。
攪拌造粒法による造粒粒子の製造は、例えば、攪拌造粒機(たとえば深江パウテック(株)社製のハイスピードミキサーや(株)ダルトン社製の高速攪拌造粒機)を用いて、前記水性液を噴霧または滴下しながら攪拌錬合した後に、押出し造粒機(たとえば(株)ダルトン社製のドームグラン)を用いて造粒することにより実施できる。
造粒条件は特に限定されないが、(A)成分の融点よりも低い温度で行うことが好ましい。たとえば(A)成分がイブプロフェンの場合、65℃よりも低い温度で造粒することが好ましい。
造粒後、得られた造粒物に対し、体積平均粒子径や粒度分布を整えるための整粒処理(粉砕、篩過等)を行ってもよい。
内服固形製剤の剤型は特に限定されず、粒剤、錠剤、カプセル剤等が挙げられる。これらの中でも、錠剤が好ましい。
本発明の錠剤は、前記本発明の造粒粒子を含有するものである。
本発明の錠剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、前記本発明の造粒粒子以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、特に限定されず、通常、錠剤に配合されている成分を含有させることができる。かかる成分としては、たとえば結合剤、崩壊剤等の賦形剤、滑沢剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料など)等が挙げられる。以下に、各成分の具体例を例示するが、これに限られない。
結合剤:澱粉、アルファー化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリンなど。
崩壊剤:カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど。
滑沢剤:ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステルなど。
その他の賦形剤:乳糖、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース(アビセルなど)、粉糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、L−システインなど。
香料:メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油、など)など。
甘味料:サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロースなど。
酸味料:クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、及びそれらの塩など。
打錠は公知の打錠成型機、例えばリブラ(製品名、菊水製作所製)、L−41型(製品名、畑鐵工所製)などのロータリー式の打錠機等を用いて実施できる。
各実施例および比較例において製造された共粉砕物の体積平均粒子径(共粉砕後の(A)成分粒子および(B)成分粒子の体積平均粒子径)、粉砕機への絶対付着量、共粉砕物の回収率、共粉砕物の含水率はそれぞれ以下の手順により求めた。
体積平均粒子径(μm)は、ベックマン・コールター社製のLS13 320(製品名)を用いて測定した(測定条件:ドライパウダーモジュール、所要時間20秒間)。
共粉砕物の含水率(質量%)は、モイスチャーバランスMOC−120H(島津社製)を用い、60℃、20分の条件下測定を行った。
粉砕機への絶対付着量(g)は、供給量から収量をさし引いた値を求めた。
共粉砕物の回収率は、供給量に対する収量の割合として求めた。
回転粘度計:LVDVII+PRO(BROOK FIELD社製:単一円筒形回転粘度計)
測定容器:トールビーカー500mL。
測定液量:約450mL。
測定温度:20℃。
スピンドルNo.:ULA。
回転数:60rpm。
測定時間:4分。
(実施例1)
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製、LH−31グレード、平均粒子径約40μm)500gをとり、リボンミキサー(5L,(株)徳寿工作所)で混合しながら水(日局精製水)308.8gを添加した後、イブプロフェン(BASF社製、平均粒子径50μm)1250gを添加した。以上の操作を2度繰り返して行い、得られた混合物をピンミル((株)パウレック社製)で約30分間共粉砕した。
得られた共粉砕物1の体積平均粒子径および含水率、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表1に併記した。
なお、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびイブプロフェンの平均粒子径(μm)は、ベックマン・コールター社製のLS13 320(製品名)(測定条件:ドライパウダーモジュール、所要時間20秒間)により測定した体積平均粒子径である(以下同様)。
水の添加量を表1に示す量(g)に変更した以外は実施例1と同様にして共粉砕を行った。
得られた共粉砕物2、3の体積平均粒子径および含水率、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表1に併記した。
イブプロフェン(BASF社製、平均粒子径50μm)1250gを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製、LH−31グレード、平均粒子径約40μm)500gとともにリボンミキサー(5L,(株)徳寿工作所)で混合しながら水(日局精製水)308.8gを添加した。以上の操作を2度繰り返して行い、得られた混合物をピンミル((株)パウレック社製)で約30分間共粉砕した。
得られた共粉砕物4の体積平均粒子径および含水率、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表1に併記した。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製、LH−31グレード、平均粒径約40μm)500gをとり、リボンミキサー(5L,(株)徳寿工作所)で混合しながらイブプロフェン(BASF社製、平均粒径50μm)1250gを添加した。以上の操作を2度繰り返して行い、得られた混合物をピンミル((株)パウレック社製)で約30分間共粉砕することにより共粉砕物Aを得た。
得られた共粉砕物Aの体積平均粒子径および含水率、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表2に併記した。
水の添加量を表2に示す量(g)に変更した以外は実施例1と同様にして共粉砕を行った。
得られた共粉砕物B、Cの体積平均粒子径および含水率、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表2に併記した。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製、LH−31グレード、平均粒径約40μm)12.9kgをとり、リボンミキサー(150L,丸山鉄工所)で混合しながら水(日局精製水)8.0kgを添加した後、イブプロフェン(BASF社製、平均粒径50μm)32.1kgを添加した。得られた混合物をピンミル((株)パウレック社製)で約3時間共粉砕した。
粉砕機を3時間連続運転した後のピンミル回転部の表面温度を、GRAPHTEC社製midi LOGGER GL200A−UM−801を用いて測定したところ、26.8℃(運転前の表面温度は25.0〜25.5℃)だった。
得られた共粉砕物5の体積平均粒子径、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表3に併記した。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製、LH−31グレード、平均粒径約40μm)4.0kgおよびイブプロフェン(BASF社製、平均粒径50μm)10.0kgをとり、リボンミキサー(50L,(株)徳寿工作所)で混合した。得られた混合物をピンミル((株)パウレック社製)で約1時間共粉砕した。
粉砕機を1時間連続運転した後のピンミル回転部の表面温度を、GRAPHTEC社製midi LOGGER GL200A−UM−801を用いて測定したところ、65.0℃以上(運転前の表面温度は実施例5と同様)だった。この温度においてイブプロフェンが融解し、ピンに固着してしまったため、粉砕を中止した。
得られた共粉砕物Dの体積平均粒子径、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表4に併記した。
一方、比較例4では、共粉砕を1時間行った後でピンミル回転部の表面温度が65.0℃以上まで達し、粉砕機への絶対付着量が多く、長時間連続運転に適合しない結果を得た。
(実施例6)
表5に示した組成の造粒粒子6を以下の手順で製造した。
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製「HPC−SSLグレード」、2質量%水溶液の20℃における粘度:2.5mPa・s)141.2gを水に溶解して6質量%水溶液を調製し、そこにD−マンニトール(ロケットジャパン社製、PEARLITOL 50C)113.0gを溶解させて造粒用水性液を調製した。
実施例1で得た共粉砕物1の1285.0gと、アセトアミノフェン(岩城製薬社製、RKF−20グレード)の917.9gとを、スパイラフロー(フロイント産業(株)社製)を用いて、前記造粒用水性液を噴霧しながら造粒した。造粒用水性液の噴霧終了後、排気温度が43℃になるまで乾燥して、平均粒子径200μmの造粒粒子6を得た。
得られた造粒粒子6を174.0mg取り、製造直後の薬物溶出性を、日本薬局方に規定される溶出試験の溶出試験液1を用い、パドル法に準じて測定した。その結果、5分でのイブプロフェン溶出量は31.7mgであった。
共粉砕物1の代わりに、実施例4で得た共粉砕物4を用いた以外は実施例6と同様にして、表5に示す組成の造粒粒子7を得た。
得られた造粒粒子7を174.0mg取り、製造直後の薬物溶出性を、日本薬局方に規定される溶出試験の溶出試験液1を用い、パドル法に準じて測定した。その結果、5分でのイブプロフェン溶出量は27.5mgであった。
(実施例8)
表6に示した組成の錠剤8を以下の手順で製造した。
実施例6で得た造粒粒子6の1740.0gに無水カフェイン400.0gを加え、ボーレコンテナミキサー(ボーレ寿工業(株)社製、20L LM−20型)で混合し、更にステアリン酸マグネシウムを加えて混合した。この混合粉体をロータリー式の打錠機LIBRA2(菊水製作所社製)で打錠し(打錠圧500kg)、直径8.5mm、重さ214.4mgの錠剤8を得た。
得られた錠剤8を1錠取り、製造直後の薬物溶出性を、日本薬局方に規定される溶出試験の溶出試験液1を用い、パドル法に準じて測定した。その結果、5分でのイブプロフェン溶出量は25.2mgであった。
造粒粒子6の代わりに、実施例7で得た造粒粒子7を用いた以外は実施例8と同様にして、表6に示す組成の錠剤9を得た。
得られた錠剤9を1錠取り、製造直後の薬物溶出性を、日本薬局方に規定される溶出試験の溶出試験液1を用い、パドル法に準じて測定した。その結果、5分でのイブプロフェン溶出量は20.0mgであった。
(実施例10)
(B)成分である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製、LH−31グレード、平均粒子径約40μm)500gをとり、リボンミキサー(5L,(株)徳寿工作所)で混合しながら水(日局精製水)308.8gを添加した後、(A)成分であるイブプロフェン(BASF社製、平均粒子径50μm)750gとアセトアミノフェン(岩城製薬社製、平均粒子径20μm)500gとを添加した。以上の操作を2度繰り返して行い、得られた混合物をピンミル((株)パウレック社製)で約30分間共粉砕した。
得られた共粉砕物10の体積平均粒子径および含水率、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表7に併記した。
なお、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、イブプロフェン及びアセトアミノフェンの平均粒子径(μm)は、ベックマン・コールター社製のLS13 320(製品名)(測定条件:ドライパウダーモジュール、所要時間20秒間)により測定した体積平均粒子径である(以下同様)。
(A)成分、(B)成分及び水の添加量を表7に示す量(g)に変更した以外は実施例10と同様にして共粉砕を行った。
得られた共粉砕物11〜13の体積平均粒子径および含水率、粉砕機への絶対付着量、回収率をそれぞれ表7に併記した。
また、本発明においては、粉砕時のピンおよび粉体の温度の上昇が抑制されており、長時間の連続運転が可能であった。
また、実施例1と4との対比から、(A)成分と(B)成分との混合物に水を添加して粉砕を行う場合(実施例4)と比べて、(B)成分と水との混合物と(A)成分とを混合して粉砕を行う場合(実施例1)の方が、得られる共粉砕物の体積平均粒子径が5〜10μm程度小さくなることが判った。
さらに、実施例6と7と対比、実施例8と9との対比から、(A)成分と(B)成分との混合物に水を添加して粉砕を行って得られる共粉砕物と比べて、(B)成分と水との混合物と(A)成分とを混合して粉砕を行って得られる共粉砕物の方が、造粒粒子や錠剤としたときの(A)成分の溶出性に優れていることが判った。
Claims (6)
- (A)イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、カフェインから選ばれる少なくとも1種の水難溶性薬物と(B)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロースから選ばれる少なくとも1種の賦形剤との粉砕物を製造する方法であって、
(A)水難溶性薬物と(B)賦形剤と(C)水との合計に対する(C)水の割合が4〜35質量%である混合物に粉砕処理を施す工程を有することを特徴とする、粉砕物の製造方法。 - (B)賦形剤と(C)水とを混合した後に(A)水難溶性薬物を添加することにより前記混合物を調製する、請求項1に記載の粉砕物の製造方法。
- 前記粉砕物の体積平均粒子径が0.01〜35μmとなるように、前記混合物に粉砕処理を施す、請求項1または2に記載の粉砕物の製造方法。
- 前記混合物中の(B)賦形剤の割合が(A)水難溶性薬物に対して0.2〜2質量倍である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉砕物の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉砕物の製造方法により粉砕物を製造する工程と、得られた粉砕物を用いて造粒する工程とを有する、造粒粒子の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉砕物の製造方法により粉砕物を製造する工程と、得られた粉砕物を用いて造粒する工程と、得られた造粒粒子を用いて打錠する工程とを有する、錠剤の製造方法。
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