以下、本発明の実施形態に係る介護用動作支援装置について説明する。図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施形態に係る介護用動作支援装置において、起立部、アーム及び規制部材を示す斜視図、図2は、本発明の実施形態に係る介護用動作支援装置をベッドに取り付けた状態を示す斜視図、図3は、本発明の実施形態に係る介護用動作支援装置において、アーム基部の一部断面図、図4(a),図4(b)は、アームを基部に取り付けた状態を示す図、図5は、本発明の実施形態に係る介護用動作支援装置において、起立部に対するアームの取り付け方法を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る介護用動作支援装置1は、ベッド2の長手方向に延びる棒状の支持部材21,22の側面に一端部が夫々支持部材21,22に係止される第1ベース部材11及び第2ベース部材12、第1ベース部材11及び第2ベース部材12の基端部が脱着可能に取り付けられて第1ベース部材11と第2ベース部材12とを連結するメインフレーム140及びメインフレーム140から起立する棒状の起立部141を有する基部14、起立部141に支持されたアーム16、起立部141に取り付けられアーム16の回転を規制する回転止め部材17、ベッド2の支持部材21,22と第1ベース部材11及び第2ベース部材12とをその係止位置を調整可能に係止する位置決め部材13、第2ベース部材12の側端部に脱着可能に取り付けられ床面から支持されることにより起立部141のベッド側方への傾動を防止する傾動防止部材15、及びアーム16の先端の吊設用部材162に取り付けられベッド利用者の身体の少なくとも一部を吊り上げる電動リフト3等の介護部材により構成されている。本実施形態においては、ベッド2は、背上げ機能及び脚上げ機能を有している。
図3及び図4に示すように、アーム基部160は、全体として筺状をなし、側面を構成する2枚の第1部材1601、上面及び上部側面の一部を構成する第2部材1602、下面及び下部側面の一部を構成する第3部材1603、並びに被締結部材1606により構成されており、その内部に、垂直軸の回りに回転可能な軸1600が保持されている。即ち、軸1600は、その中央部が拡径して設けられており、この拡径された部分が、板状の2枚の第1部材1601間に配置されている。軸1600の上部及び下部は、夫々、第2部材1602及び第3部材1603に設けられた孔に挿通されて上方及び下方に延出し、第2部材1602及び第3部材1603が第1部材1601に固定されることにより、拡径して設けられた軸1600の中央部が2枚の第1部材1601、第2部材1602及び第3部材1603間に保持されている。また、軸1600と第3部材1603の下面との間には、4枚の皿バネ1604が軸1600と同軸的に配置され、更に、軸1600の下部にナット1605が締結されることにより、皿バネ1604が軸1600と第3部材1603の下面との間に保持されている。このように構成されたアーム基部160は、起立部141の開口141aに挿入され、ボルト孔141bを介してボルト142が締結されることにより、起立部141に取り付けられている。なお、本実施形態においては、アーム基部160の側面のうち、対向する1対の側面が2枚の第1部材1601により構成されているが、アーム基部160の側面は、例えば3枚又は4枚の板状部材により構成されていてもよい。又は、アーム基部160の側面は、例えば板材に垂直曲げ加工が施された2枚の部材により構成されていてもよい。
アーム16は、円筒状のパイプが折曲されて構成されたアーム本体161、及び電動リフト3等の介護部材が懸架される吊設用部材162により構成されている。図4に示すように、アーム本体161の一端部は開口し、この開口端に、アーム基部160の軸部1600が挿入されて固定される。よって、アーム本体161は、鉛直の回転軸まわりに回転可能に構成されている。そして、吊設用部材162は、アーム本体161の他端部に設けられている。
本実施形態においては、アーム基部160は、アーム本体161を垂直軸まわりに回転可能に支持する軸1600と第3部材1603の下面との間に皿バネ1604が設けられていることにより、起立部141に取り付けられる枠体部分とアーム本体161を回転可能に支持する軸1600との間には、皿バネ1604による摩擦力が印加されるように構成されている。よって、ベッド利用者が吊り上げられた状態において、アーム16に回転操作力が印加されない場合には、皿バネ1604による適度の摩擦力によりアーム16の回転を抑制でき、また、アーム16を回転させる場合には、摩擦力に抗する操作力を印加するだけでアーム16を回転させることができるため、アーム16の操作性も高い。なお、図4に示すように、アーム本体161は、アーム基部160と別体的に設けられているが、アーム本体161は、アーム基部160と一体的に設けられていてもよい。また、本実施形態においては、皿バネ1604の枚数は、4枚に限らず、3枚以下又は5枚以上設けられてもよい。そして、弾性部材としては、皿バネに限らず、コイルバネであってもよい。
図4及び図5(a)に示すように、アーム基部160の上部枠体となる第2部材1602には、起立部141の上端縁に設けられた切り欠きに係止される突起160aが設けられており、突起160aを起立部141の上部に係止させることにより、ボルト142を締結する際の位置合わせが容易となる。アーム基部160が起立部141にボルト142により固定された後、起立部141には、アーム基部160の固定位置よりも上方に、回転止め部材17がボルト143により締結され、アーム基部160は、回転止め部材17と起立部141との間に保持される。この回転止め部材17は、例えば断面L字の柱状部材であり、起立部141の断面矩形の角部に設置される。
本実施形態においては、軸1600の側面には、上部の第2部材1602に近接した位置に、2本のボス1600aが設けられている。このボス1600aは、高さ方向の位置が上述の回転止め部材17と同程度の位置に設けられており、アーム本体161が回動して断面L字の回転止め部材17の端部のいずれかに当接することにより、アーム本体161の回転が規制される。そして、回転止め部材17の断面形状を調節することにより、アーム本体161の回転角度を調節することができる。そして、回転止め部材17によりアーム本体161の回転範囲が規制されていることにより、ベッド利用者が移動される範囲が適正となり、ベッド利用者の安全性を確保できる。例えば、ベッド利用者が壁等に衝突することを防止できる。また、ベッド利用者を吊り上げた状態で移動させる際には、回転モーメントの作用により、ベッドの安定性が低下しやすいが、回転止め部材17が設けられてアーム本体161の回転範囲が適正化されていることにより、ベッドの安定性を低下させることがない範囲で、ベッド利用者を移動させることができる。なお、アーム基部160がアーム本体161と一体的に設けられている場合においては、ボス1600aは、アーム本体161の基端側の側面に設けられている。
本実施形態におけるアーム本体161は、図5(b)に示すように、その先端部が、平面視で、ベッド2の左右方向からベッドの左右方向の中心付近まで回動可能に構成されている。このアーム本体161の回転角度は、例えばベッド利用者を移動させる空間の広さに応じて調節される。本実施形態においては、ベッド利用者をベッドの側部寄りの広い空間で移動させるために、起立部141が、基部14の左右方向中央からずれた位置に配置されているため、アーム本体161は、その回転角度が例えば105度であり、90度よりも大きくなるように回転止め部材17の断面形状が設定されている。
図6に示すように、第1ベース部材11(及び第2ベース部材12)(以下、ベース部材の説明における括弧内は、第2ベース部材12における符号を示す)は、夫々ベッド2の長手方向に延びる棒状のベース部材第1部材110(120)、ベッド2の長手方向に延びるベース部材第2部材113(123)、及びメインフレーム固定部112(122)により構成されており、ベース部材第1部材110(120)の一端側の側面に、ベース部材第2部材113(123)が例えばボルト等により脱着可能に取り付けられており、ベース部材第1部材110(120)の他端側には、メインフレーム固定部112(122)が上方へ延びるように立設されている。
ベース部材第1部材110(120)は、断面矩形の棒状の部材である。ベース部材第1部材110(120)の側面には、ベース部材第2部材113(123)を固定するためのボルト孔(図示せず)が設けられており、ボルト孔に対応してベース部材第1部材110(120)の内側には、例えばウェルドナット等のボルト用締結部材が固定されている。また、ベース部材第1部材110(120)の側面には、ベース部材第2部材113(123)が隣接して配置されない位置に、後述する位置決め部材13の突起を係合する長円又は楕円形状の3個の孔111(121)が例えば50mmピッチで設けられている。
ベース部材第2部材113(123)は、長片状の板材がその両短辺及び一長辺にて折曲されて構成されたものである。即ち、ベース部材第2部材113(123)は、その両短辺が基部に対して相互に逆方向に折曲されており、基部は、ベース部材第1部材110(120)の側面に面して配置され、両短辺のうち、メインフレーム固定部112(122)側の折曲部113d(123d)は、ベース部材第1部材110(120)の側面に設けられた第1係止孔110a(120a)又は第2係止孔110b(120b)に係止されている。また、ベース部材第2部材113(123)の長辺側の折曲部は、メインフレーム固定部112(122)に対して逆側の端部が幅広となるように、基部の上方から側方に延出して設けられており、幅広に設けられた部分はその端部にて下方に折曲されて係止部113a(123a)が構成されている。即ち、この係止部113a(123a)をベッドの支持部材21(22)に上方から引っ掛けることにより、第1ベース部材11(第2ベース部材12)がベッドの支持部材21(22)に係止される。ベース部材第2部材113(123)の基部には、2個のボルト孔113b,113c(123b,123c)が設けられており、このボルト孔113b,113c(123b,123c)のいずれかが上記ベース部材第1部材110(120)の側面に設けられたボルト孔の位置にあわせて配置され、ボルトが締結されることにより、ベース部材第1部材110(120)に対する固定位置を調節可能に構成されている。この際、折曲部113d(123d)がベース部材第1部材110(120)に係止される孔の位置も選択される。このボルト孔113b,113c(123b,123c)のピッチは、例えば315mmである。
メインフレーム固定部112(122)は、例えばベース部材第1部材110が延びる方向に対して垂直に立設された断面矩形の棒状部材である。メインフレーム固定部112(122)の側面には、基部14を例えばボルトで締結固定するための雌ネジを備えたボスが2箇所に設けられている。
図7は、本実施形態の介護用動作支援装置において、ベース部材及び基部を示す斜視図である。図7に示すように、基部14は、枠状のメインフレーム140と、メインフレーム140から起立する柱状の起立部141により構成されている。
メインフレーム140は、例えば断面矩形の金属製の部材が折曲されて成形されたものであり、その幅は、ベッドの支持部材間の距離と同程度である。枠状のメインフレーム140の側面には、夫々、上記したメインフレーム固定部112,122に設けられたボス112a,112b,122a,122bの位置にて第1ベース部材11及び第2ベース部材12にボルト締結されるボルト孔140a乃至140dが設けられている。本実施形態においては、メインフレーム140の側面には、ボルト孔140a乃至140dに近接した位置に、傘状の係止構造が設けられており、この部分にて、ボス112a,112b,122a,122bに懸架され、これにより、第1ベース部材11及び第2ベース部材12に対する位置決めが容易に構成されている。また、この傘状の係止構造により、基部14が第1ベース部材11及び第2ベース部材12に仮固定され、基部14を例えば手で支持していなくとも、基部14が転倒することはない。よって、基部14を第1ベース部材11及び第2ベース部材12にボルト締結する作業性が向上する。
本実施形態においては、図7に示すように、柱状の起立部141は、メインフレーム140の左右方向中央からずれた位置に配置されており、これにより、ベッド利用者をベッドの側部寄りの広い空間で移動させることができる。前記メインフレーム140は、180度反転させることにより、起立部141を第1ベース部材11及び第2ベース部材12のいずれのベース部材側にでも寄せて取り付けることが可能に構成されている。よって、起立部141にアーム16を取り付けた際に、アーム16の回動に伴って、起立部141は、寄せて配置した側のベッド側方へと傾動しやすくなる。これを防止するために、本実施形態においては、基部14は、傾動防止部材15が取り付けられる第2ベース部材12側に起立部141を寄せて、第1ベース部材11及び第2ベース部材12に固定される。起立部141の上部には、開口141aが形成されており、この開口141aに、前記アームの回転機構となるアーム基部160が挿入され、起立部141の側面に設けられたボルト孔141bを介して、ボルトにより固定されている。
図8に示すように、位置決め部材13は、例えば直径が10mm程度の3本の円柱状部材により構成されており、長尺の第1部材130に第2部材131及び第3部材132が例えば溶接により接合されている。第1部材130は、両端部から夫々35mm程度の位置で夫々折曲されており、この折曲部分が支持部材21,22のフレーム部分21a,21bの夫々外方に位置するように、第1部材130が支持部材21,22上に懸架される。第2部材131及び第3部材132は、夫々第1部材130の折曲部分から例えば45mm程度の位置にて第1部材130に接合されており、支持部材21,22の端部にベッドの安定化等を目的として設置された樹脂等からなるベース部材21b,22bの内側に延びるように配置される。第2部材131,第3部材132は、夫々、第1部材130への接合部分から106mm程度の位置にて再度折曲されており、これにより、ベース部材21b,22bの側面及び端面を保持するように、構成されている。よって、図8(a)に示すように、位置決め部材13が上方から支持部材21,22に設置されることにより、第1部材130の一端部及び第2部材131により、支持部材21端部のベース部材21bが保持され、第1部材130の他端部及び第3部材132により、支持部材22端部のベース部材22bが保持される。
図8に示すように、本実施形態の位置決め部材13は、第2部材131,第3部材132が、夫々、端部から15mm程度の位置で折曲され、この部分において、ベース部材21b,22bよりも外方に突出している。この突起131a,132aは、夫々、ベース部材第1部材110,120の側面に設けられた長円又は楕円形状の孔111,121のいずれかに係合することにより、支持部材21,22と第1ベース部材11及び第2ベース部材12とが、位置決め部材13により連結される。この際、突起131a,132aを係合する第1ベース部材11及び第2ベース部材12の孔111,121の位置は、例えばベッド2のサイズ等により最適な孔が選択される。例えば、電動リフト3を支持するアーム16を、ベッドの頭部側に取り付ける場合と足部側に取り付ける場合とでは、基部14の最適な固定位置が異なる場合がある。しかし、本実施形態のように、位置決め部材13による各ベース部材11,12の支持部材21,22への連結位置は、突起131a,132aの係合位置を変更するだけで、容易に調節できる。
傾動防止部材15は、通常、アーム16の回動範囲が大きい側のベース部材に固定される。例えば電動リフトにおいては、ベッド利用者を吊り上げてベッド2から移動させる場合に、アーム16をベッド2の上方からベッド外へと回動させる。このとき、起立部14には、起立部141の下端を支点として、ベッド2を側方に傾動させるモーメントが印加される。しかし、傾動防止部材15をアーム15の回動範囲が大きい側のベース部材に固定することにより、ベッド2の傾動を防止することができる。
次に、本実施形態に係る介護用動作支援装置のベッドへの取り付け方法について、図9を参照して説明する。先ず、電動リフト3を固定するアーム16の回転軸をベッド2の頭部側及び足部側のいずれの側に設置するかを決定する。例えばベッドの頭部側又は足部側に壁が存在する場合等においては、壁が存在しない側に基部14が配置されるように介護用動作支援装置1の取り付け位置を決める。なお、壁側に基部14が配置されるように介護用動作支援装置1を取り付ける場合もある。本実施形態においては、図9に示すように、基部14をベッド2の足部側に設置する場合について説明するが、基部14をベッド2の頭部側に設置する場合についても同様である。
次に、位置決め部材13を支持部材21,22の端部に懸架し、その第1部材130の両端部と第2部材131及び第3部材132とにより、支持部材21,22端部のベース部材21b,22bを保持させる。
この状態で、第1ベース部材11及び第2ベース部材12をベッド2の支持部材に夫々近接させる。このとき、基部14を取り付ける位置に応じて、第1ベース部材11及び第2ベース部材の向きを調節し、基部14を取り付ける側にメインフレーム固定部112,122を向ける。また、第1ベース部材11及び第2ベース部材を支持部材の左右のいずれのフレームに取り付けるかを、ベース部材第2部材113,123の端部に設けられた係止部113a,123aの向きにより決定する。そして、第1ベース部材11及び第2ベース部材12の係止部113a,123aを夫々支持部材21,22に上方から引っ掛けて係止する。このとき、例えばベッド2の左右のいずれかの側方に壁が存在する場合等においては、第1ベース部材11及び第2ベース部材12の長さによっては、ベース部材を支持部材21,22に取り付けることが困難な場合がある。このときは、ベース部材第1部材110,120に対するベース部材第2部材113,123のボルトの締結位置を変更して、ベース部材の長さを調節することにより、取り付け作業を容易にすることができる。
次に、係止部113a,123aを支持部材21,22に係止した状態で、第1ベース部材11及び第2ベース部材12の位置を夫々調節し、位置決め部材13の突起131a,132aを係合させる孔111,121の位置を調節する。このとき、孔111,121の選択は、ベッド2のサイズ等により最適な孔を選択する。例えば、介護用動作支援装置をベッドに設置した際に、基部14とベッドのヘッドボード又はフットボードとの間に余剰な隙間ができないように孔111,121を選択する。本実施形態においては、図8に示すように、突起131a,132aは、最も係止部113a,123a寄りの孔111a,121aに係合させる。
次に、第1ベース部材11及び第2ベース部材12の夫々メインフレーム固定部112,122に基部14を固定する。柱状の起立部141が、メインフレーム140の左右方向中央からずれた位置に配置されている場合においては、基部14は、ベッド利用者をベッドから移動させる側の側方に起立部141を寄せて、第1ベース部材11及び第2ベース部材12に固定する。これにより、ベッド利用者の移動軌跡は、ベッドの側部寄りとなり、ベッド利用者をベッドの側部寄りの広い空間で移動させることができる。固定の際には、メインフレーム140の側面のボルト孔140a乃至140dに近接した位置に設けられた傘状の係止構造を利用し、この部分にて、基部14を第1ベース部材11及び第2ベース部材12のボス112a,112b,122a,122bに懸架する。これにより、基部14を第1ベース部材11及び第2ベース部材12に対して固定する位置決めを容易に行うことができる。基部14の固定位置が決定したら、メインフレーム140の内側からボルトを締結することにより、基部14を第1ベース部材11及び第2ベース部材12に固定する。この際、また、傘状の係止構造により、基部14が第1ベース部材11及び第2ベース部材12に仮固定されるため、基部14を例えば手で支持していなくとも、基部14が転倒することはなく、基部14を第1ベース部材11及び第2ベース部材12にボルト締結する作業を容易に行うことができる。
次に、第1ベース部材11又は第2ベース部材12の側端部に傾動防止部材15を例えばボルトにより締結する。この際、例えば、ベッド2の左右のいずれかの側方に壁が存在する場合等においては、壁が存在しない側にアーム16を回動させる必要があり、アーム16の回動に伴って、起立部141は、ベッド側方に傾動しやすく、また、壁側には傾動防止部材15を設置する空間もないことから、傾動防止部材15は、壁が存在しない側のベース部材に固定する。本実施形態においては、図9に示すように、傾動防止部材15は、第2ベース部材12の側端部に固定する。
基部14が第1ベース部材11及び第2ベース部材に固定されたら、起立部141の上部に固定されたアーム基部160の軸部をアーム本体161の開口端に挿入し、例えばボルトによりアーム16を軸部に締結固定する。そして、図1(b)に示すように、起立部141上部の角部に断面L字状の回転止め部材17をボルト143により取り付ける。最後に、アーム16の先端に設けられた吊設用部材162に電動リフト3を吊り下げる。
このように、本実施形態の介護用動作支援装置1は、位置決め部材13により係止位置を調節しながら第1ベース部材11及び第2ベース部材12を支持部材21,22に係止して第1ベース部材11及び第2ベース部材12の相互間に支持部材21,22を挟持し、第1ベース部材11及び第2ベース部材12の基端部相互間を基部14により連結し、アーム16を起立部141に支持させるだけで、例えばベッド2を持ち上げることなく、容易にベッド2に設置することができ、また、ベッド2の長手方向に延びるベース部材11,12をベッドの支持部材21,22に係止させることにより、安定的にベッド2に設置することができる。
次に、本実施形態の介護用動作支援装置の動作について説明する。本実施形態においては、アーム16の先端の吊設用部材162には、介護部材として、電動リフト3が吊り下げられており、電動リフト3によりベッド利用者を吊り上げて、車椅子等に移乗させる場合について説明する。先ず、ベッド上に使用者が横たわった状態で、ベッド2の各ボトムを駆動させることにより、ベッド2を背上げ及び脚上げさせ、ベッド利用者の姿勢を移乗させやすい姿勢にする。次に、ベッド利用者の下にスリングシート等を敷き込み、スリングシート等によりベッド利用者を包み込む。次に、電動リフト3を下降させ、そのフック部分にスリングシートの端部を引っ掛けて、スリングシート等を電動リフト3に吊り下げる。
次に電動リフト3を上昇させ、ベッド利用者をスリングシートごと持ち上げる。ベッド利用者の体がベッド上から離れる際に、アーム16の先端部には、ベッド利用者の体重が印加され、アーム16を支持する基部14には、その下端部を支点として、水平軸まわりの回転モーメントが作用する。しかし、本実施形態の介護用動作支援装置1は、基部14の側部は、第1及び第2ベース部材11,12に固定されており、第1及び第2ベース部材11,12は、夫々、係止部113a,123aにて、ベッド2の支持部材21,22に係止されているので、ベッド利用者の体重による回転モーメントを打ち消す方向の反力を、安定的に接地された支持部材21,22並びに第1及び第2ベース部材により、分散させて作用させることができる。よって、起立部141の転倒の虞はない。
本実施形態においては、アーム基部160の回転軸の側面には、ボス1600aが設けられており、起立部141の上方には、ボス1600aが当接することにより、アーム本体161の回転範囲を規制する断面L字の回転止め部材17が固定されている。即ち、ボス1600aが回転止め部材17に接触することにより、アーム16はそれ以上回転しなくなる。よって、電動リフト3によりベッド利用者を吊り上げた状態で、意図しない衝撃、例えば介助者がアーム本体161に衝突する等により、アーム本体161がベッド利用者を移動させる方向の逆方向に回転することを防止することができる。例えば、ベッド利用者を移動させる方向の逆側に壁等が存在しても、ベッド利用者が吊り上げられた状態でこれに衝突することを防止できる。また、ベッド利用者が吊り上げられた状態で移動される場合に、アーム16が予期しない範囲で回転してベッドに作用する回転モーメントが変化し、ベッドの安定性が低下することも防止できる。
また、本実施形態においては、アーム基部160は、アーム本体161を垂直軸まわりに回転可能に支持する軸1600と第3部材1603の下面との間には、皿バネ1604による摩擦力が印加されるため、ベッド利用者が吊り上げられた状態において、アーム16に回転操作力が印加されない場合には、皿バネ1604による適度の摩擦力によってもアーム16の回転を抑制できる。
ベッド利用者を吊り上げた状態で、アーム16は、例えば介助者の手動により回転される。この際、摩擦力に抗する操作力を印加するだけでアーム16を回転させることができ、高い操作性でアーム16を回転させることができる。また、介助者が回転操作力を解除すれば、軸1600と第3部材1603の下面との間には、皿バネ1604による摩擦力が印加され、アーム16の回転は即座に停止する。これにより、意図しないアーム16の回転を確実に抑制できる。
本実施形態においては、起立部141が、メインフレーム140の左右方向中央よりも、ベッド利用者を移動させる側の側部よりにずれた位置に配置されているため、起立部141が、メインフレーム140の左右方向中央に配置されている場合に比して、ベッド利用者の移動軌跡は、ベッドの側部寄りとなる。これにより、ベッド利用者をベッドの側部寄りの広い空間で移動させることができる。
基部14の下端に作用する水平軸まわりの回転モーメントの軸は、平面視で、アーム本体161が延びる方向に対して垂直である。即ち、基部14の下端に作用する回転モーメントは、アーム16の回動に伴い、ベッドの支持部材21,22並びに第1及び第2ベース部材11,12が延びる方向(ベッド2の前後方向)からベッド2の左右方向へと作用方向が変化していく。よって、アーム16の回動に伴い、起立部141は、ベッド側方へと傾動しやすくなる。しかし、本実施形態においては、ベッド利用者を移動させる側の第2ベース部材12には、傾動防止部材15が取り付けられているため、ベッド側方への起立部141の傾動を防止できる。
ベッド利用者が車椅子等の上方に位置するまでアーム16が回転されたら、電動リフト3を下降させて、ベッド利用者を車椅子等に移乗させる。この際、例えば介助者がアーム本体161に衝突する等の意図しない衝撃がアーム本体161に印加されても、軸1600の側面に設けられたボス1600aが断面L字状の回転止め部材17に接触することにより、アーム16はそれ以上回転しなくなる。よって、ベッド利用者が吊り上げられた状態で例えば壁等に衝突することが防止され、アーム16が予期しない範囲で回転してベッドに作用する回転モーメントが変化し、ベッドの安定性が低下することも防止できる。また、皿バネ1604による摩擦力により、アーム16が逆方向に回転することも防止できる。
以上のように、本実施形態の介護用動作支援装置1は、ベッドに安定的に接地されているため、ベッド利用者の動作を安全に支援することができる。
なお、本実施形態においては、アーム本体161の軸1600の側面に設けられたボス1600aが断面L字状の回転止め部材17に当接することにより、アーム本体161の回転を規制した場合を説明したが、例えば図10に示すように、ワイヤ状の部材145の一端部を起立部141に取り付けると共に、ワイヤ状部材145の他端部を軸1600の側面(図10においては、ボス1600b)又はアーム本体161の側面に取り付けることにより、ワイヤ状部材145の長さの範囲でアーム本体161を回転可能に構成してもよい。この場合においては、ワイヤ状部材145の長さを変更することにより、アーム本体161の回転角度を調節することができる。
また、本実施形態の介護用動作支援装置1は、背上げ機能等を有しないベッド2に設置した場合においても、同様の効果を得ることができる。また、本実施形態においては、基部14をベッド2の足部側に設置した場合を説明したが、ベッド2の足部側に基部14の設置空間を確保できない場合には、基部14をベッド2の頭部側に設置してもよい。
更に、本実施形態においては、介護用動作支援装置として電動リフトを使用した場合について述べたが、本発明は、ベッド利用者の動作を上方から支援する装置を設置する場合に、広く適用することができる。例えば、介護部材としてアームの先端に吊り輪を設けることにより、ベッド利用者の立ち上がりを支援することができる。
図11はベース部材の変形例を示す斜視図である。図11に示す変形例においては、第1ベース部材18及び第2ベース部材19は、ベッドの長手方向に延びる部分180,190が、夫々1部材により構成されており、各一端部側の側面には、例えば金属製の板材が折曲されて構成された係止部材183,193が、例えば溶接により固定されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。この図11に示すベース部材は、ベース部材の長さの調節が不要な場合に好適に使用される。
図12は、ベース部材への基部の取付部を示す図であり、図12(a),図12(b)は第1実施形態における斜視図及び断面図、図12(c),図12(d)は、変形例における斜視図及び断面図である。第1実施形態においては、図12(a)に示すように、メインフレーム140には、第1ベース部材11(第2ベース部材12)をボルト締結するボルト孔140a,140b(140c,140d)に近接した位置に、傘状の係止構造140A,140B(140C,140D、図示せず)が設けられており、この部分にて、メインフレーム140がベース部材11(12)のボス112a,112b(122a,122b)に懸架されることにより、取り付けの際の位置決めを容易にし、ボルト締結する際の作業性を向上させている。これに対して、図12(c),図12(d)に示す変形例においては、左右方向に夫々2箇所ずつ設けられたボルト孔140a,140b(140c,140d)のうち、上側のボルト孔140a(140c)の上方に、基部14がベース部材11に係止される係止構造140fが設けられている。即ち、この係止構造140fは、例えば金属製の板材が2箇所で折曲されて断面コの字状に成形された部材により構成されたものであり、メインフレーム140の側面に固定されて、相互に対向する面間を繋ぐ1面がメインフレーム140の側面から水平方向外方に延び、更に、相互に対向する2面は下方へと延びるように設けられており、メインフレーム140の下方及び側方に開口している。そして、この開口部分からメインフレーム固定部111(121)112の上部が挿入されて、係止構造140fの部分にて、基部14がベース部材11(12)に係止される。
また、第1実施形態においては、例えば、図12(b)に示すように、メインフレーム140の側面には、ボルトを挿通させる筒状部材140eが基部14の左右方向に延びるように設けられており、基部14の左右方向内側(図12(b)における左側)の一端部から筒状部材140eにボルトが挿通される。この筒状部材140eの他端部は、メインフレーム140から突出した先端部の位置が、傘状の係止構造140A,140Bの内側にある。そして、基部14が第1ベース部材11(第2ベース部材12)に設けられたボス112a,112b(122a,122b)に懸架されたときに、図12(b)に部分Aで示すように、ボルト孔140a,140b(及び140c,140d)の夫々他端部がボス112a,112b(及び122a,122b)の先端に当接又は近接した状態になる。この状態で、ボス112a,112b(122a,122b)の先端にボルトが締結される。これに対して、本変形例においては、図12(d)に部分Bで示すように、筒状部材140gの他端部は、その外径が先端側へと縮径してテーパ状に設けられており、第1ベース部材11(第2ベース部材12)のボス112e,112f(第1ベース部材側のみ図示している)も、この筒状部材のテーパ形状にあわせて端部側へと内面が拡径した形状で設けられている。即ち、本変形例においては、筒状部材140gの端部がボス112e(112b等)に嵌合する形状で設けられていることにより、第1ベース部材11(第2ベース部材12)に対する基部14の取り付けの際に、位置決めが容易となる。この変形例においては、筒状部材140gの一端部には、ボルト孔140aよりも内径が若干縮径したザグリ形状が設けられており、これにより、ボルトによる部材間の締結が強固となる。
本変形例においても、基部14が第1ベース部材11(第2ベース部材12)に係止される係止構造140fが設けられ、更に、筒状部材140gの端部がボス112a(112b等)に嵌合する形状で設けられているため、第1実施形態と同様に、ボルトが締結される前においても、基部14が第1ベース部材11(第2ベース部材12)に仮固定され、基部14を例えば手で支持していなくとも、基部14が転倒することはなく、基部14を第1ベース部材11(第2ベース部材12)にボルト締結する作業性が向上する。