JP5824766B2 - 繊維分離方法 - Google Patents
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Description
少なくとも2種の繊維を含む混紡繊維から特定の繊維を分離する繊維分離方法であって、
前記特定の繊維を溶解させるイオン液体に前記混紡繊維を投入し、当該混紡繊維に含まれる前記特定の繊維を前記イオン液体に抽出する抽出工程を実行することにある。
前記抽出工程を終えたイオン液体から固形分を分離した後、前記特定の繊維が溶解しない溶媒を添加することにより、前記特定の繊維の成分を析出させる析出工程をさらに実行することが好ましい。
前記析出工程を終えたイオン液体から析出物を分離した後、成分調整を行って再生し、イオン液体として再利用することが好ましい。
前記混紡繊維は、天然繊維及び合成繊維を含むことが好ましい。
前記特定の繊維は、セルロース繊維であり、
前記イオン液体は、3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライド、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム クロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム クロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム クロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム クロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセテートからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
前記特定の繊維は、ポリエステル繊維であり、
前記イオン液体は、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラクロロアルミネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム クロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセテートからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
前記特定の繊維は、ナイロン繊維であり、
前記イオン液体は、N−メチル−N−プロピルピロリジウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、及びN,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
常温以上の融点を有するイオン液体([C4mpy]+Cl−:3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライド、融点:95℃)30.34gをビーカーに秤量し、ポリエステル/綿=65/35の混紡糸からなる平織の白色布3.013gをイオン液体中に投入した。次いで、イオン液体をホットスターラーで120℃、1時間、加熱し、その加熱の間、6回程度ビーカーを振盪した。加熱処理終了後、白色布をピンセットで取り出し、水100mlで洗浄した。取り出した白色布を105℃に設定した乾燥機にて1時間乾燥後、白色布の重量を測定した。乾燥後の白色布の重量は、1.928gであり、投入前の白色布に対して、約64重量%となった。この結果は、白色布に使用されている混紡糸が、ポリエステル65重量%、綿35重量%で構成されていることから、セルロース繊維で構成されている綿が、イオン液体に抽出され、ポリエステルのみが固形分として分離されたことを示唆している。
FT−IR装置を用いて、イオン液体処理前の白色布、及びイオン液体処理後の白色布中の綿成分の有無について分析を行った。図3は、本発明に係る繊維分離方法を用いて分離した繊維のフーリエ変換型赤外分光分析(FT−IR)の結果を示すグラフである。FT−IRは、パーキンエルマー社製Spectrum GX + Thermo(Spectra−Tech Foundationシリーズ)を用いて、1回反射式ATRの測定モードにより、積算回数16回で分析を行った。図3の表に示されているが、赤外吸収波長である1100cm−1付近のピーク(対称グリコールC−O伸縮)、1243cm−1付近のピーク(面内モード芳香族環エステル)及び1716cm−1付近のピーク(C=O伸縮)は、ポリエステル繊維の吸収スペクトルを示しており、3340cm−1付近のピーク(−OH伸縮)は、綿の吸収スペクトルを示している。その結果、図3のグラフ及び表に示されるように、イオン液体処理前の白色布(実線)は、ポリエステル繊維及び綿の何れの吸収ピークも有しているのに対して、イオン液体処理後の白色布(破線)は、ポリエステル繊維の吸収スペクトルのみしか有しておらず、綿の吸収スペクトルは確認されなかった。つまり、3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライドを用いたイオン液体処理により、平織の白色布から、綿の成分であるセルロースが抽出され、ポリエステル繊維のみが固形分として分離されたことが確認された。
熱重量分析(TGA)装置を用い、昇温加熱過程におけるイオン液体処理前の白色布、及びイオン液体処理後の白色布の重量変化を窒素雰囲気下で測定した。図4は、本発明に係る繊維分離方法を用いて分離した繊維の熱重量分析(TGA)の結果を示すグラフである。TGA分析は、ティー・エイ・インスツルメント社製TGA2950を用いて、試料重量12mg、昇温速度20℃/minの条件で分析を行った。測定開始前の重量を1.0として、昇温過程での繊維の重量残存率を測定した。その結果、図4のグラフに示されるように、イオン液体処理前の白色布(実線)は、処理後(破線)の白色布よりも熱分解の進行が早く、約320℃以上(セルロース)及び450℃以上(ポリエステル)の2か所の温度域で熱分解が開始していることが明らかであり、このことは、2種類の繊維が含まれていることを示唆している。これに対して、イオン液体処理後の白色布は、約450℃以上の1か所の温度域から熱分解が開始していることから、1種類の繊維のみで構成されていることが示された。従って、TGA分析からも、イオン液体で処理した白色布は、ポリエステルのみにより構成されていることが確認された。
図5は、本発明で使用したイオン液体を繰り返し再生し、これを用いてポリエステル繊維を回収した回収率の変化を示すグラフである。白色布からポリエステル及び綿の分離回収試験に利用したイオン液体([C4mpy]+Cl-)を、150℃、3時間加熱撹拌処理を行って再生した。この再生イオン液体を用いて、平織の白色布からポリエステル及び綿の分離回収試験に再度供した。イオン液体の再生を1回から10回まで行い、其々の再生回数のイオン液体を用いて、上記繊維分離方法の試験を行い、回収されたポリエステルの繊維総重量に対する重量%をグラフに示した。その結果、再生回数にかかわらず、回収されたポリエステルは、処理前の白色布の重量に対して約64重量%となった。これは、イオン液体処理前の白色布に含まれているポリエステル量と略等しく、繰り返し再生させたイオン液体を用いても、綿の成分であるセルロースの抽出に何ら問題が起こらないことが確認された。これにより、イオン液体は、再生することにより繰り返し再利用することができることから、本発明に係る繊維分離方法は、リサイクルに掛るコストを抑えることができる。
2 糸条
3 天然繊維
4 合成繊維
Claims (3)
- セルロース繊維とポリエステル繊維とを含む混紡繊維から特定の繊維を分離する繊維分離方法であって、
前記セルロース繊維を溶解させる3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライドに前記混紡繊維を投入し、前記3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライドの融点より上〜200℃で加熱処理を行って、当該混紡繊維に含まれる前記セルロース繊維を前記3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライドに抽出する抽出工程を実行する繊維分離方法。 - 前記抽出工程を終えた3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライドから固形分を分離した後、前記セルロース繊維が溶解しない溶媒を添加することにより、前記セルロース繊維の成分を析出させる析出工程をさらに実行する請求項1に記載の繊維分離方法。
- 前記析出工程を終えた3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライドから析出物を分離した後、成分調整を行って再生し、3−メチル−N−ブチルピリジニウム クロライドとして再利用する請求項2に記載の繊維分離方法。
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