本願は、2010年6月24日に出願され、全体として、および全ての目的で、参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第61/358012号(名称「siRNA COMPOUNDS TO RHOA AND USE THEREOF」)の利益を主張する。
配列表
本願は、221−PCT1_ST25_21−June−2011.txtと題する配列表を包含し、2011年6月21に作成された、38kbのサイズの前記ASCIIコピーは、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
本願全体にわたり様々な特許および出版物が引用される。これらの文献の開示は、その全体が、本発明が関連する最先端技術をより完全に説明するために、参照により本願に組み込まれる。
本願は、Rasホモログ遺伝子ファミリーメンバーA(RhoA)の発現の下方制御のための二本鎖ヌクレオチド化合物、それを含む薬学的組成物、およびその使用方法に関する。
本発明の譲受人に譲渡されたPCT特許出願WO2008/050329号および第WO2009/044392号は、化学修飾したsiRNA化合物の調製において有用な、ある特定のRhoAオリゴヌクレオチドおよび構造的モチーフを開示する。
RhoAの発現を下方制御するための核酸分子、それを含む組成物およびキット、ならびにその使用方法が、本明細書において提供される。この組成物、方法、およびキットは、RhoAをコードするヌクレオチド配列(mRNA配列など)、例えば配列番号2に例示されるヒトRhoAタンパク質のmRNAコード配列(配列番号1)に結合する核酸分子(例えば、低分子干渉核酸(siNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA))の使用を含み得る。ある特定の好ましい実施形態において、本明細書において開示される組成物、方法、およびキットは、RhoAの発現を阻害する。種々の実施形態において、核酸分子は、RhoA発現を下方制御する、非修飾または化学修飾したdsRNA化合物またはsiRNAまたはshRNAからなる群から選択される。現在好ましい実施形態において、阻害剤は、RhoA発現を下方制御する、合成の化学修飾した二本鎖RNA(dsRNA)化合物である。化学修飾した核酸分子および組成物は、非修飾分子と比較した場合、血清安定性の改善、細胞取り込みの改善、オフターゲット活性の減少、免疫原性の低下、エンドソーム放出の改善、標的組織または細胞への特異的送達の改善、およびノックダウン活性の向上のうちの少なくとも1つを含む有利な特性を示す。
さらに、本明細書において、必要性のある対象において、疾患または状態の発生率または重症度を治療または防止するための方法であって、疾患あるいはそれに関連する状態および/または症状が、中枢神経系(CNS)の疾患、傷害、状態、または病態など、RhoA遺伝子の発現に関連する方法も開示する。いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物である。好ましい実施形態において、対象はヒト対象である。
特定の実施形態では、RhoAを標的とする化学修飾したdsRNA化合物、それを含む組成物およびキット、ならびにCNSの状態または病態、とりわけニューロパシー性疼痛(例えば、アロディニア)、脊髄傷害(SCI)、および緑内障の治療におけるその使用方法が、本明細書において提供される。治療される他の状態には、RhoA発現がニューロン生存、ニューロン成長、神経再生、または他の細胞機能にとって有害であるあらゆる状態が含まれる。したがって、多発性硬化症、脳卒中、外傷性脳傷害、末梢性ニューロパシー、および急性および慢性の神経変性疾患を含むがこれらに限定されない、ニューロンの再生またはニューロンもしくは神経系の保護を必要とする状態は、本発明の化合物で治療される。
上述の疾患、状態、傷害、および障害を治療する際に有用な、安定かつ活性を有するdsRNA化合物およびそれを含む組成物は、大きな治療的価値を有するであろう。
一態様において、(a)核酸分子は、センス鎖と相補的アンチセンス鎖とを含む二重鎖であり、(b)核酸分子の各鎖は、独立して、18〜49個のヌクレオチドの長さであり、(c)アンチセンス鎖の18〜49ヌクレオチドの配列は、哺乳動物のRhoAをコードするmRNAの連続的配列(例えば、配列番号1)に相補的であり、(d)センス鎖およびアンチセンス鎖は、表I、II、III、またはIVのいずれかに記載の配列対を含む、核酸分子(例えば、dsRNA分子)が提供される。
ある特定の実施形態において、ヒトRhoAをコードするmRNAの連続的配列(配列番号1に示す)に相補的なアンチセンス鎖の配列は、配列番号1の290〜350、または350〜414、または414〜507、または531〜551、または557〜627、または634〜651、または627〜698、または698〜757、または919〜973、または973〜990、または1134〜1346、または1346〜1369、または1804〜1926の範囲のヌクレオチド配列に相補的な配列を含む。
ある特定の実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖は、表IIIに示すアンチセンス配列(配列番号149〜162)のうちのいずれか1つに相当する配列を含む。いくつかの実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、表IIIに示す配列対から選択される。いくつかの実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、RHOA_31(配列番号135および149)、RHOA_33(配列番号136および150)、RHOA_37(配列番号137および151)、RHOA_38(配列番号138および152)、RHOA_43(配列番号139および153)、RHOA_52(配列番号140および154)、RHOA_56(配列番号141および155)、RHOA_57(配列番号142および156)、RHOA_58(配列番号143および157)、RHOA_68(配列番号144および158)、RHOA_69(配列番号145および159)、RHOA_70(配列番号146および160)、RHOA_73(配列番号147および161)、ならびにRHOA_76(配列番号148および162)に示す配列対から選択される。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_31(配列番号135および149)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンスおよびセンス鎖は、RHOA_33(配列番号136および150)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_37(配列番号137および151)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_38(配列番号138および152)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_43(配列番号139および153)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_52(配列番号140および154)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_56(配列番号141および155)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_57(配列番号142および156)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_58(配列番号143および157)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_68(配列番号144および158)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_69(配列番号145および159)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_70(配列番号146および160)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_73(配列番号147および161)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_76(配列番号148および162)に示す配列対を含む。
いくつかの好ましい実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、RHOA_58(配列番号143および157)に示す配列対を含む。いくつかの好ましい実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、RHOA_70(配列番号146および160)に示す配列対を含む。
ある特定の実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖は、表IVに示すアンチセンス配列(配列番号167〜170)のうちのいずれか1つに相当する配列を含む。いくつかの実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、表IVに示す配列対から選択され、RHOA_23(配列番号163および167)、RHOA_24(配列番号164および168)、RHOA_26(配列番号165および169)、またはRHOA_29(配列番号166および170)に示される配列対から選択される。
ある特定の実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖は、表IIに示すアンチセンス配列のうちのいずれか1つに相当する配列を含む。ある特定の好ましい実施形態において、アンチセンス鎖および鎖は、表IIに示す配列対から選択される。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子は、RHOA_32(配列番号67および101)、RHOA_34(配列番号68および102)、RHOA_35(配列番号69および103)、RHOA_36(配列番号70および104)、RHOA_39(配列番号71および105)、RHOA_40(配列番号72および106)、RHOA_41(配列番号73および107)、RHOA_42(配列番号74および108)、RHOA_44(配列番号75および109)、RHOA_45(配列番号76および110)、RHOA_46(配列番号77および111)、RHOA_47(配列番号78および112)、RHOA_48(配列番号79および113)、RHOA_48u(配列番号80および114)、RHOA_49(配列番号81および115)、RHOA_50(配列番号82および116)、RHOA_51(配列番号83および117)、RHOA_53(配列番号84および118)、RHOA_54(配列番号85および119)、RHOA_55(配列番号86および120)、RHOA_59(配列番号87および121)、RHOA_60(配列番号88および122)、RHOA_61(配列番号89および123)、RHOA_61u(配列番号90および124)、RHOA_62(配列番号91および125)、RHOA_63(配列番号92および126)、RHOA_64(配列番号93および127)、RHOA_65(配列番号94および128)、RHOA_66(配列番号95および129)、RHOA_67(配列番号96および130)、RHOA_71(配列番号97および131)、RHOA_72(配列番号98および132)、RHOA_74(配列番号99および133)、ならびにRHOA_75(配列番号100および134)に示される配列対から選択される、アンチセンスおよびセンス鎖を含む。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_32(配列番号67および101)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_34(配列番号68および102)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_35(配列番号69および103)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_36(配列番号70および104)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_39(配列番号71および105)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_40(配列番号72および106)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_41(配列番号73および107)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_42(配列番号74および108)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_44(配列番号75および109)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_45(配列番号76および110)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_46(配列番号77および111)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_47(配列番号78および112)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_48(配列番号79および113)、RHOA_48u(配列番号80および114)、RHOA_49(配列番号81および115)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_50(配列番号82および116)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_51(配列番号83および117)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_53(配列番号84および118)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_54(配列番号85および119)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_55(配列番号86および120)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_59(配列番号87および121)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_60(配列番号88および122)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_61(配列番号89および123)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_61u(配列番号90および124)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_62(配列番号91および125)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_63(配列番号92および126)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_64(配列番号93および127)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_65(配列番号94および128)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_66(配列番号95および129)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_67(配列番号96および130)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_71(配列番号97および131)、RHOA_72(配列番号98および132)、RHOA_74(配列番号99および133)に示す配列対を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_75(配列番号100および134)に示す配列対を含む。
いくつかの好ましい実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_48(配列番号79および113)、RHOA_48u(配列番号80および114)、RHOA_50(配列番号82および116)、RHOA_61(配列番号89および123)、RHOA_61u(配列番号90および124)、またはRHOA_75(配列番号100および134)に示す配列対を含む。
いくつかの好ましい実施形態において、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_48(配列番号79および113)に示す配列対を含む。いくつかの好ましい実施形態において、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_48u(配列番号80および114)に示す配列対を含む。いくつかの好ましい実施形態において、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、RHOA_50(配列番号82および116)に示す配列対を含む。
本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)の種々の実施形態において、アンチセンス鎖は、18〜49個のヌクレオチドの長さ(例えば、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、または49個のヌクレオチドの長さ)、または18〜35個のヌクレオチドの長さ、または18〜30個のヌクレオチドの長さ、または18〜25個のヌクレオチドの長さ、または18〜23個のヌクレオチドの長さ、または19〜21個のヌクレオチドの長さ、または25〜30個のヌクレオチドの長さ、または26〜28個のヌクレオチドの長さであってよい。本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のいくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、19個のヌクレオチドの長さである。同様に、本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のセンス鎖は、本明細書において、18〜49個のヌクレオチドの長さ(例えば、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、または49個のヌクレオチドの長さ)、または18〜35個のヌクレオチドの長さ、または18〜30個のヌクレオチドの長さ、または18〜25個のヌクレオチドの長さ、または18〜23個のヌクレオチドの長さ、または19〜21個のヌクレオチドの長さ、または25〜30個のヌクレオチドの長さ、または26〜28個のヌクレオチドの長さであってよい。本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のいくつかの実施形態において、センス鎖は、19個のヌクレオチドの長さである。本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のいくつかの実施形態において、アンチセンス鎖およびセンス鎖のそれぞれは、19個のヌクレオチドの長さである。本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)の二重鎖領域は、18〜49個のヌクレオチドの長さ(例えば、約18個、約19個、約20個、約21個、約22個、約23個、約24個、約25個、約26個、約27個、約28個、約29個、約30個、約31個、約32個、約33個、約34個、約35個、約36個、約37個、約38個、約39個、約40個、約41個、約42個、約43個、約44個、約45個、約46個、約47個、約48個、または約49個のヌクレオチドの長さ)、18〜35個のヌクレオチドの長さ、または18〜30個のヌクレオチドの長さ、または約18〜25個のヌクレオチドの長さ、または18〜25個のヌクレオチドの長さ、または18〜23個のヌクレオチドの長さ、または18〜21個のヌクレオチドの長さ、または25〜30個のヌクレオチドの長さ、または25〜28個のヌクレオチドの長さであってよい。本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)の種々の実施形態において、二重鎖領域は、19個のヌクレオチドの長さである。
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される核酸(例えば、dsRNA核酸分子)のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、別個のポリヌクレオチド鎖である。いくつかの実施形態において、別個のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、水素結合、例えばワトソン・クリック塩基対合を介して、二重鎖としても知られる二本鎖構造を形成する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のヌクレオチド対は、非ワトソン・クリック塩基対を形成する。いくつかの実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、互いに共有結合した2つの別個の鎖である。他の実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、センス領域およびアンチセンス領域の両領域を有する単一のポリヌクレオチド鎖の一部であり、いくつかの好ましい実施形態において、ポリヌクレオチド鎖は、ヘアピン構造を有する。
ある特定の実施形態において、核酸分子は、オーバーハングに関して対称的であり、両端に平滑末端を有する、二本鎖核酸(dsRNA)分子である。他の実施形態において、核酸分子は、オーバーハングに関して対称的であり、dsRNA分子の両端にヌクレオチド、または非ヌクレオチド、またはヌクレオチドと非ヌクレオチドの組み合わせのオーバーハングを有する、dsRNA分子である。ある特定の好ましい実施形態において、核酸分子は、オーバーハングに関して非対称的であり、分子の一端に平滑末端を有し、分子の他端にオーバーハングを有する、dsRNA分子である。いくつかの実施形態において、非対称dsRNA分子は、センス鎖に生じる二重鎖の片側に3’−オーバーハングを有し、分子の反対側に平滑末端を有する。いくつかの実施形態において、非対称dsRNA分子は、センス鎖に生じる二重鎖の片側に5’−オーバーハングを有し、分子の反対側に平滑末端を有する。他の実施形態において、非対称dsNA分子は、アンチセンス鎖に生じる二重鎖の片側に3’−オーバーハングを有し、分子の反対側に平滑末端を有する。いくつかの実施形態において、非対称dsRNA分子は、アンチセンス鎖に生じる二重鎖の片側に5’−オーバーハングを有し、分子の反対側に平滑末端を有する。いくつかの実施形態において、オーバーハングはヌクレオチドオーバーハングであり、他の実施形態において、オーバーハングは非ヌクレオチドオーバーハングである。いくつかの実施形態において、オーバーハングは5’オーバーハングであり、代替的実施形態において、オーバーハングは3’オーバーハングである。
いくつかの実施形態において、核酸分子は、一端にループ構造を有し、他端に平滑末端を有する、ヘアピン構造(1つのポリヌクレオチドにセンス鎖およびアンチセンス鎖を有する)を有する。いくつかの実施形態において、核酸分子は、一端にループ構造を有し、他端にオーバーハングを有する、ヘアピン構造を有し、ある特定の実施形態において、オーバーハングは3’−オーバーハングであり、ある特定の実施形態において、オーバーハングは5’−オーバーハングであり、ある特定の実施形態において、オーバーハングはセンス鎖にあり、ある特定の実施形態において、オーバーハングはアンチセンス鎖にある。
本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、1つまたは複数の本明細書に記載するような修飾または修飾ヌクレオチドを含んでもよい。例えば、本明細書において提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、修飾糖を有する修飾ヌクレオチド、修飾核酸塩基を有する修飾ヌクレオチド、または修飾リン酸基を有する修飾ヌクレオチドを含んでもよい。同様に、本明細書において提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、修飾リン酸ジエステル骨格を含んでもよく、および/または修飾末端リン酸基を含んでもよい。
本明細書において提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、修飾糖部分、例えば2’アルコキシ修飾糖部分を含む、1つまたは複数のヌクレオチドを有してもよい。いくつかの好ましい実施形態において、修飾糖は2’−O−メチルを含む。
本明細書において提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、例えば本明細書に記載するような1つまたは複数の修飾核酸塩基を有してもよく、これはキサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチルならびにアデニンおよびグアニンの他のアルキル誘導体、2−プロピルならびにアデニンおよびグアニンの他のアルキル誘導体、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシン、およびチミン、5−ウラシル(擬似ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシル、ならびに他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニン、ならびにアシクロヌクレオチドからなる群から選択することができる。
本明細書において提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、例えば本明細書に記載するような、リン酸ジエステル骨格に対する1つまたは複数の修飾を有してもよい。いくつかの好ましい実施形態において、リン酸ジエステル結合は、リン酸ジエステル結合をホスホロチオエート、3’−(または−5’)デオキシ−3’−(または−5’)チオ−ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート、3’−(または−5’)デオキシホスフィネート、ボラノホスフェート、3’−(または−5’)デオキシ−3’−(または5’−)アミノホスホルアミデート、水素ホスホネート、ボラノホスフェートエステル、ホスホラミデート、アルキルまたはアリールホスホネート、およびホスホトリエステルで置換することによって修飾される。
種々の実施形態において、提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、非修飾アンチセンス鎖および1つまたは複数の修飾を有するセンス鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態において、提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、非修飾センス鎖および1つまたは複数の修飾を有するアンチセンス鎖を含む。好ましい実施形態において、提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、センス鎖およびアンチセンス鎖の両鎖に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む。
本明細書において提供される核酸分子(例えば、dsRNA分子)は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の5’末端にリン酸基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるdsRNA分子は、アンチセンス鎖の5’末端にリン酸基を含む。
いくつかの実施形態において、RhoAの発現を下方制御するのに有用な二本鎖核酸化合物が提供される。いくつかの実施形態において、構造(A1):
(A1) 5’ (N)x‐Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y‐z" 5’ (センス鎖)
を有する二本鎖RNA化合物が本明細書において提供され、式中、それぞれのNおよびN’は、修飾されていなくても修飾されていてもよいリボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれの(N)xおよび(N’)yは、それぞれの連続するNまたはN’が、共有結合によって次のNまたはN’と接合するオリゴヌクレオチドであり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチド、1〜5個の連続する非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせを含み、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’末端で共有結合したキャッピング部分であり、
それぞれのxおよびyは、独立して、18〜40の整数であり、
(N’)yの配列は(N)xの配列に相補的であり、(N)xは、表IIIまたは表IVに記載されるアンチセンス配列を含む。
表IIIに提示するdsRNA化合物を生成する際に有用なセンス配列およびアンチセンス配列は、RHOA_31(配列番号135および149)、RHOA_33(配列番号136および150)、RHOA_37(配列番号137および151)、RHOA_38(配列番号138および152)、RHOA_43(配列番号139および153)、RHOA_52(配列番号140および154)、RHOA_56(配列番号141および155)、RHOA_57(配列番号142および156)、RHOA_58(配列番号143および157)、RHOA_68(配列番号144および158)、RHOA_69(配列番号145および159)、RHOA_70(配列番号146および160)、RHOA_73(配列番号147および161)、ならびにRHOA_76(配列番号148および162)である。表IVに提示するdsRNA化合物を生成する際に有用なセンス配列およびアンチセンス配列は、RHOA_23(配列番号163および167)、RHOA_24(配列番号164および168)、RHOA_26(配列番号165および169)、またはRHOA_29(配列番号166および170)に示される。
いくつかの実施形態において、連続するNおよび/またはN’それぞれを接合する共有結合はリン酸ジエステル結合である。
いくつかの実施形態において、x=yであり、それぞれのxおよびyは、19、20、21、22、または23である。好ましい実施形態において、x=y=19である。
本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のいくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子はsiRNA、siNA、またはmiRNAである。
いくつかの実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、RHOA_58(配列番号143および157)に示される配列対を含む。いくつかの実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、RHOA_70(配列番号146および160)に示される配列対を含む。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、アンチセンス鎖の1位(5’末端)にDNA部分または標的に対するミスマッチを含む。かかる二重鎖構造を本明細書において説明する。一実施形態によると、下に示す構造(A2)を有する二本鎖siRNA化合物が提供され、
(A2) 5’ N1−(N)x−Z 3’(アンチセンス鎖)
3’ Z’−N2−(N’)y‐z" 5’(センス鎖)
式中、それぞれのN1、N2、N、およびN’は、独立して、非修飾もしくは修飾ヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれの(N)xおよび(N’)yはオリゴヌクレオチドであり、それぞれの連続するNまたはN’は、共有結合によって隣接するNまたはN’と接合され、
それぞれのxおよびyは、独立して、17〜39の整数であり、
N2は、(N’)yと共有結合し、
N1は、(N)xと共有結合し、標的mRNA(配列番号1)と一致しないか、または標的mRNAに相補的なDNA部分であり、
N1は、天然または修飾された、ウリジン、デオキシリボウリジン、リボチミジン、デオキシリボチミジン、アデノシン、またはデオキシアデノシン、脱塩基リボース部分、および脱塩基デオキシリボース部分からなる群から選択される部分であり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、N2−(N’)yの5’末端で共有結合したキャッピング部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチド、1〜5個の連続する非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
(N’)yの配列は(N)xの配列に相補的であり、(N)xの配列は、表Iに記載されるアンチセンス配列を含む。
種々の実施形態において、N1−(N)xの配列は、表IIに記載されるアンチセンス配列を含む。いくつかの実施形態において、dsRNA化合物を生成する際に有用なN2−(N’)yおよびN1−(N)xは、表IIに提示され、RHOA_32(配列番号67および101)、RHOA_34(配列番号68および102)、RHOA_35(配列番号69および103)、RHOA_36(配列番号70および104)、RHOA_39(配列番号71および105)、RHOA_40(配列番号72および106)、RHOA_41(配列番号73および107)、RHOA_42(配列番号74および108)、RHOA_44(配列番号75および109)、RHOA_45(配列番号76および110)、RHOA_46(配列番号77および111)、RHOA_47(配列番号78および112)、RHOA_48(配列番号79および113)、RHOA_48u(配列番号80および114)、RHOA_49(配列番号81および115)、RHOA_50(配列番号82および116)、RHOA_51(配列番号83および117)、RHOA_53(配列番号84および118)、RHOA_54(配列番号85および119)、RHOA_55(配列番号86および120)、RHOA_59(配列番号87および121)、RHOA_60(配列番号88および122)、RHOA_61(配列番号89および123)、RHOA_61u(配列番号90および124)、RHOA_62(配列番号91および125)、RHOA_63(配列番号92および126)、RHOA_64(配列番号93および127)、RHOA_65(配列番号94および128)、RHOA_66(配列番号95および129)、RHOA_67(配列番号96および130)、RHOA_71(配列番号97および131)、RHOA_72(配列番号98および132)、RHOA_74(配列番号99および133)、ならびにRHOA_75(配列番号100および134)に示される。
ある特定の実施形態において、本明細書において開示される核酸分子(例えばdsRNA分子)の(N)xは、表Iに示すアンチセンス配列のうちの1つに対応する配列を含む。特定の好ましい実施形態において、(N)xおよび(N’)yは、表Iに示す配列対から選択される。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸分子は、RHOA_32−1(配列番号3および35)、RHOA_34−1(配列番号4および36)、RHOA_35−1(配列番号5および37)、RHOA_36−1(配列番号6および38)、RHOA_39−1(配列番号7および39)、RHOA_40−1(配列番号8および40)、RHOA_41−1(配列番号9および41)、RHOA_42−1(配列番号10および42)、RHOA_44−1(配列番号11および43)、RHOA_45−1(配列番号12および44)、RHOA_46−1(配列番号13および45)、RHOA_47−1(配列番号14および46)、RHOA_48−1(配列番号15および47)、RHOA_49−1(配列番号16および48)、RHOA_50−1(配列番号17および49)、RHOA_51−1(配列番号18および50)、RHOA_53−1(配列番号19および51)、RHOA_54−1(配列番号20および52)、RHOA_55−1(配列番号21および53)、RHOA_59−1(配列番号22および54)、RHOA_60−1(配列番号23および55)、RHOA_61−1(配列番号24および56)、RHOA_62−1(配列番号25および57)、RHOA_63−1(配列番号26および58)、RHOA_64−1(配列番号27および59)、RHOA_65−1(配列番号28および60)、RHOA_66−1(配列番号29および61)、RHOA_67−1(配列番号30および62)、RHOA_71−1(配列番号31および63)、RHOA_72−1(配列番号32および64)、RHOA_74−1(配列番号33および65)、ならびにRHOA_75−1(配列番号34および66)に示される配列対から選択される(N)xおよび(N’)yを含む。
いくつかの実施形態において、(N’)yの配列は、(N)xの配列に完全に相補的である。種々の実施形態において、N2−(N’)yの配列は、N1−(N)xの配列に相補的である。いくつかの実施形態において、(N)xは、標的mRNA中の約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに完全に相補的なアンチセンスを含む。他の実施形態において、(N)xは、配列番号1に示す標的mRNA中の約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンスを含む。
いくつかの実施形態において、N1およびN2は、ワトソン・クリック塩基対を形成する。他の実施形態において、N1およびN2は、非ワトソン・クリック塩基対を形成する。いくつかの実施形態において、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドとの間で塩基対が形成される。
いくつかの実施形態において、x=y=18、x=y=19、またはx=y=20である。好ましい実施形態において、x=y=18である。N1−(N)xにおいてx=18である場合、N1は1位を指し、2位〜19位は、(N)18に含まれる。N2−(N’)yにおいてy=18である場合、N2は19位を指し、1位〜18位は、(N’)18に含まれる。
いくつかの実施形態において、N1は、(N)xに共有結合し、標的mRNAと一致しない。種々の実施形態において、N1は、(N)xに共有結合し、標的mRNAに相補的なDNA部分である。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1位のウリジンは、天然または修飾された、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、デオキシウリジン(dU)、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択されるN1で置換されている。種々の実施形態において、N1は、天然または修飾された、アデノシン、デオキシアデノシン、またはデオキシウリジンから選択される。例えばいくつかの実施形態において、1位のシチジンは、アデニンまたはウリジンに置き換えられ、1位のグアノシンは、アデニンまたはウリジンに置き換えられ、あるいはアデニンがウリジンに置き換えられる。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1位(N1)のグアノシンは、天然または修飾された、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンで置換されている。種々の実施形態において、N1は、天然または修飾された、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、またはデオキシウリジンから選択される。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1位(N1)のシチジンは、天然または修飾された、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンで置換されている。種々の実施形態において、N1は、天然または修飾された、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、またはデオキシウリジンから選択される。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1位(N1)のアデノシンは、天然または修飾された、デオキシアデノシン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンで置換されている。
いくつかの実施形態において、N1およびN2は、天然または修飾された、ウリジンまたはデオキシウリジンとアデノシンまたはデオキシアデノシンとの間で塩基対を形成する。他の実施形態において、N1およびN2は、天然または修飾された、デオキシウリジンとアデノシンとの間で塩基対を形成する。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、siRNA、siNA、またはmiRNAである。本明細書において提供される二本鎖核酸分子は、「二重鎖」とも称される。
構造A2のある特定の好ましい実施形態において、x=y=18である。いくつかの実施形態において、x=y=18であり、(N)xは、表Iに示すアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態において、N1は、天然ウリジンおよび修飾ウリジンから選択される。いくつかの実施形態において、N1は天然ウリジンである。いくつかの実施形態において、N1−(N)xは、表IIに示すアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態において、x=y=19またはx=y=20である。いくつかの実施形態において、x=y=19またはx=y=20であり、(N)xは、表Iに示すアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態において、dsRNA化合物を生成する際に有用な好ましいセンス配列およびアンチセンス配列は、表IIに記載する配列対から選択される:RHOA_48(配列番号79および113)、RHOA_48u(配列番号80および114)、RHOA_50(配列番号82および116)、RHOA_61(配列番号89および123)、RHOA_61u(配列番号90および124)、ならびにRHOA_75(配列番号100および134)。
構造(A2)のいくつかの実施形態において、N1は、2’OMe糖修飾ウリジンまたは2’OMe糖修飾アデノシンである。構造(A2)の特定の実施形態において、N2は、2’OMe糖修飾リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。
構造(A1)および/または構造(A2)のいくつかの実施形態において、各Nは、非修飾リボヌクレオチドからなる。構造(A1)および/または構造(A2)のいくつかの実施形態において、各N’は、非修飾ヌクレオチドからなる。好ましい実施形態において、Nおよび/またはN’のうちの少なくとも1つは、化学修飾ヌクレオチドまたは非従来的部分を含む。いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、脱塩基リボース部分、および脱塩基デオキシリボース部分から選択される。いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、好ましくはL−DNA部分である。いくつかの実施形態において、NまたはN’のうちの少なくとも1つは、2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。
構造(A1)および/または構造(A2)のいくつかの実施形態において、(N’)yの配列は、(N)xの配列に完全に相補的である。構造(A1)および/または構造(A2)の他の実施形態において、(N’)yの配列は、(N)xの配列に実質的に相補的である。
構造(A1)および/または構造(A2)のいくつかの実施形態において、(N)xは、標的mRNA中の約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに完全に相補的なアンチセンス配列を含む。構造A1および/または構造A2の他の実施形態において、(N)xは、標的mRNA中の約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンスを含む。構造(A1)および/または構造(A2)のいくつかの実施形態において、dsRNA化合物は、平滑末端であり、例えば、ここでz"、Z、およびZ’のそれぞれが不在である。代替的実施形態において、z"、Z、またはZ’のうちの少なくとも1つが存在する。
種々の実施形態において、ZおよびZ’は、独立して、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む1つまたは複数の共有結合した修飾および/または非修飾ヌクレオチド、あるいは1つまたは複数の非従来的部分、例えば逆位脱塩基デオキシリボース部分もしくは脱塩基リボース部分、またはミラーヌクレオチド、1つまたは複数の非ヌクレオチドC3、C4、もしくはC5部分、アミノ−C6部分などを含む。いくつかの実施形態において、Z’は不在であり、Zは存在し、1つまたは複数の非ヌクレオチドC3部分を含む。いくつかの実施形態において、Zは不在であり、Z’は存在し、1つまたは複数の非ヌクレオチドC3部分を含む。いくつかの実施形態において、それぞれのZおよびZ’は、独立して、1つまたは複数の非ヌクレオチドC3部分あるいは1つまたは複数のアミノ−C6部分を含む。いくつかの実施形態では、z"が存在し、ミラーヌクレオチド、脱塩基部分、および逆位脱塩基部分から選択される。構造A1および構造A2のいくつかの実施形態において、それぞれのZおよびZ’は、脱塩基部分、例えば、デオキシリボ脱塩基部分(本明細書において「dAb」とする)またはリボ脱塩基部分(本明細書において「rAb」とする)を含む。いくつかの実施形態において、それぞれのZおよび/またはZ’は、2つの共有結合した脱塩基部分を含み、これは例えばdAb−dAb、またはrAb−rAb、またはdAb−rAb、またはrAb−dAbであり、各部分は、好ましくはリンに基づく結合を介して、隣接する部分と共有結合する。いくつかの実施形態において、リンに基づく結合には、ホスホロチオエート、ホスホノアセテート、またはリン酸ジエステル結合が含まれる。好ましい実施形態において、リンに基づく結合は、リン酸ジエステル結合を含む。
いくつかの実施形態において、それぞれのZおよび/またはZ’は、独立して、アルキル部分、場合により、プロパン[(CH2)3]部分(C3)またはその誘導体、例えばプロパノール(C3OH)、およびプロパンジオールのリン誘導体(「C3Pi」)を含む。いくつかの実施形態において、それぞれのZおよび/またはZ’は、2つのアルキル部分を含み、いくつかの例では、C3Pi−C3OHである。アンチセンス鎖の3’末端および/またはセンス鎖の3’末端は、リンに基づく結合を介してC3部分と共有結合し、C3部分は、リンに基づく結合を介してC3OH部分に共有結合的に共役する。いくつかの実施形態において、リンに基づく結合には、ホスホロチオエート、ホスホノアセテート、またはリン酸ジエステル結合が含まれる。好ましい実施形態において、リンに基づく結合には、リン酸ジエステル結合が含まれる。
構造A1および構造A2の具体的な実施形態において、ZはC3Pi−C3OHを含む。構造A1および構造A2の具体的な実施形態において、Z’はC3PiまたはC3OHを含む。構造A1および構造A2のいくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、アンチセンス鎖の3’末端と共有結合したC3Pi−C3OH部分、およびセンス鎖の3’末端と共有結合したC3PiまたはC3OH部分を含む。
構造(A1)および/または構造(A2)のいくつかの実施形態において、各Nは非修飾ヌクレオチドからなる。構造(A1)および/または構造(A2)のいくつかの実施形態において、各N’は非修飾ヌクレオチドからなる。好ましい実施形態において、Nおよび/またはN’のうちの少なくとも1つは、修飾リボヌクレオチドまたは非従来的部分である。
他の実施形態において、構造A1および/または構造A2の化合物は、糖残基において修飾された少なくとも1つのリボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、化合物は、糖残基の2’位に修飾を含む。いくつかの実施形態において、2’位における修飾は、アミノ部分、フルオロ部分、アルコキシ部分、またはアルキル部分の存在を含む。ある特定の実施形態において、2’修飾はアルコキシ部分を含む。好ましい実施形態において、アルコキシ部分はメトキシ部分(2’−O−メチル、2’OMe、2’−OCH3としても知られている)である。いくつかの実施形態において、核酸化合物は、アンチセンス鎖およびセンス鎖のうち一方または両方に、2’OMe糖修飾交互リボヌクレオチドを含む。他の実施形態において、化合物は、アンチセンス鎖(N)xまたはN1−(N)xのみに2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、アンチセンス鎖の中央のリボヌクレオチド、例えば、19−mer鎖の10位のリボヌクレオチドは非修飾である。種々の実施形態において、核酸化合物は、少なくとも5個の、交互の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドおよび非修飾リボヌクレオチドを含む。さらなる実施形態において、構造A1および/または構造A2の化合物は、交互の位置に修飾リボヌクレオチドを含み、(N)xまたはN1−(N)xの5’末端および3’末端の各リボヌクレオチドは、それらの糖残基において修飾されており、(N’)yまたはN2−(N)yの5’末端および3’末端の各リボヌクレオチドは、それらの糖残基において非修飾である。種々の実施形態において、交互の位置のリボヌクレオチドは、糖残基の2’位で修飾されている。
いくつかの実施形態において、核酸化合物は、例えば、1位、3位、5位、7位、および9位、または11位、13位、15位、17位、19位(5’から3’の方向で)に、少なくとも5個の、交互の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドおよび非修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、構造(A1)の(N)xまたは構造(A2)のN1−(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位に、2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、構造(A1)の(N)xまたは構造(A2)のN1−(N)xは、1位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位に、2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、構造(A1)の(N)xまたは構造(A2)のN1−(N)xは、ピリミジンの1つに、2’OMe修飾のリボヌクレオチドを含む。
構造A1および/または構造A2のいくつかの実施形態において、センス鎖もアンチセンス鎖も3’末端および5’末端でリン酸化されていない。他の実施形態において、センス鎖またはアンチセンス鎖のうちの一方または両方が、3’末端でリン酸化されている。他の実施形態において、センス鎖またはアンチセンス鎖のうちの一方または両方が、5’末端でリン酸化されている。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される二本鎖分子は、以下の修飾のうちの1つまたは複数を含む。
アンチセンス鎖の5’末端から5位、6位、7位、8位、または9位のうちの少なくとも1つ位置のNは、DNA、TNA、2’5’ヌクレオチド、またはミラーヌクレオチドから選択され、
センス鎖の5’末端から9位または10位のうちの少なくとも1つの位置のN’は、TNA、2’5’ヌクレオチド、および擬似ウリジンから選択され、
(N’)yの3’末端における4個、5個、または6個の連続する位置のN’は、2’5’ヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態において、二本鎖分子は、以下の修飾の組み合わせを含む。
アンチセンス鎖は、5’末端から5位、6位、7位、8位、または9位のうちの少なくとも1つの位置に、DNA、TNA、2’5’ヌクレオチド、またはミラーヌクレオチドを含み、
センス鎖は、5’末端から9位または10位の位置に、TNA、2’5’ヌクレオチド、および擬似ウリジンのうちの少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態において、二本鎖分子は、以下の修飾の組み合わせを含む。
アンチセンス鎖は、5’末端から5位、6位、7位、8位、または9位のうちの少なくとも1つの位置に、DNA、2’5’ヌクレオチド、またはミラーヌクレオチドを含み、
センス鎖は、3’末端から2番目の位置または3’末端位置に、4個、5個、または6個の連続する2’5’ヌクレオチドを含む。
構造A1および/または構造A2のいくつかの実施形態において、(N)yは、ミラーヌクレオチド、2’5’ヌクレオチド、およびTNAから選択される、少なくとも1つの非従来的部分を含む。いくつかの実施形態において、非従来的部分はミラーヌクレオチドである。種々の実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−リボヌクレオチド(L−RNA)およびL−デオキシリボヌクレオチド(L−DNA)から選択される。好ましい実施形態において、ミラーヌクレオチドはL−DNAである。特定の実施形態において、センス鎖は、9位、または10位(5’末端から)に、非従来的部分を含む。好ましい実施形態において、センス鎖は、9位(5’末端から)に、非従来的部分を含む。いくつかの実施形態において、センス鎖は、19個のヌクレオチドの長さであり、15位(5’末端から)に、4個、5個、または6個の連続する非従来的部分を含む。いくつかの実施形態において、センス鎖は、15位、16位、17位、および18位に、4個の連続する2’5’リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、センス鎖は、15位、16位、17位、18位、および19位に、5個の連続する2’5’リボヌクレオチドを含む。種々の実施形態において、センス鎖は、さらにZ’を含む。いくつかの実施形態において、Z’は、C3OH部分またはC3Pi部分を含む。
構造A1および/または構造A2のいくつかの実施形態において、(N)yは、ミラーヌクレオチドおよび2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接するヌクレオチドと接合するヌクレオチドから選択される、少なくとも1つの非従来的部分を含む。いくつかの実施形態において、非従来的部分はミラーヌクレオチドである。種々の実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−リボヌクレオチド(L−RNA)およびL−デオキシリボヌクレオチド(L−DNA)から選択される。好ましい実施形態において、ミラーヌクレオチドはL−DNAである。
構造A1のいくつかの実施形態において、(N’)yは、少なくとも1つのL−DNA部分を含む。いくつかの実施形態において、x=y=19であり、(N’)yは、1位〜17位および19位の非修飾リボヌクレオチドと、3’末端から2番目の位置(18位)の1個のL−DNAとからなる。他の実施形態において、x=y=19であり、(N’)yは、1位〜16位および19位の非修飾リボヌクレオチドと、3’末端から2番目の位置(17位および18位)の2個の連続するL−DNAとからなる。種々の実施形態において、非従来的部分は、2’−5’ヌクレオチド間リン酸連結により隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドである。種々の実施形態によると、(N’)yは、3'末端に、2’−5’ヌクレオチド間連結によって連結した2個、3個、4個、5個、または6個の連続するリボヌクレオチドを含む。一実施形態において、(N’)yの3’末端の4個の連続するヌクレオチドは、3個の2’−5’リン酸ジエステル結合によって接合する。一実施形態において、(N’)yの3’末端の5個の連続するヌクレオチドは、4個の2’−5’リン酸ジエステル結合によって接合する。2’−5’ヌクレオチドのうちの1つまたは複数が2’−5’リン酸ジエステル結合を形成するいくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、3’−O−メチル(3’OMe)糖修飾をさらに含む。いくつかの実施形態において、(N’)yの3’末端ヌクレオチドは、3’OMe糖修飾を含む。特定の実施形態において、x=y=19であり、(N’)yは、15位、16位、17位、18位、および19位に、2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドを含む、2個以上の連続するヌクレオチドを含む。種々の実施形態において、2’−5’ヌクレオチド間結合を形成するヌクレオチドは、3’デオキシリボースヌクレオチドまたは3’メトキシヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、x=y=19であり、(N’)yは、15位−16位間、16位−17位間、および17位−18位間、または16位−17位間、17位−18位間、および18位−19位間の2’−5’ヌクレオチド間結合によって隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、x=y=19であり、(N’)yは、16位〜17位間および17位〜18位間、または17位〜18位間および18位〜19位間、または15位〜16位間および17位−18位間の2’−5’ヌクレオチド間結合によって隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドを含む。他の実施形態において、(N’)y中のピリミジンリボヌクレオチド(rU、rC)は、2’−5’ヌクレオチド間結合によって隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドで置換されている。
構造A2のいくつかの実施形態において、(N)yは、少なくとも1つのL−DNA部分を含む。いくつかの実施形態において、x=y=18であり、N2−(N’)yは、1位〜17位および19位の非修飾リボヌクレオチドと、3’末端から2番目の位置(18位)のL−DNAとからなる。他の実施形態において、x=y=18であり、N2−(N’)yは、1位〜16位および19位の非修飾リボヌクレオチドと、3’末端から2番目の位置(17位および18位)の2個の連続するL−DNAとからなる。種々の実施形態において、非従来的部分は、2’−5’ヌクレオチド間リン酸連結により隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドである。種々の実施形態によると、N2−(N’)yは、3'末端に、2’−5’ヌクレオチド間連結により連結した2個、3個、4個、5,個、または6個の連続するリボヌクレオチドを含む。一実施形態において、N2−(N’)yの3’末端の4個の連続するヌクレオチドは、3個の2’−5’リン酸ジエステル結合によって接合し、2’−5’リン酸ジエステル結合を形成する2’−5’ヌクレオチドのうちの1つまたは複数は、3’−O−メチル(3’OMe)糖修飾をさらに含む。いくつかの実施形態において、N2−(N’)yの3’末端ヌクレオチドは、2’OMe糖修飾を含む。特定の実施形態において、x=y=18であり、N2−(N’)yは、15位、16位、17位、18位、および19位に、2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドを含む、2個以上の連続するヌクレオチドを含む。種々の実施形態において、2’−5’ヌクレオチド間結合を形成するヌクレオチドは、3’デオキシリボースヌクレオチドまたは3’メトキシヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、x=y=18であり、N2−(N’)yは、16位−17位間および17位−18位間、または17位−18位間および18位−19位間、または15位−16位間および17位−18位間の2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドを含む。他の実施形態において、(N’)y中のピリミジンリボヌクレオチド(rU、rC)は、2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチドを含む。
構造A1および構造A2のさらなる実施形態において、(N’)yは、1〜8個の修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾リボヌクレオチドは、デオキシリボース(DNA)ヌクレオチドである。ある特定の実施形態において、(N’)yは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、または最大8個のDNA部分を含む。
いくつかの実施形態において、表IIに示され、本明細書において、RHOA_48(配列番号79および113)、RHOA_48u(配列番号80および114)、RHOA_50(配列番号82および116)、RHOA_61(配列番号89および123)、ならびにRHOA_61u(配列番号90および124)として特定されるオリゴヌクレオチド対から選択されるセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、二本鎖RNA分子が本明細書において提供される。
いくつかの実施形態において、表IIに示され、本明細書において、RHOA_48(配列番号79および113)、RHOA_48u(配列番号80および114)、RHOA_50(配列番号82および116)、RHOA_61(配列番号89および123)、ならびにRHOA_61u(配列番号90および124)として特定されるオリゴヌクレオチド対から選択されるセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、二本鎖RNA分子が本明細書において提供される。特に指定のない限り、センス鎖またはアンチセンス鎖に沿った全ての位置は、5’から3’へと数えられる(5’から3’の方向で)。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、配列番号113に示すアンチセンス鎖および配列番号79に示すセンス鎖を含み、本明細書においてRHOA_48として特定される。いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、以下の構造を有し、
式中、「│」は、リボヌクレオチド間の塩基対合を表し、
それぞれのA、C、G、Uは、独立して、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、センス鎖の5’末端で共有結合したキャッピング部分である。
好ましい実施形態において、二本鎖核酸分子は、修飾リボヌクレオチドおよび非従来的部分を含む。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号113)が、5位、6位、7位、または8位のうちの1つまたは複数(5’から3’の方向で)においてミラーヌクレオチドまたは2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、1つまたは複数の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態において、センス鎖(配列番号79)は、3’末端または3’末端から2番目の位置の4個または5個の連続する2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む。この分子は、アンチセンス鎖に、5’ホスフェートを含んでもよい。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端のヌクレオチドまたは非ヌクレオチドオーバーハングと、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、6位、7位、または6位および7位に、2’−5’連結リボヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分と、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48_S1833に示される、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Piと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位、7位、および8位のうちの1つまたは複数の位置の2’−5’連結ヌクレオチドまたはミラーヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端のヌクレオチドまたは非ヌクレオチドオーバーハングと、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分と、5’末端で共有結合した、脱塩基部分、逆位脱塩基部分、C6アミノ、およびミラーヌクレオチドから選択されるキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48_S1857に示される、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Piと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48_S1873に示される、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Piと、5’末端で共有結合したミラーヌクレオチド(L−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート)とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)1位の任意の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3PiまたはC3OH部分と、5’末端で共有結合した、脱塩基部分、逆位脱塩基部分、C6アミノ、およびミラーヌクレオチドから選択されるキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48_S1856に示される、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)1位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Pi部分と、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48_S1872に示される、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)1位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Piと、5’末端で共有結合したミラーヌクレオチド(L−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート)とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位および7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)1位の任意の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3PiまたはC3OH部分と、5’末端で共有結合した、脱塩基部分、逆位脱塩基部分、およびミラーヌクレオチドから選択されるキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48_S1858に示される、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位および7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)1位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Pi部分と、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48_S1859に示される、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位のミラーヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)1位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Piと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48_S1860に示される、アンチセンス鎖(配列番号113)が、(5’から3’の方向で)1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、8位のミラーヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)1位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Pi部分と、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、センス鎖(配列番号79)が、(5’から3’の方向で)1位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3末端に共有結合したC3Pi部分と、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含み、アンチセンス鎖(配列番号113)が、
(5’から3’の方向で)1位におけるUからdTへの置換と、1位でデオキシリボチミジンに共有結合した5’ホスフェートと、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、化合物RHOA_48_S1884に示される、アンチセンスオリゴヌクレオチド、または
(5’から3’の方向で)1位でウリジンに共有結合した5’ホスフェートと、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、化合物RHOA_48_S1885に示される、アンチセンスオリゴヌクレオチド、または
(5’から3’の方向で)1位におけるUからC3への置換と、1位でC3に共有結合した5’ホスフェートと、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、化合物RHOA_48_S1886に示される、アンチセンスオリゴヌクレオチド、または
(5’から3’の方向で)1位でウリジンに共有結合した5’ホスフェートと、1位、3位、11位、14位、15位、17位、および18位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、化合物RHOA_48_S1887に示される、アンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、配列番号114に示されるアンチセンス鎖および配列番号80に示されるセンス鎖を含み、本明細書においてRHOA_48uとして特定される。いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、以下の構造を有し、
式中、「│」は、リボヌクレオチド間の塩基対合を表し、
それぞれのA、C、G、Uは、独立して、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、センス鎖の5’末端で共有結合したキャッピング部分である。
好ましい実施形態において、二本鎖核酸分子は、修飾リボヌクレオチドおよび非従来的部分を含む。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号114)が、5位、6位、7位、または8位(5’から3’の方向で)のうちの1つまたは複数の位置の(5’から3’の方向で)1つまたは複数の2’OMe糖修飾リボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、または2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端ヌクレオチドまたは非ヌクレオチドオーバーハングとを含む、二本鎖核酸分子が提供される。アンチセンス鎖は、5’末端ホスフェートをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、センス鎖(配列番号80)は、(5’から3’の方向で)3’末端または3’末端から2番目の位置の4個または5個の連続する2’−5’結合ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む。他の実施形態において、センス鎖(配列番号80)は、1つまたは複数の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドをさらに含む。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48u_S1812に示される、アンチセンス鎖(配列番号114)が、(5’から3’の方向で)3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の(5’から3’の方向で)2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号80)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi部分と、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチド部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48u_S1813に示される、アンチセンス鎖(配列番号114)が、(5’から3’の方向で)3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の(5’から3’の方向で)2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号80)が、(5’から3’の方向で)13位および16位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、9位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi部分と、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチド部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48u_S1870に示される、アンチセンス鎖(配列番号114)が、(5’から3’の方向で)3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の(5’から3’の方向で)2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号80)が、(5’から3’の方向で)1位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi部分と、5’末端で共有結合したミラーヌクレオチド(L−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート)とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、化合物RHOA_48u_S1871に示される、アンチセンス鎖(配列番号114)が、(5’から3’の方向で)3位、6位、11位、14位、15位、17位、および18位の(5’から3’の方向で)2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’リボヌクレオチドと、3’末端に共有結合したC3Pi−C3OH部分とを含み、センス鎖(配列番号80)が、(5’から3’の方向で)1位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、15位、16位、17位、18位、および19位の2’−5’リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi部分と、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチド部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、配列番号116に示されるアンチセンス鎖および配列番号82に示されるセンス鎖を含み、本明細書においてRHOA_50として特定される。いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、以下の構造を有し、
式中、「│」は、リボヌクレオチド間の塩基対合を表し、
それぞれのA、C、G、Uは、独立して、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、センス鎖の5’末端で共有結合したキャッピング部分である。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号116)が、(5’から3’の方向で)5位、6位、7位、または8位のうちの1つまたは複数の位置のDNA、ミラーヌクレオチド、または2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドとを含む、二本鎖核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号116)は、(5’から3’の方向で)5位、6位、7位、または8位のうちの1つまたは複数の位置の交互2’OMe糖修飾リボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、または2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、1位におけるU(ウリジン)からdU(デオキシウリジン)への置換をさらに含む。アンチセンス鎖は、5’末端ホスフェートをさらに含んでもよい。
いくつかの実施形態において、センス鎖(配列番号82)は、(5’から3’の方向で)9位または10位のうちの1つまたは複数の位置のミラーヌクレオチドまたは2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む。
いくつかの実施形態において、RHOA_50_S1796に示される、アンチセンス鎖(配列番号116)が、(5’から3’の方向で)3位、5位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分と、1位におけるU(ウリジン)からdU(デオキシウリジン)への置換とを含み、センス鎖(配列番号82)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、11位、13位、および18位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_50_S1798に示される、アンチセンス鎖(配列番号116)が、(5’から3’の方向で)4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分と、1位におけるU(ウリジン)からdU(デオキシウリジン)への置換とを含み、センス鎖(配列番号82)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、18位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_50_S1799に示される、アンチセンス鎖(配列番号116)が、(5’から3’の方向で)3位、5位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分と、1位におけるU(ウリジン)からdU(デオキシウリジン)への置換とを含み、センス鎖(配列番号82)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、18位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_50_S1865に示される、アンチセンス鎖(配列番号116)が、(5’から3’の方向で)4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分と、1位におけるU(ウリジン)からdU(デオキシウリジン)への置換とを含み、センス鎖(配列番号82)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、17位および18位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_50_S1866に示される、アンチセンス鎖(配列番号116)が、(5’から3’の方向で)3位、5位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分と、1位におけるU(ウリジン)からdU(デオキシウリジン)への置換とを含み、センス鎖(配列番号82)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、17位および18位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、配列番号123に示すアンチセンス鎖および配列番号89に示すセンス鎖を含み、本明細書においてRHOA_61として特定される。いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、以下の構造を有し、
式中、「│」は、リボヌクレオチド間の塩基対合を表し、
それぞれのA、C、G、Uは、独立して、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、センス鎖の5’末端で共有結合したキャッピング部分である。
好ましい実施形態において、二本鎖核酸分子は、修飾リボヌクレオチドおよび非従来的部分を含む。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号123)が、(5’から3’の方向で)5位、6位、7位、または8位のうちの1つまたは複数の位置のDNA、ミラーヌクレオチド、または2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドとを含む、二本鎖核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、センス鎖(配列番号89)は、3’末端または3’末端から2番目の位置の4個または5個の連続する2’−5’連結ヌクレオチド、あるいは1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む。いくつかの実施形態において、センス鎖は、9位および10位のうちの一方または両方に、DNA、ミラーヌクレオチド、または2’5’連結ヌクレオチドをさらに含む。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は配列番号124に示されるアンチセンス鎖および配列番号90に示されるセンス鎖を含み、本明細書においてRHOA_61Uとして特定される。いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、以下の構造を有し、
式中、「│」は、リボヌクレオチド間の塩基対合を表し、
それぞれのA、C、G、Uは、独立して、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、センス鎖の5’末端で共有結合したキャッピング部分である。
好ましい実施形態において、二本鎖核酸分子は、修飾リボヌクレオチドおよび非従来的部分を含む。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号124)が、(5’から3’の方向で)5位、6位、7位、または8位のうちの1つまたは複数の位置のDNA、ミラーヌクレオチド、または2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドとを含む、二本鎖核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、センス鎖(配列番号90)は、3’末端または3’末端から2番目の位置の4個または5個の連続する2’−5’連結ヌクレオチド、あるいは1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む。いくつかの実施形態において、センス鎖は、9位および10位のうちの一方または両方に、DNA、ミラーヌクレオチド、または2’5’連結ヌクレオチドをさらに含む。
いくつかの実施形態において、表IIIに示され、本明細書において、RHOA_58(配列番号143および157)およびRHOA_70(配列番号146および160)として特定されるオリゴヌクレオチド対から選択されるセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、二本鎖RNA分子が本明細書において提供される。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、配列番号157に示すアンチセンス鎖および配列番号143に示すセンス鎖を含み、本明細書においてRHOA_58として特定される。いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、以下の構造を有し、
式中、「│」は、リボヌクレオチド間の塩基対合を表し、
それぞれのA、C、G、Uは、独立して、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、センス鎖の5’末端で共有結合したキャッピング部分である。
好ましい実施形態において、二本鎖核酸分子は、修飾リボヌクレオチドおよび非従来的部分を含む。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号157)が、(5’から3’の方向で)5位、6位、7位、または8位のうちの1つまたは複数の位置のミラーヌクレオチドまたは2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドとを含む、二本鎖核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、5’末端ホスフェートをさらに含む。いくつかの実施形態において、センス鎖(配列番号143)は、3’末端または3’末端から2番目の位置の4個または5個の連続する2’−5’連結ヌクレオチド、あるいは1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む。いくつかの実施形態において、センス鎖は、(5’から3’の方向で)9位および10位のうちの一方または両方に、DNA、ミラーヌクレオチド、または2’−5’連結ヌクレオチドをさらに含む。
いくつかの実施形態において、RHOA_58_S1801に示される、アンチセンス鎖(配列番号157)が、(5’から3’の方向で)4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分とを含み、センス鎖(配列番号143)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の5個の連続する2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_58_S1804に示される、アンチセンス鎖(配列番号157)が、(5’から3’の方向で)4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分とを含み、センス鎖(配列番号143)が、(5’から3’の方向で)15位、16位、17位、18位、および19位の5個の連続する2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_58_S1806に示される、アンチセンス鎖(配列番号1157)が、(5’から3’の方向で)3位、5位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分とを含み、センス鎖(配列番号143)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、11位、13位、および17位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_58_S1861に示される、アンチセンス鎖(配列番号157)が、(5’から3’の方向で)4位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位の2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分とを含み、センス鎖(配列番号143)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、11位、13位、および17位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_58_S1862に示される、アンチセンス鎖(配列番号157)が、(5’から3’の方向で)4位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位におけるUからdTへの置換と、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分とを含み、センス鎖(配列番号143)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、11位、13位、および17位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合した逆位脱塩基デオキシリボヌクレオチドキャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_58_S1877に示される、アンチセンス鎖(配列番号157)が、(5’から3’の方向で)3位、5位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、7位の2’−5’連結リボヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分とを含み、センス鎖(配列番号143)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、11位、13位、および17位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合したミラーヌクレオチド(L−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート)キャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_58_S1878に示される、アンチセンス鎖(配列番号157)が、(5’から3’の方向で)4位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位の2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分とを含み、センス鎖(配列番号143)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、11位、13位、および17位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合したミラーヌクレオチド(L−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート)キャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、RHOA_58_S1879に示される、アンチセンス鎖(配列番号157)が、(5’から3’の方向で)4位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、6位のdTと、3’末端で共有結合したC3Pi−C3OH非ヌクレオチド部分とを含み、センス鎖(配列番号143)が、(5’から3’の方向で)3’末端で共有結合したC3Pi非ヌクレオチド部分と、11位、13位、および17位の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、9位の2’−5’連結ヌクレオチドと、5’末端で共有結合したミラーヌクレオチド(L−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート)キャップ部分とを含む、二本鎖核酸分子が提供される。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、配列番号160に示すアンチセンス鎖および配列番号146に示すセンス鎖を含み、本明細書においてRHOA_70として特定される。いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、以下の構造を有し、
式中、「│」は、リボヌクレオチド間の塩基対合を表し、
それぞれのA、C、G、Uは、独立して、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、センス鎖の5’末端で共有結合したキャッピング部分である。
好ましい実施形態において、二本鎖核酸分子は、修飾リボヌクレオチドおよび非従来的部分を含む。
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖(配列番号160)が、(5’から3’の方向で)5位、6位、7位、または8位のうちの1つまたは複数の位置のDNA、ミラーヌクレオチド、または2’−5’連結ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドとを含む、二本鎖核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、5’末端ホスフェートをさらに含む。いくつかの実施形態において、センス鎖(配列番号146)は、3’末端または3’末端から2番目の位置の4個または5個の連続する2’−5’連結ヌクレオチド、あるいは1つまたは複数の2’OMe糖修飾ヌクレオチドと、3’末端で共有結合したヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分と、5’末端で共有結合したキャップ部分とを含む。いくつかの実施形態において、センス鎖は、(5’から3’の方向で)9位および10位のうちの一方または両方に、DNA、ミラーヌクレオチド、または2’5’連結ヌクレオチドをさらに含む。
第2の態様において、本発明は、1つまたは複数の本発明によるこのような核酸化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、dsRNAは、ネイキッドdsRNAとして投与される。他の実施形態において、化合物は、薬物担体中にカプセル化される。
第3の態様において、本発明は、CNS、PNS、前庭感覚系、視覚系、および/または循環(脈管、動脈)系に疾患または障害を患っている対象を治療する際に使用するため、あるいは悪性疾患または障害、例えば癌を患っている対象を治療する際に使用するための本願による化合物に関する。中枢神経系(CNS)および/または末梢神経系(PNS)の傷害、疾患、障害、または状態に起因するニューロン変性の防止、抑制、または治療のための方法であって、前記傷害、疾患、障害、または状態を治療するのに有効な量の構造A1および/または構造A2による核酸化合物を必要性のある個人に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。また、神経系の傷害に罹患した個人に神経保護を与えるための方法であって、構造A1および/または構造A2による化合物、またはその薬学的に許容される塩を前記神経系の傷害に関連する神経変性を改善するのに有効な量で、前記個人に投与することを含む方法も提供される。
別の態様において、CNS、PNS、前庭感覚系、視覚系、および/または循環(脈管、動脈)系の疾患または障害の治療用の薬物を調製するための、本明細書において開示される核酸化合物の使用が提供される。別の態様において、悪性の疾患または障害、例えば癌の治療用の薬物を調製するための、本明細書において開示される核酸化合物の使用が提供される。特定の実施形態において、本発明は、化学修飾dsRNAオリゴヌクレオチド、それを含む組成物、および中枢神経系(CNS)の疾患、障害、傷害、および状態(神経再生および神経保護に関する状態、中枢神経系(CNS)の傷害、脊髄傷害(SCI)、脳傷害、末梢神経傷害(PNI)、神経系の障害、眼の疾患および障害、ならびに前庭系の疾患および障害を含むがこれらに限定されない)の治療におけるその使用方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される化合物は、ニューロン変性を軽減する。ニューロン変性には、例えば、視神経および網膜神経節細胞を含む網膜の変性が含まれる。また、これは、内耳から脳への音および平衡情報の伝達に関与する聴神経(内耳神経または聴覚神経としても知られている)の変性も含む。内耳の有毛細胞は、蝸牛神経と前庭神経とからなり、延髄から出て、顔面神経と共に側頭骨内の内耳道(または内聴道)を通って頭蓋内に入る聴神経を介して、脳に情報を伝達する。
いくつかの実施形態において、本発明は、治療的有効量の本明細書において開示される核酸分子を対象に投与することを含む、対象の視神経および/または網膜神経節細胞におけるニューロン変性を軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、緑内障またはNAIONに罹患している。
いくつかの実施形態において、本発明は、治療的有効量の本明細書において開示される核酸分子を対象に投与することを含む、対象の聴神経におけるニューロン変性を軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象はメニエール病に罹患している。
いくつかの実施形態において、本発明は、治療的有効量の本明細書において開示される核酸分子を対象に投与することを含む、対象の神経および/または網膜神経節細胞に神経保護を与える方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、緑内障またはNAIONに罹患している。
いくつかの実施形態において、本発明は、治療的有効量の本明細書において開示される核酸分子を対象に投与することを含む、対象の聴神経および/またはらせん神経節細胞に神経保護を与える方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象はメニエール病に罹患している。
いくつかの実施形態において、本発明は、治療的有効量の本明細書において開示される核酸分子を対象に投与することを含む、対象においてニューロパシーを治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、自律神経ニューロパシー、癌性ニューロパシー、圧迫性ニューロパシー、糖尿病性ニューロパシー、薬剤性ニューロパシー、中毒性ニューロパシー、化学療法誘発性ニューロパシー、胃腸ニューロパシー、栄養性ニューロパシー、遺伝性ニューロパシー、免疫介在性ニューロパシーおよび慢性免疫介在性多発ニューロパシー、感染性ニューロパシー、またはニューロパシー性疼痛に罹患している。いくつかの実施形態において、対象は糖尿病性ニューロパシーに罹患している。いくつかの実施形態において、対象はアロディニアに罹患している。いくつかの実施形態において、本発明は、異常なおよび/または混乱した細胞運動、細胞骨格調節、および/または微小管構築に関連する疾患または障害を患っている対象を治療する方法であって、治療的有効量の本明細書において開示される核酸分子を対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、血管新生障害、血管疾患、および/または動脈疾患に罹患している。いくつかの実施形態において、対象は、角膜血管新生疾患もしくは障害、網膜血管新生疾患もしくは障害、脈絡膜血管新生疾患もしくは障害、またはそれらの組み合わせから選択される、眼球血管新生疾患もしくは障害を患っている。いくつかの実施形態において、対象は、網膜症、例えば、糖尿病性網膜症を患っている。いくつかの実施形態において、対象は、角膜移植片拒絶反応の危険性がある、または角膜移植片拒絶反応を起こしている、角膜移植患者である。いくつかの実施形態において、対象は、再狭窄の危険性がある、または再狭窄を起こしている。
かかる方法は、かかる治療の必要性がある哺乳動物に、予防的または治療的有効量のRhoAの発現または活性を阻害する、または減少させる本明細書において開示される1つまたは複数の核酸分子を投与することを含む。
別の態様において、本発明は、ある量の配列番号1に示すRhoAの発現を阻害する核酸分子を対象に投与することを含む、RhoAの発現に関連する疾患または障害に関連する疾患または障害または症状の治療の必要性のある対象の治療ための方法に関する。
本明細書において開示されるのは、RhoAの発現を下方制御する化合物であり、とりわけ新規の化学修飾二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(dsRNAs)、および様々な疾患および医学的状態、とりわけ中枢神経系(CNS)の疾患および障害の治療におけるこれらの新規dsRNAsの使用に関する。一態様によると、本発明は、非修飾および修飾ヌクレオチドと、非従来的部分とを含む阻害性オリゴヌクレオチド化合物を提供する。この化合物は、糖修飾、塩基修飾、およびヌクレオチド間連結修飾からなる群から選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、DNAと、LNA(ロックド核酸)、ENA(エチレン−架橋核酸)、PNA(ペプチド核酸)、アラビノシド、PACE、ミラーヌクレオチド、2’−5’ヌクレオチド間結合によって隣接するヌクレオチドと接合したヌクレオチド、もしくは6炭素糖を有するヌクレオチドを含む修飾ヌクレオチドまたは非従来的部分とをさらに含んでもよい。
RhoAは、RGCを含むCNSニューロンにおける運動、成長、分化、およびアポトーシスなどの細胞機能を制御する、低分子GTPaseタンパク質である。また、RhoAは、神経系の免疫細胞(小膠細胞およびマクロファージ)および星状膠細胞におけるシグナル伝達により、二次炎症および瘢痕性のCNS傷害応答にも関与する。治療される特定の疾患および状態には、SCI、緑内障、AMD、アルツハイマー病およびパーキンソン病を含む神経変性疾患、ALS、脳卒中、TBIなどが含まれる。
本開示によるsiRNA化合物を生成する際に有用な好ましいセンス配列およびアンチセンス配列の一覧は、表I、表II、および表IIIに提示する。
RhoAを下方制御する方法、核酸分子、および組成物が、本明細書において詳細に説明され、また、前記分子および/または組成物のいずれも前記状態のいずれを患っている対象の治療にも有益に使用することができる。
本明細書において提供される核酸化合物は、活性を向上し、安定性を向上し、および/または毒性を最小限に抑えることができる構造および修飾を有し、本明細書において開示されるdsRNA化合物を生成する際に有用な新規の修飾は、RhoA発現を防止または減少する際に有用な二本鎖RNAに有益に適用することができる。
いくつかの実施形態において、構造(A1):
(A1) 5’ (N)x‐Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y‐z" 5’(センス鎖)
を有する二本鎖RNA化合物が本明細書において提供され、式中、それぞれのNおよびN’は、修飾されていなくても修飾されていてもよいリボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれの(N)xおよび(N’)yは、それぞれの連続するNまたはN’が、共有結合によって次のNまたはN’と接合するオリゴヌクレオチドであり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチド、1〜5個の連続する非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせを含み、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’末端で共有結合したキャッピング部分であり、
それぞれのxおよびyは、独立して、18〜40の整数であり、
(N’)yの配列は(N)xの配列に相補的であり、(N)xは、表IIIまたは表IVに記載されるアンチセンス配列を含む。
表IIIに提示されるdsRNA化合物を生成する際に有用なセンス配列およびアンチセンス配列は、RHOA_31(配列番号135および149)、RHOA_33(配列番号136および150)、RHOA_37(配列番号137および151)、RHOA_38(配列番号138および152)、RHOA_43(配列番号139および153)、RHOA_52(配列番号140および154)、RHOA_56(配列番号141および155)、RHOA_57(配列番号142および156)、RHOA_58(配列番号143および157)、RHOA_68(配列番号144および158)、RHOA_69(配列番号145および159)、RHOA_70(配列番号146および160)、RHOA_73(配列番号147および161)、ならびにRHOA_76(配列番号148および162)である。表IVに提示するdsRNA化合物を生成する際に有用なセンス配列およびアンチセンス配列は、RHOA_23(配列番号163および167)、RHOA_24(配列番号164および168)、RHOA_26(配列番号165および169)、またはRHOA_29(配列番号166および170)に示される。
いくつかの実施形態において、連続するNおよび/またはN’それぞれを接合する共有結合はリン酸ジエステル結合である。
いくつかの実施形態において、x=yであり、それぞれのxおよびyは、19、20、21、22、または23である。好ましい実施形態において、x=y=19である。
本明細書において開示される核酸分子(例えば、dsRNA分子)のいくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子はsiRNA、siNA、またはmiRNAである。
いくつかの実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、RHOA_58(配列番号143および157)に示される配列対を含む。いくつかの実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、RHOA_70(配列番号146および160)に示される配列対を含む。
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、アンチセンス鎖の1位(5’末端)にDNA部分または標的に対するミスマッチを含む。かかる二重鎖構造を本明細書において説明する。一実施形態によると、下記に示す構造(A2)を有する二本鎖siRNA化合物が提供され、
(A2) 5’ N1−(N)x−Z 3’(アンチセンス鎖)
3’ Z’−N2−(N’)y‐z" 5’(センス鎖)
式中、N1、N2、N、およびN’はそれぞれ、独立して、非修飾もしくは修飾ヌクレオチド、または非従来的部分であり、
それぞれの(N)xおよび(N’)yはオリゴヌクレオチドであり、それぞれの連続するNまたはN’は、共有結合によって隣接するNまたはN’と接合され、
それぞれのxおよびyは、独立して、17〜39の整数であり、
N2は、(N’)yと共有結合し、
N1は、(N)xと共有結合し、標的mRNA(配列番号1)と一致しないか、または標的mRNAに相補的なDNA部分であり、
N1は、天然または修飾された、ウリジン、デオキシリボウリジン、リボチミジン、デオキシリボチミジン、アデノシン、またはデオキシアデノシン、脱塩基リボース部分、および脱塩基デオキシリボース部分からなる群から選択される部分であり、
z"は、存在しても不在でもよいが、存在する場合は、N2−(N’)yの5’末端で共有結合したキャッピング部分であり、
それぞれのZおよびZ’は、独立して、存在するか、または不在であるが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’末端で共有結合した、1〜5個の連続するヌクレオチド、1〜5個の連続する非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせであり、
(N’)yの配列は(N)xの配列に相補的であり、(N)xの配列は、表Iに記載されるアンチセンス配列を含む。
種々の実施形態において、N1−(N)xの配列は、表IIに記載されるアンチセンス配列を含む。いくつかの実施形態において、dsRNA化合物を生成する際に有用なN2−(N’)yおよびN1−(N)xは、表IIに提示され、RHOA_32(配列番号67および101)、RHOA_34(配列番号68および102)、RHOA_35(配列番号69および103)、RHOA_36(配列番号70および104)、RHOA_39(配列番号71および105)、RHOA_40(配列番号72および106)、RHOA_41(配列番号73および107)、RHOA_42(配列番号74および108)、RHOA_44(配列番号75および109)、RHOA_45(配列番号76および110)、RHOA_46(配列番号77および111)、RHOA_47(配列番号78および112)、RHOA_48(配列番号79および113)、RHOA_48u(配列番号80および114)、RHOA_49(配列番号81および115)、RHOA_50(配列番号82および116)、RHOA_51(配列番号83および117)、RHOA_53(配列番号84および118)、RHOA_54(配列番号85および119)、RHOA_55(配列番号86および120)、RHOA_59(配列番号87および121)、RHOA_60(配列番号88および122)、RHOA_61(配列番号89および123)、RHOA_61u(配列番号90および124)、RHOA_62(配列番号91および125)、RHOA_63(配列番号92および126)、RHOA_64(配列番号93および127)、RHOA_65(配列番号94および128)、RHOA_66(配列番号95および129)、RHOA_67(配列番号96および130)、RHOA_71(配列番号97および131)、RHOA_72(配列番号98および132)、RHOA_74(配列番号99および133)、ならびにRHOA_75(配列番号100および134)に示される。
センス(パッセンジャー鎖)配列およびアンチセンス(ガイド鎖)配列を用いる新規のdsRNA化合物が、本明細書に記載される。
定義
便宜上、本明細書、実施例、および特許請求の範囲で用いられる特定の用語を、本明細書において説明する。
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数形を含むことに留意されたい。
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または他の選択肢の系列化に関して記載される場合、当業者は、本発明が、それによって、任意の個々の要素または群の要素の亜群に関しても記載されていることを認識するであろう。
「阻害剤」は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的な効果を達成するのに十分な程度まで、(部分的または完全に)下方制御する、または減少させることができる化合物である。
本明細書で使用する「阻害剤」という用語は、dsRNA、siRNA、shRNA、合成shRNA、miRNA、アンチセンスRNAおよびDNA、ならびにリボザイムを含む、オリゴヌクレオチド阻害剤または核酸阻害剤のうちの1つまたは複数を指す。
「dsRNA阻害剤」は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的効果を達成するのに十分な程度まで下方制御する、または減少させることが可能な化合物である。本明細書で使用される用語「dsRNA阻害剤」は、dsRNA、siRNA、shRNA、合成shRNA、およびmiRNAのうちの1つまたは複数を指す。阻害は、下方制御、またはRNAiについてはサイレンシング、と称されてもよい。
本明細書で使用する「阻害する」という用語は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的な効果を達成するのに十分な程度まで、下方制御する、または減少させることを指す。阻害は、完全であっても、部分的であってもよい。
本明細書において使用する場合、RhoAの「阻害」または「下方制御」という用語は、遺伝子発現(転写もしくは翻訳)またはポリペプチド活性の下方制御または阻害を意味する。標的mRNA配列のポリヌクレオチド配列は、配列番号1示すmRNA配列、またはRhoA mRNAに対して、少なくとも70%の同一性、より好ましくは80%の同一性、さらに好ましくは90%もしくは95%の同一性を有するその任意の相同配列を指す。したがって、本明細書に記載されるように、変異、変更、または修飾を受けたポリヌクレオチド配列は、本発明に包含される。「mRNAポリヌクレオチド配列」および「mRNA」という用語は、互換的に使用される。RhoAは、アクチン細胞骨格を制御するGTPaseであり、これは脊髄傷害後に上方制御され、眼の小柱網で発現することが示されている。
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、互換的に使用してもよく、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含むヌクレオチド配列を指す。これらの用語は、ヌクレオチド類似体から作られるRNAまたはDNAのいずれかの類似体を同等物として含むことも理解されたい。本出願全体を通して、mRNA配列は、相当する遺伝子を表すものとして記載される。
「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」は、約2個〜約50個のヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を指す。それぞれのDNAまたはRNAヌクレオチドは、独立して、天然もしくは合成、および/または修飾もしくは非修飾であってもよい。修飾は、糖部分、塩基部分、および/またはオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間の連結に対する変更を含む。本明細書において開示される化合物は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、およびそれらの組み合わせを含む分子を包含する。
「ヌクレオチド」は、天然もしくは合成、および/または修飾もしくは非修飾であってもよい、デオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含することを意味する。修飾には、オリゴリボヌクレオチド中の糖部分、塩基部分、および/またはリボヌクレオチド間の連結に対する変更が含まれる。本明細書で使用される場合、用語「リボヌクレオチド」は、天然および合成の、非修飾および修飾リボヌクレオチドを包含する。修飾には、オリゴヌクレオチド中の糖部分、塩基部分、および/またはリボヌクレオチド間の連結に対する変更が含まれる。
いくつかの実施形態によると、非修飾ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチド、および/または非従来的部分を含む、阻害性オリゴヌクレオチド化合物が提供される。この化合物は、糖修飾、塩基修飾、およびヌクレオチド間連結修飾からなる群から選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、DNAと、LNA(ロックド核酸)、ENA(エチレン−架橋核酸)、PNA(ペプチド核酸)、アラビノシド、PACE、ミラーヌクレオチド、または6炭素糖を有するヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。
ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの全ての類似体または修飾体は、前記類似体または修飾体が、ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの機能に実質的に悪影響を及ぼさないという条件で、本明細書において開示される修飾を伴って使用することができる。許容される修飾には、糖部分の修飾、塩基部分の修飾、ヌクレオチド間連結における修飾、およびこれらの組み合わせが含まれる。
一実施形態において、化合物は、少なくとも1個のリボヌクレオチドの糖部分の2’修飾(「2’糖修飾」)を含む。特定の実施形態において、化合物は、場合により交互の位置に、2’O−アルキルまたは2′−フルオロまたは2’O−アリルまたは任意の他の2’修飾を含む。他の安定化させる修飾もまた可能である(例えば、末端修飾)。いくつかの実施形態において、好ましい2’O−アルキルは、2’O−メチル(メトキシ、2’OMe)糖修飾である。糖修飾には、糖残基の2’部分の修飾が含まれ、アミノ、フルオロ、アルコキシ、例えばメトキシ、アルキル、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、CN、CF、イミダゾール、カルボキシレート、チオエート、C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、もしくはアラルキル、OCF3、OCN、O−、S−、もしくはN−アルキル、O−、S−、もしくはN−アルケニル、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、ヘテロジクロアルキル、ヘテロジクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、または置換シリル、とりわけ欧州特許第0 586 520(B1)号または欧州特許第0 618 925(B1)号に記載されているようなものを包含する。
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの骨格が修飾され、ホスフェート−D−リボース実体を含むが、チオホスフェート−D−リボース実体、トリエステル、チオエート、2’−5’架橋骨格(5’−2’とも称され得る)、PACEなども含み得る。
本明細書において使用する場合、用語「非対合ヌクレオチド類似体」は、6デスアミノアデノシン(ネブラリン)、4−Me−インドール、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、Ds、Pa、N3−MeリボU、N3−MeリボT、N3−Me−dC、N3−Me−dT、N1−Me−dG、N1−Me−dA、N3−エチル−dC、N3−Me−dCを含むがこれらに限定されない、非塩基対合部分を含むヌクレオチド類似体を意味する。いくつかの実施形態において、非塩基対合ヌクレオチド類似体はリボヌクレオチドである。他の実施形態において、これはデオキシリボヌクレオチドである。
他の修飾には、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’部分の末端修飾が含まれ、これはキャッピング部分としても知られている。かかる末端修飾は、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、脂質、ペプチド、および糖から選択される。
「アルキル部分またはその誘導体」とは、直鎖もしくは分岐炭素部分、および部分自体またはアルコール、リン酸ジエステル、ホスホロチオエート、ホスホノアセテートを含む官能基をさらに含む部分を指し、またアミン、カルボン酸、エステル、アミド、アルデヒドも含む。「炭化水素部分」および「アルキル部分」は、互換的に使用される。
「末端官能基」には、ハロゲン基、アルコール基、アミン基、カルボン酸基、エステル基、アミド基、アルデヒド基、ケトン基、エーテル基が含まれる。
「ヌクレオチド」は、天然もしくは合成、および修飾もしくは非修飾であってもよい、デオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含することを意味する。修飾には、糖部分、塩基部分、および/またはヌクレオチド間連結の変更および置換が含まれる。
修飾リボヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチドおよび修飾デオキシリボヌクレオチドが含まれる。修飾デオキシヌクレオチドには、例えば、5’末端位置(位置番号1)におけるヌクレオチドとして有用であり得る5’OMe DNA(5−メチル−デオキシリボグアノシン−3'−ホスフェート)、PACE(デオキシリボアデニン3'ホスホノアセテート、デオキシリボシチジン3'ホスホノアセテート、デオキシリボグアノシン3'ホスホノアセテート、デオキシリボチミジン3'ホスホノアセテートが含まれる。さらに、インビボでRhoAの発現を阻害する方法および組成物が本明細書において提供される。一般的に、この方法は、RhoAから転写されたmRNAを標的とする、オリゴリボヌクレオチド、とりわけ二本鎖RNA(即ち、dsRNA)、または細胞中でdsRNAを産生することができる核酸物質を、例えばRNA干渉機構によってRhoAの発現を下方制御するのに十分な量で投与することを含む。具体的には、当該方法を使用して、疾患、障害、または傷害の治療のために、RhoAの発現を下方制御することができる。本発明に従って、核酸分子またはRhoAの阻害剤は、種々の病状を治療するために薬物として使用される。本発明に従って、核酸分子またはRhoAの阻害剤は、CNS、PNS、前庭感覚系、視覚系、および/または循環(脈管、動脈)系の種々の疾患または障害を治療するために、薬物として使用される。
dsRNAおよびRNA干渉
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖(ds)RNA依存的な遺伝子特異的な転写後サイレンシングを含む現象である。この現象を研究して、実験的に哺乳動物細胞を操る初期の試みは、長鎖dsRNA分子に応答して活性化された活性な非特異的抗ウイルス防衛機構によって頓挫していた(Gil et al.,Apoptosis,2000.5:107−114)。のちに、21個のヌクレオチドRNAの合成二重鎖が、一般的な抗ウイルス機構を刺激することなく、哺乳動物細胞の遺伝子特異的RNAiを媒介することができることが発見された(Elbashir et al.Nature 2001,411:494−498、およびCaplen et al.PNAS USA 2001,98:9742−9747)。結果として、短い二重鎖RNAである低分子干渉RNA(siRNA)は、遺伝子発現を阻害し、遺伝子機能を理解するために広く使用されている。
RNA干渉(RNAi)は、低分子干渉RNAs(siRNAs)(Fire et al,Nature 1998,391:806)、またはマイクロRNAs(miRNAs)(Ambros V.Nature 2004,431:350−355)、およびBartel DP.Cell.2004 116(2):281−97)により媒介される。これに対応する過程は、植物において観察される場合、特異的な転写後遺伝子サイレンシング、また真菌において観察される場合、クエリングと一般に称される。
siRNA化合物は、内在性もしくは外来の遺伝子/mRNAの発現を下方制御またはサイレンシングする(即ち、完全または部分的に阻害する)、二本鎖RNAである。RNA干渉は、特定のdsRNA種が、特異的なタンパク質複合体に侵入する能力に基づき、これらは次いで相補的細胞RNAに対する標的とされ、それらを特異的に分解する。したがって、RNA干渉応答は、siRNAを含むエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とし、一般に、RNA誘発性サイレンシング複合体(RISC)と称され、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で生じ得る(Elbashir,et al.,Genes Dev.,2001,15:188)。より詳細には、より長いdsRNAは、III型RNAse(DICER、DROSHAなど(Bernstein et al.,Nature,2001,409:363−6およびLee et al.,Nature,2003,425:415−9を参照)によって消化され、短い(17〜29bp)dsRNA断片(短い阻害RNAまたは「siRNA」とも称される)になる。RISCタンパク質複合体は、これらの断片および相補的mRNAを認識する。全過程は、標的mRNAのエンドヌクレアーゼ切断によって終了する(McManus and Sharp,Nature Rev Genet,2002,3:737−47、Paddison and Hannon,Curr Opin Mol Ther.2003,5(3):217−24)。(これらの用語および提案される機構に関する追加情報については、例えば、Bernstein,et al.,RNA.2001,7(11):1509−21、Nishikura,Cell.2001,107(4):415−8、およびPCT広報第WO01/36646号を参照)。
研究によって、siRNAが哺乳動物およびヒトの双方において、インビボで有効であり得ることが明らかになった。具体的には、Bitkoらは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ヌクレオカプシドN遺伝子を対象とする特異的なsiRNAが、経鼻的に投与した場合に、マウスの治療に有効であることを示した(Nat.Med.2005,11(1):50−55)。siRNAの治療用途に関する概説については、例えば、Barik(Mol.Med 2005,83:764−773)およびChakraborty(Current Drug Targets 2007 8(3):469−82を参照)。さらに、加齢性黄斑変性(AMD)を治療するための、VEGFR1受容体を標的とする短いsiRNAを用いた臨床試験が、ヒト患者において実施された(Kaiser,Am J Ophthalmol.2006 142(4):660−8)。治療薬としてのsiRNAの使用に関するさらなる情報は、Durcan,2008.Mol.Pharma.5(4):559‐566、Kim and Rossi,2008.BioTechniques 44:613−616、Grimm and Kay,2007,JCI,117(12):3633−41に記載されている。
化学合成
本発明の化合物は、当技術分野において公知のリボ核酸(またはデオキシリボ核酸)オリゴヌクレオチドの合成のための方法のうちのいずれによって合成してもよい。かかる合成は、とりわけ、Beaucage and Iyer,Tetrahedron 1992;48:2223−2311、Beaucage and Iyer,Tetrahedron 1993;49:6123−6194、およびCaruthers,et.al.,Methods Enzymol.1987;154:287−313に記載され、チオエートの合成は、とりわけ、Eckstein,Annu.Rev.Biochem.1985;54:367−402に記載され、RNA分子の合成は、Sproat,in Humana Press 2005 edited by Herdewijn P.;Kap.2:17−31に記載され、それぞれの後続プロセスは、とりわけ、Pingoud et.al.,in IRL Press 1989 edited by Oliver R.W.A.;Kap 7:183−208に記載されている。
他の合成手順、例えば、Usman et al.,1987,J.Am.Chem.Soc.,109,7845、Scaringe et al.,1990,NAR.,18,5433、Wincott et al.,1995,NAR.23,2677−2684、およびWincott et al.,1997,Methods Mol.Bio.,74,59が、当時技術分野において公知であり、これらの手順は、5′末端のジメトキシトリチル、および3′末端のホスホラミダイトなど、一般の核酸保護基および結合基を用いてもよい。修飾(例えば、2′−O−メチル化)ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチドが、所望により組み込まれる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、別個に合成して、例えば、ライゲーション(Moore et al.,1992,Science 256,9923、Draper et al.,国際公開第WO93/23569号、Shabarova et al.,1991,NAR 19,4247、Bellon et al.,1997,Nucleosides & Nucleotides,16,951、Bellon et al.,1997,Bioconjugate Chem.8,204)、または合成および/または脱保護後のハイブリダイゼーションにより、合成後に接合することができる。
市販の機械(とりわけ、Applied Biosystemsから入手可能)を使用可能であり、オリゴヌクレオチドは、本明細書において開示される配列に従って調製されることに留意されたい。化学的に合成した断片の重複する対は、当技術分野において公知の方法(例えば、米国特許第6,121,426号を参照)を用いてライゲートすることができる。鎖を別個に合成し、その後管内で互いにアニールする。次いで、二本鎖siRNAsをアニールしなかった一本鎖オリゴヌクレオチド(例えば、それらの一方が過剰であるため)から、例えばHPLCによって分離する。本発明のsiRNAs断片またはsiRNA断片に関連して、2個以上のかかる配列を合成し、本発明で使用するために連結させることができる。
また、本発明の化合物は、例えば、米国特許第2004/0019001号(McSwiggen)に記載されているように、タンデム合成方法によって合成することもできるが、このとき両siRNA鎖は、切断可能なリンカーで隔てられた単一の隣接オリゴヌクレオチド断片または鎖として合成され、このリンカーがその後切断されて、ハイブリダイズしてsiRNA二重鎖の精製を可能にする、別個のsiRNA断片または鎖が提供される。このリンカーは、ポリヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーであってよい。
本発明は、本明細書において言及する疾患および状態のいずれかの治療のための2個以上のsiRNA分子を含む薬学的組成物をさらに提供する。前記2個の分子は、薬学的組成物中に、同等もしくは有利な活性を生じる量で物理的に一緒に混合してもよく、あるいは共有結合または非共有結合しても、または2個〜100個、好ましくは2個〜50個もしくは2個〜30個の範囲のヌクレオチドの長さの核酸リンカーによって一緒に接合されてもよい。一実施形態において、siRNA分子は、本明細書において記載するような二本鎖核酸構造体からなり、2つのsiRNA配列は、表I、II、III、またはIVに示す核酸から選択される。したがって、siRNA分子は、共有結合または非共有結合するか、あるいはリンカーで接合されて、タンデムsiRNA化合物を形成する。2つのsiRNA配列を含むかかるタンデムsiRNA化合物は、通常は、38個〜150個のヌクレオチドの長さ、より好ましくは38個もしくは40個〜60個のヌクレオチドの長さであり、2つを上回るsiRNA配列がタンデム分子に含まれる場合、それに応じてより長くなる。細胞内処理によって産生されるsiRNAをコードする2つ以上のより長い配列からなるより長いタンデム化合物、例えば、長いdsRNAもまた、2つ以上のshRNAをコードするタンデム分子同様想定される。かかるタンデム分子も本開示の一部とみなされる。本明細書において開示される2つ(タンデム)またはそれ以上(「RNAstar」)のdsRNA配列を含む化合物が想定されている。かかる「タンデム」または「star」分子の例は、本願の譲受人に譲渡され、参照によりその全体として本明細書に組み込まれるPCT特許公開第WO2007/091269号において提供される。
RhoAを標的にするdsRNA分子は、薬学的組成物中の主要な活性成分であっても、または2個以上のdsRNA(または2個以上のdsRNAをコードする分子または1つもしくは複数のタンデム分子の混合物であれば、2個以上のdsRNAをコードする、もしくは内因的に産生する分子)を含む薬学的組成物の1つの活性成分であってもよく、前記薬学的組成物は、さらに、1つまたは複数の付加的な遺伝子を標的にする1つまたは複数の付加的なdsRNA分子からなる。前記付加的遺伝子の同時阻害は、本明細書において開示される疾患の治療に対する相加効果または相乗効果を有する可能性が高い。
さらに、本明細書において開示されるdsRNA、またはかかるdsRNAを含む、またはコードする任意の核酸分子は、本明細書において開示される疾患の治療のための改善された標的化を達成するために、標的細胞上に発現した細胞表面内面化可能分子に対する抗体(アプタマー分子を含む)に連結または結合(共有結合的または非共有結合的に)することもできる。例えば、抗Fas抗体(好ましくは、中和抗体)を任意のdsRNAと結合(共有結合的または非共有結合的に)させてもよい。別の例において、リガンド/抗体のように作用し得るアプタマーを任意のdsRNAと結合(共有結合的または非共有結合的に)させてもよい。
本発明の核酸化合物は、直接送達しても、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターと共に送達してもよい。直接送達する場合、一般に、配列をヌクレアーゼ耐性にする。あるいは、配列は、発現カセットまたは構築物に組み込んで、本明細書において下記で説明するように配列を細胞中に発現させてもよい。一般に、この構築物は、標的細胞中で配列が発現できるように、適切な調節配列またはプロモーターを含む。本発明の化合物の送達のために場合により使用されるベクターは、市販されており、本発明の化合物の送達目的で、当業者に公知の方法で改変してもよい。
化学修飾
ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの全ての類似体または修飾体は、前記類似体または修飾体が、ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの機能に実質的に影響を及ぼさないという条件で、本発明で使用することができる。ヌクレオチドは、天然に生じるまたは合成的に修飾された塩基から選択することができる。天然に生じる塩基には、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルが含まれる。ヌクレオチドの修飾された塩基には、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル、2−プロピル、および他のアルキルアデニン類、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6−アザシトシンおよび6−アザチミン、擬似ウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン類、8−ヒドロキシルアデニンおよび他の8置換アデニン類、8−ハログアニン類、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン類、8−ヒドロキシルグアニンおよび他の置換グアニン類、他のアザアデニンおよびデアザアデニン類、他のアザグアニンおよびデアザグアニン類、5−トリフルオロメチルウラシル、ならびに5−トリフルオロシトシンが含まれる。いくつかの実施形態において、オリゴマー中の1つまたは複数のヌクレオチドは、イノシンで置換されている。
さらに、1つまたは複数のヌクレオチドの構造が、本質的に変更されており、治療的または実験的試薬としてより適したポリヌクレオチドの類似体を調製することができる。ヌクレオチド類似体の例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格が、ペプチド中に見られるものに類似するポリアミド骨格に置き換えられているペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は、酵素分解に対して耐性であり、インビボおよびインビトロにおいて向上した安定性を有することが示されている。オリゴヌクレオチドに行うことができる他の修飾には、ポリマー骨格、環状骨格、非環状骨格、チオホスフェート−D−リボース骨格、トリエステル骨格、チオエート骨格、2’−5’架橋骨格、人工核酸、モルホリノ核酸、ロックド核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、およびミラーヌクレオシド(例えば、β−D−デオキシリボヌクレオシドの代わりにβ−L−デオキシリボヌクレオシド)が含まれる。LNAヌクレオチドを含むsiRNA化合物の例は、Elmen et al.,(NAR 2005,33(1):439−447)に開示されている。
本発明の核酸化合物は、1つまたは複数の逆位ヌクレオチド、例えば、逆位チミジンまたは逆位アデニンを用いて合成することができる(例えば、Takei,et al.,2002,JBC 277(26):23800−06を参照)。
本明細書で使用する「非従来的部分」という用語は、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、非塩基対合ヌクレオチド類似体、および隣接するヌクレオチドに2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合によって接合したヌクレオチド、C3、C4、C5、およびC6部分、LNAおよびエチレン架橋核酸を含む架橋核酸を指す。
本明細書で使用される「キャッピング部分」という用語には、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、2’Oアルキル修飾を含む修飾脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分;逆位脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分およびそれらの修飾体;C6−イミノ−Pi;L−DNAおよびL−RNAを含むミラーヌクレオチド;5’OMeヌクレオチド;および4′,5′−メチレンヌクレオチドを含むヌクレオチド類似体;1−(β−D−エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4′−チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド;5′−アミノ−アルキルホスフェート;1,3−ジアミノ−2−プロピルホスフェート、3−アミノプロピルホスフェート;6−アミノヘキシルホスフェート;12−アミノドデシルホスフェート;ヒドロキシプロピルホスフェート;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;アルファ−ヌクレオチド;スレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環状3′,4′−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5′−5′−逆位脱塩基部分;1,4−ブタンジオールホスフェート;5′−アミノ;ならびに架橋および非架橋メチルホスホネートおよび5′−メルカプト部分が含まれる。
脱塩基デオキシリボース部分には、例えば、脱塩基デオキシリボース−3’−ホスフェート、1,2−ジデオキシ−D−リボフラノース−3−ホスフェート、1,4−アンヒドロ−2−デオキシ−D−リビトール−3−ホスフェートが含まれる。逆位脱塩基デオキシリボース部分には、逆位デオキシリボ脱塩基、3’,5’逆位デオキシリボ脱塩基5’−ホスフェートが含まれる。
「ミラー」ヌクレオチドは、天然に生じるかまたは一般に用いられるヌクレオチドと逆のキラリティーを有するヌクレオチド、即ち、天然に生じる(D−ヌクレオチド)の鏡像(L−ヌクレオチド)である。ヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドであってよく、少なくとも1つの糖、塩基、および/または骨格の修飾をさらに含んでもよい。米国特許第6,602,858号は、少なくとも1つのL−ヌクレオチド置換を含む核酸触媒を開示する。ミラーヌクレオチドには、例えば、L−DNA(L−デオキシリボアデノシン−3’−ホスフェート(ミラーdA)、L−デオキシリボシチジン−3’−ホスフェート(ミラーdC)、L−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート(ミラーdG)、L−デオキシリボチミジン−3’−ホスフェート(鏡像dT))およびL−RNA(L−リボアデノシン−3’−ホスフェート(ミラーrA)、L−リボシチジン−3’−ホスフェート(ミラーrC)、L−リボグアノシン−3’−ホスフェート(ミラーrG)、L−リボウラシル−3’−ホスフェート(ミラーdU))が含まれる。
構造A1または構造A2の種々の実施形態において、ZおよびZ’は不在である。他の実施形態において、ZまたはZ’は存在する。いくつかの実施形態において、それぞれのZおよび/またはZ’は、独立して、C2、3、C4、C5、またはC6アルキル部分、場合により、C3[プロパン、−(CH2)3−]部分またはその誘導体、例えばプロパノール(C3−OH/C3OH)、プロパンジオール、およびプロパンジオールのリン酸ジエステル誘導体(「C3Pi」)を含む。好ましい実施形態において、それぞれのZおよび/またはZ’は、2つの炭化水素部分を含み、一部の例では、C3Pi−C3OHまたはC3Pi−C3Piである。各C3は、共有結合、好ましくはリンに基づく結合により、隣接するC3に共有結合的に共役する。いくつかの実施形態において、リンに基づく結合は、ホスホロチオエート、ホスホノアセテート、またはリン酸ジエステル結合である。
構造A1の具体的な実施形態において、x=y=19であり、Zは、少なくとも1つのC3アルキルオーバーハングを含む。構造A2の具体的な実施形態において、x=y=18であり、Zは、少なくとも1つのC3アルキルオーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、C3−C3オーバーハングは、共有結合、好ましくはリン酸ジステル結合によって、(N)xまたは(N’)yの3’末端に共有結合している。いくつかの実施形態において、1番目のC3と2番目のC3との間の連結は、リン酸ジステル結合である。いくつかの実施形態において、3’非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3Piである。いくつかの実施形態において、3’非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3Psである。いくつかの実施形態において、3’非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3OH(OHはヒドロキシである)である。いくつかの実施形態において、3’非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3OHである。
種々の実施形態において、アルキル部分は、末端ヒドロキシル、末端アミノ酸基、または末端リン酸基を含む、C3アルキル部分、C4アルキル部分、C5アルキル部分、またはC6アルキル部分を含むアルキル誘導体を含む。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、C3アルキルまたはC3アルキル誘導体部分である。いくつかの実施形態において、C3アルキル部分は、プロパノール、プロピルホスフェート、プロピルホスホロチオエート、またはそれらの組み合わせを含む。C3アルキル部分は、リン酸ジエステル結合により、(N’)yの3’末端および/または(N)xの3’末端に共有結合している。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、プロパノール、プロピルホスフェート、プロピルホスホロチオエートを含む。いくつかの実施形態において、それぞれのZおよびZ’は、独立して、プロパノール、プロピルホスフェート、プロピルホスホロチオエート、それらの組み合わせ、またはそれらの複数、とりわけ2個もしくは3個の共有結合したプロパノール、プロピルホスフェート、プロピルホスホロチオエートまたはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、それぞれのZおよびZ’は、独立して、プロピルホスフェート、プロピルホスホロチオエート、プロピルホスホ−プロパノール;プロピルホスホ−プロピルホスホロチオエート;プロピルホスホ−プロピルホスフェート;(プロピルホスフェート)3、(プロピルホスフェート)2−プロパノール、(プロピルホスフェート)2−プロピルホスホロチオエートから選択される。いかなるプロパンまたはプロパノール共役部分も、ZまたはZ’に含まれてもよい。
例示的な3’末端非ヌクレオチド部分の構造は以下のとおりである。
適応症
本明細書において開示される分子および組成物は、CNS、PNS、前庭感覚系、視覚系、および/または循環(脈管、動脈)系の疾患および障害、ならびに細胞運動、細胞骨格調節、および微小管構築に関連する疾患および障害、および本明細書に記載する他の疾患および状態の治療の際に有用である。
CNS障害および傷害
種々の態様および実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、RhoA遺伝子に関連する疾患、障害、および傷害、例えば、細胞または組織中のRhoAのレベルに関連するまたはこのレベルに応答する中枢神経系(CNS)の疾患、障害、および傷害を、単独または他の療法と組み合わせて治療するのに有用であり、とりわけCNSの疾患または傷害を患っている、または罹患している、または発症しやすい対象を治療するのに有用である。
神経再生および神経保護に関連する状態
本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、脊髄ニューロンを二次損傷から保護し、機能の回復につながる軸索(神経)再生を促進するために使用することができる。
軸索再生が有益となる多くの適応症がある。軸索消失は、多発性硬化症、脳卒中、外傷性脳傷害、末梢性ニューロパシー、および慢性神経変性疾患などの障害における神経系の症状に寄与する。
中枢神経系(CNS)の傷害
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、中枢神経系(CNS)の傷害を治療するのに有用であり、とりわけ頭蓋の骨折または穿通(即ち、自動車事故、落下、銃創)に起因する外傷性または非外傷性の脊髄傷害および脳傷害(例えば、外傷性脳傷害(TBI))、疾患過程(即ち、神経毒、感染、腫瘍、代謝異常など)、または頭部の急激な加速または減速(即ち、揺さぶられっ子症候群、爆風)、鈍的外傷、脳震盪、および脳震盪症候群の場合などの閉鎖性頭部傷害を含むがこれらに限定されないCNSの傷害を患っている、または罹患している、または発症しやすい対象を治療するのに有用である。
さらに、頭部または背骨への打撃などに起因する中枢神経系への機械的傷害によって、虚血エピソードが生じる可能性がある。外傷は、異物と頭部、頸部、または脊柱の任意の位置または付属物との外傷性接触によって生じ得る、擦過傷、切開、打撲傷、穿刺、圧迫症などの組織侵襲を含み得る。他の形態の外傷性傷害は、体液の不適切な蓄積(例えば、正常な脳脊髄液または硝子体液の産生、代謝回転、または容量調節の遮断もしくは機能障害、あるいは硬膜下のまたは頭蓋内の血腫または浮腫)による、CNS組織の狭窄または圧迫から生じ得る。同様に、外傷性の狭窄または圧迫は、多量の異常な組織、例えば転移性腫瘍または原発性腫瘍が存在することから生じ得る。
脊髄傷害(SCI)
全米脊髄損傷統計センター(National Spinal Cord Injury Statistical Center)によって記載された2009年4月のSpinal Cord Injury Facts and Figures at a Glanceによると、米国における脊髄損傷(SCI)は毎年推定10,000〜12,000件であり、25万人以上の米国人が現在脊髄損傷を抱えて生活している。SCIを患っている人々のうち過半数(57.5%)は、その損傷時に雇用されていたと報告されている。脊髄損傷患者の治療を管理する費用は年間40億ドル近いが、これは賃金の損失、付加給付、および生産性などの間接的費用は含まず、この平均は2008年12月に年間64,443ドルである。
現在、SCIの有効な治療は存在せず、National Acute Spinal Cord Injury Studies(NASCIS) I、II、およびIIIにより、損傷後8時間以内に24時間投与される高用量のステロイドメチルプレドニゾロン(MP)が、現在の標準的治療である。しかしながら、その効果は小さく、賛否が分かれ、カナダなどの多くの国では、MPを標準的治療とすることは中止され、現在は治療の選択肢として分類されているだけである(Hugenholtz,2003)。近年、SCI後の早期の外科的介入(脊髄除圧術)が有望な結果を示すことを示す研究がなされている。Surgical Treatment of Acute Spinal Cord Injury Study(STASCIS)によると、初期損傷から1日以内に除圧術を受けた人々のうち24%は、American Spinal Injury Association(ASIA)の基準で測定したときに有意な改善を示したが、これらの結果の最終的判断には時期尚早である。今日、250件近くのSCIを扱う臨床試験が登録されているが、これらの大部分は、患者のリハビリテーションを扱うものである。したがって、新しい治療法の必要性があり、これはモデル系における新規の治療法の開発、およびその臨床への移行を必要とする。
一実施形態において、CNSへの損傷は、脊髄損傷(SCI)またはミエロパシーである。SCIまたはミエロパシーは、感覚および/または運動機能の喪失をもたらす、脊髄の障害である。2つの一般的なタイプの脊髄損傷は、外傷および疾患によるものである。外傷性傷害は、とりわけ自動車事故、落下、銃創、とりわけダイビング事故が原因となり、脊髄に影響を与える疾患には、ポリオ、二分脊椎、腫瘍、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、脊髄空洞症、横断性脊髄炎、およびフリードライヒ失調症が含まれる。
種々の実施形態において、本発明の核酸化合物および薬学的組成物は、脊髄損傷に起因する損傷、特に自動車事故、落下、運動中の怪我、労働災害、銃創に起因する脊髄外傷、背骨の衰弱(関節リウマチまたは骨粗しょう症などによる)に起因する、または正常な加齢過程により脊髄を保護する脊柱管が狭くなり過ぎた(脊髄の狭窄)場合の脊髄外傷、脊髄が引っ張られたとき、横向きに押されたとき、または圧迫されたときに生じる直接損傷、出血、体液の蓄積、および脊髄内または脊髄外(であるが脊柱管内)の腫脹後の脊髄への損傷の治療および防止に使用される。
したがって、本発明は、SCIを治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象においてSCIを治療する方法をさらに提供する。
脳傷害
一実施形態において、CNSに対する傷害は脳傷害である。外傷および脳卒中などの脳傷害は、西欧諸国において、死亡および能力障害の主な原因の1つである。外傷性脳傷害(TBI)は、現代社会において、入院および能力障害の最も重大な原因の1つである。臨床経験により、TBIが、傷害後即座に生じる一次損傷と傷害後数日中に生じる二次損傷とに分類できることが示唆されている。現在のTBIの治療法は、手術または外科的治療、あるいは主に対症療法である。
したがって、本発明は、脳傷害を治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象において脳傷害を治療する方法を提供する。
末梢神経傷害(PNI)
PNIは、運動機能、感覚機能、または双方の損失をもたらし得る。末梢神経傷害は、外傷(例えば、鈍的または鋭的創傷、外傷)または激しい圧迫の結果として生じ得る。伸展に関連する傷害は、最も一般的な形態である。また、ナイフの刃によって生じるものなどの裂傷も一般的である。北米では、外傷患者のおよそ2〜3%が重大な神経傷害を有すると考えられている。遡及的研究によると、四肢外傷の発生率は、医療援助を求める集団のおよそ1.4%であり、83%は55歳未満であり、50%は男性である。上肢または下肢の外傷後90日以内の神経傷害の合計発生率は、同集団において1.64%であった。末梢神経傷害は、脱髄または軸索変性をもたらし得る。臨床的に、脱髄および軸索変性の双方は、傷害を受けた神経の感覚機能および/または運動機能の撹乱を生じる。機能の回復は、再ミエリン化により、ならびに感覚受容器、筋終板、またはその双方の軸索再生および再神経支配によって生じる。この回復パターンは、交錯し不完全である。4度〜6度の傷害は、手術を必要とする。神経傷害手術の適応症は、以下のとおりである。
閉鎖性神経傷害:傷害3ヶ月後に、臨床的にも、電気診断検査によっても回復の兆候が見られない。
開放性神経傷害(即ち、裂傷):可能な限り即座の外科的診査が推奨される。間隔の喪失または運動麻痺が報告される全ての裂傷は、外科的に診査すべきである。
挫滅神経傷害:3ヵ月後、電気的または臨床的に、再神経支配の兆候が見られない場合、修復またはグラフトによる外科的再建が適応される。
周術期神経損傷。神経損傷は、手術中および手術の結果としても生じ得る。周術期神経傷害は、比較的まれであるが、患者に深刻な影響を与える。永久的な傷害は、5000例中1例発生すると考えられている。神経傷害は、大きな整形外科手術、ならびに膝関節置換術などにより(まれに)生じ得る。膝関節置換術において障害を受ける最も一般的な神経は、足を顔に向かって持ち上げる筋肉への神経(腓骨神経)である。この発生の確率は、おそらく数百分の1である。現在米国において、毎年550,000例を超える関節置換術が実施されており、ほとんどの場合は股関節および膝関節に関し、足関節、肘関節、肩関節、および指関節の全置換はあまり多くない。年間193,000件を超える人口股関節置換術が実施されている。この需要は、American Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS)の73回目の年次総会で発表されたように、今後25年間で大幅に増加すると予想されており、2030年には米国で348万例の股関節および膝関節置換術が実施されると予想されている。
前庭系の疾患および障害
種々の実施形態において、本発明の核酸化合物および薬学的組成物は、RhoAの発現が有害である前庭系に影響を及ぼす障害および疾患、例えばメニエール病を治療するのに有用である。ヒトを含むほとんどの哺乳類の前庭感覚系は、バランス、ならびに空間的方向性および安定性の感覚に寄与する。これは蝸牛と共に内耳迷路を構成する。前庭系は、回転運動を知らせる半規管系と、直線加速を知らせる耳石との2つの構成要素を含む。
メニエール病
特発性内リンパ水腫(ELH)としても知られるメニエール疾患は、内耳の障害であり、めまいおよび耳鳴り、さらに最終的にはニューロン傷害をもたらし、難聴につながる。メニエール病の正確な原因は解明されていないが、発症機序は、内リンパ液の蓄積による膜迷路の歪みと考えられている。内リンパ液は、主に蝸牛内の血管条によって、また前庭迷路内の半月面および暗細胞によって産生される(Sajjadi H,Paparella MM.Meniere's disease.Lancet.372(9636):406−14)。内リンパ腔から前庭水管を通って内リンパ嚢に至る内リンパ液の流れが妨げられると、内リンパ水腫が発生する。メニエール病は、対象の片耳または両耳に影響を及ぼす可能性がある。メニエール病に関連する主な病的状態は、衰弱性の性質のめまいおよび進行性難聴である。現在の治療法は、ニューロン変性および関連する難聴の進行の防止に成功していない。内耳神経を含む内耳のニューロンを損傷から保護し、または内耳神経の再生を誘導して、それによりメニエール病患者における難聴を軽減もしくは防止する治療的処置が非常に望ましい。
本明細書において提供される核酸、組成物、方法、およびキットは、メニエール病の危険性がある、またはメニエール病を患っている対象の治療の際に有用である。
神経系の障害
種々の実施形態において、本発明の核酸化合物および薬学的組成物は、神経系の障害を治療するのに有用である。
種々の実施形態において、神経系の障害は、脳卒中、脳卒中に類似する状態(例えば、脳不全、腎不全、心不全)、ニューロン死、てんかん、パーキンソニズム、グルテン運動失調、脳虚血、および脳血管発作から選択されるが、これらに限定されない。
てんかん
一実施形態において、神経系の障害はてんかんである。てんかんは、脳の正常機能における問題を特徴とする障害群である。これらの問題は、発作、身体の異常な動き、意識の消失、または意識の変化、ならびに精神的問題または感覚の問題を生じ得る。
したがって、本発明は、てんかんを治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象においててんかんを治療する方法をさらに提供する。
脳卒中
別の実施形態において、神経系の障害は脳卒中である。脳卒中は、血液供給の中断の結果生じる急性の神経系の傷害であり、脳への損傷をもたらす。ほとんどの脳血管疾患は、局所神経障害の突然の発症として現れる。この傷害は、変化しないままであることもあり、またはこれは改善するか、もしくは次第に悪化することもあり、通常は虚血病巣の中心に不可逆的ニューロン損傷をもたらすこともあるが、ペナンブラにおけるニューロンの機能障害は治療可能および/または可逆的である。長期間の虚血は、明らかな組織壊死をもたらす。その後2〜4日間にわたり、脳浮腫が生じて進行する。梗塞の範囲が広い場合、浮腫は顕著な腫瘍効果をそれに付随する全ての結果を伴って生じ得る。
ニューロン組織への損傷は、重度の能力障害および死につながる可能性がある。損傷の程度は、主として傷害組織の位置と範囲に影響される。急性の傷害に応答して活性化される内因性カスケードは、機能転帰に関与する。損傷を最低限に抑える、限定する、および/または逆転させるための努力は、臨床的帰結を軽減する高い可能性を有する。
したがって、本発明は、脳血管の状態を治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象において脳血管の状態を治療する方法をさらに提供する。
パーキンソニズム
一実施形態において、神経系の障害は、動作緩慢、筋硬直、振戦、および姿勢動揺を特徴とする運動制御障害を特色とする障害群であるパーキンソニズムである。パーキンソン症候群は、一般に、原発性パーキンソニズム、二次性パーキンソニズム、および遺伝型に分類される。これらの状態は、基底神経節のドーパミン作動性もしくは密接に関連した運動統合ニューロン経路の機能障害に関連する。
したがって、本発明は、パーキンソニズムを治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象においてパーキンソニズムを治療する方法をさらに提供する。
神経変性疾患
神経変性疾患は、CNS(脳および/または脊髄および/または眼)の細胞が消失した状態である。CNS細胞は、容易に集団で再生せず、そのため過度の損傷は破壊的となりうる。神経変性疾患は、ニューロンまたはそのミエリン鞘の劣化に起因し、やがて機能障害および能力障害につながる。これらは、おおまかに、表現型の作用により、運動失調などの動作に影響を与える状態、および記憶に影響を与え、認知症に関連する状態の2つの群に分類されるが、これらは相互に排他的ではない。認知症は、記憶、学習、推理、問題解決、および抽象的思考などの知的機能の喪失を特徴とするが、植物性機能は影響を受けない。神経変性疾患の非限定的な例は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病としても知られている)、ハンチントン病、レヴィー小体認知症、およびパーキンソン病である。
別のタイプの神経変性疾患には、ミスフォールドタンパク質またはプリオンに起因する疾患がある。ヒトにおけるプリオン病の非限定的な例は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)および変異型CJD(狂牛病)である。
眼の神経変性疾患の非限定的な例には、黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜色素変性、緑内障、および類似する疾患に罹患した対象における、網膜の光受容体の喪失がある。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、神経変性疾患および状態を治療するのに有用である。
本発明の薬学的組成物は、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、プリオン病認知症、アルツハイマー病、レヴィー小体認知症、ピック病、血管拡張性運動失調症(AT)、前頭側頭認知症(FTD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病、HIVに関連する認知症、脳卒中後の認知症、または任意の他の疾患に誘発される認知症、および眼の神経変性疾患を含むがこれらに限定されない神経変性障害を患っている、または罹患している、または発症しやすい対象を治療する際にとりわけ有用である。
アルツハイマー病(AD)
一実施形態において、神経変性障害はアルツハイマー病(AD)である。ADは、脳の複数の部分における機能の喪失および神経細胞の死を特徴とする進行性神経変性疾患であり、記憶および言語などの認知機能の喪失につながる。
したがって、本発明は、ADを治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象においてADを治療する方法をさらに提供する。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
一実施形態において、神経変性障害は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。ALSは、随意筋の動きを制御する中枢神経系の神経細胞である運動ニューロンの変性に起因する、進行性かつ通常は致命的な神経変性疾患である。この障害は、上位および下位運動ニューロンが変性し、筋肉へのメッセージの送信を停止することで、身体全体の筋肉の衰弱および萎縮をもたらす。筋肉は、機能することができず、次第に衰弱し、脱神経により線維束性収縮(痙攣)を発症し、最終的にその脱神経により萎縮する。ALSを患っている対象は、最終的には全ての随意運動を開始および制御する能力を喪失し得るが、膀胱および肛門の括約筋、ならびに眼球運動に関与する筋肉は、通常は(常にではないが)影響を逃れる。
したがって、本発明は、ALSを治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象においてALSを治療する方法をさらに提供する。特定の実施形態において、RhoAの下方制御は、CNSに神経保護特性を与える。
パーキンソン病(PD)
一実施形態において、神経変性障害はパーキンソン病(PD)である。パーキンソン病は、筋肉振戦、筋硬直、可動性の低下、前屈姿勢、随意運動緩慢、および仮面様顔貌を特徴とする神経系進行性の障害である。
したがって、本発明は、PDを治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象においてPDを治療する方法をさらに提供する。
血管拡張性運動失調症(AT)
一実施形態において、神経変性障害は血管拡張性運動失調症(AT)である。ATは、身体の多くの部分に影響を与え、深刻な能力障害をもたらす、まれな神経変性遺伝性疾患である。運動失調とは、微小拡張血管の協調運動不良および毛細血管拡張を指し、これら双方は、この疾患の特徴である。ATは、小脳(身体の運動協調性制御中枢)に影響を与え、また約70%の例で免疫系を弱体化させて、呼吸障害をもたらし、癌の危険性を高める。
したがって、本発明は、ATを治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象においてATを治療する方法をさらに提供する。
脳卒中後認知症(PSD)
一実施形態において、障害は脳卒中後認知症(PSD)である。約25%の人々が脳卒中後に認知症を有し、他の多くの人々はその後5〜10年間で認知症を発症する。さらに、多くの個人は、その高次脳機能(計画能力および情報処理速度など)のより軽度の障害を経験し、またその後の認知症発症の極めて高い危険性を有する。この過程における脳の深部の極めて小さい脳卒中(微小血管疾患と称される)は、脳卒中後認知症に特有な脳萎縮の特定されるパターンを導く過程において不可欠であると考えられる。
したがって、本発明は、PSDを治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象においてPSDを治療する方法をさらに提供する。
眼神経変性疾患
一実施形態において、神経変性疾患は、眼の神経変性疾患であり、これには黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜色素変性、緑内障、およびその他の眼疾患に罹患した対象における網膜神経節細胞(RGC)および/または光受容細胞の消失が含まれるが、これらに限定されない。
したがって、本発明は、眼神経変性疾患を治療するのに有効な量で、対象のCNSにおけるRhoA発現を下方制御する、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、治療の必要性がある対象において眼神経変性疾患を治療する方法をさらに提供する。
神経保護
さらなる実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、CNSの疾患、障害、もしくは傷害において、神経保護を提供すること、および/または脳保護を提供すること、および/または急性もしくは慢性のニューロン損傷を軽減することを目的としている。
脳血管障害
一実施形態において、神経系の障害は脳血管障害である。脳血管発作は、虚血性または出血性の頭蓋内血管イベントによる、突然の非痙攣性神経系機能喪失である。一般的に、脳血管発作は、脳内の解剖学的位置、血管分布、病因、罹患した個人の年齢、および出血性性質か非出血性性質かによって分類される(さらなる情報については、Adams et al.,Principles of Neurology,6th ed,pp777−810を参照)。
脳血管疾患は、中年期および後年期に主に発生する。それらは、米国において毎年およそ200,000例の死亡、および多数の神経系障害の原因となっている。脳卒中の発生率は年齢と共に増加して、急速に増加している人口の部分である多くの高齢者に影響を及ぼす。これらの疾患は、虚血性梗塞または頭蓋内出血をもたらす。
眼の虚血状態
虚血性視神経ニューロパシー(ION)には、視神経に虚血を生じる様々な障害が含まれる。定義によると、IONは、円板の浮腫が円板に急性的に存在する場合に前部と称され、視神経の眼球に最も近い部分の梗塞を示す。IONは後部の場合もあり、眼球の数センチ後部に位置する。虚血性視神経ニューロパシーは、通常は、60歳を超える人々にのみ発生する。ほとんどの例は、非動脈炎性であり、アテローム性動脈硬化、糖尿病、または視神経灌流圧の上昇に起因する。側頭動脈炎が、症例の約5%の原因である(動脈炎性ION)。
症状および兆候は、突然の部分的または完全な視力の喪失であり、視神経頭の腫脹およびしばしば出血を伴う。視野欠損は、水平境界での視野の半分の喪失として、または中心暗点または盲点(天然の盲点を取り巻く)として現れ得る。視力の低下後すぐに視神経円板の蒼白化が生じる。
前部虚血性視神経ニューロパシー
非動脈炎性前部虚血性視神経ニューロパシー(NAION)は、前部虚血性視神経ニューロパシー(AION)の2つの主なタイプのうちの1つであり、視神経への不十分な血液供給が視神経に損傷を与え、視力の喪失をもたらす状態である。NAIONは、患者の特定の心血管系危険因子と狭い視神経円板との組み合わせが原因となる。もう一方の主なタイプのAIONである動脈炎性前部虚血性視神経ニューロパシー(AAION)は、NAIONを生じる個人よりも一般にやや高齢者において発生する、より発症頻度の低い中型血管の炎症状態である。
この状態の原因の背後にある機序は十分に理解されていないが、神経眼科医は、一般に、2つの問題が相まって原因となるということで同意している。ほとんどの人々において、眼球外壁中の視神経が貫通する穴の直径は、視神経の直径よりも20〜30%大きい。NAIONを発症する傾向がある個人における2つの問題のうちの1つ目は、この20〜30%の誤差範囲を有さないことである。2番目の問題は、視神経の前方部分である眼神経円板に血液供給不良または虚血をもたらす心血管系危険因子に関係する。円板は、その結果腫脹し、そこにこのためのスペースがないため、結果として生じる視神経の圧迫が、さらに虚血をもたらす。
これらの心血管系危険因子のうち最も一般的なものには、糖尿病、高血圧、および高コレステロール値がある。これらの危険因子を発症する可能性には、遺伝因子が関わっている。他の遺伝因子がNAIONを発症する可能性に関与していることも証明されている。
様々な態様および実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、NAIONを治療するのに有用である。
緑内障
緑内障は、世界中で失明の主な原因の1つとなっている。これは世界のおよそ6680万人に発生し、毎年少なくとも12,000人の米国人が、この疾患により失明している(Kahn and Milton,Am J Epidemiol.1980,111(6):769−76)。緑内障は、米国で失明の2番目に一般的な原因であり、全失明原因の11%を超える。
緑内障は、高眼圧(IOP)、免疫系の妨害、および栄養素の送達の不足による視神経頭における軸索の変性を特徴とする。原発性開放隅角緑内障(POAG)として知られる最も一般的な形態の緑内障の1つは、小柱網(TM)における房水流出抵抗の増加に起因し、IOP上昇および結果としての視神経損傷をもたらす。
現在、緑内障を対象とする多くの薬物が存在し、点眼剤または軟膏により投与されているが、それら全ては、IOPの低下のみに集中し、神経網膜の損傷の防止には対処していない。使用可能な薬物のいくつかは、α−2−アドレナリン受容体拮抗薬の場合のように、心拍数の増加、血圧の上昇、頭痛、視界不良、疲労、口渇、および眼内または眼の周りの発赤など、ある程度深刻な副作用を有する。これらの副作用の多くは、薬物への全身暴露のみが原因ではなく、α−アドレナリン受容体小分子拮抗薬の低い特異性にもよる。本願の譲受人は、緑内障の新規の多角的な治療として、ヒトRhoA mRNAおよびタンパク質の遮断を提案する。
原発性開放隅角緑内障では、眼圧(IOP)上昇が、不全な房水排出路の結果として生じ、これは視神経ニューロパシー、その後の進行性網膜神経節細胞(RGC)軸索変性、およびRGCアポトーシスに関連する。現在の緑内障治療は、IOPの低下に焦点を合わせている。しかしながら、IOP上昇を伴わないタイプの緑内障もあり、視力喪失は、実際には視神経およびRGCの損傷に起因する。現在、臨床試験において、緑内障患者における神経保護および/または神経再生に対処する薬物はほとんどない。アルツハイマー病に対するFDAの認可を受けた神経保護薬であるNamenda(メマンチン)は、緑内障に対する第III相臨床試験を最近終了したが、プラセボと比較して緑内障患者において効果を有さないと思われる不本意な結果であった。RhoAは、RGCを含むCNSニューロンにおける運動、成長、分化、およびアポトーシスなどの細胞機能を制御する、低分子GTPaseタンパク質である。また、RhoAは、神経系の免疫細胞(小膠細胞およびマクロファージ)および星状膠細胞におけるシグナル伝達により、二次炎症および瘢痕性のCNS傷害応答にも関与する。視神経挫滅(ONC)傷害は、軸索切断RGCにおいてRhoAを活性化させ、これはアポトーシスおよび軸索再生の阻害のシグナルを送る。一方、siRhoAおよびC3トランスフェラーゼ細胞外酵素を含むRhoA拮抗薬による傷害を受けたRGCの治療は、RGC生存率およびニューロトロフィンによる軸索再生を有意に向上させる。RhoA活性化が、細胞収縮および細胞外基質産生を調整することにより、眼の小柱網の房水流出に対する抵抗の調節にも関与し、IOPの上昇をもたらすことが示されている(Zhang et al.,Am J Physiol Cell Physiol,259:1057.2008)。理論にとらわれるものではないが、緑内障眼におけるRhoAのシグナル伝達の遮断は、複数の効果により治療的利益を有し得る:(A)房水排出路の恒常性の補正、(B)RGCアポトーシスシグナル伝達の遮断、および(C)RGC軸索再生の促進。
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるdsRNA分子、組成物、方法、およびキットは、緑内障の危険性がある、または緑内障を患っている対象の治療の際に有用である。理論にとらわれるものではないが、本明細書において提供される治療用dsRhoA分子は、複数の機序によって緑内障を治療し、網膜神経節細胞(RGC)神経保護、RGC軸索再生の促進、および眼圧(IOP)の低下をもたらすと考えられている。
ニューロパシー
自律神経ニューロパシー
自律神経ニューロパシーは、血圧、心拍数、排便および排尿、および消化などの日常的な身体機能を管理する神経に損傷がある場合に生じる症状群である。
自律神経系は、心臓、胃腸管、および泌尿系に関わる神経からなる。自律神経ニューロパシーは、これらの器官系のいずれにも影響を与え得る。糖尿病患者において最も一般に認識されている自律神経機能障害は、患者が立ち上がったときの起立性低血圧または不快な失神感である。糖尿病性自律神経ニューロパシーの場合、心臓および動脈が、心拍数および血管緊張を適切に調節して、血液が脳内に連続的および十分に流れるよう維持できないことにより生じる。この症状は、通常は、洞性呼吸性変動、すなわち正常呼吸で認められる心拍数の通常の変化の喪失を伴う。これら2つの所見が認められる場合、心臓自律神経ニューロパシーが存在する。
胃腸管の症状には、胃排出遅延、胃不全麻痺、吐き気、鼓腸、下痢などがある。多くの糖尿病患者は糖尿病に対する経口薬を服用するため、このような薬剤の吸収が、胃排出遅延により大きく影響される。これは、血糖値が正常または既に低いときに、経口糖尿病薬を食前に服用し、数時間または場合により数日後まで吸収されない場合、低血糖をもたらし得る。小腸の緩慢な活動は、細菌の過剰増殖を生じ得、これは高血糖の存在により悪化する。これは鼓脹、ガス発生、および下痢の原因となる。
泌尿器の症状には、頻尿、尿意切迫、失禁、および残尿が含まれる。この場合も、糖尿が残留するため尿路感染症が頻発する。残尿は膀胱憩室症、結石、逆流性腎症などの原因となり得る。
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される核酸、組成物、方法、およびキットは、自律神経ニューロパシーの危険性がある、または自律神経ニューロパシーを患っている対象の治療の際に有用である。
脳ニューロパシー
脳神経が影響を受ける場合は、動眼神経(第3脳神経)ニューロパシーが最も一般的である。動眼神経は、外側直筋および上斜筋を除く、眼球を動かす全ての筋肉を制御する。これはまた、瞳孔を収縮し眼瞼を開く役割も果たす。糖尿病性第3脳神経麻痺の発症は通常は突然であり、前頭痛または眼窩周囲痛から始まり、次いで複視を生じる。瞳孔サイズを制御する筋肉を除き、第3脳神経により神経支配される動眼筋の全てが影響を受け得る。眼の外側直筋(眼球を横方向に動かす)を神経支配する第6脳神経である外転神経もよく影響を受けるが、(眼球を下方向に動かす上斜筋を神経支配する)第4脳神経である滑車神経の関与はまれである。胸部神経または腰椎神経の単ニューロパシーが生じ、心筋梗塞、胆嚢炎、または虫垂炎に似た疼痛症候群の原因となることもある。糖尿病患者では、手根管症候群などの絞扼性ニューロパシーの発症率が高い。
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される核酸、組成物、方法、およびキットは、脳ニューロパシーの危険性がある、または脳ニューロパシーを患っている対象の治療の際に有用である。
癌性ニューロパシー
末梢性ニューロパシーは、最も一般的な癌の合併症の1つである。癌患者における末梢神経系機能障害の鑑別診断は、広範であり、腫瘍による直接神経圧迫または浸潤、癌治療の神経毒性、栄養欠乏、および傍腫瘍性障害を含む。末梢性ニューロパシーを示すが、既知の癌の診断を受けていない患者において、ニューロパシーが以前に診断されなかった新生物の間接的影響である可能性を考慮することは重要である。
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるdsRNA分子、組成物、方法、およびキットは、癌性ニューロパシーの危険性がある、または癌性ニューロパシーを患っている対象の治療の際に有用である。
圧迫性ニューロパシー
絞扼性ニューロパシー:絞扼性ニューロパシーという用語は、神経が、線維性もしくは線維骨性トンネル内で機械的に収縮している、または線維帯によって変形している、特定の位置に発生する孤立性の末梢神経傷害を指す。いくつかの例では、神経は慢性的な直接圧迫によって傷害を受け、別の例では、角形成および伸展力が神経に機械的な損傷をもたらす。線維骨性トンネルにおける神経圧迫の一般的な例は、手根管症候群および肘部管の尺骨ニューロパシーである。角形成および伸展傷害は、肘関節の大奇形および神経性胸郭出口症候群に関連する尺骨ニューロパシーにおける神経傷害(「遅延性尺骨神経麻痺」)の重要な機序である。外部からの力による反復する神経圧迫は、肘の尺骨ニューロパシー、および手の尺骨神経深枝の病変など、局所神経傷害の原因ともなり得る。後者のニューロパシーは、「絞扼性ニューロパシー」の厳格な定義は満たさないが、しばしばこの題材を検討する際に考慮される。これら全ての孤立性ニューロパシーの病理学的特徴には、局所脱髄およびウォラー軸索変性の様々な組み合わせが含まれる。
様々な態様および実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、圧迫性ニューロパシーおよび/または絞扼性ニューロパシーを治療するのに有用である。
糖尿病性ニューロパシー
糖尿病性ニューロパシーは、糖尿病の一般的な合併症であり、高血糖値(高血糖症)により神経が損傷を受ける。糖尿病性ニューロパシーは、I型糖尿病およびII型糖尿病の双方において発症する。
糖尿病を有する人々は、一般に神経組織に一時的または永久的な損傷を生じる。神経傷害は、血流の減少および高血糖値が原因となり、血糖値が良好に制御されていない場合に発症する可能性が高い。平均的に、症状は糖尿病診断の10〜20年後に始まる。糖尿病を有する人々のおよそ50%は、最終的に神経損傷を生じる。抹消神経傷害は、頭蓋内の神経(脳神経)または脊柱からの神経およびその分枝に影響を及ぼす可能性がある。このタイプの神経傷害(ニューロパシー)は、段階的に発症する傾向がある。自律神経ニューロパシーは、心筋および平滑筋を含む生体機能を調節する神経に影響を及ぼす。
糖尿病性ニューロパシーにおける微小血管疾患
血管疾患および神経疾患は、密接に関連し、結び付いている。血管は正常な神経機能に依存し、神経は十分な血流に依存している。微小血管系における最初の病理学的変化は血管狭窄である。疾患の進行に伴い、ニューロン機能障害は、酸素圧低下および低酸素の一因となる、毛細血管基底膜の肥厚化および内皮の過形成などの血管異常の発生と密接に相関する。ニューロン虚血は、糖尿病性ニューロパシーの確立された特徴である。血管拡張剤(例えば、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アルファ1−拮抗薬)は、ニューロンの血流の実質的な改善、それに対応して神経伝導速度の改善をもたらし得る。したがって、微小血管の機能障害は、神経の機能障害の進行と並行して糖尿病の初期に生じ、糖尿病性ニューロパシーにおいて観察される構造的、機能的、および臨床的変化の重症度に寄与するのに十分であり得る。末梢性ニューロパシー(脚)、感覚運動ニューロパシーは、糖尿病における下腿潰瘍の病理の重要な要素である。
神経伝導研究は、ニューロパシーが糖尿病診断時に患者の10〜18%で既に存在することを実証しており、このことは末梢神経傷害が疾患の初期段階で軽度の血糖調節異常と共に発生することを示している。ニューロパシーが糖尿病の初期の臨床的徴候であるという概念は、40年以上前に提示されており、大部分の研究は、IGTとニューロパシーとの間の関連性を報告している。IGTおよび付随するニューロパシーを有する患者のほとんどは、顕著なニューロパシー性疼痛を伴う対称性遠位性多発ニューロパシーを有する。IGTニューロパシー(Microvascular complications of impaired glucose tolerance−Perspectives in Diabetes,J.Robinson Singleton,in Diabetes December 1,2003)は、表現型としては、初期の糖尿病性ニューロパシーと類似し、これも疼痛を含む感覚症状および自律神経機能傷害の原因となる。初期糖尿病性ニューロパシー患者669例の調査において、感覚症状は60%を超え、不能症はほぼ40%であり、他の自律神経の障害は33%であったが、運動障害の証拠はわずか12%のみであった。これらの臨床所見は、疼痛シグナル、温度シグナル、および自律神経シグナルを伝える小無髄神経線維の顕著な初期障害を示している。皮膚生検からの無髄表皮内神経線維の直接的定量化は、IGTおよび初期糖尿病に関連するニューロパシーを有する患者における類似の線維喪失および形態変化を示している。
自律神経機能傷害、特に勃起不全および心臓迷走神経反射の変化は、糖尿病におけるニューロパシー性損傷に一般的な初期の特徴である。IGT患者の研究は、一般的な迷走神経性自律神経障害も示唆しており、別の研究は、同年齢の血糖正常対照被験者よりも高い比率のIGT患者において、運動後の異常な心拍数回復、深呼吸時のR−R間隔変動の鈍化、および呼気対吸気比の減少(全て迷走神経性自律神経障害の基準)が認められた。
糖尿病における神経損傷は、運動、感覚、および自律神経線維に影響を与える。運動性ニューロパシーは、筋肉の衰弱、萎縮、および不全麻痺の原因となる。感覚性ニューロパシーは、痛み、圧力、および熱に対する防御感覚の消失につながる。痛みの不在は、無感覚な足において、潰瘍化、認知されない外傷、およびシャルコー神経性関節症を含む多くの問題を招く。患者は、創傷が進行してしまうまで治療を求めない可能性がある。感覚機能障害および運動機能障害の併発により、患者が足に異常な応力を付与する可能性があり、その結果外傷を生じ、これが感染につながる可能性がある。自律神経系交感神経ニューロパシーは、血管拡張および発汗減少の原因となり、これは特に皮膚の破壊および微小血管の流れの機能的変化を生じやすい、高温で過度に乾燥した足の原因となる。また、自律神経機能傷害(および皮膚構造の脱神経)は、皮膚の完全性の喪失につながり、これは微生物の侵入に理想的な部位を提供する。ニューロパシー性の足は自発的には潰瘍化せず、むしろそれはニューロパシーに付随する一部の形態の外傷の組み合わせである。
微小血管の機能障害は、神経の機能障害の進行と並行して糖尿病の初期に生じ、糖尿病性ニューロパシーにおいて観察される構造的、機能的、および臨床的変化の重症度に寄与するのに十分であり得る。
様々な態様および実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、糖尿病性ニューロパシーを治療するのに有用である。
薬剤性ニューロパシーおよび中毒性ニューロパシー
日常的な臨床診療において直面する中毒性ニューロパシーのほとんどは、医原性薬剤中毒に起因し、巨大製薬会社などの集団職業性被爆はまれである。過半数であり、残念ながら最も困難な中毒性ニューロパシーの症例は、小規模かつしばしば偶然の職業性被爆による、または故意および殺人での摂取による個人の中毒である。
特発性多発ニューロパシーは、末梢性ニューロパシーの症例の有意な割合を占める。さらに、ニューロパシーの多数の特定可能な原因は、利用できる予防的もしくは治療的介入を有さず、対症療法のみである。したがって、中毒性または薬物性ニューロパシーの検出は、生活の質に影響する重要な診断となり得る。薬物性ニューロパシーは、珍しいが(1人の外来患者の神経学的環境における症例の2〜4%)、介入が有意な改善または症状の回復をもたらし得ることから、認識することは極めて重要である。
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるdsRNA分子、組成物、方法、およびキットは、中毒性ニューロパシーの危険性がある、または中毒性ニューロパシーを患っている対象の治療の際に有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるdsRNA分子、組成物、方法、およびキットは、薬剤性ニューロパシーの危険性がある、または薬剤性ニューロパシーを患っている対象の治療の際に有用である。
化学療法誘発性ニューロパシー
薬剤性または中毒性ニューロパシー、および癌性ニューロパシーともみなし得る化学療法誘発性ニューロパシーは、ある特定の癌治療のための化学療法に使用される化学物質が末梢神経を損傷または破壊するときに生じる。
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるdsRNA分子、組成物、方法、およびキットは、化学療法性ニューロパシーの危険性がある、または化学療法性ニューロパシーを患っている対象の治療の際に有用である。
胃腸ニューロパシーおよび栄養性ニューロパシー
胃腸系に関連するニューロパシーは、栄養欠乏に起因するものとして最も一般的に認識されている。このような欠乏は、栄養不良(例えば、アルコール依存症)、または身体的変化(例えば、外科的切除/バイパス)の結果としての吸収面の減少、または腸壁への浸潤(例えば、クローン病)によるものであり得る。免疫介在性機序は、現在複数の全身症状(例えば、セリアック病、炎症性腸疾患)を有すると認識される一部の胃腸状態において、ニューロパシーの発現に関与している疑いがある。
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるdsRNA分子、組成物、方法、およびキットは、胃腸ニューロパシーの危険性がある、または胃腸ニューロパシーを患っている対象の治療の際に有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるdsRNA分子、組成物、方法、およびキットは、栄養性ニューロパシーの危険性がある、または栄養性ニューロパシーを患っている対象の治療の際に有用である。
遺伝性ニューロパシー
シャルコー・マリー・ツース病
シャルコー・マリー・ツース病(CMT)とは、遺伝性末梢性ニューロパシーを指し、その名は1800年代後半にそれらについて記載した3人の研究者に由来する。2500人中およそ1人がCMT病に冒されることから、これは最も一般的な遺伝性の神経系障害のうちの1つである。CMT患者の大半は、常染色体優性遺伝を有するが、X連鎖優性であり、常染色体劣性型も存在する。優性遺伝性障害であっても所定の患者における新突然変異として開始する可能性があることから、散発例と思われるものも発生する。症例の大半は脱髄性であるが、最大3分の1は、原発性軸索またはニューロン障害であると考えられる。ほとんどの患者は、遠位部の衰弱、感覚喪失、足奇形(凹足および槌趾)、および無反射を特徴とする、「典型的な」CMT表現型を有する。しかしながら、一部の患者は、幼児期に重度の能力障害を発症し(デジェリン・ソッタス病または先天性ミエリン形成不全症)、他の患者は、疾患の症状を(もしあるとしても)ほとんど発症しない。
様々な態様および実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、遺伝性ニューロパシーを治療するのに有用である。様々な態様および実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、シャルコー・マリー・ツース病を治療するのに有用である。
免疫介在性ニューロパシーおよび慢性免疫介在性ニューロパシー
自己免疫機序が、免疫療法に適したいくつかのニューロパシー症候群に関係している。全体として、このようなニューロパシーは比較的一般的である(Barohn et al(1998)およびVerghese et al(2001))。しかしながら、実際には、自己免疫性ニューロパシーの多くは、一般に認められた臨床診断基準がないため、または信頼できる血清検査の使用可能性により、診断が難しい。その結果、自己免疫性ニューロパシーを有する多くの患者は、その代わりに「特発性ニューロパシー」を有すると診断され、その疾患の進行にもかかわらず、治療されないままとなる。
慢性自己免疫性ニューロパシーは、免疫介在性の末梢神経損傷に起因する多様な症候群の群である。このような障害の多くには確定的な診断試験がなく、対照治験がほぼまたは全くなされていない。その結果、診断が見逃され、患者は治療されないままとなる。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、免疫介在性ニューロパシーを治療するのに有用である。様々な態様および実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、慢性免疫介在性多発ニューロパシーを治療するのに有用である。
感染性ニューロパシー
感染性ニューロパシーの非限定的な例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に関連するニューロパシー、ライム病性ニューロパシー、ハンセン病に関連するニューロパシー、帯状ヘルペスニューロパシー(帯状疱疹およびヘルペス後神経痛)、C型肝炎ニューロパシー、単純ヘルペス神経炎、ジフテリア性神経炎、およびシャーガス病がある。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、感染性ニューロパシーを治療するのに有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に関連するニューロパシーを治療するのに有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ライム病性ニューロパシーを治療するのに有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ハンセン病に関連するニューロパシーを治療するのに有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、帯状ヘルペスニューロパシーを治療するのに有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、C型肝炎ニューロパシーを治療するのに有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、単純ヘルペス神経炎を治療するのに有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ジフテリア性神経炎を治療するのに有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、シャーガス病を治療するのに有用である。
ニューロパシー性疼痛(NP)
国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)は、NPを「末梢神経系または中枢神経系の疾患または損傷、および神経系の機能障害に起因する疼痛」と定義している。
疼痛は、例えば、機械的な脊椎痛と神経根障害またはミエロパシーなど、侵害受容型およびニューロパシー型がしばしば混在する。侵害受容性脊椎痛が、根分布と似て広範囲に広がる可能性があることは、一般に認識されていない。優性疼痛型を特定して適切に治療することは、困難となり得る。このような患者は、慎重な検査、画像化、および神経生理学的検証を要する。
NPに関与する病態生理学的特性は、概して5つの群に分類される:損傷を受けた一次求心性線維における異所性刺激の発生、線維の相互作用、中枢性感作、脱阻害(正常な阻害機構の不良または低下)、および可塑性(結合性の変化を伴う変性性および再生性の変化)。
疼痛は、神経系の疾患のよくある症状であり、治療におけるある程度の進歩は見られるものの、疼痛はしばしば全ての治療法に依然として応答しない。ニューロパシー性疼痛に関する概説については、例えば、Scadding J.ACNR,v.3 n.2 MAY/JUNE 2003,pages 8−14を参照されたい。ニューロパシー性疼痛は、末梢神経の癌の直接的な結果として(例えば、腫瘍による圧迫)、また多くの化学療法薬の副作用として、癌においてよく見られる。
アロディニア
文字通りには「別の力」を意味するアロディニアは、通常は痛みを誘発しない熱的または機械的な刺激による疼痛である。アロディニアは、ニューロパシー、複合性局所疼痛症候群、ヘルペス後神経痛、線維筋痛、および片頭痛などの多くの疼痛状態の臨床的特徴である。また、アロディニアは、脊髄傷害を含む神経損傷の治療に使用される幹細胞の一部の集団にも起因し得る。
アロディニアには様々な種類またはタイプがあり、これには、機械的アロディニア(接触性アロディニアとしても知られている)、静的機械的アロディニア(軽い接触/圧迫に応答した疼痛)、動的機械的アロディニア(軽擦に応答した疼痛)、熱(温または冷)アロディニア(患部における通常は温和な皮膚温度による疼痛)が含まれる。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ニューロパシー性疼痛を治療するのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、アロディニアを治療するのに有用である。
感覚運動ニューロパシー
長い神経線維は、神経伝導速度が神経の長さに比例して遅くなるため、短い神経線維よりも高い程度で影響を受ける。この症候群では、感覚の低下および反射の喪失がまず足指に左右対称に生じ、次いで上方に広がる。これは、通常、痺れ、感覚喪失、感覚異常、およびの夜間の疼痛の手袋・靴下型分布と説明される。この疼痛は、灼熱痛、刺すような感覚、うずき、または鈍痛のように感じることがある。チクチクする感覚は一般的である。固有受容感覚、即ち肢が空間のどこにあるかの感覚の喪失は、初期に影響を受ける。これらの患者は、破片などの異物を踏んだとき、または合わない靴によりたこを生じたときに感じることができない。その結果、これらの患者は、足および脚に潰瘍および感染症を発症する危険性があり、これは切断につながる可能性がある。同様に、これらの患者は、膝、足首、または足の多発性骨折を起こし、シャルコー関節を発症する可能性がある。運動機能の喪失は、足指の背屈拘縮、いわゆる槌趾を引き起こす。このような拘縮は足だけでなく手でも起こる。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、感覚運動多発ニューロパシーを治療するのに有用である。
細胞骨格調節
細胞運動、細胞骨格調節、微小管構築
RhoファミリーGTPasesは、表面受容体をアクチン細胞骨格の構築に関連付け、基本的な細胞過程において重要な役割を果たす調節分子である。RhoAは、アクチンを重合させ、微小管の形成に影響を与える機能を果たす足場特性を有する。アクチンは、Rhoファミリーの低分子GTPaseによって調節される。遊走性細胞は、特有のアクチン細胞骨格の分極を示す。アクチンフィラメントは、細胞の突起した前部で重合するが、アクチンフィラメント束は、細胞体内で収縮し、これは細胞の後部の退縮をもたらす。アクチン細胞骨格は、細胞遊走の駆動力を提供する。最近の研究は、Rho GTPaseは、アクチン細胞骨格を構築することに加え、微小管の構築および動力にも影響を与え得ることを示唆している。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、細胞運動、細胞骨格調節、微小管構築に関連する障害または疾患の防止または治療に有用である。
血管新生、血管疾患、動脈疾患
既存の血管からの新しい血管の形成である血管新生は、複雑な多段階過程である。これは、血管内皮細胞の血管新生成長因子受容体の刺激、内皮細胞の基底膜のタンパク質分解性分解、内皮細胞増殖および遊走、周囲の細胞外基質の分解、血管成熟化、支持細胞(例えば、周皮細胞)の動員、および最後に新しく形成された動静脈ループの閉鎖を含む(Folkman J.1971.Tumour angiogenesis:therapeutic implications.NEJM 285:1182‐1185;Yancopoulos GD et al.2000.Vascular−specific growth factors and blood vessel formation.Nature 407:242‐248;Carmeliet P.2003.Angiogenesis in health and disease.Nat Med 9:653‐660)。これらの各段階は、刺激分子(血管新生因子)および阻害分子(血管新生阻害因子)の双方の活性によって厳密に調節される(Carmeliet P & Jain JK.2000.Angiogenesis in cancer and other diseases.Nature 407:249‐257)。正常な状態において、血管新生阻害因子の活性が優性であるため、血管は休止している。血管新生因子を活性化させる低酸素または炎症などの特定の条件下では、このバランスは血管新生を支持するよう移行するが、この事象は「血管新生スイッチ」と称される。
血管新生の抑制は、例えば、増殖性網膜症に関連する失明を防止するため、および腫瘍成長を制限するためなど、種々の病的状態の治療として望ましい。研究により、内皮細胞の集合の調節におけるRho活性の臨床的役割および選択的役割が特定され、Rho活性の抑制が新血管形成の組織化段階を抑制するための戦略として特定される。
血管系において、Rhoシグナル伝達経路は、内皮バリア機能、炎症および白血球経内皮遊走、血小板活性化、血栓および酸化ストレス、ならびに平滑筋の収縮、遊走、増殖、および分化の調節に密接に関与し、したがってアテローム発生に関連する変化の多くに関わっている。実際に、スタチンの有益な非脂質低下作用の多くは、Rhoタンパク質活性化を阻害するそれらの能力の結果として生じると考えられている(例えば、Hoang MV et al.Rho activity critically and selectively regulates endothelial cell organization during angiogenesis.PNAS USA.2004 February 17;101(7):1874‐1879、Rolfe BE et al.Rho and Vascular disease.Atherosclerosis.2005 2005 Nov;183(1):1−16を参照)。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、血管新生の抑制に有用である。種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、血管疾患を治療するのに有用である。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、動脈疾患を治療するのに有用である。
眼血管新生−角膜、網膜、脈絡膜
既存の血管樹からの新しい血管の形成である眼血管新生は、重度の視力喪失の主要な原因である。これは、網膜、脈絡膜、および角膜を含む眼の様々な構造体に影響を与え得る。
通常は増殖性糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞、または未熟児網膜症で見られる網膜血管新生は、網膜の虚血または低酸素に対する異常な血管応答の結果である。網膜血管新生において、網膜血管内皮細胞は内境界膜を通って硝子体内へと増殖を開始し、ここで硝子体出血または牽引性網膜剥離を引き起こす可能性がある。
脈絡膜(網膜下)血管新生。新生血管型の加齢性黄斑変性(AMD)では、脈絡膜血管が変性ブルッフ膜を通って網膜下腔内に成長し、網膜下滲出および出血を生じる(Ambati J et al.2003.Age−related macular degeneration:aetiology,pathogenesis and therapeutic strategies.Surv Ophthalmol 48:257‐293)。この脈絡膜の血管新生応答を引き起こす初期刺激は、未だに論議されている。局所炎症が血管の内方成長を誘発するモデルが、現在最も優位である(Tezel TH et al.2004.Pathogenesis of age−related macular degeneration.Trends Mol Med 10:417‐420)。
角膜血管新生。角膜の新血管形成は、その透明性を損ない、重度の視力障害につながる(Chang JH et al.2001.Corneal neovascularization.Curr Opin Ophthalmol 12:242‐249)。これは、慢性低酸素または種々の炎症性刺激、例えば感染性角膜炎、アルカリによる熱傷、および移植片拒絶反応に応答して見られる、一般的な臨床的問題である。角膜血管新生は輪部血管から現れ、したがって眼表面の障害は表層の新血管形成を生じやすくし、一方間質性角膜炎は、血管の深い浸潤を引き起こす。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、網膜血管新生に関連する疾患、障害、または傷害の防止または治療に有用である。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、脈絡膜(網膜下)血管新生に関連する疾患、障害、または傷害の防止または治療に有用である。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、角膜血管新生に関連する疾患、障害、または傷害の防止または治療に有用である。
黄斑変性
米国で65歳を超える個人における最良矯正視力の低下の最も一般的な原因は、加齢性黄斑変性(AMD)として知られる網膜障害である。AMDが進行すると、この疾患は鮮明な中心視の喪失を特徴とする。AMDの影響を受ける眼の部分は、光受容細胞から主に構成される網膜中心の小さな部分である黄斑である。AMD患者の約85%〜90%を占める、いわゆる「萎縮型」AMDは、眼の色素分布の変化、光受容体の喪失、および細胞の全体的な萎縮による網膜機能の低下を伴う。いわゆる「滲出型」AMDは、網膜下領域における血栓および瘢痕をもたらす異常な脈絡膜血管の増殖を伴う。したがって、滲出型AMDの発症は、神経網膜下での異常な脈絡膜新生血管網の形成(脈絡膜新生血管形成、CNV)によって生じる。新しく形成された血管は過剰に漏出する。これは網膜下の体液および血液の蓄積をもたらし、視力の喪失につながる。最終的に、脈絡膜および網膜を冒す大きな円板状瘢痕が形成されると、罹患領域において機能的な網膜が完全に喪失する。萎縮型AMD患者は、質の低下した視力を維持し得る一方、滲出型AMDはしばしば失明に至る(Hamdi & Kenney,Age−related Macular degeneration‐a new viewpoint,Frontiers in Bioscience,e305−314,May 2003)。CNVは、滲出型AMDにおいてだけでなく、他の眼の病変、例えば眼ヒストプラスマ症候群、網膜色素線条症、ブルッフ膜破裂、近視性変性、眼の腫瘍、および一部の網膜変性疾患においても生じる。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、網膜変性疾患を治療するのに有用である。種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、加齢性黄斑変性(AMD)を治療するのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、滲出型加齢性黄斑変性(AMD)を治療するのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、萎縮型加齢性黄斑変性(AMD)を治療するのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、眼ヒストプラスマ症候群を治療するのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、網膜色素線条症を治療するのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ブルッフ膜破裂を治療するのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、近視性変性を治療するのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、眼の腫瘍を治療するのに有用である。
微小血管障害
微小血管障害は、微小毛細血管およびリンパ管に主に影響し、したがって直接的な外科的介入の範囲外である、幅広い状態の群から構成される。微小血管疾患は、概して、血管攣縮性疾患、脈管炎、およびリンパ管閉塞に分類できる。さらに、公知の血管状態の多くは、微小血管的要素を有する。
血管攣縮性疾患
血管痙攣疾患は、未知の理由で末梢の血管収縮反射が過敏になる比較的状態の群である。これは不適切な血管収縮と組織虚血を生じ、組織喪失にさえ至る。血管攣縮性症状は、通常は温度または振動機械の使用に関連するが、他の状態から続発する場合もある。
脈管炎疾患
脈管炎疾患は、微小循環における一次炎症過程を伴う疾患である。脈管炎は、通常は、自己免疫障害または結合組織障害の一要素であり、一般的に外科的治療に適さないが、症状が重篤な場合は免疫抑制治療が必要となる。
リンパ管閉塞疾患
下肢または上肢の慢性腫脹(リンパ浮腫)は、末梢リンパ管閉塞の結果である。これは比較的まれな状態であり、多数の原因を有するが、その一部は遺伝的なものであり、一部は後天的なものである。治療の中心となるのは、正確に適合させた圧迫帯および間欠的圧迫装置の使用である。
糖尿病に関連する微小血管病変
糖尿病は、失明の主な原因であり、切断および不能症の最大の原因であり、また最
も頻繁に発症する慢性小児疾患の一つである。糖尿病は米国における末期腎疾患の主な原因でもあり、他の腎疾患と比較して、その有病率は31%である。また、糖尿病は、腎臓移植の最も頻度の高い適応症であり、全移植手術の22%を占める。
一般的に、糖尿病合併症は微小血管疾患または大血管疾患に大きく分類することができる。微小血管合併症には、ニューロパシー(神経損傷)、ネフロパシー(腎疾患)、および視力障害(例えば、網膜症、緑内障、白内障、および角膜疾患)が含まれる。網膜、糸球体、および神経脈管においても、類似する病態生理学的特徴が、糖尿病特異的な微小血管疾患を特徴付ける。糖尿病に関連する微小血管病変は、例えば長期にわたり糖尿病を有した人々に生じ得る、最も小さい血管(毛細血管)の疾患と定義される。血管壁は、異常に肥厚するが、脆弱になる。そのため、毛細血管は出血し、タンパク質を漏出させ、体内の血流を緩慢にする。
臨床および動物モデルのデータは、慢性高血糖が、全てのタイプの糖尿病性微小血管障害の中心的な誘発因子であることを示唆している。高血糖の持続期間と規模は、双方とも糖尿病性微小血管疾患の程度および進行速度に強く相関する。全ての糖尿病細胞は高血漿グルコース値に暴露されるが、高血糖による損傷は細胞内高血糖を生じる細胞型(例えば、内皮細胞)に限定される。内皮細胞は、細胞内高血糖を生じるが、これは内皮細胞が他の細胞と違って、細胞外高血糖に暴露されたときに、グルコース輸送を下方制御することができないためである。
異常な内皮細胞機能:真性糖尿病過程の初期、構造的な変化が明らかになる前に、高血糖により、網膜、糸球体、および末梢神経の神経脈管において血流および血管透過性の異常が生じる。この血流および毛細血管内圧の増加は、毛細血管床の輸出側における高血糖誘発性の一酸化窒素(NO)産生の減少、またおそらくはアンジオテンシンIIに対する感受性の増加を反映すると考えられる。毛細血管内圧の増加および内皮細胞機能障害の結果として、網膜毛細血管はフルオレセインの漏出の増加を示し、糸球体毛細血管はアルブミン排出率(AER)の増加を示す。同様の変化は末梢神経の栄養血管でも生じる。糖尿病過程の初期には、透過性の増加は可逆的であるが、これは時間の経過に伴い不可逆的になる。
血管壁タンパク質蓄積の増加
糖尿病性微小血管疾患の一般的な病態生理学的特徴は、血管腔の進行性の狭窄および最終的な閉塞であり、これにより罹患組織の灌流および機能の不良を生じる。初期高血糖誘発性の微小血管の高血圧および血管透過性の増加は、3つの過程によって不可逆的な微小血管閉塞の一因となる。
第1の過程は、過ヨウ素酸シッフ(PAS)陽性の糖質含有血漿タンパク質の異常漏出であり、このタンパク質は毛細血管壁に沈着し、周皮細胞やメサンギウム細胞などの血管周囲細胞を刺激して増殖因子や細胞外基質を産生させ得る。
第2の過程は、増殖因子、例えばトランスフォーミング増殖因子β1(TGF−β1)の管外遊出であり、これは細胞外基質成分の過剰産生を直接刺激し、特定の合併症感に関連する細胞型においてアポトーシスを誘発し得る。
第3の過程は、内皮細胞および支持細胞による病的な遺伝子発現の高血圧誘発性刺激であり、これにはglut−1グルコース輸送体、成長因子、成長因子受容体、細胞外基質成分、および循環白血球を活性化することができる接着分子が含まれる。糖尿病性微小血管疾患の重症度の片側性減少が眼および腎臓の動脈狭窄と同じ側で起きるという観察は、この概念と一致する。
微小血管細胞消失および血管梗塞
糖尿病性微小血管腔の進行性の狭窄および閉塞は、微小血管細胞の消失も伴う。網膜において、真性糖尿病は、ミューラー細胞および神経節細胞、周皮細胞、ならびに内皮細胞のプログラム細胞死を誘発する。糸球体では、腎機能低下が広範囲にわたる毛細血管閉塞および有足細胞消失と関連するが、糸球体細胞消失の発生機序は未だ不明である。神経脈管においては、内皮細胞および周皮細胞の変性が起こるが、これらの微小血管の変化は、糖尿病性末梢性ニューロパシーの発症に先行すると思われる。糖尿病における軸索変性の多発局所性分布は微小血管閉塞の因果的役割を支持するが、高血糖誘発性のニューロトロフィン減少が、正常な軸索の修復再生を妨げることによって寄与している可能性もある。
糖尿病性微小血管疾患の別の一般的な特徴は、高血糖の記憶と称されているが、これは高血糖誘発性の微小血管の変化が、その後の正常なグルコース恒常性の期間に持続または進行することである。この現象の最も顕著な例は、2年半の高血糖後の2年半の正常血糖期のみに、糖尿病のイヌの組織学的に正常な眼に発症する重度の網膜症である。高血糖誘発性の選択基質遺伝子の転写の増加は、インビボで正常血糖の回復後数週間持続し、それほど顕著ではないが質的には類似する、高血糖誘発性の選択基質遺伝子の転写の増加の長期化は、培養内皮細胞でも生じる。
さらなる情報については、例えば、"Shared pathophysiologic features of microvascular complications of diabetes"(Larsen:Williams Textbook of Endocrinology,10th ed.,Copyright 2003 Elsevier)を参照されたい。
微小血管合併症は、顕性糖尿病において生じるだけでなく、耐糖能異常(IGT)にも起因する。IGTの微小血管合併症:ニューロパシー、網膜症、および腎性微量蛋白尿。種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、微小血管疾患を治療するのに有用である。
糖尿病性肢虚血および糖尿病性足部潰瘍
糖尿病および圧力は、微小血管の循環を損ない、下肢の皮膚に変化を起こし、次いで皮膚の変化は潰瘍の形成およびその後の感染を引き起こす可能性がある。微小血管の変化は肢筋肉の微小血管障害、ならびに末梢虚血を発症する素因および虚血イベントに対する血管新生代償反応の減少につながる。微小血管の病変は、末梢血管疾患(PVD)(または末梢動脈疾患(PAD)もしくは下肢動脈疾患(LEAD)、つまりアテローム性動脈硬化による脚動脈の狭窄である大血管合併症)を悪化させる。PVDは、糖尿病の初期に発生し、より重度でより広範囲にわたり、脚、眼、および腎臓に影響を及ぼす併発性微小循環障害をしばしば伴う。
足部の潰瘍および壊疽は、よく見られるPADの併存症状である。感覚障害を併発末梢性ニューロパシーは、足部が外傷、潰瘍化、および感染の影響を受けやすくする。糖尿病におけるPADの進行は、末梢性ニューロパシー、ならびに疼痛および外傷に対する足および下肢の無感覚などの併存疾患により悪化する。循環低下および感覚低下に伴い、潰瘍化および感染症が生じる。骨髄炎および壊疽に進行すると、切断が必要となる可能性がある。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、糖尿病性肢虚血を治療するのに有用である。種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、潰瘍を治療するのに有用である。種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、糖尿病性足部潰瘍を治療するのに有用である。
糖尿病における冠微小血管機能障害
糖尿病における組織病理と微小循環機能障害との相関は、過去の実験的研究および剖検から周知であり、基底膜の肥厚化、血管周囲の線維症、血管密度の減少、および毛細血管出血がしばしば認められる。最近の論文は病理と眼の微小血管機能障害の相関を実証しているが(Am J Physiol 2003;285)、これらのデータをインビボで確認することは依然として困難である。しかしながら、多数の臨床研究は、顕性糖尿病だけでなく代謝制御障害も冠微小循環に影響し得ることを示している(Hypert Res 2002;25:893)。Wernerは、Sambuceti et alによる重要な論文(Circulation 2001;104:1129)に触れているが、これは梗塞に関連する動脈の再開通成功後の患者における微小血管機能障害の持続について示しており、またこれらの患者における心血管疾患の有病率および死亡率の増加を説明できるかもしれない。大規模な急性再潅流試験から、罹患率および死亡率は、梗塞に関連する動脈の再開通自体には関連せず、TIMIフロー+/−心筋染影により大きく依存するという多くの証拠が得られている(Stone 2002;Feldmann Circulation 2003)。Herrmannは、とりわけ、これに関して、冠微小循環の完全性がおそらく最も重要な臨床および予後因子であることを示した(Circulation 2001)。保護装置の中立的な効果(TIMIフロー、ST解像度、またはMACEに対して関連する変化がない)は、微小循環の機能障害が主な予後決定因子であることを示し得る。また、冠微小血管の機能障害は非閉塞性のCADにおいても重要な役割を果たすという証拠も蓄積されつつある。冠動脈内皮機能障害は、これらの患者においては依然として強力な予後予測因子となっている。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、冠微小血管機能障害を治療するのに有用である。
糖尿病性ネフロパシー(糖尿病における腎機能障害)
糖尿病性ネフロパシーは、微量アルブミン尿(微小血管疾患の影響)、蛋白尿、およびESRDを包含する。糖尿病は、腎不全の最も一般的な原因であり、新たな症例の40%を超える。薬物および食事によって糖尿病を制御できる場合でさえ、この疾患はネフロパシーおよび腎不全を引き起こす可能性がある。糖尿病を有する人々のほとんどは、腎不全を生じるほど重度のネフロパシーは発症しない。米国では約1,600万人が糖尿病を有し、約10万人が糖尿病に起因する腎不全を有する。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、糖尿病性ネフロパシーを治療するのに有用である。
網膜症
網膜症とは、眼の網膜の非炎症性損傷を指す一般的用語である。網膜症の原因は様々であり、例えば、糖尿病(糖尿病性網膜症)、動脈性高血圧(高血圧性網膜症)、未熟児(未熟児網膜症)、網膜の静脈または動脈の閉塞がある。多くのタイプの網膜症は進行性であり、失明または重度の視力の喪失もしくは障害の原因となり得る。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、網膜の静脈または動脈の閉塞に関連する疾患、障害、または傷害の防止または治療に有用である。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ステント内網膜症の防止または治療に有用である。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ステント内網膜症の防止または治療に有用である。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、高血圧性網膜症の防止または治療に有用である。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、未熟児網膜症の防止または治療に有用である。
糖尿病性網膜症
糖尿病性網膜症は、糖尿病の合併症であり、失明の主な原因である。これは、糖尿病が網膜内の小血管に損傷を与えたときに発症する。糖尿病性網膜症には4つの段階がある:
−軽度の非増殖性網膜症:網膜の血管内の微細動脈瘤。
−中度の非増殖性網膜症:疾患が進行すると、網膜に栄養を与える一部の血管が閉塞される。
−重度の非増殖性網膜症:より多くの血管が閉塞され、網膜の複数部分への血液供給が絶たれるが、これは新しい血管の成長によって克服される。
−増殖性網膜症:新しい血管は、網膜に沿って、また硝子体ゲルに沿って成長する。この血管が血液を漏出したときに、重度の視力喪失および失明すら引き起こしうる。
妊娠中、糖尿病性網膜症は、糖尿病を有する女性にとって問題となり得る。
理論にとらわれるものではないが、糖尿病性網膜症により損傷を受けた血管は、2通りの形で視力喪失を生じ得る。脆弱な異常血管が発生して、眼の中心内に血液を漏出し、視界を不明瞭にすることがある。これは増殖性網膜症であり、4番目の疾患の最も進行した段階である。体液が黄斑の中心内に漏出して、不明瞭な視界をもたらし得る。この状態は黄斑浮腫と称される。これは糖尿病性網膜症のいずれの段階でも起こり得るが、疾患が進行するとより発生しやすくなり、これは糖尿病性黄斑浮腫(DME)として知られている。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、糖尿病性網膜症の防止または治療に有用である。
糖尿病性黄斑浮腫(DME)
DMEは、糖尿病性網膜症の合併症であり、網膜の血管を冒す疾患である。糖尿病性網膜症は、網膜に複数の異常を引き起こすが、これには網膜の肥厚化および浮腫、出血、血流障害、血管からの液体の過剰漏出、および最終段階での異常血管成長が含まれる。この血管成長は、大出血および重度の網膜損傷につながり得る。糖尿病性網膜症の血管漏出により黄斑に腫脹が生じたとき、これはDMEと称される。DMEの主な症状は、中心視の喪失である。DMEに関連する危険因子には、血中グルコースの制御不良、高血圧、体液うっ滞をもたらす異常な腎機能、高コレステロール値、および一般的な全身性因子がある。
世界保健機関によると、糖尿病性網膜症は、労働年齢の成人における失明の主な原因であり、糖尿病患者における失明の主な原因である。米国糖尿病協会(American Diabetes Association)は、米国の糖尿病患者はおよそ1,800万人のであり、米国において毎年およそ130万例が新たに糖尿病と診断されていると報告している。米国失明防止協会(Prevent Blindness America)および米国眼学研究所(National Eye Institute)は、530万を超える18歳以上の米国人が糖尿病性網膜症を有し、そのうちおよそ50万人のDME患者であると推定している。CDCは、米国におけるDMEの新症例は毎年およそ75,000例であると推定してる。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、糖尿病性黄斑浮腫(DME)の防止または治療に有用である。
網膜微小血管障害(AIDS網膜症)
網膜微小血管障害は、AIDS患者の100%において見られる。これは、網膜内出血、微細動脈瘤、Roth斑、綿花状白斑(神経線維層の微小梗塞)、および血管周囲鞘形成を特徴とする。この網膜症の病因は不明であるが、循環免疫複合体、細胞傷害性物質の局所的放出、異常な血液レオロジー、および内皮細胞のHIV感染に起因すると考えられている。AIDS網膜症に対する特別な治療は存在しない。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、AIDS網膜症の防止または治療に有用である。
骨髄移植(BMT)網膜症
骨髄移植網膜症は、1983年に始めて報告された。これは通常はBMT後6ヶ月以内に発症するが、62ヶ月も経ってから発症することもある。糖尿病および高血圧などの危険因子は、虚血性微小血管障害を悪化させて、BMT網膜症の発症を促進する可能性がある。BMT網膜症を発症しやすい年齢、性別、または人種は不明である。患者は症視力低下および/または視野欠損を示す。後区の所見は、通常は、両側性かつ対称性である。臨床的兆候には、複数の綿花状白斑、毛細血管拡張、微細動脈瘤、黄斑浮腫、硬性白斑、および網膜出血が含まれる。蛍光眼底血管造影法により、毛細血管の不灌流および脱落、網膜内微小血管異常、微小動脈瘤、および黄斑浮腫が示される。BMT網膜症の正確な病因は解明されていないが、シクロスポリン毒性、全身被爆(TBI)、および化学療法薬などのいくつかの因子による影響が考えられる。シクロスポリンは移植片対宿主免疫応答を抑制する強力な免疫調節剤である。これは内皮細胞傷害および神経学的副作用を引き起こす可能性があり、そのためBMT網膜症の原因であることが示唆されている。しかしながら、BMT網膜症は、シクロスポリンを使用していなくても発症し得、シクロスポリンが自己または同系骨髄レシピエントにおいてBMT網膜症を引き起こすことは示されていない。したがって、シクロスポリンがBMT網膜症の唯一の原因であるとは思われない。全身被爆(TBI)もBMT網膜症の原因あるとされている。放射線は網膜の微小血管系を損傷し、虚血性血管障害につながる。放射線の総線量および放射線照射と骨髄除去との間の時間間隔などの変数は重要そうに思われる。しかし、BMT網膜症はTBIを受けていない患者でも発症し得、またBMT網膜症は同様の線量の照射を受けた固形臓器移植レシピエントにおいては観察されない。したがって、TBIはBMT網膜症の発症の唯一の原因ではなく、要因の1つである。化学療法薬はBMT網膜症の可能性のある要因であることが示唆されている。シスプラチン、カルムスチン、およびシクロホスファミドなどの薬物は、乳頭水腫、視神経炎、視野欠損、および皮質盲を含む眼への副作用の原因となり得る。これらの化学療法薬により、患者は放射線誘発性網膜損傷を生じやすくなり、放射線の悪影響が強くなることが示唆されている。一般的に、BMT網膜症患者の予後は良好である。BMT網膜症は、通常は、シクロスポリン投与を停止または減少したあと2〜4か月以内に解消する。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、骨髄移植網膜症の防止または治療に有用である。
角膜移植
現在ヒトにおいて最も一般的な移植術の1つは、全層角膜移植(角膜移植またはグラフト)である。現在、後天性(例えば、感染症)および遺伝性(例えば、スティーブンス・ジョンソン症候群)の角膜疾患による失明を防ぐために、世界中で毎年40,000例を越える角膜移植が実施されている。角膜移植の主な目的は、視力の向上、疼痛の緩和、および構造的損傷の修復であり、良好な視力転帰は、長期的な移植片の生着に依存する。時間の経過に伴い、移植不全の可能性は高まり、したがって、多くの血管新生臓器移植片とは対照的に、角膜移植片の磨耗速度は一般的に遅いが、回避することはできない。角膜移植不全に対する再移植の必要性は、角膜移植の主な適応症の1つである。
角膜移植不全は、ドナー組織の不良(一次不全)の結果として、または早期または後期術後合併症によって生じる。しかしながら、角膜移植不全の最も一般的な理由の1つは角膜移植片免疫拒絶反応であり、これはおよそ30%の症例で発生する。
角膜移植の成功は、血管の欠如、リンパ管の欠如、血液眼関門、角膜中央における成熟抗原提示細胞(APC)の相対的不足、および房水における免疫調節因子の存在を含む複数の機序による、眼の免疫特権状態の維持に主に依存する。しかしながら、角膜における炎症および外傷、ならびにその結果生じる新血管形成は、眼における免疫特権の喪失につながり、角膜移植片拒絶反応をもたらす細胞性免疫応答を引き起こす。
通常は血管のないホスト角膜内での新血管形成は、角膜移植片拒絶反応の最も立証され、かつ認識されている危険因子として浸透している。正常角膜は無血管であり、血管およびリンパ管を有さないが、これは透明性および視力の双方のために、また角膜に免疫特権を与えて、ドナー角膜が拒否されるのを防止するために不可欠であり、これは移植角膜の長期生着の重要な予後因子となる。角膜移植の前または後に新血管形成が存在する場合、新しい血管(新生血管)の成長は、免疫媒介細胞にグラフトへの侵入経路を提供し、一方新しいリンパ管の成長(リンパ管新生)は、APCのおよび抗原物質がグラフトから所属リンパ節へと出て行けるようにする。結果として、角膜は、免疫応答メディエーターに浸潤および感作され、免疫応答そのものではないが、新血管形成が角膜移植片免疫拒絶反応につながり得る免疫応答を誘発する。
角膜移植片拒絶反応の危険性は、無血管の眼と比べ、眼の4象限全てで新血管形成が見られる眼で3分の2上昇する。
現在、確立されている治療法は、抗炎症薬(即ち、コルチコステロイド)および/または眼における免疫応答を管理するための免疫抑制剤の使用を伴うが、これは拒絶反応の初期には役立つ可能性があるが、後期には役立たない。したがって、患者が角膜移植後に視力を確実に保持するために、角膜移植片拒絶反応の管理への新しい取り組みが必要とされる。後続する免疫応答または炎症の治療よりもむしろ新血管形成の防止または治療の可能性に対する研究がなされてきた。しかしながら、現在まで、角膜新血管形成を治療するための特別な治療は認可されていない。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、角膜新血管形成の防止または治療に有用である。
新生内膜増殖および平滑筋細胞遊走(ステント)の阻害
ステント内再狭窄は、血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖、遊走、および過剰な基質産生に起因する病理学的過程である。
ヒト内胸動脈の生体外臓器培養モデルにおけるRhoA活性の分析(J Vasc Res.2005 Jan−Feb;42(1):21−8)は、ステント留置が、p27発現の同時減少に関連するRhoA活性の時間依存性増加を誘発したことを実証した。RhoA阻害剤によるステント動脈の治療は、新生内膜形成およびp27発現の減少の双方を阻害した。ステント移植は、RhoA活性の維持を誘発し、RhoA発現に対するラパマイシンの阻害作用が、その抗再狭窄効果において重要な役割を果たすことを実証する。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、ステント内再狭窄の防止または治療に有用である。
肺高血圧症
肺動脈高血圧症(PAH)は、肺血管狭窄による肺動脈圧および血管抵抗の進行性上昇、および血管再構築、ならびに炎症を特徴とする深刻な疾患である。
安静時に25mmHgまたは労作時に30mmHgを超える、高い持続的な肺動脈圧の上昇を特徴とする肺動脈高血圧症(PAH)は、不良な予後を有する進行性疾患であり、治療しなければ通常は5年以内に死に至る。さらに、原発性または特発性肺高血圧症(IPAH)は、未治療では右心不全から平均3年以内に死に至る可能性があり、現在の治療にかかわらず、1年死亡率は15%である。PAH寄与因子には、血管病変の形成をもたらす、長期の血管狭窄、血管再構築、炎症性細胞遊走、および原位置の血栓症がある。現在、PAHにおいて生じる高肺血管抵抗の主な原因は、血管再構築による機械的な閉塞によるものと考えられている。さらに、病理学的所見は、PAHが、内膜および/または内側肥厚、内膜線維症、および叢状病変に関連することを示している。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、肺高血圧症の防止または治療に有用である。
炎症
炎症は、病原体、損傷細胞、または刺激物などの有害刺激に対する血管組織の複雑な生物学的応答の一部である。炎症に関連する異常は、様々なヒト疾患の根底をなす、正式には無関連の障害の大きな群を含む。免疫系が、アレルギー反応および一部のミオパシーの双方において示される炎症性障害としばしば関連し、多くの免疫系障害は異常な炎症を引き起こす。炎症過程を病因とする非免疫疾患は、癌、アテローム性動脈硬化、および虚血性心疾患を含むと考えられている。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、炎症の防止または治療に有用である。種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、炎症性障害の防止または治療に有用である。
腫瘍形成
近年、研究により、Rhoファミリータンパク質が、腫瘍の成長、進行、転移、および血管新生に関与していることが示されている。Rhoタンパク質関与の経路は実際上未知であるが、Rhoタンパク質と癌との間の関連は著しい。とりわけ、RhoAタンパク質は、特定のタイプの癌と大きく関連していると思われる。RhoAの過剰発現は、結腸、乳房、肺、精巣生殖細胞、ならびに頭部および頸部の扁平上皮細胞の癌腫瘍に関連することがわかっている。
RhoAの過剰発現レベルは、その既知の3つのエフェクターの活性増加と相関し得、これは腫瘍形成を可能にし得る考えられる機能を生じさせる。これら3つのエフェクターには、ROCK I、IIファミリーが含まれる。これらのエフェクターは、SRF遺伝子のアクトミオシン収縮、形質転換、および転写をもたらすキナーゼである。また、これらのエフェクターは、アクチンを重合させ、微小管の形成に影響を与える足場特性を示す。第2のエフェクターは、エンドサイトーシスをもたらすPRK1/PKNタンパク質である。最後に、RhoAは、エフェクターであるシトロンに結合して、細胞質分裂をもたらす。これらのエフェクターは、細胞運動および細胞極性におけるRhoAの関与を示唆していると考えられる。これら2つの機能に対するRhoA発現の効果は、腫瘍形成の有力な原因と思われる。実際に、最も頻繁に癌を生じる組織である上皮細胞における極性喪失、およびそれらの細胞運動の増加は、異常な細胞株を生じると考えられるであろう。
RhoAの過剰発現は、結腸癌、乳癌、肺癌、および精巣生殖細胞癌、ならびに頭部および頸部の扁平上皮細胞の癌腫と関連付けられている。これらの癌におけるRhoAの役割に関する異なる仮説が研究中である。1つは、RhoAのGTPase活性が、小胞輸送および細胞形状変化などの腫瘍形成に必要な過程のためのエネルギーを提供するというものである。別の矛盾しない仮説は、癌の転移が、細胞運動および突起形成におけるRhoAの役割によって影響を受け得るというものである。
「癌」および「癌性疾患」は、互換的に使用され、これらは不適切に高レベルの細胞分裂、不適切に低レベルのアポトーシス、またはこれら双方によって生じる、あるいはこれらの原因となる疾患を指す。癌性疾患の例には、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、ならびに肉腫および癌腫等の固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、ヘパトーム、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、シュワン腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)を含むが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の化合物は、肺癌および肺における転移を治療する際に有用である。
本明細書で使用する用語「増殖性疾患」は、悪性または良性のいずれかの細胞増殖が、その状態の病理に寄与している疾患を指す。そのような望ましくない増殖は、癌および多くの慢性炎症性疾患の特徴であり、したがって「増殖性疾患」の例には、上記に挙げた癌、また慢性炎症性増殖性疾患、例えば乾癬、炎症性腸疾患、および関節リウマチ、増殖性心臓血管疾患、例えば再狭窄、増殖性眼障害、例えば糖尿病性網膜症、ならびに良性過剰増殖性疾患、例えば血管腫が含まれる。
種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、癌の防止または治療に有用である。種々の実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、癌腫、腫瘍、および/または悪性疾患の防止または治療に有用である。
一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、結腸癌の防止または治療に有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、乳癌の防止または治療に有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、肺癌の防止または治療に有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、精巣生殖細胞癌の防止または治療に有用である。一実施形態において、本明細書において開示される核酸化合物および薬学的組成物は、単独または他の治療法と組み合わせて、頸部の扁平上皮細胞の癌腫の防止または治療に有用である。
上述の疾患および障害を治療するためのより有効な治療法は、治療的価値を有するであろう。
結論として、本明細書において開示される状態(例えば、緑内障、SCI、CNS傷害、神経変性)の防止および/または治療のための有効な治療方法は存在せず、組織収縮に対する有効な治療も眼の瘢痕化に対する有効な治療も確かに存在しない。利用可能な治療は、とりわけ選択的標的化の欠如による深刻な副作用の不利益を被り、そのためこのような目的の新規の化合物および治療方法を開発する必要性が依然として存在する。
種々の実施形態において、本発明の化合物および薬学的組成物は、本明細書において下に開示するがこれらに限定されない疾患、障害、および傷害など、中枢神経系(CNS)に影響を及ぼす種々の疾患、障害、および傷害を治療または防止する際に有用である。理論にとらわれるものではないが、本明細書において提供される治療用dsRhoA分子は、複数の機序によってCNS障害、疾患、および傷害を治療し、神経保護および神経再生をもたらすと考えられている。
RhoAタンパク質
RhoAは、低分子GTPaseのRasホモロジーファミリーのメンバーである。これらのタンパク質は、GTPからGDPへの加水分解によって、その活性(GTP結合)配座から不活性(GDP結合)配座へと循環する。特異的グアニン交換因子(GEF)は、GDPの新しいGTPへの置換を触媒することによって、GTPaseを再活性化する。他の調節因子には、GTPase活性を向上させる(ひいては、タンパク質をより迅速にそのGDP結合不活性形態に転換する)ことによってRhoAを不活性化するGTPase活性化タンパク質(GAP)、およびGAPの機能を阻害し、その結果RhoAのGTPase活性を緩慢にするグアニンヌクレオチド解離阻害剤(GDI)が含まれる。
細胞におけるRhoAの機能は、主に細胞骨格調節に関連する。最近の研究により、ミオシンリン酸化およびストレスに対する細胞応答、例えば接着斑およびアクチンストレスファイバーの形成における、その間接的関与(関連因子を介する)が示されている。またこれは、ミオシン鎖延長、アクチンフィラメント再構成、遺伝子発現、細胞形状決定、および細胞増殖と直接関連することも示されている。
RhoAの過剰発現は、結腸癌、乳癌、肺癌、および精巣生殖細胞癌、ならびに頭部および頸部の扁平上皮細胞の癌腫と関連付けられている。これらの癌におけるRhoAの役割に関する異なる仮説が研究中である。1つは、RhoAのGTPase活性が、小胞輸送および細胞形状変化などの腫瘍形成に必要な過程のためのエネルギーを提供するというものである。別の矛盾しない仮説は、癌の転移が、細胞運動および突起形成におけるRhoAの役割によって影響を受け得るというものである。
dsRNAオリゴリボヌクレオチド化合物
表I、II、III、およびIVは、非修飾および化学修飾RhoA dsRNA化合物を調製する際に有用な、センスオリゴヌクレオチドおよび対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸配列を提示する。表I、II、およびIIIに提示されるセンスオリゴヌクレオチドおよび対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RhoA発現の下方制御ならびに本明細書において開示する疾患、障害、および傷害の治療の際に有用な合成siRNA化合物(二重鎖)の生成に有用な、好ましいオリゴヌクレオチドを提供する。
既知の遺伝子に対応するdsRNA化合物の選択および合成は、広く報告されている(例えば、Ui−Tei et al.,J Biomed Biotechnol.2006;65052、Chalk et al.,BBRC.2004,319(1):264−74、Sioud and Leirdal,Met.Mol Biol.;2004,252:457−69、Levenkova et al.,Bioinform.2004,20(3):430−2、Ui−Tei et al.,NAR 2004,32(3):936−48を参照)。修飾siRNAの使用および製造の例については、Braasch et al.,Biochem.,2003,42(26):7967−75、Chiu et al.,RNA,2003,9(9):1034−48、PCT広報第WO2004/015107号(atugen)、国際公開第WO02/44321号(Tuschl et al)、および米国特許第5,898,031号および第6,107,094号を参照されたい。
いくつかのグループは、細胞内にsiRNAを生成することができるDNAに基づくベクターの開発について記載している。この方法は、一般に、細胞内にsiRNAを生成するように効果的に処理される、低分子ヘアピンRNAの転写を伴う(Paddison et al.PNAS USA 2002,99:1443−1448、Paddison et al.Genes & Dev 2002,16:948−958、Sui et al.PNAS USA 2002,8:5515−5520、およびBrummelkamp et al.Science 2002,296:550−553)。これらの報告は、多数の内因的および外因的に発現された遺伝子を特異的に標的とすることができるsiRNAを生成する方法を説明している。
本発明は、本発明によりRhoAの発現を下方制御する、二本鎖オリゴリボヌクレオチド(例えば、dsRNAs)を提供する。本発明のdsRNA化合物は、二重鎖オリゴリボヌクレオチドであり、センス鎖は、RhoAのmRNA配列に由来し、アンチセンス鎖は、センス鎖に相補的である。一般に、標的mRNA配列からの多少の偏差は、dsRNA活性を損なうことなく許容される(例えば、Czauderna et al.,2003,NAR 31(11),2705−2716を参照)。本発明のdsRNA化合物は、mRNAの破壊を伴って、または伴わずに、転写後レベルで遺伝子発現を下方制御する。理論にとらわれるものではないが、dsRNAは、特異的切断および分解のためにmRNAを標的とすることができ、および/または標的メッセージからの翻訳を阻害し得る。
本明細書において開示されるdsRNA化合物は、本明細書において開示される構造に示す修飾により、またはタンデムdsRNAもしくはRNAstarとして、化学的または構造的に修飾されている。
RhoAを阻害するための薬学的組成物
RhoA遺伝子発現の下方制御を媒介することができる、またはRhoA遺伝子発現に対するRNA干渉を媒介する小核酸分子、例えば低分子干渉核酸(siNA)分子、干渉RNA(RNAi)分子、低分子干渉RNA(siRNA)分子、二本鎖RNA(dsRNA)分子、マイクロRNA(miRNA)分子、および低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子を使用することによる、RhoA発現の下方制御のための組成物および方法が提供される。本明細書において開示される組成物および方法は、種々の神経変性および神経系の障害、ならびに疼痛を治療する際にも有用である。
本発明の核酸分子および/または方法は、例えばGenbank受託番号NM_001664で示されるmRNAをコードするRhoAの発現を下方制御するために使用される。
本発明の化合物をそのまま化学物質として投与することは可能であるが、それらを薬学的組成物として提供することが好ましい。したがって、本発明は、本発明の化合物のうちの1つまたは複数と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。この組成物は、2つ以上の異なる核酸化合物の混合物を含み得る。
本明細書において提供される組成物、方法、およびキットは、RhoAタンパク質、および/またはRhoAタンパク質をコードする遺伝子、RhoAに関連する疾患、状態、または障害、例えばCNS障害、疾患、および傷害の維持および/または発症に関連するタンパク質および/または遺伝子(例えば、GenBank受託番号NM_001664で示される配列を含む遺伝子コード配列)、あるいは遺伝子もしくは遺伝子ファミリー配列が配列相同性を共有するRhoA遺伝子ファミリーメンバーの発現を独立してもしくは組み合わせで調整する(例えば、下方制御する)、1つまたは複数の核酸分子(例えば、dsRNA)および方法を含み得る。種々の態様および実施形態の説明は、例示的遺伝子RhoAに関連して提示している。しかしながら、これらの種々の態様および実施形態は、他の関連RhoA遺伝子、例えばホモログ遺伝子および転写変異体、ならびに特定のRhoA遺伝子に関連する多型(例えば、単一ヌクレオチド多型(SNP))も対象としている。したがって、種々の態様および実施形態は、例えば、本明細書において開示される疾患、特性、または状態の維持または発症に関与するシグナル変換または遺伝子発現のRhoA媒介経路に関与する、他の遺伝子も対象としている。これらの付加的な遺伝子は、本明細書においてRhoA遺伝子について説明される方法を用いて、標的部位について分析することができる。したがって、他の遺伝子の下方制御、および他の遺伝子のかかる調整の影響は、本明細書に記載されるように実施、判定、および測定することができる。
本発明は、RhoA発現を下方制御するのに有効な量で1つまたは複数の本発明の化合物と共有結合または非共有結合した少なくとも1つの本発明の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物をさらに提供する。この化合物を内因性細胞複合体により細胞内で処理して、1つまたは複数の本発明のオリゴリボヌクレオチドを産生してもよい。
本発明は、薬学的に許容される担体と、ヒトRhoAの細胞における発現を阻害するのに有効な量の本発明の化合物であって、(N)xの配列に実質的に相補的な配列を含む化合物のうちの1つまたは複数とを含む薬学的組成物をさらに提供する。
実質的に相補性であるとは、別の配列に対する約84%を超える相補性を指す。例えば、19塩基対からなる二重鎖領域において、1つのミスマッチは、94.7%の相補性をもたらし、2つのミスマッチは、約89.5%の相補性をもたらし、3つのミスマッチは、約84.2%の相補性をもたらし、二重鎖領域を実質的に相補的にする。したがって、実質的に同一とは、別の配列に対して約84%より高い同一性を指す。
さらに、本発明は、対照と比較して、RhoAの発現を少なくとも40%、好ましくは50%、60%、もしくは70%、より好ましくは75%、80%、もしくは90%阻害する方法であって、本発明のRhoAのmRNA転写物を本発明の化合物のうちの1つまたは複数と接触させることを含む方法を提供する。
一実施形態において、本明細書において開示されるオリゴリボヌクレオチド化合物、組成物、および方法は、RhoA遺伝子を阻害/下方制御し、この阻害/下方制御は、遺伝子機能の阻害/下方制御、ポリペプチドの阻害/下方制御、およびmRNA発現の阻害/下方制御を含む群から選択される。
一実施形態において、本明細書において開示される組成物および方法は、RhoA遺伝子(例えば、配列番号1に例示されるヒトRhoAのmRNAコード配列)の発現を下方制御する二本鎖低分子干渉核酸(siNA)化合物を含み、この核酸分子は、約15〜約49の塩基対を含む。
一実施形態において、本明細書において開示される核酸を用いて、RhoA遺伝子またはRhoA遺伝子ファミリーの発現を阻害することができ、この遺伝子または遺伝子ファミリーの配列は、配列相同性を共有する。かかる相同配列は、例えば配列アラインメントを用いて、当技術分野において知られているように特定することができる。核酸分子は、例えば、完全に相補的な配列を用いて、または付加的な標的配列を提供し得る非標準塩基対、例えばミスマッチおよび/またはウォッブル塩基対を組み込むことによって、かかる相同配列を標的とするようにデザインすることができる。ミスマッチが特定される場合には、非標準塩基対(例えば、ミスマッチおよび/またはウォッブル塩基)を用いて、1つより多い遺伝子配列を標的とする核酸分子を生成することができる。非限定的な例では、非標準塩基対、例えばUUおよびCC塩基対を用いて、配列相同性を共有する異なるRhoA標的の配列を標的とすることができる核酸分子を生成する。したがって、本明細書において開示されるdsRNAsを使用することの1つの利点は、相同遺伝子間に保存されるヌクレオチド配列に相補的な核酸配列を含むように、単一の核酸をデザインできることである。この手法では、異なる遺伝子を標的とするために、1つより多いの核酸分子を用いる代わりに、単一の核酸を用いて、1つより多い遺伝子の発現を阻害することができる。
核酸分子を使用して、RhoAファミリー遺伝子などの1つまたは複数の遺伝子ファミリーに対応する保存配列を標的とすることもできる。したがって、複数のRhoA標的を標的とする核酸分子は、改善された治療効果を提供する。さらに、核酸を用いて、様々な用途で遺伝子機能の経路を特徴付けることができる。例えば、核酸分子を用いて、経路における標的遺伝子の活性を阻害して、遺伝子機能分析、mRNA機能分析、または翻訳分析において、特徴が明らかになっていない遺伝子の機能を究明することができる。核酸分子を用いて、医薬の開発に向けて、種々の疾患および状態に関与する可能性のある標的遺伝子経路を決定することもできる。核酸分子を用いて、例えば、CNS障害、例えば神経変性障害、および/または炎症性疾患、障害、および/または状態に関与する遺伝子発現の経路を理解することも可能である。
一実施形態において、本明細書において提供される核酸化合物、組成物、および方法は、RhoAポリペプチドを阻害し、この阻害は、機能の阻害(これは、とりわけ、酵素アッセイまたは天然の遺伝子/ポリペプチドの既知の相互作用物質を用いる結合アッセイにより試験可能である)、タンパク質の阻害(これは、とりわけ、ウエスタンブロット法、ELISA、または免疫沈降法により試験可能である)およびmRNA発現の阻害(これは、とりわけ、ノーザンブロット法、定量的RT−PCR、インサイツハイブリダイゼーション、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションにより試験可能である)を含む群から選択される。
一実施形態において、本明細書において開示される組成物および方法には、RhoA RNAに対するRNAi活性を有する核酸分子が含まれ、この核酸分子は、配列番号1に示す配列のような、RhoAをコードする配列を有する任意のRNAに相補的な配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、RhoA RNAに対するRNAiを有してもよく、この核酸分子は、例えば配列番号1には示されてないが、神経変性および/またはニューロパシーの発現および/または維持および/または発症に関連することが当技術分野で知られている他の突然変異RhoA遺伝子、例えばSNPなど、変異RhoAをコードする配列を有するRNAに相補的な配列を含む。本明細書において説明するような化学修飾は、本明細書において開示されるいずれの核酸構築物に適用してもよい。別の実施形態において、本明細書において開示される核酸分子は、RhoA遺伝子のヌクレオチド配列と相互作用して、それによってRhoA遺伝子発現の下方制御またはサイレンシングを媒介することができるヌクレオチド配列を含み、例えば、この核酸分子は、RhoA遺伝子のクロマチン構造またはメチル化パターンを調節し、RhoA遺伝子の転写を防止する細胞過程によって、RhoA遺伝子発現の制御を媒介する。
さらなる実施形態において、本発明は、上昇したレベルのRhoAを伴う疾患を患っている対象を治療する方法であって、本発明の化合物を治療的有効用量で対象に投与し、それによって対象を治療することを含む方法を提供する。
より具体的には、本発明は、1つの鎖が5’から3’に、表I、II、III、およびIVに記載の化合物、またはそれらのホモログを有する連続するヌクレオチドを含み、各末端領域のリボヌクレオチドのうち最大2個において変更されている、オリゴリボヌクレオチドを提供する。
核酸分子および薬学的処方物の送達
本発明の核酸分子は、担体または希釈剤と共に調製したネイキッド分子の直接適用によって、標的組織に送達してもよい。
「ネイキッド核酸」または「ネイキッドdsRNA」または「ネイキッドsiRNA」とは、細胞への侵入を補助、促進、または容易にするように作用するいかなる送達ビヒクルも含まない核酸分子を指し、これにはウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチン、または沈殿剤などを含む。例えば、PBS中のdsRNAは、「ネイキッドdsRNA」である。
核酸分子は、単独または他の治療法と組み合わせて、CNS障害(例えば、神経変性、眼、耳)の疾患、特性、状態、および/または障害、および/または細胞または組織中のRhoAレベルに関連するまたはそれに応答する任意の他の特性、疾患、障害、または状態を防止または治療するための使用に適合させることができる。
本明細書において開示される核酸分子は、ウイルスベクター、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチン、または沈殿剤などの細胞への侵入を補助、促進、または容易にするように作用するいかなる送達ビヒクルを含まずに、担体または希釈剤とともに直接送達または投与してもよい。
核酸分子は、対象への投与のためのリポソームを含む送達ビヒクル、担体、および希釈剤、ならびにそれらの塩を含んでもよく、および/または薬学的に許容される製剤中に含まれてもよい。いくつかの実施形態において、本発明のdsRNA分子は、リポソーム製剤やリポフェクチン製剤などの形態で送達され、当業者に周知の方法で調製することができる。かかる方法は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,593,972,5,589,466号および第5,580,859に記載されている。
哺乳動物細胞内へのsiRNAの強化および改善された送達を特に目的にした送達系が開発されている(例えば、Shen et al.,FEBS Let.2003,539:111−114、Xia et al.,Nat.Biotech.2002,20:1006−1010、Reich et al.,Mol.Vision 2003,9:210−216、Sorensen et al.,J.Mol.Biol.2003.327:761−766、Lewis et al.,Nat.Gen.2002,32:107−108、およびSimeoni et al.,NAR 2003,31,11:2717−2724を参照)。siRNAは、近年、霊長類における遺伝子発現の阻害のために使用に成功している(例えば、Tolentino et al.,Retina 24(4):660を参照)。
所望の対象への核酸の導入を容易にするポリペプチドは、当技術分野において知られており、例えば米国特許出願第20070155658号に記載されている(例えば、2,4,6−トリグアニジノとリアジンおよび2,4,6−トリアミドサルコシルメラミンなどのメラミン誘導体、ポリアルギニンポリペプチド、および交互のグルタミン残基およびアスパラギン残基を含むポリペプチド)。
薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクル、ならびに移植担体は、一般に、本発明の活性成分と反応しない不活性な非毒性の固体または液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル化材料を指し、それらには、リポソームおよびミクロスフェアが含まれる。本発明において有用な送達系の例には、米国特許第5,225,182号、第5,169,383号、第5,167,616号、第4,959,217号、第4,925,678号、第4,487,603号、第4,486,194号、第4,447,233号、第4,447,224号、第4,439,196号、および第4,475,196が含まれる。他の多数の移植、送達系、およびモジュールが、当業者に周知である。
核酸分子の送達のための方法は、Akhtar et al.,Trends Cell Bio.,2:139(1992);Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,ed.Akhtar,(1995)、Maurer et al.,Mol.Membr.Biol.,16:129−140(1999)、Hofland and Huang,Handb.Exp.Pharmacol.,137:165−192(1999)、およびLee et al.,ACS Symp.Ser.,752:184−192(2000)、米国特許第6,395,713号、第6,235,310号、第5,225,182号、第5,169,383号、第5,167,616号、第4,959217号、第4.925,678号、第4,487,603号、および第4,486,194号、ならびにSullivan et al.,PCT第WO94/02595号、PCT第WO00/03683号、およびPCT第WO02/08754号、ならびに米国特許出願公開第2003077829号に記載されている。これらの手順は、実質上いかなる核酸分子の送達にも使用可能である。核酸分子は、当業者に知られる様々な方法によって細胞に投与することができ、これにはリポソーム中へのカプセル化、イオン導入による、または他のビヒクル、例えば、生分解性ポリマー、ヒドロゲル、シクロデキストリン(例えば、Gonzalez et al.,Bioconjugate Chem.,10:1068−1074(1999)、Wang et al.,PCT国際公開第WO03/47518号および第WO03/46185号を参照)、ポリ(ラクティック−コ−グリコリック)酸(PLGA)およびPLCAミクロスフェア(例えば、米国特許第6,447,796号および米国特許出願公開第2002130430号)、ならびに生分解性ナノ粒子へ組み込みによる、またはタンパク質性ベクターによる(O’Hare and Normand、PCT国際公開第WO00/53722号)ものが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、直接注入により、または輸液ポンプを使用して、核酸/ビヒクルの組み合わせを局所的に送達する。本発明の核酸分子の直接注入は、硝子体内、皮下、経鼓膜、筋肉内、または皮内にかかわらず、標準的な針と注射器の方法を用いて、またはConry et al.,Clin.Cancer Res.,5:2330−2337(1999)、およびBarry et al.,PCT国際公開第WO99/31262号に記載されているものなどの針を用いない技術によって実施することができる。本発明の分子は、薬学的物質として使用することができる。薬学的物質は、対象における疾患状態をある程度(好ましくは全ての症状)防止する、発生を調節する、または治療もしくは軽減する。本発明の具体的な一実施形態において、局所製剤および経皮製剤を選択してもよい。
本発明のdsRNAまたは薬学的組成物は、個々の対象の臨床状態、処置しようとする疾患、投与の部位および方法、投与の計画、患者の年齢、性別、体重、ならびに医師に公知の他の要因を考慮して、適切な医療行為に従って投与および服用される。
別の実施形態において、投与は、点眼剤、点耳剤、または軟膏によるなどの局所(topicalまたはlocal)投与を含む。非限定的例において、RhoAを標的とするdsRNA化合物は、神経網膜における損傷を患っている対象を治療する際に有用であり、このdsRNA化合物は、局所送達(例えば、点眼剤、点耳剤、または軟膏)によって眼に送達される。非限定的例において、RhoAを標的とするdsRNA化合物は、網膜神経節細胞(RGC)消失を患っている対象を治療する際に有用であり、このdsRNA化合物は、局所送達(例えば、点眼剤、点耳剤、または軟膏)によって眼に送達される。非限定的例において、RhoAを標的とするdsRNA化合物は、緑内障を患っている対象を治療する際に有用であり、このdsRNA化合物は、局所送達(例えば、点眼剤、点耳剤、または軟膏)によって眼に送達される。
核酸分子は、カチオン性脂質と複合体を形成するか、リポソーム内に封入されるか、あるいは別の方法で標的細胞または組織に送達される。核酸または核酸複合体は、バイオポリマーに組み込んで、または組み込まずに、直接皮膚適用、経皮適用、または注入によって、エクスビボまたはインビボで関連組織に局所投与することができる。本発明の核酸分子は、本明細書において表I〜IVに示す配列を含み得る。かかる核酸分子の例は、基本的に表I〜IVに提示する配列からなる。
送達系には、ポリ(エチレングリコール)脂質を含む表面修飾リポソーム(PEG−修飾、または長期循環リポソーム、またはステルスリポソーム)を含み得る。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増加させる方法を提供する。この種の薬物担体は、単核食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニン化および排除に対する耐性を有し、それによって血液循環時間が長くなり、カプセル化された薬物の組織への暴露が促進される(Lasic et al.Chem.Rev.1995,95,2601−2627、Ishiwata et al.,Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005−1011)。
核酸分子は、ポリエチレンイミン(例えば、線状またはは分枝PEI)、および/または例えばポリエチレンイミン−ポリエチレングリコール−N−アセチルガラクトサミン(PEI−PEG−GAL)誘導体またはポリエチレンイミン−ポリエチレングリコール−トリ−N−アセチルガラクトサミン(PEI−PEG−triGAL)誘導体を含むポリエチレンイミン誘導体、グラフトPEI、例えばガラクトースPEI、コレステロールPEI、抗体によって誘導体化されたPEI、およびそのポリエチレングリコールPEI(PEG−PEI)誘導体と一緒に処方または複合体化してもよい(例えば、Ogris et al.,2001,AAPA PharmSci,3,1−11、Furgeson et al.,2003,Bioconjugate Chem.,14,840−847、Kunath et al.,2002,Pharmaceutical Research,19、810−817、Choi et al.,2001、Bull.Korean Chem.Soc.,22,46−52、Bettinger et al.,1999,Bioconjugate Chem.,10,558−561、Peterson et al.,2002,Bioconjugate Chem.,13,845−854、Erbacher et al.,1999,Journal of Gene Medicine Preprint,1,1−18、Godbey et al.,1999.,PNAS USA,96,5177−5181、Godbey et al.,1999,Journal of Controlled Release,60,149−160、Diebold et al.,1999,Journal of Biological Chemistry,274,19087−19094、Thomas and Klibanov,2002,PNAS USA,99,14640−14645、Sagara,米国特許第6,586,524号および米国特許出願公開第20030077829号を参照)。
核酸分子は、米国特許出願公開第20010007666号に記載されているものなどの膜破壊剤と複合体を形成してもよい。また、1つまたは複数の膜破壊剤および核酸分子は、米国特許第6,235,310号に記載されている脂質などのカチオン性脂質またはヘルパー脂質分子と複合体を形成してもよい。
本明細書において開示される核酸分子は、中枢神経系(CNS)または末梢神経系(PNS)に投与してもよい。実験により、ニューロンによる効率的なインビボでの核酸の取り込みが実証されている。
参考として、例えば、Sommer et al.,1998,Antisense Nuc.Acid Drug Dev.,8,75、Epa et al.,2000,Antisense Nuc.Acid Drug Dev.,10,469、Broaddus et al.,1998,J.Neurosurg.,88(4),734、Karle et al.,1997,Eur.J.Pharmocol.,340(2/3),153、Bannai et al.,1998,Brain Research,784(1,2),304、Rajakumar et al.,1997,Synapse,26(3),199、Wu−pong et al.,1999,BioPharm,12(1),32、Bannai et al.,1998,Brain Res.Protoc.,3(1),83、およびSimantov et al.,1996,Neuroscience,74(1),39を参照されたい。したがって、核酸分子は、CNSおよび/またはPNS中の細胞、例えばニューロン、マクロファージ、白質軸索、および内皮細胞への送達、およびそれらによる取り込みに適している。
核酸分子のCNSへの送達は、多様な戦略によって提供される。使用可能なCNS送達のための従来の手法には、くも膜下投与および脳室内投与、カテーテルおよびポンプの移植、傷害または病変の部位における直接注入または灌流、脳動脈系への注入、あるいは血液脳関門の化学的または浸透圧的開放によるものが含まれるが、これらに限定されない。核酸分子のCNSへの送達の非侵襲的方法も知られており、これには例えば、鼻腔内投与、眼内投与(例えば、点眼剤)、または耳内投与(例えば、点耳剤)を含み得る。侵襲的投与方法と非侵襲的投与方法との組み合わせを用いてもよい。他の手法には、種々の輸送系および担体系の使用、例えば抱合体および生分解性ポリマーの使用によるものを含み得る。さらに、例えばKaplitt et al.,米国特許第6,180,613号およびDavidson,国際公開第WO04/013280号に記載されているような遺伝子治療法を用いて、CNSにおいて核酸を発現されることもできる。
送達系は、例えば、水性ゲルおよび非水性ゲル、クリーム、多相乳剤、マイクロエマルジョン、リポソーム、軟膏、水性溶液および非水性溶液、ローション剤、エアロゾル、炭化水素基剤、ならびに粉剤を含み得、また可溶化剤、浸透促進剤(例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、およびアミノ酸)、ならびに親水性ポリマー(例えば、ポリカルボフィルおよびポリビニルピロリドン)も含んでよい。一実施形態において、薬学的に許容される担体は、リポソームまたは経皮促進剤である。本発明の化合物とともに使用可能なリポソームの非限定的例には、(1)CellFectin、カチオン性脂質N,NI,NII,NIII−テトラメチル−N,NI,NII,NIII−テトラパルミト−y−スペルミンおよびジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)の1:1.5(M/M)リポソーム製剤(GIBCO BRL)、(2)Cytofectin GSV、カチオン性脂質およびDOPEの2:1(M/M)リポソーム製剤(Glen Research)、(3)DOTAP(N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)−N,N,N−トリ−メチル−アンモニウムエチルサルフェート)(Boehringer Manheim)、および(4)Lipofectamine、ポリカチオン性脂質DOSPA、中性脂質DOPE(GIBCO BRL)、およびにジアルキル化アミノ酸(DiLA2)の3:1(M/M)リポソーム製剤がある。
送達系には、パッチ、錠剤、坐剤、ペッサリー、ゲル、水性溶液および非水性溶液、ローション剤、クリーム含んでもよく、また、賦形剤、例えば可溶化剤および促進剤(例えば、プロピレングリコール、胆汁塩、およびアミノ酸)、ならびに他のビヒクル(例えば、ポリエチレングリコール、グリセロール、脂肪酸エステル、および誘導体、ならびに親水性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒアルロン酸)を含み得る。
核酸分子は、バイオコンジュゲート、例えば、Vargeese et al.の米国特許出願第10/427,160号、米国特許第6,528,631号、米国特許第6,335,434号、米国特許第6,235,886号、米国特許第6,153,737号、米国特許第5,214,136号、米国特許第5,138,045号に記載されているような核酸コンジュゲートを含み得る。
本明細書において開示される組成物、方法、およびキットは、核酸分子の発現を可能にするように、本発明の少なくとも1つの核酸分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含んでもよい。核酸分子あるいは細胞環境中にdsRNAの鎖を発現することができる1つまたは複数のベクターを導入する方法は、細胞の種類およびその環境の性質に依存するであろう。核酸分子またはベクター構築物は、細胞内に直接導入しても(即ち、細胞内導入)、または腔内、間質腔、生物の循環内に細胞外導入しても、経口導入してもよく、あるいはdsRNAを含む溶液に生物または細胞を浸漬することによって導入してもよい。細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞である。発現ベクターの核酸分子は、センス領域およびアンチセンス領域を含み得る。アンチセンス領域は、RhoAをコードするRNA配列またはDNA配列に相補的な配列を含んでもよく、センス領域は、アンチセンス領域に相補的な配列を含んでもよい。核酸分子は、相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を有する、2つの明白に異なる鎖を含んでもよい。核酸分子は、相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を有する単一の鎖を含んでもよい。
標的RNA分子と相互作用して、遺伝子をコードする標的RNA分子(例えば、RhoA mRNA、配列番号1)を下方制御する核酸分子は、DNAベクターまたはRNAベクターに挿入された転写ユニットから発現させることができる。組換えベクターは、DNAプラスミドまたはウイルスベクターであってよい。核酸分子を発現するウイルスベクターは、限定されないがアデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアルファウイルスに基づいて構築することができる。核酸分子を発現することができる組換えベクターは、本明細書において説明するように送達され、標的細胞中で存続することが可能である。あるいは、核酸分子の一時的発現を提供するウイルスベクターを用いてもよい。かかるベクターは、必要に応じて、繰り返し投与することができる。一旦発現すると、核酸分子は結合して、例えばRNA干渉(RNAi)により遺伝子の機能または発現を下方制御する。核酸分子発現ベクターの送達は全身性であってよく、例えば、静脈内または筋肉内投与によって、局所投与によって、対象から外植された標的細胞への投与およびその後の対象への再導入によって、または所望の標的細胞への導入を可能にするであろう任意の他の手段によって行われる。
発現ベクターは、少なくとも1つの本明細書において開示される核酸分子をコードする核酸配列を、核酸分子の発現を可能にする形で含んでもよい。例えば、ベクターは、二重鎖を含む核酸分子の両鎖をコードする配列を含んでもよい。また、ベクターは、自己相補的であり、それにより核酸分子を形成する、単一の核酸分子をコードする配列も含んでよい。かかる発現ベクターの非限定的例は、Paul et al.,2002,Nature Biotechnology,19,505、Miyagishi and Taira,2002,Nature Biotechnology,19,497、Lee et al.,2002,Nature Biotechnology,19,500、およびNovina et al.,2002,Nature Medicine,advance online publication doi:10.1038/nm725に記載されている。また、発現ベクターは、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞に含まれてもよい。
発現ベクターは、同じであっても異なってもよい2つ以上の核酸分子をコードする核酸配列を含んでもよい。発現ベクターは、例えば表I、II、III、およびIVに示されるものなど、Genbank受託番号NM_001664で示される核酸分子に相補的な核酸分子の配列を含んでもよい。
発現ベクターは、核酸二重鎖の一方もしくは両方の鎖、または核酸二重鎖に自己ハイブリダイズ可能な単一の自己相補的鎖をコードしてよい。核酸分子をコードする核酸配列は、核酸分子の発現を可能にするように、作用可能に連結させることができる(例えば、Paul et al.,2002,Nature Biotechnology,19,505、Miyagishi and Taira,2002,Nature Biotechnology,19,497、Lee et al.,2002,Nature Biotechnology,19,500、およびNovina et al.,2002,Nature Medicine,advance online publication doi:10.1038/nm725を参照)。
発現ベクターは、以下のうち1つまたは複数を含んでもよい:a)転写開始領域(例えば真核生物pol I、IIまたはIII開始領域)、b)転写終結領域(例えば真核生物pol I、IIまたはIII終結領域)、c)イントロン、およびd)核酸分子のうちの少なくとも1つをコードする核酸配列であって、核酸分子の発現および/または送達を可能にするように、開始領域および終結領域に作用可能に連結した配列。ベクターは、場合により、核酸分子をコードする配列の5’側または3’側に作用可能に連結したタンパク質のオープンリーディングフレーム(ORF)、および/またはイントロン(介在配列)を含んでもよい。
核酸分子配列の転写は、真核生物RNAポリメラーゼI(pol I)、RNAポリメラーゼII(pol II)、またはRNAポリメラーゼIII(pol III)のプロモーターから引き起こすことができる。pol IIまたはpol IIIプロモーターからの転写産物は、全ての細胞において高いレベルで発現され、所与の細胞型における所与のpol IIプロモーターのレベルは、付近に存在する遺伝子調節配列(エンハンサー、サイレンサーなど)の性質に依存する。原核生物RNAポリメラーゼプロモーターも、その原核生物RNAポリメラーゼ酵素が、適切な細胞において発現されるという条件で使用される(Elroy−Stein and Moss,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,6743−7、Gao and Huang 1993,Nucleic Acids Res.,21,2867−72、Lieber et al.,1993,Methods Enzymol.,217,47−66、Zhou et al.,1990,Mol.Cell.Biol.,10,4529−37)。数人の研究者が、かかるプロモーターから発現された核酸分子が、哺乳動物細胞において機能し得ることを実証している(例えば、Kashani−Sabet et al.,1992,Antisense Res.Dev.,2,3−15、Ojwang et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,10802−6、Chen et al.,1992,Nucleic Acids Res.,20,4581−9、Yu et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,6340−4、L’Huillier et al.,1992,EMBO J.,11,4411−8、Lisziewicz et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,90,8000−4、Thompson et al.,1995,Nucleic Acids Res.,23,2259、Sullenger & Cech,1993,Science,262,1566)。より具体的には、U6低分子核酸(snRNA)、転移RNA(tRNA)、およびアデノウイルスVA RNAをコードする遺伝子から誘導されたものなどの転写ユニットは、高濃度の所望のRNA分子、例えばsiNAを細胞中に生成する際に有用である(Thompson et al.,上記参照、Couture and Stinchcomb,1996,上記参照、Noonberg et al.,1994,Nucleic Acid Res.,22,2830、Noonberg et al.,米国特許第5,624,803号、Good et al.,1997,Gene Ther.,4,45、Beigelman et al.,PCT国際公開第WO96/18736号)。上記の核酸転写ユニットは、様々なベクターに組み込んで哺乳動物細胞に導入するたことができ、これにはプラスミドDNAベクター、ウイルスDNAベクター(アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターなど)、またはウイルスRNAベクター(レトロウイルスベクターまたはアルファウイルスベクターなど)が含まれるが、これらに限定されない(Couture and Stinchcomb,1996、上記参照)。
核酸分子は、真核生物プロモーターから細胞内で発現させることができる(例えば、Izant and Weintraub,1985,Science,229,345、McGarry and Lindquist,1986,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 83,399、Scanlon et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,10591−5、Kashani−Sabet et al.,1992,Antisense Res.Dev.,2,3−15、Dropulic et al.,1992,J.Virol.,66,1432−41、Weerasinghe et al.,1991,J.Virol.,65,5531−4、Ojwang et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,10802−6、Chen et al.,1992,Nucleic Acids Res.,20,4581−9、Sarver et al.,1990 Science,247,1222−1225、Thompson et al.,1995,Nucleic Acids Res.,23,2259、Good et al.,1997,Gene Therapy,4,45)。当業者は、適切なDNA/RNAベクターから、真核細胞中で任意の核酸を発現させることができることを理解する。かかる核酸の活性は、酵素的核酸により、一次転写産物からそれらの核酸を放出することによって増加させることができる(Draper et al.,PCT第WO93/23569号、およびSullivan et al.,PCT第WO94/02595号、Ohkawa et al.,1992,Nucleic Acids Symp.Ser.,27,15−6、Taira et al.,1991,Nucleic Acids Res.,19,5125−30、Ventura et al.,1993,Nucleic Acids Res.,21,3249−55、Chowrira et al.,1994,J.Biol.Chem.,269,25856)。
ウイルス粒子中にパッケージングされたウイルス構築物は、発現構築物の細胞への効率的な導入、および発現構築物によりコードされるdsRNA構築物の転写の両方を達成するであろう。
経口導入のための方法には、その生物の食物へのRNAの直接混入、ならびに食物として使用される種をRNAを発現するように操作し、影響を受ける生物に摂取させる、工学的手法が含まれる。物理的方法を用いて、核酸分子溶液を細胞に導入してもよい。核酸を導入する物理的方法には、核酸分子を含有する溶液の注入、核酸分子で被覆した粒子による衝撃、細胞または生物のRNA溶液への浸漬、または核酸分子の存在下での細胞膜のエレクトロポレーションが含まれる。
核酸を細胞に導入するための当技術分野において公知の他の方法、例えばリン酸カルシウムなどの化学物質媒介輸送などを用いてもよい。したがって、核酸分子は、以下の活性のうちの1つまたは複数を行う成分とともに導入してもよい:細胞によるRNAの取り込みを強化する、二本鎖のアニーリングを促進する、アニールされた鎖を安定化する、あるいは標的遺伝子の阻害/下方制御を向上する。
高分子ナノカプセルまたはマイクロカプセルは、カプセル化されたまたは結合したdsRNAの細胞中への輸送および放出を容易にする。これらは、ポリマー材料およびモノマー材料を含み、特にポリブチルシアノアクリレートを含む。材料および製造方法の概要は公開されている(Kreuter,1991を参照)。重合/ナノ粒子生成ステップにおいてモノマー前駆物質および/またはオリゴマー前駆物質から形成されるポリマー材料は、ナノ粒子製造分野の当業者が通常の技能により適切に選択することができるポリマー材料の分子量および分子量分布と同様に、先行技術から自体公知である。
核酸分子は、マイクロエマルジョンとして製剤化することもできる。マイクロエマルジョンは、単一の光学的等方性かつ熱力学的に安定な液体溶液である、水、油、および両親媒性物質の系である。通常は、マイクロエマルジョンは、まず油を界面活性剤水溶液に分散させ、次いで十分な量の4番目の成分、一般に中間鎖長のアルコールを添加して、透明の系を形成することによって調製する。
マイクロエマルジョンの調製に使用可能な界面活性剤には、単独または共界面活性剤と組み合わせた、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオレエート(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DA0750)が含まれるが、これらに限定されない。通常はエタノール、1−プロパノール、および1−ブタノールなどの短鎖アルコールである共界面活性剤は、界面活性剤膜に浸透し、その結果、界面活性剤分子間に生じた空隙により不規則な膜を作成することで、界面流動性を増加させる役割を果たす。
送達製剤は、1つまたは複数の分解性架橋性脂質部分、1つまたは複数のPEI部分、および/または1つもしくは複数のmPEG(PEGのメチルエーテル誘導体(メトキシポリ(エチレングリコール))を含む水溶性かつ分解性の架橋ポリマーを含んでもよい。
投与量
有用な投薬量および個々の投与方式は、当業者が容易に理解するであろうように、細胞型、またはインビボでの使用の場合、年齢、体重、ならびに治療する個々の動物およびその領域、使用する個々の核酸および送達方法、意図される治療上または診断上の使用、また例えば、懸濁剤、乳剤、ミセル、またはリポソームのような製剤の形態などの要因に応じて異なることになる。通常は、投与量は、低レベルで投与され、所望の効果が達成されるまで増加される。
本明細書における目的での「治療的有効用量」は、したがって、当技術分野において知られているような検討項目によって決定される。用量は、生存率の改善もしくはより迅速な回復、または症状の改善もしくは解消、および当業者により適切な尺度として選択されるような他の指標が含まれるが、これらに限定されない改善を達成するのに有効でなければならない。
適切な量の核酸分子を導入してよいが、この量は標準的方法を用いて経験的に決定することができる。細胞環境における個々の核酸分子種の有効な濃度は、約1フェムトモル、約50フェムトモル、100フェムトモル、1ピコモル、1.5ピコモル、2.5ピコモル、5ピコモル、10ピコモル、25ピコモル、50ピコモル、100ピコモル、500ピコモル、1ナノモル、2.5ナノモル、5ナノモル、10ナノモル、25ナノモル、50ナノモル、100ナノモル、500ナノモル、1マイクロモル、2.5マイクロモル、5マイクロモル、10マイクロモル、100マイクロモル、またはそれ以上であってもよい。
一般に、ヒトの場合の核酸化合物の活性用量は、単回用量、1〜4週間またはそれ以上の期間にわたる1日1用量、または1日2用量もしくは3用量以上のの投与計画で、1日に受容者の体重1kg当り1ngから約20〜100mgの範囲、好ましくは1日に受容者の体重1kg当り約0.01mgから約2〜10mgの範囲である。核酸分子の適切な投薬単位は、1日に受容者の体重1キログラム当り0.001〜0.25ミリグラムの範囲、または1日に体重1キログラム当り0.01〜20マイクログラム範囲、または1日に体重1キログラム当り0.01〜10マイクログラムの範囲、または1日に体重1キログラム当り0.10〜5マイクログラムの範囲、または1日に体重1キログラム当り0.1〜2.5マイクログラムの範囲であってもよい。投与量は、体重1kg当り0.01μg〜1g(例えば、体重1kg当り0.1μg、0.25μg、0.5μg、0.75μg、1μg、2.5μg、5μg、10μg、25μg、50μg、100μg、250μg、500μg、1mg、2.5mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、250mg、または500mg)であってもよい。
1日に体重1キログラム当り約0.1mg〜約140mg程度の投与量レベルは、上に示した状態の治療に有用である(1日に1対象当り約0.5mg〜約7g)。単一剤形を作製するために担体材料と配合可能な活性成分の量は、治療されるホストおよび特定の投与方式に応じて異なる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約500mgの活性成分を含有する。
いかなる個々の対象に対する特定の用量レベルも使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、および排泄速度、薬剤の組合せ、ならびに治療を受ける個々の疾患の重症度を含む様々な要因に応じて異なることは理解される。
本発明の化合物は、従来のいずれの投与経路によって投与してもよい。この化合物は、化合物としてまたは薬学的に許容される塩として投与可能であり、また単独で、または薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクルと組み合わせて、活性成分として投与可能であることに留意すべきである。化合物は、経口的、皮下的、または非経口的に投与してもよく、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、眼内、および/または耳内投与、ならびに髄腔内および輸液手技を含む。また、化合物の移植片も有用である。液体形態は、注入用に調製され、該用語は、皮下、経皮、静脈内、筋肉内、髄腔内、経鼓膜の注入、および他の非経口投与経路を含む。液体組成物は、有機共溶媒を含む、または含まない水溶液、水性または油性の懸濁液、食用油を含む乳剤、および同様の薬学的ビヒクルを含む。一実施形態において、投与は、静脈内投与を含む。好ましい実施形態において、投与は、局所投与、とりわけ外耳道への局所投与、鼓膜への局所投与、眼への局所投与、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、本願の化合物は、点耳剤として鼓膜に適用される。いくつかの実施形態において、本願の化合物は、点眼剤として眼に適用される。いくつかの好ましい実施形態において、本明細書において開示されるdsRNA分子は、点耳剤による経鼓膜注入によって投与される。他の実施形態において、本明細書において開示されるdsRNA分子は、硬膜外投与またはくも膜下投与によって投与される。
本明細書において開示される核酸分子を含む薬学的組成物は、1日1回(QD)、1日2回(bid)、1日3回(tid)、1日4回(qid)、または任意の間隔で、また医学的に適切な任意の期間投与してよい。しかしながら、治療薬は、1日を通して適切な間隔で投与される、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の副用量を含む投薬単位で投与してもよい。その場合、各副用量に含まれる核酸分子をそれに対応して少なくして、1日当りの総投薬単位を達成することができる。投薬単位は、例えば、数日間の期間にわたって、dsRNAの持続および一貫した放出を提供する従来の持続放出製剤を用いて、数日間にわたる単回用量用に調合することもできる。持続放出製剤は、当技術分野において公知である。投薬単位は、相当する倍数の1日用量を含有してもよい。組成物は、複数単位の核酸の合計が十分な用量を含有するように調合することができる。
薬学的組成物、キット、および容器
また、核酸分子を患者に投与および配布するための、本明細書において提供されるRhoAの発現を下方制御するための核酸分子(例えば、siNA分子)を含む、組成物、キット、容器、および製剤も提供される。キットは、少なくとも1つの容器および少なくとも1つのラベルを含み得る。好適な容器には、例えば、瓶、バイアル、注射器、および試験管が含まれる。容器は、ガラス、金属、またはプラスチックなどの様々な材料で作られていてよい。容器は、アミノ酸配列、小分子、核酸配列、細胞集団、および/または抗体、および/または関連の実験、予後、診断、予防、および治療の目的で必要とされる任意の他の成分を保持することができる。かかる使用についての指示および/または用法は、かかる容器上にまたは容器とともに、試薬および他の組成物またはこのような目的で使用される器具と同様に含まれていてよい。
容器は、代替的に、状態の治療、診断、予後、または予防に有効な組成物を保持してもよく、また無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静注溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであってよい)。組成物中の活性成分は、RhoA mRNAを特異的に結合させる、および/またはRhoAの機能を下方制御する核酸分子であってよい。
キットは、薬学的に許容される緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、および/またはデキストロース溶液を含む第2の容器さらに含んでもよい。これは、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよく、これには他の緩衝液、希釈剤、フィルター、撹拌器、針、注射器、および/または指示および/または使用説明を含む添付文書が含まれ得る。
米国連邦法により、ヒトの治療における薬学的組成物の使用には、連邦政府機関による承認が求められる。米国では、食品医薬品局(FDA)が実施を担当し、FDAはそのような承認のための適切な規制を発行し、これは21 U.S.C.§301−392に詳述されている。動物の組織から作製される製品を含む生物材料に関する規制は、42 U.S.C.§262に規定されている。諸外国のほとんどは同様の承認を要求している。規制は国によって異なるが、個々の手順は当業者に公知であり、本明細書において開示される組成物および方法は、好ましくは適宜準拠する。
本明細書において開示される核酸分子は、RhoAに関連する疾患、状態、または障害、例えばCNS、PNS、前庭感覚系、視覚系、および/または循環(脈管、動脈)系における疾患、傷害、状態、または病態、ならびに細胞または組織中のRhoAレベルに関連するまたはそれに応答する任意の他の疾患または状態(例えば、異常なおよび/または混乱した細胞運動、細胞骨格調節、および/または微小管構築に関連する疾患または障害)を治療するために、単独または他の治療法と組み合わせて使用することができる。したがって、本明細書において開示される組成物、キット、および方法は、ラベルまたは添付文書を含んで、本明細書において開示される核酸分子をパッケージ化することを含んでもよい。ラベルは、脊髄傷害(SCI)、緑内障、NAION、アルツハイマー病、メニエール病、および本明細書において開示される任意の他の疾患または状態を含むがこれらに限定されない中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)、視覚系、循環(脈管、動脈)系、または前庭系の疾患、障害、傷害、および状態の治療、または防止のための使用など、核酸分子の使用のための指示を含んでもよい。ラベルは、ニューロン変性の治療または防止または軽減のための使用など、核酸分子の使用のための指示を含んでもよい。神経変性には、例えば、視神経および網膜神経節細胞を含む網膜、聴神経(内耳神経または聴覚神経としても知られ、内耳から脳への音および平衡情報の伝達に関与する)、蝸牛神経と前庭神経とからなり、延髄から出て、顔面神経とともに側頭骨内の内耳道(または内聴道)を通って頭蓋内に入る聴神経を介して脳に情報を伝達する内耳の有毛細胞の変性が含まれる。ラベルは、悪性腫瘍または癌の治療または防止のための使用など、核酸分子の使用のための指示を含んでもよい。ラベルは、単独または他の治療法と組み合わせた、細胞または組織中のRhoAレベルに関連するまたはそれに応答する任意の他の疾患または状態の治療または防止のための使用など、核酸分子の使用のための指示を含んでもよい。ラベルは、RhoAの発現を減少させる、および/または下方制御する際の使用のための指示を含んでもよい。「添付文書」とは、治療用製品の商品パッケージに慣例的に含まれる使用説明書を指して使用され、これは適応症、使用法、投与量、用法、禁忌、パッケージ化されている製品と併用する他の治療用製品、および/またはそのような治療用製品の使用に関する注意などについての情報を含む。
当業者は、当技術分野において周知の他の治療、薬物、および療法が、本明細書の核酸分子(例えば、dsNA分子)と容易に組み合わせることができ、したがって本明細書において想定されていることを理解するであろう。
治療方法
別の態様において、本発明は、RhoAの異常発現に関連する疾患または障害の治療の必要性がある対象の治療のための方法であって、ある量のRhoAの発現を減少または阻害する阻害剤を対象に投与することを含む方法に関する。
RhoAは、細胞骨格の調節、ひいては細胞骨格再構築に関連する全ての過程、例えば、細胞運動、侵入、増殖に関与するGTPaseである。その神経再生との関連性は、それらの特性に直接起因している。
一実施形態において、核酸分子を用いて、疾患または状態(例えば、神経変性)と関連する、RhoAおよび/またはRhoAおよび/またはRhoAハプロタイプ多型から生じるRhoAタンパク質の発現を下方制御または阻害することができる。RhoAおよび/またはRhoA遺伝子、あるいはRhoAおよび/またはRhoAタンパク質、あるいはRNAレベルの分析を用いて、そのような多型を有する対象、または本明細書に記載する特性、状態、または疾患を発症する危険性がある対象を特定することができる。これらの対象は、治療、例えば、本明細書において開示される核酸分子ならびにRhoAおよび/またはRhoA遺伝子発現に関連する疾患の治療に有用な任意の他の組成物を用いた治療に適している。したがって、RhoAおよび/またはRhoAタンパク質あるいはRNAレベルの分析を用いて、治療の種類および対象を治療する際の治療過程を決定することができる。RhoAおよび/またはRhoAタンパク質あるいはRNAレベルをモニターすることにより、治療成果を予測し、特性、状態、または疾患に関連する特定のRhoAおよび/またはRhoAタンパク質のレベルおよび/または活性を調節する化合物および組成物の有効性を判定することができる。
RhoA遺伝子発現を下方制御することができる、またはRhoA遺伝子発現に対するRNA干渉を媒介することができる、本明細書において提供されるような小核酸分子、例えば低分子干渉核酸(siNA)分子、干渉RNA(RNAi)分子、低分子干渉RNA(siRNA)分子、二本鎖RNA(dsRNA)分子、マイクロRNA(miRNA)分子、および低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子を使用することによる、RhoA発現の阻害のための組成物および方法が提供される。また、本明細書において開示される組成物および方法は、種々の状態または疾患、例えばCNS、PNS、および前庭感覚系の障害、疾患、および傷害、目の障害、メニエール病、ならびに疼痛を治療する際にも有用である。
本明細書において開示される核酸分子は、独立して、または他の薬物と組み合わせて、もしくは併用して、本明細書に記載される疾患、障害、および傷害などのRhoAに関連する疾患、特性、状態、および/または障害を防止または治療するために使用することができる。
本明細書において開示される核酸分子は、配列特異的な形でRhoAの発現を調節することができる。核酸分子は、RhoA mRNAの一部に少なくとも部分的に相補的な(アンチセンス)隣接ヌクレオチドを含むセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、RhoAに対して特異的なdsRNAは、神経保護および/または神経再生および/または神経形成を助ける他の治療薬および/または他の分子標的に対して特異的なdsRNAと併用することができ、これには神経ステロイド(例えば、プロゲステロン、プレグネノロン)、抗不安薬(例えば、Etifoxin)、成長因子、神経栄養因子(例えば、CNTF)、眼圧(IOP)降下薬、(例えば、ラタノプロスト(Xalatan(登録商標)))、幹細胞を含むが、これらに限定されない。
神経変性障害、神経障害、腫瘍障害、および脳血管障害を、本明細書において開示される核酸分子を用いたRNA干渉によって治療することができる。例示的神経変性障害には、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄傷害、および他の神経変性障害がある。本明細書において開示される核酸分子は、配列特異的な形でRhoAの発現を下方制御することができる。
対象または生物におけるRhoAに関連する疾患または状態を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を本明細書において提供されるような核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における神経変性を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病(PD)、血管拡張性運動失調症(AT)、脳卒中後認知症(PSD)、眼神経変性疾患、および/または聴神経変性疾患からなる群から選択される神経変性障害を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における脊髄傷害(SCI)、脳傷害、神経系の障害、脳卒中、およびパーキンソニズムからなる群から選択される中枢神経系の傷害を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における目の虚血状態、例えば前部虚血性視神経ニューロパシーからなる群から選択される脳血管障害を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物におけるニューロパシーを治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
自律神経ニューロパシー、癌性ニューロパシー、圧迫性ニューロパシー、糖尿病性ニューロパシー、薬剤性ニューロパシー、中毒性ニューロパシー、化学療法誘発性ニューロパシー、胃腸ニューロパシー、栄養性ニューロパシー、遺伝性ニューロパシー、免疫介在性ニューロパシーおよび慢性免疫介在性多発ニューロパシー、感染性ニューロパシー、ならびにニューロパシー性疼痛からなる群から選択される対象におけるニューロパシーを治療または防止する方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。いくつかの実施形態において、本発明は、糖尿病性ニューロパシーを患っている対象を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象はアロディニアに罹患している。
対象または生物における神経再生を促進するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物に神経保護を与えるための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
自律神経ニューロパシー、癌性ニューロパシー、圧迫性ニューロパシー、糖尿病性ニューロパシー、薬剤性ニューロパシー、中毒性ニューロパシー、化学療法誘発性ニューロパシー、胃腸ニューロパシー、栄養性ニューロパシー、遺伝性ニューロパシー、免疫介在性ニューロパシー、感染性疾患媒介ニューロパシー、ニューロパシー性疼痛、およびアロディニアからなる群から選択されるニューロパシーの危険性がある、またはニューロパシーを患っている対象または生物に神経保護を与える方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
神経系の傷害または神経変性疾患に罹患している対象または生物に神経保護を与える方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における異常なおよび/または混乱した細胞運動、細胞骨格調節に関連する疾患または障害を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における血管新生障害、血管疾患、および/または動脈疾患を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における眼球血管新生疾患または障害を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
角膜血管新生疾患または障害、網膜血管新生疾患または障害、脈絡膜血管新生疾患または障害、あるいはそれらの組み合わせからなる群から選択される眼球血管新生疾患または障害を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における網膜症を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における糖尿病性網膜症を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
角膜移植対象または生物における角膜移植片拒絶反応を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における再狭窄を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
対象または生物における癌、または悪腫瘍、または癌腫、または腫瘍形成を治療または防止するための方法は、対象または生物におけるRhoA遺伝子の発現を下方制御するのに適した条件下で、対象または生物を核酸分子に接触させることを含み得る。
好ましい実施形態において、治療される対象は、温血動物、とりわけヒトを含む哺乳動物である。
本発明の方法は、RhoAの発現を下方制御する1つまたは複数の阻害性化合物、とりわけsiRNAを治療有効用量で対象に投与することを含み、それによって対象を治療する。
「治療」という用語は、上にあげる関連障害を防止または遅延(軽減)することを目的とする、治療的処置および予防または防止措置の双方を指す。治療の必要性がある者には、既にその疾患または状態を経験している者、その疾患または状態を生じる傾向がある者、およびその疾患または状態が予防されるべき者が含まれる。本発明の化合物は、それに関連する疾患または状態または症状の発病の前、最中、または後に投与してよい。処置が予防目的である場合、本発明は、疾患または障害の発病を遅延させるまたはその発症を回避するための方法に関する。
本発明は、RhoAの発現の下方制御が有益である疾患または状態の治療における、RhoAの発現を下方制御する化合物、とりわけ新規の二本鎖RNA化合物(dsRNA)の使用に関する。
RhoAを下方制御する方法、分子、および組成物は、本明細書において詳細に説明され、また、前記分子および/または組成物のいずれも前記状態のいずれを患っている対象の治療においても有益に使用することができる。RhoAを対象とするsiRNAの調製において有用な好ましいオリゴマー配列は、表I、II、III、またはIVに記載する。
本発明の化合物が治療剤として有用な特定の適応症の詳細が、本明細書に記載される。
本発明は、実施例を参照して以下に詳細に例示されるが、それに限定されると解釈されるべきではない。
本明細書中のいかなる文書の引用も、このような文書が関連する従来技術であることの承認であること、または本出願の任意の特許請求の範囲の特許性の問題とみなされることを意図しない。いかなる文書の内容または日付に関する任意の記述も、出願人が出願時に入手可能な情報に基づいており、このような記述の正確性の承認を構成するものではない。
実施例
分子生物学における一般的方法
当技術分野において公知であり、具体的に記載されていない標準的な分子生物学の技術に関しては、概ね、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1989)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)、およびPerbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley & Sons,New York(1988)、およびWatson et al.,Recombinant DNA,Scientific American Books,New York、およびBirren et al(eds) Genome Analysis:A Laboratory Manual Series,Vols.1−4 Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998)に記載されるもの、ならびに米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第,192,659号、および第5,272,057号に記載の方法論に従い、それらは参照により本明細書に組み込まれる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、概ね、PCRプロトコル:A Guide To Methods And Applications,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されるように行った。フローサイトメトリーと組み合わせたインサイツ(細胞内)PCRは、特定のDNAおよびmRNA配列を含有する細胞の検出に使用することができる(Testoni et al.,1996,Blood 87:3822)。RT−PCRを実施する方法は当技術分野で周知である。
実施例1:RhoAに対する活性dsRNA化合物の配列の生成およびdsRNA化合物の生成
独自のアルゴリズムおよびヒトRhoA mRNAの配列(配列番号1)を使用し、多くの潜在的なdsRNA化合物の配列を生成した。本方法を用いて生成された配列は、対応するヒトRhoA mRNA配列に完全に相補的であるか(表I「18−mer」、表IIIおよびIV「19−mer」)、あるいはアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドと標的mRNAとの間にミスマッチを含む(表II、「18+1−mer」)。ヒトRhoA mRNA、およびラット、マウス、アカゲザル、および/またはチンパンジーRhoA mRNAを含む少なくとももう1つの種に対して最も活性であると、独自のアルゴリズムを用いてコンピュータで予測された候補dsRNA化合物を選択した。
ヒトRhoA mRNAのポリヌクレオチド配列は、NCBI参照配列:NM_001664.2において特定され、配列番号1に記載する。RhoA mRNAは、配列番号2に記載する、NCBI参照配列NP_001655.1において特定されるポリペプチドをコードする。各センスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列番号を表に記載する。本明細書の表中に以下の略記を使用する。「X=−種」は、他の動物との異種間同一性を指す:Rt−ラット、Rh−アカゲザル、Ms−マウス、Cp−チンパンジー。ORF:オープンリーディングフレーム。19−merおよび18+1−merは、それぞれ長さが19および18+1(アンチセンス鎖の1位にU、センス鎖の19位にA)リボ核酸のオリゴマーを指す。
それぞれの選択された配列対(二重鎖)を3’末端ジヌクレオチドdTdTオーバーハングを有する19−mer二重鎖(_S709化合物)として試験する。
表I 18−merオリゴヌクレオチド対
表II 18+1−merオリゴヌクレオチド対
表III 19−merオリゴヌクレオチド対
表IVは、化学修飾dsRNA分子を生成する際に有用なオリゴヌクレオチド対を提示する。これらのオリゴヌクレオチド対は、本願の譲受人の国際公開第WO2009/044392号に開示されている。
表Vは、比較活性試験のためのオリゴヌクレオチド対を提示する。
これらのRhoA dsRNA(dsRhoA)分子、ならびに既に特定され、少なくともヒト種およびラット種と適合する活性dsRhoA化合物を合成し、ヒト細胞株における残存RhoA mRNAレベルのqPCR分析を用いて、インビトロRNAi活性を検査した5nM以下の濃度で少なくとも85%のノックダウンを生じる(5mMで残存mRNA15%未満)dsRNA化合物をラット細胞株において再試験し、さらなる最適化に進めた。化学修飾を組み込んで、ヌクレアーゼ耐性を与え、オンターゲット活性は維持または増加したままオフターゲット活性を低下させ、炎症誘発性応答を減少させることにより、選択された候補dsRNA分子を最適化した。異なるタイプの化学修飾およびdsRNA配列を評価した。合成された化学修飾dsRNAを図1に示す。これらの修飾dsRNA化合物を合成して、細胞培養においてRNAi活性について検査した。親分子と比較して類似するまたは改善された活性を有するものをさらなる特徴付けに進めた。第1に、dsRNA化合物のヌクレアーゼ耐性をヒト血漿、ヒト血清、CSF(脳脊髄液)、および/または細胞溶解物中で評価した。血漿、血清、CSF、および細胞溶解物中で少なくとも10時間の安定性を示したdsRNA化合物をpsiCHECK(商標)(Promega)ルシフェラーゼレポーターシステムを使用するオフターゲットアッセイに進めた。ルシフェラーゼ発現のRNAi媒介阻害を細胞培養において分析した。
dsRNA化合物による先天性免疫の可能性のある活性化の試験を3つの異なるインビトロ方法を用いて実施した:(a)TLR/RIG−I/Mda5依存ルシフェラーゼレポーターのdsRNA活性化の評価、(b)dsRNAで治療したヒト末梢血単核球(PBMC)におけるサイトカイン産生の評価、(c)dsRNAで治療したヒトPBMCにおけるIFN応答遺伝子の発現を分析することによる、インターフェロン(IFN)応答の活性化の評価。当業者はこれらの方法に精通しており、これらを容易に実施する。
対照対のインビトロ試験
対照対は、19−mer二重鎖と、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端に共有結合したジヌクレオチドdTdTとを有するdsRNA化合物を含む。この対照化合物は、RHOA_X_S709と称される。
RhoA遺伝子を内因的に発現する約2×105ヒトPC3細胞を24時間後に30〜50%のコンフルエンスに達するように1.5mLの成長培地でインキュベートした。細胞に、トランスフェクト細胞当たりの最終濃度0.3〜5nMまで、dsRNA Lipofectamine(商標) 2000試薬をトランスフェクトした。細胞を37±1℃、5% CO2で48時間インキュベートした。Cy3標識dsRNA二重鎖をトランスフェクション効率に対する陽性対照として使用した。Lipofectamine(商標) 2000試薬でのみ処理した細胞をノックダウン活性に対する陰性対照として使用した。dsRNAをトランスフェクトした細胞を採取し、EZ−RNA(商標)キット[Biological Industries(#20−410−100)]を用いてRNAを単離した。このプロトコルを用いて試験したdsRNA化合物には、表I、II、III、およびVに記載の対が含まれる。非修飾18+A二重鎖の活性データは、下記の表Aに提示する。18+Aとは、19塩基対の二重鎖を指し、1〜18位[(N’)y]に標的mRNAとの完全一致を有し、19位にA(N2、アデノシン)を有するこのオリゴヌクレオチド(N’)y−N2は、相補的オリゴヌクレオチド(N)x−N1と二重鎖を形成する。化合物は非置換であり、インビトロでの活性を試験するために、3’dTdTオーバーハングを含んで合成された。表Aおよび表Bの活性結果は、濃度5nM、0.5nM、および0.1nMでdsRNAを適用後の残存標的%として提供される。
表A‐両鎖に非修飾リボヌクレオチドを、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端にdTdTジヌクレオチドオーバーハングを含む18+1mer dsRNAのノックダウン活性結果(残存mRNA%)。
表B‐両鎖に非修飾リボヌクレオチドを、および両鎖の3’末端にdTdTジヌクレオチドオーバーハングを含む19mer dsRNAのノックダウン活性結果(残存mRNA%)。
対照分子(78〜84)と比較したある特定の好ましい分子(48、50、58)の活性を表Cに示す。
化学修飾dsRNA分子およびプロファイルされた活性(ノックダウン)を、図1に提示する。修飾の凡例は、以下のとおりである:接頭辞「z」は、3’または5’末端ヌクレオチドに共有結合した部分(ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド)を示す。例えば、zdTは、dTオーバーハングを指し、zdT;zdTは、dTdTオーバーハングを指す。接頭辞「y」は、ヌクレオチド置換を示し、例えばyLdAは、センス鎖またはアンチセンス鎖でリボヌクレオチドを置換したL−デオキシリボアデニンを指し、yrUは、センスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドで別のリボヌクレオチドを置換したウリジンを指す。接頭辞「m」は、2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを指す。さらなる符号を、下記の表Dに記載する。
表D−化学修飾dsRNA分子の凡例
RhoA核酸化合物のインビトロ試験
細胞株:ヒト前立腺腺癌PC3細胞(ATCC、Cat#CRL−1435)を10% FBSおよび2mM L−グルタミンを補充したRPMI培地で成長させ、ヒト上皮子宮頸癌HeLa細胞(ATCC、Cat#CCL−2)を10% FBSおよび2mM L−グルタミンを補充したDulbecco変法イーグル培地(DMEM)で維持した。細胞を37℃、5% CO2で維持した。
RhoA遺伝子を内因的に発現する約2×105ヒトPC−3細胞を24時間後に30〜50%のコンフルエンスに達するように1.5mLの成長培地でインキュベートした。細胞に、トランスフェクト細胞当たりの最終濃度0.1〜5nMまで、dsRNAおよびLipofectamine(商標) 2000試薬をトランスフェクトした。細胞を37±1℃、5% CO2で48時間インキュベートした。Cy3標識dsRNA二重鎖をトランスフェクション効率に対する陽性対照として使用した。Lipofectamine(商標) 2000試薬で処理した細胞をsiRNA活性に対する陰性対照として使用した。dsRNAをトランスフェクトした細胞を採取し、EZ−RNA(商標)キット[Biological Industries(#20−410−100)]を用いてRNAを単離した。
試験したそれぞれのdsRNA二重鎖による標的遺伝子発現の阻害の割合は、細胞からの標的mRNAのqPCR分析によって測定した。細胞からcDNAを合成し、リアルタイムqPCRによって標的遺伝子mRNAレベルを測定することにより、逆転写を実施した。各試料について、測定した細胞mRNAレベルをサイクロフィリンA(CYNA、PPIA)mRNAのものに対して正規化した。dsRNAで処理した試料中および非トランスフェクト対照試料中の標的遺伝子mRNA量の比率に基づいて、ノックダウン活性を決定した。
試験したそれぞれのdsRNA二重鎖による標的遺伝子発現の阻害の割合は、細胞からの標的mRNAのqPCR分析によって測定した。細胞からcDNAを合成し、リアルタイムqPCRによって標的遺伝子mRNAレベルを測定することにより、逆転写を実施した。各試料について、測定した細胞mRNAレベルをサイクロフィリンA(CYNA、PPIA)mRNAのものに対して正規化した。dsRNAで処理した試料中および非トランスフェクト対照試料中の標的遺伝子mRNA量の比率に基づいて、ノックダウン活性を測定した。
RhoA dsRNAのヌクレアーゼ安定性の特徴付け
dsRNA RhoA化合物のエンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼ安定性は以下のように測定した。
(1)ヒト血漿および/またはヒト脳脊髄液(CSF)(エンドヌクレアーゼ安定性)
非変性ゲルの臭化エチジウム(EthBr)染色によるdsRNA完全性の評価
変性ゲルから得られたノーザンブロットに対する配列特異的プローブのハイブリダイゼーションによる、二重鎖中の各dsRNA鎖の安定性の評価
(2)ヒトHCT116の抽出物(エキソヌクレアーゼ安定性)
変性ゲルから得られたノーザンブロットに対する配列特異的プローブのハイブリダイゼーションによる、二重鎖中の各dsRNA鎖の安定性の評価
(3)血漿中での安定性(エンドヌクレアーゼ耐性)
RhoA dsRNA化合物をヒト全血漿またはCSF中、37℃で最長24時間インキュベートした。インキュベーション1時間、3時間、6時間、12時間、および24時間で、3μLアリコートを回収して液体窒素中で瞬間凍結した。dsRNA完全性を(1)15%天然ポリアクリルアミドゲル(PAGE)による電気泳動(約40ng/レーン)、次いで臭化エチジウム(EthBr)染色(ヒト血漿試料のみ)によって、(2)変性8M尿素8% PAGEによる電気泳動(1ng/レーン)(ホルムアミド中1:87希釈物)、次いでナイロン膜(Hybond‐XL)への電気ブロッティング、およびdsRNA二重鎖のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかを検出する放射性標識したオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションによって分析した。5μLのPBSに溶解し、天然または変性PAGE加えた40ngまたは1ngのdsRNAそれぞれが、無傷の未処理dsRNA分子の移動参照物質としての役割を果たした。非修飾dsRNAの対応物、即ち非修飾のリボヌクレオチドの全てとの同じヌクレオチド配列を有するdsRNA化合物をエンドヌクレアーゼ安定性の陰性対照として使用した。
ヒトHCT116細胞質抽出物中での安定性(エキソヌクレアーゼ耐性):dsRNA RhoA化合物のエキソヌクレアーゼ耐性は、ヒトHCT116の細胞質抽出物において、37℃でのインキュベーションにより、異なる時間間隔(1時間、3時間、6時間、12時間、または24時間)について評価した。様々なインキュベーション時間後のdsRNA完全性を変性ゲル(PAGE)による電気泳動、ブロッティング、およびその後の放射性標識した鎖特異的プローブ(dsRNA化合物二重鎖のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかを検出するオリゴヌクレオチドプローブ)へのハイブリダイゼーションによって分析した。
試験した化合物の安定性結果は、本明細書において下記表E、F、およびGに示す。安定性データは時間で示し、即ち24は24時間を指す。好ましい分子のいくつかは、血漿および/または血清中で3時間を上回って安定であった。
表Eは、対照化合物(RHOA_48、50、および58(S709))ならびにRHOA48およびRHOA_48uに基づく化学修飾dsRNAの安定性を示す。
表Fは、RHOA_50に基づく化学修飾dsRNAの安定性データを示す。
表Gは、RHOA_58に基づく化学修飾dsRNAの安定性データを示す。
RhoA化合物のオンターゲットノックダウン活性とオフターゲットノックダウン活性の評価
ヒトHeLa細胞における活性:dsRNA RhoA化合物(対非修飾対応物)のノックダウン効率を、ヒトHeLa細胞における「オンターゲット」psi−CHECK試験を用いて試験した(dsRNA化合物のガイド鎖の対応する一致する相補的標的配列を含有するルシフェラーゼレポータープラスミド構築物の活性を分析する)。各dsRNAを4pM〜100nMの5種類の濃度でトランスフェクトした。Lipofectamineに暴露した細胞が陰性対照としての役割を果たした。
オフターゲット活性:dsRNA RHOA化合物の可能性のあるシード媒介オフターゲット効果をpsi−CHECKプラスミドレポーターシステム(Promega(商標))において分析した。このシステムは、
ガイド鎖(GS)‐完全に一致する配列に向けた「オンターゲット」活性;
ガイドシード領域‐「オフターゲット」miRNA様活性;
パッセンジャー鎖(PS)‐パッセンジャー鎖のRISCへの競合取り込みによる「オフターゲット」効果(PS−CM)、の固有の可能性の評価を可能にする。
全ての標的配列をルシフェラーゼレポーター構築物の3’−UTRに挿入し、ルシフェラーゼレポータールミネセンス、次いでdsRNAトランスフェクションの特異的減少としてsiRNA活性を測定した。4つのpsiCHECK(商標)−2に基づく構築物を各候補dsRNA一次配列について調製した。これらのpsiCHECK構築物は、一致する相補的ガイド(GS−CM)またはパッセンジャー(PS−CM)鎖配列の単一コピー、またはガイドシード領域(GS−SM)に相補的な配列の3つのコピーであり、それらの間の最適距離でクローニングしたもの(最もストリンジェントな条件で潜在的シード媒介オフターゲット効果を試験するため)を含み、あるいは「フルセンサ」psiCHECK構築物は、ガイド「フルセンサ」配列の4つのタンデムコピーを含み、この配列は、センス鎖およびアンチセンスRNA鎖の2位〜8位(5’から3’の方向で)のシード領域、それに続く4つの非標的ヌクレオチドのスペーサ、次いで13位〜19位のアンチセンス鎖の中央領域からなる(これらの構築物は、極めて広範囲の塩基対合オフターゲットを模倣するために生成した)。
オンターゲット活性およびオフターゲット活性の結果は、下記の表H、J、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、およびUに示す。
表H dsRHOA_48およびdsRHOA_48u分子のアンチセンス鎖の標的との完全一致(オンターゲット)
表J dsRHOA_48およびdsRHOA_48u分子のアンチセンス鎖のその標的とのシード一致(オフターゲット)
表K dsRHOA_48およびdsRHOA_48u分子のセンス鎖の標的との完全一致(オフターゲット)
表L dsRHOA_48およびdsRHOA_48u分子のアンチセンス鎖のそのシードヌクレオチドおよびヌクレオチド13〜17との一致(オフターゲット)
表M dsRHOA_50分子のアンチセンス鎖のその標的との完全一致(オンターゲット)
表N RHOA_50分子のアンチセンス鎖のシードとのシード一致(オフターゲット)
表P dsRHOA_50分子のセンス鎖のその標的との完全一致(オフターゲット)
表Q dsRHOA_50分子のアンチセンス鎖のシードヌクレオチド+ヌクレオチド13〜17との一致(オフターゲット)
表R dsRHOA_58分子のアンチセンス鎖の標的との完全一致
表S dsRHOA_58分子のアンチセンス鎖シードとのシード一致(オフターゲット)
表T dsRHOA_58分子のセンス鎖のその標的との完全一致(オフターゲット)
表U dsRHOA_58分子のアンチセンス鎖のシードヌクレオチド+ヌクレオチド13〜17との一致(オフターゲット)
候補分子
特定の現在好ましいdsRNA(dsRHOA)分子を表Wに記載し、ノックダウン活性(qPCR)、オンターゲット(Psi−AS−CM)、オフターゲット(Psi−AS−SMおよびPsi−S−SM)、およびアンチセンス鎖安定性データを各分子について提示する。
na:該当なし。試験していないか、あるいはアッセイがQCを通過しなかった。
5nMでのqPCRノックダウン:+++
≦15%;++ 15<30%;+ 31<50%
RHOA dsRNA分子に対する先天的免疫応答:
新鮮なヒト血液(室温)を室温で滅菌0.9% NaClと1:1の比率で混合し、Ficoll(Lymphoprep,Axis−Shield cat#1114547)に徐々に加える(比率1:2)。スイング式遠心分離機で試料を室温で30分間遠心分離し(22℃、800g)、RPMI1640培地で洗浄し、10分間遠心分離する(室温、250g)。細胞を計数し、最終濃度1.5×106細胞/mLで成長培地(RPMI1640+10%FBS+2mM L−グルタミン+1% Pen−Strep)に播種し、dsRNA処理の前に37℃で1時間インキュベートする。
製造業者の指示に従ってLipofectamine(商標) 2000試薬(Invitrogen)を使用して、細胞を異なる濃度の試験dsRNAと接触させ、5% CO2インキュベーター中、37℃で24時間インキュベートする。
IFN応答に対する陽性対照として、細胞を最終濃度0.25〜5.0μg/mLのTLR3リガンドである二本鎖RNA(dsRNA)の合成類似体のポリ(I:C)(InvivoGen Cat#tlrl−pic)、または最終濃度0.075〜2μg/mLのTLR 7/8リガンドであるチアゾロキノロン(CLO75)(InvivoGen Cat#tlrl−c75)で処理する。Lipofectamine(商標) 2000試薬で処理した細胞をIFN応答に対する陰性(参照)対照として使用した。
インキュベーション約24時間後に、細胞を回収し、上清を新しい試験管に移す。試料を液体窒素中で即座に凍結し、IL−6 DuoSet ELISAキット(R&D System DY2060)およびTNF−α DuoSet ELISAキット(R&D System DY210)を用いて、製造業者の指示に従って、IL−6およびTNF−αサイトカインの分泌を試験する。RNAを細胞ペレットから抽出し、ヒト遺伝子IFIT1(テトラトリコペプチド反復配列1を含むインターフェロン誘導タンパク質)およびMX1(ミクソウイルス(インフルエンザウイルス)耐性1、インターフェロン誘導性タンパク質p78)のmRNAレベルをqPCRによって測定した。測定したmRNAの量を参照遺伝子ペプチジルプロリルイソメラーゼA(サイクロフィリンA;CycloA)の量に対して正規化した。IFNシグナル伝達の誘導を、処理細胞からのIFIT1遺伝子およびMX1遺伝子からのmRNAの量を未処理細胞における量と比較することによって評価する。qPCR結果は、QC基準を通過したもの、即ち標準曲線の傾きの値が間隔[−4、−3]であり、R2>0.99であり、プライマーダイマーが存在しなかったものである。QC要件を通過しなかった結果は、分析に不適格とする。
実施例2:動物モデル
緑内障のモデル系
緑内障の治療および防止に関する本発明の活性dsRNA化合物の試験は、例えばMaeda,K.et al.,"A Novel Neuroprotectant against Retinal Ganglion Cell Damage in a Glaucoma Model and an Optic Nerve Crush Model in the rat",Investigative Ophthalmology and visual Science(IOVS),March 2004,45(3)851に記載されている、視神経挫滅のラット動物モデルで実施する。具体的には、視神経切断のために、麻酔したラットの眼窩内視神経(ON)を眼窩上手技により露出し、髄膜を切断し、篩板から2mmを10秒間鉗子で挫滅することにより、ONの全ての軸索を切断する。
本明細書において開示されるRhoA dsRNA化合物は、この動物モデルで試験され、結果はこれらのRhoA dsRNA化合物が、緑内障の治療および/または防止に有用であることを示している。
ラット視神経挫滅(ONC)モデル:硝子体内(IVT)dsRNA送達および点眼剤dsRNA送達
視神経切断のために、麻酔したラットの眼窩内視神経(ON)を眼窩上手技により露出し、髄膜を切断し、篩板から2mmを10秒間鉗子で挫滅することにより、ONの全ての軸索を切断する。
dsRNA化合物を単独または組み合わせて、点眼剤として5uL容量(10ug/uL)で送達する。視神経挫滅(ONC)後即座に、20μg/10μLの試験dsRNA化合物または10μLのPBSを成体ウィスターラットの片眼または両眼に投与し、注入5時間後および1日後、さらに2日後、4日後、7日後、14日後、および21日後に、切除し瞬間凍結した全網膜に取り込まれたdsRNAのレベルを測定する。点眼剤により投与されたdsRNA化合物の活性および有効性を試験するために、同様の実験を実施する。
MASCISラット脊髄傷害モデル
ほとんどのヒト脊髄障害は、脊髄の挫傷に関わる。ラット脊髄挫傷の衝突モデルは、一貫した傷害を生成し、細胞外カリウムおよびカルシウム移動、下降誘発応答、ならびに脊髄の病変体積を含む様々な評価基準に反映されるように、薬物候補を試験するための非常に貴重なインビボモデルを提供する(Pinzon et al.,2008a、Pinzon et al.,2008b)。このモデルは、メチルプレドニゾロン(MP)治療による、7匹のみのラットで有意な病変体積変化を検出することができる((Young,2002)に概説される)。さらに、MASCIS群は、衝突部位における組織学的変化と線形相関した、21ポイント順序尺度であるBasso−Beattie−Bresnahan(BBB)運動スコアを確認した(Basso et al.,1995)。このモデルは、極めて一貫した慢性的な組織学的変化をもたらす(Beattie et al.,1997)。近年、脊髄傷害の研究にラットを使用する傾向がある。MASCIS衝突体は、十分に標準化されたラット脊髄挫傷モデルであり、これはラットにおける24時間後の病変体積、6週間後の白質の残存、および運動回を線形予測する極めて一貫した段階的な脊髄損傷を生じる(Young,2002)。他の脊柱傷害モデルは、このような障害に関連する複数の機序を研究するのに役立ってきたが、脊髄離断は、二次損傷の最悪の局面に関連する広範囲に及ぶ外傷的損傷を生じない。したがって、離断に有効な治療は、打撲傷害には有効でない可能性がある(Iseda et al.,2008)。
本明細書において開示されるdsRNA化合物は、この動物モデルで試験され、結果はこれらのdsRNA化合物が、脊髄傷害の治療および/または防止に有用であることを示している。
実施例3:SCIの治療におけるdsRhoA化合物のインビボ研究
挫傷性SCI後のRhoA免疫組織化学的検査
RhoA dsRNA化合物未処置動物において、タンパク質の上方制御を確認するために、傷害後1週間、2週間、および4週間でのSCI後のRhoAの免疫局在性を検査する。傷害を受けていない対照動物と比較して、SCI後のRhoAタンパク質の増加が観察される。RhoAタンパク質の増加は、4週間を通して維持され、1〜2週間辺りにピークに達すると思われる。後根および前根は、血管を裏打ちする内皮細胞と同様に、RhoAの強い免疫局在性を示す。共焦点顕微鏡分析は、RhoAの多くが、形質膜付近に位置することを示しており(D'Alessandro et al.,2004)、これがSCI後に活性状態にあることを示唆している。
脊髄傷害および実質内送達後のラット脊髄におけるdsRNA化合物の細胞局在
Cy3.5フルオロフォアと結合したネイキッドヌクレアーゼ安定化dsRNAは、運動ニューロン、マクロファージ、白質軸索、ならびに後根のニューロン、および内皮細胞への取り込みを示した。したがって、打撲傷害直後に注入した場合、dsRNAは、ニューロン、星状膠細胞、小膠細胞、マクロファージ、および内皮細胞を含む、RhoAの作用がSCIに関わっている細胞の多くによって取り込まれ得る。したがって、これら全ての細胞は、神経保護性(Dubreuil et al.,2003、Lord−Fontaine et al.,2008)、抗炎症性(Schwab et al.,2004)、および神経再生性(Bertrand et al.,2007、McKerracher and Higuchi,2006)であることが予想される、RhoAの阻害の可能性のある標的である。
SCI後のRhoAタンパク質誘導の阻害
本明細書において開示されるRhoA dsRNA化合物のRhoAタンパク質のレベルを変更する能力を分析するために、脊髄組織の5mm切片からタンパク質を抽出し、RhoAタンパク質の相対レベルを免疫ブロット後に測定する。RhoAタンパク質のレベルは、dsRhoA化合物で処置された注射挫傷部位では、siGFP対照と比較して低く、RhoAタンパク質誘導の阻害を示す。同じ抽出物の坑RhoA抗体での免疫ブロットは、siGFP対照と比較して、Rhoに対するRhoA dsRNA化合物との免疫反応性の同様の減少を示す。
SCIおよびsiRNAの実質内注入後のラットの後肢歩行の機能回復(Basso、Beattie、およびBresnahan(BBB)スコア試験)
RhoAに対する本明細書において開示されるdsRNA化合物を用いて、6週間の運動BBB分析を実施する。dsRhoA化合物の髄腔内注入後に、対照としてのdsGFP化合物と比較して、有意な運動改善が観察される。BBB歩行スコアの改善を示す効果は、試験した最も初期に観察され、これはsiRNAの効果が、軸索が成長するのにより長い時間を要し得る再生の促進に加え、保護機序によるものである可能性を示している。
腰椎穿刺注入後のSCI部位におけるdsRNA取り込み
本明細書において開示されるdsRNA化合物が、脳脊髄液に髄腔内導入される。実質内送達と髄腔内送達とを比較するため、挫傷1日後、ボーラス投与を用いてCy3.5標識ネイキッドdsRNA化合物を腰膨大に投与する。結果は、傷害の中心、ならびに脊髄の隣接する吻側領域および尾部領域における染料の脊髄への広範囲に取り込みを示す。凍結超薄切片法は、dsRNAが、傷害部位内および周辺の近傍で最も確実に白質および灰白質に浸透したことを示す。より遠位に弱い実質シグナルが観察されるが、このシグナルは中心管および脊髄周囲の双方では強い。結果は、おそらくは傷害部位におけるdsRNAの浸透の増加により、傷害部位付近の実質においてより多量の取り込みを示す。腰部の髄腔内送達は、脊髄の胸部における傷害部位内または周辺のdsRNAの選択的取り込みをもたらす。
腰椎穿刺によるdsRNA注入3日後のRhoA mRNA発現の阻害。
本明細書において開示されるRhoA dsRNA化合物のSCI誘導性のRhoA mRNA増加を阻害する能力を、定量RT−PCRで測定する。挫傷1日後、腰椎穿刺によりRhoA dsRNA化合物を注入し、3日後に、RhoA mRNAの相対レベルについて脊髄組織を分析する。結果は、RhoA mRNAの相対レベルが、傷害部位においてSCI後4日までに増加すること、またdsRhoA化合物治療が40μgおよび100μgが注入された場合に、この増加を減少させることを示す。
腰椎穿刺後のラット後肢歩行(BBB)の機能回復
挫傷傷害1日後に投与される本明細書において開示されるdsRhoA化合物の腰椎穿刺注入のdsGFP対照と比較した治療効果は、BBBスコア法を用いて測定する。dsRhoA化合物治療は、dsGFP対照よりも高いスコアをもたらす。
本願において提供されるオリゴヌクレオチド配列および構造を用いるdsRhoA化合物は、SCIの治療に有用である。
実施例4:眼の疾患、障害、および傷害に関連するモデル系および結果
視神経挫滅(ONC)モデル、上昇IOPモデル、および視神経軸索切断モデルを含むモデル系
ラット緑内障モデルにおける、硝子体内注入(IVT)による、または点眼剤(ED)としての送達後のdsRhoA化合物のIOP低下活性
上昇したIOPを誘発するために、ウィスターラットの眼の前房に、IOPの上昇が30%を超える(0日目として指定される日)まで、週1回マイクロビーズを注入する。IOPは、TonoPen XL眼圧計を用いて週3回測定し、IOP低下におけるdsRhoA化合物の相対的有効性を評価する。点眼剤(ED)による送達:上昇したIOPの誘発後、100μgのdsRhoA化合物または対照dsRNA化合物(siCNL)、あるいは3μLの2%メチルセルロース(MC)中の60ngのラタノプロスト(陽性対照)または3μLの2% MCのみを用量内で点眼剤として1日1回、14日間送達する(n=4)。硝子体内注入による送達:20μgのdsRhoAまたはsiCNL、あるいは10μLのPBS中の60ngのラタノプロストまたは10μLのPBSのみを硝子体内注入(IVT)により、0日目および7日目に送達する(n=4)。併用IVT−ED処置:20μgのdsRhoAまたは10μLのPBS中のsiCNL、または10μLのPBSのみを0日目に硝子体内注入(IVT)により送達し、続いて1日100μgのdsRhoA化合物または3μLの2%メチルセルロース(MC)中の対照dsRNA化合物(siCNL)、または3μLの2% MCのみをEDとして14日間送達する。
ラットONCモデルにおけるdsRhoAの神経保護効果:
麻酔した成体ウィスターラットの眼窩内視神経(ON)を露出し、髄膜を切断し、篩板から2mmを10秒間、目盛付き鉗子で挫滅することにより、ONの全ての軸索を切断する。10μgのdsRhoA化合物、または10μLのPBS中の対照dsRNA化合物(siCNL)、または10μLのPBSのみをIVT注入により、ONC後0日目に送達する(n=4)。5μgの脳由来神経栄養因子(BDNF)を同様に注入した眼が、陽性対照としての役割を果たす。終了2日前に、網膜神経節細胞(RGC)をONへのフルオロゴールド注入により逆行的に標識する。終了時(ONC後7日目)に、カテーテルにより実験動物に4%パラホルムアルデヒドを灌流する。ONを有する眼を摘出し、ナイフで角膜を切除し、水晶体/硝子体を慎重に取り除く。次に網膜を切除し、4%パラホルムアルデヒド中でさらに30分間固定し、UVフィルター(365/420nm)を用いた蛍光顕微鏡下での標識RGCの検査のために調製する。逆行性標識された蛍光RGCの数を、各網膜ホールマウントの4象限のそれぞれを撮影した画像から決定する。無傷の眼のRGC密度は、ベースライン対照としての役割を果たす。
ONCモデルにおけるdsRhoA有効性:
成体フィッシャーラットのONを上記に記載のように挫滅し、同時に摘出したばかりの坐骨神経の切片を眼の硝子体内に移植し、軸索再生を促進する。20μgのdsRhoA化合物、または10μLのPBS中の対照dsRNA化合物(siCNL)、または10μLのPBSのみをONC後0日目、7日目、および14日目に、3回のIVT注入によって送達する(n=4)。5μgのBDNFを注入した群は、陽性対照としての役割を果たす。実験は、21日目に終了する。GAP43抗体によるON切片の免疫組織化学的検査は、各治療群における、挫滅地点を越えるRGC軸索再生の程度の定量的測定および定性的測定を可能にする。
緑内障モデルにおけるdsRhoA化合物のIOP低下効果:
IOPの上昇を記載のように誘導する。dsRhoA試験化合物、または対照dsRNA化合物(siCNL)、または60ngのラタノプロスト、または賦形剤のみをそれぞれ、実施した実験において最良の結果を示した送達経路のうちの1つにより送達する(例えば、IVT注入、点眼剤、点耳剤、またはそれらの任意の組み合わせ)。IOPを、TonoPen XL眼圧計を用いて週3回測定し、IOP低下に関する試験したRhoA dsRhoA化合物の相対的有効性を評価する。
3種類の動物モデルの結果に基づいて最良のインビボ有効性を示すものとして、主要薬物候補を選択する。本明細書において提供されるオリゴヌクレオチド配列および構造を使用するdsRhoA化合物は、眼の疾患、障害、および傷害(例えば、緑内障)の治療に有用である。
主要dsRhoA薬物候補を用いた治療計画の最適化(視神経挫滅(ONC)傷害モデル、網膜神経節細胞(RGC)軸索再生モデル、高眼圧(IOP)モデルにおける用量反応試験)。
緑内障モデルにおいて漸増用量の主要dsRhoA化合物がIOPを低下させる能力の測定:
上に記載のように、IOPの上昇を誘導し、結果を分析する。漸増用量の主要dsRhoA化合物をIVT(単回用量として、10μLの5μg、10μg、20μg、および40μg)で、または100μgのsiRNAを3μL容量で1日1回、2回、または3回、20分の投与間隔で14日間送達する点眼剤(ED)により、またはXXμgのsiRNAをXμL容量で1日1回、2回、または3回、XX分の投与間隔で14日間送達する点耳剤(ErD)により送達する(n=4)。siCNLは、陰性対照としての役割を果たし、ラタノプロストは陽性対照としての役割を果たす。IOPは、TonoPen XL眼圧計を用いて週3回測定し、IOP低下におけるdsRhoA化合物の有効性を評価する。
ラットにおけるONC後に漸増用量のdsRhoA化合物がRGC生存を導く能力の測定:
上に記載のように、ONCモデルを実施し、結果を分析する。漸増用量の5μg、10μg、20μg、もしくは40μgのdsRhoA試験化合物、または10μLのPBS中の40μgのsiCNL、または10μLのPBSのみをONC後0日目に単一IVT注入により送達する(n=4)。BDNFを注入した眼は、陽性対照としての役割を果たす。試験は、ONC後7日目に終了する。
実施例5:ラットにおける視神経挫滅後に漸増用量のdsRhoA化合物がRGC軸索再生を誘導する能力を測定するインビボ研究
ONCモデルについて上に記載のように、研究を実施し、結果を分析した。漸増用量の10μg、20μg、および40μgの試験dsRhoA化合物、または10μLのPBS中の40μgのdsEGFP化合物、または10μLのPBSのみをONC後0日目、10日目、および20日目に硝子体内(IVT)注入によって送達した(n=4)。毛様体神経栄養因子(CNTF)注入群は、陽性対照としての役割を果たした。実験は、30日目に終了した。
ONCおよびdsRNA注入
200〜250gの成体雌ウィスターラットをHypnorm/Hypnovel麻酔剤(Janssen Pharmaceuticals,Oxford,UK)で腹腔内麻酔し、両眼の視神経(ON)を眼窩内で挫滅して(ONCモデル)、全てのRGC軸索を完全に切断した。ガラス製マイクロピペットを用いて、最終容量10μLで、全ての試薬を硝子体内に注入した。動物は、
(i) PBS;
(ii) 20μgのdsEGFP対照化合物EGFP_5_S763_L1 dsRNA;
センス鎖:
rG;mG;rC;mU;rA;mC;rG;mU;rC;mC;rA;mG;rG;mA;rG;mC;rG;mC;rA;mC;rC$;
アンチセンス鎖:
mG;rG;mU;rG;mC;rG;mC;rU;mC;rC;mU;rG;mG;rA;mC;rG;mU;rA;mG;rC;mC$;
(mC、mG、mA、およびmUは、2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを示し;C、G、A、およびUは、非修飾リボヌクレオチドを示し;$は、末端Piを示す)、
(iii) 10μg、20μg、または40μgのdsRhoA化合物RHOA_4_S500(「RhoAバッチ1」とも表される):
センス鎖:
rG;mC;rC;mA;rC;mU;rU;mA;rA;mU;rG;mU;rA;mU;rG;mU;rU;mA;rC
アンチセンス鎖:
mG;rU;mA;rA;mC;rA;mU;rA;mC;rA;mU;rU;mA;rA;mG;rU;mG;rG;mC
(mC、mG、mA、およびmUは、2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを示し;C、G、A、およびUは、非修飾リボヌクレオチドを示す);
(iv) 10μg、20μg、または40μgのdsRhoA化合物RHOA_29_S73、「RhoAバッチ2」:
センス鎖:U;mC;G;mA;C;mA;G;mC;C;mC;U;mG;A;mU;A;mG;U;mU;U$
(配列番号166)
アンチセンス鎖:mA;A;mA;C;mU;A;mU;C;mA;G;mG;G;mC;U;mG;U;mC;G;mA$
(配列番号170)
(mC、mG、mA、およびmUは、2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを示し;C、G、A、およびUは、非修飾リボヌクレオチドを示し;$は、末端Piを示す);または
(v) 5μgのCNTF(Peprotech Ltd,London,UK);
のうちのいずれかで、ONC後0日目、10日目、および20日目に処置した。
ONC後30日目に、CO2に暴露して動物を致死させ、4%ホルムアルデヒド(TAAB Laboratories,Aldermaston,UK)を心臓内に灌流させた。網膜を切除し、4%ホルムアルデヒド(TAAB Laboratories)で30分間浸漬固定した後、PBSで1回につき30分間、3回洗浄した。次いで、眼およびONを10%、20%、および30%ショ糖に各2時間浸漬して凍結保護してから、試料をO.C.T.コンパウンド中で包埋し、ドライアイス上で凍結した。クリオスタットを使用して15μm厚の切片を切り取り、Superfrostスライドに付着させ、−20℃で必要になるまで保管した。
RGC計数
視神経円板が見える位置で切り取った眼の切片を室温で30分間解凍し、次いでHaemotoxylin(Sigma,Poole,UK)中で2分間染色し、水道水の流水で2分間洗浄し、Scotts水道水で1分間洗浄し、その後Eosin(Sigma)中で30秒間染色した。次いで切片を水道水の流水で2分間洗浄し、段階的な一連のアルコール各1分間によって脱水し、Histoclearに1分間および3分間浸漬してからVectamount(Vector Labs,Peterborough,UK)に取り付けた。互いから等距離であり、網膜の全周を占める各網膜の5つの部分を用いて、神経節細胞層中に存在するRGCの数を計数した。4網膜、5部分/条件からの計数を合計し、平均を出して、平均RGC/網膜±標準偏差を示した。
免疫組織化学的検査
二重免疫蛍光染色のために、切片を100%エタノールで1分間後固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、0.1% Triton X−100で透過化処理し、洗浄し、ブロックし、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)および0.05% Tween 20(PBST−BSA)(Sigma)を含有するPBSで希釈した適切な一次抗体(表3)とともに、4℃で一晩インキュベートした。
表3−使用した抗体の特性
次に切片をPBS中で洗浄し、PBST−BSAで1:400に希釈した適切な蛍光標識二次抗体(Alexa−488またはTexas Red;Molecular Probes,Oregon,USA)とともに室温で1時間インキュベートし、PBS中でさらに洗浄後、DAPI含有Vectashield(Vector Labs,Peterborough,UK)に取り付けた。対照には、一次抗体を省いた切片または特定のIgG対照を含んだ。切片をZeiss落射蛍光顕微鏡(Zeiss,Hertfordshire,UK)下で観察し、Axiovision(登録商標)ソフトウェア(Zeiss,Version 4,2)により制御されるAxioCam(登録商標) HRcを用いて、画像を倍率10倍(元の倍率100倍)で撮影した。全ての画像をAdobe Photoshop CS3(Adobe Systems,San Jose,CA,USA)に蓄積した。
結果:dsRhoA処置後の平均RGC生存を図2に示す。
dsEGFP化合物と比較した、RhoA dsRNA化合物によるRGC生存の促進を図3に示す。
結果は、「RhoAバッチ2」とも表されるdsRhoA化合物RHOA_29_S73が、30日で有意なRGC生存を促進したことを示している。このdsRhoA化合物による処置時に、傷害後30日で、PBS処理対照と比較して50%超高いRGC生存が観察され、CNTF処理対照と比較して、約20%高いRGC生存が観察されたが、これは現在の神経保護治療における著しい前進を示している。
ラット網膜およびその組織分布における試験dsRhoA化合物の用量依存的薬力学的効果:
8匹の無傷のラット群(n=8)に漸増用量の試験dsRhoA化合物または対照dsRNA化合物(siCNL)(5μg、10μg、20μg、および40μg)をIVT注入し、24時間後に致死させる。1群当たり6匹のラットの眼を摘出し、網膜を切除し、dsRNA定量化、mRNAノックダウン測定、およびRLM−RACEを用いたRNAi確認に使用する。1群当たり2匹残ったラットにカテーテルにより4% PFAを灌流し、眼を摘出し、後固定し、パラフィンで包埋し、眼におけるdsRNA分布のインサイツハイブリダイゼーション検出に使用する。
実施例6:送達経路によるモデルごとの最適用量の選択
dsRNA効果持続期間の評価:
試験dsRhoA化合物の単回投与の治療効果持続期間を、上に記載される最適条件下で分析する。評価のエンドポイントは、緑内障モデルにおけるIOP低下活性の持続期間および網膜におけるRhoAノックダウン効果の持続期間である。
高IOPモデルにおけるdsRhoA試験化合物の効果持続期間:
上に記載のように高IOPモデルを誘導する。上記に記載のように、IVT注入により、または最適なED投与計画により(1日にわたる)、最適用量の試験dsRhoA化合物でラット(n=4)を処置する。対照動物をsiCNLで同様に処置する。試験dsRhoA候補化合物の有効性および効果持続期間は、薬物が効かなくなった後にdsRhoA群においてIOPが再び上昇するまで、毎日IOPをモニターすることによって調査する。理論にとらわれるものではないが、この時間間隔は、小柱網におけるdsRhoA RNAiの効果持続期間と等しいと考えられる。
網膜におけるdsRhoA試験化合物の薬力学的(RNAi)効果持続期間:
網膜における試験RhoA候補化合物の効果持続期間を確立するために、dsRhoA化合物を上記に記載のような最良のIVT用量で、単一IVT注入により未処置ラットに投与する。siCNLを同じIVT用量で別の群のラットに投与する。注入後1日、2日、3日、5日、7日、10日、および14日で、動物を致死させる(時点当たりn=6)。眼を摘出し、網膜を切除し、(1)ステム・ループPCRを用いたdsRNA定量化;(2)qPCRを用いた標的ノックダウン測定;および(3)RLM−RACEを用いたRNAi確認に使用する。
実施例7:ラット視神経挫滅(ONC)モデルにおける、RhoAを標的とするdsRNA化合物のニューロン生存および軸索再生に対する効果
研究デザイン:群における終了は、ONC後30日または50日である。全群に対するdsRNA投与は、10日ごとの両眼硝子体内注入(IVT)によって行う。
群1〜12は、両眼ONCを行う。眼の各対は、同じ処置を受ける。
測定したエンドポイント:
組織固定し凍結した組織切片:
a)視神経におけるRGC軸索再生のためのGAP43
b)網膜におけるRGC生存のためのTUJ1
試験dsRNAは、本願全体において開示される。CNTF注入群は、陽性対照としての役割を果たす。実験は、第2群を除く全ての群で30日目に終了し、第2群では50日目に終了する。
ONCおよびsiRNA注入
200〜250gの成体雌ウィスターラットをHypnorm/Hypnovel麻酔剤(Janssen Pharmaceuticals,Oxford,UK)で腹腔内麻酔し、両眼のONを眼窩内で挫滅して(ONC)、全てのRGC軸索を完全に切断する。ガラス製マイクロピペットを用いて、最終容量10μLで、全ての試薬を硝子体内に注入する。表4の研究デザインに従って動物を処置する。
ONC後30日目またはONC後50日目(研究デザインに従う)に、CO2に暴露して動物を致死させ、4%ホルムアルデヒド(TAAB Laboratories,Aldermaston,UK)を心臓内に灌流させる。網膜を切除し、4%ホルムアルデヒド(TAAB Laboratories)で30分間浸漬固定した後、PBSで1回につき30分間、3回洗浄する。次いで、眼およびONを10%、20%、および30%ショ糖に各2時間浸漬して凍結保護してから、試料をOCT中で包埋し、ドライアイス上で凍結する。クリオスタットを使用して15μm厚の切片を切り取り、Superfrostスライドに付着させ、−20℃で必要になるまで保管する。
RGC計数
視神経円板が見える位置で切り取った眼の切片を室温で30分間解凍し、次いでHaemotoxylin(Sigma,Poole,UK)中で2分間染色し、水道水の流水で2分間洗浄し、Scotts水道水で1分間洗浄し、その後Eosin(Sigma)中で30秒間染色する。次いで切片を水道水の流水で2分間洗浄し、段階的な一連のアルコール各1分間によって脱水し、Histoclearに1分間および3分間浸漬してからVectamount(Vector Labs,Peterborough,UK)に取り付ける。互いから等距離であり、網膜の全周を占める各網膜のの5つの部分を用いて、神経節細胞層中に存在するRGCの数を計数する。4網膜、5部分/条件からの計数を合計し、平均を出して、平均RGC計数/網膜±標準偏差を示す。
免疫組織化学的検査
二重免疫蛍光染色のために、切片を100%エタノールで1分間後固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、0.1% Triton X−100で透過化処理し、洗浄し、ブロックし、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)および0.05% Tween 20(PBST−BSA)(Sigma)を含有するPBSで希釈した適切な一次抗体(表3)とともに、4℃で一晩インキュベートする。
次に切片をPBS中で洗浄し、PBST−BSAで1:400に希釈した適切な蛍光標識二次抗体(Alexa−488またはTexas Red;Molecular Probes,Oregon,USA)とともに室温で1時間インキュベートし、PBS中でさらに洗浄後、DAPI含有Vectashield(Vector Labs,Peterborough,UK)に取り付ける。対照には、一次抗体を省いた切片または特定のIgG対照を含む。切片をZeiss落射蛍光顕微鏡(Zeiss,Hertfordshire,UK)下で観察し、Axiovision(登録商標)ソフトウェア(Zeiss,Version 4,2)により制御されるAxioCam(登録商標) HRcを用いて、画像を倍率10倍(元の倍率100倍)で撮影する。全ての画像をAdobe Photoshop CS3(Adobe Systems,San Jose,CA,USA)に蓄積する。
本明細書において開示されるdsRhoA化合物がこの実験で試験され、神経保護を誘導することが示される。ONC後に救出されるRGCの数は、dsRhoA処理群において、dsEGFP対照dsRNAで処理した群よりも有意に多い。
実施例8:皮質ニューロン保護
dsRhoA化合物のインビボでの神経保護効果を評価するために、培養下で成長させたマウス皮質ニューロンをNMDAに5分間暴露し、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を測定することにより、24時間後の細胞死をモニターする(Choi et al.,J.Neurosci.7:357,1987)。可能性のある治療有効性を判定するための追加試験には、インビボ脳卒中モデルを使用する。これらのモデルでは、脳に通じる大動脈をクランプすることにより、血液供給を一時的に遮断する。
実施例9:メニエール病のモデル系
本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、メニエール病を患っている患者における難聴を軽減または治療する際に有用であり、また、理論にとらわれるものではないが、メニエール病に関連する神経損傷から聴覚ニューロンを保護するよう作用する。メニエール病の治療における、またはメニエール病における神経保護剤もしくは神経再生因子としてのdsRhoA化合物の有効性を試験するための例示的モデルは、以下のとおりである:
Sheykholeslami K,Megerian CA,Zheng QYV.Vestibular evoked myogenic potentials in normal mice and Phex mice with spontaneous endolymphatic hydrops.Otol Neurotol.2009 Jun;30(4):535−44、Megerian CA,Semaan MT,Aftab S,Kisley LB,Zheng QY,Pawlowski KS,Wright CG,Alagramam KN.A mouse model with postnatal endolymphatic hydrops and hearing loss.Hear Res.2008 Mar;237(1−2):90−105、Semaan MT,Alagramam KN,Megerian CA.The basic science of Meniere's disease and endolymphatic hydrops.Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg.2005 Oct;13(5):301−7。
実施例10:メニエール病マウスモデルの難聴の軽減または治療におけるdsRhoA化合物の有効性を測定するインビボ研究
研究目的:
機能評価および組織学的評価を用いた、メニエール病のマウス遺伝モデルにおける選択された4種類のdsRNA化合物の有効性の評価。
研究デザイン
表5 研究デザイン。
注:「P」は、「出生後の日数」(postnatal day)の略である。
機能試験を、試験物質または対照物質の投与日の29日目から、およびそれらの投与前に実施する。dsRNA投与は、40〜60分間の動物の不動化(麻酔)を要する。同じ週齢の無傷の未処置マウスにおける機能試験が、ベースライン対照としての役割を果たす。
点耳剤による試験項目の適用
麻酔:4mL/kg体重のEquithesine(Intraperitoneal,I.P.)でマウスを麻酔する。
外耳道(右(REAC))点耳剤(ErD)送達:3μLの試料容量(温かい10%グリセロール系点耳剤、37°C)を先の丸いピペットチップを用いて右外耳道(REAC)にゆっくりと注入する。REAC ErDの投与中および投与後に、マウスを1時間反対側横臥位に保ち、意識回復後にケージに戻す。
10%グリセロール中製剤化試験項目の調製−試験物質の説明:
滅菌条件下での凍結乾燥により、dsRNAを沈殿させる。
10%グリセロール溶液を試験化合物に添加し、15分間放置する。次いで、10秒間ボルテックスする。適用前に、点耳剤を37℃の温度にする。
終了時に、マウスの内耳を切除し、固定し、パラフィンで包埋し、聴覚および前庭の両区分、ならびにせん神経節の代表を有するように薄片に切り分ける。これらのスライドを使用して、内耳形態の組織学的評価を行う。
スライド1枚当たり5ミクロンの切片2つを含む、耳1つ当たり6枚のスライドを使用して、内耳におけるdsRNA分布のインサイツハイブリダイゼーション分析を行う。未処置の無傷のマウス耳のスライド15枚を使用して、系の較正を行う。
本明細書において開示されるRhoA dsRNA化合物が、この研究で試験され、モデル誘導6週間で、RhoA dsRNA処置マウスの全ての機能試験において、RhoA dsRNAが、ビヒクル処置群と比較して、また対照dsRNA処置群と比較して、有意な改善を誘導することが示される。この改善は、研究終了まで維持される。これらの結果は、本明細書において開示されるRhoA dsRNA化合物が、メニエール病の治療において有用であることを示した。
実施例11:角膜新血管形成のモデル系
この研究の目的は、角膜新血管形成のマウス縫合モデルにおける、結膜下注入により適用したRhoA dsRNA化合物の治療効果の評価である。
研究デザインは9つの実験群を含み、各群はマウス6匹を含む。各マウスの両眼の角膜を11−0ナイロンを用いて2点で縫合して、角膜新血管形成を誘導する。掻爬とは対照的に、縫合は約2週間で新血管形成をもたらし、眼間で血管成長のより優れた一貫性を提供し、より多くの新血管形成を誘導する。角膜縫合1日後に、試験項目のdsRhoA化合物または対照PBSビヒクルを両眼に結膜下注入する。その後、dsRhoA化合物または対照PBSビヒクルを週2回、3日目、7日目、および10日目に注入する(合計4回の適用)。
結膜下注入が新血管形成を誘導する可能性に対して調整を行うために、dsRNA化合物を含まないビヒクル注入を用いる対照群#9を含める(表6)。
表6 研究デザイン
麻酔:ケタミン/キシラジンまたはアベルチンでマウスを麻酔する。全てのマウスの角膜を5マイクロリットルのプロパラカイン(局所麻酔剤)で麻酔する。
角膜縫合手順:(各マウスの両眼の)角膜を11−0ナイロン糸を用いて2点で縫合する。角膜縫合の目的は、角膜新血管形成を誘導することである。縫合は、約2週間で新血管形成をもたらす。(掻爬とは対照的に、縫合は、眼間で血管成長のより優れた一貫性を提供し、より多くの新血管形成を誘導する)。
手術手順:
(A)アベルチンでマウスを麻酔する。
(B)マウスのひげおよび過剰に長い睫毛をはさみで切断する。
(C)第1の11−0ナイロン縫合は、角膜の中心と角膜縁との間の12時の位置で、2−1−1ノットを用いて実施する。角膜内皮穿刺縫合は、新血管形成の誘導を目的とし、縫合糸を所定の位置に維持する。
(D)第2の11−0ナイロン縫合は、角膜の中心と角膜縁との間の6時の位置(第1の縫合の逆の位置)で、2−1−1ノットを用いて行う。
(E)局所バシトラシン抗生物質軟膏を眼表面に塗布する。
(F)マウスをケージに戻し、歩行可能までモニターする。
(G)マウスを翌日検査し、抗生物質軟膏を再塗布する。
結膜下注入:
縫合1日後、ならびにその後週2回、3日目、7日目、および10日目に、マウスに以下のように両眼結膜下注入を行う:
a.ベルチンでマウスを麻酔する。
b.マウスをJMEC A0612における外科用顕微鏡下、水再循環加熱パッド上に置く。
c.5マイクロリットルのトロピカミド(散瞳)および5マイクロリットルのプロパラカイン(局所麻酔剤)をマイクロピペットを用いて両眼に局所投与する。
d.過剰に長い睫毛は全てVannasはさみで短く切り揃える。
e.32ゲージの気密マイクロシリンジ(Hamilton Company)を結膜下に挿入して、両眼の角膜縁後部1mmにdsRhoA化合物またはPBS(対照群)を送達する。
f.針を除去して、局所バシトラシン抗生物質軟膏眼表面に塗布する。
g.マウスをケージに戻し、歩行可能までモニターする。
h.マウスを翌日検査し、抗生物質軟膏を再塗布する。
評価
データ生成および分析
角膜脈管(新血管形成)の画像:外科用顕微鏡に取り付けたカメラで顕微鏡写真を撮影する。研究の各段階において、同じ位置を比較する(毎週、両眼の角膜縫合部周辺)。角膜新血管形成を血管の面積および明度によって0〜5で等級付けする:
a.0−(新血管形成が存在しない);
b.1−(角膜縁からの弱く小さい血管);
c.2−(角膜縁と角膜縫合部との間に新しい血管が成長している);
d.3−(縫合部までおよびその周囲の新しい血管);
e.4−(縫合部までおよびその周囲の太い蛇行する新しい血管)、および
f.5−(縫合部を超え、角膜中央に向かう太い蛇行する新しい血管)。
血管内皮細胞の免疫組織化学的染色:マウスの眼(両眼)を摘出し、角膜から残存する角膜縁および虹彩を取り除く。盲検者が角膜のフラットマウントに血管内皮細胞の免疫組織化学的染色を実施する。新鮮な角膜を切除し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で30分間濯ぎ、100%アセトン(Sigma)中で20分間固定する。PBSでの洗浄後、0.1M PBSおよび2%アルブミン(Sigma)を用いて、温度4℃で3晩、非特異的結合を遮断する。濃度1:500でフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合モノクローナル抗マウスCD31抗体(BD Pharmingen)と、および濃度1:200でLYVE−1(ウサギ、ab 14917)と、0.1M PBSおよび2%アルブミン中、4℃で一晩インキュベートし、その後1:1000の抗ウサギ抗体−A546(A11010)と1時間インキュベートし、次いで室温のPBS中で洗浄する。角膜に退色防止剤(Gelmount;Biomeda,San Francisco,CA)を施し、蛍光顕微鏡で可視化する。
新血管形成のデジタル定量化:血管内皮細胞の免疫化学的染色および角膜のフラットマウント後、蛍光顕微鏡に取り付けたカメラで角膜脈管の画像を撮影する。市販のソフトウェア(Microscope Software AxioVision LE)を用い、コンピュータで画像を分析し、角膜新血管形成を定量化する。角膜新血管形成のデジタル定量化を実施する。蛍光顕微鏡に取り付けたCD−330電荷結合素子(CCD)カメラで、角膜脈管の画像を撮影する。LSM−5 Image Examiner(Zeiss,Hamburg,Germany)を用いて画像を分析し、624 3 480ピクセルに分解し、タグイメージファイル形式(TIFF)ファイルに変換する。新血管形成およびリンパ管新生を、それ以上の値では血管のみが捕らえられる蛍光発光の閾値を設定することによって定量化する。マウントした全角膜を分析して、サンプリングバイアスを最小限に抑える。新血管形成およびリンパ管新生の定量化は、盲検的に実施する。総角膜範囲は、境界線として輪部(角膜の縁部)の弧の最内部血管を用いて輪郭を描く。新血管形成およびリンパ管新生の総面積を、総角膜面積に対して正規化する。
本明細書において提供されるオリゴヌクレオチド配列および構造を使用するdsRhoA化合物は、このモデルで試験され、CNV誘導眼における新血管形成の減少を誘導する際に有用であることがわかる。
dsRhoA化合物処置群において計数された血管の数は、dsEGFP化合物処置群と比較した場合、有意に低い。
実施例12:正常ラットにおける、異なる投与方式後のRhoAを標的とするdsRNA化合物による、網膜神経節細胞(RGC)におけるRhoA mRNA切断の評価
この研究の目的は、本明細書に記載のdsRhoA化合物を用いて、ラット網膜神経節細胞(RGC)におけるRhoA mRNAの指向切断の証拠を得ることである。本明細書に記載のdsRhoA化合物の3つの異なる投与方式後に、RACE(cDNA末端の迅速増幅)アッセイを実施する:経鼓膜(TT)、点耳剤(ErD)、または硝子体内注入(IVT)。
試験物質
(i)物質(非製剤化化合物) RhoA mRNAに対する本明細書に記載されるdsRNA化合物
(ii)製剤(製剤化化合物) IVT1〜6群用のPBS中2mg/mLのdsRNA化合物(112μLの試験管6本に分割した、1344μgのsRNA化合物を加えた672μlのPBS溶液(2mg/mL))
(iii)製剤(製剤化化合物)(400μg/30μL/耳) TT7〜10群用のPBS中dsRNA化合物(4.48mgのsiRNAを加えた168μLのPBS溶液(13.3mg/mL)を含む4本の試験管)
(iv)製剤(製剤化化合物)(200μg/10μL/耳) ErD11〜14群用の10%グリセロール中dsRNA化合物(2.24mgのsiRNAを加えた56μLの10%グリセロール溶液(20mg/mL)をそれぞれ含む4本の試験管)。
対照物質(陽性/陰性対照及びビヒクルを含む)
(i)ビヒクルPBS×1‐TTおよびIVT用
(ii)ビヒクル−実験用に新たに調製したパイロジェン非含有水中の10%滅菌グリセロール溶液‐ErD用
試験系
動物の飼育:食餌:動物に市販のげっ歯類用飼料(Harlan Teklad diet for rodents)を無制限給餌し、水を自由に摂取させる。
環境:(i)少なくとも5日間の順化(ii)全動物は、全研究期間にわたり、環境が制御され、収容条件の出入りが制限された施設に隔離し、承認された標準実施要領(SOP)に従って維持する。自動制御された環境条件は、研究室を温度20〜24℃、相対湿度(RH)30〜70%、12時間明期/12時間暗期サイクル、および換気15〜30回/時に維持するよう設定する。温度、RH、および照明サイクルは、制御機器によってモニターする。
実験デザイン
全般:実験構成には、16の実験群が含まれる(各群にラット4匹または12匹;(研究デザイン表7))。実験群1〜6のラットは、20μg/10μLのRhoA dsRNA化合物を両眼に注入(IVT)する。実験群7〜10のラットは、30μLのPBS×1中の400μgのRhoA dsRNA化合物を片耳にTT(左耳)注入する。実験群11〜14のラットは、10μLグリセロール10%中の200μgのRhoA dsRNA化合物で、右耳(REAC)への点耳剤(ErD)の単回適用により処置する。群15〜16は、無傷対照として実施する。安楽死および標本摘出は、研究デザイン(表7)に従って実施する。切除した網膜を表7に記載のように陽性細胞分離またはqPCR分析に回す。
表7 研究デザイン
麻酔および前投薬:
IVT注入:イソフルレン特別循環システム(Stoelting,USA)を用いて動物を麻酔する;操作設定:O2中3〜4.5%イソフルレン、O2流速600〜200mL/分。
ErDおよびTT処置:全身麻酔前に、イソフルレン特別循環システム(Stoelting,USA)を用いて、全ての動物に軽い麻酔をかけ(操作設定:O2中3〜4.5%イソフルレン、O2流速600〜800mL/分(3〜4分間))、その後、これらの動物をEquithesin(Intraperitoneal,I.P;4mL/kg)で深く麻酔する。
経鼓膜注入(TT):30μLの試料容量(温かい試験項目)を0.3mL注射器を用いてゆっくりとTT注入する。この容量を左中耳腔に送達する。TT注入中および注入後に、ラットを約1時間反対側横臥位に保ち、意識回復後にケージに戻す。TT注入は、双眼顕微鏡下で実施する。
右外耳道(REAC)ErD適用:10μLの試料容量(温かい10%グリセロール系点耳剤)を先の丸いピペットチップを用いてREACにゆっくりと注入する。REAC注入中および注入後に、ラットを約1時間反対側横臥位に保ち、意識回復後にケージに戻す。
計画安楽死:全ての動物をEquithesin(4mL/kg;I.P)で深く麻酔し、研究デザインに従って安楽死させる(表7、時点)。
組織採取:両眼を摘出し、網膜を切除し、以下のようにさらなる分析のために処理する:
「分解処理」:「網膜分析処理A」群の両眼を摘出し、氷上保存する。眼を解剖する。各試験管は、動物1匹から切除した2つの網膜を含む。切除した網膜をCa+2およびMg+2を含む6mLのPBSで満たした15mLの試験管に移す。試験管をRGC単離のために室温に移す。
RGC単離:網膜試験管から、「Neural Tissue−Dissociation Kit−Postnatal Neurons」(Miltenyi Biotec Cat#130−094−202)を用いて、製造手順に記載されているように細胞を解離する。次に、抗CD11bマイクロビーズ(BD IMag(登録商標)、Cat#IMAG558013)を用いて、マクロファージを排除し、「CD11b未結合」画分からの細胞を抗CD90.1−PE Ab(eBioscience、Cat N 12−0900−83、Lot N E0138−253)で染色して、PE_マイクロビーズ(BD IMag(登録商標)、Cat#557899)によってRGC分離を行い、製造手順に記載されているように、「CD90.1結合」集団および「CD90.1未結合」集団を得る。RGCの純度は、FACSによって測定する(「結合」集団において、CD90.1純度レベルにより、試料の失格が決定される)。
全網膜処理:「網膜分析処理B」群の切除網膜を摘出し、氷上保存する。眼を解剖し、適当な試験管に回収し(各試験管は、動物1匹から切除した2つの網膜をを含む)、液体窒素中で即座に凍結し、全RNAの抽出およびさらなる分析に回す。
評価
分析処理AおよびBによるプールした各網膜対の全ての試料をRNA抽出に回し、その後RhoA切断産物のRACE分析または遺伝子発現評価のいずれかを行う。
RACE分析:ラットにおけるdsRNA化合物のRhoA指向切断を、全試験群からプールした網膜対における、RACE(cDNA末端の迅速増幅)アッセイを用いた切断産物の検出によって判定する。切断部位は、配列分析により検証する。
試料RNA単離:全群から、「Total RNA Isolation With EZ RNA」に従って、二重抽出により、RGC(結合)および未結合の両試料からRNAを処理する。RNAの一部をcDNA調製およびqPCR分析に回す。
本明細書に記載のdsRNA化合物が、この研究で試験され、RhoA mRNAの指向切断を生じることがわかる。
実施例13:ラットのニューロパシー性疼痛の脊髄神経結紮(SNLまたはChung)モデルにおける、dsRhoA化合物の抗侵害受容作用および鎮痛作用のインビボ研究
この研究の目的は、本明細書において開示されるdsRhoA化合物の抗侵害受容作用および鎮痛作用をラットのニューロパシー性疼痛の脊髄神経結紮(SNLまたはChung)モデルにおいて評価することである。
研究0日目に、全ての動物を左L5−L6脊髄神経を単離して切断する手技からなるChung手術に供する。1M群、5M群、7M群、および9M群の動物に、手術日にALZET浸透圧ポンプを皮下移植し、試験項目で継続的に処置する。ポンプ機能の持続期間は28日であるが、ポンプは、試験項目を0日目から14日目まで、生理食塩水を14日目から28日目まで放出するか、あるいはポンプは、生理食塩水を0日目から14日目まで、試験項目を14日目から28日目まで放出する。2M群、4M群、6M群、および8M群の動物に、損傷後1日目または14日目のいずれかに、脊椎腔のL4−L5レベルに挿入された髄腔内(IT)管を介して、試験項目をゆっくりボーラス投与する。
研究デザインを表8に示す。略語:ITポンプ‐髄腔内ポンプ移植;IT単回腰椎注入‐腰部における髄腔内注入。
表8 研究デザイン
*注:これらの群の動物は、TIが投与されない日に髄腔内ポンプ移植を介して生理食塩水を投与する。5M群および9M群には、15日目から28日目まで、12μL/日の0.9%生理食塩水ITを投与する。7M群には、0日目から13日目まで、12μL/日の0.9%生理食塩水ITを投与する。
**注:ポンプ流量は、0.5μL/時(±0.1μL/時)である。ポンプ機能の持続期間は14日間である。リザーバ容量は、200μLである。
試験手順:
Chung誘導モデルの原理:Chungモデルは、ニューロパシー性疼痛の信頼性の高いモデルであり、動物が手術後に目覚めた直後に、動物の疼痛閾値の測定を可能にする。
手術および処置の概略を図4および図5に示す。
図4は、ITポンプ移植により投与される試験項目およびガバペンチン処置に関する。(*注:最初の14日間生理食塩水滴下を適用し(0日目から14日目まで)、次いで14日目から28日目まで薬物をさらに14日間適用する(7M群)。)
図5は、IT単回腰椎注入により投与される試験項目に関する。
表9 研究スケジュール(研究1日目から研究28日目まで):
ニューロパシー性疼痛誘導:ケタミン/キシラジンナトリウムを用いた麻酔下で、当該範囲の剃毛後、ラットを腹臥位にし、L4−S2レベルで左傍脊柱筋群を棘突起から分離する。L6脊椎横突起を小型骨鉗子で慎重に除去して、L5−L6脊髄神経を視覚的に確認する。左L5−L6脊髄神経を切断する。次いでこの筋肉を4−0絹縫合糸で縫合し、クランプにより皮膚を閉じる。手術後、ラットをケージに戻し、目覚めるまで加熱灯下に維持する。
事前選択の組み入れ/排除基準:
a.研究7日目に選択を実施する。
b.下記の基準のうち1つまたは複数に当てはまる場合に疼痛が検出される:
c.手術肢を舐め、付随して口で爪を軽く噛むまたは引っ張る;
d.脚を空中に上げる;
e.神経傷害と反対側に体重をかける;
f.後肢の変形、ならびに異常な姿勢および歩行;
g.左後肢の衰弱。
h.これら全ては組み入れ基準である。
i.動物は、L4が無傷であることを確実にするため、その脚を動かせなければならない。動物がその脚を動かせない場合、その動物は研究から排除する。
さらに、試験日に慎重な臨床検査を実施する。観察には、皮膚、毛皮、目、粘膜、分泌物および排泄物の発生(例えば、下痢)、ならびに自律神経活動(例えば、流涙、流涎、立毛、瞳孔の大きさ、異常な呼吸パターン)の変化が含まれる。歩行、姿勢、および接触時の反応の変化、ならびに奇妙な挙動、振戦、痙攣、睡眠、および昏睡の存在も観察される。上記の兆候のうちの1つまたは複数を示す動物は、研究から除外する。
ALZET浸透圧ポンプの準備および移植:1M群、5M群、7M群、および9M群の動物に、手術日に浸透圧ポンプを皮下移植する。その後皮膚切開を4−0絹縫合糸で縫合する。脊髄の髄腔内の脊椎L4レベルまで、ポリエチレンチューブを移植する。次にカニューレを浸透圧ポンプに接続し、2週間の投与に必要な量の生理食塩水を充填する。次いで、カニューレに少量の空気を充填する。ポンプ流量は、0.5μL/時(±0.1μL/時)である。ポンプ機能の持続期間は14日間である。ポンプに200μLの容量のTIを充填する。TIがL4の領域で投与されるように、大槽とL4椎骨との長さと可能な限り一致する長さで髄腔内カテーテルを挿入する。1M群、5M群、7M群、および9M群の動物を表8に指定するように処置する。
腰椎注入:髄腔内管を脊椎腔のL4−L5レベルに挿入し、試験項目をゆっくりボーラス投与する。
処置
処置開始:ALZETポンプを用いたIT経路による14日間の継続処置(5M群、7M群、および9M群)。ALZETポンプを用いたIT経路による28日間の継続処置(1M群)。
腰部におけるIT経路による急性単回処置。
腰部における髄腔内注入を用いた、手術24時間後に行う研究1日目の1回の予防的処置(4M群および8M群)。
腰椎注入を用いた、VF試験前に行う研究14日目の1回の治療的処置(6M群)。
陽性対照のガバペンチン(3M群)は、研究14日目、21日目、および28日目の疼痛試験2時間前に1日1回投与する。
投与経路
この研究で使用する投与経路Rを、表10に記載する。
表10 投与経路
終了
研究終了時に、動物をCO2で安楽死させる。
観察および計算
疼痛応答評価:機械的アロディニアのVon Frey試験を用いて疼痛応答を評価した。機械的アロディニアのVon Frey試験は、未処置動物にとっては痛くない短パルス圧力の印加に基づく。実際に、未処置動物の肢の引っ込めを達成するためには、印加する圧力が60gを超えることもある。これにより、研究者は、未処置動物の肢を実際に持ち上げるのに十分な圧力をVon Freyフィラメントにより印加することをしばしば要求される。しかしながら、疾患状態にある動物は、はるかに低い圧力に敏感であり、通常は痛くない刺激の結果として痛みを経験する。
機械的アロディニア評価(Von Frey試験):Von Frey装置(Touch(登録商標))を用いて、触覚刺激に対するアロディニア応答を評価する。ラットを囲いに入れ、金網面上に置くが、自由に動けるようにする。ラットのキャビンを赤いセロファンで覆って、環境妨害を軽減する。試験は、探索挙動の停止後に開始する。1組のVon Freyモノフィラメントは、Von Frey装置の製造者(Ugo Basil)によって提供されるように、実際の力のおおよその対数目盛および認識される強度の均等目盛を提供する。
動作原理:所定の長さおよび直径の繊維の先端が皮膚に垂直に押し当てられたとき、印加される力は、繊維が曲がるまで研究者がプローブを前進させ続ける限り増加する。繊維が曲がった後、プローブが前進を続けると繊維がさらに曲がるが、さらなる力が肢に印加されることはない。
表11は、力(g)およびモノフィラメントのそれに対応するサイズを示す。
表11 力(g)およびモノフィラメントのそれに対応するサイズ
齧歯動物は、その肢に不意に触れられたとき、肢引っ込め反射を示す。Touch Test(登録商標)Sensory Evaluatorを、ラットの足の足底面上に使用することができる。動物は、その肢を引き戻すことによって知覚を示す。引っ込め反応を高めるために必要な最小力を、基準値として指定する/みなす。
統計/データ評価:
全てのデータを、平均±標準誤差として提示する。各処置群は、一元配置ANOVA、次いでTukey事後試験を用いて、その関連ビヒクル群と比較する(Software:GraphPad Prism)。一元配置ANOVA反復測定、およびその後のTukey事後試験を使用して、各試験群について、処置前疼痛応答と処置後疼痛応答とを比較する。P値<0.05が、有意差を示すものとする。
結果
体重:研究1日目、7日目、14日目、21日目、および28日目に、体重を測定する。
Von Frey試験:結果は、左脚引っ込めの平均力(g)として提示する。機械的アロディニアは、研究14日目、16日目、21日目、および28日目の異なる時点における、Von Freyフィラメントに対する動物の感受性の増加として観察される。
ALZETポンプを用いたIT経路によって処置した動物のVon Frey応答:ビヒクル処置動物の手術した左脚の引っ込めに要するベースライン平均力(1M群)を測定する。研究14日目、21日目、および28日目、左脚の引っ込め力を再び測定し、ベースライン測定値と比較する。
本明細書において開示されるdsRhoA化合物が、この研究で試験され、予防的処置を用いて、ITポンプにより投与した場合に、SNL誘導ニューロパシー性疼痛の減少に有効であることがわかる。
本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、この研究で試験され、治療的処置を用いて、ITポンプにより投与した場合に、SNL誘導ニューロパシー性疼痛の減少に有効であることがわかる。
実施例14:糖尿病性ニューロパシーのモデル系
この研究の目的は、角膜新血管形成の齧歯動物縫合モデルにおける、腹腔内(IT)ポンプ移植またはIT単回腰椎注入(腰部の髄腔内注入)により適用したRhoA dsRNA化合物の治療効果の評価である。
種/株:SDラット
総個体数:120;群当たりの個体数:12
試験群:1つのビヒクル群
2つのdsRNA対照群
6つの試験項目(dsRhoAおよびdsTLR4化合物、または異なる投与計画/経路での組み合わせ)
1つの陽性対照群
投与計画:研究16日目の選択後に1回
ストレプトゾシン(STZ)誘導糖尿病ラット研究概要。研究0日目にSTZをIV投与する。研究3日目およびその後週1回、BGLを試験する。研究16日目に疼痛閾値を試験する。疼痛応答を示す動物を研究に組み入れ、IT経路を用いて試験項目を投与する。次いで、研究21日目および28日目に疼痛閾値を再試験する。
終了時に、以下のように、さらなる分析のために、脊髄およびDRGを採取する:6匹の動物の組織を組織学的検査のために摘出し、6匹の動物の組織をRNA分析のために摘出する。
体重:動物の体重を週1回測定する。
読み取り:Von Freyに対する応答
本明細書において開示されるdsRhoA化合物がこのモデル系で試験され、単独で、またはTLR4遺伝子を標的とする別のdsRNA化合物と組み合わせて投与した場合に、ニューロパシー性疼痛を減少させるのに有効であることが示される。
実施例15:微小血管障害のモデル系
本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、下に記載のような一連の微小血管障害の動物モデルにおいて試験される。
1.糖尿病性網膜症
C57Bl6マウスにおいて糖尿病を誘発させ、このマウスを続いて本発明のdsRhoA化合物および対照dsRNA化合物の硝子体内注入に使用する。糖尿病誘発のために、マウスにストレプトゾトシン(一晩絶食後、STZ 90mg/kg/日で2日間)を注入する。血中グルコース、体重、およびヘマトクリットの変化について、動物の生理機能を研究を通してモニターする。ビヒクル注入マウスは、対照としての役割を果たす。適当な動物を本発明の抗RhoA dsRNA化合物1μgまたは抗GFP対照dsRNA化合物1μgの硝子体内注入によって処置する。dsRNA化合物は、研究過程中2度、最初のSTZ注入が実施される0日目およびSTZ注入後14日目に注入する。
網膜血管漏出を、糖尿病4週間持続後の動物において、Evans Blue(EB)色素法を用いて測定する。マウスは、Evans Blue(EB)測定の24時間前に右頸静脈にカテーテルを移植される。各動物の両眼における網膜透過性測定は、Evans Blue標準プロトコルに従う。
本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、このモデル系で試験され、糖尿病誘発性網膜血管漏出を減少させるのに有効であることが示される。
2.未熟児網膜症
試験動物を低酸素および過酸素の状態に暴露することによって未熟児網膜症を誘発し、その後網膜への効果を試験する。本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、このモデル系で試験され、未熟児網膜症から動物を保護するのに有効であることが示される。
3.心筋梗塞
糖尿心筋梗塞は、短期および長期の両方で、マウスの左前下行枝結紮により誘発する。本明細書において開示されるdsRhoA化合物はこのモデル系で試験され、試験動物の血液において、梗塞24時間後のトロポニン−T(TnT)および総クレアチンホスホキナーゼのMB分画(CPK−MB)のレベルを減少するのに有効であることが示される。本明細書において開示されるdsRhoA化合物で処置した動物は、対照dsRNA化合物で処置した動物と比較して、梗塞後28日後のより良好な心エコー(駆出量)を有する。
4.閉鎖性頭部傷害(CHI)
実験的TBIは、神経性および神経代謝性カスケードに寄与する一連のイベントを生じ、それらは行動障害の程度および範囲と関連する。CHIは、麻酔下で、前頭面中央の左半球側を覆う露出した頭蓋上に、既定の高さから錘を自由落下させて誘発する(Chen et al,J. Neurotrauma 13,557,1996)。
本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、このモデル系で試験され、TBIを標的とするのに有効であることが示される。
実施例16:黄斑変性のモデル系
本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、以下の脈絡膜新血管形成(CNV)の動物モデルで試験される。この滲出型AMDの特徴は、モデル動物においてレーザー処置によって誘発される。
マウスモデル:脈絡膜新血管形成(CNV)誘発
滲出型AMDの特徴である脈絡膜新血管形成(CNV)は、薬物群の割り付けを知らされていない単独の個人が0日目に各マウスの両眼に実施するレーザー光凝固術(532nm、200mW、100ms、75μm)(OcuLight GL,Iridex,Mountain View,CA)により誘発する。レーザースポットは、細隙灯送達系およびコンタクトレンズとしてのカバースリップを用いて、視神経周囲に標準化された方式で適用する。
処置群:CNVは、以下のマウス群において誘発する(6〜8週齢の雄):
12匹のWTマウス;
0日目および7日目に、片眼に本明細書に記載のRhoA dsRNA化合物0.25μg、他眼に不活性抗GFP dsRNA化合物(陰性対象)を注入(IVT)した12匹のWTマウス;
0日目および7日目に、片眼に本明細書に記載のRhoA dsRNA化合物0.1μg、他眼にPBS(陰性対照)を注入(IVT)した12匹のWTマウス;
0日目および7日目に、片眼に本明細書に記載のRhoA dsRNA化合物0.05μg、他眼にPBS(陰性対照)を注入(IVT)した12匹のWTマウス。
各マウスの両眼をレーザーで処置する。注入容量は、2μLである。
評価
実験は14日目に終了する。評価のために、眼を摘出し、4℃で30分間、4%パラホルムアルデヒドで固定する。感覚神経網膜を分離し、視神経から切断する。残存するRPE−脈絡膜−強膜複合体を、Immu−Mount(Vectashield Mounting Medium,Vector)でフラットマウントし、カバースリップで覆う。フラットマウントを、走査型レーザー共焦点顕微鏡(TCS SP,Leica,Germany)で検査する。青色アルゴンレーザーで励起して、血管を可視化する。RPE−脈絡膜−強膜複合体の表面から、水平光学切片(1μmステップ)を取得する。病巣につながる周囲の脈絡膜血管網を特定できる最も深い焦平面を病巣の底部であると判断する。レーザー処理範囲にある、この基準面の表面の任意の血管をCNVと判断する。各切片の画像をデジタル保存する。CNVに関連する蛍光範囲を、Leica TCS SPソフトウェアを用いたコンピュータ画像分析によって測定する。各水平切片における全蛍光範囲の合計をCNVの体積の指標として使用する。
別個のWTマウス(1群当たり5個の眼)を使用して、CNVにおけるRhoA mRNA発現(ならびにAMDに関連する他の遺伝子の発現)(本明細書において開示されるdsRNA化合物で未処置のもの、および処置したもの)をRPE/脈絡膜から、または神経網膜から抽出したRNAのリアルタイムPCRを用いて評価した。
本明細書において開示されるdsRhoA化合物は、このモデル系で試験され、CNV体積の減少を導くことが示される。
実施例17:腫瘍成長の軽減に関するRHOAに対するdsRNAの評価
方法:
(a) 皮下腫瘍異種移植片:約5×106のA549細胞を雄胸腺欠損ヌードマウスの後肢に注入し、皮下腫瘍を週1回測定する。次式を用いて腫瘍体積を測定する:[長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)×0.52]。皮下腫瘍内へのdsiRNAのインビボ送達のために、試験dsRNA二重鎖をPBSで希釈し、濃度10μg/mLでインスリン用注射器を用いて後肢腫瘍に注入する。他の動物において、用量40mg/kg体重でカルボプラチンの腹腔内投与を行う。dsRNAおよびカルボプラチンは、週2回4週間投与する。本発明のdsRNAの抗腫瘍活性をインビボで試験するために、皮下腫瘍を有するマウスを試験dsRNAの腫瘍内への直接注入によって、およびカルボプラチンによって、週2回4週間処置し、実験終了時に体重を測定する。
(b) 肺転移実験:約2×106のA549−C8−luc細胞をSCID−Beigeマウス(Charles River,MA)に静脈内注入し、発生期の肺腫瘍を週1回測定する。試験または対照dsRNAの肺腫瘍へのエアロゾル送達のために、PBSで希釈した100μgのdsRNAをネブライザを用いてエアロゾル投与する。マウスに、ネブライザを用いて、毎週3用量のdsRNA(100μg/用量)を4週間投与する。対照マウスにおいて、カルボプラチンを用量30mg/kg体重で週2回、腹腔内注入する。腫瘍重量を実験終了時に測定する。
本明細書において開示されるdsRNA分子が、これらの動物モデルにおいて試験され、インビボで腫瘍の荷重を軽減するのに有効であり、また癌の治療に有効である。
本明細書において言及または引用される論文、特許、および特許出願、ならびに全ての他の文書および電子的に入手可能な情報の内容は、個々の刊行物のそれぞれが具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるかのように、それらの全体として本明細書に組み込まれる。
出願人は、いかなる当該の論文、特許、特許出願、または他の物理的および電子的文書からのいかなる材料および情報も物理的に本願に組み込む権利を留保する。
本明細書において開示される発明に、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な代用および変更を行ってもよいことを当業者は容易に理解するであろう。したがって、そのような付加的な実施形態は、本発明の範囲および以下の特許請求の範囲に含まれる。本発明は、当業者に、RNAi活性を媒介するための改善された活性を有する核酸構築物の生成を目的として、本明細書に記載される化学修飾の種々の組み合わせおよび/または代用を試験するよう教示する。かかる改善された活性には、改善された安定性、改善された生物学的利用能、および/またはRNAiを媒介する細胞応答の改善された活性化を含み得る。したがって、本明細書に記載される具体的な実施形態は限定的なものではなく、当業者は、改善されたRNAi活性を有する核酸分子を特定する目的で、本明細書に記載される修飾の特定の組み合わせを過度の実験を行わずに試験することが可能であることは容易に理解することができる。
本明細書において例示的に記載される本発明は、本明細書において特に開示されない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限の不在下でも、適切に実施することができる。したがって、例えば、本発明を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)、用語「a」および「an」および「the」、ならびに類似する指示対象は、本明細書において別段の指定がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の双方を包含すると解釈されるべきである。「備える」、「有する」、「含む」、「含有する」などの用語は、拡張的に、制限することなく読み取るべきである(例えば、「〜を含むが、これらに限定されない」を意味する)。本明細書における数値範囲の列挙は、本明細書において別段の指定がない限り、単にその範囲内に該当する個々の値それぞれを個別に言及するための簡単な方法としての役割を果たすことだけを意図しており、個々の値はそれぞれ、本明細書において個別に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別段の指定がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書において提示されるあらゆる例または例示的な表現(例えば「など」)の使用は、別段に主張しない限り、単に本発明の理解をより容易にすることのみを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる表現も、請求項に記載されていない要素が本発明の実施に不可欠であると示すと解釈すべきではない。さらに、本明細書において使用する用語および表現は、説明の用語として使用したものであり、限定するものではなく、そのような用語や表現を使用には、図示および説明する特徴またはその一部のいかなる同等物も排除する意図はなく、請求項に記載される発明の範囲内で、様々な修正が可能であることを理解すべきである。したがって、本発明は、好ましい実施の形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書において開示されるその中で具現される発明の修正および変形を行うことができ、またそのような修正および変形は、本発明の範囲に含まれるみなされることを理解すべきである。
本発明を幅広く、一般的に説明してきた。包括的な開示の範囲に該当するより狭い種や亜属のグループ分けも本発明の一部をなす。これは、削除される材料が本明細書において具体的に記載されているか否かに関わらず、任意の対象を属から取り除く条件または消極的な限定のもとで、本発明の一般的記述を含む。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、本発明が、それによって、マーカッシュ群の任意の個々の要素または群の要素の亜群に関しても記載されていることを認識するであろう。