本発明は、様々な眼疾患および眼障害を治療するための局所オリゴヌクレオチド組成物およびその非侵襲的な使用方法を提供する。特に、本発明は、この疾患または障害に苦しむ対象の眼における遺伝子発現と関連する様々な眼疾患および眼障害の治療方法を提供する。
本発明は、siRNA組成物の局所への非侵襲的投与が特定の眼組織および眼細胞型を標的とし、眼の表面に局所送達されたときにそれらの組織および細胞で活性があるという予期せぬ発見に一部基づいている。この発見は、siRNA送達に対する既知の障害を考慮すると驚くべきことであり、硝子体内または全身への送達に対する現実的な代替手段としての非侵襲的方法を提供する。
siRNA分子が標的遺伝子のmRNAをサイレンシングするのに有効であるために、siRNAは、3つのレベルのターゲッティング、すなわち、標的組織への、標的細胞型への、および標的細胞内コンパートメントへのターゲッティングが必要となる。本発明は、今から、眼疾患および眼障害を治療する非侵襲的方法を開示する。
本発明は、一般に、眼細胞で発現される遺伝子の発現を下方調節する化合物、特に新規の小干渉RNA(siRNA)、および眼組織および眼細胞におけるそれらの遺伝子の発現と関連する医学的状態に苦しむ対象の治療におけるこれらの新規siRNAの使用に関する。
眼標的mRNAの発現を減弱させる方法および眼の障害を治療する方法は、本明細書で詳細に論じられており、任意の該分子および/または組成物は任意の該状態に苦しむ対象の治療において有益に利用され得る。
本発明のsiRNAは、活性を増加させ得る、安定性を増加させ得る、およびまたは毒性を最小限に抑え得る構造および修飾を有しており、本発明のsiRNAの新規の修飾は、標的遺伝子発現、特に本明細書で論じられている標的遺伝子を妨害するかまたは減弱させるときに有用な二本鎖RNA配列に有益に適用することができる。
適応症ごとの標的遺伝子の非限定的な例の詳細を、以下、表A1〜A4に示す。
「変異体」または「v」は、転写物変異体を指す。
表A1〜A4は、本発明のオリゴヌクレオチド阻害剤が向けられるヒトmRNAのポリヌクレオチド配列の一例についてのgi(GeneInfo識別子)およびアクセッション番号を提供する(「v」は、転写物変異体を指す)。
表A1、A2、A3、およびA4中の遺伝子の阻害は、それぞれ、特に、緑内障、ドライアイ、糖尿病性網膜症(DR)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、加齢黄斑変性症(AMD)、および網膜色素変性症(RP)を治療するときに有用である。
定義
便宜を図るために、明細書、実施例、および特許請求の範囲で利用される特定の用語が、本明細書で記載されている。
本明細書で使用するとき、そうではないことが文脈から明らかに示されない限り、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」には、複数形が含まれることに留意すべきである。
本発明の態様または実施形態がマーカッシュ群または他の代替群に関して記載されている場合、当業者は、本発明がそれによりマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていることを認識するであろう。
「阻害剤」は、遺伝子の発現またはそのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的効果を達成するのに十分な程度にまで低下させることができる化合物を指す。本明細書で使用される「阻害剤」という用語は、siRNA、アンチセンス、shRNA、miRNA、およびリボザイムをはじめとする、1以上のオリゴヌクレオチド阻害剤を指す。阻害は、mRNAの発現の減弱、下方調節、またはRNA干渉(RNAi)の場合、サイレンシングとも呼ばれ得る。本明細書に開示される阻害剤は、オリゴヌクレオチド構造物中の糖部分および/または塩基部分および/またはヌクレオチド間連結に対する改変などの修飾を組み込んでいる化学修飾siRNA化合物である。
本明細書で使用される「阻害する」または「軽減(減弱)させる」という用語は、遺伝子、その変異体もしくは産物の発現、またはそのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的効果を達成するのに十分な程度にまで低下させることを指す。阻害は完全なものであっても、部分的なものであってもよい。例えば、CASP2遺伝子の「阻害」は、遺伝子発現(転写もしくは翻訳)または表A1〜A3のどれかに開示されている1以上の変異体もしくはそのSNP(単一ヌクレオチド多型)もしくは他の変異体のポリペプチド活性の阻害を意味する。
「眼組織」は、眼の構造と関連する任意の組織を指し、非限定的な形で、強膜、角膜、脈絡膜、網膜、涙腺、および視神経を含むことが意図される。
「眼細胞」は、眼および涙器の構造と関連する任意の細胞を指し、非限定的な形で、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、角膜細胞、結膜、前房、虹彩、毛様体突起、網膜、脈絡膜および脈絡膜細胞、線維柱帯網などを含むことが意図される。例えば、線維柱帯網には、内部ブドウ膜網、角膜強膜網、および近傍小管組織が含まれる。涙腺には、涙腺それ自体、下涙点および上涙点、下涙管および上涙管、涙嚢などが含まれる。
本明細書で使用するとき、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は互換的に用いることができ、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含むヌクレオチド配列を指す。これらの用語は、等価物として、ヌクレオチド類似体から作られたRNAまたはDNAのいずれかの類似体を含むことも理解されるべきである。本明細書の全体を通じて、mRNA配列は、対応する遺伝子を表すものとして示されている。「mRNAポリヌクレオチド配列」およびmRNAという用語は互換的に用いられている。
「オリゴヌクレオチド」、「オリゴリボヌクレオチド」、または「オリゴマー」は、約2〜約50ヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を指す。この配列の各々のDNAまたはRNAヌクレオチドは、独立に、天然のものであっても合成されたものであってもよく、かつ/または修飾されたものであっても未修飾のものであってもよい。修飾には、オリゴヌクレオチド中の糖部分、塩基部分、またはヌクレオチド間連結に対する改変が含まれる。本発明の化合物は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、およびそれらの組合せを含む分子を包含する。
本発明は、標的遺伝子の発現をインビボで阻害するための方法および組成物を提供する。一般に、本方法は、表A1〜A4に示す遺伝子のmRNAを標的とするために、RNA干渉メカニズムによって標的遺伝子の発現を下方調節するのに十分な量で、オリゴリボヌクレオチド、特に小干渉RNA(すなわち、siRNA)または細胞内でsiRNAを生じさせることができる核酸物質を局所投与することを含む。特に、本方法を用いて、眼組織または眼細胞でのその遺伝子の発現と関連した眼障害または眼疾患に苦しむ対象の治療のために遺伝子の発現を阻害することができる。本発明に従って、標的遺伝子のsiRNA分子または阻害剤を、様々な眼の病変を治療するための薬物として使用する。
「ヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含することが意図され、これらは、天然のものであっても合成されたものであってもよく、かつ/または修飾されたものであっても未修飾のものであってもよい。修飾には、糖部分、塩基部分、および/またはヌクレオチド間連結に対する改変および置換が含まれる。
本明細書で使用するとき、「非対合ヌクレオチド類似体」という用語は、6デスアミノアデノシン(ネブラリン)、4−Me−インドール、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、Ds、Pa、N3−MeリボU、N3−MeリボT、N3−Me dC、N3−Me−dT、N1−Me−dG、N1−Me−dA、N3−エチル−dC、N3−Me dCを含むが、これらに限定されない、非塩基対合部分を含むヌクレオチド類似体を意味する。いくつかの実施形態では、非塩基対合ヌクレオチド類似体は、リボヌクレオチドである。他の実施形態では、それはデオキシリボヌクレオチドである。
ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの類似体、またはヌクレオチド/オリゴヌクレオチドに対する修飾は全て、該類似体または修飾がこのヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの安定性および機能に大した悪影響を及ぼさないならば、本発明とともに利用され得る。許容される修飾には、糖部分の修飾、塩基部分の修飾、ヌクレオチド間連結における修飾、およびそれらの組合せが含まれる。
本発明において、時に「無塩基ヌクレオチド(脱塩基ヌクレオチド)」または「無塩基ヌクレオチド類似体(脱塩基ヌクレオチド類似体)」と呼ばれるものは、より適切には、疑似ヌクレオチドまたは非従来型部分と呼ばれる。ヌクレオチドは、リボースまたはデオキシリボース糖、リン酸、および塩基(DNA中のアデニン、グアニン、チミン、またはシトシン;RNA中のアデニン、グアニン、ウラシル、またはシトシン)からなる、モノマー単位の核酸である。修飾ヌクレオチドは、糖、リン酸、およびまたは塩基の1つまたは複数における修飾を含む。無塩基疑似ヌクレオチドは塩基を欠いており、したがって、厳密には、ヌクレオチドではない。
本明細書で使用される「キャッピング部分」という用語には、無塩基リボース部分、無塩基デオキシリボース部分、2’Oアルキル修飾をはじめとする無塩基リボースおよび無塩基デオキシリボース部分の修飾;逆方向無塩基リボースおよび無塩基デオキシリボース部分ならびにそれらの修飾;C6−イミノ−Pi;L−DNAおよびL−RNAをはじめとするミラーヌクレオチド;5’OMeヌクレオチド;ならびに4’,5’−メチレンヌクレオチドをはじめとするヌクレオチド類似体;1−(β−D−エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4’−チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド;5’−アミノ−アルキルホスフェート;1,3−ジアミノ−2−プロピルホスフェート、3−アミノプロピルホスフェート;6−アミノヘキシルホスフェート;12−アミノドデシルホスフェート;ヒドロキシプロピルホスフェート;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;アルファ−ヌクレオチド;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3’,4’−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5’−5’−逆方向無塩基部分;1,4−ブタンジオールホスフェート;5’−アミノ;ならびに架橋または非架橋メチルホスホネートおよび5’−メルカプト部分が含まれる。2’−O−メチル糖修飾リボヌクレオチドは、2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドまたは2’−OMe修飾リボヌクレオチドとも呼ばれる。
特定の好ましいキャッピング部分は、無塩基リボースまたは無塩基デオキシリボース部分;逆方向無塩基リボースまたは無塩基デオキシリボース部分;C6−アミノ−Pi;L−DNAおよびL−RNAをはじめとするミラーヌクレオチドである。
本明細書で使用される「非従来型部分」という用語は、無塩基リボース部分、無塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、非塩基対合ヌクレオチド類似体、ならびに2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチド;LNAを含む架橋核酸およびエチレン架橋核酸を指す。
無塩基デオキシリボース部分としては、例えば、無塩基デオキシリボース−3’−ホスフェート;1,2−ジデオキシ−D−リボフラノース−3−ホスフェート;1,4−アンヒドロ−2−デオキシ−D−リビトール−3−ホスフェートが挙げられる。逆方向無塩基デオキシリボース部分としては、逆方向デオキシリボ無塩基;3’,5逆方向デオキシ無塩基5’−ホスフェートが挙げられる。
本発明に関連して、「ミラー」ヌクレオチド(シュピーゲルマーとも呼ばれる)は、天然に存在するまたはよく利用されるヌクレオチドに対する逆向きのキラリティー、すなわち、天然に存在するまたはよく利用されるヌクレオチドの鏡像を有するヌクレオチド類似体である。ミラーヌクレオチドは、リボヌクレオチド(L−RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(L−DNA)であり、少なくとも1つの糖もしくは塩基修飾および/またはホスホロチオエートもしくはホスホネート部分などの、骨格修飾をさらに含み得る。米国特許第6,602,858号には、少なくとも1つのL−ヌクレオチド置換を含む核酸触媒が開示されている。ミラーヌクレオチドとしては、例えば、L−DNA(L−デオキシリボアデノシン−3’−ホスフェート(ミラーdA);L−デオキシリボシチジン−3’−ホスフェート(ミラーdC);L−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート(ミラーdG);L−デオキシリボチミジン−3’−ホスフェート(ミラーdT)およびL−RNA(L−リボアデノシン−3’−ホスフェート(ミラーrA);L−リボシチジン−3’−ホスフェート(ミラーrC);L−リボグアノシン−3’−ホスフェート(ミラーrG);L−リボウラシル−3’−ホスフェート(ミラーdU)が挙げられる。
修飾デオキシリボヌクレオチドとしては、例えば、5’末端位置(位置番号1)のヌクレオチドとして有用であり得る5’OMe DNA(5−メチル−デオキシリボグアノシン−3’−ホスフェート);PACE(デオキシリボアデニン3’ホスホノアセテート、デオキシリボシチジン3’ホスホノアセテート、デオキシリボグアノシン3’ホスホノアセテート、デオキシリボチミジン3’ホスホノアセテートが挙げられる。
架橋核酸としては、LNA(2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸アデノシン3’モノホスフェート、2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3’モノホスフェート、2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸グアノシン3’モノホスフェート、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3’モノホスフェート);およびENA(2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸アデノシン3’モノホスフェート、2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3’モノホスフェート、2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸グアノシン3’モノホスフェート、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3’モノホスフェート)が挙げられる。
本発明のいくつかの実施形態では、好ましい非従来型部分は、無塩基リボース部分、無塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドである。
一態様によれば、本発明は、未修飾および修飾ヌクレオチドを含む阻害性オリゴヌクレオチド化合物を提供する。この化合物は、糖修飾、塩基修飾、およびヌクレオチド間連結修飾からなる群から選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、DNA、およびENA(エチレン架橋核酸)をはじめとするLNA(ロックされた核酸);PNA(ペプチド核酸);アラビノシド;PACE(ホスホノアセテートおよびその誘導体)などの修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、または6炭素糖を有するヌクレオチドを含み得る。
一実施形態では、化合物は、少なくとも1つのリボヌクレオチドの糖部分上の2’修飾(「2’糖修飾」)を含む。特定の実施形態では、化合物は、場合により交互の位置に、2’O−アルキルまたは2’−フルオロまたは2’O−アリールまたは任意の他の2’糖修飾を含む。
他の安定化する修飾(例えば、オリゴマーの3’または5’末端に付加される修飾ヌクレオチド)も可能である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの骨格は修飾されており、リン酸−D−リボース実体を含むが、3リン酸−D−リボース実体、トリエステル、チオエート、2’−5’架橋骨格(5’−2’とも呼ばれ得る)、PACE修飾ヌクレオチド間連結、または任意の他の種類の修飾をも含み得る。
他の修飾としては、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’末端への付加が挙げられる。このような末端修飾は、脂質、ペプチド、糖、または他の分子であってもよい。
糖残基への考えられる修飾はマニホールドであり、これには、2’−Oアルキル、ロックされた核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド;アルトリトール(ANA)、およびモルホリノをはじめとする他の6員糖、ならびにシクロヘキシニルが含まれる。
LNA化合物は、国際特許公報WO00/47599号、WO99/14226号、およびWO98/39352号に開示されている。LNAヌクレオチドを含むsiRNA化合物の例は、Elmen et al.,(NAR 2005.33(1):439−447)および国際特許公報WO2004/083430号に開示されている。6員環ヌクレオチド類似体は、Allart,et al(Nucleosides & Nucleotides,1998,17:1523−1526;およびPerez−Perez,et al.,1996,Bioorg. and Medicinal Chem Letters 6:1457−1460)に開示されている。ヘキシトールおよびアルトリトールヌクレオチドモノマーをはじめとする6員環ヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドは、国際特許公報公報WO2006/047842号に開示されている。
エチル(ホスホ−エチルトリエステルを生じさせる);プロピル(ホスホ−プロピルトリエステルを生じさせる);およびブチル(ホスホ−ブチルトリエステルを生じさせる)などの、骨格修飾も可能である。他の骨格修飾としては、ポリマー骨格、環状骨格、非環状骨格、チオホスフェート−D−リボース骨格、アミデート、およびホスホノアセテート誘導体が挙げられる。特定の構造物としては、1つまたは複数の2’−5’ヌクレオチド間連結(架橋または骨格)を有するsiRNA化合物が挙げられる。
本発明はまた、様々な遺伝子の発現を下方調節する化合物、特に新規の小干渉RNA(siRNA)化合物、ならびに様々な眼疾患および眼の医学的状態の治療におけるこれらの新規siRNAの使用に関する。
各々の遺伝子について、19−merのオリゴマー配列の個別リストがあるが、これらのオリゴマー配列は、ヒト遺伝子発現を標的とするのに最も良い配列として特許アルゴリズムにおけるそのスコアに基づいて優先順位が付けられている。21−merまたは23−merのsiRNA配列は、本明細書に開示されている19−mer配列の5’および/または3’伸長によって生成させることができる。このような伸長は、好ましくは対応するmRNA配列に相補的である。特定の23−merオリゴマーはこの方法により考案されたが、この場合、優先順位付けの順序は、対応する19−merの順序である。表B1〜B36には、siRNAを調製するときに有用なヒトのセンスオリゴヌクレオチドおよび対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドが示されている。種間の略語は、Ms:マウス、Rb:ウサギ、Chmp:チンパンジー、Mnk:サル、Chn:チンチラ、GP:モルモットとする。
眼疾患
治療的オリゴヌクレオチド化合物の局所送達は、広範な眼疾患および眼障害の治療に有用である。本発明の化合物のいくらかは、例えば、
1.原発開放隅角緑内障/続発開放隅角緑内障
2.多発性硬化症(視神経炎)
3.網膜中心静脈閉塞症または網膜静脈分岐閉塞症
4.(てんかん重積状態、HIV−1感染症における)虚血性視神経症
5.視神経損傷
6.鞍上部の中(トルコ鞍の上)に及ぶ腫瘍
7.視交叉近傍腫瘍(下垂体腫瘍による視交叉の圧迫と関連する視力喪失は、一時的または永続的であり得、おそらく網膜神経節細胞の不可逆的な逆行性変性の程度に関連する)
8.網膜芽細胞腫
において、視神経の神経保護が有益である疾患および障害に苦しむ患者を治療するときに有用である。
原発開放隅角緑内障
緑内障の症例の大部分は、原発開放隅角緑内障POAG(慢性開放隅角緑内障とも呼ばれる)として知られる形態である。POAGは、眼圧(IOP)を生じさせる、眼の前房内の房水の蓄積に起因する。IOPの上昇は、「眼圧測定」試験によって測定することができるが、これは、流体が眼に侵入し、十分な流体が眼から出て行かないことに起因する。通常、流体は、毛様体内の血管から漏れ出すことによって眼に入る。この流体は、最終的には、水晶体を越え、瞳孔(虹彩の中央開口部)を通り抜けて、虹彩と角膜が一体となっている形成された解剖学的な角である、虹彩−角膜隅角に進む。その後、この流体は、隅角の線維柱帯網を通過し、シュレム管を経由して眼から出る。
過剰の流体が眼に入った場合、または線維柱帯網の「排出口」が(例えば、破片または細胞で)詰まった場合、結果的に十分な流体が眼から出ず、「開放隅角緑内障」と呼ばれる状態になって、圧力が蓄積する。開放隅角緑内障は、虹彩の後部が水晶体前面に付着して「瞳孔ブロック」を作り、眼内液が瞳孔を通過して前房に入るのを妨げるときにも生じることがある。
虹彩と角膜の間の隅角が狭過ぎるかまたは閉じてさえいる場合、流体が逆流し、「閉塞隅角緑内障」と呼ばれる状態になって、圧力が増加する。
治療されない緑内障は、最終的には、視神経萎縮および失明に至る。
正常眼圧緑内障
眼圧は、米国における約25〜30%の緑内障症例で正常(12〜22mmHg)であり、これは、正常眼圧緑内障として知られる状態である(日本では、この割合は、70%もの高さであり得る)。視神経傷害を引き起こすが、IOPには影響を及ぼさない他の要因が存在する。
閉塞隅角緑内障
閉塞隅角緑内障(別名、隅角閉塞緑内障)は、全緑内障症例の15%の原因である。これは、米国ではPOAGよりも一般的ではないが、アジア人の間に罹患率が高いために、世界の緑内障症例の約半数を占めている。虹彩は水晶体に押し付けられ、時にはそれにくっつき、排水隅角を閉鎖する。これは突然起こることがあり、圧力がすぐに上昇する。これは、瞳孔が突然収縮したときに、遺伝的に感受性の高い人に起こることが多い。閉塞隅角緑内障は、慢性かつ緩徐であることもあるが、あまり一般的でない状態である。
先天性緑内障
眼の排出管が正しく発達しない、先天性緑内障は、生まれつき存在する。これは非常に稀であり、新生児10,000人に約1人で起こる。これは、遺伝性疾患である場合があり、多くの場合、マイクロサージェリーで矯正することができる。
一態様では、本発明は、緑内障に苦しむ対象の眼内の標的眼mRNAの発現を減弱させる方法であって、有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAと薬学的に許容される担体とを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、少なくとも1つの眼標的mRNAは、配列番号1〜35に示される、表A1中のリストから選択される遺伝子の産物である。特定の好ましい実施形態では、標的眼mRNAは、CASP2、ASPP1、TP53BP2、BNIP3、RTP801L、ACHE、ADRB1、およびCAPNS1から選択される遺伝子の産物である。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。様々な実施形態では、標的眼mRNAは、配列番号1〜2に示されている。
別の態様では、本発明は、治療を必要とする対象の緑内障を治療する方法であって、対象の眼内の標的遺伝子の発現を阻害する治療有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子は、配列番号1〜35のいずれか1つに示されるmRNAに転写される、表A1中のリストから選択されるヒト遺伝子である。特定の好ましい実施形態では、遺伝子は、CASP2、ASPP1、TP53BP2、BNIP3、RTP801L、ACHE、ADRB1、およびCAPNS1から選択される。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。様々な実施形態では、標的眼mRNAは、配列番号1〜2に示されている。
視神経炎
視神経炎は、眼球内の視神経および視神経乳頭の一部を冒し得る視神経の炎症(乳頭炎)または眼球の後ろの部分を冒し得る視神経の炎症(球後視神経炎)である。視神経炎は、以下のいずれかによっても生じ得る:多発性硬化症または後感染性脳脊髄炎などの脱髄疾患;炎症性疾患(例えば、副鼻腔炎、髄膜炎、結核、梅毒、脈絡網膜炎、眼窩の炎症)の合併症をはじめとする全身性のウイルスまたは細菌感染症;栄養疾患および代謝疾患(例えば、糖尿病、悪性貧血、甲状腺機能亢進症);主に若い人を冒す珍しい形態の遺伝性視神経症である、レーベル遺伝性視神経症;毒素(タバコ、メタノール、キニーネ、ヒ素、サリチル酸塩、鉛);ならびに外傷。
視神経萎縮
視神経萎縮は、視神経および視索神経線維の変性に起因する遺伝性または後天性の視力喪失障害である。これは、網膜中心静脈もしくは網膜中心動脈の閉塞、動脈硬化性の変化によって獲得されることがあり、変性網膜疾患に続発することがあり、視神経に対する圧力の結果であることがあり、または代謝疾患(例えば、糖尿病)、外傷、緑内障、もしくは(アルコール、タバコ、もしくは他の毒に対する)毒性に関連するものであることがある。視神経線維の変性および萎縮は不可逆的であるが、静脈内ステロイド注射が、場合によっては、このプロセスの速度を落とすことが分かっている。
乳頭浮腫
(腫瘍誘導性の)頭蓋内圧の上昇、悪性高血圧症、または網膜中心静脈の血栓症によることが最も多い、視神経乳頭(乳頭)の腫脹。この疾患は通常、両側性であり、神経頭は非常に隆起しかつ腫脹しており、瞳孔応答は通常、正常である。視力は最初は影響を受けず、眼球運動時の痛みはない。続発性視神経萎縮および永久的な視力喪失は、乳頭浮腫の主因が治療されないままである場合に、生じることがある。
虚血性視神経症(ION)
栄養動脈の閉塞性障害の結果としての(通常、片方の眼の)視神経への動脈血供給の喪失に起因する重篤な失明病。視神経症は、視神経乳頭の青白い浮腫を生じさせる、前部視神経症であることもあるし、または視神経乳頭が腫脹せず、眼球と視交叉の間に異常が生じる、後部視神経症であることもある。虚血性前部視神経症は通常、突発性であり得るかまたは数日間かけて生じ得る視力喪失を引き起こす。虚血性後部視神経症は一般的ではなく、診断は、他の原因、主に脳卒中および脳腫瘍の除外に大きく左右される。
他の疾患および状態としては、ドライアイ、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、および網膜色素変性症が挙げられる。
ドライアイ
乾性角結膜炎または乾性角膜炎としても知られる、ドライアイは、通常、眼を潤す涙液膜の産生の減少に起因するよくある問題である。大半のドライアイ患者は不快感を経験し、視覚喪失はないが、重篤な場合には、角膜が傷害を受けるかまたは感染するようになることがある。
ドライアイは、不快感、視覚障害、および眼表面に傷害を与える可能性のある涙液膜不安定性という症状をもたらす涙および眼表面の多因子疾患である。これは、涙液膜のモル浸透圧濃度の増加と眼表面の炎症とを伴う。
涙腺は、腺房細胞、導管細胞、および筋上皮細胞から構成された多小葉組織である。腺房細胞は、涙腺に存在する細胞の80%を占めており、タンパク質の合成、貯蔵、および分泌のための部位である。これらのタンパク質のうちのいくつかは、眼表面の健康に極めて重要な抗菌性(リゾチーム、ラクトフェリン)または増殖因子(表皮増殖因子、形質転換増殖因子α、角質実質細胞増殖因子)特性を有する。導管細胞の主な機能は、腺房細胞により分泌される一次流体を改変することと、水および電解質を分泌することである。筋上皮細胞は、腺房細胞および導管細胞の基底部分を取り囲む、多数の突起を含んでおり、収縮して導管から流体を追い出し、眼表面に出すと考えられている。
涙腺機能不全のメカニズム
アポトーシス、ホルモンの不均衡、自己抗体の産生、シグナル伝達分子の変化、神経機能不全、および炎症促進性サイトカインのレベル増加は、涙腺不全の考えられるメディエーターであると提唱されている。シェーグレン症候群の主な症状の1つは、ドライアイである。涙腺の腺房および導管上皮細胞のアポトーシスは、分泌機能の障害の原因となるあり得るメカニズムであると提唱されている。(Manganelli and Fietta,Semin Arthritis Rheum.2003.33(1):49−65)。理論に束縛されることを望まないが、アポトーシス性の上皮細胞死は、Fas(Apo−1/CD95)、FasL(FasL/CD95L)、Bax、カスパーゼ、パーフォリン、およびグランザイムBを含むいくつかのアポトーシス経路の活性化によるものであり得る。パーフォリンおよびグランザイムBなどの、プロテアーゼの放出を介する細胞傷害性T細胞、またはT細胞により発現されるFasLと上皮細胞上のFasとの相互作用は、腺房細胞のアポトーシスを引き起こすことができる。
現在のドライアイに対する治療は、主に、潤滑剤による涙の補充;涙点閉鎖、モイストチャンバー眼鏡、またはコンタクトレンズなどの療法による涙の保持;例えば、分泌促進剤による涙の刺激;生物学的代用涙液;抗炎症療法(シクロスポリン、コルチコステロイド、テトラサイクリン);および食餌性必須脂肪酸などの、局所的かつ対症的なものである。
一態様では、本発明は、ドライアイに苦しむ対象の眼内の標的眼mRNAの発現を減弱させる方法であって、有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAと薬学的に許容される担体とを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的眼mRNAは、配列番号5、8〜10、26〜27、30〜44に示される、表A2から選択されるヒト遺伝子の産物である。いくつかの実施形態では、標的眼mRNAは、FAS、FASリガンド(FASL)、p53、LRDD、PARP1、AIF(アポトーシス誘導因子)、NOS1、NOS2A、XIAP、およびSHC1−SHCから選択される。特定の好ましい実施形態では、標的眼mRNAは、配列番号36〜44のいずれか1つに示されている。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。様々な実施形態では、対象は、シェーグレン症候群に苦しんでいる。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、配列番号13225〜15224に示される、表16〜17中の配列から選択される。
別の態様では、本発明は、治療を必要とする対象のドライアイを治療する方法であって、対象の眼内の標的遺伝子の発現を阻害する治療有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、表A2から選択されるヒト遺伝子であり、そのmRNAは、配列番号5、8〜10、26〜27、または30〜44のいずれか1つに示されている。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、FAS、FASリガンド(FASL)、p53、LRDD、PARP1、AIF(アポトーシス誘導因子)、NOS1、NOS2A、XIAP、およびSHC1−SHCから選択される。特定の好ましい実施形態では、標的遺伝子mRNAは、配列番号36〜44のいずれか1つに示されている。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。様々な実施形態では、対象は、シェーグレン症候群に苦しんでいる。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、配列番号13225〜15224に示される、表16〜17中の配列から選択される。
網膜色素変性症
網膜色素変性症(RP)は、進行性の周辺視力の喪失と中心視力喪失を引き起こし得る夜盲症とを特徴とする一群の遺伝性障害を表す。網膜色素変性症には現在治療法がないが、この疾患の進行は、食餌性ビタミンAの補充によって減弱させることができる。
桿体光受容体細胞および錐体光受容体細胞におけるアポトーシスは、RPにおける網膜変性の決定的に重要なプロセスであり、成人失明の主な原因となっている。
一態様では、本発明は、網膜色素変性症(RP)に苦しむ対象の眼内の標的眼mRNAの発現を減弱させる方法であって、有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAと薬学的に許容される担体とを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的眼mRNAは、表A4に記載の遺伝子、すなわち、配列番号3、14、26〜35、54〜57のいずれか1つに示されるmRNAに転写される遺伝子から選択される遺伝子の産物である。いくつかの実施形態では、標的眼mRNAは、CASP1、CASP3、CASP12、RTP801、RTP801L、カルパインS1、PARP1、AIF、NOS1、NOS2、XIAP、およびSHC1−SHCからなる群から選択される遺伝子の産物である。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。特定の好ましい実施形態では、siRNAは、配列番号56〜57に示されるmRNAを標的とする。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、配列番号9517〜10516に示される、表11中の配列から選択される。
別の態様では、本発明は、治療を必要とする対象の網膜色素変性症(RP)を治療する方法であって対象の眼内の標的遺伝子の発現を阻害する治療有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、配列番号3、14、26〜35、54〜57のいずれか1つに示されるmRNAに転写される、表A4に記載のヒト遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子は、CASP1、CASP3、CASP12、RTP801、RTP801L、カルパインS1、PARP1、AIF、NOS1、NOS2、XIAP、およびSHC1−SHCからなる群から選択されるヒト遺伝子である。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。特定の好ましい実施形態では、siRNAは、配列番号56〜57に示されるmRNAを標的とし、かつ阻害する。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、配列番号9517〜10516に示される、表11中の配列から選択される。
糖尿病性網膜症
糖尿病性網膜症は糖尿病の合併症であり、失明の主な原因である。これは、糖尿病が網膜内側の小血管を傷害するときに生じる。糖尿病性網膜症は以下の4つの段階を有する。
−軽症非増殖網膜症:網膜血管内の毛細血管瘤。
−中等症非増殖網膜症。疾患が進行するにつれて、網膜に栄養を与える一部の血管が遮断される。
−重症非増殖網膜症。さらに多くの血管が遮断され、網膜の様々な部位から血液供給を奪う。これは、新しい血管の増殖により切り抜けられる。
−増殖網膜症。新しい血管が網膜および硝子体ゲルの表面に沿って増殖する。血管から血液が漏出するとき、重度の視力喪失および失明すら生じることがある。
妊娠中、糖尿病性網膜症は、糖尿病の女性にとって問題となり得る。
一態様では、本発明は、糖尿病性網膜症に苦しむ対象の眼内の標的眼mRNAの発現を減弱させる方法であって、有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAと薬学的に許容される担体とを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的眼mRNAは、配列番号1〜2、3、5、6〜7、8〜10、12、13、24〜25、26〜27、30〜35、45〜53のいずれか1つに示されるmRNAを有する表A3に記載のヒト遺伝子の産物である。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。特定の好ましい実施形態では、標的眼mRNAは、配列番号48〜53のいずれか1つに示されている。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、配列番号2669〜3648および25575〜29594に示される、表4、28〜32中の配列から選択される。
別の態様では、本発明は、治療を必要とする対象の糖尿病性網膜症を治療する方法であって、対象の眼内の標的遺伝子の発現を阻害する治療有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、配列番号1〜2、3、5、6〜7、8〜10、12、13、24〜25、26〜27、30〜35、45〜53のいずれか1つに示されるmRNAを有する、表A3に記載のヒト遺伝子である。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。特定の好ましい実施形態では、標的眼mRNAは、配列番号48〜53のいずれか1つに示されている。いくつかの実施形態では、siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、配列番号2669〜3648および25575〜29594に示される、表4、28〜32中の配列から選択される。
理論に束縛されることの望まないが、糖尿病性網膜症によって傷害された血管は、2通りの方法で視力喪失を引き起こす。脆い異常血管が発生し、血液を眼の中心に漏出させ、視野をぼやけさせることがある。これが増殖網膜症であり、4番目の、最も進行した疾患段階である。流体が黄斑の中心に漏出し、視野をぼやけさせることがある。この状態は黄斑浮腫と呼ばれる。これは、糖尿病性網膜症のどの段階でも起こり得るが、疾患が進行するにつれて起こる可能性が高く、糖尿病性黄斑浮腫(DME)として知られている。
加齢黄斑変性症(AMD)
米国の65歳を過ぎた個人において、最良矯正視力低下の最もよく見られる原因は、加齢黄斑変性症(AMD)として知られる網膜障害である。AMDに冒される眼の部分は、主に光受容体細胞から構成される、網膜の中心の小さな部分である黄斑である。AMDが進行するにつれて、この疾患は、急な中心視力の喪失を特徴とする。いわゆる「乾性」AMDは、AMD患者の約85%〜90%を占めており、細胞の全体的な萎縮による眼色素分布の変化、光受容体の損失、および網膜機能の低下を伴う。「湿性」AMDは、網膜下空間における血栓または瘢痕を生じさせる異常脈絡膜血管の増殖を伴う。したがって、「湿性」AMDの発症は、神経網膜下の異常な脈絡膜新生血管ネットワーク(脈絡膜新血管形成、CNV)の形成のために起こる。新たに形成される血管は、過度に漏れやすい。これにより、視力の喪失をもたらす網膜下液および血液の蓄積が生じる。最終的に、脈絡膜と網膜を含む大きな円板状瘢痕が形成されるので、罹患した領域内の機能的な網膜が全て失われる。乾性AMD患者は質の低下した視力を保持し得るが、湿性AMDは、多くの場合、失明に至る(Hamdi & Kenney,Frontiers in Bioscience,e305−314,May 2003)。
一態様では、本発明は、AMDまたはDMEに苦しむ対象の眼内の標的眼mRNAの発現を減弱させる方法であって、有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAと薬学的に許容される担体とを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的眼mRNAは、配列番号1〜2、3、5、6〜7、8〜10、12、13、24〜25、26〜27、30〜35、45〜53のいずれか1つに示されるmRNAを有する、表A3に記載のヒト遺伝子の産物である。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。特定の好ましい実施形態では、標的眼mRNAは、ヒトCTSD、RTP801、およびBNIP3の産物である。
別の態様では、本発明は、治療を必要とする対象のAMDまたはDMEを治療する方法であって、対象の眼内の標的遺伝子の発現を阻害する治療有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAを対象の眼の表面に局所的に(非侵襲的に)投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、配列番号1〜2、3、5、6〜7、8〜10、12、13、24〜25、26〜27、30〜35、45〜53のいずれか1つに示されるmRNAを有する、表A3に記載のヒト遺伝子である。現在好ましい実施形態では、siRNAは、点眼薬としての送達用に処方される。特定の好ましい実施形態では、標的ヒト遺伝子は、ヒトCTSD、RTP801、およびBNIP3である。
本発明の化合物により治療されるさらなる眼疾患
ウイルス性疾患および細菌性疾患
眼組織と関連するウイルス性疾患および細菌性疾患を本発明の化合物により治療することができる。結膜炎および他の眼瞼の疾患または病気は、特に、本発明の方法に従って、このような疾患を引き起こす生物の複製および/または生存に必須の遺伝子を標的とするsiRNAなどのオリゴヌクレオチドを投与することにより治療することができる。
腫瘍と関連する視力喪失
別の態様では、本発明は、腫瘍と関連する視力喪失の治療を必要とする対象における腫瘍と関連する視力喪失を治療する方法であって、対象における腫瘍と関連する少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害する治療有効量の少なくとも1つの化学修飾siRNAを対象の眼の表面に視力喪失を治療するのに有効な量で局所的にかつ非侵襲的に投与することを含む方法を提供する。
本発明による、視力喪失を引き起こす腫瘍には、悪性新生物(癌)と良性腫瘍の両方が含まれる。腫瘍には、任意の眼組織または任意の種類の眼細胞の腫瘍が含まれ、それらには、脈絡膜腫瘍、結膜腫瘍、眼瞼腫瘍、浸潤性眼内腫瘍、虹彩腫瘍、転移性眼球腫瘍、視神経腫瘍、眼窩腫瘍、および網膜腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。特に、本発明が治療を目指している腫瘍および癌の限定的なリストとしては、脈絡膜血管腫、脈絡膜黒色腫、脈絡膜転移、脈絡膜母斑、脈絡膜骨腫、毛様体黒色腫、および太田母斑などの脈絡膜腫瘍;結膜カポジ肉腫、眼球上類皮腫、結膜のリンパ腫、黒色腫および異型PAM、色素性結膜腫瘍、瞼裂斑、翼状片、結膜の扁平上皮癌および上皮内癌などの結膜腫瘍;基底細胞癌、毛細血管腫、汗腺嚢腫、眼瞼辺縁の母斑、脂漏性角化症、眼瞼の悪性黒色腫、眼瞼の皮脂腺癌、および眼瞼の扁平上皮癌などの眼瞼腫瘍;慢性リンパ性白血病、浸潤性脈絡膜症、および眼内リンパ腫などの浸潤性眼内腫瘍;前部ブドウ膜転移、虹彩嚢胞、虹彩褐色細胞腫、虹彩黒色腫、および虹彩の真珠嚢胞などの虹彩腫瘍;転移性脈絡膜黒色腫などの転移性眼球腫瘍;視神経を冒す脈絡膜黒色腫、視神経症を伴う乳頭周囲転移、視神経褐色細胞腫、視神経鞘髄膜腫などの視神経腫瘍;涙腺の腺様嚢胞癌、眼窩の海綿状血管腫、眼窩のリンパ管腫、眼窩粘液嚢胞、眼窩偽腫瘍、眼窩横紋筋肉腫、小児の眼周囲血管腫、および硬化性眼窩偽腫瘍などの眼窩腫瘍;網膜色素上皮(RPE)肥大、網膜色素上皮(RPE)腫瘍、網膜芽細胞腫、およびフォン・ヒッペル血管腫などの網膜腫瘍が挙げられる。
薬学的組成物
本発明のオリゴヌクレオチド化合物を、未加工の化学物質として投与することが可能であり得るが、それらを薬学的組成物として投与することが好ましい。したがって、本発明は、1以上の本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。この組成物は、2以上の異なるオリゴヌクレオチド/siRNAの混合物を含み得る。
本発明はさらに、上で開示されたような1以上の遺伝子を阻害するのに有効な量の1以上の本発明の化合物に共有結合または非共有結合した少なくとも1つの本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。この化合物は、1以上の本発明のオリゴリボヌクレオチドを産生するよう、内在性の細胞複合体によって細胞内でプロセッシングされ得る。
本発明はさらに、薬学的に許容される担体と眼疾患または眼障害に苦しむ対象の眼におけるヒト遺伝子の発現を下方調節するのに有効な量の1以上の本発明の化合物とを含む薬学的組成物を提供する。
本発明はまた、薬学的組成物を調製するプロセスであって、
1以上の本発明の化合物を準備することと
該化合物を薬学的に許容される担体と混合することと
を含む、プロセスを提供する。
薬学的に許容される担体は、好ましくは眼科用投与のために当業者によって選択される。
様々な実施形態では、本発明の薬学的組成物は、水性の滅菌眼科用懸濁液または溶液を形成させるために、水、塩化ナトリウム、緩衝液、食塩水(例えば、リン酸緩衝化食塩水(PBS))、マンニトールなど、およびそれらの組合せのような生理的に許容される眼科用担体媒体と混合された、最大99重量%の少なくとも1つの本発明のsiRNA化合物、またはその塩を含む。
薬学的組成物はさらに、例えば、塩化ベンザルコニウムなどの、少なくとも1つの眼科用に許容される防腐剤を任意で含む。さらに、眼科用薬学的組成物には、siRNAを溶解させる助けとなる眼科用に許容される界面活性剤が含まれてもよい。
本発明の眼科用薬学的組成物は、1以上の干渉RNAを、例えば、生理的に許容される等張水性緩衝液などの、眼科用に許容される担体とともに溶解させるかまたは混合することにより調製されてもよい。
好ましい実施形態では、眼科用組成物の調製において使用されるsiRNA化合物は、薬学的に有効な用量で眼科用に許容される担体とともに混合される。特定の好ましい実施形態では、眼科用に許容される担体はPBSである。
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的眼科用組成物はさらに、非ステロイド性抗炎症薬、コルチコステロイド、抗生物質などのような、追加の薬学的活性剤または薬学的活性剤の組合せを含む。
さらに、本発明は、本発明の遺伝子の発現を、対照と比較して少なくとも20%阻害する方法であって、本発明の遺伝子のmRNA転写物を1以上の本発明の化合物と接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、活性のあるsiRNA化合物は、対照と比較して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、または70%のレベルで遺伝子発現を阻害する。特定の好ましい実施形態では、阻害は、対照と比較して少なくとも75%、80%、または90%のレベルである。
一実施形態では、オリゴリボヌクレオチドは、1以上の本発明の遺伝子を阻害し、この阻害は、遺伝子機能の阻害、ポリペプチドの阻害、およびmRNA発現の阻害を含む群から選択される。
一実施形態では、化合物はポリペプチドを阻害し、この阻害は、機能の阻害(とりわけ、酵素アッセイまたはネイティブな遺伝子/ポリペプチドの既知の相互作用因子との結合アッセイにより検討し得るもの)、タンパク質の阻害(とりわけ、ウェスタンブロッティング、ELISA、または免疫沈降により検討し得るもの)、およびmRNA発現の阻害(とりわけ、ノーザンブロッティング、定量的RT−PCR、インサイチュハイブリダイゼーション、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションにより検討し得るもの)を含む群から選択される。
併用療法
本発明の化合物は、単独でまたは眼障害もしくは眼疾患を治療するときに有用な別の治療剤と組み合わせて投与することができる。
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的眼科用組成物はさらに、オリゴヌクレオチド, 例えば、siRNA、非ステロイド性抗炎症薬、コルチコステロイド、抗生物質などのような、追加の薬学的活性剤または薬学的活性剤の組合せを含む。
一実施形態では、2以上の治療剤の共投与は、相乗的効果、すなわち、組合せ物の個々の成分の治療効果の合計よりも大きい治療効果を達成する。別の実施形態では、2以上の治療剤の共投与は相加的効果を達成する。
併用療法を含む有効成分を、単一投薬形態によってまたは各々の活性剤の個別投与によって一緒に投与してもよい。特定の実施形態では、第1の治療剤および第2の治療剤を単一投薬形態で投与する。これらの薬剤を局所投与用の単一溶液に処方してもよい。あるいは、第1の治療剤および第2の治療剤を、別々の組成物として投与してもよい。第1の活性剤を第2の活性剤と同時に投与してもよく、または第1の活性剤を第2の活性剤とともに間欠的に投与してもよい。第1の治療剤の投与と第2の治療剤の投与の間の時間の長さを、所望の治療効果を達成するよう調整してもよい。例えば、第2の治療剤を、第1の治療剤の投与のわずか数分(例えば、1、2、5、10、30、もしくは60分)後または数時間(例えば、2、4、6、10、12、24、もしくは36時間)後に投与してもよい。特定の実施形態では、第2の治療剤の投与と投与の間に2以上の投薬量のこれらの治療剤の1つを投与することが有利であり得る。例えば、第2の治療剤を、第1の治療剤の投与2時後に投与し、その後、10時間で再び投与してもよい。あるいは、第2の治療剤の投与と投与の間に2以上の投薬量の第1の治療剤を投与することが有利であり得る。特定の実施形態では、併用療法の全体的な治療効果が、一部併用療法の組合せ効果または相乗的効果によるものであるように、各々の有効成分の治療効果は、各々の治療剤の持続期間の少なくとも一部の間、重複することが好ましい。
送達
本明細書に開示されているsiRNA分子を、担体または希釈剤とともに調製された分子の直接的な適用によって眼の標的組織に送達する。
「裸のsiRNA(ネイキッドsiRNA)」という用語は、ウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチン、または沈殿剤などをはじめとする、細胞内への侵入を助けるか、促進するか、または容易にするように作用する任意の送達ビヒクルまたは製剤を含まないsiRNA分子を指す。例えば、PBSまたは許容される眼科用製剤中のsiRNAは、「裸のsiRNA」である。本発明の特定の実施形態では、siRNAは裸のsiRNAとして送達される。特定の用途のために、例えば、ポリマーまたは粘度増強剤の添加によって、眼または鼻腔におけるsiRNAの滞留時間を増加させる製剤が望ましい場合がある。
特に、哺乳動物細胞へのsiRNAの送達の増強および改善を目的とした送達系が開発されている(例えば、Shen et al FEBS Let.2003,539:111−114;Xia et al.,Nat.Biotech.2002,20:1006−1010;Reich et al.,Mol.Vision 2003,9:210−216;Sorensen et al.,J.Mol.Biol.2003.327:761−766;Lewis et al.,Nat.Gen.2002,32:107−108、およびSimeoni et al.,NAR 2003,31,11:2717−2724を参照されたい)。
薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクルならびにインプラント担体は、通常、本発明の有効成分と反応しない、不活性で、毒性のない固体または液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル化材料を指し、これらは、リポソームおよびマイクロスフェアを含む。本発明において有用な送達系の例としては、米国特許第5,225,182号;同第5,169,383号;同第5,167,616号;同第4,959,217号;同第4,925,678号;同第4,487,603号;同第4,486,194号;同第4,447,233号;同第4,447,224号;同第4,439,196号;および同第4,475,196号が挙げられる。多くの他のそのようなインプラント、送達系、およびモジュールが当業者に周知である。
局所的な眼球送達または鼻腔内送達のための薬学的組成物を調製するときに考慮すべき事項の総説については、Textbook of Ocular Pharmacology,Zimmerman et al編,Lippencott−Raven 1997の中のBar−Ilan and Neumannに見出すことができる。
局所の投与経路は、好ましくは対象に有効投薬量の治療siRNA化合物を提供するために利用される。投薬形態としては、分散液、懸濁液、溶液、軟膏などを挙げることができる。特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つのsiRNAを含む本発明の薬学的組成物は、点眼薬として送達される。別の実施形態では、少なくとも1つのsiRNAを含む本発明の薬学的組成物は、スプレーまたはミストとして送達される。例えば、米国特許第4,052,985号には、眼科用スプレーアプリケータが開示されている。
本発明の特定の実施形態では、siRNAは、例えば、直接的な接触によってまたは細胞、組織、もしくは細胞内液への拡散によって、局所的にその標的細胞に達する。本発明のsiRNAまたは薬学的組成物は、個々の患者の臨床状態、治療される疾患、投与スケジュール、患者の年齢、性別、体重、および医師に知られた他の要因を考慮に入れて、適切な医療行為に従って投与および投薬される。
本明細書における目的のための「治療有効用量」は、したがって、当該技術分野で公知であるような検討事項によって決定される。用量は、疾患経過の改善、より速やかな回復、症状の改善、症状の消失、および当業者により適切な尺度として選択されるような他の指標を含むが、これらに限定されない、改善を達成するのに有効でなければならない。本発明のsiRNAは、単回用量または複数回用量で投与することができる。
一般に、ヒトに対する化合物の活性用量は、単回用量または複数回用量レジメンの場合に1日当たり1回の用量または1日当たり2回もしくは3回もしくはそれより多くの回数のレジメンにおいて、1日当たり1ng/kg〜約20〜100mg/kg体重、好ましくは1日当たり約0.01mg/kg〜約2〜10mg/kg体重の範囲である。特定の実施形態では、siRNA化合物は、眼に局所適用するために点眼薬として処方され、組成物の容量で約5μg/μl〜約60μg/μl、組成物の容量で約6.6μg/μl、組成物の容量で約25μg/μl、組成物の容量で約33.3μg/μl、組成物の容量で約50μg/μlを含む。
製剤のpHは、約pH5〜約pH8、または約pH5〜約pH7、または約pH5〜約pH6である。特定の実施形態では、pHは、約Ph5.9、約pH6.15、約pH6.25、約pH6.3、約pH6.5、約pH7.25である。本発明の化合物は、眼の表面に局所投与することができる。化合物は、好ましくは化合物としてまたは有効成分の薬学的に許容される塩として、薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバントおよびまたはビヒクルと組み合わせて適用されることに留意すべきである。本明細書に開示されているように、好ましい送達方法は、眼科用組成物の眼への局所適用である。
液体形態を点滴薬またはスプレー用に調製してもよい。液体組成物としては、有機共溶媒を含むおよび含まない水性溶液、水性または油性懸濁液、食用油を含むエマルジョン、ならびに同様の薬学的ビヒクルが挙げられる。
これらの化合物を任意の好適な眼への投与経路によって、例えば、スプレーもしくは点滴薬によるものとして、および局所的に、軟膏、または点滴薬によるものとして、治療のためにヒトおよび動物に投与してもよい。
治療方法
一態様では、本発明は、対象の眼における表A1〜A4に記載の遺伝子の発現と関連する眼疾患または眼障害の治療を必要とする対象の治療のための方法であって、これらの遺伝子の少なくとも1つの発現を阻害する一定量の化学修飾siRNAをこの対象に局所的にかつ非侵襲的に投与することを含む方法に関する。特定の好ましい実施形態では、1または2以上の遺伝子標的に対する2以上のsiRNA化合物を投与する。
好ましい実施形態では、治療される対象は温血動物、および特に、ヒトを含む哺乳動物である。
本発明の方法は、表A1〜A4の遺伝子の発現を下方調節する1以上の阻害性化合物;および特にそれにより対象を治療するための治療有効用量のsiRNAを対象の眼に局所的にかつ非侵襲的に投与することを含む。
「治療」という用語は、治療的治療と予防的または防止的措置の両方を指し、この場合、その目的は、上記の関連眼障害を予防することまたは遅延させること、減弱させることである。治療を必要とする者としては、この疾患または状態を既に経験している者、この疾患または状態を有する傾向がある者、およびこの疾患または状態を予防すべき者が含まれる。本発明の化合物は、眼の疾患もしくは状態またはそれと関連する症状の発症前、発症中、または発症後に投与し得る。治療が予防を目的とする場合、本発明は、疾患または障害の発症を遅延させるまたは疾患または障害の進行を防ぐ方法に関する。
眼障害としては、急性帯状潜在性網膜外層症、アディー症候群、加齢黄斑変性症、弱視、無虹彩、瞳孔不同、無眼球体、無水晶体、眼瞼炎、眼瞼下垂、眼瞼痙攣、失明、白内障、霰粒腫、脈絡網膜炎、先天性脈絡膜欠如、欠損症、結膜疾患、結膜炎、角膜疾患、角膜変性症、角膜浮腫、角膜潰瘍、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、複視、二重睫毛、ドライアイ症候群、デュアン眼球後退症候群、眼瞼外反、眼内炎、内反、内斜視、落屑症候群、外斜視、眼異常、眼新生物、外眼筋線維化症候群、緑内障、脳回転状萎縮症、半盲、ヘルマンスキー−パドラック症候群、麦粒腫、ホルネル症候群、遠視、前房出血、虹彩炎、カーンズ−セイヤー症候群、角膜炎、円錐角膜、涙器疾患、涙道閉塞症、水晶体疾患、黄斑変性症、眼振、病的眼球運動障害、動眼神経疾患、眼筋麻痺、視神経萎縮症、遺伝性視神経疾患、視神経炎、虚血性視神経症、眼窩蜂巣炎、乳頭浮腫、老眼、翼状片、瞳孔障害、屈折異常、網膜剥離、網膜疾患、網膜静脈閉塞症、網膜芽細胞腫、網膜色素変性症、未熟網膜症、網膜分離症、強膜炎、暗点、斜視、シェーグレン症候群、タイゲソン表層点状角膜炎、トラコーマ、ブドウ膜炎が挙げられる。
オリゴヌクレオチド
本明細書に開示されている方法で有用なオリゴヌクレオチドは、好ましくは二本鎖オリゴヌクレオチドおよびsiRNA化合物であり、未修飾の化合物ならびに化学的におよび/または構造的に修飾された化合物を含む。
既知の遺伝子に対応するsiRNAの選択と合成は広く報告されており;例えば、Ui−Tei et al.,J Bio Med Biotechnol.2006;65052;Chalk et al.,BBRC.2004,319(1):264−74;Sioud & Leirdal,Met.Mol Biol.2004,252:457−69;Levenkova et al.,Bioinform.2004,20(3):430−2;Ui−Tei et al.,NAR.2004,32(3):936−48を参照されたい。修飾siRNAの使用と製造の例については、例えば、Braasch et al.,Biochem.2003,42(26):7967−75;Chiu et al.,RNA.2003,9(9):1034−48;PCT刊行物WO2004/015107号およびWO02/44321号ならびに米国特許第5,898,031号および同第6,107,094号を参照されたい。
本発明は、所望の遺伝子の発現を下方調節する、二本鎖オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を提供する。本発明のsiRNAは、センス鎖が所望の遺伝子のmRNA配列に由来し、かつアンチセンス鎖がこのセンス鎖に相補的である二重鎖オリゴリボヌクレオチドである。一般に、標的mRNA配列とのわずかな違いは、siRNA活性を損なうことなく許容される(例えば、Czauderna et al.,NAR.2003,31(11):2705−2716を参照されたい)。本発明のsiRNAは、mRNAを破壊してまたはmRNAを破壊することなく、転写後レベルで遺伝子発現を阻害する。理論に束縛されるわけではないが、siRNAは、特異的な切断や分解のためにmRNAを標的とし得るおよび/または標的とされたメッセージからの翻訳を阻害し得る。
いくつかの実施形態では、siRNAは、平滑末端である、すなわち、ZおよびZ’が、一方または両方の末端に存在しない。特に、siRNAは、第1の鎖の5’−末端および第2の鎖の3’−末端により規定される末端で、および/または第1の鎖の3’−末端および第2の鎖の5’−末端により規定される末端で、平滑末端であり得る。
他の実施形態では、2つの鎖のうちの少なくとも1つは、5’−末端に少なくとも1つのヌクレオチドの突出を有していてもよく;この突出は、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドからなっていてもよい。これらの鎖のうちの少なくとも1つはまた、3’−末端に少なくとも1つのヌクレオチドの突出を任意で有していてもよい。この突出は、約1〜約5ヌクレオチドからなっていてもよい。
RNA二重鎖の長さは、約18〜約40リボヌクレオチド、好ましくは19、21、または23リボヌクレオチドである。さらに、各々の鎖の長さは、約15〜約40塩基、好ましくは18〜23塩基、およびより好ましくは19、21、または23リボヌクレオチドからなる群から選択される長さを独立に有していてもよい。いくつかの実施形態では、20merまたは22−merの分子が企図され得る。
特定の実施形態では、該第1の鎖と標的核酸の相補性は完全(100%)である。いくつかの実施形態では、これらの鎖は、実質的に相補的である、すなわち、該第1の鎖と標的核酸の間に1個、2個、または最大3個のミスマッチがある。実質的に相補的とは、別の配列に対する、約84%を超える相補性を指す。例えば、19塩基対からなる二重鎖領域において、1個のミスマッチは、94.7%の相補性をもたらし、2個のミスマッチは、約89.5%の相補性をもたらし、3個のミスマッチは、約84.2%の相補性をもたらし、この二重鎖領域を実質的に相補的であるようにする。したがって、実質的に同一とは、別の配列に対する、約84%を超える同一性を指す。
第1の鎖と第2の鎖はループ構造によって連結されていてもよく、このループ構造は、特に、ポリエチレングリコールなどの非核酸ポリマーから構成されていてもよい。あるいは、このループ構造は、修飾および非修飾リボヌクレオチドならびに修飾および非修飾デオキシリボヌクレオチドをはじめとする、核酸から構成されていてもよい。
さらに、siRNAの第1の鎖の5’−末端が第2の鎖の3’−末端に連結されていてもよく、または第1の鎖の3’−末端が第2の鎖の5’−末端に連結されていてもよく、該連結は、典型的には2〜100ヌクレオ塩基、好ましくは約2〜約30ヌクレオ塩基の長さを有する核酸リンカーを介するものである。
19−merおよび23−merのオリゴマーの場合、化合物のアンチセンス鎖およびセンス鎖の少なくとも1つに修飾された交互のリボヌクレオチドを有する本発明の化合物の好ましい実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドは、それらの糖残基中で修飾されており、かつセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドは、それらの糖残基中で修飾されていない。21−merオリゴマーの場合、センス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドは、それらの糖残基中で修飾されており、かつアンチセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドは、それらの糖残基中で修飾されていないか、または3’末端に任意の追加の修飾を有していてもよい。上で述べたように、アンチセンス鎖の中央のヌクレオチドは修飾されていないことが好ましい。
さらに、本発明は、一方の鎖または両方の鎖の1個、2個、または3個のヌクレオチドが置換され、それにより少なくとも1つの塩基対ミスマッチがもたらされている二本鎖核酸分子を含むsiRNAを提供する。各々の鎖における置換ヌクレオチドは、好ましくは一方の鎖または両方の鎖の末端領域にある。
本発明の好ましい一実施形態によれば、オリゴヌクレオチド/siRNAのアンチセンス鎖およびセンス鎖は、3’−末端でのみリン酸化されており、5’−末端ではリン酸化されていない。本発明の別の好ましい実施形態によれば、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、リン酸化されていない。本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、センス鎖の最も5’のリボヌクレオチドは、インビボでの5’−リン酸化のいかなる可能性も排除するように修飾されている。
本明細書に開示されている任意のsiRNA配列は、本明細書に開示されている修飾/構造のいずれかを有して調製することができる。配列+構造の組合せは新規であり、本明細書に開示されている状態の治療で使用することができる。
siRNA構造
既知の遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成は、広く報告されている;(例えば、 Ui−Tei et al.,J Bio Med Biotech.2006;2006:65052;Chalk et al.,BBRC.2004,319(1):264−74;Sioud & Leirdal,Met.Mol Biol.;2004,252:457−69;Levenkova et al.,Bioinform.2004,20(3):430−2;Ui−Tei et al.,NAR.2004,32(3):936−48を参照されたい)。
修飾siRNAの使用、および製造の例については、例えば、Braasch et al.,Biochem.2003,42(26):7967−75;Chiu et al.,RNA,2003,9(9):1034−48;PCT刊行物WO2004/015107号(atugen AG)およびWO02/44321号(Tuschl et al)を参照されたい。米国特許第5,898,031号および同第6,107,094号には、化学修飾オリゴマーが教示されている。米国特許公報第2005/0080246号と同第2005/0042647号は、それぞれ、交互のモチーフを有するオリゴマー化合物と化学修飾ヌクレオシド間連結を有するdsRNA化合物に関するものである。
他の修飾が開示されている。5’−ホスフェート部分の包含は、ショウジョウバエ胚におけるsiRNAの活性を増強することが示され(Boutla,et al.,Curr.Biol.2001,11:1776−1780)、ヒトHeLa細胞におけるsiRNA機能に必要とされる(Schwarz et al.,Mol.Cell,2002,10:537−48)。Amarzguioui et al.,(NAR,2003,31(2):589−95)は、siRNA活性が2’−O−メチル(2’−OMe)修飾の位置付けによって決まることを示した。Holen et al(NAR.2003,31(9):2401−07)は、少数の2’−OMe修飾ヌクレオシドを有するsiRNAは野生型と比較して良好な活性を示すが、2’−OMe修飾ヌクレオシドの数が増加するにつれて活性が低下することを報告した。Chiu and Rana(RNA.2003,9:1034−48)は、センス鎖またはアンチセンス鎖(完全に修飾された鎖)への2’−OMe修飾ヌクレオシドの組込みにより、未修飾siRNAと比べてsiRNA活性が激しく低下したことを教示している。アンチセンス鎖の5’−末端における2’−OMe基の配置が活性を激しく制限することが報告されたのに対し、アンチセンスの3’−末端およびセンス鎖の両方の末端における配置は許容された(Czauderna et al.,NAR.2003,31(11):2705−16;WO2004/015107号)。本発明の分子は、毒性がなく、かつ様々な疾患の治療のための薬学的組成物として処方され得るという点で、利点がある。
ヌクレオチドは、天然塩基または合成修飾塩基から選択することができる。天然塩基としては、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルが挙げられる。ヌクレオチドの修飾塩基としては、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル,2−プロピルおよび他のアルキルアデニン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6−アザシトシンおよび6−アザチミン、疑似ウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン、8−ヒドロキシアデニンおよび他の8−置換アデニン、8−ハログアニン、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシグアニンおよび他の置換グアニン、他のアザアデニンおよびデアザアデニン、他のアザグアニンおよびデアザグアニン、5−トリフルオロメチルウラシル、ならびに5−トリフルオロシトシンが挙げられる。1以上の無塩基部分を含む分子(非従来型または疑似ヌクレオチド)は、RNAヌクレオチドとDNAヌクレオチドを交互に含む分子と同様に、本発明により包含される。
さらに、1以上のヌクレオチドの構造が治療または実験用の試薬として根本的に改変されているかまたは該試薬としてより適しているポリヌクレオチドの類似体を調製することができる。ヌクレオチド類似体の一例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格がペプチド中に見られるものと類似したポリアミド骨格と置き換えられているペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は酵素分解に抵抗性があることや、インビボおよびインビトロでの寿命が長いことが示されている。
糖残基に対するあり得る修飾はマニホールドであり、これには、2’−Oアルキル、ロックされた核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、アルトリトール(ANA)およびモルホリノをはじめとする他の6員糖、ならびにシクロヘキシニルが含まれる。さらに、該分子は、2’アルキル、2’フルオロ、2’Oアリール、2’アミン、および2’アルコキシなどの、糖上の修飾をさらに含んでいてもよい。さらなる糖修飾が本明細書で論じられている。
LNA化合物は、国際特許公報WO00/47599号、WO99/14226号、およびWO98/39352号に開示されている。LNAヌクレオチドを含むsiRNA化合物の例は、Elmen et al.,(NAR 2005.33(1):439−447)およびPCT特許公報WO2004/083430号に開示されている。
本発明の化合物は、1以上の逆方向ヌクレオチド、例えば、逆方向チミジン、または逆方向アデニンを用いて合成することができる(例えば、Takei,et al.,2002.JBC 277(26):23800−06を参照されたい)。
エチル(ホスホ−エチルトリエステルを生じさせる);プロピル(ホスホ−プロピルトリエステルを生じさせる);およびブチル(ホスホ−ブチルトリエステルを生じさせる)などの骨格修飾も可能である。他の骨格修飾としては、ポリマー骨格、環状骨格、非環状骨格、チオホスフェート−D−リボース骨格、アミデート、およびホスホノアセテート誘導体が挙げられる。特定の構造物としては、1つまたは複数の2’−5’ヌクレオチド間連結(架橋または骨格)を有するsiRNA化合物が挙げられる。
さらに、本発明の阻害性核酸分子は、1以上のギャップおよび/または1以上のニックおよび/または1以上のミスマッチを含んでいてもよい。理論に束縛されることを望まないが、ギャップ、ニック、およびミスマッチは、核酸/siRNAが、DICER、DROSHA、またはRISCなどの内在性の細胞機構によって、より容易にその阻害性成分へとプロセッシングされ得るように、核酸/siRNAを部分的に不安定化する利点を有する。
本発明の分子は、このような分子または他の阻害性ヌクレオチド分子をコードする他の核酸配列または分子の他に、siRNA、合成siRNA、shRNA、および合成shRNAを含んでいてもよい。
本発明の化合物はさらに、末端修飾を含んでいてもよい。ビオチン基を、第1の鎖および/または第2の鎖の最も5’または最も3’のヌクレオチドあるいは両方の末端に付加してもよい。より好ましい実施形態では、ビオチン基をポリペプチドまたはタンパク質に結合させる。ポリペプチドまたはタンパク質を他の上記修飾のいずれかによって付加することも本発明の範囲内である。
本明細書に開示されている様々な末端修飾は、好ましくは本明細書に開示されている核酸のヌクレオチドのリボース部分にある。特に、末端修飾を、2’OH、3’OH、および5’OH位置を含むが、これらに限定されない、リボース部分のOH−基のいずれかに付加し得るか、またはこれらの基のいずれかに置き換え得るが、このように修飾されたヌクレオチドが末端ヌクレオチドであることを条件とする。逆方向無塩基または無塩基であるのは、ヌクレオ塩基部分を有さないデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかである。この種の化合物は、特に、Sternberger,et al.,(Antisense Nucleic Acid Drug Dev,2002.12,131−43)に記載されている。
本発明に関連して、核酸中のギャップは、一方の鎖において1以上の内部ヌクレオチドがないことを指すが、核酸中のニックは、一方の鎖において2つの隣接ヌクレオチド間のヌクレオチド間連結がないことを指す。本発明の分子はいずれも、1以上のギャップおよび/または1以上のニックを含み得る。本発明によってさらに提供されるのは、本明細書に開示された分子のいずれかによりコードされるsiRNA、本明細書に開示された分子のいずれかをコードするベクター、および本明細書に開示された分子またはそれをコードするベクターのいずれかと;薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物である。
本発明の方法によって投与される特定の分子が、以下で「構造モチーフ」という表題の下に開示されている。明確にするために、これらの分子のいずれかを、本発明の方法のいずれかによって投与することができる。
構造モチーフ
本明細書に開示されているように、以下の構造に示される以下の修飾のうちの1つによってまたはタンデムsiRNAもしくはRNAstar(下記参照)として化学的におよびまたは構造的に修飾されているsiRNA化合物が、本発明の方法において有用である。表1〜36には、対応するsiRNA化合物を調製するときに有用な、配列番号59〜33596に示される、センスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド対が提供されている。
一態様では、本発明は、構造(A):
(A) 5’ (N)x−Z 3’(アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’(センス鎖)
に示される化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合しているオリゴヌクレオチドであり;
xおよびyは各々、18〜40の整数であり;
ZおよびZ’は各々、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、それが存在する鎖の3’末端で共有結合的に付加された1〜5個の連続するヌクレオチドであり;かつ
(N)xの配列は、網膜で発現されかつ眼疾患または眼障害と関連する遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、配列番号1〜58のいずれか1つに示されている。
特定の実施形態では、本発明は、構造B
(B) 5’(N)x 3’ アンチセンス鎖
3’(N’)y 5’ センス鎖
を有する化合物を提供し、
ここで、(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合している未修飾リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチドであるオリゴマーであり;
xおよびyは各々、19、21、または23であり、(N)xおよび(N’)yは完全に相補的であり
(N)xおよび(N’)yの各々における交互のリボヌクレオチドは、2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドを含み;
(N’)yの配列は、(N)xに相補的な配列であり;かつ(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
いくつかの実施形態では、(N)xおよび(N’)yは各々、3’末端および5’末端で独立にリン酸化されているかまたはリン酸化されていない。
本発明の特定の実施形態では、交互のリボヌクレオチドは、化合物のアンチセンス鎖とセンス鎖の両方において修飾されている。
xおよびyが各々、19または23である、特定の実施形態では、(N)xの5’末端および3’末端にある各々のNは修飾されており;かつ(N’)yの5’末端および3’末端にある各々のN’は未修飾である。
xおよびyが各々21である、特定の実施形態では、(N)xの5’末端および3’末端にある各々のNは未修飾であり;かつ(N’)yの5’末端および3’末端にある各々のN’ は修飾されている。
特定の実施形態では、xおよびyが19であるとき、siRNAは、アンチセンス鎖(N)xの1番目、3番目、5番目、7番目、9番目、11番目、13番目、15番目、17番目、および19番目のヌクレオチド上の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと、センス鎖(N’)yの2番目、4番目、6番目、8番目、10番目、12番目、14番目、16番目、および18番目のヌクレオチド中の2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドとからなる。様々な実施形態では、これらの特定のsiRNA化合物は両方の末端において平滑末端である。
いくつかの実施形態では、本発明は、構造(C):
(C) 5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから独立に選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するヌクレオチドが共有結合によって次のヌクレオチドに結合し、かつxおよびyが各々、18〜40の整数であるオリゴマーであり;
(N)xにおいて、ヌクレオチドは未修飾であるか、または(N)xは交互の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドおよび未修飾リボヌクレオチドを含み;かつ(N)xの中央位置にあるリボヌクレオチドは、2’OMe糖修飾されているかもしくは未修飾であり、好ましくは未修飾であり;
(N’)yは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、末端位置または最後から2番目の位置に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチド、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択され;
2以上のヌクレオチドが(N’)y中で修飾されている場合、修飾ヌクレオチドは連続していてもよく;
ZおよびZ’は各々、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、それが付加されている任意のオリゴマーの3’末端で共有結合的に付加された1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
(N’)yの配列は、(N)xに実質的に相補的な配列を含み;かつ(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
特定の実施形態では、x=y=19であり、(N)xにおいて、各々の修飾リボヌクレオチドは、2’−OMe糖修飾であり、(N)xの中央にあるリボヌクレオチドは未修飾である。したがって、x=19である化合物において、(N)xは、位置1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19に2’−O−メチル糖修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19に2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置5に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、8、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置6に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置15に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置14に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置1、2、3、7、9、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置5に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置1、2、3、5、7、9、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置6に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置1、2、3、5、7、9、11、13、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置15に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置1、2、3、5、7、9、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置14に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、7、9、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置5に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置1、2、4、6、7、9、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置5に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、14、16、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置15に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置1、2、3、5、7、9、11、13、14、16、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置15に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置7に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置8に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置9に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置10に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置11に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置12に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、15、17、および19に2’−OMe修飾リボヌクレオチドを含み、かつ例えば、位置13に少なくとも1つの無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。
さらに他の実施形態では、(N)xは、標的遺伝子と比べて少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチを含む。特定の好ましい実施形態では、(N)xは、位置5、6、または14に単一のヌクレオチドミスマッチを含む。構造(C)の一実施形態では、(N’)yの5’末端および3’末端のどちらかまたは両方の少なくとも2つのヌクレオチドは、2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。特定の好ましい実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xにおいて、ヌクレオチドは、2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドと未修飾リボヌクレオチドを交互に繰り返し、(N)xの中央にあるリボヌクレオチドは未修飾であり;かつ(N’)yの3’末端の3つのヌクレオチドは、2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている(本明細書において構造Iとして示されている)。他の好ましい実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xにおいて、ヌクレオチドは、2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドと未修飾リボヌクレオチドを交互に繰り返し、(N)xの中央にあるリボヌクレオチドは未修飾であり;かつ(N’)yの5’末端の4個の連続するヌクレオチドは、3つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。さらなる実施形態では、(N)yの中央位置にある追加のヌクレオチドは、2’−OMe糖修飾されている。別の好ましい実施形態では、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドと未修飾リボヌクレオチドを交互に繰り返し、かつ(N’)yにおいて、5’末端の4個の連続するヌクレオチドは、3つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合され、5’末端ヌクレオチドまたは5’末端の2個もしくは3個の連続するヌクレオチドは、3’−O−メチル(3’−OMe)修飾を含む。
構造Cの特定の好ましい実施形態では、x=y=19であり、(N’)yにおいて、少なくとも1つの位置が無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドを含み、好ましくは5つの位置が無塩基または逆方向無塩基疑似ヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、以下の位置が無塩基または逆方向無塩基を含む:位置1と16〜19、位置15〜19、位置1〜2と17〜19、位置1〜3と18〜19、位置1〜4と19、および位置1〜5。(N’)yは、少なくとも1つのLNAヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。
構造Cの特定の好ましい実施形態では、x=y=19であり、(N’)yにおいて、少なくとも1つの位置のヌクレオチドが、ミラーヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間結合によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドを含む。
構造Cの特定の好ましい実施形態では、x=y=19であり、かつ(N’)yはミラーヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−DNAヌクレオチドである。特定の実施形態では、L−DNAはL−デオキシリボシチジンである。いくつかの実施形態では、(N’)yは、位置18にL−DNAを含む。他の実施形態では、(N’)yは、位置17および18にL−DNAを含む。特定の実施形態では、(N’)yは、位置2におよび位置17と18の一方または両方にL−DNA置換を含む。特定の実施形態では、(N’)yは、5’−O−メチルDNAなどの5’末端キャップヌクレオチドまたは無塩基もしくは逆方向無塩基疑似ヌクレオチドを突出としてさらに含む。
さらに他の実施形態では、(N’)yは、標的遺伝子と比べて少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチを含む。特定の好ましい実施形態では、(N’)yは、位置6、14、または15に単一のヌクレオチドミスマッチを含む。
さらに他の実施形態では、(N’)yは、位置15のDNAと、位置17と18の一方または両方にあるL−DNAとを含む。その構造において、位置2は、L−DNAまたは無塩基疑似ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。
x=y=21またはx=y=23である構造Cの他の実施形態が想定され:これらの実施形態では、上で論じられている(N’)yに対する修飾は、位置15、16、17、18にある代わりに、21merの場合、位置17、18、19、20にあり、23merの場合、位置19、20、21、22にあり;同様に、位置17と18の一方または両方にある修飾は、21merの場合、位置19または20の一方または両方にあり、23merの場合、位置21と22の一方または両方にある。19mer中の修飾は全て、21merおよび23merに対して同様に調整される。
構造(C)の様々な実施形態によれば、(N’)yにおいて、3’末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されている。好ましい一実施形態では、(N’)yの3’末端の4個の連続するヌクレオチドは、3つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合され、ここで、2’−5’ホスホジエステル結合を形成する1以上の2’−5’ヌクレオチドは、3’−O−メチル糖修飾をさらに含む。好ましくは、(N’)yの3’末端ヌクレオチドは、2’−O−メチル糖修飾を含む。構造Cの特定の好ましい実施形態では、x=y=19であり、(N’)yにおいて、位置15、16、17、18、および19の2以上の連続するヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、2’−5’ヌクレオチド間結合を形成するヌクレオチドは、3’デオキシリボースヌクレオチドまたは3’メトキシヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N’)y中の位置17および18のヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間結合により結合されている。他の実施形態では、(N’)y中の位置16、17、18、16〜17、17〜18、または16〜18のヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間結合により結合されている。
特定の実施形態では、(N’)yは、位置2のL−DNAと、位置16、17、18、16〜17、17〜18、または16〜18の2’−5’ヌクレオチド間結合とを含む。特定の実施形態では、(N’)yは、位置16、17、18、16〜17、17〜18、または16〜18の2’−5’ヌクレオチド間結合と、5’末端キャップヌクレオチドとを含む。
構造(C)の様々な実施形態によれば、(N’)yにおいて、いずれかの末端にある2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドまたは5’末端および3’末端の各々にある2〜8個の修飾ヌクレオチドは、独立に、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。ミラーヌクレオチドは、糖部分もしくは塩基部分でまたはヌクレオチド間連結においてさらに修飾されていてもよい。
構造(C)の好ましい一実施形態では、(N’)yの3’末端ヌクレオチドまたは3’末端の2個もしくは3個の連続するヌクレオチドは、L−デオキシリボヌクレオチドである。
構造(C)の他の実施形態では、(N’)yにおいて、いずれかの末端にある2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドまたは5’末端および3’末端の各々にある2〜8個の修飾ヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾は、メトキシ部分(2’−OMe)を含む。
一連の好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の3、4、または5個の連続するヌクレオチドは、2’−OMe修飾を含む。別の好ましい実施形態では、(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは、2’−O−メチル修飾を含む。
構造(C)のいくつかの実施形態では、(N’)yにおいて、いずれかにある2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドまたは5’末端および3’末端の各々にある2〜8個の修飾ヌクレオチドは、独立に、二環状ヌクレオチドである。様々な実施形態では、二環状ヌクレオチドはロックされた核酸(LNA)である。2’−O,4’−C−エチレン−架橋核酸(ENA)はLNAの一種である(以下を参照)。
様々な実施形態では、(N’)yは、5’末端にまたは3’末端と5’末端の両方に修飾ヌクレオチドを含む。
構造(C)のいくつかの実施形態では、(N’)yの5’末端および3’末端のどちらかまたは両方の少なくとも2個のヌクレオチドは、P−エトキシ骨格修飾により結合されている。特定の好ましい実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと未修飾リボヌクレオチドを交互に繰り返し、各々の修飾リボヌクレオチドは、その糖の上に2’−O−メチルを有するよう修飾され、(N)xの中央部分にあるリボヌクレオチドは未修飾であり;かつ(N’)yの3’末端または5’末端の4個の連続するヌクレオチドは、3つのP−エトキシ骨格修飾により結合されている。別の好ましい実施形態では、(N’)yの3’末端または5’末端の3個の連続するヌクレオチドは、2つのP−エトキシ骨格修飾により結合されている。
構造(C)のいくつかの実施形態では、(N’)yにおいて、5’末端および3’末端の各々にある2、3、4、5、6、7、または8個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、ミラーヌクレオチド、2’−5’ホスホジエステル結合により結合したヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、または二環状ヌクレオチドである。一実施形態では、(N’)yの5’末端および3’末端の修飾は同一である。好ましい一実施形態では、(N’)yの5’末端の4個の連続するヌクレオチドは、3つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されており、かつ(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは、2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。別の実施形態では、(N’)yの5’末端の修飾は、(N’)yの3’末端の修飾と異なっている。特定の一実施形態では、(N’)yの5’末端の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、かつ(N’)yの3’末端の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。別の特定の実施形態では、(N’)yの5’末端の3個の連続するヌクレオチドは、LNAヌクレオチドであり、かつ(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは、2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと未修飾リボヌクレオチドを交互に繰り返し、各々の修飾リボヌクレオチドはその糖の上に2’−O−メチルを有するよう修飾され、かつ(N)xの中央にあるリボヌクレオチドは未修飾であるか、または(N)x中のリボヌクレオチドは未修飾である。
構造(C)の別の実施形態では、本発明は、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xにおいて、ヌクレオチドが、修飾リボヌクレオチドと未修飾リボヌクレオチドを交互に繰り返し、各々の修飾リボヌクレオチドがその糖の上に2’−O−メチルを有するよう修飾され、かつ(N)xの中央にあるリボヌクレオチドが未修飾であり;(N’)yの3’末端の3個のヌクレオチドが、2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されており、かつ(N’)yの5’末端の3個のヌクレオチドがENAなどのLNAである、化合物を提供する。
構造(C)の別の実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するヌクレオチドは、2’−O−メチル糖修飾を含み、かつ(N’)yの3’末端の2個の連続するヌクレオチドはL−DNAである。
さらに別の実施形態では、本発明は、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xが未修飾リボヌクレオチドからなり;(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドが、2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されており、かつ(N’)yの5’末端の3個の連続するヌクレオチドが、ENAなどのLNAである、 化合物を提供する。
構造(C)の他の実施形態によれば、(N’)yにおいて、5’末端もしくは3’末端ヌクレオチド、またはどちらかの末端にある2、3、4、5、もしくは6個の連続するヌクレオチド、または5’末端および3’末端の各々にある1〜4個の修飾ヌクレオチドは、独立に、ホスホノカルボキシレートまたはホスフィノカルボキシレートヌクレオチド(PACEヌクレオチド)である。いくつかの実施形態では、PACEヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドである。いくつかの好ましい実施形態では、(N’)yにおいて、5’末端および3’末端の各々にある1または2個の連続するヌクレオチドは、PACEヌクレオチドである。PACEヌクレオチドおよび類似体の例は、米国特許第6,693,187号および同第7,067,641号に開示されており、両方とも参照により組み込まれる。
追加の実施形態では、本発明は、構造(D):
(D) 5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、または修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するヌクレオチドが共有結合によって次のヌクレオチドに結合し、かつxおよびyが各々、18〜40の整数であるオリゴマーであり;
(N)xは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、3’末端位置または3’の最後から2番目の位置に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択され;
(N’)yは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、5’末端位置または5’の最後から2番目の位置に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択され;
(N)xおよび(N’)yの各々において、修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチドは交互になっておらず;
ZおよびZ’は各々、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、それが付加されている任意のオリゴマーの3’末端で共有結合的に付加された1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
(N’)yの配列は、(N)xに実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
構造(D)の一実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xは、2個の連続するヌクレオチドが3’末端の1つの2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されている未修飾リボヌクレオチドを含み;かつ(N’)yは、2個の連続するヌクレオチドが5’末端の1つの2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されている未修飾リボヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xは、3’末端の3個の連続するヌクレオチドが2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている未修飾リボヌクレオチドを含み;かつ(N’)yは、5’末端の4個の連続するヌクレオチドが3つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている未修飾リボヌクレオチドを含む(本明細書において構造IIとして示されている)。
構造(D)の様々な実施形態によれば、(N)xの3’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドおよび(N’)yの5’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されている。
構造(D)の好ましい一実施形態によれば、(N’)yの5’末端の4個の連続するヌクレオチドは、3つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されており、かつ(N’)xの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは、2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。(N’)yの5’末端の3個のヌクレオチドおよび(N’)xの3’末端の2個のヌクレオチドはまた、3’−O−メチル修飾を含んでいてもよい。
構造(D)の様々な実施形態によれば、(N)xの3’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドおよび(N’)yの5’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ミラーはL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。
構造(D)の他の実施形態では、(N)xの3’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドおよび(N’)yの5’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾はメトキシ部分(2’−OMe)を含む。
構造(D)の好ましい一実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含み、かつ(N’)xの3’末端の5個の連続するヌクレオチド は2’−O−メチル修飾を含む。構造(D)の別の好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の10個の連続するヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含み、かつ(N’)xの3’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含む。構造(D)の別の好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の13個の連続するヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含み、かつ(N’)xの3’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含む。
構造(D)のいくつかの実施形態では、(N’)yにおいて、(N)xの3’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドおよび(N’)yの5’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、二環状ヌクレオチドである。様々な実施形態では、二環状ヌクレオチドは、2’−O,4’−C−エチレン−架橋核酸(ENA)などのロックされた核酸(LNA)である。
構造(D)の様々な実施形態では、(N’)yは、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択される修飾ヌクレオチドを含む。
構造(D)の様々な実施形態では、(N)xは、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択される修飾ヌクレオチドを含む。
同じ鎖の3’末端および5’末端の各々が修飾ヌクレオチドを含む実施形態では、5’末端および3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同じ鎖の3’末端の修飾と異なっている。特定の一実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、かつ同じ鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。
構造(D)の特定の一実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するヌクレオチドは、2’−O−メチル修飾を含み、かつ(N’)yの3’末端の2個の連続するヌクレオチドはL−DNAである。さらに、化合物は、(N’)xの3’末端に5個の連続する2’−O−メチル修飾ヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。
構造(D)の様々な実施形態では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N’)y中の修飾ヌクレオチドと異なっている。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドである。
追加の実施形態では、本発明は、構造(E):
(E) 5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、または修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するヌクレオチドが共有結合によって次のヌクレオチドに結合し、かつxおよびyが各々、18〜40の整数であるオリゴマーであり;
(N)xは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、5’末端位置または5’の最後から2番目の位置に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択され;
(N’)yは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、3’末端位置または3’の最後から2番目の位置に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択され;
(N)xおよび(N’)yの各々において、修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチドは交互になっておらず;
ZおよびZ’は各々、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、それが付加されている任意のオリゴマーの3’末端で共有結合的に付加された1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
(N’)yの配列は、(N)xに実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
特定の好ましい実施形態では、(N)xの5’末端の最後のヌクレオチドは未修飾である。
構造(E)の様々な実施形態によれば、(N)xの5’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる、好ましくは5’の最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N’)yの3’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されている。
構造(E)の様々な実施形態によれば、(N)xの5’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる、好ましくは5’の最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N’)yの3’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ミラーはL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。
構造(E)の他の実施形態では、(N)xの5’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる、好ましくは5’の最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N’)yの3’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾はメトキシ部分(2’−OMe)を含む。
構造(E)のいくつかの実施形態では、(N’)yにおいて、(N)xの5’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる、好ましくは5’の最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N’)yの3’末端の最後または最後から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、二環状ヌクレオチドである。様々な実施形態では、二環状ヌクレオチドは、2’−O,4’−C−エチレン−架橋核酸(ENA)などのロックされた核酸(LNA)である。
構造(E)の様々な実施形態では、(N’)yは、3’末端にまたは3’末端および5’末端の各々に二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
構造(E)の様々な実施形態では、(N)xは、5’末端にまたは3’末端および5’末端の各々に二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
同じ鎖の3’末端と5’末端の両方が修飾ヌクレオチドを含む一実施形態では、5’末端および3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同じ鎖の3’末端の修飾と異なっている。特定の一実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、かつ同じ鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。
構造(E)の様々な実施形態では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N’)y中の修飾ヌクレオチドと異なっている。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドである。
追加の実施形態では、本発明は、構造(F):
(F) 5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、または修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するヌクレオチドが共有結合によって次のヌクレオチドに結合し、かつxおよびyが各々、18〜40の整数であるオリゴマーであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、未修飾リボヌクレオチドを含んで、(N)xおよび(N’)yの各々が独立に3’末端または3’の最後から2番目の位置に1個の修飾ヌクレオチドを含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、二環状ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択され;
(N)xおよび(N’)yの各々において、修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチドは交互になっておらず;
ZおよびZ’は各々、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、それが付加されている任意のオリゴマーの3’末端で共有結合的に付加された1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
(N’)yの配列は、(N)xに実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
構造(F)のいくつかの実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N’)yは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、3’末端の2個の連続するヌクレオチドが2個の連続するミラーデオキシリボヌクレオチドを含み;かつ(N)xは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、3’末端の1個のヌクレオチドがミラーデオキシリボヌクレオチドを含む(構造IIIに示されている)。
構造(F)の様々な実施形態によれば、(N)xおよび(N’)yの3’末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されている。
構造(F)の好ましい一実施形態によれば、(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは、2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されており、かつ(N’)xの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは、2つの2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。
構造(F)の様々な実施形態によれば、(N)xおよび(N’)yの3’末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドは、独立に、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。
構造(F)の他の実施形態では、(N)xおよび(N’)yの3’末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾はメトキシ部分(2’−OMe)を含む。
構造(F)のいくつかの実施形態では、(N)xおよび(N’)yの3’末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、二環状ヌクレオチドである。様々な実施形態では、二環状ヌクレオチドは、2’−O,4’−C−エチレン−架橋核酸(ENA)などのロックされた核酸(LNA)である。
構造(F)の様々な実施形態では、(N’)yは、3’末端にまたは3’末端と5’末端の両方に二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
構造(F)の様々な実施形態では、(N)xは、3’末端にまたは3’末端および5’末端の各々に二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
同じ鎖の3’末端と5’末端の各々が修飾ヌクレオチドを含む一実施形態では、5’末端および3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同じ鎖の3’末端の修飾と異なっている。特定の一実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、かつ同じ鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。
構造(F)の様々な実施形態では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N’)y中の修飾ヌクレオチドと異なっている。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドである。
追加の実施形態では、本発明は、構造(G):
(G) 5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、または修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するヌクレオチドが共有結合によって次のヌクレオチドに結合し、かつxおよびyが各々、18〜40の整数であるオリゴマーであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、未修飾リボヌクレオチドを含んで、(N)xおよび(N’)yの各々が、5’末端位置または5’の最後から2番目の位置に1個の修飾ヌクレオチドを独立に含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、二環状ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択され;
(N)xについて、修飾ヌクレオチドは、好ましくは5’末端の最後から2番目の位置にあり;
(N)xおよび(N’)yの各々において、修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチドは交互になっておらず;
ZおよびZ’は各々、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、それが付加されている任意のオリゴマーの3’末端で共有結合的に付加された1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
(N’)yの配列は、(N)xに実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
構造(G)のいくつかの実施形態では、x=y=19である。
構造(G)の様々な実施形態によれば、(N)xおよび(N’)yの5’末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されている。(N)xについて、修飾ヌクレオチドは、好ましくは5’末端の最後から2番目の位置から始まる。
構造(G)の様々な実施形態によれば、(N)xおよび(N’)yの5’末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドは、独立に、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。(N)xについて、修飾ヌクレオチドは、好ましくは5’末端の最後から2番目の位置から始まる。
構造(G)の他の実施形態では、(N)xおよび(N’)yの5’末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾はメトキシ部分(2’−OMe)を含む。いくつかの好ましい実施形態では、連続する修飾ヌクレオチドは、好ましくは(N)xの5’末端の最後から2番目の位置から始まる。
構造(G)の好ましい一実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するリボヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含み、かつ(N)xの5’の最後から2番目の位置の1個のリボヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含む。構造(G)の別の好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するリボヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含み、かつ(N’)xの5’末端位置の2個の連続するリボヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含む。
構造(G)のいくつかの実施形態では、(N)xおよび(N’)yの5’末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、二環状ヌクレオチドである。様々な実施形態では、二環状ヌクレオチドは、2’−O,4’−C−エチレン−架橋核酸(ENA)などのロックされた核酸(LNA)である。いくつかの好ましい実施形態では、連続する修飾ヌクレオチドは、好ましくは(N)xの5’末端の最後から2番目の位置から始まる。
構造(G)の様々な実施形態では、(N’)yは、5’末端にまたは3’末端および5’末端の各々に二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
構造(G)の様々な実施形態では、(N)xは、5’末端にまたは3’末端および5’末端の各々に二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
同じ鎖の3’末端と5’末端の各々が修飾ヌクレオチドを含む一実施形態では、5’末端および3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同じ鎖の3’末端の修飾と異なっている。特定の一実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、かつ同じ鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。構造(G)の様々な実施形態では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N’)y中の修飾ヌクレオチドと異なっている。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドである。
追加の実施形態では、本発明は、構造(H):
(H) 5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、または修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するヌクレオチドが共有結合によって次のヌクレオチドに結合し、かつxおよびyが各々、18〜40の整数であるオリゴマーであり;
(N)xは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、3’末端もしくは3’の最後から2番目の位置または5’末端もしくは5’の最後から2番目の位置に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択され;
(N’)yは、未修飾リボヌクレオチドを含んで、内部位置に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、この修飾ヌクレオチドは、二環状ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドからなる群から選択され;
(N)xおよび(N’)yの各々において、修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチドは交互になっておらず;
ZおよびZ’は各々、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、それが付加されている任意のオリゴマーの3’末端で共有結合的に付加された1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
(N’)yの配列は、(N)xに実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
構造(H)の一実施形態では、(N)xの3’末端または5’末端または両方の末端の最後または最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチド、二環状ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合により隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドであり、かつ(N’)y中の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続する内部リボヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチド、二環状ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合により隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾リボヌクレオチドはメトキシ部分(2’−OMe)を含む。
構造(H)の別の実施形態では、(N’)yの3’末端もしくは5’末端の最後もしくは最後から2番目の位置から独立に始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドまたは(N’)yの5’末端および3’末端の各々にある2〜8個の連続するヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチド、二環状ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合により隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドであり、かつ(N)x中の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続する内部リボヌクレオチドは、独立に、2’糖修飾ヌクレオチド、二環状ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合により隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドである。
同じ鎖の3’末端および5’末端の各々が、修飾ヌクレオチドを含む一実施形態では、5’末端および3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同じ鎖の3’末端の修飾と異なっている。特定の一実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、かつ同じ鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ホスホジエステル結合により結合されている。
構造(H)の様々な実施形態では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N’)y中の修飾ヌクレオチドと異なっている。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドである。別の例では、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間連結により結合されたヌクレオチドであり、(N’)y中の修飾ヌクレオチドはミラーヌクレオチドである。
構造(H)の好ましい一実施形態では、x=y=19であり;(N’)yの9〜11のヌクレオチド位置9〜11の3個の連続するリボヌクレオチドは、2’−O−メチル修飾を含み、かつ(N’)xの3’末端位置の5個の連続するリボヌクレオチドは、2’−O−メチル修飾を含む。
一態様では、本発明は、以下に示される構造(I):
(I) 5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z’’ 5’ (センス鎖)
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾であっても修飾されていてもよいリボヌクレオチド、または非従来型部分であり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合されているオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ’は、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、独立に、それが存在する鎖の3’末端で共有結合的に付加された1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
z’’は、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、(N’)yの5’末端で共有結合的に付加されているキャッピング部分であり;
x=18〜27であり;
y=18〜27であり;
(N)xは、修飾および未修飾リボヌクレオチドを含み、各々の修飾リボヌクレオチドは、その糖の上に2’−O−メチルを有し、ここで、(N)xの3’末端のNは、修飾リボヌクレオチドであり、(N)xは、3’末端から始まる少なくとも5個の交互の修飾リボヌクレオチドおよび合計で少なくとも9個の修飾リボヌクレオチドを含み、かつ残りのNは各々、未修飾リボヌクレオチドであり;
(N’)yにおいて、少なくとも1つの非従来型部分が存在し、この非従来型部分は、無塩基リボース部分、無塩基デオキシリボース部分、修飾または未修飾デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドであってもよく;かつ
(N)xの配列は、(N’)yの配列に実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
いくつかの実施形態では、x=y=19である。他の実施形態では、x=y=23である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非従来型部分は、(N’)y中の位置15、16、17、または18に存在する。いくつかの実施形態では、非従来型部分は、ミラーヌクレオチド、無塩基リボース部分、および無塩基デオキシリボース部分から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、非従来型部分は、ミラーヌクレオチド、好ましくはL−DNA部分である。いくつかの実施形態では、L−DNA部分は、位置17、位置18、または位置17と18に存在する。
他の実施形態では、非従来型部分は無塩基部分である。様々な実施形態では、(N’)yは、少なくとも5個の無塩基リボース部分または無塩基デオキシリボース部分を含む。
さらに他の実施形態では、(N’)yは、少なくとも5個の無塩基リボース部分または無塩基デオキシリボース部分を含み、かつN’の少なくとも1つはLNAである。
構造(IX)のいくつかの実施形態では、(N)xは、9個の交互の修飾リボヌクレオチドを含む。構造(I)の他の実施形態では、(N)xは、位置2に2’O修飾ヌクレオチドをさらに含む9個の交互の修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N)xは、奇数の位置1、3、5、7、9、11、13、15、17、19に2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、(N)xは、位置2と18の一方または両方に2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドをさらに含む。さらに他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、19に2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。
様々な実施形態では、z’’が存在し、無塩基リボース部分、デオキシリボース部分;逆方向無塩基リボース部分、デオキシリボース部分;C6−アミノ−Pi;ミラーヌクレオチドから選択される。
別の態様では、本発明は、以下に示される構造(J):
(J) 5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z’’ 5’ (センス鎖)
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾であっても修飾されていてもよいリボヌクレオチド、または非従来型部分であり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合されているオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ’は、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、独立に、それが存在する鎖の3’末端で共有結合的に付加された1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
z’’は、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、(N’)yの5’末端で共有結合的に付加されているキャッピング部分であり;
x=18〜27であり;
y=18〜27であり;
(N)xは、修飾または未修飾リボヌクレオチド、および任意で少なくとも1つの非従来型部分を含み;
(N’)yにおいて、少なくとも1つの非従来型部分が存在し、この非従来型部分は、無塩基リボース部分、無塩基デオキシリボース部分、修飾もしくは未修飾デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、非塩基対合ヌクレオチド類似体、または2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合によって隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドであってもよく;かつ
(N)xの配列は、(N’)yの配列に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
いくつかの実施形態では、x=y=19である。他の実施形態では、x=y=23である。いくつかの好ましい実施形態では、(N)xは、修飾および未修飾リボヌクレオチドと、少なくとも1つの非従来型部分とを含む。
いくつかの実施形態では、(N)xにおいて、3’末端のNは修飾リボヌクレオチドであり、かつ(N)xは少なくとも8個の修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、少なくとも8個の修飾リボヌクレオチドのうちの少なくとも5個は、3’末端から始まって交互になっている。いくつかの実施形態では、(N)xは、位置5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のうちの1つに無塩基部分を含む。
いくつかの実施形態では、(N’)y中の少なくとも1つの非従来型部分は、位置15、16、17、または18に存在する。いくつかの実施形態では、非従来型部分は、ミラーヌクレオチド、無塩基リボース部分、および無塩基デオキシリボース部分から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、非従来型部分は、ミラーヌクレオチド、好ましくはL−DNA部分である。いくつかの実施形態では、L−DNA部分は、位置17、位置18、または位置17と18に存在する。他の実施形態では、(N’)y中の少なくとも1つの非従来型部分は、無塩基リボース部分または無塩基デオキシリボース部分である。
構造(X)の様々な実施形態では、z’’が存在し、かつ無塩基リボース部分、デオキシリボース部分;逆方向無塩基リボース部分、デオキシリボース部分;C6−アミノ−Pi;ミラーヌクレオチドから選択される。
さらに別の態様では、本発明は、以下に示される構造(K):
(K) 5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z’’ 5’ (センス鎖)
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾であっても修飾されていてもよいリボヌクレオチド、または非従来型部分であり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合されているオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ’は、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、独立に、それが存在する鎖の3’末端で共有結合的に付加された1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
z’’は、存在していても存在していなくてもよいが、存在する場合には、(N’)yの5’末端で共有結合的に付加されているキャッピング部分であり;
x=18〜27であり;
y=18〜27であり;
(N)xは、修飾または未修飾リボヌクレオチドと非従来型部分の組合せを含み、どの修飾リボヌクレオチドもその糖の上に2’−O−メチルを有し;
(N’)yは、修飾または未修飾リボヌクレオチド、および任意で非従来型部分を含み、どの修飾リボヌクレオチドもその糖の上に2’OMeを有し;
(N)xの配列は、(N’)yの配列に実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有し;かつこのmRNAに相補的な連続するヌクレオチドが15個未満である、アンチセンス配列を含む。
いくつかの実施形態では、x=y=19である。他の実施形態では、x=y=23である。いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1つの好ましい1つの非従来型部分が(N)xに存在し、かつ無塩基リボース部分または無塩基デオキシリボース部分である。他の実施形態では、少なくとも1つの非従来型部分が(N)xに存在し、かつ非塩基対合ヌクレオチド類似体である。様々な実施形態では、(N’)yは未修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N)xは、少なくとも5個の無塩基リボース部分もしくは無塩基デオキシリボース部分またはその組合せを含む。特定の実施形態では、(N)xおよび/または(N’)yは、(N’)yおよび/または(N)x中の対応する修飾または未修飾リボヌクレオチドと塩基対合しない修飾リボヌクレオチドを含む。
様々な実施形態では、本発明は、構造(L):
(L) 5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
に示されるsiRNAを提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合されているオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ’は存在せず;
x=y=19であり;
(N’)yにおいて、位置15、16、17、18、および19の少なくとも1つにあるヌクレオチドは、無塩基疑似ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択されるヌクレオチドを含み;
(N)xは、交互の修飾リボヌクレオチドと未修飾リボヌクレオチドとを含み、各々の修飾リボヌクレオチドはその糖の上に2’−O−メチルを有するように修飾されており、かつ(N)xの中央位置にあるリボヌクレオチドは、修飾されているかまたは未修飾であり、好ましくは未修飾であり;かつ
(N)xの配列は、(N’)yの配列に実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
構造(L)のいくつかの実施形態では、(N’)yにおいて、位置17と18の一方または両方にあるヌクレオチドは、無塩基疑似ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに結合されたヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ミラーヌクレオチドは、L−DNAおよびL−RNAから選択される。様々な実施形態では、ミラーヌクレオチドはL−DNAである。
様々な実施形態では、(N’)yは位置15に修飾ヌクレオチドを含み、ここで、修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドから選択される。
特定の実施形態では、(N’)yは、位置2に修飾ヌクレオチドまたは疑似ヌクレオチドをさらに含み、ここで、疑似ヌクレオチドは無塩基疑似ヌクレオチド類似体であってもよく、かつ修飾ヌクレオチドは任意でミラーヌクレオチドである。
様々な実施形態では、アンチセンス鎖(N)xは、奇数の位置(5’から3’へ;位置1、3、5、7、9、11、13、15、17、19)に2’O−Me修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N)xは、位置2と18の一方または両方に2’O−Me修飾リボヌクレオチドをさらに含む。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、19に2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。
x=y=21またはx=y=23である構造(L)、(I)、および(J)の他の実施形態が想定され;これらの実施形態では、上で論じられている(N’)yに対する修飾は、位置17および18にある代わりに、21−merオリゴヌクレオチドの場合、位置19および20にあり、23merオリゴヌクレオチドの場合、21および22にあり;同様に、位置15、16、17、18、または19にある修飾は、21−merオリゴヌクレオチドの場合、位置17、18、19、20、または21にあり、23−merオリゴヌクレオチドの場合、位置19、20、21、22、または23にある。アンチセンス鎖上の2’−OMe修飾も同様に調整される。いくつかの実施形態では、(N)xは、21merオリゴヌクレオチドの場合、奇数の位置(5’から3’へ;位置1、3、5、7、9、12、14、16、18、20)[位置11のヌクレオチドは未修飾]に、および23merオリゴヌクレオチドの場合、1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23[位置12のヌクレオチドは未修飾]に、2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、(N)xは、21merオリゴヌクレオチドの場合、位置2、4、6、8、10、12、14、16、18、20[位置11のヌクレオチドは未修飾]に、および23merオリゴヌクレオチドの場合、位置2、4、6、8、10、13、15、17、19、21、23[位置12のヌクレオチドは未修飾]に、2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、(N’)yは、5’末端キャップヌクレオチドをさらに含む。様々な実施形態では、末端キャップ部分は、無塩基疑似ヌクレオチド類似体、逆方向無塩基疑似ヌクレオチド類似体、L−DNAヌクレオチド、およびC6−イミンリン酸(末端にリン酸を含むC6アミノリンカー)から選択される。
他の実施形態では、本発明は、以下に示される構造(M):
5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、疑似ヌクレオチドおよびヌクレオチドから選択され;
各々のヌクレオチドは、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択され;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合されているオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ’は存在せず;
x=18〜27であり;
y=18〜27であり;
(N)xの配列は、(N’)yの配列に実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含み;
Nの少なくとも1つは、(N)xが標的遺伝子のmRNAに相補的な15個未満の連続するヌクレオチドを含むように、(N)xの位置における無塩基疑似ヌクレオチド、非対合ヌクレオチド類似体、および標的遺伝子のmRNAに対するヌクレオチドミスマッチから選択される。
他の実施形態では、本発明は、以下に示される構造(N):
(N) 5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
を有する二本鎖化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合されているオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ’は存在せず;
xおよびyは各々、18〜40の整数であり;
(N)xの配列は、(N’)yの配列に実質的に相補的な配列であり;かつ
(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含み;
(N)x、(N’)y、または(N)xと(N’)yは、(N)xと(N’)yが二本鎖化合物中で15個未満の塩基対を形成するように、非塩基対合修飾ヌクレオチドを含む。
他の実施形態では、本発明は、以下に示される構造(O):
(O) 5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
を有する化合物を提供し、
ここで、Nは各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
N’は各々、6員の糖ヌクレオチド、7員の糖ヌクレオチド、モルホリノ部分、ペプチド核酸、およびそれらの組合せから選択されるヌクレオチド類似体であり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合されているオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ’は存在せず;
xおよびyは各々、18〜40の整数であり;
(N)xの配列は、(N’)yの配列に実質的に相補的な配列であり;かつ(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
他の実施形態では、本発明は、以下に示される構造(P):
(P) 5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
を有する化合物を提供し、
ここで、NおよびN’は各々、未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、未修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yは各々、各々の連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に結合されているオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ’は存在せず;
xおよびyは各々、18〜40の整数であり;
(N)xもしくは(N’)yの内部位置にあるNもしくはN’のうちの1つまたは(N)xもしくは(N’)yの末端位置にあるNもしくはN’のうちの1つもしくは複数は、無塩基部分または2’修飾ヌクレオチドを含み;
(N)xの配列は、(N’)yの配列に実質的に相補的な配列であり;かつ(N)xの配列は、配列番号1〜58のいずれか1つに示されるmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対する実質的な相補性を有するアンチセンス配列を含む。
様々な実施形態では、(N’)yは位置15に修飾ヌクレオチドを含み、ここで、修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドから選択される。
特定の実施形態では、(N’)yは、位置2に修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドおよび無塩基疑似ヌクレオチド類似体から選択される。
様々な実施形態では、アンチセンス鎖(N)xは、奇数の位置(5’から3’へ;位置1、3、5、7、9、11、13、15、17、19)に2’O−Me修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N)xは、位置2と18の一方または両方に2’O−Me修飾リボヌクレオチドをさらに含む。他の実施形態では、(N)xは、位置2、4、6、8、11、13、15、17、19に2’−OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。
上記の構造モチーフ(A)〜(P)は、哺乳動物または非哺乳動物の遺伝子に対する任意のオリゴヌクレオチド対(センス鎖およびアンチセンス鎖)の場合に有用である。いくつかの実施形態では、哺乳動物遺伝子は、好ましくは、配列番号1〜58に示されるmRNAを有する、表A1〜A4に示される遺伝子から選択されるヒト遺伝子である。特定の好ましい実施形態では、siRNAのセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号59〜33,596に示されるsiRNA対のいずれか1つから選択される。以下の表A5には、特定の好ましいセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド対が示されている。
上記の構造(A)〜(P)の全てについて、様々な実施形態では、x=yであり、かつxおよびyは各々、19、20、21、22、または23である。好ましい実施形態では、x=y=19である。さらなる実施形態では、化合物は、交互の位置に修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、(N)xの5’末端および3’末端にある各々のNは、その糖残基中で修飾されており、かつ中央のリボヌクレオチド、例えば、19−mer鎖の位置10、21merの位置11、および23−mer鎖の位置12にあるリボヌクレオチドは、修飾されていない。
x=y=21またはx=y=23であるいくつかの実施形態では、19merにおける修飾の位置は、21merおよび23merの場合には調整され、ただし、アンチセンス鎖の中央のヌクレオチドは、好ましくは修飾されていない。
上記の構造(A)〜(P)の全てについて、いくつかの実施形態では、(N)xも(N’)yも3’末端および5’末端でリン酸化されていない。他の実施形態では、(N)xと(N’)yのどちらかまたは両方は、3’末端でリン酸化されている。さらに別の実施形態では、(N)xと(N’)yのどちらかまたは両方は、切断不可能なリン酸基を用いて3’末端でリン酸化されている。さらに別の実施形態では、(N)xと(N’)yのどちらかまたは両方は、切断可能なまたは切断不可能なリン酸基を用いて末端の2’末端位置でリン酸化されている。これらの特定のsiRNA化合物はまた平滑末端であり、かつ末端でリン酸化されていない;しかしながら、比較実験により、3’−末端の一方または両方でリン酸化されているsiRNA化合物が、リン酸化されていない化合物と比較してインビボで同様の活性を有することが示されている。
上記の構造(A)〜(P)の全てについて、いくつかの実施形態では、化合物は平滑末端であり、例えば、この場合、ZおよびZ’は両方とも存在しない。代わりの実施形態では、化合物は、少なくとも1つの3’突出を含み、この場合、ZまたはZ’のうちの少なくとも1つが存在する。ZおよびZ’は、独立に、1以上の共有結合した修飾または非修飾ヌクレオチド、例えば、逆方向dTまたはdA;dT、LNA、ミラーヌクレオチドなどを含む。いくつかの実施形態では、ZおよびZ’は各々、dTおよびdTdTから独立に選択される。Zおよび/またはZ’が存在するsiRNAは、ZおよびZ’が存在しないsiRNAと同様の活性および安定性を有する。
上述の構造全てについての特定の実施形態では、化合物は、架橋核酸または二環状ヌクレオチドとも定義される1以上のロックされた核酸(LNA)を含む。好ましいロックされた核酸は、2’−O,4’−C−エチレンヌクレオシド(ENA)または2’−O,4’−C−メチレンヌクレオシドである。LNAおよびENAヌクレオチドの他の例は、全て参照により本明細書に組み込まれる、WO98/39352号、WO00/47599号、およびWO99/14226号に開示されている。
上述の構造全てについての特定の実施形態では、化合物は、1,5アンヒドロ−2−デオキシ−D−アルトリト−ヘキシトールとも定義される、1以上のアルトリトールモノマー(ヌクレオチド)を含む(例えば、Allart,et al.,1998.Nucleosides & Nucleotides 17:1523−1526;Herdewijn et al.,1999.Nucleosides & Nucleotides 18:1371−1376;Fisher et al.,2007,NAR 35(4):1064−1074を参照されたく;全て参照により本明細書に組み込まれる)。
本発明は、Nおよび/またはN’が各々、デオキシリボヌクレオチド(D−A、D−C、D−G、D−T)である化合物を明示的に除外する。特定の実施形態では、(N)xおよび(N’)yは、独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個のデオキシリボヌクレオチドを含んでいてもよい。特定の実施形態では、本発明は、Nが各々、未修飾リボヌクレオチドであり、かつ(N’)yの3’末端ヌクレオチドまたは3’末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドである化合物を提供する。さらに他の実施形態では、Nは各々、未修飾リボヌクレオチドであり、かつ(N’)yの5’末端ヌクレオチドまたは5’末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドである。さらなる実施形態では、(N)xの5’末端ヌクレオチドまたは5’末端の2、3、4、5、6、7、8、もしくは9個の連続するヌクレオチドおよび3’末端の1、2、3、4、5、もしくは6個の連続するヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドであり、かつN’は各々、未修飾リボヌクレオチドである。またさらなる実施形態では、(N)xは、未修飾リボヌクレオチドと、5’末端および3’末端の各々に独立にある1または2個、3または4個の連続するデオキシリボヌクレオチドと、内部位置にある1または2個、3、4、5、または6個の連続するデオキシリボヌクレオチドとを含み;かつN’は各々、未修飾リボヌクレオチドである。特定の実施形態では、(N’)yの3’末端ヌクレオチドまたは3’末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12 13、もしくは14個の連続するヌクレオチドおよび(N)xの末端5’ヌクレオチドまたは5’末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12 13、もしくは14個の連続するヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドである。本発明は、Nおよび/またはN’が各々、デオキシリボヌクレオチドである化合物を除外する。いくつかの実施形態では、Nの5’末端ヌクレオチドまたはNの2もしくは3個の連続およびN’のうちの1、2、もしくは3個は、デオキシリボヌクレオチドである。活性のあるDNA/RNA siRNAキメラの特定の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公報第2005/0004064号、およびUi−Tei,2008(NAR 36(7):2136−2151)に開示されている。
別途示されない限り、本明細書で論じられている構造の好ましい実施形態では、各々の連続するNとN’の間の共有結合は、ホスホジエステル結合である。
本発明により提供される追加の新規分子は、連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであり、ここで、このようなヌクレオチドの第1の部分は阻害性RNA分子をコードし、このようなヌクレオチドの第2の部分は第2の阻害性RNA分子をコードし、このようなヌクレオチドの第3の部分は第3の阻害性RNA分子をコードする。第1、第2、および第3の部分は各々、二本鎖RNAの1つの鎖を含んでいてもよく、かつ第1、第2、および第3の部分はリンカーによって1つに結合されていてもよい。さらに、オリゴヌクレオチドは、1以上のリンカーによって1つに結合された3つの二本鎖部分を含んでいてもよい。
したがって、本発明により提供される1つの分子は、3つの阻害性RNA分子をコードする連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであり;該オリゴヌクレオチドは、3つの二本鎖アームが、上記に提示された任意のリンカーなどの、1以上のリンカーによって1つに結合されるように、三本鎖構造を有していてもよい。この分子は、「星」状構造を形成し、本明細書において、RNAスターと呼ばれる場合がある。このような構造は、本発明の譲受者に譲渡され、かつその全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公報WO2007/091269号に開示されている。
共有結合は、あるヌクレオチドモノマーを隣接ヌクレオチドモノマーと結合させるヌクレオチド間連結を指す。共有結合としては、例えば、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、P−アルコキシ結合、P−カルボキシ結合などが挙げられる。RNAとDNAの通常のヌクレオシド間連結は、3’から5’へのホスホジエステル連結である。特定の好ましい実施形態では、共有結合はホスホジエステル結合である。共有結合は、とりわけ、WO2004/041924号に開示されているものなどの、リンを含有しないヌクレオシド間連結を包含する。別途示されない限り、本明細書で論じられている構造の好ましい実施形態では、各々の連続するNとN’の間の共有結合は、ホスホジエステル結合である。
上述の構造全てについて、いくつかの実施形態では、(N)xのオリゴヌクレオチド配列は、(N’)yのオリゴヌクレオチド配列に完全に相補的である。他の実施形態では、(N)xおよび(N’)yは実質的に相補的である。特定の実施形態では、(N)xは標的配列に完全に相補的である。他の実施形態では、(N)xは標的配列に実質的に相補的である。
いくつかの実施形態では、(N)xも(N’)yも3’末端および5’末端でリン酸化されていない。他の実施形態では、(N)xと(N’)yのどちらかまたは両方は、3’末端でリン酸化されている(3’Pi)。さらに別の実施形態では、(N)xと(N’)yのどちらかまたは両方は、切断不可能なリン酸基を用いて3’末端でリン酸化されている。さらに別の実施形態では、(N)xと(N’)yのどちらかまたは両方は、切断可能なまたは切断不可能なリン酸基を用いて末端2’末端位置でリン酸化されている。さらに、本発明の阻害性核酸分子は、1以上のギャップおよび/または1以上のニックおよび/または1以上のミスマッチを含んでいてもよい。理論に束縛されることを望まないが、ギャップ、ニック、およびミスマッチは、DICER、DROSHA、またはRISCなどの内在性の細胞機構によって、より容易にその阻害性成分へとプロセッシングされ得るように、核酸/siRNAを部分的に不安定化する利点を有する。
本発明との関連で、核酸中のギャップは、一方の鎖において1以上の内部ヌクレオチドがないことを指すが、核酸中のニックは、一方の鎖において2つの隣接ヌクレオチド間のヌクレオチド間連結がないことを指す。本発明の分子はいずれも、1以上のギャップおよび/または1以上のニックを含有していてもよい。
本明細書で論じられている構造は、任意の標的遺伝子に対するアンチセンスおよび対応するセンス核酸配列に組み込まれたとき、その標的遺伝子の発現を減少させるときに有用なsiRNA化合物を提供する。標的遺伝子は、哺乳動物または非哺乳動物の遺伝子である。本発明の方法は、対象の眼内の標的遺伝子の発現を阻害する1以上のsiRNA化合物を対象の眼に局所的にかつ非侵襲的に投与することを含む。
siRNA合成
本発明の化合物は、リボ核酸(またはデオキシリボ核酸)オリゴヌクレオチドの合成のための、当該技術分野でよく知られている方法のいずれかによって合成することができる。このような合成は、とりわけ、Beaucage and Iyer,Tetrahedron 1992;48:2223−2311;Beaucage and Iyer,Tetrahedron 1993;49:6123−6194、およびCaruthers,et.al.,Methods Enzymol.1987;154:287−313に記載されており;チオエートの合成は、とりわけ、Eckstein,Annu.Rev.Biochem.1985;54:367−402に記載されており、RNA分子の合成は、Humana Press 2005 Herdewijn P.編;Kap.2:17−31のSproatに記載されており、それぞれの下流のプロセスは、とりわけ、IRL Press 1989 Oliver編;Kap.7:183−208のPingoud et.al.,に記載されている。
例えば、Usman et al.,J.Am.Chem.Soc.,1987,109:7845;Scaringe et al.,NAR,1990,18:5433;Wincott et al.,NAR 1995,.23:2677−2684;およびWincott et al.,Methods Mol.Bio.,1997,74:59に記載されたような手順などの、他の合成手順が当該技術分野で知られており、これらの手順は、5’−末端のジメトキシトリチル、および3’−末端のホスホロアミダイトなどの、一般的な核酸保護基およびカップリング基を利用し得る。望ましい場合には、修飾(例えば、2’−O−メチル化)ヌクレオチドおよび未修飾ヌクレオチドが組み込まれる。
本発明のオリゴヌクレオチドを別々に合成し、例えば、ライゲーションによって(Moore et al.,Science 1992,256:9923;国際特許公報WO93/23569号;Shabarova et al.,NAR 1991,19:4247;Bellon et al.,Nucleosides & Nucleotides,1997,16:951;Bellon et al.,Bioconjugate Chem 1997,8:204)、あるいは合成および/または脱保護後のハイブリダイゼーションによって、合成後に1つに結合することができる。
市販の機械(特に、Applied Biosystemsから入手可能なもの)を使用することができ;オリゴヌクレオチドが、本明細書に開示されている配列によって調製されることに留意すべきである。化学合成断片の重複する対を、当該技術分野で周知の方法を用いて連結することができる(例えば、米国特許第6,121,426号を参照されたい)。これらの鎖を別々に合成し、その後、チューブの中で互いにアニーリングさせる。その後、二本鎖siRNAを、HPLCによって(例えば、それらの一方が過剰であるために)アニーリングしなかった一本鎖オリゴヌクレオチドから分離する。本発明のsiRNAまたはsiRNA断片に関して、2以上のこのような配列を合成し、本発明で使用するために1つに結合させることができる。
本発明の化合物を、例えば、(本発明の譲受者に譲渡され、かつその全体が参照により本明細書に組み込まれる)米国特許公報第2004/0019001号(McSwiggen)、およびPCT特許公報WO2007/091269号に記載されたような、タンデム合成法によって合成することもでき、ここで、両方のsiRNA鎖は、切断可能なリンカーによって隔てられた単一の連続するオリゴヌクレオチド断片または鎖として合成されるが、この断片または鎖は後に切断されて、別々のsiRNA断片または鎖を生じさせ、これがハイブリダイスし、siRNA二重鎖の精製が可能になる。リンカーは、ポリヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーであることができる。
本発明はさらに、本明細書で言及された任意の疾患または状態の治療のための2つまたはそれより多くのsiRNA分子を含む薬学的組成物を提供し、該2つの分子は、同等のもしくは別な形で有益な活性を生み出す量で、薬学的組成物中で物理的に1つに混合され得るか、または共有結合もしくは非共有結合され得るか、または2〜100、好ましくは2〜50、もしくは2〜30ヌクレオチドの範囲の長さの核酸リンカーによって1つに結合され得る。
したがって、siRNA分子は、共有結合もしくは非共有結合されるか、またはリンカーによって結合されて、タンデムsiRNA化合物を形成し得る。2つのsiRNA配列を含むこのようなタンデムsiRNA化合物は、典型的には、約38〜150ヌクレオチド長、より好ましくは38または40〜60ヌクレオチド長であり、かつ3以上のsiRNA配列がタンデム分子に含まれる場合、それに応じてより長いものとなる。2以上のshRNAをコードするタンデム分子と同様に、内部細胞プロセッシングにより産生されるsiRNA、例えば、長いdsRNAをコードする2以上のより長い配列から構成されるより長いタンデムな化合物も想定される。このようなタンデム分子も本発明の一部と考えられる。本発明の2以上のsiRNA配列を含むタンデム化合物が想定される。
さらに、本明細書に開示されている疾患の治療のための増強されたターゲッティングを達成するために、本明細書に開示されているsiRNAまたはこのようなsiRNAを含むもしくはコードする任意の核酸分子を、標的細胞上に発現される細胞表面内在化可能分子に対する抗体(アプタマー分子を含む)に(共有結合的にまたは非共有結合的に)連結または結合させることができる。例えば、抗Fas抗体(好ましくは中和抗体)を(共有結合的にまたは非共有結合的に)任意のsiRNA化合物と組み合わせてもよい。
本発明の化合物を、直接的にまたはウイルスもしくは非ウイルスベクターを用いて、送達することができる。直接的に送達する場合、配列は通常ヌクレアーゼ耐性とされる。あるいは、配列が本明細書で以下に開示される細胞で発現されるように、配列を発現カセットまたはコンストラクトに組み込むことができる。通常、コンストラクトは、標的とされた細胞で配列が発現するのを可能にする適切な調節配列またはプロモーターを含有する。任意で本発明の化合物の送達に使用されるベクターは市販されており、当業者に公知の方法によって本発明の化合物の送達のために修飾し得る。
1以上のステムおよびループ構造を含む長いオリゴヌクレオチド(典型的には、25〜500ヌクレオチド長)は、ステム領域が本発明のオリゴヌクレオチドの配列を含む場合、担体、好ましくは、薬学的に許容される担体中で送達され得、かつ内在性の細胞複合体によって(例えば、上記のようなDROSHAおよびDICERによって)細胞内でプロセッシングされて、本発明のオリゴヌクレオチドである1以上のより小さい二本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA)を産生し得ることも想定される。このオリゴヌクレオチドは、タンデムshRNAコンストラクトと呼ぶことができる。この長いオリゴヌクレオチドは、1以上のステムおよびループ構造を含む一本鎖オリゴヌクレオチドであり、ここで、各々のステム領域は、本発明の遺伝子のセンスおよび対応するアンチセンスsiRNA配列を含むことが想定される。
RNA干渉
RNAi現象に関するいくつかのPCT出願が最近公開されている。これらには、PCT刊行物WO00/44895号;PCT刊行物WO00/49035号;PCT刊行物WO00/63364号;PCT刊行物WO01/36641号;PCT刊行物WO01/36646号;PCT刊行物WO99/32619号;PCT刊行物WO00/44914号;PCT刊行物WO01/29058号;およびPCT刊行物WO01/75164号が含まれる。
RNA干渉(RNAi)は、dsRNA種が細胞質タンパク質複合体に侵入する能力に基づいており、この細胞質タンパク質複合体の中で、dsRNA種は相補的な細胞RNAにターゲッティングされ、それを特異的に分解する。RNA干渉応答は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を仲介する、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)と一般に呼ばれる、siRNAを含有するエンドヌクレアーゼ複合体を特色とする。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の真ん中で起こり得る(Elbashir et al.,Genes Dev.,2001,15(2):188−200)。さらに詳細には、より長いdsRNAは、タイプIII RNアーゼ(DICER、DROSHAなど;Bernstein et al.,Nature,2001,409(6818):363−6;Lee et al.,Nature,2003,425(6956):415−9)によって、短い(17〜29bp)dsRNA断片(短い阻害性RNA、「siRNA」とも呼ばれる)に消化される。RISCタンパク質複合体は、これらの断片と相補的mRNAとを認識する。全体のプロセスは、標的mRNAのエンドヌクレアーゼ切断によって完了する(McManus & Sharp,Nature Rev Genet,2002,3(10):737−47;Paddison & Hannon,Curr Opin Mol Ther.2003,5(3):217−24)。(これらの用語および提唱されたメカニズムに関する追加の情報については、例えば、Bernstein et al.,RNA 2001,7(11):1509−21;Nishikura,Cell 2001,107(4):415−8、およびPCT刊行物WO01/36646号を参照されたい)。
いくつかのグループが、細胞内でsiRNAを生成させることができるDNAベースのベクターの開発を記載している。この方法は、通常、細胞内でsiRNAを形成するように効率的にプロセッシングされる短いヘアピンRNAの転写を伴う(Paddison et al.PNAS USA 2002,99:1443−1448;Paddison et al.Genes & Dev 2002,16:948−958;Sui et al.PNAS USA 2002,8:5515−5520;およびBrummelkamp et al.Science 2002,296:550−553)。これらの報告には、多数の内在性および外因性に発現される遺伝子を特異的に標的とすることができるsiRNAを生成させる方法が記載されている。
本発明は例証となるように記載されており、使用される専門用語は、限定語ではなく、説明語の性質を持つことが意図されていることが理解されるべきである。
明白なことであるが、本発明の多くの修飾および変化が、上記の教示に照らして可能である。それゆえ、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、具体的に記載されたものとは別の方法で実施することができることが理解されるべきである。
本出願の全体を通して、米国特許をはじめとする、様々な刊行物が、著者および年号および番号付き特許により参照されている。これらの刊行物および特許および特許出願のその全体としての開示は、本発明が関係する当該技術分野の状況をより十分に説明するために、参照により本出願に組み込まれる。
本発明は、実施例を参照しながら、以下で詳細に説明されるが、それに限定されるものとみなされるべきではない。
本明細書における任意の文書の引用は、そのような文書が、関連のある従来技術、または本出願の任意の請求請求の範囲の特許性に対する考慮された資料であるという承認として意図されるものではない。任意の文書の内容または日付に関する記述はいずれも、出願の時点で出願人に利用可能な情報に基づくものであり、かつそのような記述の正しさに関する承認を構成するものではない。
さらに詳細に説明することなく、当業者であれば、前述の説明を用いて、本発明を最大限まで利用することができると考えられる。以下の好ましい具体的な実施形態は、それゆえ、特許請求された発明を単に例証するものであって、決して限定するものとみなされるべきではない。
本明細書で具体的には記載されていない当該技術分野で公知の標準的な分子生物学プロトコルは、通常、Sambrook et al.,Molecular cloning:A laboratory manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New−York(1989,1992)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1988)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)、およびPerbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley & Sons,New York(1988)、およびWatson et al.,Recombinant DNA,Scientific American Books,New York and in Birren et al(編) Genome Analysis:A Laboratory Manual Series,Vols.1−4 Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998)に記載されたもの、ならびに米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号、および同第5,272,057号に示されたような方法に本質的に従い、これらは参照により本明細書に組み込まれる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、標準的なPCRプロトコル:A Guide To Methods And Applications,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載された通りに実施した。フローサイトメトリー(FACS)と組み合わせたインサイチュPCRは、特定のDNAおよびmRNA配列を含有する細胞の検出に使用することができる(Testoni et al.,Blood 1996,87:3822)。RT−PCRを実施する方法は、当該技術分野で周知である。
細胞培養
HeLa細胞(American Type Culture Collection)は、Czauderna,et al.(NAR,2003.31:670−82)に記載の通りに培養した。ヒトケラチノサイトは、10%FCSを含有するダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中、37℃で培養した。マウス細胞株のB16V(American Type Culture Collection)は、10%FCSを含有するダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中、37℃で培養した。培養条件は、(Methods Find Exp Clin Pharmacol.1997,19(4):231−9)に記載の通りであった。
いずれの場合にも、細胞を、ウェル当たり約50,000細胞の密度で本明細書に記載の実験に供し、本発明による二本鎖核酸を20nMの濃度で添加し、それにより、二本鎖核酸を、1μg/mlの以下に記載の特許脂質を用いて複合体化した。
組織化学/顕微鏡図において、矢印は、組織の染色に注意を向けるために付け加えられた。
動物モデル
緑内障および網膜神経節細胞(RGC)死のモデル系
ラットにおけるONCモデル
様々な動物モデルが、緑内障を治療する上でのsiRNA治療の効果を研究するのに有用である。ラットの視神経挫滅モデルでは、麻酔ラットの眼窩視神経(ON)を眼窩上からのアプローチによって露出させ、髄膜を切り取り、ON内の全ての軸索を、鉗子で10秒間押し潰すことによって篩板から2mmの位置で切断する。緑内障を治療または予防するための本発明の活性阻害剤(例えば、siRNA)の試験を、例えば、Pease et al.(J. Glaucoma,2006,15(6):512−9.Manometric calibration and comparison of TonoLab and TonoPen tonometers in rats with experimental glaucoma and in normal mice)によって記載された動物モデルで行なう。
成体Wistarラットにおける視神経挫滅(OCN)モデルも、網膜神経節細胞(RGC)死を研究するための認められているモデルである。このモデルでのRGC死の発症と動態は非常に再現性が高く;RGCアポトーシスがOCN後4〜5日目に始まり;大量のRGC損失(約50〜60%)がOCN後7〜10日目に観察され;RGC損失の95%がOCN後3〜4週までに起こる。このモデルは、試験薬物のインビボでの神経保護効力の立証を可能にする。
いくつかの非限定的な例では、表A1〜A4に示される遺伝子に対するsiRNA化合物は、これらのsiRNA化合物が、局所的にかつ非侵襲的に眼に送達されたときに、緑内障および/またはRGC死を治療および/または予防することを示すこの動物モデルで試験される。
ラットにおけるIOPモデル
眼圧(IOP)は、眼の内側の流体圧の尺度である。この流体は、房水と呼ばれるが、これは、循環した後、特殊化した流出路を経由して排出される。一般的な形態の緑内障で見られるように、この排出システムが適切に機能しない場合、眼の内側の圧力が高まる。Casey Eye Institute(Portland,Oregon)でJ.Morrison博士と同僚によって開発されたBrown Norwayラットにおける高眼圧症のモデルが本研究で使用されている。Morrisonモデルは、房水流出路の遮断を引き起こす、強膜上静脈への高張食塩水の注射を伴う。この手順は、眼圧の漸増とRGCの段階的な死をもたらす。重要なことに、このモデルで観察される内部網膜萎縮、視神経変性、および視神経頭再構築は、ヒト緑内障で見られるものと同じである。したがって、Morrisonモデルは、最も優れた緑内障の前臨床齧歯類モデルと考えられる。
ラットにおけるインビボ軸索切断モデル
このモデルでは、RGCアポトーシスを成体Sprague−Dawleyラットにおける視神経(ON)の軸索切断によって誘導する。このモデル系でのRGC死の発症と動態は非常に再現性が高く、非侵襲的に投与されたsiRNA化合物のインビボでの神経保護効力の立証を可能にする。この方法を用ると、RGC死の時間経過は予測通りの経過をたどる。すなわち、細胞死は5日目に始まり、2週までに、これらのニューロンの90%超の速やかな損失にまで進む。
ビヒクル製剤および例示的点眼製剤
水性点眼製剤は、任意で、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、アミノ酸、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)、等張物質(例えば、ソルビトール、グルコース、およびマンニトールなどの糖類、グリセリン、濃グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールなどの多価アルコール類、塩化ナトリウムなどの塩類)、防腐剤または消毒剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、p−オキシ安息香酸メチルまたはp−オキシ安息香酸エチルなどのp−オキシ安息香酸、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸またはその塩、チメロサール、クロロブタノールなど)、可溶化促進剤または安定剤(例えば、シクロデキストリンおよびその誘導体、ポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマー)、ポリソルベート80(Tween 80)などの界面活性剤、pH調整物質(例えば、塩酸、酢酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなど)、キレート剤(例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウム)などのような、普通に組み込まれる様々な添加物を含有する。
水性懸濁液の形態の点眼製剤はまた、上記の添加物の他に、懸濁剤(例えば、ポリビニルピロリドン、モノステアリン酸グリセリン)および分散剤(例えば、チロキサポールやポリソルベート80などの界面活性剤、アルギン酸ナトリウムなどのイオン性ポリマー)を含み、それにより、点眼製剤がさらに均一な微粒子および十分に分散した水性懸濁液となるのを確実にしてもよい。
眼科用軟膏は、精製ラノリン、ワセリン、プラスチベース、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどのような、既知の軟膏基剤を含んでいてもよい。
例示的点眼製剤1:
PBS中のsiRNA化合物の製剤(「裸のsiRNA製剤」)は、通常、乾燥siRNAをPBSに溶解することによって調製される。この製剤は、組成物の容量で約5μg/μl〜約60μg/μlの範囲の量で通常存在する少なくとも1つのsiRNA化合物を含む。
非限定的に例において、PBS中のsiRNA化合物の製剤を以下のように調製した:滅菌条件下で、500mgの乾燥siRNAを25mlの滅菌再蒸留水(DDW)に溶解させて、透明な20mg/ml溶液を得た。この溶液を、使用するまで−80℃で保存した。その後、DDW中の20mg/mlストック溶液を、以下のように、PBS中で、100μg/3μlの作業濃度にした:325μlの20mg/mlのsiRNA溶液ストック(6.5mg)を0.15MのNaClおよびEtOHにより沈殿させ、組織培養用のラミナーの下で乾燥させた(滅菌条件)。6.5mgの乾燥siRNAを130μlのPBSに溶解させて、点眼製剤1を形成させた。
例示的点眼製剤2:
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのsiRNA化合物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS) 1M、pH8.0(例えば、Sigma(カタログ#T−1503)から入手可能)中で処方される。
非限定的に例において、121.1gのTRISベース(Sigma #T1503)を700mlのddH2Oに溶解させた。濃HClを添加して所望のpH8を得た。最終的に1L溶液になるようにDDWを添加した。滅菌条件下で、42.426mgのsiRNA化合物粉末を2.1mlの滅菌再蒸留水に溶解させ、透明な20mg/ml(1.5mM)ストック溶液を得た。このストック溶液を、使用するまで−80℃で保存した。滅菌条件下で、対応量のsiRNAストックを凍結乾燥させ、対応量の1MのTRIS、pH8に再懸濁した。
例示的点眼製剤3:
使用される粘度増強剤の濃度は、典型的には、約0.05〜約5.0%(w/v)、およびより望ましくは約0.1〜約3.0%(w/v)の範囲内である。1つの好ましい眼科用組成物は、約0.01〜約0.075%(w/v)の有効成分;約0.15〜約2.5%(w/v)のポリオキシル40ステアレート;約0.1〜約3.0%(w/v)の、25ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースから選択されるセルロース増粘剤;および約0.0001%〜約0.01%(w/v)の、ブチル化ヒドロキシトルエンまたはチオ硫酸ナトリウムから選択される酸化防止剤を含む。
ポリオキシル40ステアレートまたはポリオキシエチレンセチルエーテルまたはポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどの界面活性剤とsiRNAを組み合わせることにより、眼にあまり刺激を起こさせず、眼でより良く分布し、かつ安定性がより高い点眼調製物が得られる。酸化防止剤やセルロース増粘剤を含めると、眼での活性治療剤(すなわち、siRNA)の分布と安定性とがさらに改善される。
例えば、等張剤、緩衝剤、防腐剤、およびまたはpH調整剤などの、他の賦形剤も添加してもよい。所望の点眼調製物を得るために、適当な量の滅菌精製水が存在する。
眼科用組成物のpHは、当該技術分野で知られているような、眼科用調製物に通常使用される範囲内であるが、望ましくは、5〜8の範囲内である。この製剤は、組成物の容量で約6.6μg/μl〜約50μg/μlの範囲の量で通常存在する少なくとも1つのsiRNA化合物をさらに含む。
例示的点眼製剤4:
薬物の水晶体への局所送達では、眼表面での薬物保持が重要であると考えられる。理論に束縛されることの望まないが、眼表面での保持の増大によって、薬物の角膜から房水、その後、水晶体への眼内吸収が増大する。
いくつかの実施形態では、局所懸濁液が好ましい。局所懸濁液の非限定的な例としては、(1)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、0.5%w/v)、(2)キサンタンガム(0.5%w/v)、(3)ジェランガム(0.5%w/v)、(4)カルボポール(0.25%w/v)、および(5)カルボポール(0.25%w/v)−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(0.25%w/v)が挙げられる。粘度測定は、粘度計を用いて行なわれる。
製剤は、組成物の容量で約5μg/μl〜約60μg/μlの範囲の量で通常存在する少なくとも1つのsiRNA化合物をさらに含む。
例示的点眼製剤5:
眼科用組成物では、防腐剤の有効性を高めるために、キレート剤が任意で使用される。好適なキレート剤は、当該技術分野で知られているものであり、限定することを意図するものではないが、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、およびエデト酸二カリウムのようなエデト酸(EDTA)塩が有用なキレート剤の例である。EDTAが4個のカルボン酸官能基を有する種を指すことや、これらのカルボン酸基が、それが含まれる組成物のpHに応じて、プロトン化され得るまたは脱プロトン化され(すなわち、塩形態となり)得ることが理解される。
緩衝剤は、眼科使用のためにpHを所望の範囲に調整するために一般に使用される。通常、約5〜8のpHが望ましいが、これは、治療活性剤または他の賦形剤の安定性または溶解度などを考慮して、調整する必要があり得る。
眼科用組成物中の別のよく使用される賦形剤は、粘度増強剤、または増粘剤である。増粘剤は、好都合な投与のために製剤の形態を改良することから、眼との接触を高めて、バイオアベイラビリティーを改善することまで、様々な理由で使用される。粘度増強剤は、単糖、多糖などの親水性基、エチレンオキシド基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、または他の荷電官能基を含有するポリマーを含む。いくつかの例に限定することを意図するものではないが、有用な粘度増強剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコールである。
製剤は、組成物の容量で約5μg/μl〜約60μg/μlの範囲の量で通常存在する少なくとも1つのsiRNA化合物をさらに含む。
例示的点眼製剤6(「製剤A」):
製剤「A」:2つの溶液、AとBを調製する。
溶液Aの調製:4%メチルセルロース水溶液。0.4gのメチルセルロース25(ScienceLab.com,Cat# SLM2050)を、50ml滅菌チューブ(Norbook,Cat# 7082−51)中の最終容量10mlの無発熱原性注射用水(WFI)に溶解させる。中に小型の滅菌撹拌子を入れ、キャップを閉める。メチルセルロースが乳白色の溶液を形成するまで少なくとも5分間撹拌しながら、沸騰水浴に保つ。
溶液Bの調製:2%グリセロール;0.02%(v/v) EDTA溶液。333.3uLの60%グリセロール(Sigma,Cat# G6279)と2μlの0.5M EDTA、pH=8(Sigma,Cat# E9884)(最終−100uM)を9.665mlのWFI(Norbook,Cat# 7082−51)に添加する。最終容量−10mL。
溶液B中の(作業濃度に関して)2倍のsiRNA溶液を調製する。注意:ストックsiRNA容量が大幅に高い場合、後から2倍のsiRNA溶液中で容量を調整することができるように、溶液Bの最終容量をうまく10mL未満に保つ。
作業siRNA溶液の調製:
溶液Aを約40〜50℃(依然として液体)になるまで制御して冷却し、所望の容量を等容量の溶液B中の2倍のsiRNA溶液と混合する。
最終的なsiRNA製剤は、WFI中に2%メチルセルロース、1%グリセロール、および0.01%(v/v)(50uM) EDTAを含有する。最終的なpHは、約7.4、モル浸透圧濃度は、ヒト涙液膜に類似するべきである。最終製剤中のsiRNA濃度は、33.3mg/mlである。
週に1度新鮮なものを調製し、1日用量に分注しなければならない。これらのアリコートを4℃に保つ。適用前に、この用量を室温で20〜30分間加温する。
メチルセルロースの最終濃度は、約0.1%〜約3%w/v、約0.1%〜約2%w/v、約0.1%〜1.5%w/v メチルセルロース、好ましくは約2%w/vである。グリセロールの最終濃度は、約0.1%〜約5%v/v、約0.5%〜約2%、好ましくは約1%v/vである。EDTAの最終濃度は、約0.001%〜約0.05%、約0.005%〜約0.01%、好ましくは約0.01%w/vである。
例示的点眼製剤7:
いくつかの実施形態では、siRNAを、市販の潤滑点眼製剤中で処方する。市販の潤滑点眼製剤の非限定的な例は、Alcon Incから入手可能なシスタン(登録商標)である。このような市販の潤滑点眼製剤は、通常、ポリエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール、ホウ酸などの消毒剤および/または抗ウイルス剤、ヒドロキシプロピルグアーなどのゲル化剤、塩化カリウムおよび/または塩化ナトリウムおよび/または塩化マグネシウムおよび/または塩化カルシウムおよび/または塩化亜鉛、ポリクアド(登録商標)などの防腐剤、ならびに精製水を含む。滅菌条件下で、300mgのsiRNA粉末を15mlの滅菌再蒸留水に溶解させて、透明な20mg/ml溶液を得る。この溶液を、使用するまで−80℃で保存する。その後、再蒸留水中の20mg/mlストック溶液を、以下のように、製剤中、100μg/3μlの作業濃度にする。
最終的な処方量1.7mgのsiRNAを得るために、20mg/mlのsiRNAストック85μl(1.7mg)を、0.15MのNaClおよびEtOHにより沈殿させ、組織培養用のラミナーの下で乾燥させる(滅菌条件)。
33.3mg/mlのsiRNA溶液を得るために、1.7mgの乾燥siRNAを、51μLのシスタン(登録商標)に溶解させる。
siRNA化合物は標的遺伝子のノックダウン(KD)を誘導する
実施例1:siRNA化合物のインビトロ試験
約1.5〜2×105個の被験細胞(ヒト遺伝子を標的とするsiRNAの場合、HeLa細胞および/または293T細胞、ならびにラット/マウス遺伝子を標的とするsiRNAの場合、NRK52(正常ラット腎臓近位尿細管細胞)細胞および/またはNMuMG細胞(マウス乳房上皮細胞株))を、6ウェルプレート中のウェルごとに播種した(70〜80%コンフルエント)。
約24時間後、細胞を、最終濃度5nMまたは20nMのリポフェクトアミン(商標)2000試薬(Invitrogen)を用いて、siRNA化合物でトランスフェクトした。これらの細胞を、CO2インキュベーター中、37℃で72時間インキュベートした。
トランスフェクションの陽性対照として、ホスファターゼおよびテンシンホモログ(PTEN)−Cy3標識siRNA化合物を使用した。(アンチセンス鎖とセンス鎖の両方の糖残基の2’位で修飾されており、この2’位の部分はメトキシである)交互の修飾リボヌクレオチドと未修飾リボヌクレオチドを有しており、アンチセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドが、その糖残基中で修飾され、かつセンス鎖の5’末端および3’末端のリボヌクレオチドが、その糖残基中で未修飾である、様々な化学修飾平滑末端siRNA化合物を試験した。別のsiRNA化合物は、交互のパターンのメトキシ部分を有するアンチセンスと、2つの2’5’架橋により結合された3個のリボヌクレオチドを3’末端に有するセンス鎖とを有する平滑末端構造を含み;3’末端の2’5’架橋により結合された3個のリボヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とセンス鎖とを含む別のsiRNA化合物を使用した。被験化合物のいくつかは、交互のパターンのメトキシ部分を有するアンチセンスと、3’末端または3’の最後から2番目の位置に1または2個のL−ヌクレオチドを有するセンス鎖とを有する平滑末端構造を含んでいた。
GFP siRNA化合物を、siRNA活性の陰性対照として使用した。トランスフェクションの72時間後に、細胞を採取し、細胞からRNAを抽出した。トランスフェクション効率を蛍光顕微鏡検査で試験した。特定の好ましいsiRNA構造を用いた遺伝子発現の阻害パーセントを、内在性遺伝子を発現する細胞における標的遺伝子のqPCR解析を用いて決定した。
一般に、インビトロ試験のために選択された特定の配列を有するsiRNAは、ヒトと非ヒト霊長類、ラット、またはウサギ遺伝子などの第2の種とに特異的なものであった。これらのRNA配列を有し、かつ本明細書に記載の通りに修飾されたsiRNAを用いて、同様の結果が得られる。
アポトーシスや神経保護に関する遺伝子を標的とするsiRNAを同様の手順によって試験すると、活性がありかつその対応する標的遺伝子のノックダウンを誘導することができることが分かった。
非侵襲的投与用に調製され、点眼によって投与されるsiRNAは、インビボで標的網膜組織に送達される
実施例2:蛍光顕微鏡検査および共焦点顕微鏡検査でモニタリングしたときのマウス視組織におけるCY3標識siRNA(PBS中に処方されたsiRNA)の分布
本研究では、局所眼内経路を経由した涙腺および眼構造へのsiRNAのインビボ送達が示された。
略語:E.D.=点眼;ISH=インサイチュハイブリダイゼーション
本研究の目的は、非侵襲的な局所眼内経路を経由したDDIT4−Cy3標識siRNA(RTP801遺伝子を標的とするsiRNA化合物)の涙腺への送達を試験することであった。局所眼内経路を、siRNAの涙腺、眼の前房、網膜、および視神経への送達について評価した。
DDIT4−Cy3 siRNA(マウスRTP801に対するsiRNA)を、PBS中の20m−/mlストック溶液として処方し、使用するまで−80℃で保存した。
実験手順
本研究には、以下の表C2に記載される6つの実験群が含まれた:以下のように、マウスを単一のsiRNA DDIT4−Cy3で処置した:
第V群(AおよびB):用量レジメ:50μg/マウス/3μl/眼、投与経路:右点眼(E.D.);
第Am−V−A群、第Am3−VIII群、第Am3−IX群:用量レジメ:50μg/マウス/3μl/眼、投与経路:両眼、点眼(E.D.);
第VI−A群:用量レジメ:20μg/マウス/3μl/眼、投与経路:右眼、点眼(E.D.);
第VII群、第Am−VII群:無処置対照。
siRNA用量を滅菌条件下で調製した。siRNAアリコートを投与前に室温で少なくとも30分間解凍した。(各々のマウス当たりの)アリコート当たりの総量には、計算容量のさらに20%が含まれた。指定されたsiRNA用量を、眼1つ当たり、3μl(実験群V〜VI)容量で送達した。
麻酔:以下のように、ケタミン/キシラジン混合液を用いてマウスに麻酔をかけた:ケタミン0.85ml+キシラジン0.15ml+食塩水0.9ml、混合溶液0.1ml/20gr体重(BW)。
点眼(E.D.)送達:とがっていないピペットチップを用いて、3μl試料容量を処置される眼(角膜表面)にゆっくりと滴下し;麻酔誘発低体温を防ぐために、動物を暖かい環境に置き、意識を取り戻した後、ケージに戻した。
計画的安楽死:処置後、研究デザイン(表C2、終了の時点)に従って、全ての群のマウスを安楽死させた。
終了工程は心穿刺と採血により達成され;採取された血清/血漿は、さらなるsiRNA血液検出解析のために保存された(−20℃)。
組織回収:全ての動物の視神経、涙腺(左右)を含む左右眼を摘出し、第V−A群の動物の脳(脳の前部および中央部、前頭方向面)、第VII群、第Am3−VIII群、第Am3−IX群の脳(脳の前部および中央部、前頭方向面)を摘出し、最適切断温度(OCT)化合物中に包埋し、クライオスタットで切片化して、8μmのスライスにし、これを顕微鏡スライド(Superfrost/Plus(商標))上に置いた。切片を95%EtOH中で7分間固定した後、DAPI(1μg/ml)で対比染色し、無水EtOH中で1分間インキュベートし、キシレン中で5分間インキュベートし、風乾させ、標本にした。
組織評価:光学顕微鏡検査とデジタルイメージングを用いて、siRNAの送達を評価した。組織学(顕微鏡)検査によって、単独または涙腺の導管細胞と組み合わせた腺房などの特定の細胞または構造内の明瞭な蛍光シグナルが示された場合にのみ、組織断片が陽性である(すなわち、Cy3 DDIT4 siRNA細胞内取込みが成功した)とみなされた。角膜、隅角、毛様体などの前眼房構造、または網膜(網膜色素上皮細胞(RPE)、網膜神経節細胞(RGC))などの後眼房の場合には、バックグラウンドDAPI染色が組織構造を識別するのに役立った。。組織学検査によって、ある実験群の全ての動物が、検査された細胞型/組織内で同じ蛍光シグナルを示すことが示された場合、送達が陽性であるとみなされた(すなわち、投与の時点または経路)。
結果および考察
全ての凍結切片を光学顕微鏡検査(明視野、BF)および蛍光共焦点顕微鏡検査で解析した。蛍光シグナルを以下の組織で可視化した。
E.D.送達による網膜(網膜色素上皮細胞、網膜神経節細胞) 図1A〜1B:マウス網膜に取り込まれたCy3標識DDIT4 siRNAの代表的画像。
図1A:E.D.投与の1時間後の網膜の蛍光顕微鏡検査(上のパネル、倍率40倍)。右の矢印は、Cy3染色された網膜神経節細胞(RGC)を特定し、左の矢印は、Cy3染色された網膜色素上皮細胞(RPE)を特定している。網膜神経節細胞層の共焦点顕微鏡検査(下のパネル、倍率60倍)。下段の9つの図は、Cy3標識組織(左)、明視野(BF、中央)、およびこの2つの合成(M、右)を示す。矢印は、標識されたRGCを指している。
1Bの図:E.D.投与の4時間後の網膜の共焦点顕微鏡検査(上40倍、下60倍)。RGCのCy3染色が際立っている。
涙腺(腺房細胞、導管細胞)へのsiRNAの点眼送達 図2A〜2D:マウス涙腺の導管および腺房細胞に取り込まれたCy3標識DDIT4 siRNAの代表的画像。
図2A:E.D.投与の1時間後の涙腺の蛍光顕微鏡検査(M=合成されたDAPI−Cy3染色)。中央の矢印は腺房細胞を指し、右の矢印は導管上皮細胞を指し、左の灰色の矢印は涙管を指す(倍率60倍)。
図2B:E.D.投与の1時間後の涙腺の共焦点顕微鏡検査(上40倍および下のパネル60倍)。合成された画像Mにおける矢印は涙管を指している。
図2C:E.D.投与の1時間後の涙腺の共焦点顕微鏡検査(40倍)。矢印は腺房細胞を指している。
図2D:E.D.投与の4時間後の涙腺の共焦点顕微鏡検査(60倍)。
図3A〜3Cは、投与1時間および4時間後の、点眼による投与後のラット脈絡膜におけるCy3−siRNAの蓄積の時間経過を示す。脈絡膜、外核層、RPE、および光受容体細胞の外節層は、Cy3染色を示している。
図4は、点眼による投与の1時間後の線維柱帯網末端毛様体へのCy3−siRNA送達を示す。
様々な化学修飾siRNA(構造モチーフ)を、マウスCy3標識siRNAを用いて試験した。上で示されたものと同様の組織分布が、試験された全ての構造:両方の鎖に交互の天然リボヌクレオチドと2’O−Me糖修飾リボヌクレオチドを有する構造B;アンチセンス鎖上の交互の天然リボヌクレオチドおよび2’O−Me糖修飾リボヌクレオチドと、センス鎖の3’末端の2’5’ヌクレオチド間連結により結合された3個のリボヌクレオチドとを有する構造I;ならびにアンチセンス鎖とセンス鎖の各々の3’末端の2’5’ヌクレオチド間により結合された3個のリボヌクレオチドを有する構造について観察された。
実施例3:ラットにおける処方されたsiRNAの局所眼内経路送達の検討(PBS中またはメチルセルロース2%中に処方されたsiRNA(「製剤A」))
本研究では、PBS中または製剤A中のいずれかに処方され、点眼によって適用されるDDIT4−Cy3 siRNAの眼内送達をラットにおいて試験した。
実験デザイン:
1)第I群、第II群、第III群、第IV群、第V群:用量レジメ:製剤A中に処方されたsiRNA;100μg/ラット/3μl/眼、投与経路:両側性の点眼(E.D.);
2)第Ia群、第IIa群、第IIIa群、第IVa群、第Va群:用量レジメ:PBS中に処方されたsiRNA;100μg/ラット/3μl/眼、投与経路:両側性の点眼(E.D.);
3)第VI群:製剤Aの処方ビヒクル(siRNAなし)で処置された対照群;100μg/ラット/3μl/眼、投与経路:両側性の点眼(E.D.);
4)第VII群:無傷対照
siRNA用量を滅菌条件下で調製した。siRNAアリコートを投与前に室温で少なくとも30分間解凍した。(各々のマウス当たりの)アリコート当たりの総量には、計算容量のさらに20%が含まれた。指定されたsiRNA用量を、眼1つ当たり、3μl容量で送達した。
麻酔:エキセジン(4ml/kg)を用いて第I群〜第VII群のラットに麻酔をかけた。
終了工程:研究終了時に、エキセジン(4ml/kg)によって動物に深く麻酔をかけた。その後、蠕動ポンプ標準レジメを用いて、ラットに新鮮な10%中性緩衝ホルマリンを皮質内灌流させた。
組織回収:全ての動物の視神経を含む左右の眼を除核し、穴を開け、ゆっくりと回転させながら10%中性緩衝ホルマリン中、室温でさらに1時間、後固定し、ショ糖勾配によって、4℃で一晩、段階的に凍結保護し、回転させながら4℃で一晩、最適切断温度(OCT)化合物中で凍結保護した後、OCT化合物中に包埋し、クライオスタットで切片化して、12μmのスライスにし、これを顕微鏡スライド(Superfrost/Plus)上に置いた。切片をDAPI(1μg/ml)で対比染色し、標本にした。
光学顕微鏡検査とデジタルイメージングを用いて、siRNAの送達を評価した。組織学検査によって、ある実験群内の全ての動物が、特定の細胞型/組織内で同じ蛍光シグナルを示すことが示された場合、組織断片が陽性であるとみなされた(すなわち、前眼房、網膜、および視神経送達でのCy3 DDIT4_1 siRNA導入が成功したとみなされた)。
結果:全ての凍結切片を光学顕微鏡検査(明視野、BF)および蛍光共焦点顕微鏡検査で解析した。蛍光シグナルを網膜色素上皮細胞および網膜神経節細胞で可視化した。特に、PBS中に処方された化合物は、投与の3時間後に眼組織中で最大分布に達し、6時間の時点で該組織から排出された。しかしながら、製剤A中に処方された化合物は、投与24時間後に眼組織に最大限分布した。
実施例4:カニクイザルにおける(PBS中に処方された)siRNAの眼内分布
本研究の目的は、カニクイザルの眼の表面への単回局所眼内投与後の、PBS中に処方されたsiRNAの組織分布を調べることであった。全ての組織を、必要に応じて、約1〜約2g試料または全体として、3つ1組で瞬間凍結させた。
RNA精製
凍結試料を液体窒素下で微小粉末になるまですり潰した。少量の粉末組織をRNA抽出に使用した。残りの組織は、さらに使用するまで−80℃で保存した。ポリARNAを、MicroPoly(A)Purist mRNA精製キット(#1919)を用いて各々の試料から抽出し、組織または細胞からポリ(A)RNA単離をするための製造元のプロトコルに従って処理した。RNAの最終的な収量およびスペクトル特性を以下の表C5にまとめる。
脾臓由来の1μgおよびリンパ節由来の0.7μgのポリA RNA調製物を、ランダムプライマーを用いるcDNA合成に使用した。Casp2遺伝子が両方のcDNA調製物から首尾よく増幅された。
結論:カニクイザルの眼の表面への単回局所眼内投与後の、PBS中に処方されたsiRNAは、神経網膜に達し、qPCR S&L法によって測定することができる。
実施例5:マウスの標的網膜組織への(TRIS中に処方された)siRNAの送達
様々なフルオロフォアで標識されたsiRNA分子の局所送達の検討
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS) 1M、pH8中に処方された20μgの様々な蛍光標識siRNAの投与1時間後の、マウスへの局所送達。
試験されたsiRNA:
Cy3−QM5;Cy3−DDIT4;Cy3.5−DDIT4;DDIT4_1 Dy−649/C6;FITC−CNL_1;3’Cy3−CNL_1;Cy3−Casp2_4 L−DNA;Cy3−AS−Casp2_4;TGASEII−FAM;HNOEL−FAM。(QM5は、p53を標的とするラット/マウスのsiRNAであり;CNLは、対照スクランブルsiRNAである)
例示的な化学修飾Casp2siRNA化合物は以下の通りであった:
1.センス:GCCAGAAUGUGGAACUC2pC2pU、17および18は、2’−5’−架橋である
アンチセンス:mAGmGAmGUmUCmCAmCAmUUmCUmGGmC−cy3
2.センス:GCCAGAAUGUGGAACUC;LdC;LdT 18および19は、L−DNAである
アンチセンス:mAGmGAmGUmUCmCAmCAmUUmCUmGGmC−cy3
3.センス:GCCAGAAUGUGGAACUC;LdC;U18は、L−DNA部分である
アンチセンス:mAGmGAmGUmUCmCAmCAmUUmCUmGGmC−cy3
LdC、LdTは、L−DNAヌクレオチドを指し、mA、mC、Mg、Muは、2’O−メトキシリボヌクレオチドを指す。
処方されたもの(処方化合物):以下のsiRNAからなる、1M Tris pH8.0中のsiRNA:QM5−Cy3#1、QM5−Cy3#10、DDIT4_1−Cy3、DDIT4_1Cy3.5、Redd14(DDIT4_1) Dy−649/C6、FITC−CNL_1RD/CNL_1FD、スクランブル3’Cy3CNL 1、Cy3−AS−CASP2_4−Struc−L−DNA−s(センスの3’にある2残基)−plus−alt AS、Cy3AS− CASP2_4−Struc2−5−s(センスの3’にある2残基)−plus−alt AS、TGASEII−FAM、HNOEL−FAM。
試験物質の説明:滅菌条件下で、対応量のsiRNAストックを凍結乾燥させ、対応量の1M Tris pH8に再懸濁した(表C7参照)。
供給された量:(Biospring,AGによって合成された)各々の被験siRNAについて1バイアル
保存条件:使用するまで凍結した。使用前に、試料を解凍し、室温に30分間維持した。
対照品
陽性対照−PBS中のDDIT4_1−Cy3、バッチ#:117821
試験物質の説明:滅菌条件下で、42.426mgのDDIT4_1−Cy3粉末(BioSpringを2.1mlの滅菌再蒸留水に溶解させて、透明な20mg/ml(1.5mM)溶液を得た。この溶液を、使用するまで−80℃で保存した。
ビヒクル−1M Tris pH8.0−Sigma(カタログ#T−1503)から外部調達する。121.1gのTRISベース(Sigma #T1503)を700mlのddH2Oに溶解させた。濃HClを用いて所望のpH8を得た。最終的に1L溶液となるように、DDWを添加した。
ビヒクル−PBS×10−Biological Industries(カタログ#02−023−5A;(10×PBSの場合) バッチ#:619113)から外部調達する
試験系
動物:
種:マウス;系統:RTP−801WT;CMF−608WT
供給源:Harlan Laboratories,Jerusalem,Israel。
年齢:8〜12週齢;体重範囲:17〜28g
性別:オス;群サイズ:1;動物の総数:14匹
動物管理:食餌:動物には市販の齧歯類用食餌を自由に与え、飲料水を自由に飲ませた。環境:(i)少なくとも5日の順化。(ii)動物は全て、研究期間中ずっと、環境制御された収容条件で、アクセスが制限された施設に閉じ込められ、承認された標準操作手順(SOP)に従って維持された。
実験デザイン
概要:本研究には、表C8に記載の14の実験群が含まれた。
点眼によってsiRNA送達された実験群1〜12、点眼によってビヒクル[TRIS 1M pH8処置対照]送達された第13群、および第14群(無処置対照)。以下のように、マウスに1回分のsiRNAを処置した:
−第1群〜第9群および第12群:用量レジメ:20μg/眼/3μl/siRNA、第10群:用量レジメ 5.81μg/眼/3μl/siRNA、第11群:用量レジメ 2.24μg/眼/3μl/siRNA投与経路:点眼(E.D.);
−第13群:ビヒクル(TRIS 1M pH8) 3μl/眼対照
−第14群:無処置対照
送達用のsiRNA用量を滅菌条件下で調製し、−20℃で保存した。siRNAアリコートを投与前に室温で少なくとも30分間解凍した。(各々のマウス当たりの)アリコート当たりの総量には、計算容量のさらに20%が含まれた。指定されたsiRNA用量を、眼1つ当たり、3.5μl(実験群1〜9および12)容量で送達した。指定されたsiRNA用量を、眼1つ当たり、3.2μl(実験群10および11)容量で送達した。
麻酔:以下のように、ケタミン/キシラジン混合液を用いてマウスに麻酔をかけた:ケタミン0.85ml+キシラジン0.15ml+食塩水0.9ml、混合溶液0.1ml/20g体重(BW)。
点眼送達:とがっていないピペットチップを用いて、3μl容量試料を各々の眼(角膜表面)にゆっくりと滴下し;麻酔誘発低体温を防ぐために、動物を暖かい環境に置き、意識を取り戻した後、そのケージに戻した。
計画的安楽死:研究デザイン(表C8、終了の時点)に従って、全ての群のマウスを屠殺した。
終了工程は頸椎脱臼により達成された。
組織回収:全ての動物の視神経を含む左右の眼を除核し、網膜を刃で横断的に解剖し、水晶体/硝子体を丁寧に取り出した。残った眼杯を4%PFA(PBS pH7.4中)で30分間固定した後、30%スクロースを4℃で3時間染み込ませた。氷冷したPBS pH7.4で5分間3回洗浄した。その後、これを最適切断温度(OCT)化合物中に包埋し、クライオスタットで縦方向に切片化して、4μmのスライスにし、これを顕微鏡スライド(Superfrost/Plus)上に置いた。切片をDAPI(1μg/ml)で対比染色し、標本にした。
全ての動物の全血液滴を、カバーガラスを用いてスライド上に塗抹し、カバーをかけた。その後、これをマニキュア液でのり付けした。
評価
光学顕微鏡検査とデジタルイメージングを用いて、siRNAの送達を評価した。組織学(顕微鏡)検査によって、前房または後房の特定の細胞または構造、および網膜内の明瞭な蛍光シグナルが示された場合にのみ、組織断片が陽性である(すなわち、siRNA導入/細胞内取込みがうまく起こった)とみなされた。バックグラウンドDAPI染色が組織構造を識別するのに役立った。組織学検査が群内で一貫している(細胞型または構造染色が両側性に同一である)、すなわち、組織学検査によって、同じ実験群の全ての細胞型/組織(前眼房、網膜、および視神経)で同じ蛍光シグナルが示された場合、送達が陽性であるとみなされた。
結果
図5A〜5B:p53遺伝子を標的とするQM5−siRNAの点眼投与の1時間後の、網膜の共焦点顕微鏡検査(倍率60倍)。網膜(網膜色素上皮細胞、網膜神経節細胞)内のsiRNAがCy3蛍光で示されている。
図6A〜6Bは、マウス網膜に取り込まれたCy3標識DDIT4 siRNAの代表的な画像である。
図6Bは、点眼による投与の1時間後のDDIT4_1 Cy3−siRNAの蓄積を示す。光受容体細胞の脈絡膜、外核層、RPE、および外節層は、Cy3染色を示す。
図7は、Dy−649/C6染色の使用によるRGC細胞での点眼による投与の1時間後のDDIT4_1 Dy−649/C6−siRNAの蓄積を示す。
図8A〜8Cは、様々な染色方法による網膜組織への対照siRNA FITC−CNL_1RD/CNL_1FDおよびスクランブル3’cy3−CNL_1送達を示す。図9A〜9Bは、マウス網膜組織への様々な構造のCASP2の送達を示す。
図10Aおよび10Bは、TGASEII−FAMおよびHNOEL−FAM送達を示す。
図11は、陽性対照群としてのPBS中のp53に対するsiRNAの網膜送達を示し、
図12Aおよび12Bは、無傷の動物においてまたはsiRNAを含まないEDを投与したときに、蛍光シグナルが網膜において得られないことを示す。
結論:網膜への送達における配列依存的な相違や、フルオロフォア依存的な相違も遺伝子依存的な相違も見られなかった。本研究により、眼構造:RGC、RPE、光受容体、脈絡膜へのCASP2、RTP801、TIGASEII、およびp53標的遺伝子に対するCy3コンジュゲートsiRNA化合物の効率的な送達が示された。
実施例6:インビボでのラットにおける標的網膜組織への(PBS中またはMC 2%中に処方された(製剤「A」))CASP2 siRNAの送達の定量
網膜へのsiRNAの送達用の様々な点眼製剤の検討。
本研究の目的は、様々な点眼(ED)製剤中での単回局所投与後1、3、6、および24時間の時点でのラット網膜におけるCASP2_4_S510 siRNA量の測定であった。
試験品
物質(未処方化合物):CASP2_4_S510(CASP2に対するsiRNA)
Agilent(製造元のカタログ# QPI−1007、バッチ#:Q02F08002N)により供給された
試験物質の説明:CASP2_4_S510:S−逆方向−無塩基5’−cap、L−DNA18/AS−AL。式I:
式I
SEN 5’ iB−GCCAGAAUGUGGAACUCCU 3’
AS 3’ cGgUcUuAcACcUuGaGgA 5’
に示すような、センス鎖(SEN)が、未修飾リボヌクレオチド(大文字)、位置18のL−デオキシリボヌクレオチド(太字、下線付き)、およびSEN鎖の5’末端に存在する逆方向デオキシ無塩基部分(iB)を含み;かつアンチセンス鎖(AS)が、未修飾リボヌクレオチド(大文字)、および位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19の2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を含む、2つの別々の鎖を有する19−merの化学修飾平滑末端二重鎖。
保存条件:−80℃
PBS中に処方されたsiRNA:PBS中の33.3mg/ml CASP2_4_S510(点眼用の溶液)
試験物質の説明:滅菌条件下で、300mgの乾燥CASP2_4_S510 siRNAを15mlの滅菌再蒸留水に溶解させて、透明な20mg/ml溶液を得た。この溶液を、使用するまで−80℃で保存した。その後、DDW中の20mg/mlストック溶液を、以下のように、PBS中、100μg/3μlの作業濃度にした。
6.5mgのCASP2_4_S510 siRNA:325μlの20mg/mlストックのCASP2_4(6.5mg)を0.15MのNaClおよびEtOHにより沈殿させ、組織培養用のラミナーの下で乾燥させた(滅菌条件)。siRNA溶液33.3mg/ml:6.5mg 乾燥siRNAを、195μlのPBS×1に溶解させた。調製量:4本のチューブに分注された6.5mg/195μl。
保存条件:新たに調製する
製剤A中に処方されたsiRNA:2%(w/v)メチルセルロースおよび1%(v/v)滅菌グリセロールおよび0.01%(w/v)EDTA溶液を含むパイロジェンを含まない水中の33.3mg/mlのCASP2_4_S510 siRNA溶液(点眼用の溶液)
試験物質の説明:滅菌条件下で、300mgの乾燥CASP2_4_S510 siRNAを15mlの滅菌再蒸留水に溶解させて、透明な20mg/ml溶液を得た。この溶液を、使用するまで−80℃で保存した。DDW中の20mg/mlストック溶液を、以下のように、製剤中、100μg/3μlの作業濃度にした。
6.5mgのCASP2_4_S510 siRNA:325μlの20mg/mlストックのCASP2_4(6.5mg)を0.15MのNaClおよびEtOHにより沈殿させ、組織培養用のラミナーの下で乾燥させた(滅菌条件)。
siRNA溶液33.3mg/ml:6.5mgの乾燥siRNAを195μlの製剤A溶液に溶解させた。
調製量:4本のチューブに分注された6.5mg/195μl。
保存条件:新たに調製する
対照品
メチルセルロース製剤(siRNAなし)−パイロジェンを含まない水中の2%メチルセルロースおよび1%v/v滅菌グリセロールおよび0.01%w/v EDTA溶液を以下のように調製した。
溶液A:0.4gのメチルセルロース25(ScienceLab.com,Cat# SLM2050)を最終容量10mlの高温沸騰水(80〜90℃)(Norbrook)に溶解させ、室温まで冷却し、1:1の比(最終濃度2%)で溶液Bに添加したもの。
溶液B:9.66ml WFI(Norbrook)中の332μlの60%グリセロール(Sigma,Cat# G6279)および2μl EDTA溶液 pH8(Sigma製,Cat# E9884)。
500μLの溶液Aを500μLの溶液Bと混合して、パイロジェンを含まない水中の2% メチルセルロースおよび1%v/v 滅菌グリセロールおよび0.01%w/v EDTA溶液(最終pHは約7.4であり、モル浸透圧濃度はヒト涙液膜と同様であった)を得た。
PBSは、Biological industries (Manufacturer カタログ#02−023−5A(10×PBSの場合);バッチ#619113)により供給された。
試験系
使用した動物:種:ラット;系統:成体、Sprague−Dawley(SD)
供給源:Harlan,Jerusalem Israel
年齢:8〜10週齢;体重範囲:180〜250g
性別:オス;群サイズ:n=6/3;動物の総数:54匹
動物管理:食餌:動物には市販の齧歯類用食餌を自由に与え、飲料水を自由に飲ませた。
環境:
(i)少なくとも5日の順化。
(ii)動物は全て、研究期間中ずっと、環境制御された収容条件で、アクセスが制限された施設に閉じ込められ、承認された標準操作手順(SOP)に従って維持された。動物には市販の齧歯類用食餌(Harlan Teklad 2018S Global 18%タンパク質齧歯類用食餌)と、濾過し、塩素消毒し、酸性化した水とを自由に与えた。
フィルタートップ付きのマイクロアイソレーターケージに、ラット1〜6匹/ケージでラットを入れた。ケージは、試験期間中、制御された環境−制御コンピュータでモニタリングされた、温度(20〜24℃)、相対湿度(30〜70%)、12時間明/12時間暗周期という条件の下で維持した。
実験デザイン
研究デザイン:眼製剤のED適用後のCASP2_4 siRNAの網膜濃度を、siRNA投与後の様々な時点で屠殺された研究群においてqPCRで測定した。各々の実験用siRNA処置群には、6匹のラットが含まれた。EDを表C9の研究デザインで詳細に記載したように両側性に適用した。
siRNA投与後の終了時点:終了設定は表C9の研究デザインに従って行なわれた。実験群の投与と屠殺は別々の日に行なわれた。
麻酔:実験の経過において、ED適用のためにおよび/または屠殺前に、動物にエキセジン(I.P.4ml/kg)で麻酔をかけた。
点眼送達:3μl試験容量の試験品またはビヒクルを、とがっていないピペットチップ(フィルターチップ 10μl 滅菌(短い))で、麻酔した動物の角膜表面に両側性に適用した。麻酔誘発低体温を防ぐために、動物を暖かい環境に置き、意識を取り戻した後、そのケージに戻した(実験群7および8)。全ての研究群の動物の屠殺は研究デザインに従うものであった。研究デザインに従って組織を回収した。
計画的安楽死:研究デザイン(表C9、終了)に従って、全ての動物に深く麻酔をかけ、安楽死させた。
灌流設定:ラットに経心的にPBS(2〜3分後、20〜50ml/分)を灌流させた。
組織回収:灌流後、両眼(左右)を除核し、氷上で保存した。顕微鏡を用いて、これらの眼を解剖し、場合により、試料等級分け尺度に従って、肉眼的病理を等級分けした。角膜を縁に沿って切断して解剖し、水晶体を丁寧に取り出し、網膜と硝子体を強膜から慎重に切り離した。網膜と硝子体(液)(網膜:「神経網膜」+網膜色素上皮+脈絡膜を含む)の全体を適切にマーキングされた2本の別々の適当な試験チューブに回収した。解剖された網膜を(各々の網膜を新鮮なPBSを含む別々の試験チューブに入れて)大量のPBS中で洗浄し、余分な液体をキムワイプ(登録商標)で除去し、網膜を液体窒素で瞬間凍結させた。網膜と硝子体の試料をRNA抽出にかけた。
評価
RNA抽出:
網膜:RNAを、二重抽出により、各々の網膜試料から(左右)1つずつ抽出した。RNAをcDNA調製とqPCR解析に移した。
硝子体:硝子体由来のCasp2_4 siRNA検出用の材料を、以下のプロトコルを用いて得た。
ラット硝子体は各々、約10μlであった。500μlの試薬A EZ−RNAII(Biological Industries Cat no.20−410−100)を各々の硝子体に添加した。試料をホモジナイズし、10μgのtRNA(10mg/mlストックから1μl)を添加した。試料を室温で5分間保存した。その後、EZ−RNAII B:400μlとEZ−RNAII C:90μlを添加し、よく混合した。試料を室温で10分間保存した後、4℃で15分間、12000gで遠心分離した。
上部相を新鮮なチューブに移し、そこに、イソプロパノール:500μlとリニアアクリルアミド:5μlを添加した。試料を−20℃で一晩保存し、4℃で20分間、12000gで遠心分離し、75%エタノールで2回洗浄した。ペレットを15μlのH2Oに溶解させた。
siRNA定量:網膜および硝子体液中のsiRNAの量(siRNA定量は硝子体ごとに行なった)をqPCRによるsiRNA定量で調べた。qPCRは、Quarkの標準操作手順に従って行なった。CASP2_4 siRNAと参照遺伝子の発現を検証した。結果は表C10にまとめている。
結論:本研究により、投与の1および3時間後の、siRNAの網膜への効率的な送達が示された。qPCR解析により、製剤A中で100μgのsiRNAを適用した後、網膜で、平均して、1時間後に11fMol/μgのトータルRNA、および3時間後に2fMol/μgのsiRNAが得られたことが示された。PBS中で同じ濃度を投与した場合、1時間後に、6fmol/μgの量のsiRNAが得られ、3時間後に8fmol/μgの総RNAが得られた。
実施例7:ラットの標的網膜組織における非侵襲的に投与された(様々な製剤中に処方された)siRNA化合物の定量
インビボでのsiRNAの網膜への非侵襲的送達用の様々な点眼製剤の検討
本研究の目的は、点眼薬(ED)として投与するために調製された様々なsiRNA製剤の単回局所適用の3時間後の正常ラット網膜におけるCASP2_4_S510 siRNA量の評価であった。
試験品
物質(未処方化合物) Agilent(製造元のカタログ# QPI−1007、バッチ#:Q02F08002N)により供給されたCASP2_4_S510(CASP2に対するsiRNA)
試験物質の説明:CASP2_4_S510:S−逆方向−無塩基5’−cap、L−DNA18/AS−AL。5’−capとしての逆方向無塩基、センス鎖の18番目の位置のL−DNA、およびアンチセンス鎖上の位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19における交互の2’−OMeを有する19−merの安定化された二本鎖RNA。
保存条件:−80℃
PBS中に処方されたsiRNA PBS中の33.3mg/ml CASP2_4_S510(点眼用の溶液)
試験物質の説明:滅菌条件下で、300mgの乾燥CASP2_4_S510 siRNAを15mlの滅菌再蒸留水に溶解させて、透明な20mg/ml溶液を得た。この溶液を、使用するまで−80℃で保存した。その後、再蒸留水中の20mg/mlストック溶液を、以下のように、PBS中、100μg/3μlの作業濃度にした。
1.7mg CASP2_4_S510 siRNA:85μlの20mg/mlストックのCASP2_4(1.7mg)を0.15MのNaClおよびEtOHにより沈殿させ、組織培養用のラミナーの下で乾燥させた(滅菌条件)。
siRNA溶液33.3mg/ml:1.7mgの乾燥siRNAをPBS×1に溶解させて、51μlを得た。
調製量:PBS 51μl中1.7mg 1チューブ
保存条件:新たに調製する
市販の潤滑溶液シスタン(登録商標)中に処方されたsiRNA:シスタン中の33.3mg/ml CASP2_4_S510(点眼用の溶液)−第II群。Alcone Inc.から購入;バッチ#:ロット165228F。
試験物質の説明:滅菌条件下で、300mgのCASP2_4_S510粉末(Aligent,バッチ#Q02F08002N)を15mlの滅菌再蒸留水に溶解させて、透明な20mg/ml溶液を得た。この溶液を、使用するまで−80℃で保存した。その後、再蒸留水中の20mg/mlストック溶液を、以下のように、製剤中、100μg/3μlの作業濃度にした。
1.7mg CASP2_4_S510 siRNA:85μlの20mg/mlストックのCASP2_4_S510(1.7mg)を0.15MのNaClおよびEtOHにより沈殿させ、組織培養用のラミナーの下で乾燥させた(滅菌条件)。
siRNA溶液33.3mg/ml:1.7mgの乾燥siRNAを51μLの市販の潤滑溶液(すなわち、シスタン(登録商標))に溶解させた。
調製量:シスタン(登録商標)51μl中1.7mgのsiRNA 1バイアル
グリセロール+EDTA溶液中およびメチルセルロース(MC)溶液中に処方されたsiRNA:グリセロール+EDTA製剤中、および0.5%、2%、または3%(w/v)メチルセルロースおよび1%(v/v)滅菌グリセロールおよび0.01%(w/v)EDTA溶液を含むパイロジェンを含まない水中の、33.3mg/mlのCASP2_4_S510 siRNA溶液−第III群〜第VI群
試験物質の説明:滅菌条件下で、300mgのCASP2_4_S510粉末(Aligent,バッチ#Q02F08002N)を15mlの滅菌再蒸留水に溶解させて、透明な20mg/ml溶液を得た。この溶液を、使用するまで−80℃で保存した。その後、再蒸留水中の20mg/mlストック溶液を、以下のように、製剤中、100μg/3μlの作業濃度にした。
7バイアルの1.7mg CASP2_4_S510 siRNA:85μlの20mg/mlストックのCASP2_4_S510(1.7mg)を0.15MのNaClおよびEtOHにより沈殿させ、組織培養用のラミナーの下で乾燥させた(滅菌条件)。
第III群:0.5%MC製剤:溶液Aと溶液Bの1:7混合物[12.5μLの溶液Aを50μLの溶液Bおよび37.5μlのWFIと混合して、パイロジェンを含まない水中の0.5%メチルセルロースおよび1%v/v滅菌グリセロールおよび0.01%w/v EDTA溶液を得た(最終pHは約7.4であり、モル浸透圧濃度はヒト涙液膜と同様であった)]。
0.5%MC製剤中に処方されたsiRNA 33.3mg/ml:1.7mgの乾燥siRNAを、記載した通りに調製した0.5%MC製剤に溶解させて、0.5%MC製剤中51μLの処方されたsiRNA溶液を得た。
第IV群:1%MC製剤:溶液Aと溶液Bの1:3混合物[25μLの溶液Aを50μLの溶液Bおよび25μlのWFIと混合して、パイロジェンを含まない水中の1%メチルセルロースおよび1%v/v滅菌グリセロールおよび0.01%w/v EDTA溶液を得た(最終pHは約7.4であり、モル浸透圧濃度はヒト涙液膜と同様であった)]。
1%MC製剤中に処方されたsiRNA溶液33.3mg/ml:1.7mgの乾燥siRNAを、記載した通りに調製した1%MC製剤に溶解させて、1%MC製剤中51μLの処方されたsiRNA溶液を得た。
第V群:2%MC製剤:溶液Aと溶液Bの1:1混合物[50μLの溶液Aを50μLの溶液Bと混合して、パイロジェンを含まない水中の1%メチルセルロースおよび1%v/v滅菌グリセロールおよび0.01%w/v EDTA溶液を得た(最終pHは約7.4であり、モル浸透圧濃度はヒト涙液膜と同様であった)]。
2%MC製剤中に処方されたsiRNA溶液33.3mg/ml:1.7mgの乾燥siRNAを、記載した通りに調製した2%MC製剤に溶解させて、2%MC製剤中51μLの処方されたsiRNA溶液を得た。
第VI群:3%MC製剤:溶液Aと溶液Cの1:1混合物[50μLの溶液Aを50μLの溶液Cと混合して、パイロジェンを含まない水中の3%メチルセルロースおよび1%v/v滅菌グリセロールおよび0.01%w/v EDTA溶液を得た(最終pHは約7.4であり、モル浸透圧濃度はヒト涙液膜と同様であった)]。
3%MC製剤中に処方されたsiRNA溶液 33.3mg/ml:1.7mgの乾燥siRNAを、記載した通りに調製した33%MC製剤に溶解させて、4%MC製剤中51μLの処方されたsiRNA溶液を得た。
第VII群:グリセロール+EDTA製剤:50μLのWFI(Norbrook)を50μLの溶液Bと混合して、パイロジェンを含まない水中の1%v/v滅菌グリセロールおよび0.01%w/v EDTA溶液を得た。
グリセロール+EDTA製剤中に処方されたsiRNA溶液33.3mg/ml:1.7mgの乾燥siRNAを、記載した通りに調製したグリセロール+EDTA製剤に溶解させて、グリセロール+EDTA製剤中51μLの処方されたsiRNA溶液を得た。
調製量:以下の通り、7バイアル:
PBS製剤51μL中1.7mgのsiRNA 1バイアル
シスタン(登録商標)製剤51μL中1.7mgのsiRNA 1バイアル
0.5%MC製剤51μL中1.7mgのsiRNA 1バイアル
1%MC製剤51μL中1.7mgのsiRNA 1バイアル
2%MC製剤51μL中1.7mgのsiRNA 1バイアル
3%MC製剤51μL中1.7mgのsiRNA 1バイアル
グリセロール+EDTA製剤51μL中1.7mgのsiRNA 1バイアル
保存条件:新たに調製する
対照品
1.PBS−Biological industries(製造元カタログ#02−023−5A(10×PBSの場合);バッチ#619113)により供給された。
2.シスタン(登録商標)−市販の点眼溶液;Alconにより供給;バッチ#:ロット165228F;供給量:15ml;保存条件:RT;有効期限:02/2011。
製剤溶液A−パイロジェンを含まない水中のメチルセルロース溶液
溶液A)0.4gのメチルセルロース25(ScienceLab.com,Cat# SLM2050)を最終容量10mlの高温沸騰水(80〜90℃)(Norbrook)に溶解させ、室温まで冷却したもの。
製剤溶液B−パイロジェンを含まない水中の滅菌グリセロールおよびEDTA溶液
溶液B)9.666mlのWFI(Norbrook)中の332μlの60%グリセロール(Sigma,Cat# G6279)および2μlのEDTA溶液 pH8(Sigma製,Cat# E9884)。
製剤溶液C−パイロジェンを含まない水中の濃縮メチルセルロース溶液
溶液C)0.6gのメチルセルロース25(ScienceLab.com,Cat# SLM2050)を最終容量10mlの高温沸騰水(80〜90℃)(Norbrook)に溶解させ、室温まで冷却したもの。
上記のメチルセルロース製剤中のsiRNA化合物の安定性試験:
Casp2_4 Q02F08002N siRNAの安定性を、以下のプロトコルに従って、メチルセルロース製剤中で試験した。
siRNAを、最終濃度7μm siRNAとなるように、メチルセルロースを含む様々な製剤に希釈した。0%、0.5%、1%、2%、および3%MC製剤を室温でインキュベートした。さらに、3%MC製剤を、ヌクレアーゼ阻害剤ありとヌクレアーゼ阻害剤なしで、37℃でもインキュベートした。
各々の溶液の5μLアリコートを、インキュベーション後、以下の時点:0分、10分、0.5時間、1時間、1.5時間、3時間、6時間で、15μLの10×TBE−ローディング緩衝液に移した。その後、この溶液を液体窒素中で凍結させ、−20℃で保存した。
各試料4μLを非変性20%ポリアクリルアミドゲルに充填し、80Vで2.5時間電気泳動を行なった。
siRNAを可視化するために、ゲルをエチジウムブロマイド溶液(1.0μg/μL)で染色した。
分解されていないsiRNAのゲル移動についての陽性対照として、PBS中5μLの7μM試験済みsiRNA溶液を15μLの10×TBE−ローディング緩衝液に移し、ゲルに充填した。その後、試料を液体窒素中で凍結させ、−20℃で保存した。
分解された一本鎖(ss)siRNAの移動パターンの参照として、無関係な一本鎖siRNAを調製した。
結果:Casp2_4 siRNA化合物は全ての製剤中で安定であった。
インビボ研究:
試験系:
使用した動物:ラット;系統:成体、Sprague−Dawley;修飾:SD
供給源:Harlan,Jerusalem Israel
年齢:8〜10週齢;体重範囲:220〜270g
性別:オス;群サイズ:n=6;動物の総数:54匹
動物管理:食餌:動物には市販の齧歯類用食餌を自由に与え、飲料水を自由に飲ませた。
環境:
(i)少なくとも5日の順化。
(ii)動物は全て、研究期間中ずっと、環境制御された収容条件で、アクセスが制限された施設に閉じ込められ、承認された標準操作手順(SOP)に従って維持された。動物には市販の齧歯類用食餌(Harlan Teklad 2018S Global 18%タンパク質齧歯類用食餌)と、濾過し、塩素消毒し、酸性化した水とを自由に与えた。
フィルタートップ付きのマイクロアイソレーターケージに、ラット1〜6匹/ケージでラットを入れた。ケージは、試験期間中、制御された環境−制御コンピュータでモニタリングされた、温度(20〜24℃)、相対湿度(30〜70%)、12時間明/12時間暗周期という条件の下で維持した。
実験デザイン
実験設定には、9つの実験群(群1つ当たり6匹のラット)が含まれた。EDを両側性に適用した。様々な製剤を用いた(研究デザイン 表C11)。siRNA投与後の終了時点(3時間):終了設定は、表C11の研究デザインに従って行なわれた。CASP2_4 siRNAの網膜濃度をqPCRで測定した。
*グリセロール+EDTA製剤(MCを含まない製剤)=パイロジェンを含まない水中の1%v/v滅菌グリセロールおよび0.01%w/v EDTA溶液。
麻酔:実験の経過において、全ての動物にエキセジン(I.P.4ml/kg)で麻酔をかけた。
点眼送達 3μl試験容量の試験品またはビヒクルを、とがっていないピペットチップ(フィルターチップ 10μl 滅菌(短い))で、麻酔した動物の角膜表面に両側性に適用した。麻酔誘発低体温を防ぐために、動物を暖かい環境に置いた。全ての研究群の動物の屠殺は研究デザインに従うものであった(時点 3時間)。研究デザインに従って組織を回収した。
計画的安楽死:研究デザイン(表C11、終了)に従って、全ての動物に深く麻酔をかけ、安楽死させた。
灌流設定:ラットに経心的にPBS(2〜3分後、20〜50rpm/分)を灌流させた。
組織回収:灌流後、両眼(左右)をPBSで洗浄し、除核し、氷上で保存した。双眼顕微鏡を用いて、これらの眼を解剖し、場合により、試料等級分け尺度に従って、肉眼的病理を等級分けした。角膜を縁に沿って切断して解剖し、水晶体を丁寧に取り出し、網膜と硝子体を強膜から慎重に切り離した。網膜と硝子体(液)の全体を、適切にマーキングされた2本の別々の適当な試験チューブに回収した。解剖された網膜を(各々の網膜を新鮮なPBSを含む別々の試験チューブに入れて)大量のPBS中で洗浄し、余分な液体をキムワイプで除去し、網膜を液体窒素で瞬間凍結させた。網膜と硝子体の試料をRNA抽出にかけた。
評価:
RNA抽出:網膜:RNAを、二重抽出により、各々の網膜試料から(左右)1つずつ抽出した。RNAをcDNA調製とqPCR解析に移した。
硝子体:硝子体由来のCasp2_4_S510 siRNA検出用の材料を、以下のプロトコルを用いて得た:ラット硝子体は各々、約10μlであった。500μlの試薬A EZ−RNAII(Biological Industries Cat no.20−410−100)を各々の硝子体に添加した。試料をホモジナイズし、10μgのtRNA(10mg/mlストックから1μl)を添加した。試料を室温で5分間保存した。その後、EZ−RNAII B:400μlとEZ−RNAII C:90μlを添加し、よく混合した。試料を室温で10分間保存した後、4℃で15分間、12000gで遠心分離した。
上部相を新鮮なチューブに移し、そこに、イソプロパノール:500μlとリニアアクリルアミド:5μlを添加した。試料を−20℃で一晩保存し、4℃で20分間、12000gで遠心分離し、75%エタノールで2回洗浄した。ペレットを15μlのDDWに溶解させた。
siRNA定量:網膜および硝子体液中のsiRNAの量(siRNA定量は硝子体ごとに行なった)を、Quarkの標準操作手順に従って、qPCR siRNAで調べた。
結果
本研究により、以下の量のsiRNAが、様々な製剤とともにインビボで非侵襲的に投与されたsiRNAの適用の3時間後に、ラット網膜で検出されることが示された。
結論:CASP2 siRNAで処置された群は全て、標的網膜組織中で正のsiRNA量(>4fmole)を示した。製剤群間に有意差は見られなかった(P値=0.8425)。
非侵襲的に投与されたsiRNAは標的眼組織でのアポトーシスと関連する標的遺伝子のインビボノックダウン(KD)を誘導する
実施例8:ラット網膜での点眼による非侵襲的投与のために調製されたp53に対するsiRNAのインビボノックダウン活性の測定(MC2%中に処方されたsiRNA化合物(製剤「A」)
目的
本研究の目的は、ラット神経網膜のp53 mRNAを標的とする非侵襲的に送達されるsiRNA化合物のノックダウン活性を測定することであった。siRNA化合物を点眼による非侵襲的投与用に処方した。ノックダウン活性は、ELISA法を用いたタンパク質レベル測定で評価した。
試験品
a.物質(未処方siRNA化合物):QM5(マウス/ラットp53に対するsiRNA)
b.非侵襲的(点眼)送達用の処方されたsiRNA化合物(表C13の第2および5群):2%(w/v)メチルセルロースおよび1%(v/v)グリセロールおよび0.01%(w/v)EDTA溶液を含むパイロジェンを含まない水中の100μg/3μlのQM5 siRNA溶液
c.硝子体内注射用の処方されたsiRNA化合物(表C13の第1および4群):PBS 140μl中の280μgのQM5 siRNA
d.非侵襲的(点眼)送達用の処方されたビヒクル溶液(表C13第3および6群):パイロジェンを含まない水中の2%メチルセルロースおよび1%v/v滅菌グリセロール&0.01%w/v EDTA溶液。
試験系:
成体オス、Sprague−Dawley(SD)ラット Harlan,Jerusalem Israel,6〜8週齢、各々160〜180g。
実験デザイン
研究デザイン:第1群〜第6群の各々の動物で片側性軸索切断(左眼、OS)を行なった。
第2、3、5および6:試験化合物(処方されたビヒクル3μl中100μgの試験品−第2群&第5群)または処方されたビヒクルのみ(第3群および第6群)を、0日目(軸索切断後すぐ)から毎日点眼薬として適用した。これらの実験群を表C13に従って屠殺した。第7群の左右の眼試料は無傷の正常対照としての役割を果たした。
第1群および第4群:軸索切断の3分後(0日目)、PBSビヒクル10μl中20μgのsiRNA化合物をマイクロインジェクションで硝子体に適用した。硝子体へのマイクロインジェクションは、インスリン用マイクロインジェクター(0.3ml)を用いて、強膜に対して垂直に行なった。動物は表C13に従って屠殺した。
結論:これらの研究により、ラット神経網膜のp53 mRNAを標的とする非侵襲的に送達されたsiRNA化合物は、p53タンパク質のノックダウンを誘導することが示された。
siRNA化合物は眼神経細胞損傷の動物モデルにおいてインビボで眼神経保護を誘導する
実施例9:IVT注射後のOCNモデルにおけるカスパーゼ2を標的とするsiRNA化合物による眼神経保護誘導の評価
研究目的:硝子体内注射後のOCNモデルにおけるカスパーゼ2を標的とするsiRNAの眼神経保護効力を評価すること。
方法
RGCの逆行性標識
Fluorogoldトレーサーは、RGC軸索に沿って(脳から眼へ)逆行性に輸送されて、全てのRGCを完全かつ特異的に標識する。この研究のために、逆行性トレーサーFluoroGold(2%,Fluorochrome,Englewood,CO)を上丘に適用することによって、RGCを標識した。簡潔には、ブレグマから吻側に6mm、両半球の正中線から外側に1.2mmの座標上で頭蓋骨にドリルで孔を開けた。Hamiltonシリンジを用いて、3μlのFluoroGoldを、骨表面下3.8mm、4mm、および4.2mmの位置で、3つの深さの各々において1μl/分の速度で、上丘に注射した。次に、針をゆっくりと抜き、皮膚を縫合した。成体ラットでは、この手順後に全てのRGCの完全な標識を得るのに要した時間は、約1週間であった。このため、ONCは、RGCの逆行性標識の1週間後に行なわれた。
視神経挫滅。麻酔した成体Wistarラットの眼窩視神経(ON)を眼窩上からのアプローチによって露出させ、髄膜を切り取り、視神経(ON)内の全ての軸索を、目盛り付き鉗子で10秒間押し潰すことによって篩板から2mmの位置で切断した。
硝子体内(IVT)注射。20μg(PBS 10μl中)の1または2用量の試験もしくは対照siRNAまたはPBSビヒクル10μlを、ガラスマイクロピペットを用いて、神経頭の前方2mmの位置で、強膜と垂直に硝子体に微量注射した。IVT投与は、対照としておよびまたは標的遺伝子の最初の確認のために示される。
RGC生存の定量。屠殺時に、4%パラホルムアルデヒドを実験動物に経心的に灌流させた。視神経の付いた眼を除核し、角膜を刃で解剖し、水晶体/硝子体を丁寧に取り出した。両方の網膜を摘出し、さらに30分間固定し、神経節細胞層の検査のために硝子体側を上にしてスライドガラス上に伸展標本を作成した。RGCをUVフィルター(365/420nm)付きの蛍光顕微鏡下で調べた。逆行性に標識されたRGCの数は、2人の異なる、独立かつ「何も知らされていない」研究者が、16カ所の異なる部位(網膜半径の1/6、1/2、および5/6という3つの異なる離心率で網膜四分円につき4カ所)でそれらを計数することによって測定された。死にかけているRGCの貪食後にFluoroGoldを取り込んだ可能性のあるミクログリアは、その特徴的形態によって区別され、定量的解析から除外された。
第1部
試験品:CASP2_4 siRNA−両方の鎖上の2’O−メチル化により化学修飾された二本鎖19−merオリゴヌクレオチド。他の化合物には、センス鎖の3’末端においてL−DNAでまたは3’末端において2’5’架橋で化学修飾されたsiRNAが含まれた。複数の種のカスパーゼ2遺伝子を標的とする。
対照物質:PBS
デザイン:まず、逆行性トレーサーFluoroGoldを上丘に適用することにより、網膜神経節細胞(RGC)を選択的に標識した。1週間後、動物に視神経挫滅損傷(OCN)を受けさせた。生存RGCの定量を、伸展標本化された網膜上のFluoroGold標識RGCを計数することにより、ONCの7および30日後に行なった。表C18に、処置群を示す。
結果:20μgのCasp2_4 siRNAで処置され、視神経挫滅を受けた眼の生存RGCの平均数は、損傷後7日で2040±35細胞/mm
2、および損傷後30日で298±25細胞/mm
2であった。これらの数は、PBSで処置され、神経挫滅を受けた眼の平均RGC数(7日で941±27細胞/mm
2、および30日で41±7細胞/mm
2)よりも有意に多かった。手術していない対照眼では、RGCの平均数は、2253±104細胞/mm
2であったが、これは、文献で報告されたRGCの平均数と同程度である。表C19に、この研究の結果を示す。
データは全て平均±標準偏差として示されている。値は、一元配置分散分析(ANOVA)を用いて比較し、P<0.02で有意差とみなした。
結論:同じように麻酔された対照群の動物のRGC数がCasp2_4 siRNA処置群の動物よりも有意に少なかったので、RGCの生存の増加は、麻酔の神経保護効果によるものではなく(ケタミンはN−メチル−D−アスパラギン酸受容体のアンタゴニストであり、キシラジンはα2−アドレナリン受容体アゴニストである)、カスパーゼ2遺伝子を標的とするsiRNA化合物での処置による、ONC損傷後のアポトーシス促進性カスパーゼ2の活性化と上方調節のサイレンシングの神経保護効果によるものであった。
第2部
試験品:CASP2_4L siRNA−アンチセンス鎖上の2’O−メチル化およびセンス鎖上のL−DNAにより化学修飾された二本鎖19−merオリゴヌクレオチド。複数の種のカスパーゼ2遺伝子を標的とする。
対象物質:
−PBS
−GFPを標的とするsiRNA−両方の鎖上の2’O−メチル化により安定化された二本鎖21−merオリゴヌクレオチド。
−CNL−哺乳動物の既知のどの転写物ともマッチしないsiRNA;両方の鎖上の2’O−メチル化により化学修飾された二本鎖19−merオリゴヌクレオチド。
デザイン。まず、逆行性トレーサーFluoroGoldを上丘に適用することにより、網膜神経節細胞(RGC)を選択的に標識した。1週間後、動物に視神経挫滅損傷(OCN)を受けさせた。生存RGCの定量を、伸展標本化した網膜上のFluoroGold標識RGCを計数することにより、ONCの7日後に行なった。ONCの時点で試験品または対照品を注射した。点眼で投与されたsiRNAの活性および効力を試験するために、同様の実験を行なった(次の実施例参照)。表C20に処置群を示す。
結果:20μgのCasp2_4 siRNAで処置され、視神経挫滅を受けた眼の生存RGCの平均数は、損傷後7日で2085±40細胞/mm
2であった。これらの数は、PBSまたはGFP siRNAまたはCNL_1 siRNAのいずれかで処置され、神経挫滅を受けた眼の平均RGC数(7日で、それぞれ、901±50細胞/mm
2、922±38細胞/mm
2、898±42細胞/mm
2)よりも有意に多かった。手術していない対照眼では、RGCの平均数は、2196±110細胞/mm
2であったが、これは、文献で報告されたRGCの平均数と同程度である。表C21に結果を示す。データは全て平均±標準偏差として示されている。値は、一元配置分散分析(ANOVA)を用いて比較し、P<0.01で有意差とみなした。
結論:RGCの生存の増加は、カスパーゼ2遺伝子を標的とするsiRNAでの処置による、ONC損傷後のアポトーシス促進性カスパーゼ2の活性化と上方調節のサイレンシングの神経保護効果によるものであった。異なる構造修飾/モチーフを有するCasp2_4 siRNA分子は、RGC生存範囲に対する同様の神経保護効果を示す。
実施例10:IOPモデルにおけるカスパーゼ2を標的とするsiRNA化合物の眼神経保護効力の評価
本研究の目的は、前臨床ラット緑内障IOPモデルにおける20μgのCASP2_4化合物または陰性対照GFP siRNAの単回注射の神経保護効果を立証することであった。
研究概要
全ての研究群の動物で、両方の上丘に適用される蛍光トレーサーDiI(1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン)を用いて、RGCを逆行性標識した。1週間後、IOPは、第2群〜第5群の動物の左眼で片側性に増加した。IOPを、手術した(左の)眼および対側の(右の)眼において1日おきに2週間モニタリングした。高張食塩水注射の2週間後、ビヒクル(PBS)またはsiRNA(PBS中20μg、Casp2を標的とするsiRNAもしくは非哺乳動物遺伝子の緑色蛍光タンパク質を標的とする陰性対照siRNAのいずれか)を、左の(手術した)眼への硝子体内(IVT)注射により投与した。対側の手術していない眼は、IVT注射を受けなかった。さらに、siRNA注射の時点でのRGC損失の程度を評価するために、高張食塩水注射の2週間後、第2群の動物を屠殺し、DiI標識されたRGCを、蛍光顕微鏡検査下、左網膜の伸展標本で計数した。IVT注射を受けた全ての群について、手術した眼におけるその上昇状態を確認するために、実験の第3週目にIOPを1回測定した。IOP上昇後3週で、または試験品および対照品の注射後1週で、動物を屠殺し、DiI標識されたRGCを、蛍光顕微鏡検査下、左網膜の伸展標本で計数した。右網膜は、標識の質の内部対照の役割を果たした。正常なRGC密度の参照を提供するために、実験開始時にRGCを逆行性標識した別の無処置ラット群を無傷対照として用いた。この群の4匹のラットを高眼圧症発症後2週で(第2群と一緒に)屠殺し、残りの9匹のラットを3週で(第3群〜第5群と一緒に)屠殺した。この実験デザインを下記の表C22に示す。
材料および機器
物質(未処方化合物) CASP2_4_S510(CASP2_4;CASP2SIRNA;カスパーゼ2 mRNAに対するsiRNA)
Agilentにより供給された
試験物質の説明:式Iに示すような、センス鎖(SEN)が、未修飾リボヌクレオチド(大文字)、位置18のL−デオキシリボヌクレオチド(太字、下線付き)、およびSEN鎖の5’末端に存在する逆方向デオキシ無塩基部分(iB)を含み;かつアンチセンス鎖(AS)が、未修飾リボヌクレオチド(大文字)、および位置2、4、6、8、11、13、15、17、および19の2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を含む、2つの別々の鎖を有する19−merの化学修飾平滑末端二重鎖。
供給量:300mg
保存条件:−80℃
対照物質(未処方化合物) GFP_5_S763(GFP mRNAに対するsiRNA)
外注(製造業者名):Agilent
製造元のカタログ# N/A
供給量:220.8150mg
保存条件:−80℃;有効期限:日付なし
試験/対照品(処方物) CASP2_4/GFP_5 20μg/5μLのPBS
0.5mgを125μl中に希釈して、4μg/μlのストック溶液を得た。その後、これらをチューブ1本当たり5μlになるように分注し、−80℃で保存した。
ビヒクル−PBS。
マルチセルリン酸緩衝食塩水、溶液1倍、カルシウム不含、マグネシウム不含(CAT.No:311−010−EL)。
Zeiss Axioskop 2 Plus顕微鏡(Carl Zeiss Canada,Kirkland,QC)を用いて蛍光顕微鏡検査を行ない、CCDカメラ(Retiga,Qimaging)で画像を取得し、Northern Eclipse画像解析ソフトウェア(Empix Imaging,Mississauga,ON)で処理した。顕微鏡写真を倍率25倍で撮影した。
実験手順
ケタミン(100mg/ml)、キシラジン(20mg/ml)、およびアセプロマジン(10mg/ml)からなる1mL/Kgの標準ラットカクテルの腹腔内注射によって全身麻酔を受けた、繁殖期間を終えた10〜12カ月齢(300〜400g)の成体オスBrown Norwayラットで手術を行なった。
高眼圧症手術:房水流出路の遮断を引き起こす、強膜上静脈への高張食塩水の注射を伴う、Morrisonモデルを用いて、片側性でかつ慢性的なIOP上昇を誘導した。この手順によって、眼圧の漸増とRGSの段階的な死がもたらされる。この研究における動物は全て、1回分の食塩水静脈注射しか受けなかった。この手順用に選択された眼を、眼球赤道に当てたプラスチック製リングを用いて、食塩水の注射を縁叢に限定するように合わせた。微小針(直径30〜50μm)を用いて、50μLの滅菌1.85MのNaCl溶液を1つの強膜上静脈から注射した。このプラスチック製リングは、他の強膜上静脈を一時的に遮断し、食塩水溶液をシュレム管に押し込んで、孤立性の瘢痕を生じさせた。IOP日内変動を安定化するために、動物は、一定の弱い蛍光灯(40〜100ルクス)が点いた部屋に置かれた(8)。
眼圧(IOP)の測定:緑内障眼および正常(対側)眼のIOPを、校正された眼圧計(TonoPen XL,Medotronic Solan,Jacksonville,FL)を用いて覚醒動物で測定した。IOPを、高眼圧症手術後の最初の2週間1日おきに;および高眼圧症手術後の2週目と3週目の間に少なくとも1度測定した。高いIOPの条件における眼内注射の後、眼が脆くなり始めるので、IOP測定の回数を制限した。それは、信頼性のある測定値を得るためには、角膜にさらなる圧力をかけることが必要とされるからである。圧力上昇の発症以降、眼1つ当たりの平均IOP(mmHg±標準誤差)を全てのIOP測定値の平均とみなした。緑内障眼または正常対側眼という、各々の個々の眼における最大IOP測定値をピークIOPと定義し、この値を用いて、各々の群についての平均ピークIOPを推定した。
眼圧(IOP)の算出:圧力上昇の発症以降、眼1つ当たりの平均IOP(mmHg±標準誤差)を全てのIOP測定値の平均とみなした。緑内障眼または正常対側眼という、各々の個々の眼における最大IOP測定値をピークIOPと定義し、この値を用いて、各々の群についての平均ピークIOPを推定した。正の積分IOPは、緑内障眼におけるIOP曲線下面積から、高眼圧症手術から安楽死へと至るまでの同類の正常眼のIOP曲線下面積を引いたものとして算出した。積分IOPは、実験全体にわたる合計の累積IOP曝露に相当する。
研究デザイン:
緑内障誘導の1週間前に、両方の上丘に適用される蛍光トレーサーDiIを用いて、RGCを逆行性に標識した。
1週間後、強膜上静脈への高張食塩水溶液の注射によって片側性のIOP上昇を誘導した。この手順を高眼圧症手術と呼んだ。
第1の実験では、効力研究の前に、高眼圧症手術後2および3週での「無注射」群(ラット4匹/群、合計=8匹のラット)のRGC損失の状態を評価した。
高眼圧症手術からちょうど2週間後、各々のsiRNAの単回硝子体内注射を行なった。
高眼圧症手術からちょうど3週間後、RGC生存を解析するために、動物を安楽死させ、網膜を調製した。
生存RGCの密度を12カ所の標準的な網膜部位で定量した。
RGC細胞体の定量:RGC体の定量は、2つ1組で、盲検の形態で行なった。RGC密度を測定するために、ラットに深く麻酔をかけ、その後、0.1Mリン酸緩衝液中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)を経心的に灌流させて、両眼をすぐに除核した。網膜を解剖し、神経節細胞層側を上にしてスライドガラス上に伸展標本を作成した。DiI標識ニューロンを、蛍光顕微鏡検査下、記載した通りに12カ所の標準的な網膜部位で計数した。
PBS処置群との比較
IOPが上昇したCASP2_4 siRNA処置眼でのRGCの保持は、PBS処置群での保持よりも有意に良好であった(PBSの結果よりも1.31倍高い;p値=0.05)。GFP siRNA処置群では、PBS処置群に対して有意な差が見られなかった(p値=0.68)。
PBSで処置したIOP(2週)とIOP(3週)の間には有意差がなかった(p値=0.19)。
IOP(2週)群との比較
無傷群は、IOP(2w)群よりも有意に高いRGC密度/mm2を有している(p値=0.00)。IOP(2w)群と3週後に屠殺された他のIOP群との間では、RGC密度/mm2における有意差が見られなかった(p値は0.16〜0.44の範囲である)。
無傷群との比較
無傷群は、PBS、GFP siRNAで処置されたIOP群、および無処置のIOP(2w)よりも有意に高いRGC密度/mm2を有している(p値<0.01)。無傷群と比較してCASP2_4 siRNAで処置されたIOP群では、RGC密度/mm2における有意差が見られなかった(p値=0.06)。
これらのデータは、カスパーゼ2を標的とするsiRNAによって、眼圧の上昇により誘導される傷害からRGCが保護され、IOPの上昇から2週後のその投与によって、さらなるRGC損失が止まることを示している。
IOP測定は、上記の通りに実施された。
IOP:これらの結果をPBS処置群と比較するために、Dunnett法を用いた。さらなるパラメータ:測定期間中のAUC(曲線下面積)、平均IOP、および最大(IOP)を算出および解析した。
ほとんどの動物は、高眼圧症手術後1〜2週でIOPの有意な上昇を示す。
処置群の手術した眼では、IOPレベルにおける有意差が見られなかった(0.7746)。同様に、処置群と無傷群の対側眼では、IOPレベルにおける有意差が見られなかった。
これらの結果は、IOPが全ての処置群で上昇したままであっても、Casp2 siRNAによって、神経保護が誘導されたことを示している。
結果:3つ全ての算出されたIOPパラメータで、群間の有意差が見られなかった。
実施例11:軸索切断モデルにおけるカスパーゼ2を標的とするsiRNA化合物の眼神経保護効力の評価
本効力研究の目的は、成体Sprague−Dawleyラットにおける視神経(ON)の軸索切断によって誘導されるRGCアポトーシスのモデルを使用することであった。このモデル系におけるRGC死の発症と動態は極めて再現性がよく、インビボでのCasp2_4 siRNAの神経保護効力の立証を可能にする。この方法を用いると、RGC死の時間経過は予測通りの経過をたどる、すなわち、細胞死が5日目に始まり、2週目までに、これらのニューロンの90%よりも多くの速やかな損失へと進行する。
方法
RGCの逆行性標識:この研究のために、逆行性トレーサーFluoroGold(2%,Fluorochrome,Englewood,CO)を上丘に適用することにより、RGCを標識した。簡潔には、両方の上丘を露出させ、それらの表面にFluoroGoldに浸したゲルフォームの小片を適用した。成体ラットでは、この手順後に全てのRGCの完全な標識を得るのに要する時間は、約1週間である。このため、視神経軸索切断とsiRNA分子の眼内注射は、RGCの逆行性標識の1週間後に行なわれた。
視神経軸索切断:眼の近く(0.5〜1mm)の視神経を切断することにより、全てのRGCの軸索を切断した。手術後の網膜循環の完全性を調べるために、各々の軸索切断後、網膜底検査をルーチンに行なった。血液供給の不全の兆候を示す動物を研究から除外した。
硝子体内注射のために、各々PBS 5μl中10μgの、Casp2_4 siRNAまたはGFP siRNAのいずれかの試薬を、手術の時点である0日目に、ガラスマイクロピペットを用いて、神経頭の前方2mmの位置で、強膜と垂直に硝子体に微量注射し、その後、7日目に繰り返した。
RGC生存の定量:視神経軸索切断の14日後に、実験動物および対照動物に、4%パラホルムアルデヒドを経心的に灌流させた。神経節細胞層を調べるために、左網膜(処置済み)および右網膜(無処置対照)を摘出し、さらに30分間固定し、硝子体側を上にしてスライドガラス上に伸展標本を作成した。FluoroGoldを逆行性に充填されたRGCを12カ所の標準的な網膜部位で計数した。死にかけているRGCの貪食後にFluoroGoldを取り込んだ可能性のあるミクログリアは、その特徴的形態によって区別され、定量的解析から除外された。
実験デザイン
試験品:CASP2_4L siRNA:アンチセンス鎖上の糖残基の2’O−メチル化およびセンス鎖上のL−DNAにより化学修飾された二本鎖19−merオリゴヌクレオチド。複数の種のカスパーゼ2遺伝子を標的とする。
対照品
PBS
GFPを標的とするsiRNA−両方の鎖上の2’O−メチル化により化学修飾された二本鎖21−merオリゴヌクレオチド。
CNL−哺乳動物の既知のどの転写物ともマッチしないsiRNA;両方の鎖上の2’O−メチル化により化学修飾された二本鎖19−merオリゴヌクレオチド。表C24に処置群を示す。
結果:10μg Casp2_4 siRNAの2回の硝子体内注射で処置され、軸索切断を受けた眼の生存RGCの平均数は、損傷後14日で533±24細胞/mm
2であった。これらの数は、GFP siRNAによって同様のレジメンで処置され、軸索切断を受けた眼の平均RGC数(14日で130±7細胞/mm
2)よりも有意に多かった。手術していない対照眼では、RGCの平均数は、2138±91細胞/mm
2であったが、これは、文献で報告されたRGCの平均数と同程度である。
データ解析と統計は、GraphPad Instatソフトウェアを用いて、一元配置分散分析(ANOVA)により行なった。データは全て平均±標準誤差として示し、P<0.02で有意差とした。
結論:RGCの生存の増加は、カスパーゼ2遺伝子を標的とするsiRNAでの処置による、軸索切断後のアポトーシス促進性カスパーゼ2の活性化と上方調節のサイレンシングによる神経保護効果によるものであった。
考察:本研究において、Casp2_4 siRNAは、視神経挫滅モデルでは少なくとも30日間、およびRGC損失の軸索切断モデルでは14日間、神経を保護した。視神経挫滅実験と軸索切断実験により、急性眼神経症の実際的なモデルが提供される。
siRNA化合物の非侵襲的投与は、眼神経細胞損傷の動物モデルにおいてインビボで眼神経保護を誘導する
実施例12:OCNモデルにおけるカスパーゼ2を標的とする非侵襲的に投与されるsiRNA化合物の眼神経保護効力の評価
試験品:CASP2_4 siRNA(式Iの化合物)
対照品:
−メチルセルロース
−CNL−哺乳動物の既知のどの転写物ともマッチしないsiRNA;両方の鎖上の2’O−メチル化により安定化された二本鎖19−merオリゴヌクレオチド。
デザイン:まず、逆行性トレーサーFluoroGoldを上丘に適用することにより、網膜神経節細胞(RGC)を選択的に標識した。1週間後、動物に視神経挫滅損傷(OCN)を受けさせた。点眼薬を1日おきに1週間適用した(全部で3回)。100μg/3μlのCNL_1もしくはCasp2_4 siRNAまたは3μlのMCビヒクルを適用し、第1の用量をONCの10分後に適用した。生存RGCの定量を、伸展標本化した網膜上のFluoroGold標識RGCを計数することにより、ONCの7日後に行なった。
結果:20μgのCasp2_4 siRNAで処置され、視神経挫滅を受けた眼の生存RGCの平均数は、損傷後7日で445±17細胞/mm
2であった。この数は、PBSまたはCNL_1 siRNAのいずれかで処置され、神経挫滅を受けた眼の平均RGC数(7日で、それぞれ、337±11細胞/mm
2、341.6±13細胞/mm
2)よりも有意に多かった。表C26に結果を示す。データは全て平均±標準偏差として示されている。値は、一元配置分散分析(ANOVA)を用いて比較し、P<0.01で有意差とみなした。
結論:RGCの生存の増加は、メチルセルロース製剤中の、カスパーゼ2遺伝子を標的とするsiRNAを含む点眼薬での処置によるONC損傷後のアポトーシス促進性カスパーゼ2のサイレンシングの神経保護効果によるものであった。
実施例13:IOPモデルにおけるカスパーゼ2を標的とする非侵襲的に投与されるsiRNA化合物の眼神経保護効力の評価
実験設定:
実験動物:動物手順は全て、実験動物の使用に関するCanadian Council on Animal Careの指針(http://www.ccac.ca/)に従って行なわれた。ケタミン(100mg/ml)、キシラジン(20mg/ml)、およびアセプロマジン(10mg/ml)からなる1mL/Kgの標準ラットカクテルの腹腔内注射によって全身麻酔を受けた、繁殖期間を終えた10〜12カ月齢(300〜400g)の成体オスBrown Norwayラットで手術を行なった。
RGCの逆行性標識:ニューロン生存実験のために、退色または漏出することなく数カ月間持続しかつ標識された細胞の機能を妨害しない蛍光カルボシアニンマーカーである、3%のDiI(1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−インドカルボシアニン過塩素酸塩;Molecular Probes,Junction City,OR)でRGCを逆行性に標識する。逆行性標識のために、脳のRGCの主な標的である、両方の上丘を露出させ、それらの表面にDiIに浸したゲルフォーム(Pharmacia and Upjohn Inc.,Mississauga,ON)の小片を適用する。DiI適用から7日(全てのRGCの完全な標識を得るのに要する時間)後、動物に、以下に記載するような高眼圧症手術を受けさせる。
高眼圧症手術:強膜上静脈への高張食塩水溶液の注射を伴う方法を用いて、片側性でかつ慢性的なIOP上昇を誘導する。この研究における動物は全て、1回分の食塩水静脈注射しか受けない。この手順用に選択された眼を、眼球赤道に当てたプラスチック製リングを用いて、食塩水の注射を縁叢に限定するように合わせる。微小針(直径30〜50μm)を用いて、50μlの滅菌1.85MのNaCl溶液を1つの強膜上静脈から注射する。このプラスチック製リングは、他の強膜上静脈を一時的に遮断し、食塩水溶液をシュレム管に押し込んで、孤立性の瘢痕を生じさせる。IOP日内変動を安定化するために、動物は、一定の弱い蛍光灯(40〜100ルクス)が点いた部屋に置かれる。
眼圧(IOP)の測定:緑内障眼および正常(対側)眼のIOPを、校正された眼圧計(TonoPen XL,Medotronic Solan,Jacksonville,FL)を用いて覚醒動物で測定する。IOPを、高眼圧症手術後の最初の2週間1日おきに;および高眼圧症手術後の2週目と3週目の間に少なくとも1度測定する。高いIOPの条件(下記参照)における眼内注射の後、眼が脆くなり始めるので、IOP測定の回数を制限することが望ましい。それは、信頼性のある測定値を得ためには、角膜にさらなる圧力をかけることが必要とされるからである。圧力上昇の発症以降、眼1つ当たりの平均IOP(mmHg±標準誤差)を全てのIOP測定値の平均とみなす。緑内障眼または正常対側眼という、各々の個々の眼における最大IOP測定値をピークIOPと定義し、この値を用いて、各々の群についての平均ピークIOPを推定する。正の積分IOPは、緑内障眼におけるIOP曲線下面積から、高眼圧症手術から安楽死へと至るまでの同類の正常眼のIOP曲線下面積を引いたものとして算出する。積分IOPは、実験全体にわたる合計の累積IOP曝露に相当する。
siRNA分子の眼内注射:各々のsiRNA化合物を20μgの濃度で左眼の硝子体腔に注入することにより、眼内注射を行なう(総注射容量:5μl)。右眼は対側対照としての役割を果たす。さらに、実験に使われていないラットの手術していない眼を無傷対照として用いる。約32ゲージのガラス針で構成された10μlのHamiltonシリンジを用いて、硝子体内注射を行なう。針先を、強膜から水晶体に45度の角度で、経毛様体扁平部の深さで、眼の上半球に挿入する。この投与経路は、網膜剥離、または水晶体や虹彩をはじめとする、RGCの再生や生存を誘導する因子を放出することができる、眼構造の損傷を防ぐ。注射を2分間かけて行ない、針をさらに2分間その場所で保ち、その後、そっと抜く。手術用の糊(Indermill,Tyco Health Care,Mansfield,MA,USA)を用いて、注射部位を塞ぐ。
siRNA分子の局所点眼薬による滴下:
IOP誘導後の3週目に毎日、3μl試料容量のsiRNA 100μgを、とがっていないピペットチップ(フィルターチップ 10μl 滅菌(短い))で、麻酔した動物の角膜表面に両側性に適用する。麻酔誘発低体温を防ぐために、動物を暖かい環境に置く。
生存RGC細胞体の定量:RGC体の定量は、2つ1組で、盲検の形態で行なう。RGC密度を測定するために、ラットに深く麻酔をかけ、その後、0.1Mリン酸緩衝液中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)を経心的に灌流させて、両眼をすぐに除核する。網膜を解剖し、神経節細胞層側を上にしてスライドガラス上に伸展標本を作成する。DiI標識ニューロンを、蛍光顕微鏡検査下、記載した通りに12カ所の標準的な網膜部位で計数する。
IOP(眼内圧)を誘導し、2週間経過観察する。その後、表C27の研究デザインに詳細に記載されるように、点眼(2%メチルセスルース製剤中のsiRNA)またはIVT(PBS中のsiRNA)のいずれかによって、CASP2_4または対照siRNAを投与する。
これらの結果は、2%メチルセルロース製剤中に処方されたsiRNAの非侵襲的送達によって神経保護がもたらされ、ニューロンの生存が増加することを示している。
実施例14:ラット視神経挫滅(OCN)モデル:硝子体内siRNA送達と局所点眼送達との比較
視神経切断のために、麻酔したラットの眼窩視神経(ON)を眼窩上からのアプローチによって露出させ、髄膜を切り取り、ON内の全ての軸索を鉗子で10秒間押し潰すことによって篩板から2mmの位置で切断する。
siRNA化合物を、単独でまたは5μL容量(20μg/μL)と組み合わせて、点眼薬として送達する。視神経挫滅(OCN)の後すぐに、20μg/10μlの試験siRNAまたは10μlのPBSを、成体Wistar ratの一方または両方の眼にIVTで投与する。その後、siRNAを1日おきにEDで眼に適用し、注射後5時間および1日で、ならびに後に2日、4日、7日、14日、および21日で、摘出および瞬間凍結された網膜全体に取り込まれたsiRNAのレベルを測定する。点眼で投与されたsiRNAの活性および効力を試験するために、同様の実験を行なう。
下記の表C28には、OCNモデルにおける単独または組み合わせた試験siRNA(siTEST1;siTEST2)の効力を決定するための実験手順が示されている。さらなる投与パラメータ、濃度、終了スケジュール、製剤などが企図されている。
結果:この研究で得られる結果によれば、標的遺伝子を下方調節するよう設計されたsiRNA化合物の非侵襲的送達によって、網膜での神経保護がもたらされ、ニューロンの生存が増加する。
表B1〜B26には、未修飾または化学修飾siRNA化合物を合成するときに有用なセンス核酸とアンチセンス核酸のオリゴヌクレオチド対が開示されている。これらの表には、少なくとも1つの変異体を示す、mRNA中のセンス鎖の位置が開示されている。