JP5816966B2 - 摩擦締結要素の耐久寿命管理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の駆動力伝達系に備えられ、締結/解放が制御される摩擦クラッチや摩擦ブレーキ等の摩擦締結要素の耐久寿命管理方法に関する。
従来、マイナー則に基づくクラッチのダメージ状態をカウント及び累積することでクラッチの寿命を推定し、クラッチの寿命を決めるクライテリア(クラッチの使用臨界値)を決定しておき、クラッチが寿命に到達する前に警報を発信するクラッチ装置の警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、「マイナー則」とは、疲労限度が存在する場合、疲労限度以下の応力振幅は無限寿命とし、損傷にカウントしない手法をいう。なお、実際の疲労現象では疲労限度以下の応力振幅も損傷に影響するため、疲労限度以下の応力振幅についても損傷としてカウントするように修正を加えた手法を「修正マイナー則」という。
特開2008−57670号公報
しかしながら、従来のクラッチ装置の警報装置にあっては、クラッチが寿命に近づいていることを警報により知らせるだけであるため、運転者がディラー等に移動して対策しないままで放置していると、クラッチが耐久寿命に達してしまい、クラッチ焼き付きやジャダー等の性能不良を招いてしまう、という問題があった。
例えば、車両に搭載される自動変速機には、正常な変速性能を維持したまま走行できる保証走行距離(例えば、12万km)が設定されていて、運転者は、保証走行距離に到達するまでは正常な性能継続が保証されると思っている。そのため、保証走行距離に到達する前に警報を受けたとしても、直ちに対策することなく放置し、そのまま保証走行距離まで乗り続けようとする。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、保証走行距離まで走行しないうちに摩擦締結要素が耐久寿命を迎えることが予測される場合、性能低下を抑えながら摩擦締結要素の耐久寿命を延命させることができる摩擦締結要素の耐久寿命管理方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、車両の駆動力伝達系に備えられ、締結/解放が制御される摩擦締結要素を管理対象とし、前記摩擦締結要素が使用臨界値になるまでの耐久寿命を管理する摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において、累積被害度算出手順と、耐久寿命予測手順と、延命制御開始手順と、延命制御手順と、を備える手段とした。
前記累積被害度算出手順は、前記車両が走行開始してからの全走行区間における前記摩擦締結要素の累積被害度を算出する。
前記耐久寿命予測手順は、前記車両が走行開始してから累積被害度の変化予測が可能な初期判断タイミングに到達すると、予測された累積被害度の変化特性をそのまま維持したときに前記摩擦締結要素の累積被害度が使用臨界値に到達する臨界走行距離を予測する。
前記延命制御開始手順は、前記臨界走行距離が、前記保証走行距離よりも短いと判断されると、前記摩擦締結要素の通常制御に代え、通常制御に比べて累積被害度の進行を遅らせた延命制御を開始する。
前記延命制御手順は、前記延命制御が開始されると、予め累積被害度の関係特性に基づいて分けられた複数の走行区間を用いて、そのときの走行距離を前記複数の走行区間に対応させて走行区間を切り替え、走行区間が切り替わる毎に累積被害度の進行を段階的に遅らせ、累積被害度の走行距離に対する変化特性を前記保証走行距離に向かわせる。
ここで、「保証走行距離」とは、摩擦締結要素の正常な締結/解放性能を維持したまま走行できると予め保証した走行距離をいう。
よって、車両が走行開始してから初期判断タイミングに到達した時点で、このまま通常制御を維持したままであると保証走行距離までの摩擦締結要素の耐久寿命が確保されないと予測される場合は、摩擦締結要素の通常制御に代え、通常制御に比べて累積被害度の進行を遅らせた延命制御が開始される。延命制御では、予め累積被害度の関係特性に基づいて分けられた複数の走行区間を用いて、そのときの走行距離複数の走行区間に対応させて走行区間を切り替え、走行区間が切り替わる毎に累積被害度の進行を段階的に遅らせ、累積被害度の走行距離に対する変化特性を保証走行距離に向かわせる制御が行われる。
すなわち、累積被害度により単に摩擦締結要素の耐久寿命を評価するにとどまらず、保証走行距離を基準指標とし、初期判断タイミングに到達すると、それまでの過去の走行区間における累積被害度実績に基づき臨界走行距離が予測される。そして、予測された臨界走行距離が保証走行距離よりも短いと、延命制御が開始され、保証走行距離に向けた走行区間において、ドライバーに気づかれないように性能低下を抑えながら徐々に摩擦締結要素の耐久寿命を延長する延命制御が実行される。
この結果、保証走行距離まで走行しないうちに摩擦締結要素が耐久寿命を迎えることが予測される場合、性能低下を抑えながら摩擦締結要素の耐久寿命を延命させることができる。
実施例における自動変速機の電子制御装置にて実行される摩擦締結要素の延命制御開始処理の流れを示すフローチャートである。 実施例における摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において変速クラッチの累積被害度算出に用いられるQ(発熱量)−N(変速回数)の体力線を示す図である。 実施例における摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において変速クラッチの累積被害度算出に用いられる発熱量Qの概念を示す発熱量説明図である。 実施例における摩擦締結要素の耐久寿命管理方法においてスリップクラッチの累積被害度算出に用いられるT(クラッチ温度)−t(累積スリップ時間)の体力線を示す図である。 実施例における摩擦締結要素の耐久寿命管理方法においてスリップを伴って締結される発進に用いられるようなクラッチの累積被害度算出に用いられるクラッチ温度Tの概念を示すクラッチ温度説明図である。 図1の延命制御開始処理において初期判断タイミングでの走行距離Lに対する累積被害度fの予測特性を示す説明図である。 図1の延命制御開始処理において変速/スリップ経験回数n=2のときの走行距離Lに対する累積被害度fの予測特性を示す説明図である。 図1の延命制御開始処理において変速/スリップ経験回数n=nのときの走行距離Lに対する累積被害度fの予測特性を示す説明図である。 実施例における自動変速機の電子制御装置にて実行される延命制御が開始されたときの摩擦締結要素の修理、交換が必要となるまでの必要距離算出処理の流れを示すフローチャートである。 図9の必要距離算出処理においてzzz<Nowのときの日数に対する累積走行距離の関係特性を示す説明図である。 図9の必要距離算出処理においてzzz≧Nowのときの日数に対する累積走行距離の関係特性を示す説明図である。 実施例における自動変速機の電子制御装置にて実行される摩擦締結要素の延命制御処理1の流れを示すフローチャートである。 実施例における自動変速機の電子制御装置にて実行される摩擦締結要素の延命制御処理2の流れを示すフローチャートである。 摩擦締結要素の延命制御処理において延命レベルを異ならせたアクセル開度に対する累積被害度の関係特性の一例を示す図である。 摩擦締結要素の延命制御処理において走行距離Lに対する累積被害度fの関係特性を示すステップ説明図である。 摩擦締結要素の延命制御処理において走行距離Lに対する累積被害度fの関係特性を示すステップ説明図である。 摩擦締結要素の延命制御処理において走行距離Lに対する累積被害度fの関係特性を示すステップ説明図である。 摩擦締結要素の延命制御処理において走行距離Lに対する累積被害度fの関係特性を示すステップ説明図である。 実施例1における摩擦締結要素の耐久寿命管理方法の全容を説明するために用いる走行距離Lに対するクラッチの累積被害度fの関係特性の一例を示す図である。
以下、本発明の摩擦締結要素の耐久寿命管理方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
なお、本発明は、車両用自動変速機の変速に関与する摩擦締結要素の耐久寿命管理に好適で、摩擦締結要素の締結/解放や発進時のスリップ締結を油圧等の媒体を介して電子制御装置にて制御する車両用自動変速機ならどのようなものにでも適用可能であり、例えば、本出願人が過去に出願した特開2010−77981号公報に記載のようなハイブリッド車両用自動変速機にも好適である。
まず、構成を説明する。
実施例における摩擦締結要素の耐久寿命管理方法を、「摩擦締結要素の延命制御開始処理の詳細手順」、「摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要距離算出処理の詳細手順」、「摩擦締結要素の延命制御処理の詳細手順」に分けて説明する。
[摩擦締結要素の延命制御開始処理の詳細手順]
図1は、実施例における自動変速機の電子制御装置にて実行される摩擦締結要素耐久寿命管理制御処理の流れを示す。図2〜図5は、累積被害度の算出方法を示し、図6〜図8は、累積被害度の予測特性を示す。以下、図2〜図8を用いながら、図1に示すフローチャートに基づき摩擦締結要素の延命制御開始処理の詳細手順を説明する(延命制御開始手順)。
まず、図1に示すフローチャートの説明で用いる「保証走行距離(La)」とは、摩擦締結要素の正常な締結/解放性能を維持したまま走行できると予め保証した走行距離(例えば、12万kmや19万km)をいう。
また、図1とは別の累積被害度算出処理にて、車両が走行開始してから全走行区間において、変速/スリップを経験する毎に、その経験回数と摩擦締結要素の累積被害度f(Dsft+Dslp)が算出され、そのデータが随時読み込まれる(累積被害度算出手順)。
変速に用いる変速摩擦締結要素を管理対象とするときは、図2及び図3に示すように、変速摩擦締結要素を用いた1回の変速で発生する発熱量Qからマイナー則を用いて変速による累積被害度Dsftを算出する。なお、図2に示すQ−N体力線は、発熱量Qに対し、摩擦締結要素が使用臨界値に達する臨界変速回数Nの関係を示す図で、発熱量Qが高いほど臨界変速回数Nは少なくなる。例えば、発熱量Qiのときには、Q−N体力線と交わる臨界変速回数がNiとなり、仮に同じ発熱量Qiの変速が繰り返される場合、Ni回の変速経験により摩擦締結要素が使用臨界値に達することになる。
図3に示すように、変速スタート時刻t1から変速終了時刻t2までの1回の変速で発生する発熱量Qを、
Q=∫{V/(P−RTN圧)×C}dt
V:差回転、P:油圧、RTN圧:変速学習反映値、C:一定値
の式により算出する。そして、今回の発熱量Qnと図2に示すQ−N体力線を用い、算出された今回の発熱量Qnに対応する今回の限界変速回数Nnを求め、変速による累積被害度Dsftを、
Dsft=Σ(1/Nn-1)+(1/Nn)の式により算出する。
但し、Σ(1/Nn-1)は、前回までの累積被害度Dsftである。
スリップ締結に用いるスリップ摩擦締結要素(例えば、前記特開2010−77981号公報図1のクラッチCL2)を管理対象とするときは、図4及び図5に示すように、スリップ摩擦締結要素を用いた1回のスリップ時間中のクラッチ温度からマイナー則を用いてスリップによる累積被害度Dslpを算出する。すなわち、図5に示すように、締結スタート時刻t1から締結完了時刻t2までの間でスリップ時間Δtによる平均クラッチ温度Tを求める。なお、図4に示すT−t体力線は、クラッチ温度Tに対し、摩擦締結要素が使用臨界値に達する臨界累積スリップ時間tの関係を示す図で、クラッチ温度Tが高いほど臨界累積スリップ時間tは短くなる。例えば、クラッチ温度Tiのときには、T−t体力線と交わる臨界累積スリップ時間tiとなり、仮に同じクラッチ温度Tiのスリップが繰り返される場合、累積スリップ時間がtiになると摩擦締結要素が使用臨界値に達することになる。
そして、今回の平均クラッチ温度Tnと図4に示すT−t体力線を用い、今回の平均クラッチ温度Tnによる今回の累積スリップ時間Stnを求め、スリップによる累積被害度Dslpを、
Dslp=Σ(Δtn-1/Stn-1)+(Δtn/Stn)の式により算出する。
但し、Σ(Δtn-1/Stn-1)は、前回までの累積被害度Dslpである。
なお、変速に用いる変速摩擦締結要素を管理対象とするときであって、同変速摩擦締結要素が変速だけでなくスリップ締結も経験するものについては、合計の経験回数と、合計の累積被害度Dsft+Dslp(=f)が算出される。
ステップS1では、管理対象となるクラッチが設定回数(XXX回)まで変速/スリップしたか否かを判断する。YES(変速/スリップ回数≧設定回数)の場合はステップS2へ進み、NO(変速/スリップ回数<設定回数)の場合はステップS1の判断を繰り返す。
ここで、設定回数は、実験等で求められた、車両が走行開始してから累積被害度の変化予測が可能な変速/スリップ経験回数に設定される。
ステップS2では、ステップS1での変速/スリップ回数≧設定回数であるとの判断、つまり、車両が走行開始してから累積被害度の変化予測が可能な初期判断タイミングに到達したとの判断に続き、これまで実行されてきた通常制御による走行を継続したときに摩擦締結要素の累積被害度fが使用臨界値(f=1)に到達する臨界走行距離Lmaxを予測し、ステップS3へ進む(耐久寿命予測手順)。
ここで、臨界走行距離Lmaxを予測するに際しては、図6に示すように、走行距離Lに対する累積被害度fの変化特性において、走行開始点Oと初期判断走行距離Lxxxと累積被害度fxxxの交点p1を結ぶ線(線形)を被害度予測線f1(x)として算出する。そして、被害度予測線f1(x)をそのまま延長したとき、摩擦締結要素の使用臨界値(f=1)と交わる点での走行距離を臨界走行距離Lmaxとして予測する。
ステップS3では、ステップS2での被害度予測線算出に続き、ステップS2にて予測された臨界走行距離Lmaxと保証走行距離Laの比較により、予測線を使用すると保証走行距離Laまで持つか否かを判断する。YES(La<Lmax、f1(a)<1)の場合はステップS5へ進み、NO(La≧Lmax、f1(a)≧1)の場合はステップS4へ進む。なお、La<Lmaxとf1(a)<1、La≧Lmaxとf1(a)≧1は、走行距離比較をあらわすか累積被害度比較をあらわすかで異なるだけであり、両者は同義である。
ステップS4では、ステップS3でのLa≧Lmax(f1(a)≧1)との判断、つまり、予測線によると保証走行距離Laまで持たないとの判断に続き、累積被害度の進行を遅らせることで、管理対象となるクラッチの耐久寿命を延長させる延命制御をスタートする。この延命制御がスタートすると、図9のクラッチの補修または交換が必要となるまでの必要距離算出処理が開始され、さらに、図12及び図13の摩擦締結要素の延命制御処理が開始される。
ステップS5では、ステップS3でのLa<Lmax(f1(a)<1)との判断、あるいは、ステップS7でのF(L)+fn(La-Ln)<1との判断、つまり、予測線による保証走行距離Laまで持つとの判断に続き、通常制御での変速/スリップを実施し、ステップS6へ進む。
ステップS6では、ステップS5での変速/スリップの実施に続き、変速/スリップを経験する毎に、ステップS2と同様に、通常制御による変速/スリップを実施したときに摩擦締結要素の累積被害度fが使用臨界値(f=1)に到達する臨界走行距離Lmaxを予測し、ステップS7へ進む(耐久寿命予測手順)。
この臨界走行距離Lmaxを予測するに際し、初期判断タイミング後、変速/スリップを最初に経験するときは(変速/スリップ経験回数n=2)、図7に示すように、走行距離Lに対する累積被害度fの変化特性において、走行距離L1と累積被害度f1の交点p2と、走行距離L(xxx+1)と累積被害度f(xxx+1)の交点p3と、を結ぶ線(線形)を被害度予測線f2(x)として算出する。そして、被害度予測線f2(x)をそのまま延長したとき、摩擦締結要素の使用臨界値(f=1)と交わる点での走行距離を臨界走行距離Lmaxとして予測する。そして、初期判断タイミング後、変速/スリップをn回経験したときは(変速/スリップ経験回数n=n)、図8に示すように、走行距離Lに対する累積被害度fの変化特性において、走行距離L(n-xxx)と累積被害度f(n-xxx)の交点p4と、走行距離Lnと累積被害度fnの交点p5と、を結ぶ線(線形)を被害度予測線fn(x)として算出する。そして、被害度予測線fn(x)をそのまま延長したとき、摩擦締結要素の使用臨界値(f=1)と交わる点での走行距離を臨界走行距離Lmaxとして予測する。つまり、初期判断タイミング後の被害度予測に際しては、走行開始まで遡ることなく、変速/スリップを経験する毎に過去のXXX回前からの累積被害度データを用いる。
ステップS7では、ステップS6での被害度予測線fn(x)の算出に続き、ステップS6にて予測された臨界走行距離Lmaxと保証走行距離Laの比較により、このまま通常制御の変速/スリップを継続すると保証走行距離Laまで持つか否かを判断する。YES(La<Lmax、F(L)+fn(La-Ln)<1)の場合はステップS5へ戻り、NO(La≧Lmax、F(L)+fn(La-Ln)≧1)の場合はステップS4へ進み、延命制御をスタートする。なお、La<LmaxとF(L)+fn(La-Ln)<1、La≧LmaxとF(L)+fn(La-Ln)≧1)は、走行距離比較をあらわすか累積被害度比較をあらわすかで異なるだけであり、両者は同義である。
[摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要距離算出処理の詳細手順]
図9は、実施例における電子制御装置にて実行される延命制御が開始されたときの摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要距離算出処理の流れを示し、図10及び図11は、日数に対する累積走行距離の関係特性を示す。以下、図10及び図11を用いながら、図9に示すフローチャートに基づき摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要距離算出処理の詳細手順を説明する(必要距離算出手順)。
ステップS41では、延命制御が開始されると、車両の走行開始日時からの現在日数Nowを算出し、車両の走行開始日時から現在日数Nowまでzzz日以上経過しているか否かを判断する。YES(zzz<Now)の場合はステップS42へ進み、NO(zzz≧Now)の場合はステップS43へ進む。
ステップS42では、ステップS41でのzzz<Nowであるとの判断に続き、摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要距離HZを下記の方法により算出する。
図10に示すように、過去zzz日間から現在までの一日の平均走行距離を、
{Lnow-L(Now-zzz)}/zzz
の式により算出する。そして、摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要日数をHとしたとき、補修、交換が必要となるまでの必要距離HZを、
HZ=H・{Lnow-L(Now-zzz)}/zzz
の式により算出する。
ステップS43では、ステップS41でのzzz≧Nowであるとの判断に続き、摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要距離HZNowを下記の方法により算出する。
図11に示すように、走行開始から現在までの一日の平均走行距離を、
Lnow/Now
の式により算出する。そして、摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要日数をHとしたとき、補修、交換が必要となるまでの必要距離HZNowを、
HZNow=H・Lnow/Now
の式により算出する。
[摩擦締結要素の延命制御処理の詳細手順]
図12及び図13は、実施例における電子制御装置にて実行される摩擦締結要素の延命制御処理の流れを示し、図14は、延命レベルを異ならせたアクセル開度に対する累積被害度の関係特性を示し、図15〜図19は、走行距離に対する累積被害度の関係特性を示す。以下、図15〜図19を用いながら、図12及び図13に示すフローチャートに基づき摩擦締結要素の延命制御処理の詳細手順を説明する(延命制御手順)。
まず、延命制御が開始されると、現在の走行距離がLoとされ、現在の被害度がfoとされる。そして、延命制御処理では、図14に示すように、予め延命レベルを異ならせたアクセル開度に対する累積被害度の関係特性が設定されている。ここで、延命レベルを異ならせる手法としては、例えば、下記の(a)〜(d)が用いられる。
(a) 摩擦締結要素の変速時間を強制的に短くする。例えば、通常変速時間を1としたとき、レベルの大きさに応じて徐々に変速時間を短くしてゆく。
(b) 自動変速機の変速制御に用いられるシフトマップの変速線(アップ変速線、ダウン変速線)をより車速に依存させた特性に切り替える。これによって、アクセル開度APOの変化による変速頻度を減少させる。
(c) ライン圧を上昇させ、変速時の潤滑油量を多くする。潤滑油量は、ライン圧を調圧するプレッシャレギュレータバルブからのドレーン油量により決まる。
(d) (c)を、(a)又は(b)と組み合わせた対応とする。
そして、延命レベルが、レベル1→レベル2→…→レベルN→レベルEndになるほど、走行距離に対する累積被害度の変化勾配が緩やかになるように、上記(a)〜(d)の何れかの内容を選択する。
ステップS401では、残走行距離(La-Lo)が、摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要距離HZ又はHZNowを超えているか否かを判断する。YES((La-Lo)>HZ又はHZNow)の場合はステップS403へ進み、NO((La-Lo)≦HZ又はHZNow)の場合はステップS402へ進む。
ステップS402では、ステップS401での(La-Lo)≦HZ又はHZNowであるとの判断に続き、管理対象となるクラッチの変速をレベルEndにし、非常灯を点灯させ、運転者に摩擦締結要素を補修または交換することを促す。又は、点検時や車検時に確実に該当部品の補修、交換を実施する。
ステップS403では、ステップS401での(La-Lo)>HZ又はHZNowであるとの判断、あるいは、ステップS406でのn≦YY1であるとの判断に続き、管理対象となるクラッチの変速をレベル1にし、該当クラッチでの変速を継続し、ステップS404へ進む。
ステップS404では、ステップS403での該当クラッチでの変速に続き、残走行距離(La-Lo)が、摩擦締結要素の補修、交換が必要となるまでの必要距離HZ又はHZNowを超えているか否かを判断する。YES((La-Lo)>HZ又はHZNow)の場合はステップS406へ進み、NO((La-Lo)≦HZ又はHZNow)の場合はステップS405へ進む。
ステップS405では、ステップS404での(La-Lo)≦HZ又はHZNowであるとの判断に続き、管理対象となるクラッチの変速をレベルEndにし、非常灯を点灯させ、運転者に摩擦締結要素を補修または交換することを促す。又は、点検時や車検時に確実に該当部品の補修、交換を実施する。
ステップS406では、ステップS404での(La-Lo)>HZ又はHZNowであるとの判断に続き、変速/スリップ経験回数nが、n>YY1であるか否かを判断する。YES(n>YY1)の場合はステップS407へ進み、NO(n≦YY1)の場合はステップS403へ戻る。
ステップS407では、ステップS406でのn>YY1であるとの判断に続き、YY1回だけ変速/スリップを経験したときの累積被害度f(YY1_La)が、使用臨界値1を超えているか否かを判断する(図15参照)。YES(f(YY1_La)>1)の場合はステップS412へ進み(図16参照)、NO(f(YY1_La)≦1)の場合はステップS408へ進む。
ステップS408では、ステップS407でのf(YY1_La)≦1であるとの判断、あるいは、ステップS410、ステップS411、ステップS416でのNOとの判断に続き、管理対象となるクラッチでの変速をレベル1から複数に分けられた走行距離がYY2,YY3,…になるにしたがってレベル2,レベル3,…にし、該当クラッチでの変速を継続し、ステップS409へ進む。
ステップS409では、ステップS408での該当クラッチでの変速に続き、残走行距離(La-Lo)が、摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowを超えているか否かを判断する。YES((La-Lo)>HZ又はHZNow)の場合はステップS410へ進み、NO((La-Lo)≦HZ又はHZNow)の場合はステップS405へ進む。
ステップS410では、ステップS409での(La-Lo)>HZ又はHZNowであるとの判断に続き、変速/スリップ経験回数nが、n>YYNであるか否かを判断する。YES(n>YYN)の場合はステップS411へ進み、NO(n≦YYN)の場合はステップS408へ戻る。
ステップS411では、ステップS410でのn>YYNであるとの判断に続き、YYN回だけ変速/スリップを経験したときの累積被害度f(YYN_La)が、使用臨界値1を超えているか否かを判断する。YES(f(YYN_La)>1)の場合はステップS420へ進み、NO(f(YYN_La)≦1)の場合はステップS408へ戻る。
ステップS412では、ステップS407でのf(YY1_La)>1であるとの判断に続き、変速/スリップの経験をYY1回したときの走行距離LYY1と延命制御開始距離Loの差が、保証走行距離Laと走行距離LYY1の差より大きいか否かを判断する。NO((LYY1-Lo)≦(La-LYY1))の場合はステップS417へ進み(図17参照)、YES((LYY1-Lo)>(La-LYY1))の場合はステップS413へ進む(図18参照)。
ステップS413では、ステップS412での(LYY1-Lo)>(La-LYY1)であるとの判断、あるいは、ステップS415でのNOとの判断、ステップS420でのYESとの判断に続き、管理対象となるクラッチでの変速をレベル1から複数に分けられた走行距離がYY2,YY3,…になるにしたがってレベル2,レベル3,…にし、該当クラッチでの変速を継続し、ステップS414へ進む。
ステップS414では、ステップS413での該当クラッチでの変速に続き、残走行距離(La-Lo)が、摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowを超えているか否かを判断する。YES((La-Lo)>HZ又はHZNow)の場合はステップS415へ進み、NO((La-Lo)≦HZ又はHZNow)の場合はステップS419へ進む。
ステップS415では、ステップS414での(La-Lo)>HZ又はHZNowであるとの判断に続き、変速/スリップ経験回数nが、n>YYNであるか否かを判断する。YES(n>YYN)の場合はステップS416へ進み、NO(n≦YYN)の場合はステップS413へ戻る。
ステップS416では、ステップS415でのn>YYNであるとの判断に続き、YYN回だけ変速/スリップを経験したときの累積被害度f(YYN_La)が、使用臨界値1を超えているか否かを判断する。YES(f(YYN_La)>1)の場合はステップS420へ進み、NO(f(YYN_La)≦1)の場合はステップS408へ戻る。
ステップS417では、ステップS412での(LYY1-Lo)≦(La-LYY1)であるとの判断、あるいは、ステップS418での走行ループ処理に続き、残走行距離(La-LNow)が、摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowを超えているか否かを判断する。YES((La-LNow)>HZ又はHZNow)の場合はステップS418へ進み、NO((La-LNow)≦HZ又はHZNow)の場合はステップS419へ進む。
ステップS418では、ステップS417での(La-LNow)>HZ又はHZNowであるとの判断に続き、残走行距離(La-LNow)が摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowに達するまで継続される走行でのクラッチ変速レベルを、現在のクラッチ変速レベル条件やイグニッションオフ時間条件に応じて決め、走行ループを経由してステップS417へ戻る。クラッチ変速レベルの決め方は、該当クラッチでの変速レベルがレベルEndであればそのまま走行ループへ進む。イグニッションオフ時間が設定時間以上のときは、イグニッションオンとし、該当クラッチでの変速レベルをレベルEnd側に変更し、走行ループへ進む。イグニッションオフ時間が設定時間未満のときは、イグニッションオンとし、走行ループへ進む。それ以外は、そのときのクラッチ変速レベルのままで走行ループへ進む。ここで、走行ループとは、ステップS418→ステップS417を繰り返す流れをいう。
ステップS419では、ステップS417あるいはステップS414あるいはステップS421での(La-LNow)≦HZ又はHZNowであるとの判断に続き、管理対象となるクラッチでの変速をレベルEndにし、非常灯を点灯させ、運転者に摩擦締結要素を補修または交換することを促す。又は、点検時や車検時に確実に該当部品の補修、交換を実施する。
ステップS420では、ステップS411あるいはステップS416でのf(YYN_La)>1であるとの判断に続き、変速/スリップの経験をYYN回したときの走行距離LYYNとYYN-1回したときの走行距離L(YYN-1)の差が、保証走行距離Laと走行距離LYYNの差より大きいか否かを判断する。YES({LYYN-L(YYN-1)}>(La-LYYN))の場合はステップS413へ戻り、NO({LYYN-L(YYN-1)}≦(La-LYYN))の場合はステップS421へ進む。
ステップS421では、ステップS420での{LYYN-L(YYN-1)}≦(La-LYYN)であるとの判断、あるいは、ステップS422での走行ループ処理に続き、残走行距離(La-LNow)が、摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowを超えているか否かを判断する。YES((La-Lo)>HZ又はHZNow)の場合はステップS422へ進み、NO((La-Lo)≦HZ又はHZNow)の場合はステップS419へ進む。
ステップS422では、ステップS421での(La-LNow)>HZ又はHZNowであるとの判断に続き、残走行距離(La-LNow)が摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowに達するまで継続される走行でのクラッチ変速レベルを、現在のクラッチ変速レベル条件やイグニッションオフ時間条件に応じて決め、走行ループを経由してステップS421へ戻る。クラッチ変速レベルの決め方は、ステップS418と同様である。ここで、走行ループとは、ステップS422→ステップS421を繰り返す流れをいう。
次に、作用を説明する。
実施例での摩擦締結要素の耐久寿命管理方法における作用を、「延命制御を要さない摩擦締結要素の耐久寿命管理作用」、「延命制御を要する摩擦締結要素の耐久寿命管理作用」に分けて説明する。
[延命制御を要さない摩擦締結要素の耐久寿命管理作用]
通常制御を維持したままとしても保証走行距離Laまでの摩擦締結要素の耐久寿命が確保されると予測される場合は、通常制御を継続することが良好な変速品質を確保できて好ましい。以下、これを反映する延命制御を要さない摩擦締結要素の耐久寿命管理作用を説明する。
走行開始からの変速/スリップの経験回数が設定回数(XXX回)まで到達すると、図1のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む。ステップS2では、車両が走行開始してから累積被害度の変化予測が可能な初期判断タイミングに到達したとの判断に続き、被害度予測線f1(x)が算出される。次のステップS3では、これまで実行されてきた通常制御による走行を継続したときの被害度予測線f1(x)を使用し、保証走行距離Laまで持つか否かが判断される。
ステップS3にて保証走行距離Laまで持つと判断されると、図1のフローチャートにおいて、ステップS3からステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む。ステップS5では、通常制御での変速/スリップが実施され、ステップS6では、変速/スリップを経験する毎に、過去のXXX回前からの累積被害度データを用いて被害度予測線fn(x)が算出される。次のステップS7では、これまで実行されてきた通常制御による走行を継続したときの被害度予測線fn(x)を使用し、保証走行距離Laまで持つか否かが判断される。そして、ステップS7にて保証走行距離Laまで持つと判断されると、図1のフローチャートにおいて、ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れが繰り返される。
上記のように、実施例では、摩擦締結要素の耐久寿命管理方法として、通常制御を維持したままとしても保証走行距離Laまでの摩擦締結要素の耐久寿命が確保されると予測される場合は、通常制御を継続する手順(ステップS1→ステップS2→ステップS3からステップS5→ステップS6→ステップS7を繰り返す流れ)を採用した。
このため、摩擦締結要素が耐久寿命となるまでの全走行区間において、良好な変速品質が確保される。
[延命制御を要する摩擦締結要素の耐久寿命管理作用]
通常制御を維持したままであると保証走行距離Laまでの摩擦締結要素の耐久寿命を確保できないと予測される場合は、変速品質よりも耐久寿命の確保を優先する方がユーザ要求に応えることができて好ましい。以下、これを反映する延命制御を要する摩擦締結要素の耐久寿命管理作用を説明する。
走行開始からの変速/スリップの経験回数が設定回数(XXX回)まで到達すると、図1のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む。ステップS2では、車両が走行開始してから累積被害度の変化予測が可能な初期判断タイミングに到達したとの判断に続き、被害度予測線f1(x)が算出される。次のステップS3では、これまで実行されてきた通常制御による走行を継続したときの被害度予測線f1(x)を使用し、保証走行距離Laまで持つか否かが判断される。ステップS3にて保証走行距離Laまで持たないと判断されると、図1のフローチャートにおいて、ステップS3からステップS4へと進み、延命制御をスタートする。さらに、ステップS3にて保証走行距離Laまで持つと判断されても、図1のフローチャートにおいて、ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進み、ステップS7で保証走行距離Laまで持たないと判断されると、図1のフローチャートにおいて、ステップS7からステップS4へと進み、延命制御をスタートする。
延命制御は、
(1) 累積被害度fが“1(使用臨界値)”になる前に摩擦締結要素を補修または交換してもらう。
(2) 保証走行距離Laまではできるだけ走行を確保する。
(3) 延命制御の実施をできるだけドライバーに気付かれないようにする。
を意図してなされるもので、技術思想としては、(1)>(2)>(3)の優先度をつけて実施する。
延命制御をスタートすると、上記(1)を達成するために、図9のフローチャートを用いて摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowが算出される。補修または交換するまでの必要距離HZの算出は、zzz<Nowのとき、図9のステップS41→ステップS42へと進み、ステップS42において、HZ=H・{Lnow-L(Now-zzz)}/zzzの式により算出される。一方、補修または交換するまでの必要距離HZNowの算出は、zzz≧Nowのとき、図9のステップS41→ステップS43へと進み、ステップS43において、HZNow=H・Lnow/Nowの式により算出される。
そして、図12及び図13のフローチャートの各ステップS401,S404,S409,S414,S417,S421において、残走行距離(La-Lo)又は(La-LNow)が、摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNow以下であると判断されると、ステップS402又はステップS405又はステップS419へと進み、管理対象となるクラッチでの変速をレベルEndにし、非常灯を点灯させ、運転者に摩擦締結要素を補修または交換することが促される。又は、点検時や車検時に確実に該当部品の補修、交換を実施することを強制する。したがって、警報を受けてから補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowを走行したとしても、累積被害度fが“1(使用臨界値)”になる前に修理工場に到着することが可能となり、上記(1)が達成される。
延命制御をスタートすると、上記(2),(3)を達成するために、図12及び図13のフローチャートにしたがって延命制御が実施される。延命制御は、図19に示すように、制御スタート時の走行距離LYY1から保証走行距離Laまでの走行距離において、複数に分けた走行区間(LYY1〜LYY2、…、L(YYN-1)〜L(YYN))が切り替わる毎に累積被害度の進行を段階的に遅らせ(図14)、累積被害度fの走行距離Lに対する変化特性を保証走行距離Laに向かわせる制御が行われる。
すなわち、累積被害度により単に摩擦締結要素の耐久寿命を評価するにとどまらず、保証走行距離Laを基準指標とし、初期判断タイミングに到達すると、それまでの過去の走行区間における累積被害度実績に基づき臨界走行距離Lmaxが予測される。そして、予測された臨界走行距離Lmaxが保証走行距離Laよりも短いと、延命制御が開始され(走行距離LYY1)、保証走行距離Laに向けた走行区間において、図19に示すように、徐々に累積被害度の勾配を緩やかにする折れ線特性による延命制御が実行される。
したがって、図19に示すように、走行開始から延命制御が開始される走行距離LYY1までの走行区間が初期フェーズとされ、走行距離LYY1以降の走行区間が延命制御フェーズとされる。このため、延命制御フェーズによる走行区間が十分に長くなり、この間にて自由度の高い延命制御を実施することで、保証走行距離Laまでの走行が確保され、上記(2)が達成される。
例えば、延命制御の開始時点から一気に保証走行距離Laに向かうように累積被害度の勾配を決めた場合、延命制御による変速性能やスリップ性能が、それまでの通常制御による性能から急変し、ドライバーに気付かれることになる。
これに対し、図19に示すように、保証走行距離Laまでの走行が確保されるまで徐々に累積被害度の勾配を緩やかにする折れ線特性による延命制御とした。このため、延命制御による変速性能やスリップ性能の変化が緩やかになり、通常制御から延命制御へと移行しても、延命制御の実施がドライバーに気付かれず、上記(3)が達成される。
次に、効果を説明する。
実施例の摩擦締結要素の耐久寿命管理方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 車両の駆動力伝達系に備えられ、締結/解放が制御される摩擦締結要素を管理対象とし、前記摩擦締結要素が使用臨界値になるまでの耐久寿命を管理する摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において、
前記摩擦締結要素の正常な締結/解放性能を維持したまま走行できると予め保証した走行距離を「保証走行距離La」というとき、
前記車両が走行開始してからの全走行区間における前記摩擦締結要素の累積被害度fを算出する累積被害度算出手順(図2〜図5)と、
前記車両が走行開始してから累積被害度の変化予測が可能な初期判断タイミングに到達すると、予測された累積被害度の変化特性をそのまま維持したときに前記摩擦締結要素の累積被害度fが使用臨界値1に到達する臨界走行距離Lmaxを予測する耐久寿命予測手順(ステップS2)と、
前記臨界走行距離Lmaxが、前記保証走行距離Laよりも短いと判断されると、前記摩擦締結要素の通常制御に代え、通常制御に比べて累積被害度の進行を遅らせた延命制御を開始する延命制御開始手順(図1)と、
前記延命制御が開始されると、そのときの走行距離LYY1から前記保証走行距離Laまでの走行距離を複数の走行区間に分け、複数の走行区間が切り替わる毎に累積被害度の進行を段階的に遅らせ、累積被害度fの走行距離Lに対する変化特性を前記保証走行距離Laに向かわせる延命制御手順(図12,図13)と、
を備える。
このため、保証走行距離Laまで走行しないうちに摩擦締結要素が耐久寿命を迎えることが予測される場合、性能低下を抑えながら摩擦締結要素の耐久寿命を延命させることができる。
(2) 前記延命制御が開始されると、1日の平均走行距離と摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要日数に基づき、摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要距離HZ又はHZNowを算出する必要距離算出手順(図14)を設け、
前記延命制御手順(図12,図13)は、前記保証走行距離Laから現在の走行距離LNowを差し引いた残走行距離(La-LNow)が前記必要距離HZ又はHZNow以下になると、累積被害度の進行が遅いレベル(レベルEnd)の延命制御に切り替えると共に、ドライバーに対し警報を発する。
このため、(1)の効果に加え、累積被害度fが“1(使用臨界値)”になる前に摩擦締結要素を補修または交換してもらうことができる。
(3) 前記延命制御開始手順(図1)は、初期判断タイミングにて予測された前記臨界走行距離Lmaxが前記保証走行距離Laよりも長いと判断されると、その後、前記摩擦締結要素が締結/解放の経験をする毎に臨界走行距離Lmaxを予測し、予測された前記臨界走行距離Lmaxが前記保証走行距離Laよりも短いと判断された時点で延命制御を開始する(ステップS7→ステップS4)。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、初期判断タイミング以降、摩擦締結要素の耐久寿命の予測監視を継続して実施することにより、早期タイミングにて延命制御を開始することができる。
(4) 前記延命制御開始手順(図1)は、初期判断タイミング後に臨界走行距離Lmaxを予測するとき、走行開始からの全ての締結/解放の経験ではなく、過去の所定回数の締結/解放の経験に基づいて累積被害度fの走行距離Lに対する変化特性を予測する(ステップS6)。
このため、(3)の効果に加え、車のユーザやドライバー等が替わったとき、運転個性の変化に対応して精度良く累積被害度fの走行距離Lに対する変化特性を予測することができる。
(5) 前記累積被害度算出手順(ステップS2)は、前記管理対象が変速に用いる変速摩擦締結要素であるとき、前記変速摩擦締結要素を用いた1回の変速で発生する発熱量Qからマイナー則を用いて累積被害度Dsftを算出する。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、自動変速機の摩擦締結要素のように、高い頻度で架け替え制御により締結/解放される変速摩擦締結要素の累積被害度Dsftを精度良く算出することができる。
(6) 前記累積被害度算出手順(ステップS2)は、前記管理対象がスリップ締結に用いるスリップ摩擦締結要素であるとき、前記スリップ摩擦締結要素を用いた1回のスリップ時間中のクラッチ温度Tからマイナー則を用いて累積被害度Dslpを算出する。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、自動変速機の発進クラッチやトルクコンバータのロックアップクラッチ等のように、高い頻度でスリップ締結されるスリップ摩擦締結要素の累積被害度Dslpを精度良く算出することができる。
以上、本発明の摩擦締結要素の耐久寿命管理方法を実施例に基づき説明してきたが、具体的な手順については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例では、累積被害度算出手順として、変速摩擦締結要素の累積被害度Dsftと、スリップ摩擦締結要素の累積被害度Dslpと、を算出する例を示した。しかし、累積被害度算出手順としては、管理対象の摩擦締結要素が、変速摩擦締結要素の場合、累積被害度Dsftだけを算出する例としても良い。また、管理対象の摩擦締結要素が、スリップ摩擦締結要素の場合、累積被害度Dslpだけを算出する例としても良い。
本発明の耐久寿命管理方法は、ハイブリッド車両に限らず、エンジン車や電気自動車等の他の車両の制駆動系に設けられた様々な摩擦締結要素に対しても適用することができる。例えば、エンジン車のトルクコンバータにおいて、スリップ締結制御されるロックアップクラッチに対して本発明の耐久寿命管理方法を適用できる。また、ベルト式無段変速機を搭載した車両において、前進クラッチや後退ブレーキに対して本発明の耐久寿命管理方法を適用できる。
また、本発明は、自動変速機に備えられた全ての摩擦締結要素に適用せずとも、自動変速機の耐久寿命管理としての効果を十分奏し得るもので、変速に関与する頻度が少ない摩擦締結要素、例えば、後進時のみ締結される摩擦要素や高速走行時のみ締結される摩擦要素などを管理対象から除外しても良い。
HZ又はHZNow 摩擦締結要素の補修または交換が必要となる必要距離
Lmax 臨界走行距離
La 保証走行距離
f 累積被害度
f=1 使用臨界値
Dsft 変速摩擦締結要素の累積被害度
Dslp スリップ摩擦締結要素の累積被害度

Claims (6)

  1. 車両の駆動力伝達系に備えられ、締結/解放が制御される摩擦締結要素を管理対象とし、前記摩擦締結要素が使用臨界値になるまでの耐久寿命を管理する摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において、
    前記摩擦締結要素の正常な締結/解放性能を維持したまま走行できると予め保証した走行距離を「保証走行距離」というとき、
    前記車両が走行開始してからの全走行区間における前記摩擦締結要素の累積被害度を算出する累積被害度算出手順と、
    前記車両が走行開始してから累積被害度の変化予測が可能な初期判断タイミングに到達すると、予測された累積被害度の変化特性をそのまま維持したときに前記摩擦締結要素の累積被害度が使用臨界値に到達する臨界走行距離を予測する耐久寿命予測手順と、
    前記臨界走行距離が、前記保証走行距離よりも短いと判断されると、前記摩擦締結要素の通常制御に代え、通常制御に比べて累積被害度の進行を遅らせた延命制御を開始する延命制御開始手順と、
    前記延命制御が開始されると、予め累積被害度の関係特性に基づいて分けられた複数の走行区間を用いて、そのときの走行距離を前記複数の走行区間に対応させて走行区間を切り替え、走行区間が切り替わる毎に累積被害度の進行を段階的に遅らせ、累積被害度の走行距離に対する変化特性を前記保証走行距離に向かわせる延命制御手順と、
    を備えることを特徴とする摩擦締結要素の耐久寿命管理方法。
  2. 請求項1に記載された摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において、
    前記延命制御が開始されると、1日の平均走行距離と摩擦締結要素を補修または交換するまでの必要日数に基づき、摩擦締結要素を補修または交換までの必要距離を算出する必要距離算出手順を設け、
    前記延命制御手順は、前記保証走行距離から現在の走行距離を差し引いた残走行距離が前記必要距離以下になると、累積被害度の進行が遅いレベルの延命制御に切り替えると共に、ドライバーに対し警報を発する
    ことを特徴とする摩擦締結要素の耐久寿命管理方法。
  3. 請求項1又は2に記載された摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において、
    前記延命制御開始手順は、初期判断タイミングにて予測された前記臨界走行距離が前記保証走行距離よりも長いと判断されると、その後、前記摩擦締結要素が締結/解放の経験をする毎に臨界走行距離を予測し、予測された前記臨界走行距離が前記保証走行距離よりも短いと判断された時点で延命制御を開始する
    ことを特徴とする摩擦締結要素の耐久寿命管理方法。
  4. 請求項3に記載された摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において、
    前記延命制御開始手順は、初期判断タイミング後に臨界走行距離を予測するとき、走行開始からの全ての締結/解放の経験ではなく、過去の所定回数の締結/解放の経験に基づいて累積被害度の走行距離に対する変化特性を予測する
    ことを特徴とする摩擦締結要素の耐久寿命管理方法。
  5. 請求項1から4までの何れか1項に記載された摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において、
    前記累積被害度算出手順は、前記管理対象が変速に用いる変速摩擦締結要素であるとき、前記変速摩擦締結要素を用いた1回の変速で発生する発熱量からマイナー則を用いて累積被害度を算出する
    ことを特徴とする摩擦締結要素の耐久寿命管理方法。
  6. 請求項1から4までの何れか1項に記載された摩擦締結要素の耐久寿命管理方法において、
    前記累積被害度算出手順は、前記管理対象がスリップ締結に用いるスリップ摩擦締結要素であるとき、前記スリップ摩擦締結要素を用いた1回のスリップ時間中のクラッチ温度からマイナー則を用いて累積被害度を算出する
    ことを特徴とする摩擦締結要素の耐久寿命管理方法。
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