JP5816770B1 - 石炭ガス化システムの運転方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この種の石炭ガス化反応炉は、下段に配置され石炭を部分酸化させる部分酸化部と、上段に配置され石炭を熱分解させる熱分解部とを有している。
石炭ガス化反応炉の熱分解部内に石炭を吹き込む(供給する)ことで、ある程度、溶融し飛散したスラグを捕集し(集め)スラッギングを防止することができる。熱分解部内に吹き込まれた石炭は、部分酸化部から上昇してくる無酸素の高温ガスの顕熱により揮発分とチャーとに分解される。揮発分はガスとして回収され、チャーは部分酸化部から熱分解部に飛散する灰分の捕集材として機能する。つまり、熱分解部内に吹き込む石炭のうち、揮発分を除いた分であるチャーがスラグの捕集に効果を発揮する。しかし、このスラッギングを防止する方法では、近年ガス化の対象になってきている、石炭の質量に対する石炭中の灰分の質量の比である灰分量が10%以上となる高灰分炭を利用した場合、部分酸化部から飛散してくるスラグが多くなるため熱分解部に吹き込む石炭の量を多くしなければならない。熱分解部内での石炭の反応は、一般的に吸熱反応である。よって、熱分解部に吹き込む石炭の量を多くすると、熱分解部内の温度が低下し、タールが発生し熱分解ガスの生成量が不十分になる。
石炭ガス化反応炉の構成が熱分解部が耐火物構造である特許文献1の石炭ガス化反応炉とは異なることで、特許文献2の熱分解部ではスラッギングの問題が生じにくい。
本発明の石炭ガス化システムの運転方法は、下段に配置され石炭を部分酸化させる部分酸化部、及び前記部分酸化部に連通して上段に配置され前記石炭を熱分解させる熱分解部を有する二段構造の石炭ガス化反応炉を備える石炭ガス化システムを用いて、前記石炭をガス化させることで少なくとも水素ガス及び一酸化炭素ガスを製造する石炭ガス化システムの運転方法であって、前記部分酸化部内に前記石炭及びチャーを供給するとともに、前記熱分解部内に前記石炭及び前記チャーを供給し、前記部分酸化部内に供給された前記石炭から生じ前記熱分解部に供給される灰分の重量が増加する際に、前記熱分解部内への固定炭素の供給量を増加させることを特徴としている。
その飛散した溶融スラグを石炭及びチャー中の固定炭素により捕集することでスラッギングを防止する。ここで熱分解部にチャーを投入すると、チャーは揮発分が抜けているため、熱分解部内に投入した分がそのまま捕集材として効果を発揮する。したがって、揮発分のある石炭のみを熱分解部内に吹き込む場合に比べて、熱分解部内に吹き込む石炭の量を低減させることができ、熱分解部の温度低下を抑えることができる。また、石炭から揮発分が分解してチャーになる反応は一般的に吸熱反応である。したがって、石炭のみを熱分解部内に吹き込む場合に比べて、熱分解部の温度低下を抑えることができる。
また、熱分解部内に供給される灰分の重量が増加しても、熱分解部内への供給量を増加させた固定炭素によりスラグを捕集することができる。
本実施形態のシステムは、石炭を原料として用い、石炭をガス化させることで水素ガス及び一酸化炭素ガス等を製造するプラント設備である。
図1に示すように、本実施形態のシステム1は、石炭粉砕乾燥器10と、バグフィルター11と、石炭供給ホッパ12と、下段石炭供給器13と、上段石炭供給器14と、石炭ガス化反応炉20と、熱回収器25と、除塵機26と、チャー回収設備(チャー回収装置)27と、チャー供給器(チャー供給装置)28とを備えている。
一般に、石炭は外径が不均一であり、瀝青炭・亜瀝青炭や褐炭には、例えば10〜60%程度もの多量の水分が含有されている。そこで、石炭粉砕乾燥器10において石炭を粉砕、乾燥させる。石炭の外径を例えば10μm(マイクロメートル)以上100μm以下程度の微粉状となるように粉砕し、石炭の含有水分が例えば2%〜20%となるまで乾燥させる。
このように粉砕、乾燥させた石炭は、二酸化炭素ガス等を搬送ガスとした気流搬送により、バグフィルター11に供給される。
石炭供給ホッパ12は、内部に石炭を蓄えるとともに、蓄えた石炭を下段石炭供給器13及び上段石炭供給器14に供給する。
下段石炭供給器13は、微粉状の石炭を気流搬送により石炭ガス化反応炉20の後述するガス化バーナー21aに供給する。同様に、上段石炭供給器14は、微粉状の石炭を気流搬送により石炭ガス化反応炉20の後述する供給ノズル22aに供給する。
部分酸化部21及び熱分解部22は、図示しない内部空間がそれぞれ形成された反応容器である。部分酸化部21の内部空間と熱分解部22の内部空間とが連通している。
部分酸化部21、熱分解部22、及びスラグ冷却水槽は、耐熱性の耐火物で形成されている。部分酸化部21の外周面に、部分酸化部21を冷却するための水冷壁(水冷装置)を設けてもよい。本実施形態では、熱分解部22は水冷壁を備えない。ただし、熱分解部22に水冷壁を設けてもよい。
部分酸化部21には、ガス化バーナー21a及びチャーバーナー21bが設けられている。ガス化バーナー21a及びチャーバーナー21bで、第一の供給部21cを構成する。
2C+O2→2CO ・・・(1)
C+O2→CO2 ・・・(2)
C+H2O→CO+H2 ・・・(3)
C+CO2→2CO ・・・(4)
部分酸化部21内で発生したガス、チャー及びスラグ等は、部分酸化部21内で旋回しながら上昇し、熱分解部22内に移動する。図2に、部分酸化部21内から熱分解部22内に移動するスラグW1を示す。
部分酸化部21内で発生したスラグW1は、一部が部分酸化部21の内面に付着し(図2参照)、石炭ガス化反応炉20の壁を伝ってスラグ冷却水槽内の水に落ちて冷やされ、回収される。
部分酸化部21内では、酸素が不足した不完全燃焼の状態で石炭が部分酸化する。
システム1の運転方法では、供給ノズル22aを通して、熱分解部22内に石炭を供給する。なお、熱分解部22内に石炭を供給すると同時に、熱回収器25で発生した水蒸気を熱分解部22内に規定量供給してもよい。チャー供給ノズル22bから、熱分解部22内にチャーを供給する。
本実施形態では、熱分解部22の内部空間の温度は950℃以上1100℃以下(好ましくは、約1000℃)となるように調節されている。熱分解部22内の温度が950℃未満になると、タールの発生量が急激に増加し、さらに熱分解部22内でのタールの分解反応が起こりにくくなる。なお、この温度ではスラグは溶融せず、固体になっている。
熱分解部22内に供給される石炭中の炭素及び水蒸気は、前述の化学反応式(3)により反応して、一酸化炭素ガスと水素ガスとに分解される。
また、熱分解部22内に供給された石炭中の炭素の一部は、熱分解部22内の二酸化炭素ガスと反応して上記の化学反応式(4)により一酸化炭素ガスになる。
このように、熱分解部22内では石炭が熱分解する。
チャーは、揮発分が抜けているため、熱分解部22内に投入した分がそのまま捕集材として効果を発揮する。したがって、揮発分のある石炭のみを熱分解部22内に吹き込む比較例の場合に比べて、熱分解部22内に吹き込む石炭の量を低減させることができ、熱分解部22内の温度低下を抑えることができる。
システム1の運転方法では、部分酸化部21内に供給された石炭及びチャーから生じ熱分解部22に供給されるスラグW1の重量(質量)に比例して、熱分解部22内に石炭及びチャーにより供給する固定炭素の重量を増加させてもよい。すなわち、熱分解部22に供給されるスラグW1の重量に比例して、スラグW1を捕集する固定炭素の重量を増加させてもよい。
これに対して、本実施形態のシステム1及びシステム1の運転方法では、熱分解部22内で飛散するスラグがチャーにより捕集されるため、熱分解部22内にスラグが付着するのが抑制される。
熱回収器25で冷却された生成ガス及びチャーは、除塵機26に供給される。除塵機26はサイクロン構造になっており、生成ガス及びチャーは除塵機26内で遠心分離される。チャー回収設備27では、除塵機26で回収されたチャーを回収する。チャー回収設備27で回収されたチャーはチャー供給器28に供給される。
チャー供給器28は、チャーをチャーバーナー21b及びチャー供給ノズル22bに供給する。
CO+H2O→CO2+H2 ・・・(5)
ガス冷却・ガス精製器を通過した生成ガスは、下流の工程に搬送され、メタンやメタノール等の合成ガスが製造される。
熱分解部22内にチャーを供給する(リサイクルする)ことで、スラグを捕集する固定炭素がチャーから供給されるため、熱分解部22内に供給する石炭の量を低減させることができる。
チャーは、温度が比較的高い部分酸化部21内ではガス化するが、温度が比較的低い熱分解部22内ではガス化しない。このため、熱分解部22内にチャーを供給してもチャーはガス化しないので、ガス化効率が下がる。ここで言うガス化効率とは、投入石炭カロリーに対する、その石炭から製造できる水素ガス及び一酸化炭素ガス等のカロリーの割合のことを意味する。
しかし、熱分解部22内にチャーを供給することで熱分解部22でスラッギングが発生しにくくなり、システム1の運転を安定して連続的に行うことができる。
熱分解部22に供給されるスラグの重量に比例して、熱分解部22内に供給する固定炭素の重量を増加させる。これにより、熱分解部22内に供給されるスラグの重量が増加しても、熱分解部22内への供給量を増加させた固定炭素によりスラグを捕集することができる。
例えば、前記実施形態では、チャー回収設備27で回収したチャーをチャー供給器28によりチャーバーナー21b及びチャー供給ノズル22bに供給するとした。しかし、チャー回収設備27で回収したチャーを気流搬送等によりバグフィルター11に供給してもよい。この場合、石炭供給ホッパ12内で石炭にチャーが混合され、チャーが混合された石炭が下段石炭供給器13、上段石炭供給器14により部分酸化部21内、熱分解部22内にそれぞれ供給される。熱分解部22にチャー供給ノズル22bは備えられない。第二の供給部が、供給ノズル22aになる。
このように構成することで、熱分解部22内にチャーを供給するために熱分解部22にチャー供給ノズル22bを設けることが不要になり、システム1の設備を簡素にすることができる。
以下では、本発明の実施例及び比較例を具体的に示してより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
灰分量が6%、8%、10%、12%である石炭を用いて、本発明の実施例及び比較例の試験を行った。
上段である熱分解部22への石炭及びチャーの合計の供給量(吹き込み量)を、約200kg/h(キログラム・パー・アワー)になるように調節した。下段である部分酸化部21への石炭及びチャーの合計の供給量を、約560kg/hになるように調節した。
熱分解部22へのチャーの供給量(リサイクル量)を、石炭の各灰分量に対して、0kg/h(チャーを供給しない)、約29kg/hとなるように調節した。
なお、熱分解部22へのチャーの供給量を0kg/hとしたときに部分酸化部21へのチャーの供給量を約80.5kg/hとした。熱分解部22へのチャーの供給量を約29kg/hとしたときに部分酸化部21へのチャーの供給量を約52.0kg/hとした。
4通りの各灰分量に対して、熱分解部22へのチャーの供給量を2通り変え、表1に示す運転条件No.1〜8の条件で実験を行った。
運転条件No.2においては、熱分解部22へのチャーの供給量が28.9kg/hである。これにより、熱分解部22への石炭の供給量は、熱分解部22への石炭及びチャーの合計の供給量201.1kg/hから28.9kg/hを引いた172.2kg/hとなる。
熱分解部22にチャーを供給した運転条件No.2、4、6、8が、本発明の実施例である。熱分解部22にチャーを供給しない運転条件No.1、3、5、7が、本発明の比較例である。
これは、運転条件No.2では、スラグを捕集する固定炭素として、熱分解部22へ供給されたチャー中のものだけでなく熱分解部22へ供給されたた炭素中のものも用いることができるからである。また、熱分解部22への石炭の供給量を減らさないと、熱分解部22内の温度がタールの発生量が増加する950℃未満になりやすくなるためである。
このように、本実施形態の石炭ガス化システム及び石炭ガス化システムの運転方法は、石炭の灰分量によらず用いることができるが、灰分量が10%以上の石炭に対して特に好適に用いることができることが分かった。
20 石炭ガス化反応炉
21 部分酸化部
21c 第一の供給部
22 熱分解部
22c 第二の供給部
Claims (2)
- 下段に配置され石炭を部分酸化させる部分酸化部、及び前記部分酸化部に連通して上段に配置され前記石炭を熱分解させる熱分解部を有する二段構造の石炭ガス化反応炉を備える石炭ガス化システムを用いて、前記石炭をガス化させることで少なくとも水素ガス及び一酸化炭素ガスを製造する石炭ガス化システムの運転方法であって、
前記部分酸化部内に前記石炭及びチャーを供給するとともに、前記熱分解部内に前記石炭及び前記チャーを供給し、
前記部分酸化部内に供給された前記石炭から生じ前記熱分解部に供給される灰分の重量が増加する際に、前記熱分解部内への固定炭素の供給量を増加させることを特徴とする石炭ガス化システムの運転方法。 - 下段に配置され石炭を部分酸化させる部分酸化部、及び前記部分酸化部に連通して上段に配置され前記石炭を熱分解させる熱分解部を有する二段構造の石炭ガス化反応炉を備える石炭ガス化システムを用いて、前記石炭をガス化させることで少なくとも水素ガス及び一酸化炭素ガスを製造する石炭ガス化システムの運転方法であって、
前記部分酸化部内に前記石炭及びチャーを供給するとともに、前記熱分解部内に前記石炭及び前記チャーを供給し、
前記熱分解部内に供給する固定炭素の重量を、少なくとも、前記部分酸化部内に供給された前記石炭から生じ前記熱分解部に供給される灰分の重量に比例した重量増加させることを特徴とする石炭ガス化システムの運転方法。
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