JP2008169354A - 石炭の水素化熱分解方法及び装置 - Google Patents

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広行 小水流
Masumi Itonaga
眞須美 糸永
Katsushi Kosuge
克志 小菅
Hideaki Yabe
英昭 矢部
Yasuki Namiki
泰樹 並木
Taku Takeda
卓 武田
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Abstract

【課題】石炭の水素化熱分解方法において、バイオマスを用いることで生成物のうちチャーの収率を下げて、ガスの収率を増加させる。
【解決手段】下段において、酸素、又は、酸素及び水蒸気と、石炭を投入して当該石炭の部分酸化によりガス化ガスを生成し、上段において、前記生成したガス化ガス中に石炭及び水素を投入して当該石炭の水素化熱分解によりガス、オイル、及びチャーを生成する、上下二室二段の反応器を用いた石炭の水素化熱分解方法であって、前記下段において、石炭投入の下流に更にバイオマスを投入し、前記生成したガス化ガスにより当該バイオマスを熱分解させることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、石炭を水素化熱分解してガス、オイル、及びチャーを製造する方法及び装置に関するものである。特には、バイオマスを用いて生成するチャー量を減少させる方法及び装置に関するものである。
現在まで、石炭を高温で熱分解し、直接メタンを始めとする炭化水素ガスおよびベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)を始めとするオイルを製造する石炭熱分解プロセスがいくつか提案されている。
特許文献1において、石炭および炭素質原料の酸素によるガス化で生じる高温ガス中に、石炭を吹き込み、石炭の急速加熱・熱分解反応を気流層で行わせ、特にBTXを高収率で得ることが可能であり、かつ、設備のイニシャルコストを低減し、熱補給の必要がない高い熱効率の石炭熱分解方法が示されている。
特許文献2では、石炭ガス化ガスにバイオマスを導入して石炭とバイオマスを同時にガス化し、CO、水素等のガスを生成する方法が示されている。
特許文献3では、石炭ガス化ガスに、熱分解炉内でバイオマスを導入し、さらに石炭を導入することで石炭とバイオマスを同時に熱分解し、ガス、タール、チャーを生成する方法が示されている。特許文献3では、バイオマス投入により、ガス化ガスの温度を下げて、ガス化ガス温度が高すぎることで発生する、すすの生成を抑制できるとしている。
特許文献4では、石炭および炭素質原料の酸素によるガス化で生じる高温ガス中に石炭および水素を吹き込み、石炭の急速加熱・水素化熱分解反応を気流層で行わせ、軽質なオイルやメタン等の燃料ガスを高収率で得ることが可能な石炭の水素化熱分解方法が示されている。
特開平5−295371号公報 特開2002−194363号公報 特開2006−124496号公報 特開2004−217868号公報
特許文献1において提案されているプロセスは、BTXを始めとするオイルを高い収率で製造することが可能であり、かつ、設備のイニシャルコストを低減し、熱補給のない高い熱効率の石炭熱分解方法である。
熱分解される石炭の約半分は固体のチャーとなるが、チャーは高温の固体・微粉であるがために熱回収が困難であり、ハンドリングの際にはトラブルとなりやすい。1.0MPaG以上の高圧条件で石炭のガス化・熱分解を行うと、ガス化炉において発生したガス化ガスに含まれる水蒸気と改質炉で生成したチャー中炭素の一部が反応し、COおよび水素ガスに改質炉内で転換され、チャーの発生量は減少する。
しかしながら、ガス化ガス中に含まれる水蒸気量が少ない場合には改質炉内のチャーのガス化反応も十分には起こらない。また、バイオマスの利用についても、特許文献1にはガス化炉および熱分解炉に投入される炭素質原料として想定されているだけであり、特に投入方法など規定されていない。
特許文献2において提案される方法は、石炭ガス化炉の上部にバイオマスを吹き込み、ガス化ガスの熱をバイオマスの熱分解に使用するというものであり、石炭を水素化熱分解させるものではないため、石炭の熱分解により発生したチャーも無く、チャー由来のトラブルも発生しない。
特許文献3において提案される方法は、石炭のガス化ガス中にバイオマスを導入した後に熱分解を行う石炭を導入するもので、石炭の過剰な熱分解を防止するためにバイオマスを導入している。この方法では、ガス化ガス中にバイオマスを投入した時点でガス化ガス温度が低下し、改質炉内でのチャーのガス化反応が十分には起こらないという問題がある。
特許文献4にはガス化炉に投入される原料として石炭および炭素質原料として想定されているだけであり、特に投入方法など規定されていない。
本発明の目的は、石炭をガス化及び水素化熱分解する際に効率よく石炭由来のチャーを減少させ、有用な燃料となるガスの発生量を増加させることができる石炭の水素化熱分解方法及び装置を提供することにある。
かかる問題を解決するため、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)下段において、酸素、又は、酸素及び水蒸気と、石炭を投入して当該石炭の部分酸化によりガス化ガスを生成し、上段において、前記生成したガス化ガス中に石炭及び水素を投入して当該石炭の水素化熱分解によりガス、オイル、及びチャーを生成する、上下二室二段の反応器を用いた石炭の水素化熱分解方法であって、前記下段において、石炭投入の下流に更にバイオマスを投入し、前記生成したガス化ガスにより当該バイオマスを熱分解させることを特徴とする石炭の水素化熱分解方法。
(2)下段のガス化炉と上段の改質炉からなる上下二室二段の反応器を有する石炭の水素化熱分解炉であって、前記ガス化炉には、石炭を酸素、又は、酸素及び水蒸気と共に投入するガス化バーナーと、その上方に設置したバイオマス吹き込みノズルを備え、前記改質炉には、石炭及び水素の吹き込みノズルを備えることを特徴とする石炭の水素化熱分解装置。
ここで言うオイルとは、石炭の水素化熱分解により、タールよりも軽質化して生成される液成分を言う。
バイオマスとは生物量の総称であり、FAO(国連食糧農業機関)によれば、農業系(麦わら、サトウキビ、米糠、草木等)、林業系(製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等)、畜産系(家畜廃棄物)、水産系(水産加工残滓)、廃棄物系(生ゴミ、RDF(ゴミ固形化燃料;Refuse Derived Fuel)、庭木、建設廃材、下水汚泥)等に分類される。
本発明により、下段にガス化炉、上段に改質炉を設けた二室二段の反応器による水素化熱分解において、改質炉でのチャーのガス化反応を進行させ、チャーの生成量を低下させ、ガス生成量を増加させることが可能となる。
石炭の水素化熱分解プロセスでは、石炭のガス化ガス中に水素および石炭を高圧下で導入し、水素化熱分解反応を起こさせるものであり、燃料ガスおよびオイルを効率よく生成することが可能である。
本発明では、石炭のガス化炉にバイオマスを導入することでガス化炉から発生するガス化ガス中に含まれる水蒸気を増加させ、改質炉内で水蒸気と固体チャーとのガス化反応を促進させチャー収率の減少と共に生成ガス収率の増加を行うものである。
水蒸気をガス化炉に直接投入することでも同様の反応を促進することは可能であるが、バイオマスを投入することでバイオマスの熱分解よりメタンやCOが水蒸気以外にも生成するため、効率的に燃料等に使用可能な生成ガスの量を増加させることが可能となる。
以下に本発明を詳細に説明する。図1に示す、本発明に係る石炭のガス、オイル、チャーへの転換装置(石炭の水素化熱分解装置)である上下二室二段の反応器の概略図を用いて本特許を詳細に説明する。ここで二室の反応器とは、反応器の構造でガスの流路に絞りを入れて部分的に流速を増加させることにより、上室に投入された石炭粒子等が下室に落下することを防ぎ、各室で独立した反応条件を設定できる反応器を言う。
本装置は、改質炉1、ガス化炉2および両者をつなぐスロート3で主に構成される。ガス化炉1ではガス化石炭10を、酸素13、又は酸素13および水蒸気14を酸化剤として、ガス化バーナー5を用いてガス化炉2に導入してガス化し、さらにその下流側(図の上方向)のバイオマス吹き込みノズル7よりバイオマス12を窒素等の搬送ガスによりガス化炉内に導入し、ガス化ガス15を生成させる。
ガス化炉2において、投入された酸素13はガス化バーナー5の近傍でガス化石炭10の燃焼により消費されるため、バイオマス吹き込みノズル7近傍では存在せず、投入されたバイオマス12は無酸素雰囲気下で熱分解される。
ガス化石炭10とバイオマス12の投入割合は、バイオマス12が少ないと発生する水蒸気の量が少なく、多いとガス化炉2に投入される酸素13の量が多くなることからバイオマス12の重量がガス化石炭10の重量の5%から40%の範囲であることが好ましい。
改質炉1では、石炭及び水素の吹き込みノズル4より、改質石炭11及び水素21を窒素等の搬送ガスと共に吹き込んで、ガス化ガス15と混合して、改質石炭11を加熱及び水素化熱分解させて生成ガス、オイル、チャー17を生成させる。
この際、改質石炭11と水素21を別々のノズルから吹き込んでも構わないが、水素化熱分解をより促進するためには、同じノズルから吹き込むことが好ましい。
改質炉1では、チャーに含まれるCの一部は、下記の反応により、ガス化ガス15中の水蒸気と反応し、水素と一酸化炭素にガス化される。
C(チャー)+H2O → H2+CO
また、ガス化ガス15に対する改質石炭11の投入割合は、最終生成物としてガスが多い方が良い場合には改質石炭11を少なく、オイルが多い方が良い場合には改質石炭11を多く投入するため、ガス化ガス100Nm3当たり改質石炭10kgから40kgの範囲であることが好ましい。
生成ガス、オイル、チャー17は改質部1上部に設けられた改質部出口9より排出される。ガス化石炭10に含まれる灰分はガス化炉2内の高温下で溶融したスラグとなりスラグ16はスラグタップ6よりガス化炉2から排出され水槽8により急冷され水砕スラグとして系外に排出される。ここで、ガス化炉2の温度は一般的に石炭に含まれる灰分の融点以上で操業され1500℃程度、好ましくは1200から1700℃である。また熱分解炉の温度は、生成するタールの量や性状、生成ガスの量や組成を考慮して決定されるが600℃から1100℃程度である。
ガス化炉2では、ガス化石炭10を酸素13または酸素13および水蒸気14でガス化するが、ガス化ガス15に含まれる水蒸気を増加させるために水蒸気14を増加させるとガス化炉2の底部、スラグタップ6周辺の温度を低下させ、温度を維持しスラグの流動性を確保するためには酸素13を増加させる必要がある。
ガス化炉2上部にノズルを設けて水蒸気を添加する方法においてもガス化ガス15の温度を維持し、改質炉1内でのチャーガス化反応を促進させるためには酸素13の量を増加する必要があり、結果としてガス化ガス15の発熱量が低下する。
一方、バイオマス吹き込みノズル7よりバイオマス12をガス化炉内に導入する方法では、バイオマス12に含まれる水分や酸素がガス化ガス15中の水蒸気増加に寄与し、バイオマス12を分解するためにガス化炉2の温度が低下し酸素13を増やす必要はあるものの、バイオマス12の熱分解により発生する水素や一酸化炭素により単純に水蒸気をガス化炉2に投入する方法に比べてガス化ガス15の発熱量を低下させにくい。
これは前述の通り、単純に水蒸気をガス化炉2に投入すると、ガス化炉2の温度を維持するために酸素13の量を増加することになるため生成するCOや水素の量が減少することによる。
バイオマス吹き込みノズル7の位置となる石炭投入の下流の範囲としてはガス化バーナー5より下部ではガス化炉2の底部やスラグタップ6の温度を下げてしまうため、ガス化バーナー5より上部とする必要があり、さらに、スロート3や改質部1に投入したのではガス化ガス15の温度を下げてしまうためガス化炉内に設置する必要がある。
改質炉1内における水蒸気によるチャーのガス化反応は反応圧力に依存し、反応には0.1MPaG以上の圧力が必要であり、それ未満の圧力ではほとんど起こらない。
ガス化炉2および改質炉1に投入されるガス化石炭10および改質石炭11に石炭以外の炭素質原料を少量添加しても構わない。
尚、石炭の水素化熱分解においては、改質炉内に吹き込む水素の存在により、特許文献3の熱分解で問題となったような、すすの発生は抑制され、ほとんど問題とはならない。
(実施例)
図1に記載の装置を用い、ガス化石炭量400kg/h、バイオマス100kg/hの原料供給条件における本発明の実施例を以下に示す。本実施例ではバイオマスとして木材チップ(水分は木質チップ17質量以下ドライ組成で炭素50.9質量%、水素6.3質量%、窒素0.1質量%、酸素42.5質量%、灰分0.2質量%)を、ガス化石炭および改質石炭には高揮発瀝青炭(水分2質量%、炭素75.0質量%、水素5.0質量%、窒素1.0質量%、硫黄0.1質量%、酸素14.9質量%、灰分4.0質量%)を使用した。
ガス化炉には石炭400kg/h、酸素310Nm3/h、バイオマス100kg/hを投入する。ガス化炉内は、温度1550℃、圧力2.5MPaGで操業され、H2:20%、CO:45%、CO2:10%、H2O:11%、N2:15%のガス化ガス1108Nm3/hが発生する。バイオマス吹き込みノズルはガス化炉直胴部最上部より対向させた2カ所に設置した。
改質部では、石炭276kg/h、水素215Nm3/hを投入した結果、改質部温度は800℃となり、改質炉出口でのガス流量は1530Nm3/h、オイル27kg/h、チャー121kg/hとなった。
(比較例1)
ガス化炉にバイオマスを使用せず、石炭を実施例の石炭・バイオマスの発熱量と同じになるように単独で供給した比較例を以下に記す。
ガス化炉での石炭量460kg/h、酸素285Nm3/hで操業を行い、ガス化炉温度は実施例と同じ1550℃、圧力2.5MPaGとなった。その結果、H2:20.4%、CO:49.3%、CO2:6.8%、H2O:7.3%、N2:16.1%のガス化ガス1021Nm3/hが発生する。改質炉では、石炭250kg/h、水素191Nm3/hを投入した結果、改質部温度は800℃となり、改質炉出口での生成ガス流量は1408Nm3/h、オイル25kg/h、チャー132kg/hとなった。
(比較例2)
ガス化炉にバイオマスの替わりに水蒸気を投入し、石炭を実施例の石炭・バイオマスの発熱量と同じになるように供給した比較例を以下に記す。
ガス化炉に、石炭460kg/h、酸素294Nm3/h、水蒸気60kg/hを投入する。ガス化炉内は、温度1550℃、圧力2.5MPaGで操業され、H2:20.7%、CO:42.7%、CO2:9.6%、H2O:12.0%、N2:15.0%のガス化ガス1096Nm3/hが発生する。水蒸気吹き込みノズルはガス化炉直胴部最上部より対向させた2カ所に設置した。
改質部では、石炭278kg/h、水素198Nm3/hを投入した結果、改質部温度は800℃となり、改質炉出口でのガス流量は1491Nm3/h、オイル28kg/h、チャー131kg/hとなった。
以上より、比較例1および2に比べて実施例の方がチャー量が10〜14%減少し、発生ガス量は数〜9%増加させることが可能となった。
本発明に係る、石炭の水素化熱分解装置である上下二室二段の反応器の概略図である。
符号の説明
1 改質炉
2 ガス化炉
3 スロート
4 石炭及び水素の吹き込みノズル
5 ガス化バーナー
6 スラグタップ
7 バイオマス吹き込みノズル
8 水槽
9 改質炉出口
10 ガス化石炭
11 改質石炭
12 バイオマス
13 酸素
14 水蒸気
15 ガス化ガス
16 スラグ
17 生成ガス、オイル、チャー
21 水素

Claims (2)

  1. 下段において、酸素、又は、酸素及び水蒸気と、石炭を投入して当該石炭の部分酸化によりガス化ガスを生成し、上段において、前記生成したガス化ガス中に石炭及び水素を投入して当該石炭の水素化熱分解によりガス、オイル、及びチャーを生成する、上下二室二段の反応器を用いた石炭の水素化熱分解方法であって、前記下段において、石炭投入の下流に更にバイオマスを投入し、前記生成したガス化ガスにより当該バイオマスを熱分解させることを特徴とする石炭の水素化熱分解方法。
  2. 下段のガス化炉と上段の改質炉からなる上下二室二段の反応器を有する石炭の水素化熱分解炉であって、前記ガス化炉には、石炭を酸素、又は、酸素及び水蒸気と共に投入するガス化バーナーと、その上方に設置したバイオマス吹き込みノズルを備え、前記改質炉には、石炭及び水素の吹き込みノズルを備えることを特徴とする石炭の水素化熱分解装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109251770A (zh) * 2018-11-28 2019-01-22 新奥科技发展有限公司 一种煤加氢气化方法及应用该方法的加氢气化炉
KR101955602B1 (ko) * 2017-09-05 2019-03-07 한국화학연구원 2단 유동층 가스화기

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