JP5813478B2 - 固体電解コンデンサ - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解コンデンサに関するものである。
従来から弁作用金属として、タンタル、ニオブ等を用いた固体電解コンデンサは、小型で静電容量が大きく、周波数特性に優れることから、CPU等の高速で動作するデバイスを駆動するためのスイッチング電源回路等に広く使用されている。
ここで、従来の固体電解コンデンサの構造を説明する。図2は、従来の固体電解コンデンサの構成を説明する概略断面図である。
図2に示すように、陽極体21は、タンタルやアルミニウム等の弁作用金属の微粉末を成型し焼結した、微小な多数の孔からなる多孔質層を有した焼結体である。陽極体21とともに、コンデンサ素子35の一部となる陽極リード22は、弁作用金属のワイヤー等からなり、陽極体21の任意の面から導出している。陽極体21の多孔質層の表面には酸化皮膜による誘電体層23を形成している。さらに、誘電体層23の表面には固体電解質層24を形成し、固体電解質層24の表面には、グラファイト層25、銀ペースト層26を順次形成し、コンデンサ素子35を構成している。
陽極リード22と銀ペースト層26は、外部電極端子であるリードフレーム28、リードフレーム29に、溶接や導電性接着剤27で電気的に接続される。その後、エポキシ樹脂からなる外装30を設けて固体電解コンデンサ36が完成する。
近年、携帯型電子機器の発展に伴い、特に固体電解コンデンサの小型化及び薄型化が進んでいる。また、短絡電流等による熱負荷(高温加熱)の発生に対し、より高い信頼性を確保した製品の供給が求められ、様々な検討がされている。
特許文献1には、デバイスに短絡電流が発生した場合、開回路状態にして信頼性を確保する手段として、溶断するヒューズを内蔵した固体電解コンデンサが開示されている。しかし、この従来技術では、固体電解コンデンサに対するコンデンサ素子の体積効率が低下するため静電容量を大きくできない問題があった。
さらに、特許文献2や特許文献3には、体積効率を向上するために、溶断するヒューズを内蔵しない従来技術として、熱膨張性黒鉛を含んだ固体電解質層を設けた固体電解コンデンサが開示されている。
特許文献2や特許文献3の固体電解質層は、化学酸化重合法を用いて形成され、化学酸化重合液に熱膨張する前の熱膨張性黒鉛の粉末を混合した状態で化学酸化重合を行うことにより、固体電解質層の内部に所定の含有量で熱膨張性黒鉛を含有させている。また、特許文献3では、固体電解質層が第一の電解質層と、第一の電解質層の上に形成された第二の電解質層からなる2層で形成されており、第二の電解質層の内部に熱膨張性黒鉛を含有させている。
固体電解質層に含まれた熱膨張性黒鉛は、主として層状の黒鉛結晶と層間物とにより構成され、短絡電流等による高温加熱の発生により層間物が分解し、そのガス圧で黒鉛結晶が膨張する特性を有している。この特性を利用し、高温加熱が発生した場合に、固体電解質層の内部に熱膨張性黒鉛に起因した電気的ギャップが形成され、開回路状態を実現し信頼性を確保するとしている。
なお、特許文献2や特許文献3のみならず従来技術として公知である、固体電解質層の形成に用いられている化学酸化重合法とは、モノマー、触媒、ドーパントおよび酸化剤等を溶媒に添加した溶液に、誘電体層が形成された陽極体、すなわち陽極体素子を浸漬させ、誘電体層の表面で重合させる方法である。一般的に、化学酸化重合法では、浸透性が良く、多孔質層の細部まで入り込み易い溶液が用いられ、誘電体層との密着性、およびグラファイト層との密着性を良好にする等の特徴を持つ導電性高分子層が得られる。
また、化学酸化重合法に加え、導電性高分子懸濁溶液による方法も用いられる。この導電性高分子懸濁溶液による方法、すなわち導電性高分子懸濁溶液法とは、予め重合させた上でドーパントを添加した導電性高分子を含有する導電性高分子懸濁溶液に、陽極体素子を浸漬して含浸させ、それを引き上げた後に、加熱により乾燥させて導電性高分子層を形成する方法である。この方法で得られる導電性高分子層は、化学酸化重合法等で得られる導電性高分子層と比較して密度が高く、耐熱性が良いことや、導電性高分子層の形成方法が簡便であるという特徴がある。この方法に用いられる導電性高分子懸濁溶液(特許文献では導電性高分子化合物懸濁水溶液と記載)および製造方法が、特許文献4の請求項2、3、段落0014〜0028に記載されている。
特開2001−176374号公報 特開2009−170882号公報 特開2009−231646号公報 特開平11−121281号公報
特許文献2や特許文献3に開示された技術は、前述した高温加熱が発生した場合に対応する上でかなり有用であったが、より高い信頼性を有するコンデンサの開発が望まれていた。
また、熱膨張性黒鉛を含有した固体電解質層を備えた固体電解コンデンサは、熱膨張性黒鉛の結晶構造に起因することによる導電率の低下から、等価直列抵抗の低減(低ESR化)が困難であるという課題がある。
したがって、本発明は、このような観点からなされたもので、信頼性の向上を図り、低ESRの固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
本発明は、固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層を、液体を均一に保持した導電性高分子層とすることにより、短絡電流が発生した場合に、液体が体積膨張を生じ、導電性高分子層に開回路状態を形成することができる。これにより、信頼性の向上を図った固体電解コンデンサの提供が可能となる。
また、導電率の低下が少ない、液体を保持した導電性高分子層で固体電解質層を構成しているため、低ESRの固体電解コンデンサの提供が可能となる。
すなわち、本発明の固体電解コンデンサは、陽極リードを導出する多孔質層を設けた弁作用金属からなる陽極体と、前記陽極体の表面に順次形成された誘電体層、固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層とを備えたコンデンサ素子を有し、前記コンデンサ素子は外部接続端子と電気的に接続するとともに、絶縁材料により全面を覆う外装を備える固体電解コンデンサであって、前記固体電解質層が、液体を均一に保持した導電性高分子層を有し、前記導電性高分子層の質量に対する前記液体の含有率が4.8mass%以上15.0mass%以下であることを特徴とする。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記液体を均一に保持した導電性高分子層が導電性高分子懸濁溶液法によって形成されていることを特徴とする。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記固体電解質層が、第一の導電性高分子層と、前記第一の導電性高分子層の表面に形成された第二の導電性高分子層からなり、前記第一の導電性高分子層は、化学酸化重合法によって形成され、前記第二の導電性高分子層は、前記液体を均一に保持した導電性高分子層からなり、前記導電性高分子懸濁溶液法によって形成されていることを特徴とする。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記液体を均一に保持した導電性高分子層が、ピロール、アニリン、チオフェン、若しくはフラン等の環状有機化合物、またはそれらの誘導体の重合体からなる導電性高分子の少なくとも1種と、ポリアクリロニトリル、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタクリル酸メチルおよびそれらの親水性の誘導体から選ばれる少なくとも1種とを含むことが好ましい。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記液体を均一に保持した導電性高分子層が、ポリエチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの誘導体からなる親水性の高分子アニオンから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記液体が、水であることが好ましい。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記液体が、n−ペンタノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコールおよびそれらの誘導体からなる親水性のアルコールから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記液体が、酢酸、プロピオン酸、吉草酸およびそれらの誘導体からなる親水性のカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明は、固体電解コンデンサにおいて固体電解質層を、液体を均一に保持した導電性高分子層とすることにより、短絡電流が発生した場合に、液体が体積膨張を生じ、導電性高分子層に開回路状態を形成することができる。これにより、信頼性の向上を図った固体電解コンデンサの提供が可能となる。
また、導電率の低下が少ない、液体を保持した導電性高分子層で固体電解質層を構成しているため、低ESRの固体電解コンデンサの提供が可能となる。
本発明の実施の形態1の固体電解コンデンサの構成を説明する概略断面図。 従来の固体電解コンデンサの構成を説明する概略断面図。
本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の固体電解コンデンサの構成を説明する概略断面図である。本発明の実施の形態1の固体電解コンデンサは、多孔質層を有する弁作用金属の焼結体からなる陽極体1を有し、タンタル等の弁作用金属のワイヤー等からなる陽極リード2を導出する導出面を備える。多孔質層を有する陽極体1の表面には誘電体層3が形成される。
また、弁作用金属は、タンタル、アルミニウム、チタン、ニオブ、ジルコニウム、またはこれらの合金等から適宜選定できる。
誘電体層3は、弁作用金属の表面を電解酸化させた膜であり、陽極体1における陽極リード2の導出面、側面、底面および内部の多孔質層の表面に形成する。誘電体層3の厚みは、電解酸化の電圧によって適宜調整できる。
誘電体層3の表面には固体電解質層を構成する導電性高分子層4を形成し、導電性高分子層4の表面には、グラファイト層5、銀ペースト層6を順次形成し、コンデンサ素子15を構成している。
陽極リード2と銀ペースト層6は、外部電極端子であるリードフレーム8、リードフレーム9に、溶接や導電性接着剤7で電気的に接続される。その後、絶縁材料であるエポキシ樹脂等からなる外装10を設けて固体電解コンデンサが完成する。
ここで本実施の形態の導電性高分子層4は、層全体に均一に液体を保持して構成されている。この構成によって、万が一、携帯型電子機器や装置等が故障し、短絡電流が導電性高分子層4内に達した場合に、加熱により導電性高分子層4に含まれる液体が、急激な体積膨張を生じ、気化し、導電性高分子層4内やグラファイト層5との界面等に剥離を発生させることが出来る。これにより、固体電解コンデンサ18を開回路状態にすることができ、短絡電流が遮断され、信頼性の向上を図った固体電解コンデンサの提供が可能となる。
また、導電率の低下が少ない、液体を保持した導電性高分子層で固体電解質層を構成しているため、低ESRの固体電解コンデンサの提供が可能となる。
(製造方法)
均一に液体を保持した導電性高分子層は、前述した導電性高分子懸濁溶液法を用いて形成される。予め重合させた上でドーパントを添加した導電性高分子を含有する導電性高分子懸濁溶液に、密着性を確保し、さらに液体を保持する作用を有する有機粘着剤と、加熱により体積膨張を生じる液体等を添加し、均一に分散させて本実施の形態の導電性高分子懸濁溶液を作製する。この導電性高分子懸濁溶液に、誘電体層を形成した陽極体である陽極体素子を浸漬して含浸させ、それを引き上げた後に、加熱により乾燥させることによって、均一に液体を保持した導電性高分子層を形成することが可能となる。なお、浸漬時の導電性高分子懸濁溶液の温度は10℃〜30℃で行う。加熱により乾燥させる、温度としては、25℃〜125℃、処理時間は、1サイクルを15分間〜30分間とし、任意のサイクルを繰り返して実施する。
(導電性高分子懸濁溶液の構成)
導電性高分子懸濁溶液を構成する導電性高分子は、導電性を有する高分子材料であれば特に限定されないが、高い導電性を発現する観点から、ピロール、アニリン、チオフェン、あるいはフラン等の環状有機化合物、あるいはそれらの誘導体の重合体が好ましい。またこれらの化合物単一の重合体であってもよいし、複数の化合物の共重合体としてもよい。
さらに導電性高分子懸濁溶液には、下地である陽極体素子の表面との密着性を確保し、さらに液体を保持する有機粘着剤として、ポリアクリロニトリル、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタクリル酸メチルおよびそれらの親水性の誘導体からなる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
さらに導電性高分子懸濁溶液には、下地である陽極体素子の表面との密着性を確保し、さらに液体を保持する有機粘着剤として、ポリエチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの誘導体からなる親水性の高分子アニオンの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
また、導電性高分子懸濁溶液には、粘度を調節し、分散性を向上させるための添加剤として、エリスリトールおよびペンタエリスリトール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールの少なくとも1種を含んでもよい。
本発明の導電性高分子層全体に均一に保持させる液体としては、毒性、腐食性、引火性等がなく、常温常湿の作業環境中で安定して作業ができ、溶媒としても用いられることから、水が好ましい。
また、層全体に均一に保持させる他の液体として、n−ペンタノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコールおよびそれらの誘導体からなる親水性のアルコールから選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
さらに層全体に均一に保持させる他の液体として、酢酸、プロピオン酸、吉草酸およびそれらの誘導体からなる親水性のカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
上述した液体を適宜選定して導電性高分子懸濁溶液の溶媒に用いる、または溶媒である水と混合することによって、導電性高分子層全体に均一に保持させることが可能になる。
なお、上述した液体を適宜選定して組み合わせることによって、固体電解コンデンサにおける導電率も調整可能である。
本発明における液体の保持を可能にするメカニズムを述べる。前述した下地である陽極体素子の表面との密着性を確保する、ポリアクリロニトリル、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタクリル酸メチル等には、水酸基(−OH)、スルホン基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)等の親水性の官能基が結合している。これらを添加した導電性高分子懸濁溶液を用いて導電性高分子層を形成することによって、水や親水性の液体を均一に保持する導電性高分子層が得られる。
また、前述した下地である陽極体素子の表面との密着性を確保する、ポリエチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子アニオンには、親水性の官能基であるスルホン基(−SOH)が結合している。これらも同様に水や親水性の液体を均一に保持する導電性高分子層の形成に寄与している。さらに、ポリエチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等は、ドーパントとしても機能している。
なお、均一に液体を保持した導電性高分子層の質量における液体を保持する率、すなわち液体の含有率は、短絡電流が発生した場合に、十分に開回路状態を形成させることと、導電率を高めるために1.0mass%以上15.0mass%以下であることが好ましい。
また、導電性高分子層における液体の含有率は、上述した親水性の官能基を有する物質の混合率によって調整することが可能である。
本発明の液体を保持した導電性高分子層は、通常のリフロー工程では開回路状態に至らないことを確認している。推定される理由としては、製品構造上、コンデンサ素子は陰極や陽極のリードフレームにガードされ、かつ熱膨張係数が小さく製品内部に熱を直接伝え難いモールド樹脂にもガードされているため、また、リフロー工程では通常、予備加熱(例150℃〜180℃)、本加熱(例217℃〜230℃)、ピーク温度(例260℃)のように時間をかけて緩やかに昇温されるため、さらに、ユーザでリフローを実装する場合は、コンデンサよりも、体積、熱容量が大きい他の多くの被加熱物(例えば基板、半導体、コイル等の受動部品)とともに加熱され、コンデンサ単体の温度上昇が緩やかになるため、等が挙げられる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の固体電解コンデンサは、基本構成は実施の形態1と同様であるが、固体電解質層を、誘電体層の表面に形成される第一の導電性高分子層と、第一の導電性高分子層の表面に形成される第二の導電性高分子層の2層構造としている。
第一の導電性高分子層は、従来技術で用いられる化学酸化重合法にて形成する。第二の導電性高分子層は、本発明の液体を均一に保持した導電性高分子層である。化学酸化重合法を用いることによって、陽極体素子の微細な多孔質層にも入り込んだ、誘電体層との密着性の高い、第一の導電性高分子層を形成することができる。第一の導電性高分子層の表面に、導電性高分子懸濁溶液法を用いて高密度の均一に液体を保持した第二の導電性高分子層を形成することによって、信頼性の向上が図れる固体電解コンデンサの提供が可能になる。
また、導電性高分子層を2層構造にしているため、静電容量の出現も向上し、さらに低ESR化が図れる固体電解コンデンサの提供が可能となる。
以下に本発明の実施例を詳述する。
参考例1)
陽極体を構成する弁作用金属には、平均粒径が約1μmのタンタル金属微粉末を用いた。直径0.29μmのタンタル線からなる陽極リードをタンタル金属微粉末に埋設し、加圧成型したものを、真空中において焼結して陽極体を得た。その陽極体を、液温60℃に保持した0.06mass%のリン酸水溶液中で100Vにて3時間陽極酸化を行なって、陽極体の表面に誘電体層を形成した陽極体素子を得た。この陽極酸化処理を完了した後に、陽極体素子を30mass%硫酸水溶液に浸漬して、CV積(陽極体素子の有する静電容量と陽極酸化電圧との積)を算出したところ、4900μF×Vであった。
次に、ピロールモノマーを0.1mol/l(以下、Mと記す)、ドーパントとしての2−ナフタレンスルホン酸を0.2M、酸化剤としての硝酸第二鉄を0.1Mとなるように混合したエタノール溶液を作製し、零下35℃以下に保持しながら約5時間攪拌した。その後、この溶液を室温下に5時間放置して、得られた固形物を濾過して取り出し、さらにエタノールで過剰のピロールと2−ナフタレンスルホン酸および硝酸第二鉄を除去した。その後、室温で48時間乾燥させてからボールミルで粉砕処理して粉末状のポリピロールを得た。
次に、この粉末状のポリピロールを20mass%、液体を保持する有機粘着剤としてのメタクリル酸メチルを1.5mass%、分散を良好にし、かつ液体を保持する分散剤としてのメチルセルロースの誘導体であるカルボキシメチルセルロースを0.5mass%、溶媒および保持させる液体としての純水を残分の78.0mass%の組成となるように混合し、本発明に用いる導電性高分子懸濁溶液を作製した。
この導電性高分子懸濁溶液に、前述の陽極体素子を浸漬し、1Torrの減圧雰囲気下で1分間保持することによって、陽極体素子の内部へポリピロール等を含漬させた。その後、85℃で15分間、さらに、125℃で15分間乾燥させた。この減圧雰囲気下での浸漬と、乾燥の工程をトータルで5回繰り返して、本発明における液体を均一に保持する導電性高分子層を形成した。
この時点で本発明における液体を均一に保持する導電性高分子層を形成した陽極体素子を抜き取り、陽極体素子の外周部から導電性高分子層を採取し、カールフィッシャー法で、水の含有率を測定した。その結果、含有率は1.0mass%であった。
その後、グラファイトペーストへ浸漬し、乾燥処理を行なってグラファイト層を形成した。さらに、銀ペーストへ浸漬し、乾燥処理を行なって銀ペースト層を形成した。陽極リードと外部電極端子を溶接で接続し、銀ペースト層と外部電極端子を導電性接着剤で接続した。最後にエポキシ樹脂でトランスファーモールド成型を施して外装を形成し、参考例1の固体電解コンデンサを完成させた。
(実施例2)
実施例2は、導電性高分子懸濁溶液の構成材料と導電性高分子層の形成時の浸漬と乾燥の工程を変更した以外は、参考例1と同様である。
3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマーを0.1M、ドーパントとしてのパラトルエンスルホン酸を0.1M、2−ナフタレンスルホン酸を0.2M、酸化剤としてのペルオキソ2硫酸アンモニウムを0.1Mとなるように混合したエタノール溶液を作製し、零下50℃以下に保持しながら約12時間攪拌した。
その後、この溶液を室温で12時間放置して、得られた固形物を濾過して取り出し、さらにエタノールで過剰となった3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーとパラトルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸およびペルオキソ2硫酸アンモニウムを除去した。その後、室温で12時間乾燥させてからボールミルで粉砕処理して粉末状のポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
次に、この粉末状のポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンを1.0mass%、液体を保持する有機粘着剤かつ高分子ドーパントとして機能するポリエチレンスルホン酸を0.5mass%、分散性を高める添加剤としてのジメチスルフォキシドを3.0mass%、溶媒および保持させる液体としての純水を残分の95.5mass%の組成となるように混合し、導電性高分子懸濁溶液を作製した。
この導電性高分子懸濁溶液に、前述の陽極体素子を浸漬し、1Torrの減圧雰囲気下で5分間保持することによって、陽極体素子の内部へ導電性高分子懸濁溶液を含漬させた。その後、25℃で15分間、85℃で15分間、さらに125℃で15分間乾燥させた。この減圧雰囲気下での浸漬と、乾燥の工程をトータルで8回繰り返して、導電性高分子層を形成した。
参考例1と同様に導電性高分子層を採取し、カールフィッシャー法で、水の含有率を測定した。その結果、含有率は4.8mass%であった。
(実施例3)
実施例3は、導電性高分子懸濁溶液の構成材料を変更した以外は、実施例2と同様である。
2−エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマーを0.1M、ドーパントとしての2−ナフタレンスルホン酸を0.2M、パラトルエンスルホン酸を0.1M、酸化剤としてのペルオキソ2硫酸アンモニウムを0.1Mとなるように混合したエタノール溶液を作製し、零下50℃以下に保持しながら約24時間攪拌した。
その後、この溶液を室温で24時間放置して、得られた固形物を濾過して取り出し、さらにエタノールで過剰になった2−エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーと2−ナフタレンスルホン酸とパラトルエンスルホン酸、およびペルオキソ2硫酸アンモニウムを除去した。その後、室温で48時間乾燥させてからボールミルで粉砕処理して粉末状のポリ2−エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
次に、この粉末状のポリ2−エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンを1.0mass%、液体を保持する有機粘着剤かつ高分子ドーパントとして機能するポリスチレンスルホン酸を1.0mass%、分散性を高める添加剤としてのペンタエリスリトールを5.0mass%、溶媒および保持させる液体としての純水を残分の93.0mass%の組成となるように混合し、導電性高分子懸濁溶液を作製した。
この導電性高分子懸濁溶液に、前述の陽極体素子を浸漬し、1Torrの減圧雰囲気下で5分間保持することによって、陽極体素子の内部へ導電性高分子懸濁溶液を含漬させたのち、25℃で15分間、85℃で30分間、さらに125℃で15分間乾燥させた。この減圧下での浸漬処理と乾燥をトータルで8回繰り返して、導電性高分子層を形成した。
参考例1と同様に導電性高分子層を採取し、カールフィッシャー法で、水の含有率を測定した。その結果、含有率15.0mass%であった。
参考例4)
参考例4は、実施例2で用いた導電性高分子懸濁溶液を使用し、導電性高分子層の形成方法を変更した以外は、参考例1と同様である。
参考例4は、導電性高分子層を2層構造とした。まず、化学酸化重合法によって陽極体素子の 表面に第一の導電性高分子層を形成し、次に導電性高分子懸濁溶液法によって、第一の導電性高分子層の表面に第二の導電性高分子層を形成した。その手順を以下に説明する。
参考例1、実施例、3と同様の構成材料、工法で作製した陽極体素子を、0.1Mのペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液に3分間浸漬して乾燥させたのち、0.1Mの3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーのエタノール溶液に3分間浸漬して引き上げ、室温で1時間乾燥させてから、エタノール溶液に5分間浸漬して反応物の残渣を除去した。この一連の化学酸化重合を4回繰り返して、陽極体素子の多孔質層に、第一の導電性高分子層としての導電性高分子層を形成した。
次に、実施例2で調製したものと同等の導電性高分子懸濁溶液に、第一の導電性高分子層の形成を終えた陽極体素子を浸漬し、1Torrの減圧雰囲気下で5分間保持させた。その後、25℃で15分間、85℃で30分間、さらに125℃で15分間乾燥させた。この減圧雰囲気下での浸漬処理と乾燥をトータルで4回繰り返して、第一の導電性高分子層の表面に、第二の導電性高分子層を形成した。
参考例1と同様に導電性高分子層を採取し、カールフィッシャー法で、水の含有率を測定した。その結果含有率は1.0mass%であった。
(実施例5)
実施例5は、化学酸化重合法によって第一の導電性高分子層を形成する工程までは、参考例4と同様であるが、第一の導電性高分子層の表面に第二の導電性高分子層を形成した
導電性高分子懸濁溶液の構成材料、工法が異なる。その手順を以下に説明する。
3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマーを0.1M、ドーパントとしてのパラトルエンスルホン酸を0.1M、2−ナフタレンスルホン酸を0.2M、酸化剤としてのペルオキソ2硫酸アンモニウムを0.1Mとなるように混合したエタノール溶液を作製し、零下50℃以下に保持しながら約12時間攪拌した。その後、この溶液を室温で12時間放置して、得られた固形物を濾過して取り出し、さらにエタノールで過剰の3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーとパラトルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸およびペルオキソ2硫酸アンモニウムを除去した後、室温で12時間乾燥させてからボールミルで粉砕処理して粉末状のポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
次に、この粉末状のポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンを1.0mass%、液体を保持する有機粘着剤かつ高分子ドーパントとして機能するポリスチレンスルホン酸を0.5mass%、分散性を高める添加剤としてのエチレングリコールを5.0mass%、溶媒および保持させる液体としての純水を残分の93.5mass%の組成となるように混合し、導電性高分子懸濁溶液を調製した。
この導電性高分子懸濁溶液に、第一の導電性高分子層を形成した陽極体素子を浸漬し、1Torrの減圧雰囲気下で5分間保持した。その後、25℃で15分間、85℃で30分間、さらに125℃で15分間乾燥させた。この減圧下での浸漬処理と乾燥をトータルで4回繰り返して、第二の導電性高分子層を形成した。
参考例1と同様に導電性高分子層を採取し、カールフィッシャー法で、水の含有率を測定した。その結果含有率は5.5mass%であった。
(実施例6)
導電性高分子層を二層構造とする点は参考例4、実施例5と同様であるが、第一の導電性高分子層を形成した化学酸化重合の液、工程が異なる。また、第二の導電性高分子層を形成した導電性高分子懸濁溶液は実施例3と同様のものを用いたが工程が異なる。その手順を以下に説明する。
2−エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマーを0.1M、ドーパントとしての2−ナフタレンスルホン酸を0.2M、パラトルエンスルホン酸を0.1M、酸化剤としてのペルオキソ2硫酸アンモニウムを0.1Mとなるように混合したエタノール溶液を作製し、零下50℃以下に保持しながら約24時間攪拌した。
そのエタノール溶液に陽極体素子を5分間浸漬させ、引き上げて室温に1時間保持して化学酸化重合を進行させた。この浸漬引き上げを6回繰り返して、陽極体素子の表面に、第一の導電性高分子層を形成した。
次に、前述の実施例3で作製したものと同等の導電性高分子懸濁溶液に、第一の導電性高分子層の形成を終えた陽極体素子を浸漬し、1Torrの減圧雰囲気下で5分間保持した。その後、25℃で15分間、85℃で30分間、さらに125℃で15分間乾燥させた。この減圧下での浸漬処理と乾燥をトータルで6回繰り返して、第二の導電性高分子層を完成させた。
参考例1と同様に形成した導電性高分子層を採取し、カールフィッシャー法で、水の含有率を測定した。その結果、含有率は15.0mass%であった。
なお、これら実施例で得られたすべての固体電解コンデンサの仕様は、定格電圧35V、静電容量47uFである。
(比較例1)
比較例として、固体電解コンデンサにおいて、開回路状態を発生する要因として、寄与率が最も高いと考えられる熱膨張性黒鉛の含有比率に注目してサンプルを作製した。
比較例1では、本発明の参考例4、実施例5との比較評価ができるようするために、化学酸化重合法によって陽極体素子の表面に第一の導電性高分子層を形成する工程までは、本発明の参考例4、実施例5と同じ構成とした。
続いて、1Mのペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液と、1Mの3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーを混合したエタノール溶液に、10mass%の含有率となるように熱膨張性黒鉛粉末を添加して攪拌した混合液を調製した。熱膨張性黒鉛粉末は、60メッシュ:最大粒径250μmが70%以上のものを用いた。そして、この混合液に、第一の導電性高分子層を形成した陽極体素子を浸漬し、大気中で2時間放置することにより重合反応を進行させて熱膨張性黒鉛を混入させた第二の導電性高分子層を形成した。
その後、グラファイトペーストへ浸漬し、乾燥処理を行なってグラファイト層を形成した。さらに、銀ペーストへ浸漬し、乾燥処理を行なって銀ペースト層を形成した。そして、陽極リードと陽極端子を溶接で接続し、銀ペースト層と陰極端子を導電性接着剤で接続した。最後にエポキシ樹脂でトランスファーモールド成型を施して外装を形成し、比較例1の固体電解コンデンサを完成させた。なお、得られたコンデンサの仕様は、実施例と同様に定格電圧35V、静電容量47uFである。
(比較例2)
第二の導電性高分子層に混在させる熱膨張性黒鉛の含有率を、10mass%でなく、65mass%とした以外は、比較例1に記載の構成と同様とした。
それぞれの実施例、比較例で作製した固体電解コンデンサの100個についてESRを測定した。LCRメータを用い、周波数100kHzにて、DCバイアス1.5Vで、実効値0.5Vの正弦波を重畳してESRを測定し、その平均値を求めた。
ESRの測定を終えた固体電解コンデンサに対して開回路状態の発生を確認した。方法としてはプログラマブル電源を用いて固体電解コンデンサに電圧印加し、1Vずつ昇圧させながら、漏れ電流を測定した。漏れ電流が2Aを越えた時点で終了し、固体電解コンデンサの内部剥離、クラック発生状態を観察し、開回路状態の発生を確認した。
本来は電圧を印加した固体電解コンデンサを1個ずつ断面研磨して電子顕微鏡で観察するのが好適であるが、多数の試料を一度に簡便に観察するために超音波探査映像装置(SAT)を用いた。測定プローブは周波数75MHzのものを用いた。SATによる観察の場合、初期状態または剥離やクラックのない固体電解コンデンサは全体が黒色を呈する。一方で内部に剥離やクラック発生した固体電解コンデンサは、剥離発生部分が白色を呈する。ここでは得られたSAT像で素子に相当する領域を50分割し、その中の白色部分の割合を判定する画像処理を行ない、素子面積の90%以上が白色と判定された固体電解コンデンサを開回路状態に至ったものとみなした。観察した数量は100個である。
これらの含有率、ESRの測定結果、開回路状態の発生数の判定結果の結果を表1に示す。
Figure 0005813478
表1に示すように、本発明の実施例2、3、5、6では、比較例1、2と比べて、全数において開回路状態を発生していることが確認された。従って、本発明により、信頼性の向上を図った固体電解コンデンサが得られた。
また、同様に、実施例2、3、5、6は、比較例1、2と比べてESRが低いことがわかる。従って、本発明により、低ESRの固体電解コンデンサが得られた。
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
1、21 陽極体
2、22 陽極リード
3、23 誘電体層
4 導電性高分子層
5、25 グラファイト層
6、26 銀ペースト層
7、27 導電性接着剤
8、9、28、29 リードフレーム
10、30 外装
15、35 コンデンサ素子
18、36 固体電解コンデンサ
24 固体電解質層

Claims (8)

  1. 陽極リードを導出する多孔質層を設けた弁作用金属からなる陽極体と、前記陽極体の表面に順次形成された誘電体層、固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層とを備えたコンデンサ素子を有し、前記コンデンサ素子は外部接続端子と電気的に接続するとともに、絶縁材料により全面を覆う外装を備える固体電解コンデンサであって、前記固体電解質層が、液体を均一に保持した導電性高分子層を有し、前記導電性高分子層の質量に対する前記液体の含有率が4.8mass%以上15.0mass%以下であることを特徴とする固体電解コンデンサ。
  2. 前記液体を均一に保持した導電性高分子層は、導電性高分子懸濁溶液法によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  3. 前記固体電解質層が、第一の導電性高分子層と、前記第一の導電性高分子層の表面に形成された第二の導電性高分子層からなり、前記第一の導電性高分子層は、化学酸化重合法によって形成され、前記第二の導電性高分子層は、前記液体を均一に保持した導電性高分子層からなり、前記導電性高分子懸濁溶液法によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
  4. 前記液体を均一に保持した導電性高分子層が、ピロール、アニリン、チオフェン、若しくはフラン等の環状有機化合物、またはそれらの誘導体の重合体からなる導電性高分子の少なくとも1種と、ポリアクリロニトリル、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタクリル酸メチルおよびそれらの親水性の誘導体から選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
  5. 前記液体を均一に保持した導電性高分子層が、ポリエチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの誘導体からなる親水性の高分子アニオンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
  6. 前記液体が、水であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
  7. 前記液体が、n−ペンタノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコールおよびそれらの誘導体からなる親水性のアルコールから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
  8. 前記液体が、酢酸、プロピオン酸、吉草酸およびそれらの誘導体からなる親水性のカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
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