JP5811750B2 - プロピレン製造用触媒の製造方法及びプロピレンの製造方法 - Google Patents

プロピレン製造用触媒の製造方法及びプロピレンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリル化されたCHA型構造を有するゼオライトを含むプロピレン製造用触媒の製造方法に関する。
従来、プロピレンを製造する方法としてはナフサのスチームクラッキング法や減圧軽油の流動接触分解法が一般的に実施されている。しかしスチームクラッキング法ではプロピレンの他にエチレンも大量に生産される上に、プロピレンとエチレンの製造割合を大きく変えることは難しいため、プロピレンとエチレンの需給バランスの変化に対応することは困難であった。そこでエチレンを原料として高い収率でプロピレンを製造する技術が望まれていた。
特許文献1には、外表面酸点をシリル化したCHA型ゼオライトを触媒として用い、エチレンを前記触媒と接触させることにより、プロピレンを高い選択率で得られることが提示されている。CHA型ゼオライトの外表面酸点をシリル化によって被覆したことにより、外表面の酸点で起こる形状選択性の利かない反応が抑制されていることにより高いプロピレン選択率が実現できているものと考えられる。しかし、ゼオライトのシリル化に際しては、下記のような問題点があった。
特許文献1ではCHA型構造を有するゼオライトをシリル化する方法として、ゼオライトに各種のシリル化剤を作用させるが、その際、シリル化反応の溶媒としてヘキサメチルジシロキサンを用いている。しかしヘキサメチルジシロキサンは、汎用性の低い非常に高価な有機化合物であり、触媒の製造コストが高くなるため、工業的スケールでの触媒製造に採用することは困難である。工業化に際し、安価で好ましい溶媒を用いた製造方法が求められていた。
一方、ゼオライトをシリル化する方法として、特許文献2では、アルキルベンゼン製造用の触媒の製造において、モルデナイト(MOR型ゼオライト:酸素12員環及び8員環細孔)やクリノプチルライト(HEU型ゼオライト:酸素10員環及び8員環細孔)といったゼオライトをシリル化剤で処理する際に、反応溶媒として有機溶剤を使用し、一定量の水分を含有したゼオライトを用いている。これにより、所望のアルキルベンゼン類の選択率が向上することを提示している。
国際公開第2010/128644号 特開平8−198781号公報
本発明は、前述の従来技術に鑑み、エチレンを原料とするプロピレン製造に用いるシリル化されたCHA型ゼオライトの製造において、高い選択率でプロピレンを製造するためのプロピレン製造用触媒の安価で汎用性の高い製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、炭化水素溶媒存在下、水分含有量が 10重量%以上25重量%以下のCHA型構造を有するゼオライトを
シリル化処理することにより、外表面酸点が高効率的に被覆されることを見出した。そして、得られたCHA型ゼオライトをプロピレン製造用触媒とし、エチレンと接触させプロピレンへ転化させる反応において、従来技術に対して、さらに炭素数5以上成分(以下、C5以上成分)の副生を抑制し、高い選択率でプロピレンを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下に存する。
[1]CHA型構造を有するゼオライトをシリル化するシリル化工程を含むプロピレン製造用触媒の製造方法であって、前記シリル化工程において炭化水素溶媒存在下、水分含有量が10重量%以上25重量%以下のCHA型構造を有するゼオライトをシリル化剤と反応させることを特徴とするプロピレン製造用触媒の製造方法。
[2]上記CHA型構造を有するゼオライトのSiO/Alモル比が、5以上300以下であることを特徴とする上記[1]に記載のプロピレン製造用触媒の製造方法。[3]上記炭化水素溶媒が、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンのいずれかであることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のプロピレン製造用触媒の製造方法。
[4]上記シリル化剤が、シリコーン、クロロシラン、アルコキシシラン、シロキサン及びシラザンのいずれかであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1に記載のプロピレン製造用触媒の製造方法。
[5]上記シリル化剤が、分子内に少なくとも2つ以上のアルコキシ基を有するアルコキシシランであることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか1に記載のプロピレン製造用触媒の製造方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1に記載の方法で得られたプロピレン製造用触媒に、エチレンを接触させてプロピレンを製造することを特徴とするプロピレンの製造方法。
本発明によれば、CHA型構造を有するゼオライトを炭化水素溶媒存在下、特定の範囲の水分を含有した状態でシリル化処理することにより、安価で汎用性の高い製造方法を提供することができる上、エチレンを触媒と接触させてプロピレンを製造する方法において、C5以上成分の副生を抑制し、さらに高い選択率でプロピレンを製造可能なプロピレン製造用触媒を製造することができる。C5以上成分の副生は、プロピレン収率の低下をもたらし、一定の生産量を確保するために必要な原料使用量が増加し、プロピレン製造コストが高くなる。そして反応器出口ガスをリサイクルする場合、分子径が大きいC5以上成分(特に分岐鎖を有するもの)は、CHA型細孔内への拡散効率が低く、反応効率が低下するため、リサイクル成分としては好ましくない。また、C5以上成分を多く含む反応器出口ガスをリサイクルせずに精製系にて分離する場合、C5以上成分の副生量が多いほど、分離精製の負荷が大きくなり、エネルギー消費量が増大するため、プロピレン製造コストが高くなる。本発明の方法により得られた触媒を使用することにより、C5以上成分の副生が抑制され、分離精製負荷が小さくなり、プロピレン製造コストの削減も可能となる。
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではない。
本発明のプロピレン製造用触媒の製造方法は、炭化水素溶媒存在下、10重量%以上25重量%以下の水分を含有したCHA型構造を有するゼオライトを、シリル化剤と反応させることを特徴とする。
以下、本発明における構成成分について説明する。
(1)CHA型構造を有するゼオライト
先ず、本発明の方法で用いられるCHA型構造を有するゼオライト(以下これを、「CHA型ゼオライト」ということがある。)の物理的性質について説明する。
<構造>
本発明において、CHA構造とは、International Zeolite Association(以下、これ
を「IZA」と略称することがある。)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものを指す。これは、天然に産出するチャバサイト(chabazite)と同等の結
晶構造を有するゼオライトである。
<物性>
CHA構造を有するゼオライトは、3.8×3.8Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。また、そのフレームワーク密度は14.5T/1000Åである。ここでのフレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Åあたりの酸素以外の骨格を構成する原子の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトの構造の関係は、Atlas of Zeolite Framework Types, 6th revised edition, 2007に示されている。
本発明におけるCHA型ゼオライトの粒子径は、特に限定されるものではないが、通常は以下に記載の測定方法でBJH法により得られる細孔径分布の100Å以上200Å以下の範囲の全細孔容積が、通常10×10−3ml/g以上であり、好ましくは20×10−3ml/g以上であり、さらに好ましくは30×10−3ml/g以上である。上限は特になく、通常100×10−3ml/g以下である。この値は粒界に起因するものと考えられ、この値が大きいものは粒子径が小さく、小さいものは粒子径が大きいと考えられる。この値が前記下限未満では、粒子径が大きいため、触媒として用いた場合に、反応基質が細孔の内部まで十分に進入できず、ゼオライトの利用率が低下すると考えられ、触媒重量あたりの活性が低下する。また、重量あたりの外表面積が小さいため、シリル化が過度に進行して、細孔を閉塞してしまう可能性が考えられる。前記上限超過では、粒子径が細かいためにシリル化後のゼオライトと溶媒の分離が困難になる可能性が考えられる。
細孔径の測定方法は特に限定されるものではないが、通常は窒素を吸着ガスとし、液体窒素温度での相対圧で吸着時および脱着時の平衡吸着量を測定することで窒素吸着等温線を測定し、得られた等温線からBJH法にて累積細孔容積を算出する。詳細は実施例にて述べる。
本発明におけるゼオライトの全体の酸量(以下、単に全体酸量ということがある。)とは、ゼオライトの全体の酸量であり、具体的には外表面および細孔内部の酸量の総和をいう。
ゼオライトの全体の酸量は、ゼオライトの酸点に選択的に吸着させることができ、且つ細孔内部にも入ることができる物質を、ゼオライトに吸着させ、その吸着量を定量することにより測定することができる。前記の物質は、特に限定されるものではないが、具体的には、アンモニアを用いることができる。
アンモニア吸着量の定量方法は特に限定されないが、通常以下の手順により測定することができる。前処理としてゼオライトを乾燥させた後、アンモニア蒸気と接触吸着させる。引き続き余剰アンモニアを除き、アンモニアを吸着させたゼオライトを得る。前記アンモニアを吸着させたゼオライトの、単位重量当たりのアンモニアの脱離量を、昇温脱離法(以下、「TPD」と称する)により測定し、全体酸量を求めることができる。
全体酸量は、特に限定されるものではないが、通常4.8mmol/g以下であり、好ましくは2.8mmol/g以下である。また、通常0.15mmol/g以上であり、好ましくは0.30mmol/g以上である。前記上限超過では、前記ゼオライトを炭化
水素転化反応の触媒として用いた場合に、コーク生成による失活が速くなる、金属が骨格から抜けやすくなる(いわゆる脱アルミニウム)、酸点当たりの酸強度が弱くなるといった傾向があり、前記下限未満では、酸量が少ないため、触媒としての活性が低下する傾向がある。
本発明におけるゼオライトの外表面酸量(以下、単に外表面酸量ということがある。)とは、ゼオライトの外表面に存在する酸点の総量を表す。
外表面酸量は、ゼオライトの酸点に選択的に吸着させることができ、且つゼオライト細孔内部に入ることができない物質を、ゼオライトに吸着させ、その吸着量を定量することにより測定することができる。前記の物質は、特に限定されるものではないが、具体的にはピリジンを用いることができる。
ピリジン吸着量の定量方法は特に限定されないが、通常以下の手順により測定することができる。前処理としてゼオライトを乾燥させた後、ピリジン蒸気と接触吸着させる。引き続き余剰ピリジンを除き、ピリジンを吸着させたゼオライトを得る。前記ピリジンを吸着させたゼオライトの、単位重量当たりのピリジンの脱離量を、昇温脱離法により測定し、外表面酸量を求めることができる。
外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.6mmol/g以下であり、好ましくは0.3mmol/g以下である。前記上限超過では、前記ゼオライトを触媒として用いた場合に、ゼオライトの外表面で形状選択的でない反応が起こり、副生成物の増大を引き起こし、プロピレン選択率が低下する場合がある。
<構成元素およびその組成>
本発明におけるCHA型ゼオライトは、通常Siと金属M、金属Mとして好ましくは3価の金属、の複合酸化物で構成される。金属Mとしては、例えばアルミニウム、ガリウム、鉄、ホウ素、チタン、ジルコニウム、スズ等が挙げられる。これらのうち、アルミニウム、ガリウム、ホウ素が好ましく用いられ、より好ましくはアルミニウムであり、ケイ素とアルミニウムで構成されるアルミノシリケートや、さらにリンを含むシリコアルミノフォスフェートが、本発明のCHA型ゼオライトとして好ましく、アルミノシリケートがより好ましい。
アルミニウムを含むゼオライトは適度に強い酸強度を持ち、また酸量も幅を持たせて合成できることから、触媒としての適用範囲を広くできる。またアルミニウムはクラーク数が大きく、豊富に存在する元素であり、安価であるため好ましい。
通常、上記の金属Mの原子源化合物(以下、M原子源ということがある)を、後述する水熱合成反応における反応混合物に、Si原子源とともに添加することで、結晶化後に骨格に取り込まれる。
CHA型ゼオライト中の構成原子の比率は、特に限定されるものではないが、CHA型ゼオライト中に含まれるM(Mは3価の金属)に対するSiOのモル比(SiO/M) で表した場合、通常5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以
上、更に好ましくは15以上である。また上限は、通常300以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。なお、上記CHA型ゼオライト中のMに対するSiOのモル比は、生成したゼオライト中のSi原子源が全てSiOとして含まれ、M原子源がMとして含まれると仮定して求める値である。前記下限未満では、コーク付着による失活が速くなる、アルミニウムが骨格から抜けやすくなる(脱アルミニウム)、酸点当たりの酸強度が弱くなるといった傾向がある。また、前記上限超過では、酸量が少ないため、エチレンの転化率が低下する場合がある。
ゼオライトの骨格構造内に3価の金属Mが入った際、電荷バランスを補償するため、通常、金属原子に対するカウンターカチオンが存在する。具体的なカウンターカチオン種と
しては、特に限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウムイオン、あるいはプロトン等が挙げられる。
上記カウンターカチオンが、プロトンであるものを、以下「H型」といい、それ以外のものを総称して「非H型」と言う。
「非H型」として好ましくは、ゼオライト骨格中にアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムイオンをカウンターカチオンとして有するものであり、より好ましくは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムイオン、さらに好ましくはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムイオンをカウンターカチオンとして有するものである(なお、これらを以下で「ナトリウム型」「カリウム型」「アンモニウム型」ということがある。)。また、通常、ゼオライトを触媒として用いる場合は、「非H型」では触媒機能が低い。後述の水熱合成反応により得られるゼオライトは、通常は「非H型」のゼオライトであるため、通常「H型」に変換するのが好ましい。
「H型」として好ましくは、「非H型」ゼオライトに対して、骨格構造を維持できる条件下で各種の酸を作用させる方法、またはアンモニウム型ゼオライトへ変換したものを焼成する方法により得られるものであり、より好ましくはカウンターカチオン全てがプロトンであるものである。
本発明の触媒の製造方法は、「非H型」または「H型」のいずれのゼオライトにも適用できる。
(2)CHA型構造を有するゼオライトの製造方法
本発明により得られるプロピレン製造用触媒は、非H型またはH型のCHA型ゼオライトを製造し、10重量%以上25重量%以下の水分を含有した前記CHA型ゼオライトを、炭化水素溶媒存在下、シリル化剤と反応させることで、シリル化されたCHA型構造を有するゼオライトを得る。まず、シリル化に供するCHA型構造を有するゼオライトの製造方法について述べる。
本発明における、CHA型構造を有するゼオライトは、通常、特定の組成に調整された、Si原子源、M原子源、アルカリ水溶液を含む反応混合物を用いた水熱合成により製造することができる。前記反応混合物中には、各種構造規定剤を添加してもよく、また種結晶を添加してもよい。ここで、「反応混合物」とは、水熱合成に供するための原料混合物を意味する。
前記反応混合物を、必要に応じて種結晶と共に、反応容器中に密閉して加熱し、ゼオライトを結晶化させる。結晶化したゼオライトでは、通常反応混合物中のアルカリ源がカウンターカチオンとなる。
<原料>
前記Si原子源としては、特に限定されないが、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形シリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、トリメトキシエトキシシラン等が挙げられる。
また、Si原子源は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記M原子源としては、特に限定されないが、前記3価の金属の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩などの各種の金属塩、または金属シリケートゲルなどが用いられる。例えばM原子がアルミニウム原子の場合、具体的には水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、無定形アルミノシリケートゲル等が挙げられる。なお、M原子源としては、上記1種のみの原子源を用い
てもよく、2種以上の原子源を混合して用いてもよい。
アルカリ水溶液に用いられるアルカリ源は、特に限定されないが、通常、金属を含有する(以下、アルカリ由来金属という)。アルカリ由来金属としては、通常、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられ、好ましくは溶解性の高さからアルカリ金属である。
アルカリ金属源としては、例えば、LiOH、NaOH、KOH、CsOH等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。また、アルカリ土類金属源としては、例えば、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。
<構造規定剤>
本発明におけるCHA型構造を有するゼオライトの製造においては、必要に応じて反応混合物に構造規定剤を添加して水熱合成を行うことができる。構造規定剤としては、反応混合物からCHA型ゼオライトの結晶化を促進しうるものであれば特に限定されないが、例えば、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオン、3−キヌクリジナールから誘導されるカチオン、2-exo-アミノノルボルネンから誘導されるカチオン等の脂環式アミンから誘導されるカチオン、N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオン等が挙げられ、高シリカゼオライトの結晶化を促進する点で、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンが好ましい。N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンとして好ましいのは、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンであり、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンとして好ましいのは、N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムカチオンである。これらの構造規定剤は、1種類のみ使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
構造規定剤を使用した場合、結晶化が促進される面で有利である。またアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、耐酸性、水熱合成反応における安定性が向上したアルミノシリケートを結晶化させることができる点で好ましい。
構造規定剤を使用する場合、構造規定剤とSi原子源の割合は、特に限定されるものではないが、Si原子に対する構造規定剤のモル比として、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、また上限は、通常1.0以下、好ましくは0.5以下で、より好ましくは0.3以下である。構造規定剤が、ゼオライト構造のCHAケージ4つに1つの割合で入る程度の量が存在すれば、結晶化が容易になる。
前記下限未満では、CHA型ゼオライトの結晶化が促進されないことがあり、前記上限超過では結晶化は容易になるが、生成物の水熱安定性、耐酸性が低下する場合がある。構造規定剤を使用しない場合、コスト面、または水熱合成後の廃液処理の手間が軽減する面で有利である。
<種結晶>
本発明におけるCHA型ゼオライトの製造においては、必要に応じ反応混合物に種結晶を添加して水熱合成を行うことができる。種結晶は、適当な溶媒、例えば水に分散させて反応混合物に添加してもよいし、分散させずに添加してもよい。
前記CHA型ゼオライトの製造において使用する種結晶は、結晶化を促進するものであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためにはCHA型ゼオライト、中でもCHA型アルミノシリケートが好ましい。
種結晶の粒子径は小さいほうが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。種結晶の粒子径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、また、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下である
。ここでの種結晶の粒子径とは、1次粒子の値であり、最小直径の値である。
反応混合物に添加する種結晶の量は特に限定されないが、前述の反応混合物中のSi原子源に対する種結晶の添加量として、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%であり、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
種結晶の添加量が前記下限未満では、CHA型構造を指向する前駆体が減ることになるので、CHA型構造が得られ難くなる。種結晶の添加量が前記上限超過では、生成物中に含まれる種結晶の割合が増えることで、反応混合物から新たに製造されるCHAが減ることとなり、生産性が低下する。
<水熱合成条件>
前記水熱合成に用いる反応容器は、それ自体既知の水熱合成に用い得るものであれば特に限定されず、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器であればよい。
前記水熱合成における反応温度(加熱温度)は特に限定されず、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上であり、また上限は、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下である。前記温度域が、反応混合物を結晶化させる上で好適である。前記下限未満では、CHA型アルミノシリケートが結晶化しないことがある。また、前記上限超過では、CHA型とは異なる構造のアルミノシリケートが生成することがある。
結晶化時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた反応混合物を上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分であるが、必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えてもよい。
水熱合成後のゼオライトは、反応ゲル中に含まれるアルカリ由来金属イオンが、ゼオライトのカウンターカチオンとして存在するため、通常、アルカリ金属型、アルカリ土類金属型、好ましくはナトリウム型、カリウム型で得られる。
ゼオライトが結晶化した後に、公知の方法を用いて、ゼオライトのイオン交換をすることにより、アンモニウム型に変換することができる。具体的には各種のアンモニウム塩を用いて、上記アルカリ金属型、アルカリ土類金属型のゼオライトを、アンモニウム型のゼオライトに変換することができる。このアンモニウム型を焼成することにより、「H型」に変換することができる。
また、結晶化したゼオライトに、種々の方法でゼオライトに金属を担持することもできる。担持する金属源としては、例えば、銅、鉄、コバルト、クロム、白金などが挙げられる。また、これらの金属源は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(3)シリル化されたCHA型構造を有するゼオライトの製造方法
本発明の製造方法は、特定の範囲の水分を含有するCHA型構造を有するゼオライトを、炭化水素溶媒存在下、シリル化剤と反応させることにより得られる。以下、シリル化工程について述べる。
本発明で得られるCHA型構造を有するゼオライトは、通常ゼオライトの外表面をシリル化して得る。ゼオライトの外表面をシリル化することにより、ゼオライトの外表面の酸性水酸基が被覆され、外表面酸量を低下させることができる。また、本発明においては、外表面細孔付近の酸性水酸基またはシラノール性水酸基がシリル化されることにより、外表面細孔径が縮小し、通常のCHA型ゼオライトよりも、高い形状選択性が発現するものと考えられる。
本発明においては、ゼオライトをシリル化する際に、特定の範囲の水分を含有したゼオライトをシリル化する。ゼオライトが含有する水分は、ゼオライトが元々含有しているものであっても、人為的に水分を供給して、特定の範囲に調整してもよい。通常、ゼオライトは水熱合成により得られたものを焼成することにより「非H型」に変換し、さらに必要に応じてアンモニウム型に変換してから焼成することにより「H型」に変換したものを使用する。したがって、通常シリル化前のゼオライトの含水量は非常に少ないと想定される。その場合、シリル化に供する前に、ゼオライトに特定の水分量を含有するように水分を供給し、水分含有量を調整して使用する。
またゼオライトが含有する水分は、ゼオライトの表面上に存在していても、ゼオライトの細孔内に存在していても限定はされないが、通常はゼオライト細孔内に存在することが好ましい。ゼオライト細孔内に存在する水は、ゼオライト外表面と反応したシリル基上の置換基を加水分解する役割を担い、シリル化被覆効率を高める効果があると考えられるためである。すなわち、シリル基上の置換基が加水分解されることにより、新たなシラノール性水酸基が生じ、その部位でさらにシリル化剤と反応するものと考えられる。また、外表面に結合したシリル基付近の立体障害が緩和され、シリル化剤接近効率、反応効率が向上すると考えられる。したがって、シリル化剤は脱離可能な置換基を少なくとも2つ以上有することが好ましい。なお、結晶外への水分子の拡散は外表面細孔を通して起こるため、とりわけ細孔近傍のシリル化効率が高くなり、それにより外表面細孔径が縮小していることが考えられる。
<水分含有量>
本発明の製造方法においては、シリル化処理に供するCHA型構造を有するゼオライトは、所定量の水分を含有している。前記した通り、通常はゼオライトを所定の水分含有量に調整した後に、(以下、これを調湿処理ということがある)シリル化処理をおこなう。
ここでの水分含有量 とは、ゼオライト中に含まれる水分量の乾燥ゼオライト重量に対
する重量%で表し、10重量%以上、25重量%以下である。好ましくは12重量%以上であり、より好ましくは14重量%以上である。また、好ましくは23重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。ゼオライトの含水率が前記下限未満では、シリル化被覆効率が低下し、外表面酸点の十分な被覆や細孔径の縮小効果が得られない場合があり、前記上限超過では、過剰なシリル化被覆により細孔が閉塞し、触媒活性が低下する傾向がある。
<調湿処理方法>
調湿処理方法としては、所定の水分量に調整することができれば、特に限定されるものではない。例えば、ゼオライトを適当な相対湿度を有する大気中に放置することで調湿処理することができる。また、デシケーター中に、水を入れた容器を置き、飽和水蒸気雰囲気下、ゼオライトを入れて放置することによっても調湿処理することができる。場合によっては、水の代わりに塩化アンモニウムや硫酸アンモニウム等の無機塩の飽和水溶液を入れた容器を共存させることにより、デシケーター中の水蒸気圧を調節した条件下で、調湿処理を行うこともできる。また、適当な水蒸気圧のガスを流通させることにより、調湿を行うこともできる。なお、より均一な調湿を行うために、ゼオライトを混合または攪拌しながら調湿処理を行ってもよい。
<シリル化剤>
シリル化剤としては、ゼオライト表面をシリル化することができ、かつゼオライトの細孔内をシリル化することがことができない分子であれば、特に限定されるものではなく、シリコーン、クロロシラン、アルコキシシラン、シロキサン、シラザンなどが使用できる。これらのうち好ましいシリル化剤としては、アルコキシシランである。
シリコーンとしては、具体的にはジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、エチルハイドロジェンシリコーン、フェニルハイドロジェンシリコーン、メチルエチルシリコーン、フェニルエチルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルトリフルオロプロピルシリコーン、エチルトリフルオロプロピルシリコーン、テトラクロロフェニルメチルシリコーン、テトラクロロフェニルエチルシリコーン、テトラクロロフェニルハイドロジェンシリコーン、テトラクロロフェニルシリコーン、メチルビニルシリコーン及びエチルビニルシリコーン等が用いられる。
クロロシランとしては、具体的には、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリクロロエチルシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン等が用いられる。
アルコキシシランとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等;の4級アルコキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン等;の3級アルコキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン等;の2級アルコキシシラン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン等;の1級アルコキシシランが用いられる。好ましくは2級以上のアルコキシシランであり、より好ましくは3級以上のアルコキシシランであり、さらに好ましくは4級アルコキシシランである。
シロキサンとしては、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等が挙げられ、ヘキサメチルジシロキサンが好ましい。
シラザンとしては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、ジプロピルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン等が挙げられ、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
<溶媒>
本発明の製造方法において、シリル化は炭化水素溶媒中で行う。前記溶媒に用いる炭化水素の種類としては、特に限定されるものではなく、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素ともに使用することができる。脂肪族炭化水素としては、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が用いられ、芳香族炭化水素としては、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン等が用いられる。これらのうちで好ましい炭化水素は、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンである。
<反応原料組成>
前記炭化水素溶媒中のシリル化剤の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。また、通常80重量%以下であり、好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下である。シリル化剤濃度が前記下限未満では、シリル化の速度が低下するため、反応時間が長くなる傾向があり、シリル化剤濃度が前記上限超過では、溶液中のシリル化剤同士の縮合反応が起こりやすくなる傾向がある。
ゼオライトに対するシリル化剤の量としては、特に限定されるものではないが、ゼオライト1モルに対して、通常0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上である。また、通常5モル以下であり、好ましくは3モル以下、より好ましくは1モル以下である。シリル化剤の量が前記下限未満では、シリル化が不十分となり、シリル化の効果が小さくなることがあり、前記上限超過では、シリル化剤が過剰
に積層して細孔が閉塞することがある。なお、上記シリル化剤の量は、シリル化剤に含まれるSi原子のモル数で表すこととし、分子内に複数のSi原子を有するシリル化剤では、そのSi原子の合計モル数をシリル化剤のモル数として扱うことにする。
ゼオライトに対する溶媒の量としては、特に制限されるものではないが、ゼオライト1gに対して、通常1g以上、好ましくは3g以上、より好ましくは5g以上である。また、通常100g以下、好ましくは60g以下、より好ましくは20g以下である。ゼオライトに対する溶媒の量が前記下限未満では、溶媒の攪拌が不十分となる場合があり、前記上限超過では、生産性が低くなる場合がある。
<反応条件>
シリル化処理をする温度は、シリル化剤や溶媒の種類によるが、特に限定されるものではなく、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、通常140℃以下、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。前記下限未満では、シリル化の進行が遅くなる傾向があり、前記上限超過では、ゼオライト細孔内の水分が大幅に失われ、シリル化効率が低下する場合がある。
シリル化剤を添加してからシリル化温度までの昇温するに要する時間は、特に限定されるものではなく、シリル化温度にてシリル化剤を添加してもよいが、通常0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上、より好ましくは0.1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。シリル化温度が高い場合、昇温に要する時間が短すぎると、ゼオライト細孔内からの水の吐出速度が大きくなり、溶液中のシリル化剤の加水分解および重合反応が進行し、ゼオライト外表面のシリル化効率が低下する場合がある。
シリル化の処理時間は、反応温度にもよるが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にない。処理時間が短すぎると十分なシリル化が起こらず、外表面酸量の低下が不十分となる場合がある。
<シリル化されたゼオライト>
本発明により得られる、シリル化されたCHA型ゼオライトは、前記非H型またはH型ゼオライトをシリル化することにより得られる。
CHA型ゼオライトの骨格構造、粒子径には大きな変化はなく、基本的にシリル化前と同じである。原子組成は、シリル化剤がゼオライト外表面反応点と新たな結合を形成することにより、Si原子の割合が増加する。
本発明により得られるシリル化されたCHA型構造を有するゼオライトの全体の酸量は、特に限定されるものではないが、シリル化処理による大きな変化はなく、通常4.8mmol/g以下であり、好ましくは2.8mmol/g以下である。また、通常0.15mmol/g以上であり、好ましくは0.30mmol/g以上である。前記上限超過では、前記シリル化されたゼオライトを炭化水素転化反応の触媒として用いた場合に、コーク生成による失活が速くなる、金属が骨格から抜けやすくなる、酸点当たりの酸強度が弱くなるといった傾向があり、前記下限未満では、酸量が少ないため、触媒としての活性が低下する傾向がある。
本発明により得られるシリル化されたCHA型構造を有するゼオライトの外表面酸量は、特に限定されるものではないが、シリル化処理により減少し、通常0.6mmol/g以下であり、好ましくは0.3mmol/g以下である。前記上限超過では、前記シリル化されたゼオライトを触媒として用いた場合に、ゼオライトの外表面で形状選択的でない反応が起こり、副生成物の増加を引き起こす傾向があるため、外表面酸量は少なければ少ないほどよい。
(4)シリル化されたCHA型ゼオライトを含むプロピレン製造用触媒
本発明で得られたCHA型構造を有するゼオライトを、触媒として反応に用いる場合は、そのまま触媒として反応に用いても良いし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。また、成型により、前記外表面酸量を全体酸量に対して低下させることも可能である。なお、本発明において得られるゼオライトを触媒として用いる場合、通常はゼオライトが触媒の活性成分となることから、触媒中のゼオライトを指して「触媒活性成分」ということがある。
前記反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゾル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。成型による外表面酸量低下の方法としては、例えば、バインダーとゼオライト外表面の酸点を結合させる等の方法が挙げられる。
尚、アルミナ等の、酸点を有するバインダーを使用した場合には、前記外表面酸量および全体酸量の測定方法では、ゼオライトの酸量と共にバインダーの酸量も含んだ合計値として測定される。その場合はバインダーの酸量を別法により求め、その値を差し引くことによってバインダー酸量を含まない外表面酸量および全体酸量を求めることが可能である。前記バインダーの酸量を求める方法は特に限定されないが、例えば、27Al−NMRにおいてゼオライト酸点に由来する4配位Alのピーク強度からゼオライト全体酸量を求め、アンモニア昇温脱離法によって求まるゼオライト全体酸量とバインダー酸量の合計値から差し引く方法などが挙げられる。
(5)シリル化されたCHA型ゼオライトを含むプロピレン製造用触媒を用いたプロピレンの製造方法
次に、得られたプロピレン製造用触媒とエチレンを接触させることにより反応させ(以下、エチレン転化反応ということがある。)、プロピレンを製造する方法について説明する(以下、本発明におけるプロピレンの製造方法という。)。
(a)反応方法
<反応原料>
原料となるエチレンは特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から接触分解法または蒸気分解法により製造されるエチレン、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られるエチレン、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られるエチレン、メタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるエチレン、MTO(Methanol to Olefin)反応によって得られるエチレン、エタノールの脱水反応から得られるエチレン、メタンの酸化カップリングで得られるエチレン、その他の公知の各種方法により得られるエチレンを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外の化合物を任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したエチレンを用いてもよいが、好ましくは精製したエチレンである。
尚、ゼオライトに存在する酸点により、エタノールは容易に脱水されてエチレンに変換される。そのため、反応器に原料としてエタノールを直接導入しても本発明に記載の反応を行うことができる。
また、本発明によりプロピレンを製造する際、反応器出口ガスに含まれるオレフィンをリサイクルしても良い。
リサイクルするオレフィンとしては、通常エチレンだが、その他オレフィンをリサイクルしても良い。原料となるオレフィンとしては、低級オレフィンが好ましく、分岐鎖オレフィンはその分子の大きさからゼオライト細孔内への進入が困難であるため好ましくない。オレフィンとしては好ましくはエチレン、直鎖ブテンであり、最も好ましくはエチレンである。
<反応器>
本発明のプロピレンの製造方法においては、通常、エチレンを反応器中で触媒と接触させ、プロピレンを製造することが好ましい。用いる反応器の形態は特に限定されないが、通常連続式の固定床反応器や流動床反応器が選ばれる。好ましくは流動床反応器である。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ‐アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量には特に制限されない。なお、粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
<希釈剤>
反応器内には、エチレンの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水(水蒸気)、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を存在させることができるが、この中でも水素または水(水蒸気)、好ましくは水素が共存していることが好ましい。
(b)反応条件
<基質濃度>
反応器に供給する全供給成分中のエチレンの濃度(即ち、基質濃度)に関して特に制限はないが、通常エチレンは全供給成分中、90モル%以下である。好ましくは70モル%以下である。また通常5モル%以上である。基質濃度が前記上限超過では、芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著となり、プロピレンの選択率が低下する傾向がある。基質濃度が前記下限未満では、反応速度が低下するため、多量の触媒が必要となり、反応器が大きくなりすぎる傾向がある。
従って、このような基質濃度となるように、必要に応じて上記の希釈剤でエチレンを希釈することが好ましい。
<空間速度>
ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるエチレンの流量(重量/時間)である。ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。
空間速度は、特に制限されるものではないが、0.01Hr−1〜500Hr−1の間が好ましく、0.1Hr−1から100Hr−1の間がさらに好ましい。空間速度が高すぎると反応器出口ガス中のエチレンが多くなり、プロピレン収率が低くなるため好ましくない。また、空間速度が低すぎると、パラフィン類等の好ましくない副生成物が生成し、プロピレン選択率が低下するため好ましくない。
<反応温度>
反応温度は、エチレンが触媒と接触してプロピレンが製造されれば、特に制限されるものではないが、通常200℃以上、好ましくは300℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が前記下限未満では、反応速度が小さく、未反応原料が多く残る傾向となり、さらにプロピレン収率も低下する傾向がある。一方で反応温度が前記上限超過では、プロピレン収率が著しく低下する場合がある。
<反応圧力>
反応圧力は特に制限されるものではないが、通常3MPa(絶対圧、以下同様)以下、好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が前記下限未満では、反応速度が小さくなる傾向があり、前記上限超過では、パラフィン類等の好ましくない副生成物の
生成量が増え、プロピレン選択率が低下する傾向がある。
<触媒の再生>
反応に供した触媒は再生して使用することができる。具体的にはエチレン転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。
再生方法は特に限定されるものではないが、具体的には例えば空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、水素を用いて再生することが好ましい(例えば、特開2011−78962号公報に記載の方法)。
<転化率>
エチレンの転化率は特に制限されるものではないが、通常20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、また通常95%以下、好ましくは90%以下となるような条件で反応を行うことが好ましい。
この転化率が前記下限未満では、未反応のエチレンが多く、プロピレン収率が低いため好ましくないことがある。一方、前記上限超過では、パラフィン類等の望ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレン選択率が低下するため好ましくないことがある。
流動床反応器で反応を行う場合には、触媒の反応器内での滞留時間と再生器内での滞留時間を調整することにより、好ましい転化率で運転することができる。
なお、転化率は次の式により算出される値である。
エチレン転化率(%)=〔[反応器入口エチレン(mol/Hr)−反応器出口エチレン(mol/Hr)]/反応器入口エチレン(mol/Hr)〕×100
<選択率>
本明細における選択率とは、以下の各式により算出される値である。下記の各式において、プロピレン、ブテン、C+、パラフィンまたは芳香族化合物の炭化水素の「由来カーボン流量(mol/Hr)」とは、各炭化水素を構成する炭素原子のモル流量を意味する。尚、パラフィンは炭素数1から4のパラフィンの合計、芳香族化合物はベンゼン、トルエン、キシレンの合計、C+は前記芳香族化合物を除いたC以上の炭化水素の合計値である。
プロピレン選択率(%)=〔反応器出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カー
ボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
ブテン選択率(%)=〔反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[
反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
+選択率(%)=〔反応器出口C+由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[
反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
パラフィン選択率(%)=〔反応器出口パラフィン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カー
ボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
芳香族化合物選択率(%)=〔反応器出口芳香族化合物由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来
カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
なお、本明細における収率とは、前記エチレン転化率と、生成した各成分の選択率の積により求められ、具体的にプロピレン収率は、次の式で表される値である。
プロピレン収率(%)=エチレン転化率(%)×プロピレン選択率(%)/100
(c)反応生成物
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応のエチレン、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下である。
この混合ガス中には通常エチレンが含まれるが、この混合ガス中のエチレンはその少なくとも一部を反応器にリサイクルして反応原料として再利用することが好ましい。
なお、副生成物としては炭素数が4以上のオレフィン類およびパラフィン類が挙げられる。
本発明におけるプロピレンの製造方法によって得られたプロピレンを重合することによりポリプロピレンを製造することができる。重合の方法は特に限定されないが、得られたプロピレンを直接重合系の原料として導入して使用することができる。また、その他のプロピレン誘導品の原料としても利用できる。例えばアンモニア酸化によりアクリロニトリル、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸及びアクリル酸エステル、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、選択酸化によりプロピレンオキサイド及びプロピレングリコール等が製造できる。またワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造できる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレ−トに転換される。プロピレン水和によりイソプロピルアルコ-ルも製造できる。またプロピレンをベンゼンと反応することにより製造
したキュメンを原料にフェノール、ビスフェノールA、またはポリカーボネ−ト樹脂が製造できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<細孔分布の測定方法>
細孔分布の測定は、ユアサアイオニクス社製、NOVA1200を用いて測定した。10mg程度のゼオライトを200℃で1時間、真空条件下で前処理し吸着物の脱離除去を行った後に、窒素ガスを吸着ガスとして等温線測定を行った。液体窒素温度での相対圧で吸着時および脱着時に平衡吸着量を測定することで吸着等温線を取得した。吸着量測定時の相対圧力領域は0.02から0.99であり、その間を0.02から0.1刻みで相対圧力を変化させる。吸着量の変化が大きい領域では相対圧の変化量を小さくして測定する。
得られた等温線からBJH法にて累積細孔容積を算出した。なお、BJH法とは、吸着等温線から細孔分布を求める測定法の一つである。
(触媒調製例1)
25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイ
ド水溶液(N,N,N-trimethyl-1-adamantammonium hydroxide)水溶液を2.96kgおよび水酸化ナトリウム0.280kgを順次、水25.5kgに溶解し、次に水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57重量%)0.448kgを加え攪拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカを2.11kg加えて十分攪拌した。さらに加えたフュームドシリカの重量に対して2重量%のCHA型ゼオライトを種結晶として加えてさらに攪拌した。次いで、このゲルを50lのオートクレーブに仕込み、自圧下、100rpmで攪拌しながら、160℃で48時間、水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、乾燥させた。
乾燥後の触媒は、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、ナトリウム型のゼオライトを得た。このゼオライトを1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のゼオライトAを得た。
上記で得られたゼオライトはCHA型のH型のゼオライトであり、SiO/Al比は15(モル比)であった。また、走査型電子顕微鏡の測定により、ゼオライトの一次粒子径はおよそ70〜100nmであり、上記細孔分布の測定より、細孔径100〜200Åの範囲の累積細孔容積は、46×10−3ml/gであった。
(触媒調製例2)
水酸化ナトリウム3.91gおよび25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマ
ンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(N,N,N-trimethyl-1-adamantammonium hydroxide)水溶液47.3gを順次、水90.0gに溶解し、次に水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57重量%)4.26gを加え混合した後に、シリカ源としてコロイダルシリカSI‐30(SiO 30重量%,Na 0.3重量%,日揮触媒化成株式会社製)を110g加えて十分攪拌した。さらに加えたSiOの重量に対して2重量%のCHA型ゼオライトを種結晶として加えてさらに攪拌した。次いで、このゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、150rpmで攪拌しながら、160℃で42時間、水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、乾燥させた。
乾燥後の触媒は、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、ナトリウム型のゼオライトを得た。このゼオライトを1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のゼオライトBを得た。
上記で得られたゼオライトはCHA型のH型のゼオライトであり、SiO/Al比は24(モル比)であった。また、走査型電子顕微鏡の測定により、ゼオライトの一次粒子径はおよそ50〜80nmであり、上記細孔分布の測定より、細孔径100〜200Åの範囲の累積細孔容積は、51×10−3ml/gであった。
(実施例1)
調製例1で得られたゼオライトA 0.50gを磁製皿に入れ、大気中に開放しておくことで、ゼオライト中に含まれる水分が12.6重量%となるように調湿した。これに対して、溶媒としてトルエン5.0ml(4.3g)、シリル化剤としてテトラエトキシシラン1.25ml(1.16g)を加えて、攪拌しながら100℃、6時間加熱処理を行った。処理後、濾過によって固液を分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥することでシリル化した触媒を得た。
反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英製反応管に、上記触媒100mgと石英砂400mgの混合物を充填した。エチレンおよび窒素を、エチレンの空間速度が0.36Hr−1で、エチレン30体積%と窒素70体積%となるように反応器に供給し、350℃、0.1MPaでプロピレンの合成反応を実施した。反応開始125分後および200分後にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。反応成績を表1に示した。
(実施例2)
ゼオライト中に含まれる水分量を16.6重量%とした以外は実施例1と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表1に示した。
(実施例3)
ゼオライト中に含まれる水分量を19.0重量%とした以外は実施例1と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表1に示した。
(実施例4)
ゼオライト中に含まれる水分量を22.5重量%とした以外は実施例1と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件
にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表1に示した。
(比較例1)
ゼオライト中に含まれる水分量を2.7重量%とした以外は実施例1と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表1に示した。
Figure 0005811750
(実施例5)
調製例2で得られたゼオライトBを用い、ゼオライト中に含まれる水分量を10.6重量%とした以外は実施例1と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
(実施例6)
ゼオライト中に含まれる水分量を14.6重量%とした以外は実施例5と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
(実施例7)
ゼオライト中に含まれる水分量を16.7重量%とした以外は実施例5と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
(実施例8)
ゼオライト中に含まれる水分量を21.5重量%とした以外は実施例5と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
(比較例2)
ゼオライト中に含まれる水分量を2.9重量%とした以外は実施例5と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
(比較例3)
ゼオライト中に含まれる水分量を7.3重量%とした以外は実施例5と同様にシリル化することで触媒を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
Figure 0005811750
実施例1〜4では、水分含有量を10〜25重量%に調節したCHA型ゼオライト(SiO/Al比が15)をシリル化処理した触媒に、エチレンを接触させプロピレンを製造する反応を行うと、C5以上成分の副生が大幅に抑制され、高い選択率でプロピレンが得られた。
C5以上成分の選択率は概ね1%以下となり、水分含有量の多い実施例3や実施例4では、0.05%未満まで低下した。これは、シリル化処理において、ゼオライト中の水分が外表面細孔から溶媒中へ拡散する際、ゼオライト反応点と反応したシリル化剤アルコキシ基を効率的に加水分解することで、空間的な立体障害が緩和され、外表面酸点のシリル化被覆効率が向上し、その結果、形状選択性の利かない副反応が抑制されたことによるものと考えられる。さらに、水分含有量が多いものほど、ゼオライト外表面でのシリル化反応、続くアルコキシ基の加水分解、さらなるシリル化反応が繰り返されることで、外表面細孔径が縮小し、その結果、より炭素数の多い炭化水素であるC5以上成分の細孔内からの排出が抑制されたことによるものと考えられる。
CHA型ゼオライトにエチレンを接触させてプロピレンを生成させる反応では、エチレンがCHA型ゼオライトの外表面細孔から結晶内に拡散し、エチレンのオリゴマー化が進行し、さらにそのオリゴマーの分解によりプロピレンが生成し、外表面細孔から結晶外へ排出されるものと推定される。このオリゴマーの分解では、C5以上の炭化水素も生成しうると考えられるが、CHA型ゼオライトの細孔径が小さいために、結晶内部で生成したC5以上の炭化水素は排出されにくいと考えられる。シリル化により外表面の酸点を被覆する効果に加えて、本発明の製造方法により、ゼオライトの水分量を調整することにより、CHA型ゼオライトの細孔径は、より小さくなると考えられ、結晶内部で生成したC5以上の炭化水素はより排出されにくくなり、より高い選択率でプロピレンが得られるものと考えられる。
比較例1や2では、C5以上成分の選択率や芳香族選択率が高く、プロピレン選択率は低くなった。これは、ゼオライトの水分含有量が不十分であったため、シリル化剤により外表面酸点を十分に被覆することができていないためと考えられる。
また、実施例5〜8では、CHA型ゼオライト(SiO/Al比が24)をシリル化することで、実施例1〜4同様に、水分含有量10%未満の比較例3や4に比べ、高いプロピレン選択率が得られ、C5以上成分の選択率は概ね1%以下となった。本発明の特定の範囲の水分を含有したCHA型ゼオライトのシリル化処理法は、特定のSiO/Al比に限定されず、広い範囲のSiO/Al比のゼオライトに対して適用することができると考えられる。
本発明により、シリル化されたCHA型構造を有するゼオライトを含むプロピレン製造
用触媒を安価に製造する方法を提供する。また、この方法により得られるプロピレン製造用触媒を用いて、エチレンからプロピレンを製造することにより、C5以上成分の副生を抑制し、効率良くプロピレンを製造することができる。

Claims (6)

  1. CHA型構造を有するゼオライトをシリル化するシリル化工程を含むプロピレン製造用触媒の製造方法であって、
    前記シリル化において炭化水素溶媒存在下、下記(1)及び(2)を満たすCHA型構造を有するゼオライトをシリル化剤と反応させることを特徴とするプロピレン製造用触媒の製造方法。
    (1)水分含有量が10重量%以上25重量%以下
    (2)ゼオライトの窒素吸着等温線からBJH法により得られる細孔径分布において細孔径100Å以上200Å以下の範囲の全細孔容積が10×10 −3 ml/g以上
  2. 前記CHA型構造を有するゼオライトのSiO/Alモル比が、5以上300以下であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン製造用触媒の製造方法。
  3. 前記炭化水素溶媒が、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンのいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン製造用触媒の製造方法。
  4. 前記シリル化剤が、シリコーン、クロロシラン、アルコキシシラン、シロキサンおよびシラザンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン製造用触媒の製造方法。
  5. 前記シリル化剤が、分子内に少なくとも2つ以上のアルコキシ基を有するケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン製造用触媒の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で得られたプロピレン製造用触媒に、エチレンを接触させてプロピレンを製造することを特徴とするプロピレンの製造方法。
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