JP5720508B2 - シリル化されたcha型構造を有するh型ゼオライトの製造方法 - Google Patents
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Description
ゼオライトを製造する際に、一般的に行なわれる水熱合成反応では、通常、原料を溶解させるためにアルカリ水溶液(以下、単にアルカリということがある)を 用いる。その
ため水熱合成反応後に、得られた生成物を焼成し、ゼオライトを得た時点では、ゼオライトは、アルカリ水溶液由来の金属、(例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属等)を、Tサイトのカウンターカチオンに有している。アルミノシリケートの製造時を例に取ると、原料のケイ素原子源を溶解するために、アルカリとしてアルカリ金属を含むもの(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を用いた場合、得られるアルミノシリケート中のアルミニウム原子は、用いたアルカリ由来のアルカリ金属をカウンターカチオンとして有する(以下、アルカリ金属型のゼオライトということがある)。
カウンターカチオンを、アルカリ金属からプロトンにイオン交換し、H型(プロトン型ともいうことがある)に変換する方法としては、酸を作用させる方法が想定される。
しかし、一般的にゼオライトに酸を作用させた場合、Tサイトに入ったアルミニウム等の金属の脱離が起こり、程度によってはその結果構造の崩壊が起こる場合がある。金属の脱離、または構造崩壊が起こった場合、通常はゼオライトの機能、例えば触媒性能や吸着特性が悪化する。そのため、酸を作用させてイオン交換を行なうことは通常行なわない。特許文献2、3の例についても、酸の存在によってアルミニウムが骨格から脱離している(以下、脱Alということがある)可能性が考えられる。そしていずれの場合も構造規定剤を内包する状態でシリル化処理を行っているため、構造が安定に保たれているため、酸処理による構造の崩壊はみられていない。
考えられる(比較例2、3参照)。
見出した。
(1)シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法であって、CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下、シリル化剤と反応させることを特徴とする、シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
(2)前記非H型ゼオライトの窒素吸着等温線からBJH法によって得られる細孔径分布において細孔径100Å以上200Å以下の範囲の全細孔容積が、10×10―3ml/g以上である、上記(1)に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
(4)前記非H型ゼオライトが、アルミノシリケートである上記(1)〜(3)のいずれか1に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
(6)前記酸性水溶液が硫酸である、上記(1)〜(5)のいずれか1に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
(7)前記非H型ゼオライトのSiO2/M2O3比(Mは3価の金属)が、5以上、50以下である、上記(1)〜(6)のいずれか1に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
型ゼオライトを触媒として、エチレンを原料としてプロピレンを製造することを特徴とするプロピレンの製造方法。
本発明のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法は、CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下、シリル化剤と反応させることを特徴とする。
(1)CHA型構造を有するゼオライト
先ず、本発明の方法で製造されるCHA型構造を有するゼオライト(以下これを、「CHA型ゼオライト」ということがある。)の物理化学的性質について説明する。
本発明において、CHA構造とは、International Zeolite Association(以下これを
、「IZA」と略称することがある。)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものを示す。これは、天然に産出するチャバサイト(chabazite)と同等の結
晶構造を有するゼオライトである。
ク数が大きく、豊富に存在する元素であり、安価であるため好ましい。
通常、上記の金属Mの原子源化合物(以下、M原子源ということがある)を、後述する水熱反応における反応混合物に、Si原子源とともに添加することで、結晶化後に骨格にとりこまれる。
ライト中のSi原子源がすべてSiO2として含まれ、M原子源がすべてM2O3として含
まれると仮定して求める値である。
このモル比は、後述する水熱合成における反応混合物中のSi原子源とM原子源の比によって決まるものである。上記のSiO2/M2O3モル比を持つものを、本明細書におい
て、高シリカゼオライトということがある。高シリカゼオライトは、高度な耐酸性と高い水熱安定性を有する。
本発明では酸性溶媒中でシリル化することから、この点で金属量が前記上限超過の場合には、骨格が崩壊する可能性がある。
ゼオライトの骨格構造内に3価の金属Mが入った際、電荷バランスを補償するために通常、ゼオライトの骨格中に、金属原子に対するカウンターカチオンが存在する。具体的な金属原子のカウンターカチオン種としては、特に限定されるものではないが、ナトリウムやカリウム等;のアルカリ金属カチオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等;のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウムイオン、あるいはプロトン等が挙げられる。
上記カウンターカチオンが、プロトンであるものを、以下「H型」といい、それ以外のものを総称して「非H型」という。
「非H型」として好ましくは、ゼオライト骨格中にアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムイオンをカウンターカチオンとして有するものであり、より好ましくは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムイオン、さらに好ましくはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムイオンをカウンターカチオンとして有するものである。(なお、これらを以下で「ナトリウム型」「カリウム型」「アンモニウム型」ということがある。)
後述する水熱反応により、通常は「非H型」のゼオライトが得られる。本発明は、「非H型」のゼオライトを、シリル化して、シリル化された「H型」のゼオライトを得る。
に記載の測定方法でBJH法により得られる細孔径分布の100Å以上200Å以下の範囲の全細孔容積が、通常10×10−3ml/g以上であり、好ましくは20×10−3ml/g以上であり、更に好ましくは30×10−3ml/g以上である。上限は特になく通常100×10−3ml/g以下である。この値は粒界に起因するものと考えられ、この値が大きいものは粒子径が小さく、小さいものは粒子径が大きいと考えられる。この値が前記下限未満では、粒子径が大きいために、触媒や吸着材として用いた場合に、基質が細孔の内部まで十分に進入せず、ゼオライトの利用率が低下すると考えられ、触媒として反応した際に重量あたりの活性が低下する。また重量あたりの外表面積が小さいために、シリル化が過度に進行して、細孔を閉塞してしまう可能性が考えられる。前記上限超過の場合には粒子径が細かいためにシリル化後のゼオライトと水溶液との分離が困難になることが考えられる。
細孔径の測定方法は特に限定されるものではないが、通常は窒素を吸着ガスとし、液体窒素温度での相対圧で吸着時および脱着時の平衡吸着量を測定することで窒素吸着等温線を測定し、得られた等温線からBJH法にて累積細孔容積を算出する。詳細は実施例にて述べる。
本発明により得られる、シリル化されたH型のCHA型ゼオライトは、前記非H型ゼオ
ライトをシリル化して得られる。
CHA型ゼオライトの骨格構造、粒子径には変化はなく、基本的にシリル化前と同じである。
本発明におけるゼオライトの全体の酸量(以下、単に全体酸量ということがある。)とは、ゼオライトの全体の酸量であり、具体的には外表面および細孔内部の酸量の総和をいう。
全体酸量は、特に限定されるものではないが、通常4.8mmol/g以下であり、好ましくは2.8mmol/g以下である。また、通常0.15mmol/g以上であり、好ましくは0.30mmol/g以上である。前記上限超過では、前記ゼオライトを炭化水素転化反応の触媒として用いた場合に、コーク付着による失活が速くなる、金属が骨格から抜けやすくなる、酸点当たりの酸強度が弱くなるといった傾向があり、前記下限未満では、酸量が少ないため、触媒としての活性が低下する傾向がある。
本発明のゼオライトの製造方法は、非H型ゼオライトを製造し、その非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下でシリル化してH型ゼオライトを得る。まず非H型ゼオライトの製造方法について述べる。
本発明における、CHA型構造を有する非H型ゼオライトは、通常、特定の組成に調整された、Si原子源、M原子源、アルカリ水溶液を含む反応混合物を用いた水熱合成により製造することができる。前記反応混合物中には、各種の構造規定剤を添加してもよく、
また 種結晶を添加してもよい。ここで「反応混合物」とは、水熱合成に供するための原
料混合物を意味する。
前記Si原子源としては、特に限定されるものではないが、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミのシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン等が挙げられる。またSi元素源は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
例えばM原子がアルミニウム原子の場合、具体的には水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、無定形アルミノシリケートゲル等が挙げられる。なお、M原子源としては、上記1種のみの原子源を用いてもよく、2種以上の原子源を混合して用いてもよい。
アルカリ金属源としては、例えば、LiOH、NaOH、KOH、CsOH等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。また、アルカリ土類金属源としては、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。
本発明におけるCHA型構造を有するゼオライトの製造においては、必要に応じ反応混合物に構造規定剤を添加して水熱合成を行なうことができる。構造規定剤としては、反応混合物からCHA型ゼオライトの結晶化を促進しうるものであれば特に限定されないが、例えば、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオン、3−キヌクリジナールから誘導されるカチオン、2−exo−アミノノルボルネンから誘導されるカチオン等の脂環式アミンから誘導されるカチオン、N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオン等が挙げられ、高シリカゼオライトの結晶化を促進する点で、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンが好ましい。N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンで好ましいのはN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンであり、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンで好ましいのはN,N,N−ベンジルトリメチルアンモニウムカチオンである。これらの構造規定剤は、1種類のみ使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
構造規定剤を使用する場合、構造規定剤とSi原子源の割合は、特に限定されるものではないが、Si原子に対する構造規定剤のモル比として、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、また上限は、通常1以下、好まし
くは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。構造規定剤が、ゼオライト構造のCHAケージ4つに1つの割合で入る程度の量が存在すれば、結晶化が容易になる。
一方構造規定剤を使用しない場合、コスト面、または水熱合成後の廃液処理の手間が軽減する面で有利である。
本発明におけるCHA型ゼオライトの製造においては、必要に応じ反応混合物に種結晶を添加して水熱合成を行なうことができる。
前記CHA型ゼオライトの製造において使用する種結晶は、結晶化を促進するものであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためにはCHA型ゼオライト、中でもCHA型アルミノシリケートが好ましい。
種結晶の粒子径は小さいほうが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。種結晶の粒子径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、また、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下である。ここで、種結晶の粒子径とは1次粒子の値であり、最小直径の値である。
反応混合物に添加する種結晶の量は特に限定されないが、前述の反応混合物中のSi元素源に対する種結晶の添加量として、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
前記水熱合成に用いる反応容器は、それ自体既知の水熱合成に用い得るものであれば特に限定されず、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器であればよい。
前記水熱合成における反応温度(加熱温度)は特に限定されず、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上であり、また上限は、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下である。前記の温度域が、反応混合物を結晶化させる上で好適である。反応温度が低すぎると、CHA型アルミノシリケートが結晶化しないことがある。また、反応温度が高すぎると、CHA型とは異なるタイプのアルミノシリケートが生成することがある。
水熱合成後のゼオライトは、反応ゲル中に含まれるアルカリ由来金属イオンが、ゼオライトのカウンターカチオンとして存在するため、通常、アルカリ金属型、アルカリ土類金属型、好ましくはナトリウム型、カリウム型で得られる。
る。またこれらの金属源は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で得られるCHA型構造を有するH型ゼオライトは、CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下でシリル化剤と反応させ、シリル化を行なうことによって得られる。以下、シリル化工程について述べる。
本発明で得られるCHA型ゼオライトは、通常ゼオライトの外表面をシリル化して得る。ゼオライトの外表面をシリル化することにより、ゼオライト外表面の酸量を低下させることができる。また本発明においては同時に非H型から、H型へのイオン交換も起こる。
好ましくは0.1モル以下である。シリル化剤の量が前記下限未満ではシリル化が十分でなく、シリル化の効果が小さくなることがあり、前記上限超過では、シリル化剤が積層して細孔を塞いでしまうことがある。
ある。圧力が前記下限値未満ではシリル化の進行が遅く、またイオン交換も進行が遅くなる傾向がある。一方、圧力が前記上限超過では、ゼオライト骨格に欠陥が生成する場合や、また骨格中の金属が抜け易くなる傾向がある。圧力の調整は温度を調整して水溶液の蒸気圧を変えてもよいし外部からガスを入れて印加してもよい。
本発明で得られたCHA型構造を有するH型ゼオライトを、触媒として反応に用いる場合は、そのまま触媒として反応に用いても良いし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。なお成型により、前記外表面酸量を全体酸量に対して低下させることも可能である。なお、本発明において得られるゼオライトを触媒として用いる場合、通常はゼオライトが触媒の活性成分となることから、触媒中のゼオライトを指して「触媒活性成分」ということがある。
<得られた触媒を用いたプロピレンの製造方法>
次に得られたシリル化されたH型ゼオライトを触媒としてエチレンを触媒と接触させることにより反応させ(以下、エチレン転化反応ということがある)、プロピレンを製造する方法について説明する。(以下、本発明におけるプロピレンの製造方法という。)
<反応原料>
原料となるエチレンは特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるエチレン、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られるエチレン、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られたものプロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるエチレン、MTO(Methanol to Olefin)反応によって得られるエチレン、エタノールの脱水反応から得られるエチレン、メタンの酸化カップリングで得られるエチレン等、公知の各種方法により得られるエチレンを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外の化合物を任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したエチレンを用いてもよいが、好ましくは精製したエチレンである。
また、本発明におけるプロピレンの製造方法でプロピレンを製造する際、反応器出口ガスに含まれるオレフィンをリサイクルしてもよい。
本発明のプロピレンの製造方法においては、通常エチレンを、反応器中で触媒と接触させ、プロピレンを製造することが好ましい。用いる反応器の形態に特に制限はないが、通常連続式の固定床反応器や流動床反応器が選ばれる。好ましくは流動床反応器である。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の、反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
前記反応器内には、エチレンの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を存在させることができるが、この中でも水(水蒸気)が共存しているのが好ましい。
<基質濃度>
前記反応器に供給する全供給成分中のエチレンの濃度(即ち、基質濃度)に関して特に制限はないが、通常エチレンは全供給成分中、90モル%以下である。好ましくは70モ
ル%以下である。また通常5モル%以上である。基質濃度が前記上限超過では、芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になり、プロピレンの選択率が低下する傾向がある。基質濃度が前記下限未満では、反応速度が遅くなるため、多量の触媒が必要となり、反応器が大きくなりすぎる傾向がある。
従って、このような基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤でエチレンを希釈することが好ましい。
ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるエチレンの流量(重量/時間)である。ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。
反応温度は、エチレンが触媒と接触してプロピレンが製造されれば特に制限されるものではないが、通常約200℃以上、好ましくは300℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が前記下限未満では、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、さらにプロピレンの収率も低下する傾向がある。一方で反応温度が前記上限超過ではプロピレンの収率が著しく低下する場合がある。
反応圧力は特に制限されるものではないが、通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下、好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が前記上限超過ではパラフィン類等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの選択率が低下する傾向がある。反応圧力が前記下限未満では反応速度が遅くなる傾向がある。
反応に供した触媒は再生して使用することができる。具体的にはエチレン転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。(例えば特開2011−78962号公報に記載の方法)
再生方法は特に限定されるものではないが、具体的には例えば空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、水素を用いて再生することが好ましい。
本発明においては、転化率は特に制限されるものではないが、通常エチレンの転化率が20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、また通常95%以下、好ましくは90%以下となるような条件で反応を行うことが好ましい。
この転化率が前記下限値未満では、未反応のエチレンが多く、プロピレン収率が低いため好ましくないことがある。一方、前記上限値以上では、パラフィン類等の望ましくない副生成物が増え、プロピレン選択率が低下するため好ましくないことがある。
なお、転化率は次の式により算出される値である。
エチレン転化率(%)=〔[反応器入口エチレン(mol/hr)−反応器出口エチレン(mol/hr)]/反応器入口エチレン(mol/hr)〕×100
本明細における選択率とは、以下の各式により算出される値である。下記の各式において、プロピレン、ブテン、C5+、パラフィンまたは芳香族化合物由来カーボン(mol)とは、各成分を構成する炭素原子のモル数を意味する。尚、パラフィンは炭素数1から3のパラフィンの合計、芳香族化合物はベンゼン、トルエン、キシレンの合計、C5+は前記芳香族化合物を除いたC5以上の炭化水素の合計値である。
[反応器出口総カーボン(mol/hr)−反応器出口エチ
レン由来カーボン(mol/hr)]〕×100
ブテン選択率(%)=〔反応器出口ブテン由来カーボン(mol/hr)/[反応器出
口総カーボン(mol/hr)−反応器出口エチレン由来カー
ボン(mol/hr)]〕×100
C5+選択率(%)=〔反応器出口C5+由来カーボン(mol/hr)/[反応器出
総カーボン(mol/hr)−反応器出口エチレン由来カーボ
ン(mol/hr)]〕×100
パラフィン選択率(%)=〔反応器出口パラフィン由来カーボン(mol/hr)/
[反応器出口総カーボン(mol/hr)−反応器出口エチ
レン由来カーボン(mol/hr)]〕×100
芳香族化合物選択率(%)=〔反応器出口芳香族化合物由来カーボン(mol/hr)
/[反応器出口総カーボン(mol/hr)−反応器出口
エチレン由来カーボン(mol/hr)]〕×100
なお本明細における収率とは、前記エチレン転化率と、生成した各成分の選択率の積により求められ、具体的にプロピレン収率は、次の式で表される値である。
プロピレン収率(%)=エチレン転化率(%)×プロピレン選択率(%)/100
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応のエチレン、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下である。
なお、副生成物としては炭素数が4以上のオレフィン類およびパラフィン類が挙げられる。
本発明におけるプロピレンの製造方法によって得られたプロピレンを重合することによりポリプロピレンを製造することができる。重合の方法は特に限定されないが、得られたプロピレンを直接重合系の原料として導入して使用することができる。また、その他のプロピレン誘導品の原料としても利用できる。例えばアンモニア酸化によりアクリロニトリル、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸及びアクリル酸エステル、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、2−エチルヘキサノール等のオキソアルコール、選択酸化によりプロピレンオキサイド及びプロピレングリコール等が製造できる。またワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造できる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレ−トに転換される。プロピレン水和によりイソプロピルアルコ-ルも製造できる。また
プロピレンをベンゼンと反応することにより製造したキュメンを原料にフェノール、ビス
フェノールA、またはポリカーボネ−ト樹脂が製造できる。
<細孔分布測定方法>
細孔分布の測定は、ユアサアイオニクス社製 NOVA1200を用いて測定した。10mg程度のゼオライトを200℃で1時間、真空条件下で前処理し吸着物の脱離を行った後に、窒素ガスを吸着ガスとして等温線測定を行った。液体窒素温度での相対圧で吸着時および脱着時に平衡吸着量を測定することで吸着等温線を取得した。吸着量測定時の相対圧力領域は0.02から0.99であり、その間を0.02から0.1刻みで相対圧力を変化させる。吸着量の変化が大きい領域では相対圧の変化量を小さくして測定する。
得られた等温線からBJH法にて累積細孔容積を算出した。なおBJH法とは、相対圧と、水蒸気の吸着等温線の関係から細孔分布を求める測定法の一つである。
XRD測定は以下の条件に基づき行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
25重量%のN,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液
(N,N,n-trimethyl-1-adamantammonium hydroxide)水溶液を47.3gと水酸化ナトリ
ウム4.5gと水408gを混合し、これに水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57重量%換算)4.3gを加え攪拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカを33.6g加えて十分攪拌した。
乾燥後に、空気雰囲気下、580℃まで6時間で昇温し、その後580℃で6時間保つことによって、焼成し、ナトリウム型のゼオライトAを得た。
ゼオライトAを、1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を行った後、ろ過を行い、さらに1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間加熱しイオン交換を行った。その後、再びろ過を行い、100℃で乾燥した後、空気雰囲気下、500℃まで6時間で昇温し、その後6時間保持することでH型のゼオライトBを得た。
25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(N,N,n-trimethyl-1-adamantammonium hydroxide)水溶液を5.9kgと水酸
化ナトリウム0.56gと水51kgを混合し、これに水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57重量%換算)を0.53kgを加え攪拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカを4.2kg加えて十分攪拌した。
乾燥後に、空気雰囲気下、580度で焼成し、ナトリウム型のゼオライトを得た。このゼオライトをゼオライトCとした。
得られたナトリウム型ゼオライトCを用いて、さらにH型ゼオライトを製造した。
ゼオライトCを1Mの硝酸アンモニウム水溶液を用いて、80℃で1時間加熱し、イオン交換を行った。イオン交換後、ろ過を行い、さらに1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を行った。その後、再びろ過を行い、100℃で乾燥した後、空気雰囲気下、500℃まで6時間で昇温し、その後6時間保持することでH型のゼオライトDを得た。
25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(N,N,n-trimethyl-1-adamantammonium hydroxide)水溶液を47.3gと水酸
化ナトリウム4.5gと水408gを混合し、これに水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57重量%換算)7.2gを加え攪拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカを33.6g加えて十分攪拌した。
乾燥後に、空気雰囲気下、580度で焼成し、ナトリウム型のゼオライトEを得た。
上記で得られたゼオライトはCHA型のナトリウム型のアルミノシリケートであり、SiO2/Al2O3比は14(モル比)である。
前記ゼオライトEを1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を行った後、ろ過を行い、さらに1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を行った。その後、再びろ過を行い、100℃で乾燥した後、空気雰囲気下、500℃まで6時間で昇温し、その後6時間保つことでH型のゼオライトFを得た。
合成例1で得られたゼオライトAに対して、硫酸溶液中でシリル化を行った。ゼオライトA0.5gに対して溶媒の0.1M硫酸を25g、シリル化剤のテトラエトキシシラン(以下、TEOSと略すことがある。)を0.15g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られた触媒を触媒1とした。
後ガスクロマトグラフィで生成物の分析を行った。またゼオライトの細孔容量を、前記測定方法に基づいて測定した。結果を表1に示す。反応成績については反応開始後3.0時間後のデータを示した。
処理時間を6時間に短縮した以外は実施例1に記載の触媒の調整方法と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒2とした。
触媒2を用いて、実施例1と同条件でエチレン転化反応を行なった。結果を表1に示す。反応成績については、実施例1で得られたエチレンの転化率と同等の転化率が得られた時点で比較するため、反応開始後3.2時間後のデータを示した。
硫酸量、テトラエトキシシラン量を半分にした以外は実施例1に記載の触媒の調整方法と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒3とした。
触媒3を用いて、実施例1と同条件でエチレン転化反応を行なった。結果を表1に示す。反応成績については、実施例1で得られたエチレンの転化率と同等の転化率が得られた時点で比較するため、反応開始後3.4時間後のデータを示した。
ゼオライトAをゼオライトBに変更した以外は実施例1に記載の調整方法と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒4とした。
触媒4を用いて、実施例1と同条件でエチレン転化反応を行なった。結果を表1に示す。反応成績については、実施例1で得られたエチレンの転化率と同等の転化率が得られた時点で比較するため、反応開始後3.0時間後のデータを示した。
ゼオライトBに対して硫酸処理を行った。ゼオライトB 0.5gに対して0.1M硫酸を25g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られた触媒を触媒5とした。
合成例2で得られたゼオライトCに対して、硫酸溶液中でシリル化を行った。ゼオライトC、1gに対して溶媒の1M硫酸を50g、シリル化剤のテトラエトキシシランを0.3g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られた触媒を触媒6とした。
硫酸濃度を0.5Mとした以外は実施例4と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒7とした。
触媒7を用いて、実施例4と同条件でエチレン転化反応を行なった。反応開始後2.1時間後にガスクロマトグラフィで生成物の分析を行った。結果を表1に示す。
硫酸濃度を0.25Mとした以外は実施例4と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒8とした。
触媒8を用いて、実施例5と同条件でエチレン転化反応を行なった。反応開始後2.1時間後にガスクロマトグラフィで生成物の分析を行った。結果を表1に示す。
合成例3で得られたゼオライトCに対して、硫酸溶液中でシリル化を行った。ゼオライトC 0.5gに対して溶媒の0.1M硫酸を25g、シリル化剤のテトラエトキシシラ
ンを0.15g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られた触媒を触媒9とした。
物の生成量が低下し、プロピレン選択率が向上したものと考えられる。
また、実施例4〜6から、ナトリウム(Na)型であるゼオライトCを硫酸存在下でシリル化処理する際に、幅広い酸濃度でシリル化処理の効果が得られることが確認された。シリル化処理することで、シリル化処理をしないゼオライトに比べ、実施例1〜3と同様に高いプロピレン選択率が得られた。
さらに、実施例7から、細孔容積の小さいゼオライトCにおいても硫酸存在下でシリル化処理することができることが示された。
次に硫酸シリル化の構造の保持性についての例を示す。
(比較例3)
H型ゼオライトFに対して硫酸処理を行った。ゼオライトF 1gに対して0.1M硫酸を50g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られたゼオライトをゼオライトGとし、ゼオライトFと合わせて前記の方法でXRD測定を行った。
なおNa型とH型の間では、XRD測定の結果に差異はなく、またNa型をイオン交換してH型に変換した際もXRD測定の結果に差異はないため、添加する酸濃度を合わせるため、一旦H型にしたものを用いて酸がゼオライトに与える影響を確認した。
H型ゼオライトDに対して、硫酸溶液中でシリル化を行った。ゼオライトD 0.5g
に対して溶媒の0.1M硫酸を25g、シリル化剤のテトラエトキシシランを0.15g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られたゼオライトをゼオライトHとし、ゼオライトDと合わせてXRD測定を行った。
一方、参考例1からは、H型のゼオライトを本発明のシリル化方法によってシリル化した場合でも、ゼオライトの構造が維持されていることがわかった。一般的には、同じ酸の量で同じ重量のゼオライトを処理した場合、H型を処理する方がより過酷な条件で処理す
ることになり壊れやすい傾向にあるが、構造は維持されていた。
Claims (7)
- シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法であって、
CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下、シリル化剤と反応させるものであり、前記非H型ゼオライトが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンのいずれかで置換されたものであることを特徴とする、シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。 - 前記非H型ゼオライトの窒素吸着等温線からBJH法によって得られる細孔径分布において細孔径100Å以上200Å以下の範囲の全細孔容積が、10×10―3ml/g以上である、請求項1に記載のシリル化されたCHA構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
- 前記非H型ゼオライトが、アルミノシリケートである請求項1又は2に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
- 前記酸性水溶液中の酸の濃度が、0.01M以上5M以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
- 前記酸性水溶液が硫酸である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
- 前記非H型ゼオライトのSiO2/M2O3比が、5以上、50以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法で得られたシリル化されたH型ゼオライトを触媒として、エチレンを原料としてプロピレンを製造することを特徴とするプロピレンの製造方法。
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