[不織繊維構造体]
本発明の透光性シートは、湿熱接着性繊維を含む不織繊維構造体で構成されている。不織繊維構造体は、湿熱接着性繊維を含み、かつ不織繊維構造を有する成形体である。さらに、本発明における不織繊維構造体は、前記湿熱接着性繊維の融着により三次元的に絡み合った繊維が固定されており、繊維構造に特有の高い吸音断熱性、衝撃吸収性を有している。また、繊維構造体に照射された光は、構造体を構成する繊維による反射と繊維間の間隙による内部への透過が起こる。さらに、この現象が繊維内部で繰り返されることにより、構造体を透過した光は、拡散されて柔らかな光となる。また、不織繊維構造を構成する繊維の配列と、この繊維同士の接着状態を調整することにより、通常の不織布では得られない曲げ挙動と軽量性とを両立し、さらに折れ難く、形態保持性及び通気性をも同時に確保している。
このような不織繊維構造体は、後述するように、前記湿熱接着性繊維を含むウェブに高温(過熱又は加熱)水蒸気を作用させて、湿熱接着性繊維の融点以下の温度で接着作用を発現し、繊維同士を部分的に接着させることにより得られる。すなわち、単繊維及び束状集束繊維同士を湿熱下、適度に小さな空隙を保持しながら、いわば「スクラム」を組むように点接着又は部分接着させて得られる。特に、繊維ウェブを構成する繊維が、概ね繊維ウェブ(不織繊維)面に対して平行に配列しながら、お互いに交差するように各繊維が配列して交点で融着しているのが好ましい。「概ね繊維ウェブ面に対し平行に配列している」とは、局部的に多数の繊維が厚み方向に沿って配列している部分が繰り返し存在するようなことがない状態を示す。
不織繊維構造体は、面方向において規則性を有していてもよく、例えば、繊維の長手方向が構造体の幅方向(CD方向)よりも長手又は機械方向(MD方向)に向く比率が多くてもよい。
湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂で構成されている。湿熱接着性樹脂は、高温水蒸気によって容易に実現可能な温度において、流動又は容易に変形して接着機能を発現可能であればよい。具体的には、熱水(例えば、80〜120℃、特に95〜100℃程度)で軟化して自己接着又は他の繊維に接着可能な熱可塑性樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系重合体、ポリ乳酸などのポリ乳酸系樹脂、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体などが挙げられる。さらに、高温水蒸気により容易に流動又は変形して接着可能なエラストマー(例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマーなど)などであってもよい。これらの湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、特に、エチレンやプロピレンなどのα−C2−10オレフィン単位を含むビニルアルコール系重合体、特に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、エチレン単位の含有量(共重合割合)は、例えば、5〜65モル%(例えば、10〜65モル%)、好ましくは20〜55モル%、さらに好ましくは30〜50モル%程度である。エチレン単位がこの範囲にあることにより、湿熱接着性を有するが、熱水溶解性はないという特異な性質が得られる。エチレン単位の割合が少なすぎると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が、低温の蒸気(水)で容易に膨潤又はゲル化し、水に一度濡れただけで形態が変化し易い。一方、エチレン単位の割合が多すぎると、吸湿性が低下し、湿熱による繊維融着が発現し難くなるため、実用性のある強度の確保が困難となる。エチレン単位の割合が、特に30〜50モル%の範囲にあると、シート又は板状への加工性が特に優れる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるビニルアルコール単位のケン化度は、例えば、90〜99.99モル%程度であり、好ましくは95〜99.98モル%、さらに好ましくは96〜99.97モル%程度である。ケン化度が小さすぎると、熱安定性が低下し、熱分解やゲル化によって安定性が低下する。一方、ケン化度が大きすぎると、繊維自体の製造が困難となる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、必要に応じて選択できるが、例えば、200〜2500、好ましくは300〜2000、さらに好ましくは400〜1500程度である。重合度がこの範囲にあると、紡糸性と湿熱接着性とのバランスに優れる。
湿熱接着性繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面(偏平状、楕円状、多角形状など)に限定されず、中空断面状などであってもよい。湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂を含む複数の樹脂で構成された複合繊維であってもよい。複合繊維は、湿熱接着性樹脂を少なくとも繊維表面の一部に有していればよいが、接着性の点から、繊維表面において長さ方向に連続する湿熱接着性樹脂を有するのが好ましい。湿熱接着性樹脂の被覆率は、例えば、50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
湿熱接着性樹脂が表面を占める複合繊維の横断面構造としては、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型又は多層貼合型、放射状貼合型、ランダム複合型などが挙げられる。これらの横断面構造のうち、接着性が高い構造である点から、湿熱接着性樹脂が繊維の全表面を被覆する構造である芯鞘型構造(すなわち、鞘部が湿熱接着性樹脂で構成された芯鞘型構造)が好ましい。芯鞘型構造は、他の繊維形成性重合体で構成された繊維の表面に湿熱接着性樹脂をコーティングした繊維であってもよい。
複合繊維の場合、湿熱接着性樹脂同士を組み合わせてもよいが、非湿熱接着性樹脂と組み合わせてもよい。非湿熱接着性樹脂としては、非水溶性又は疎水性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの非湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの非湿熱接着性樹脂のうち、耐熱性及び寸法安定性の点から、融点が湿熱接着性樹脂(特にエチレン−ビニルアルコール系共重合体)よりも高い樹脂、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリC2−4アルキレンアリレート系樹脂などの芳香族ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、特に、PETなどのポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、エチレンテレフタレート単位の他に、他のジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)やジオール(例えば、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)で構成された単位を20モル%以下程度の割合で含んでいてもよい。
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6−12などの脂肪族ポリアミドおよびその共重合体、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから合成された半芳香族ポリアミドなどが好ましい。これらのポリアミド系樹脂にも、共重合可能な他の単位が含まれていてもよい。
湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂(繊維形成性重合体)とで構成された複合繊維の場合、両者の割合(質量比)は、構造(例えば、芯鞘型構造)に応じて選択でき、湿熱接着性樹脂が表面に存在すれば特に限定されないが、例えば、湿熱接着性樹脂/非湿熱接着性樹脂=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜15/85、さらに好ましくは60/40〜20/80程度である。湿熱接着性樹脂の割合が多すぎると、繊維の強度を確保し難く、湿熱接着性樹脂の割合が少なすぎると、繊維表面の長さ方向に連続して湿熱接着性樹脂を存在させるのが困難となり、湿熱接着性が低下する。この傾向は、湿熱接着性樹脂を非湿熱接着性繊維の表面にコートする場合においても同様である。本発明では、不織繊維構造体がこのような割合で湿熱接着性繊維を含むため、透湿性が低く、障子などに利用しても結露を抑制できる。
湿熱接着性繊維の平均繊度は、用途に応じて、例えば、0.01〜100dtex程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜50dtex、好ましくは0.5〜20dtex、さらに好ましくは1〜10dtex(特に2〜8dtex)程度である。平均繊度がこの範囲にあると、繊維の強度と湿熱接着性の発現とのバランスに優れ、透過光の散乱性や断熱性にも優れる。低密度層と高密度層との平均繊度は異なっていてもよい。例えば、高密度層の平均繊度が低密度層の平均繊度よりも小さいと、高密度層の強力が増加し、不織繊維構造体の曲げ特性が向上する。
湿熱接着性繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは25〜75mm程度である。平均繊維長がこの範囲にあると、繊維が充分に絡み合うため、繊維構造体の機械的強度が向上する。
湿熱接着性繊維の捲縮率は、例えば、1〜50%、好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜30%程度である。また、捲縮数は、例えば、1〜100個/25mm、好ましくは5〜50個/25mm、さらに好ましくは10〜30個/25mm程度である。
不織繊維構造体は、前記湿熱接着性繊維に加えて、さらに非湿熱接着性繊維を含んでいてもよい。非湿熱接着性繊維としては、前記複合繊維を構成する非湿熱接着性樹脂で構成された繊維の他、セルロース系繊維(例えば、レーヨン繊維などの再生繊維、アセテート繊維などの半合成繊維など)などが挙げられる。これらの非湿熱接着性繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。非湿熱接着性繊維の平均繊度及び繊維長も湿熱接着性繊維と同様の範囲から選択できる。これらの非湿熱接着性繊維は、目的の特性に応じて選択でき、レーヨンなどの再生繊維と組み合わせると、相対的に高密度で機械的特性の高い繊維構造体が得られる。
湿熱接着性繊維と非湿熱接着性繊維との割合(質量比)は、湿熱接着性繊維/非湿熱接着性繊維=100/0〜20/80(例えば、99/1〜20/80)、好ましくは100/0〜50/50(例えば、95/5〜50/50)、さらに好ましくは100/0〜70/30程度である。湿熱接着性繊維の割合が少なすぎると、硬度が低下し、繊維構造体としての取り扱い性の保持が困難となる。
繊維構造体(又は繊維)は、さらに、慣用の添加剤、例えば、安定剤(銅化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、分散剤、増粘剤、微粒子、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤、滑剤、抗菌剤、防虫・防ダニ剤、防カビ剤、つや消し剤、蓄熱剤、香料、蛍光増白剤、湿潤剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、構造体表面に担持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。
なお、不織繊維構造体は、難燃性が要求される用途に使用される場合、難燃剤を添加するのが効果的である。難燃剤は、慣用の無機系難燃剤や有機系難燃剤を使用でき、例えば、ハロゲン系難燃剤(塩素化パラフィン、臭素化オレフィンなど)、リン系難燃剤(赤燐やリン酸エステルなど)、無機鉱物系難燃剤(ホウ酸、ホウ砂、ケイ酸塩など)、金属酸化物系難燃剤(水酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなど)などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
難燃剤の割合は、不織繊維構造体の用途に応じて選択すればよく、例えば、不織繊維構造体の全質量に対して、例えば、1〜300質量%、好ましくは5〜200質量%、さらに好ましくは10〜150質量%程度である。
難燃化の方法としては、慣用のディップ−ニップ加工と同様にして、繊維構造体に難燃剤を含有する水溶液やエマルジョンを含浸又は噴霧した後に乾燥させる方法、繊維紡糸時に二軸押出機などで難燃剤を混練した樹脂を押出して紡糸し、この繊維を用いる方法などを使用できる。
[透光性シートの構造]
このような不織繊維構造体で構成された透光性シートは、低密度層と高密度層とで構成された積層構造を有している。本発明では、不織繊維構造体が積層構造を有することにより、高密度層による高い反射散乱効果と、低密度層による高い透過散乱効果とが組み合わされるためか、光の拡散効果を向上でき、柔らかい透過光を得ることができる。さらに、低密度層で軽量性、断熱性を確保するとともに、高密度層により強度を向上できるため、軽量性、機械的特性、断熱性及び形態安定性(積層構造体としての強力や曲げ剛性、表面形態の安定性向上による毛羽立ちの抑制)も同時に充足できる。さらに、両層を組み合わせるため、吸音性も向上できる。特に、高周波数域の吸音性に効果を有し、1000Hzよりも高い周波数域で有効である。一般的に成人は4000Hz前後の周波数の音に対して最も耳の感度が高く、小さい音でもよく聞こえることが実証されている。本願発明の透光性シートは、これらの周波数域の吸音性に非常に有効に働く。
(低密度層)
低密度層の見掛け密度は10〜200kg/m3であり、好ましくは20〜150kg/m3、さらに好ましくは30〜130kg/m3(特に40〜120kg/m3)程度である。本発明では、低密度層がこのような密度を有することにより、軽量性及び断熱性を確保できるとともに、適度な透光性及び高周波数域での吸音性も有している。さらに、低密度層では、このような範囲にある見掛け密度の分布(特に厚み方向における分布)は、後述する繊維接着率とともに、均一であるのが好ましい。
低密度層の目付は、例えば、40〜1280g/m2、好ましくは50〜1100g/m2、さらに好ましくは100〜800g/m2(特に130〜500g/m2)程度である。
低密度層において、不織繊維構造を構成する繊維が前記湿熱接着性繊維の融着による繊維接着率は、例えば、3〜85%、好ましくは5〜80%、さらに好ましくは10〜75%(特に10〜50%)程度である。
本発明における繊維接着率は、後述する実施例に記載の方法で測定できるが、不織繊維断面における全繊維の断面数に対して、2本以上接着した繊維の断面数の割合を示す。従って、繊維接着率が低いことは、複数の繊維同士が融着する割合(集束して融着した繊維の割合)が少ないことを意味する。
本発明では、さらに低密度層を構成する繊維は、各々の繊維の接点で接着しているが、できるだけ少ない接点数で大きな曲げ応力を発現するためには、この接着点が、厚み方向に沿って、繊維構造体表面から内部(中央)、そして裏面に至るまで、均一に分布しているのが好ましい。接着点が低密度層の表面又は内部などに集中すると、優れた機械的特性及び成形性を確保するのが困難となるだけでなく、接着点の少ない部分における形態安定性が低下する。
従って、低密度層の厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも前記範囲にあるのが好ましい。さらに、各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合(最小値/最大値)(繊維接着率が最大の領域に対する最小の領域の比率)が、例えば、50%以上(例えば、50〜100%)、好ましくは60〜99.9%、さらに好ましくは70〜99.5%(特に80〜99%)程度である。本発明では、低密度層の繊維接着率が、厚み方向において、このような均一性を有しているため、繊維の接着面積が低いにも拘わらず、硬さや曲げ強度、耐折性や靱性も優れている。さらに、繊維の接着面積が低いため、繊維間に隙間ができ、十分な空間を有するため、透光性を確保しながら適度な拡散機能を有し、断熱性及び吸音性も向上できる。
繊維接着率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織繊維構造体の断面を拡大した写真を撮影し、所定の領域において、接着した繊維断面の数に基づいて簡便に測定できる。しかし、束状に繊維が融着している場合には、各繊維が束状に又は交点で融着しているため、特に密度が高い場合には、繊維単体として観察することが困難になり易い。この場合、例えば、繊維構造体が湿熱接着性繊維で構成された鞘部と繊維形成性重合体で構成された芯部とで形成された芯鞘型複合繊維で接着されている場合には、融解や洗浄除去などの手段で接着部の融着を解除し、解除前の切断面と比較することにより繊維接着率を測定できる。
低密度層の厚みは、用途に応じて1〜30mm程度の範囲から選択でき、例えば、1.1〜20mm、好ましくは1.1〜15mm、さらに好ましくは1.2〜10mm(特に1.3〜8mm)程度であり、例えば、1.4〜5mm(特に1.5〜3mm)程度であってもよい。
(高密度層)
高密度層は、低密度層の少なくとも一方の面に積層されていればよく、低密度層の一方の面に積層されていてもよく、両面に積層されていてもよい。これらのうち、強度や散乱特性を向上できる点などから、高密度層を両面に積層するのが好ましい。さらに、高密度層は、人間や他の物体などの移動接触体の接触による毛羽立ちの発生も抑制できるため、高密度層を表面に配置させて使用するのが好ましく、高密度層を両面に積層するのが特に好ましい。すなわち、片面のみ高密度層を有する積層体において、毛羽立ちを抑制する必要がある場合は、高密度層側を移動接触体と接触する面側に配置して使用するのが好ましい。透光性シートと接触(摺接)して毛羽立ちを発生させる原因となる移動接触体としては、人間の他、動物、布(カーテンなどの織物、編物など)、掃除用具、子供の遊具など、室内で使用する各種物体などが挙げられる。
高密度層は、低密度層と一体化されていてもよく、例えば、接着剤又は粘着剤や固定具(ビスやボルト、粘着テープなど)を介して一体化されていてもよいが、少なくとも両層を構成する湿熱接着性繊維の融着により一体化されているのが好ましい。湿熱接着性繊維の融着により一体化されていると、繊維構造が保持されるため、光散乱性、断熱性を損なうことなく、両層を一体化できる。特に、繊維構造体の表面を熱プレスして高密度層を形成した場合には、高密度層と低密度層とは、予め絡合により一体化している繊維が湿熱接着性繊維により融着し、さらに熱プレスされるため、両層の密着性は高い。
高密度層の見掛け密度は、前記低密度層よりも大きければよく、例えば、100〜1000kg/m3程度の範囲から選択でき、例えば、110〜800kg/m3、好ましくは120〜700kg/m3、さらに好ましくは130〜600kg/m3(特に140〜500kg/m3)程度である。
低密度層と高密度層との見掛け密度比は、低密度層/高密度層=1/1.1〜1/100程度の範囲から選択でき、例えば、1/1.1〜1/20、好ましくは1/1.2〜1/15、さらに好ましくは1/1.3〜1/10(特に1/1.4〜1/6)程度であってもよい。本発明では、両層の密度比を調整することにより、軽量性と強度とのバランス、透光性と光散乱性とのバランスに優れ、断熱性及び高周波数域での吸音性も向上できる。
高密度層では、厚み方向における密度(及び繊維接着率)の分布は特に限定されず、低密度層と同様に均一に分布してもよく、不均一に分布してもよい。また、均一に分布している部分と不均一に分布している部分とが混在していてもよい。これらのうち、厚み方向において密度が不均一に分布している高密度層が好ましく、表面から中央部の方向に向かって密度が漸減又は減少するように密度が分布している高密度層が特に好ましい。このような密度分布を有する高密度層を有する透光性シートは、低密度層と高密度層との密着性(耐剥離性)にも優れている。すなわち、高密度層と低密度層との間で急激な密度差がある場合には、応力の歪みが高密度層と低密度層との界面に集中して剥離し易いが、高密度層に密度勾配を形成して低密度層との界面での密度差を小さくすることにより、両層の間での応力の歪みを厚み方向に分散できるため、両層間での剥離を抑制できる。さらに、このような密度分布を有する高密度層は、表面における高い反射能を有するとともに、内面では徐々に透光性が向上するため、光の反射効果と拡散効果とのバランスにも優れている。
高密度層の目付(高密度層が低密度層の両面に形成されている場合は各層の目付)は、例えば、5〜1000g/m2、好ましくは10〜600g/m2、さらに好ましくは20〜400g/m2(特に30〜350g/m2)程度である。
低密度層と高密度層との目付比(高密度層が低密度層の両面に形成されている場合は各層の目付比)は、例えば、低密度層/高密度層=1/10〜20/1、好ましくは1/5〜15/1、さらに好ましくは1/2〜10/1(特に1/1〜8/1)程度であってもよい。本発明では、両層の目付比がこの範囲にあると、透光性を確保しつつ、光拡散性能を付与できる。
高密度層の繊維接着率は、例えば、5〜99%、好ましくは10〜97%、さらに好ましくは25〜95%(特に50〜95%)程度である。低密度層と高密度層との繊維接着率比は、例えば、低密度層/高密度層=1/1.1〜1/50、好ましくは1/1.3〜1/20、さらに好ましくは1/1.4〜1/8(特に1/1.5〜1/5)程度であってもよい。
高密度層の厚み(高密度層が低密度層の両面に形成されている場合は各層の厚み)は、例えば、0.1〜10mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.12〜5mm、好ましくは0.13〜1mm、さらに好ましくは0.15〜0.5mm(特に0.15〜0.3mm)程度である。
なお、本願発明では、高密度層の密度(又は繊維接着率)の分布については、例えば、断面の電子顕微鏡写真を撮影して評価できる。なお、写真から界面が不明確であるときなど、後述する実施例に記載の方法で評価できる。すなわち、本願発明では、高密度層が、厚み方向において、その表面から中央部の方向に向かって密度が減少している場合、低密度層は均一な密度分布を有している。そのため、繊維構造体の縦断面(厚み方向断面)において、表層から中央部に至る密度勾配を測定し、変曲点を求めると、この変曲点が、低密度層と高密度層との界面又は境界とみなすことができる。なお、変曲点がない場合には、中間を低密度層と高密度層との界面又は境界とみなすこともできる。具体的には、電子顕微鏡写真において、所定範囲の繊維数を測定する方法(分画した区域の繊維数を測定した厚み方向における密度の推移を見る方法)などにより、密度分布が不均一な高密度層を特定でき、その厚みを決定できる。なお、変曲点を厳密に求める場合には、分画する区域をさらに細分化するとともに、グラフ化して求めてもよい。
低密度層と高密度層との厚み比(高密度層が低密度層の両面に形成されている場合は各層の厚み比)は、低密度層/高密度層=1/1〜100/1程度の範囲から選択でき、例えば、1.5/1〜60/1、好ましくは2/1〜30/1、さらに好ましくは3/1〜18/1(特に5/1〜12/1)程度である。
本発明では、両層の厚み比がこの範囲にあるため、強度と反射散乱性に優れる高密度層に対して、透光散乱性、軽量性、断熱性に優れる低密度層が適度な厚みで積層されるため、強度と光拡散性と断熱性とを両立できる。
[透光性シートの特性]
本発明の透光性シートは、低密度層と高密度層とで構成された積層構造を有するため、軽量であるにも拘わらず、高い強度を有するとともに、透光性及び透過光の散乱効果も高く、断熱性にも優れている。特に、厚み方向に均一な繊維接着率及び密度分布を有する低密度層と、高密度層とが積層されていると、層間の剥離も抑制される上に、光の拡散効果も高く、柔らかい透過光を得ることができる。
本発明では、透光性シートの強度を表すため、曲げ挙動に関して、JIS K7017「繊維強化プラスチック−曲げ特性の求め方」に準じて、サンプルを徐々に曲げたときに生ずるサンプルの反発力を測定した場合における最大荷重を曲げ破壊荷重として表すとともに、最大応力(ピーク応力)を曲げ応力として表した。すなわち、この曲げ破壊荷重が大きいほどよく曲がる構造体であり、曲げ応力が大きいほど硬い構造体である。
本発明の透光性シートは、少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における曲げ破壊荷重が、例えば、0.1N以上であり、好ましくは0.3〜30N、さらに好ましくは0.5〜10N(特に1〜5N)程度である。また、少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における最大曲げ応力が0.1N/mm2以上であり、好ましくは0.1〜10N/mm2、さらに好ましくは0.2〜5N/mm2(特に0.3〜3N/mm2)程度であってもよい。さらに、最大応力時の少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における撓みが20mm以下、例えば、1〜15mm、好ましくは2〜12mm、さらに好ましくは3〜10mm程度である。曲げ破壊荷重、曲げ応力及び撓みがこの範囲にあると、自重で折れることなく、高い曲げ強度を示す。従って、例えば、シートの片側のみを手で持ち、そのまま持ち運びが可能であり、施工性に優れている。
本発明の透光性シートにおいて、引張強度における5%引張時の強度(初期弾性率)は、厚み5mmにおいて、少なくとも一方向が100N以上(例えば、120〜500N)、好ましくは130〜400N、さらに好ましくは140〜300N(特に150〜250N)程度である。本発明の透光性シートは、同じ厚み及び密度(総密度)である単層のシートに対して、例えば、1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、さらに好ましくは1.3倍以上の強度を有している。
本発明の透光性シートは、少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における引張強力が50N以上であり、例えば、50〜1000N、好ましくは100〜900N、さらに好ましくは200〜800N(特に300〜700N)程度である。さらに、少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における破断伸度が10%以上、例えば、10〜100%、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは25〜60%程度である。少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における裂断長が1km以上、例えば、1〜10km、好ましくは2〜9km、さらに好ましくは3〜8km程度である。本発明の透光性シートは、このような機械的特性を有するため、軽量性と強度とを両立できる。特に、大面積で利用される障子などに用いても、裂傷の発生が抑制され、穴があきにくい。さらに、撓みも小さいため、障子紙として貼付した場合でも皺の発生を抑制できる。
本発明の透光性シートは、透光性にも優れており、特に、前記密度や目付を調整することにより、高い透光性を実現することもできる。透光率(全光線透過率)は、例えば、10%以上であり、例えば、10〜50%、好ましくは15〜40%、さらに好ましくは18〜35%(特に20〜30%)程度である。本発明の透光性シートは、このような透光率を有するとともに、後述するように、優れた拡散効果を有しているため、透過光を幅広い角度で出射でき、透過光を有効に利用できる。
本発明の透光性シートは、透光性だけでなく、透過光の拡散性に優れており、具体的には、透光性シートの一方の面から垂直に入射し、他方の面を透過する光において、他方の面の法線に対して平行な方向における透過光強度をI0(法線とのなす角が0°における透過光強度又は平行透過光強度)とし、前記法線に対して45°の方向における透過光強度をI1(法線とのなす角が45°における透過光強度又は45°透過光強度)としたとき、両透過光強度の比I1/I0(以下「45°拡散性」と称することもある)が40%以上(例えば、40〜85%)、好ましくは50〜85%、さらに好ましくは60〜80%(特に65〜75%)程度である。すなわち、本発明の透光性シートは、高密度層と低密度層との組み合わせにより、透過光に対して優れた拡散性を有しているため、建築物の採光窓などに用いた場合、室内の明度(例えば、窓際と室内の隅との明るさ)を均質にできるとともに、日光や照明光を和らげる効果を有する。また、照明のランプシェードとして利用した場合、光源からの光が直接照射されることなく、光源の輪郭をぼかすことができるとともに、間接照明のような柔らかな光とすることもできる。
本発明の透光性シートの目付は、主にシートの透光性を確保する点から、例えば、100〜2000g/m2、好ましくは200〜1500g/m2、さらに好ましくは300〜1000g/m2(特に400〜800g/m2)程度である。
本発明の透光性シートは、不織繊維構造を有するため、通気性に優れており、フラジール形法による通気度が0.1cm3/(cm2・秒)以上[例えば、0.1〜250cm3/(cm2・秒)]、好ましくは0.3〜200cm3/(cm2・秒)、さらに好ましくは0.5〜150cm3/(cm2・秒)程度である。このように本発明の透光性シートは通気性を有するため、通気が必要な用途に適しているが、採光窓として利用する場合など、通気性が不要な場合には、非多孔性のフィルム(ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムなど)などを積層してもよい。非多孔性フィルムの厚みは、例えば、0.01〜1mm(特に0.03〜0.5mm)程度である。非多孔性フィルムを積層した場合、透光性シートとフィルムとの間の空気が透光性シートを通して抜けることにより、フィルム貼付後のフィルムの浮き、剥がれを回避できる。また、貼り付けたフィルムの接着剤や粘着剤が表面の構成繊維に貼り付くとともに、繊維空隙に楔の如く入り込むため、強固な接着を実現できる。
本発明の透光性シートは、断熱性も高く、熱伝導率が0.1W/m・K以下と低く、例えば、0.01〜0.1W/m・K、好ましくは0.02〜0.08W/m・K、さらに好ましくは0.03〜0.05W/m・K程度である。本発明では、高密度層の存在により、低密度層の見掛け密度を低く調整することが可能であり、断熱性に優れている。
本発明の透光性シートは、吸音性も高く、低密度層と高密度層とを組み合わせることにより、広い周波数域に亘り優れた吸音性能を実現でき、例えば、音として感知できる周波数の範囲(10〜20000Hz程度)に対して吸音性を示し、通常、500〜7000Hz程度の中〜高周波数を有する音に対して用いられる。特に、本発明の透光性シートは、高周波数域での吸音性が高く、1000〜7000Hz、好ましくは2000〜7000Hz、さらに好ましくは3000〜6500Hz(特に4000〜6300Hz)程度の周波域において吸音性を向上できる。
本発明の透光性シートの厚みは、用途に応じて0.5〜100mm程度から選択できるが、透光性と強度とを両立できる点から、例えば、1〜20mm、好ましくは1.5〜10mm、さらに好ましくは1.7〜8mm(特に2.5〜6mm)程度である。透光性シートの厚みは、高い透光性が要求される用途など、例えば、高い透光性を有するとともに、従来の透光性部材よりも優れた断熱性や吸音性も有する点から、例えば、0.8〜3mm、好ましくは0.9〜2.5mm、さらに好ましくは1〜2.3mm(特に1.5〜2.2mm)程度であってもよい。
[透光性シートの製造方法]
本発明の透光性シートの製造方法としては、予め低密度層と高密度層とを各々作製し、両層を一体化させる方法であってもよく、低密度層を単層として形成した後、この低密度層に密度勾配を形成して高密度層を形成する方法であってもよい。
前者の製造方法において、低密度層と高密度層とを一体化する方法としては、接着剤又は粘着剤や固定具を介して一体化する方法であってもよいが、両層を構成する湿熱接着性繊維の融着により一体化する方法が好ましい。湿熱接着性繊維を融着させる方法では、後述する不織繊維構造体の製造方法において得られるウェブを積層して湿熱接着してもよく、得られた不織繊維構造体を積層してさらに湿熱接着してもよい。湿熱接着の方法としては、後述する不織繊維構造体の製造方法と同様の方法を利用できる。
後者の製造方法において、低密度層に密度勾配を形成する方法としては、低密度層を構成する不織繊維構造体の少なくとも一方の表面を熱プレスする方法が好ましい。熱プレスの方法としては、慣用の方法、例えば、熱ローラーを用いる方法、加熱板で押圧する方法などが挙げられる。また、熱プレスは湿熱プレス成形であってもよい。さらに、低密度層の両面に高密度層を形成する場合、生産性などの点から、不織繊維構造体の両面を熱ローラーで押圧する方法であってもよい。
熱プレスの条件として、加熱温度は、例えば、80〜200℃、好ましくは85〜180℃、さらに好ましくは90〜160℃(特に95〜150℃)程度である。プレス圧力は、100MPa以下程度から選択でき、例えば、0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜5MPa、さらに好ましくは0.1〜1MPa(特に0.15〜0.8MPa)程度である。熱ロールを用いる場合、不織繊維構造体の厚みを、例えば、1.1〜2.5倍(特に1.2〜2倍)程度に圧縮してもよい。プレス時間は、例えば、3秒〜3時間、好ましくは10秒〜1時間、さらに好ましくは30秒〜20分程度である。
いずれの製造方法においても、低密度層及び/又は高密度層を構成する不織繊維構造体を製造する方法としては、次の方法を利用できる。すなわち、不織繊維構造体の製造方法としては、まず、湿熱接着性繊維を含む繊維をウェブ化する。ウェブの形成方法としては、慣用の方法、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法などの直接法、メルトブロー繊維やステープル繊維などを用いたカード法、エアレイ法などの乾式法などを利用できる。これらの方法のうち、メルトブロー繊維やステープル繊維を用いたカード法、特に、ステープル繊維を用いたカード法が汎用される。ステープル繊維を用いて得られたウェブとしては、例えば、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ、クロスラップウェブなどが挙げられる。これらのウェブのうち、束状融着繊維の割合を多くする場合には、セミランダムウェブ、パラレルウェブが好ましい。
次に、得られた繊維ウェブは、ベルトコンベアにより次工程へ送られ、次いで過熱又は高温蒸気(高圧スチーム)流に晒されることにより、不織繊維構造を有する構造体が得られる。すなわち、ベルトコンベアで運搬された繊維ウェブは、蒸気噴射装置のノズルから噴出される高速高温水蒸気流の中を通過する際、吹き付けられた高温水蒸気により繊維同士が三次元的に接着される。特に、本発明における繊維ウェブは通気性を有しているため、高温水蒸気が内部にまで浸透し、略均一な融着状態を有する構造体を得ることができる。
不織繊維構造体は、具体的には、温度70〜150℃、好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃程度の高温水蒸気を、前記繊維ウェブに対して、圧力0.1〜2MPa、好ましくは0.2〜1.5MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPa程度、処理速度200m/分以下、好ましくは0.1〜100m/分、さらに好ましくは1〜50m/分程度で噴射する方法により得られるが、詳細な製造方法については、国際公開WO2007/116676号公報(特許文献3)に記載の製造方法を利用できる。なお、不織繊維構造体の密度は、高温水蒸気での処理において、2台のベルトコンベアで挟み込むようにして運搬し、かつベルトの間隔を調整することにより制御してもよい。
得られた不織繊維構造体は、前述のように、密度分布が均一な低密度層又は高密度層として次工程に供されて透光性シートが得られる。
得られた透光性シートは、通常、板状又はシート状成形体として得られ、切断加工などにより利用されるが、前述の湿熱接着や熱プレス以外にも、必要に応じて慣用の熱成形により二次成形してもよい。熱成形としては、例えば、圧縮成形、圧空成形(押出圧空成形、熱板圧空成形、真空圧空成形など)、自由吹込成形、真空成形、折り曲げ加工、マッチドモールド成形、湿熱プレス成形などが利用できる。特に、本発明の透光性シートは、熱可塑性であるため、容易に熱成形が可能であり、平らな形状だけでなく、曲面形状にも容易に加工できる。さらに、繊維製のボード材であるため、市販のカッターなどで容易に切断可能であり、施工現場での寸法調整も容易である。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例における各物性値は、以下に示す方法により測定した。また、物性値は、いずれも3種類のサンプル(n=3)を用いて平均値を測定した。なお、実施例中の「部」及び「%」はことわりのない限り、質量基準である。
(1)目付(g/m2)
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
(2)厚み(mm)、見掛け密度(kg/m3)
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて厚みを測定し、この値と目付けの値とから見かけ密度を算出した。
なお、熱プレス法で調製されたシートの高密度層の厚みについては、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、構造体断面(MD方向の断面(CD方向に沿って切断した断面))を30倍に拡大した写真を撮影して、次のような手順で求めた。すなわち、断面写真を厚み方向に20等分し、等分割した各区域において、幅0.5mm当たりの繊維本数をカウントし、略一定の繊維本数を示す区域を低密度層とみなした。区域ごとの繊維本数の分布を表2に示す。
(3)通気度
JIS L1096に記載の一般織物試験方法のうち、A法(フラジール形法)に準じ、布帛の通気性測定機((株)東洋精機製作所製、フラジール・パーミヤメーター)を用いて、圧力125Paの条件下、100cm2の大きさのサンプルについて通気度を測定した。
(4)繊維接着率
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、構造体断面を100倍に拡大した写真を撮影した。撮影した構造体の厚み方向における断面写真を厚み方向に三等分し、三等分した各領域(表面、内部(中央)、裏面)において、そこに見出せる繊維切断面(繊維端面)の数に対して繊維同士が接着している切断面の数の割合を求めた。各領域に見出せる全繊維断面数のうち、2本以上の繊維が接着した状態の断面の数の占める割合を以下の式に基づいて百分率で表わした。なお、繊維同士が接触する部分には、融着することなく単に接触している部分と、融着により接着している部分とがある。但し、顕微鏡撮影のために構造体を切断することにより、構造体の切断面においては、各繊維が有する応力によって、単に接触している繊維同士は分離する。従って、断面写真において、接触している繊維同士は、接着していると判断できる。
繊維接着率(%)=(2本以上接着した繊維の断面数)/(全繊維断面数)×100
但し、各写真について、断面の見える繊維は全て計数し、繊維断面数100以下の場合は、観察する写真を追加して全繊維断面数が100を超えるようにした。なお、三等分した各領域についてそれぞれ繊維接着率を求め、その最大値に対する最小値の割合(最小値/最大値)も併せて求めた。
(5)引張強力
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
(6)5%引張強度
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
(7)破断伸度
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて、定速伸長形引張試験機((株)島津製作所製)を用いて測定した。なお、破断伸度は不織布の流れ(MD)方向及び幅(CD)方向について測定した。
(8)裂断長
JIS P8113「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準じて測定した。なお、裂断長は不織布の流れ(MD)方向及び幅(CD)方向について測定した。
(9)曲げ破壊荷重
JIS K7017に記載の方法のうちA法(3点曲げ法)に準じて測定した。このとき、測定サンプルは30mm幅×200mm長のサンプルを用い、支点間距離を160mmとし、試験速度を10mm/分として測定を行った。本発明では、この測定結果チャートにおける最大荷重を曲げ破壊荷重とした。なお、曲げ荷重の測定は、MD方向及びCD方向について測定した。すなわち、MD方向の測定では、測定サンプルの長辺に対しウェブ流れ方向(MD)が平行となるように測定サンプルを採取して測定し、一方、CD方向の測定では、測定サンプルの長辺に対しウェブ幅方向(CD)が平行となるように測定サンプルを採取して測定した。
(10)撓み
JIS K7017に記載の方法のうちA法(3点曲げ法)に準じて測定した。たわみは、曲げ最大応力時のたわみ(試験片の上面又は下面の初期位置からの移動距離)を測定した。なお、たわみは不織布の流れ(MD)方向及び幅(CD)方向について測定した。
(11)曲げ応力
JIS K7017に記載の方法のうちA法(3点曲げ法)に準じて測定した。このとき、測定サンプルは30mm幅×200mm長のサンプルを用い、支点間距離を160mmとし、試験速度を10mm/分として測定を行った。本発明では、この測定結果チャートにおける最大応力(ピーク応力)を最大曲げ応力とした。なお、曲げ応力の測定は、MD方向およびCD方向について測定した。ここで、MD方向とは、測定サンプルの長辺に対しウェブ流れ方向(MD)が平行となるように測定サンプルを採取した状態をいい、一方、CD方向とは、測定サンプルの長辺に対しウェブ幅方向(CD)が平行となるように測定サンプルを採取した状態をいう。
(12)透光率(全光線透過率)
密閉可能な箱に電球を設置し、中央部に置いた測定サンプルを通過した光量をサンプル下部に置いた照度計で測定して求めた。
(13)45°拡散性(透過光の拡散性)
ゴニオメーター((株)村上色彩技術研究所製「GP200」)を用いて、サンプルの一方の面に対して垂直に入射し、他方の面から透過する光において、他方の面の法線に対して平行な方向における透過光強度(法線とのなす角が0°における透過光強度)と、前記法線に対して45°の方向における透過光強度(法線とのなす角が45°における透過光強度)とを測定し、両者の比率(45°透過光強度/平行透過光強度)を求めた。
(14)熱伝導率
「JIS R2618、耐火断熱れんがの熱線法による熱伝導率の試験方法」に準拠して、非定常熱線法によって測定した。
(15)熱伝達温度
温水を40℃に調整したバットを用いて、サンプルの熱伝導度を測定した。詳しくは、前記温水バットの下側に、カウンタークロス2枚を介してサンプルを配設し、さらにサンプルの表面及び裏面に測温体を設置して、サンプルの表面側及び裏面側の温度を測定し、表面側の温度が40℃に達した時点の裏面側の温度を熱伝達温度とした。なお、サンプルの裏側には、熱が逃げないように断熱材を敷設するとともに、温湿度の影響が少なくなるように、検定室で試験を行った。さらに、サンプルが高密度層と低密度層との二層構造で形成されている場合、表面側を高密度層として測定した。
(16)毛羽立ち性
サンプルの表面を、エチケットブラシ(ポリアミド製ブラシ)を用いて同一の方向に10回擦った後、擦った表面に幅15mmのセロハンテープ(コクヨマーケティング(株)製「品番:PB−TP−1535)を貼り付け、長さ50mmのセロハンテープに付着した個数を測定した。新たなセロハンテープを用いて、この操作を2回繰り返した総数を毛羽立ち数とした。なお、二層構造体については、高密度層の毛羽立ち性を測定した。
(17)吸音率
音響インピーダンス管を用いた吸音率測定システム(ブリューエル&ケアー社製、2マイクロフォンインピーダンス管4206型の測定管)を用いて、小型測定管に直径29mmの円柱型サンプルを設置し、JIS A−1405法に準じて、500〜6300Hzの垂直入射吸音率による吸音性を評価し、4000Hz、5000Hz及び6300Hzの垂直入射吸音率を測定した。
比較例1
湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量44モル%、ケン化度98.4モル%)である芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」、繊度3.3dtex、繊維長51mm、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm、捲縮率13.5%)を準備した。
この芯鞘型複合ステープル繊維を用いて、カード法により目付約30g/m2のカードウェブを作製し、このウェブを16枚重ねて合計目付約480g/m2のカードウェブとした。
このカードウェブを、50メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレスネットを装備したベルトコンベアに移送した。尚、このベルトコンベアの金網の上部には同じ金網を有するベルトコンベアが装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。
次いで、下側コンベアに備えられた水蒸気噴射装置ヘカードウェブを導入し、この装置から0.2MPaの高温水蒸気をカードウェブの厚み方向に向けて通過するように(垂直に)噴出して水蒸気処理を施し、不織繊維構造を有する成形体を得た。この水蒸気噴射装置は、下側のコンベア内に、コンベアネットを介して高温水蒸気をウェブに向かって吹き付けるようにノズルが設置され、上側のコンベアにサクション装置が設置されていた。また、この噴射装置のウェブ進行方向における下流側には、ノズルとサクション装置との配置が逆転した組合せである噴射装置がもう一台設置されており、ウェブの表裏両面に対して蒸気処理を施した。
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、ノズルがコンベアの幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられた蒸気噴射装置を使用した。加工速度は3m/分であり、ノズル側とサクション側の上下コンベアベルト間の間隔(距離)を、厚み4.6mmの構造体が得られるように調整した。ノズルはコンベアベルトの裏側にベルトとほぼ接するように配置した。
得られた不織繊維構造体(透光性シート)は、ボード状の形態を有し、一般的な不織布に比べて非常に硬質であった。得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。
また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、CD方向に沿って切断した断面(MD方向の断面)写真を図1に示し、MD方向に沿って切断した断面(CD方向の断面)写真を図2に示す。
実施例1
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを15枚重ねて合計目付約450g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み5.0mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
一方、比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを4枚重ねて合計目付約100g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み0.5mmの構造体が得られるように調整して、高密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
さらに、低密度層を構成する不織繊維構造体と高密度層を構成する不織繊維構造体とを積層し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、比較例1と同様の方法で蒸気処理を施した。
得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、MD方向の断面写真を図3に示し、CD方向の断面写真を図4に示す。
実施例2
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを12枚重ねて合計目付約350g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
一方、比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを5枚重ねて合計目付約150g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み0.5mmの構造体が得られるように調整して、高密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
さらに、低密度層を構成する不織繊維構造体と高密度層を構成する不織繊維構造体とを積層し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、比較例1と同様の方法で蒸気処理を施した。
得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、MD方向の断面写真を図5に示し、CD方向の断面写真を図6に示す。
実施例3
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを14枚重ねて合計目付約400g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
一方、比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、繊度が1.7dtexの芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」、繊維長51mm、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm、捲縮率13.5%)を用いて、カードウェブを3枚重ねて合計目付約150g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み0.5mmの構造体が得られるように調整して、高密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
さらに、低密度層を構成する不織繊維構造体と高密度層を構成する不織繊維構造体とを積層し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、比較例1と同様の方法で蒸気処理を施した。
得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、MD方向の断面写真を図7に示し、CD方向の断面写真を図8に示す。
実施例4
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを13枚重ねて合計目付約390g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
一方、比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを8枚重ねて合計目付約200g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み0.5mmの構造体が得られるように調整して、高密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
さらに、低密度層を構成する不織繊維構造体と高密度層を構成する不織繊維構造体とを積層し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、比較例1と同様の方法で蒸気処理を施した。
得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、MD方向の断面写真を図9に示し、CD方向の断面写真を図10に示す。
実施例5
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを12枚重ねて合計目付約360g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み4mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
一方、比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを4枚重ねて合計目付約100g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み0.5mmの構造体が得られるように調整して、高密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
さらに、低密度層を構成する不織繊維構造体の両面に高密度層を構成する不織繊維構造体を積層し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、比較例1と同様の方法で蒸気処理を施した。
得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、MD方向の断面写真を図11に示し、CD方向の断面写真を図12に示す。
実施例6
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを8枚重ねて合計目付約240g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み4mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
一方、比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを5枚重ねて合計目付約150g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み0.5mmの構造体が得られるように調整して、高密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
さらに、低密度層を構成する不織繊維構造体の両面に高密度層を構成する不織繊維構造体を積層し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、比較例1と同様の方法で蒸気処理を施した。
得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、MD方向の断面写真を図13に示し、CD方向の断面写真を図14に示す。
実施例7
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを6枚重ねて合計目付約180g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み2.5mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
一方、比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを8枚重ねて合計目付約200g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み0.5mmの構造体が得られるように調整して、高密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
さらに、低密度層を構成する不織繊維構造体の両面に高密度層を構成する不織繊維構造体を積層し、コンベア間の距離を厚み3.5mmの構造体が得られるように調整して、比較例1と同様の方法で蒸気処理を施した。
得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、MD方向の断面写真を図15に示し、CD方向の断面写真を図16に示す。
実施例8
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを16枚重ねて合計目付約500g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み10mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。
この不織構造体を両面から、130℃、0.2MPaの条件で、60秒間熱プレスして、厚み5mmの透光性シート(三層構造体)を得た。
得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。また、透光性シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(30倍)で撮影した写真として、MD方向の断面写真を図17に示し、CD方向に沿った断面写真を図18に示す。
実施例9
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを8枚重ねて合計目付約200g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み2mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。この不織構造体を両面から、130℃、0.2MPaの条件で、60秒間熱プレスして、厚み1.5mmの透光性シート(三層構造体)を得た。得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。
実施例10
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを12枚重ねて合計目付約380g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み4mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。この不織構造体を両面から、130℃、0.2MPaの条件で、60秒間熱プレスして、厚み3mmの透光性シート(三層構造体)を得た。得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。
実施例11
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを16枚重ねて合計目付約500g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み5mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。この不織構造体を両面から、130℃、0.2MPaの条件で、70秒間熱プレスして、厚み4mmの透光性シート(三層構造体)を得た。得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。
実施例12
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを18枚重ねて合計目付約750g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み10mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。この不織構造体を両面から、130℃、0.2MPaの条件で、90秒間熱プレスして、厚み8mmの透光性シート(三層構造体)を得た。得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。
実施例13
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを8枚重ねて合計目付約250g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み2.5mmの構造体が得られるように調整して、低密度層を構成する硬質の不織繊維構造体を製造した。この不織構造体を両面から、100℃、0.6MPaの条件で、2分間熱プレスして、厚み1.9mmの透光性シート(三層構造体)を得た。得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。
比較例2
比較例1の不織繊維構造体の製造方法において、カードウェブを8枚重ねて合計目付約250g/m2のカードウェブとを作製し、コンベア間の距離を厚み1.9mmの構造体が得られるように調整して、硬質の不織繊維構造体を製造した。得られた透光性シートの特性及び評価結果を表1〜4に示す。
なお、表1中、三層構造体の場合、高密度層の目付は表層及び裏層の合計目付を示し、目付比(低/高)は高密度層の合計目付の1/2量の目付と、低密度層の目付との比を示す。すなわち、実施例8及び10の透光性シートは、後述する表3の結果から明らかなように、高密度層が表層と裏層とで非対称な厚みを有するが、両者の平均値で目付比を示した。さらに、厚みについても、三層構造体の場合、高密度層の厚みは表層及び裏層の合計厚みを示し、目付比(低/高)は高密度層の合計厚みの1/2厚みと、低密度層の厚みとの比を示す。
表3及び表4の結果から明らかなように、実施例の透光性シートは、機械的特性、光学特性、断熱性のバランスに優れている。特に、目付、密度、厚みが同程度である実施例13と比較例2との比較から、三層構造体の実施例は、単層構造体の比較例に比べて、引張強力などの機械的特性に優れている。
また、実施例の透光性シートは、毛羽立ち性にも優れている。さらに、目付及び厚みが略同等の比較例1と実施例6とを比較すると、実施例6の透光性シートは比較例1の透光性シートよりも吸音性が優れ、目付及び厚みが略同等の比較例2と実施例13とを比較すると、実施例13の透光性シートは比較例2の透光性シートよりも吸音性が優れている。