JP5807904B2 - 混合ガスからの二酸化炭素の分離回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、圧力変動吸着式ガス分離法(PSA法)を利用して、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収するための方法に関する。
近年、温室化効果による地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出削減が求められている。特に火力発電所と製鉄所は二酸化炭素の発生量が多いため、発生ガスからの二酸化炭素の分離回収が強く求められている。
製鉄所で発生するガスのうち、例えば高炉ガスは、実質的に二酸化炭素、窒素、水素、一酸化炭素からなる混合ガスであり、各ガス成分の一般的な濃度は、二酸化炭素:19〜24体積%、窒素:52〜60体積%、水素:2〜6体積%、一酸化炭素:21〜27体積%程度であり、二酸化炭素の濃度が高いことに加え、水素と一酸化炭素を相当量含んでいる。水素と一酸化炭素は可燃性ガスであることから、高炉ガスは燃料として利用されているが、二酸化炭素や窒素は不燃性ガスであることから、それらを効率的に取り除くための方法が、例えば、特許文献1,2などに提案されている。このうち特許文献1には、高炉ガスを触媒の存在下でジメチルエーテルと反応させて、ジメチルエーテルと高炉ガス中の二酸化炭素を一酸化炭素と水素に改質した後、その混合ガスから一酸化炭素と水素を分離回収する方法が示されている。また、特許文献2には、圧力変動吸着式ガス分離法(PSA法)を利用して高炉ガスの二酸化炭素を吸着し、吸着ガスとして分離回収するとともに、非吸着ガスを特定の形態で回収することにより、水素濃度が高い非吸着ガスが得られるようにした方法が示されている。
特開2009−190929号公報 特開2009−226258号公報 国際公開第2009/084632号 国際公開第2008/129968号
特許文献2が採用するようなPSA法により二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスの成分分離を行う場合、吸着剤に最も吸着されやすい成分は二酸化炭素である。それゆえ混合ガスの成分分離では、最初に二酸化炭素の吸着分離が行われるが、二酸化炭素を効率的に回収することができれば、燃料として使用される混合ガスの熱量を高めることができるとともに、回収した二酸化炭素を原料として用いることも可能になる。なお、混合ガスの熱量を高めるだけの目的で二酸化炭素の吸着分離を行う場合には、分離回収した二酸化炭素に多少の不純物(一酸化炭素など)が含まれていても問題はない。しかし、従来用いられているゼオライトや活性炭などの吸着剤は、二酸化炭素だけでなく一酸化炭素をも吸着する性能を有し、二酸化炭素と一酸化炭素の吸着選択性があまりないため、二酸化炭素とともに一酸化炭素も相当量吸着されてしまい、混合ガスから二酸化炭素を効率的に分離回収することができなかった。
したがって本発明の目的は、圧力変動吸着式ガス分離法(PSA法)を利用して、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収するための方法において、混合ガス中の二酸化炭素を効率的に吸着分離できるとともに、一酸化炭素の吸着分離を抑え、二酸化炭素を選択的に吸着分離することができる方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者らは、PSA法により二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収する際に用いる吸着剤について、二酸化炭素の吸着性に優れるとともに、二酸化炭素の吸着選択性(二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸着できる性能)にも優れた吸着剤を見出すべく検討を行った。その結果、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体及びその前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩が、二酸化炭素の吸着性に優れるだけでなく、二酸化炭素の吸着選択性に優れており、二酸化炭素とともに相当量の一酸化炭素を含む混合ガスから、二酸化炭素を選択的且つ効率的に吸着分離できる性能を有することを見出した。
この低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体及びその前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩は、粘土系の材料であり、特許文献3,4には二酸化炭素や水蒸気の吸着剤として使用できることが示されている。しかし、この材料が二酸化炭素の吸着選択性(二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸着できる性能)に優れることは知られていなかった。本発明は、そのような事実を知見しなされたものであり、以下を要旨とするものである。
[1]圧力変動吸着式ガス分離法により、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収するための方法であって、
二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスを、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体からなる吸着剤と接触させ、該吸着剤に二酸化炭素を吸着させる二酸化炭素の分離回収方法であり、
低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の前記複合体は、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素、水ガラスの中から選ばれる1種以上のケイ素化合物を溶解し、該ケイ素化合物の濃度が1〜500mmol/Lである溶液と、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウムの中から選ばれる1種以上のアルミニウム化合物を溶解し、該アルミニウム化合物の濃度が1〜700mmol/Lである溶液を、ケイ素/アルミニウムのモル比が0.7〜1.0となるように混合し、酸又はアルカリを添加してpHを6〜8に調整した後、脱塩処理を行い、回収した前駆体物質を弱酸性〜弱アルカリ性水溶液に分散させて前駆体物質を含む懸濁液とし、該懸濁液を95℃以上で加熱することにより生成したものであり、
前記吸着剤は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=21°、25.5〜26.5°、35.5°、39〜40°付近に4つのブロードなピークを有し、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bが12以上であることを特徴とする混合ガスからの二酸化炭素の分離回収方法。
[2]圧力変動吸着式ガス分離法により、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収するための方法であって、
二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスを、非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる吸着剤と接触させ、該吸着剤に二酸化炭素を吸着させる二酸化炭素の分離回収方法であり、
前記非晶質アルミニウムケイ酸塩は、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素、水ガラスの中から選ばれる1種以上のケイ素化合物を溶解し、該ケイ素化合物の濃度が1〜500mmol/Lである溶液と、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウムの中から選ばれる1種以上のアルミニウム化合物を溶解し、該アルミニウム化合物の濃度が1〜700mmol/Lである溶液を、ケイ素/アルミニウムのモル比が0.7〜1.0となるように混合し、酸又はアルカリを添加してpHを6〜8に調整した後、95℃以上で加熱することにより生成したものであり、
前記吸着剤は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=25.5〜26.5°、39〜40°付近に2つのブロードなピークを有し、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bが13以上であることを特徴とする混合ガスからの二酸化炭素の分離回収方法。
本発明法によれば、圧力変動吸着式ガス分離法(PSA法)を利用して、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収するための方法において、混合ガス中の二酸化炭素を効率的に吸着分離できるとともに、一酸化炭素の吸着分離を抑え、二酸化炭素を選択的に吸着分離することができる。このため、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから、二酸化炭素を効率的に分離回収し、大気中への二酸化炭素の放出量を削減できるとともに、燃料等として用いられる混合ガスの熱量を高めることができ、また、分離回収した二酸化炭素を原料として有効利用することもできる。
実施例(本発明例)において吸着剤として用いた「低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体」の粉末X線回折図形 実施例(本発明例)において吸着剤として用いた「非晶質アルミニウムケイ酸塩」(低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体の前駆体)の粉末X線回折図形 本発明例1における吸着剤(低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体)による二酸化炭素および一酸化炭素の平衡吸着量の測定結果を示すグラフ 本発明例2における吸着剤(非晶質アルミニウムケイ酸塩)による二酸化炭素および一酸化炭素の平衡吸着量の測定結果を示すグラフ 比較例1における吸着剤(X型ゼオライト)による二酸化炭素および一酸化炭素の平衡吸着量の測定結果を示すグラフ 比較例2における吸着剤(活性炭)による二酸化炭素および一酸化炭素の平衡吸着量の測定結果を示すグラフ
本発明法は、圧力変動吸着式ガス分離法により、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収するための方法であって、吸着剤として、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体又はその前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩を用いるものである。すなわち、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスをその吸着剤に接触させ、混合ガス中の二酸化炭素を吸着させる。吸着剤に吸着された二酸化炭素は、その後、吸着剤から脱着されることで回収される。
ここで、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体とは、粉末X線回折図形において低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩のピークを示す物質であり、また、その前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩とは、粉末X線回折図形において非晶質アルミニウムケイ酸塩のピークを示す物質である。この前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩を十分に加熱すること、すなわち、加熱温度を十分に高くする又は/及び加熱(反応)時間を十分に長くすることにより、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体となる。
複合体を構成する非晶質アルミニウムケイ酸塩と、複合体の前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)及び水素(H)を主構成元素とし、多数のSi−O−Al結合で組み立てられた含水アルミニウムケイ酸塩である。
このようなアルミニウムケイ酸塩は、メソ細孔を多く有しているため、二酸化炭素の分圧が高い領域において二酸化炭素の高い吸着性を有するが、このような二酸化炭素吸着性だけでなく、二酸化炭素と一酸化炭素の選択吸着性(二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸着できる性能)に優れている。
低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体からなる吸着剤は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=21°、25.5〜26.5°、35.5°、39〜40°付近に4つのブロードなピークを有する。後述するように、このうち2θが21°、35.5°付近のブロードなピークは、低結晶性層状粘土鉱物を示すピークであり、2θが25.5〜26.5°、39〜40°付近のブロードなピークは、非晶質アルミニウムケイ酸塩を示すピークである。
この吸着剤は、例えば、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bが12以上である吸着選択性(二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸着できる性能)を示すことが判った。
また、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体の前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる吸着剤は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=25.5〜26.5°、39〜40°付近に2つのブロードなピークを有する。後述するように、2θが25.5〜26.5°、39〜40°付近のブロードなピークは、非晶質アルミニウムケイ酸塩を示すピークである。
この吸着剤は、例えば、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bが13以上である吸着選択性(二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸着できる性能)を示すことが判った。
低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体と、その前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩の調製には、原料として、通常、ケイ素源であるケイ素化合物と、アルミニウム源であるアルミニウム化合物が用いられる。ケイ素化合物としては、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素(エアロジルなど)、水ガラスなどが好適なものとして挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。また、アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウムなどが好適なものとして挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。なお、ケイ素源とアルミニウム源は、上記の化合物に限定されるものではなく、それらと同等のものであれば同様に使用することができる。
低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体と、その前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩は、上述したようなケイ素化合物を溶解した溶液と、同じくアルミニウム化合物を溶解した溶液を混合し、ケイ素とアルミニウムの重合化後、条件によっては脱塩処理を施し、加熱熟成することにより人工的に合成することができる。具体的には、以下のようにして合成することができる。
上記のような原料(ケイ素源及びアルミニウム源)を溶解させた所定濃度の溶液(通常、水溶液)を調製する。本発明にとって好ましい特に優れた吸着挙動を示す複合体およびその前駆体を合成するには、ケイ素/アルミニウムのモル比が0.7〜1.0となるように、ケイ素化合物溶液とアルミニウム化合物溶液を混合することが好ましい。ケイ素化合物溶液中のケイ素化合物の濃度は1〜500mmol/L、好ましくは1〜200mmol/L程度が適当であり、アルミニウム化合物溶液中のアルミニウム化合物の濃度は1〜700mmol/L、好ましくは1〜300mmol/L程度が適当である。これらの比率及び濃度に基づいて、アルミニウム化合物溶液とケイ素化合物溶液を混合し、酸又はアルカリを添加してpHを6〜8に調整した後、95℃以上で加熱することにより、非晶質アルミニウムケイ酸塩(低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体の前駆体)を生成させることができる。
また、上記のようにアルミニウム化合物溶液とケイ素化合物溶液を混合し、酸又はアルカリを添加してpHを6〜8に調整した後、遠心分離、濾過、膜分離等の1種以上による脱塩処理を行って溶液中の共存イオンを取り除き、その後、回収した前駆体を弱酸性〜弱アルカリ性水溶液に分散させたものが、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体となる前駆体物質を含む懸濁液である。この前駆体物質を含む懸濁液を95℃以上で十分な時間加熱することにより、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体を生成させることができる。一方、同じ工程と加熱温度であっても、加熱時間が比較的短いと前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩が生成する。例えば、加熱温度が180℃の場合、加熱時間が4時間以上であれば低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体が生成するが、加熱時間が2時間程度であれば、その前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩が生成することになる。また、加熱温度が98℃の場合、加熱時間(期間)が40日以上であれば低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体が生成するが、加熱時間が1日程度であれば、その前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩が生成することになる。以上により、本発明で使用する二酸化炭素と一酸化炭素の吸着選択性に優れた吸着剤が得られる。
本発明の具体的な実施形態では、圧力変動吸着式ガス分離法を実施するための吸着塔に、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体からなる吸着剤又は/及びその前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる吸着剤を充填し、この吸着塔に二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスを導入し、吸着剤に二酸化炭素を吸着させる。なお、吸着塔では、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体からなる吸着剤及びその前駆体である非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる吸着剤以外の吸着剤を併用してもよい。
一般に圧力変動吸着式ガス分離法(PSA法)が行われる設備は、吸着剤が充填された複数の吸着塔が備えられ、各吸着塔では、吸着工程、洗浄工程、脱着工程を1サイクルとして二酸化炭素の分離回収が行われ、これら3工程が複数の吸着塔で交互に実施される。吸着工程では、所定の圧力状態で吸着塔に混合ガス(原料ガス)を導入して、混合ガス中の二酸化炭素を吸着剤に吸着させ、当該吸着塔から非吸着ガスを導出する。洗浄工程では、吸着工程を終了した吸着塔を、脱着工程にある他の吸着塔から導出される脱着ガスの一部を利用して洗浄する。脱着工程では、吸着塔内を減圧して吸着剤から二酸化炭素を脱着させ、二酸化炭素が濃縮された脱着ガスを塔外に導出する。
このような実施形態で本発明法を実施することにより、混合ガス中の二酸化炭素の相当量を効率的に分離回収できるとともに、一酸化炭素の吸着分離を抑え、二酸化炭素を選択的に吸着分離することができる。
原料ガスとなる混合ガスに特別な制限はないが、例えば、製鉄所で発生する転炉ガスは、相当量の二酸化炭素と一酸化炭素を含み、且つ発生量も多いので、原料ガスとして特に好適である。転炉ガスを原料ガスとして用いることにより、製鉄所において大気中への二酸化炭素の放出量を大幅に削減できるとともに、燃料等として用いられる転炉ガスの熱量が高められ、その燃焼効率を向上させることができ、また、分離回収した二酸化炭素を原料として有効利用することもできる。
[実施例1]
<本発明例において吸着剤として用いる「低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体」の合成>
ケイ素源としてケイ素濃度が0.43mol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液100mLを、アルミニウム源としてアルミニウム濃度が0.45mol/Lの塩化アルミニウム水溶液100mLを、それぞれ用いた。塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を加え、約10分間撹拌を行った。このときのSi/Al比は0.96であった。撹拌後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を1mL/分の速度で滴下し、pHが7.0程度になるまで添加した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は5mLであった。このようにして生成させた前駆体懸濁液について、遠心分離にて1回脱塩処理を行った。この脱塩処理は、遠心分離機を用いて回転速度3000rpm、時間10分で行った。脱塩処理後の前駆体を全体で200mLとなるように純水に分散させ、10分間撹拌を行い、前駆体懸濁液を作成した。
このようにして調整した200mLの前駆体懸濁液を、100mL用テフロン製容器に80mL測り取った後、ステンレス製反応容器において、180℃で1日間加熱した。その後、遠心分離にて3回洗浄し、60℃で1日乾燥させた。
このようにして得られた生成物について、粉末X線回折測定を行った。その粉末X線回折図形を図1に示す。これによれば、2θ=21°、25.5〜26.5°、35.5°、39〜40°付近にブロードなピークが見られる。このうち2θが21°、35.5°付近のブロードなピークは、層状粘土鉱物の(hk0)面の反射から得られるものであり、層状粘土鉱物に一般的に見られる(001)反射が見られないことから、積層方向の厚さがほとんどない低結晶性の層状粘土鉱物であると推定される。また、2θが25.5〜26.5°、39〜40°付近のブロードなピークは、非晶質なアルミニウムケイ酸塩に特徴的なピークである。以上の結果から、この生成物は低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体であることが確認された。以下、この生成物を「複合体(a)」という。
<本発明例において吸着剤として用いる「非晶質アルミニウムケイ酸塩」(低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体の前駆体)の合成>
ケイ素源としてケイ素濃度が0.43mol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液2000mLを、アルミニウム源としてアルミニウム濃度が0.45mol/Lの塩化アルミニウム水溶液2000mLを、それぞれ用いた。塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を加え、撹拌を行った。このときのSi/Al比は0.96であった。この混合溶液に5Nの水酸化ナトリウム水溶液を5mL/分の速度で滴下し、pHが7.0程度になるまで添加した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は40mLであった。室温下で1時間撹拌した後、4Lの密閉容器に移し替え、恒温槽にて98℃で1日間加熱を行った。冷却後、遠心分離により3回洗浄後、60℃で乾燥を行った。
このようにして得られた生成物について、粉末X線回折測定を行った。その粉末X線回折図形を図2に示す。これによれば、2θが25.5〜26.5°と39〜40°付近にブロードなピークが見られる。これは非晶質なアルミニウムケイ酸塩に特徴的なピークである。以上の結果から、この生成物は非晶質アルミニウムケイ酸塩(低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体の前駆体)であることが確認された。以下、この生成物を「複合体前駆体(b)」という。
<二酸化炭素及び一酸化炭素の吸着・脱離評価>
吸着剤として、本発明例1では複合体(a)を、本発明例2では複合体前駆体(b)を、比較例1では市販のゼオライト(X型ゼオライト)を、比較例2では活性炭を、それぞれ用い、二酸化炭素及び一酸化炭素の吸着・脱離評価を行った。この吸着・脱離評価は、二酸化炭素及び一酸化炭素の吸着等温線を測定することにより行った。吸着等温線の測定は、日本ベル株式会社製「ベルソープ18プラス」を用いて、定容量式吸着法により測定温度25℃で行った。
図3は本発明例1の測定結果を、図4は本発明例2の測定結果を、図5は比較例1の測定結果を、図6は比較例2の測定結果を、それぞれ示している。
図3に示すように、本発明例1において100kPaにおける「複合体(a)」の吸着量は、二酸化炭素が33.8mL/g、一酸化炭素が2.8mL/gであり、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bは12.1である。
図4に示すように、本発明例2において100kPaにおける「複合体前駆体(b)」の吸着量は、二酸化炭素が22.1mL/g、一酸化炭素が1.7mL/gであり、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bは13.0である。
図5に示すように、比較例1において100kPaにおけるX型ゼオライトの吸着量は、二酸化炭素が48.1mL/g、一酸化炭素が17.9mL/gであり、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bは2.7である。
図6に示すように、比較例2において100kPaにおける活性炭の吸着量は、二酸化炭素が54.1mL/g、一酸化炭素が11.5mL/gであり、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bは4.7である。
以上のように、「複合体(a)」(本発明例1)と「複合体前駆体(b)」(本発明例2)は、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/BがX型ゼオライトの約4.5〜5倍、活性炭の2.5〜3倍であり、二酸化炭素と一酸化炭素の分離性能(吸着選択性)が優れていることが判る。
[実施例2]
3塔式吸着分離装置を用いて試験を行った。この3塔式吸着分離装置は、二酸化炭素を優先的に吸着するための吸着剤が充填された3つの吸着塔を備えており、圧力を変動させて二酸化炭素の吸着分離を行う。各吸着塔では、吸着工程、洗浄工程、脱着工程を1サイクルとして二酸化炭素の分離回収が行われ、3つの吸着塔において、それら3工程が交互に実施される。吸着工程では、所定の圧力状態で吸着塔に混合ガス(原料ガス)を導入して、混合ガス中の二酸化炭素を吸着剤に吸着させ、当該吸着塔から非吸着ガスを導出する。洗浄工程では、吸着工程を終了した吸着塔を、脱着工程にある他の吸着塔から導出される脱着ガスの一部を利用して洗浄する。脱着工程では、吸着塔内を減圧して吸着剤から二酸化炭素を脱着させ、二酸化炭素が濃縮された脱着ガスを塔外に導出する。吸着時の圧力を150kPa、脱着時の圧力を10kPaとして試験を行った。二酸化炭素:20体積%、一酸化炭素:30体積%、窒素:30体積%、水素:20体積%のガスを調整し、これを原料ガスとした。
・本発明例3
3塔式吸着分離装置の各吸着塔に充填する吸着剤として、実施例1で用いた「複合体(a)」を用い、脱着ガスの二酸化炭素濃度が75〜85体積%となるように吸着分離を行った。得られた脱着ガス中の二酸化炭素濃度は77.4体積%、一酸化炭素濃度は8.2体積%、窒素濃度は14.0体積%であった。
・比較例3
3塔式吸着分離装置の各吸着塔に充填する吸着剤として、13X型ゼオライトを用いた以外は、本発明例3と同様の条件で試験を行った。得られた脱着ガス中の二酸化炭素濃度は80.3体積%、一酸化炭素濃度は16.1体積%、窒素濃度は3.6体積%であった。
・本発明例4
3塔式吸着分離装置の各吸着塔に充填する吸着剤として、実施例1で用いた「複合体(a)」を用い、脱着ガスの二酸化炭素濃度が95〜99体積%となるように吸着分離を行った。得られた脱着ガス中の二酸化炭素濃度は98.4体積%、一酸化炭素濃度は0.7体積%、窒素濃度は0.9体積%であった。
・比較例4
3塔式吸着分離装置の各吸着塔に充填する吸着剤として、13X型ゼオライトを用いた以外は、本発明例4と同様の条件で試験を行った。得られた脱着ガス中の二酸化炭素濃度は96.6体積%、一酸化炭素濃度は3.4体積%、窒素濃度は0体積%であった。

Claims (2)

  1. 圧力変動吸着式ガス分離法により、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収するための方法であって、
    二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスを、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体からなる吸着剤と接触させ、該吸着剤に二酸化炭素を吸着させる二酸化炭素の分離回収方法であり、
    低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩の前記複合体は、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素、水ガラスの中から選ばれる1種以上のケイ素化合物を溶解し、該ケイ素化合物の濃度が1〜500mmol/Lである溶液と、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウムの中から選ばれる1種以上のアルミニウム化合物を溶解し、該アルミニウム化合物の濃度が1〜700mmol/Lである溶液を、ケイ素/アルミニウムのモル比が0.7〜1.0となるように混合し、酸又はアルカリを添加してpHを6〜8に調整した後、脱塩処理を行い、回収した前駆体物質を弱酸性〜弱アルカリ性水溶液に分散させて前駆体物質を含む懸濁液とし、該懸濁液を95℃以上で加熱することにより生成したものであり、
    前記吸着剤は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=21°、25.5〜26.5°、35.5°、39〜40°付近に4つのブロードなピークを有し、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bが12以上であることを特徴とする混合ガスからの二酸化炭素の分離回収方法。
  2. 圧力変動吸着式ガス分離法により、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離回収するための方法であって、
    二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスを、非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる吸着剤と接触させ、該吸着剤に二酸化炭素を吸着させる二酸化炭素の分離回収方法であり、
    前記非晶質アルミニウムケイ酸塩は、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素、水ガラスの中から選ばれる1種以上のケイ素化合物を溶解し、該ケイ素化合物の濃度が1〜500mmol/Lである溶液と、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウムの中から選ばれる1種以上のアルミニウム化合物を溶解し、該アルミニウム化合物の濃度が1〜700mmol/Lである溶液を、ケイ素/アルミニウムのモル比が0.7〜1.0となるように混合し、酸又はアルカリを添加してpHを6〜8に調整した後、95℃以上で加熱することにより生成したものであり、
    前記吸着剤は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=25.5〜26.5°、39〜40°付近に2つのブロードなピークを有し、100kPaにおける二酸化炭素の吸着量A(mL/g)と一酸化炭素の吸着量B(mL/g)の比A/Bが13以上であることを特徴とする混合ガスからの二酸化炭素の分離回収方法。
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