JP2011056494A - 水溶性揮発性有機化合物吸着剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体及び/又はその前駆体を有効成分とする水溶性揮発性有機化合物吸着剤であって、前記前駆体は、高温で加熱あるいは長時間加熱することにより前記複合体となる。
【選択図】 図1
Description
その一方で、親水性の例として水蒸気の吸着に非常に優れた材料が開発されている。高性能な水蒸気吸着性を有する物質として、粉末X線回折図形において低結晶性粘土と非晶質含水アルミニウムケイ酸塩の複合体(以下「ハスクレイ」とする)という物質がある(特許文献1)。またハスクレイの前駆体は、粉末X線回折図形においては非晶質なアルミニウムケイ酸塩のピークのみを示すが、加熱温度を高くするあるいは反応時間を長くすることによりハスクレイになることからハスクレイ前駆体と定義している。このハスクレイ前駆体は工業的な大量合成が可能でありかつ水蒸気吸着性能にも優れている(特許文献2,3)。また特許文献1〜3記載のアルミニウムケイ酸塩においては、二酸化炭素の吸着剤としても大気圧以上で高性能な吸着剤であることが示されている(特許文献1、4)。
[1]吸着した水溶性揮発性有機化合物を脱離可能な吸着剤であって、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体及び/又はその前駆体を有効性成分とすることを特徴とする、水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
[2]前記前駆体は、高温で加熱あるいは長時間加熱することにより前記複合体となることを特徴とする、上記[1]の水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
[3]前記複合体は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=20、26、35、39°付近に4つのブロードなピークを有することを特徴とする、上記[1]の水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
[4]前記前駆体は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=26、39°付近に2つのブロードなピークを有し、29Si固体NMR測定において、−78ppm、−87ppm付近に2つのピークを有することを特徴とする、上記[1]の水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
[5]前記複合体は、イソプロピルアルコールの吸脱着評価において、25℃50ppmで吸着後、100℃500ppmの脱離の条件で吸脱着量が0.045kg/kg、150℃500ppmの脱離の条件で吸脱着量が0.095kg/kg以上であることを特徴とする、上記[1]又は[3]の水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
[6]前記前駆体は、イソプロピルアルコールの吸脱着評価において、25℃50ppmで吸着後、100℃500ppmの脱離の条件で吸脱着量が0.035kg/kg、150℃500ppmの脱離の条件で吸脱着量が0.060kg/kg以上であることを特徴とする、上記[1]又は[4]に記載の水溶性揮発性有機化合物吸着剤
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの水溶性揮発性有機化合物吸着剤を用いる、水溶性揮発性有機化合物の回収方法。
本発明の吸着剤は、高い親水性を有しているばかりでなく低温での脱離が可能であり、水溶性VOC吸着剤として優れた性能を有している。
本発明に係わるハスクレイおよびハスクレイ前駆体と称する吸着剤は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)及び水素(H)を主構成元素とし、多数のSi−O−Al結合で組み立てられた含水アルミニウムケイ酸塩である。ハスクレイは粉末X線回折図形において低結晶性粘土と非晶質含水アルミニウムケイ酸塩のピークを示す複合体からなる物質であり、ハスクレイ前駆体は粉末X線回折図形においては非晶質アルミニウムケイ酸塩のピークを示すが、高温で加熱を行うあるいは反応時間を長くすることによってハスクレイとなることからハスクレイ前駆体としている。
また従来用いられていたゼオライトと異なりハスクレイおよびハスクレイ前駆体は100℃でも再生が可能であることから、低温再生用水溶性VOC吸着剤として用いることが可能であることを見出した。
すなわち、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ハスクレイおよびハスクレイ前駆体の吸着特性を解明することにより、その結果、従来では得られなかった、優れた水溶性VOC回収・濃縮剤の提供が可能となったものである。
上記の原料を適切な水溶液に溶解させ、所定の濃度の溶液を調製する。本目的を満たす優れた吸着挙動を示す複合体を合成するには、ケイ素/アルミニウムモル比は0.7〜1.0となるように混合することが必要である。溶液中のケイ素化合物の濃度は1〜500mmol/Lで、アルミニウム化合物の溶液の濃度は1〜1000mmol/Lであるが、好適な濃度としては1〜200mmol/Lのケイ素化合物溶液と、1〜500mmol/Lのアルミニウム化合物溶液を混合することが好ましい。これらの比率及び濃度に基づいて、アルミニウム化合物溶液にケイ素化合物溶液を混合し、酸又はアルカリを添加してpHを6〜8に調整して、前駆体を形成した後、遠心分離、濾過、膜分離等により、溶液中の共存イオンを取り除き、その後、回収した前駆体を弱酸性〜弱アルカリ性水溶液に分散させたものが、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩との複合体となる前駆体物質を含む懸濁液である。この前駆体物質を含む懸濁液を、95℃以上で加熱することにより、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩との複合体を生成することができ、目的の水溶性VOC吸着特性において優れた吸着剤を得ることができる。
Si源として0.38mol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液100mLと、Al源として0.45mol/Lの塩化アルミニウム水溶液100mLを用いた。塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を加え、約10分間攪拌を行った。このときのSi/Al比は0.84である。攪拌後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を1mL/分の速さで滴下し、pHが6.5程度になるまで添加した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は6mLであった。このようにして生成させた前駆体懸濁液を遠心分離にて1回脱塩処理を行った。脱塩処理は遠心分離機を用いて、回転速度3000rpm、時間10分で行った。脱塩処理後前駆体を純水に分散させ全体で1Lとなるようにし、10分攪拌を行い前駆体懸濁液を作成した。
調整した1Lのイモゴライト前駆体懸濁液を、100mL用テフロン(登録商標)製容器に80mL測り取った後、ステンレス製反応容器に設置し、180℃で1日間加熱を行った。反応後、遠心分離にて3回洗浄し、60℃で1日乾燥させた。
以上の結果から実施例1の物質は低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなることが確認された。
Si濃度が0.80mol/Lになるように、純水で希釈したオルトケイ酸ナトリウム水溶液2000mlを調製した。また、これとは別に、塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が0.94mol/Lの水溶液2000mlを調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を混合し、マグネティックスターラーで撹拌した。このときのSi/Al比は0.85であった。さらに、この混合溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液135mlを滴下し、pHを7とした。室温下で1時間攪拌した後、4Lの密閉容器に移し替え、恒温槽にて98℃で1日間加熱を行った。冷却後、遠心分離により3回洗浄後、60℃で乾燥を行い、実施例2のハスクレイ前駆体を得た。
Si濃度が0.80mol/Lになるように、純水で希釈した水ガラス溶液2000mLを調製した。また、これとは別に、硫酸アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が0.94mol/Lの水溶液2000mLを調製した。次に、水ガラス溶液に硫酸アルミニウム水溶液を混合し、攪拌機にて撹拌した。このときのSi/Al比は0.85であった。さらに、この混合溶液に5N水酸化ナトリウム水溶液600mLを滴下し、pHを7とした。室温下で30分攪拌した後、5Lの密閉容器に移し替え、恒温槽にて95℃で1日間加熱を行った。冷却後、遠心分離により4回洗浄後、60℃で乾燥を行い、実施例3のハスクレイ前駆体を得た。
イソプロピルアルコール(以下「IPA」)の吸着・脱離評価には、実施例1で得られたハスクレイおよび実施例2で得られたハスクレイ前駆体、そして比較例1及び2として、市販のゼオライトであるY型ゼオライト及びVOC吸着用ゼオライトであるZSM−5)を用いた。
一定温度、一定IPA濃度の供試空気をハスクレイもしくはゼオライトの試料に供給し、一定条件下での各々の試料に対するIPAの平衡吸着量を、熱重量測定装置を用いて測定した。供試空気については、標準ガス発生装置を用い、純空気ガスを希釈ガスとして供給して所定のIPA濃度の供試空気を生成させた。各試料における平衡吸着量測定の温度条件は25℃〜180℃の範囲で6水準、IPA濃度条件は、50ppm〜500ppmで6水準行った。
Claims (7)
- 吸着した水溶性揮発性有機化合物を脱離可能な吸着剤であって、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体及び/又はその前駆体を有効性成分とすることを特徴とする水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
- 前記前駆体は、高温で加熱あるいは長時間加熱することにより前記複合体となることを特徴とする、請求項1に記載の水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
- 前記複合体は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=20、26、35、39°付近に4つのブロードなピークを有することを特徴とする、請求項1記載の水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
- 前記前駆体は、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形において、2θ=26、39°付近に2つのブロードなピークを有し、29Si固体NMR測定において、−78ppm、−87ppm付近に2つのピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
- 前記複合体は、イソプロピルアルコールの吸脱着評価において、25℃50ppmで吸着後、100℃500ppmの脱離の条件で吸脱着量が0.045kg/kg、150℃500ppmの脱離の条件で吸脱着量が0.095kg/kg以上であることを特徴とする、請求項1又は3に記載の水溶性揮発性有機化合物吸着剤。
- 前記前駆体は、イソプロピルアルコールの吸脱着評価において、25℃50ppmで吸着後、100℃500ppmの脱離の条件で吸脱着量が0.035kg/kg、150℃500ppmの脱離の条件で吸脱着量が0.060kg/kg以上であることを特徴とする、請求項1又は4に記載の水溶性揮発性有機化合物吸着剤
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の水溶性揮発性有機化合物吸着剤を用いる、水溶性揮発性有機化合物の回収方法。
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