以下、本発明に係る導電シートについて、それを実施するタッチパネル及び表示装置との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
[本実施の形態]
本実施の形態に係る導電シート10は、図1及び図2に示すように、透明基体12(基体)を有する。絶縁性を有し、且つ、透光性が高い透明基体12は、樹脂、ガラス、シリコン等の材料からなる。樹脂としては、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)、PMMA(Polymethyl methacrylate)、PP(polypropylene)、PS(polystyrene)等が挙げられる。
透明基体12の一方の主面(図2の矢印s1方向側)には、第1導電部14aと、第1ダミー電極部15aとが形成されている。第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aは、金属製の細線{以下、金属細線16と記す。また、金属細線16p、16q、16r、16s)と記す場合がある。}と開口部18によるメッシュパターン20とを有する。金属細線16は、例えば、金(Au)、銀(Ag)又は銅(Cu)からなる。
金属細線16の線幅は、30μm以下から選択可能である。導電シート10をタッチパネルに適用する場合には、金属細線16の線幅は0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましい。
第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aは、詳細には、異なるメッシュ形状22を隙間なく配列したメッシュパターン20を有する。換言すれば、メッシュパターン20は、各メッシュ形状22に規則性(統一性)がないランダムなパターンである。例えば、メッシュパターン20のうち、ハッチングを付したメッシュ形状22は四角形状であり、頂点C1及び頂点C2を直線で結ぶ金属細線16pと、頂点C2及び頂点C3を直線で結ぶ金属細線16qと、頂点C3及び頂点C4を直線で結ぶ金属細線16rと、頂点C4及び頂点C1を直線で結ぶ金属細線16sとで形成されている。本図から諒解されるように、メッシュ形状22はいずれも、少なくとも3辺を有する多角形状である。
以下、本明細書中における「多角形」には、幾何学的に完全な多角形のみならず、前記完全な多角形に対し軽微な変更を加えた「実質的な多角形」も含まれるものとする。軽微な変更の例示として、メッシュ形状22と比べて微小な点要素・線要素の付加や、メッシュ形状22を構成する各辺(金属細線16)の部分的欠損等が挙げられる。
ここで、第1ダミー電極部15aは、第1導電部14aと所定間隔だけ離間して配置されている。すなわち、第1ダミー電極部15aは、第1導電部14aと電気的に絶縁された状態下にある。
第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aの略全面には、金属細線16を被覆するように、第1接着層24aを介して第1保護層26aが接着されている。第1接着層24aの材料として、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等が挙げられる。
第1保護層26aは、透明基体12と同様に、樹脂、ガラス、シリコンを含む透光性が高い材料からなる。第1保護層26aの屈折率n1は、透明基体12の屈折率n0に等しいか、これに近い値である。この場合、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1は1に近い値である。
ここで、本明細書における屈折率は、波長589.3nm(ナトリウムのD線)の光における屈折率を意味し、例えば樹脂では、国際標準規格であるISO 14782:1999(JIS K 7105に対応)で定義される。また、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1は、nr1=(n1/n0)で定義される。ここで、相対屈折率nr1は、0.86以上1.15以下の範囲にあればよく、より好ましくは、0.91以上1.08以下である。
以下、透明基体12の一方の主面(図2の矢印s1方向側)に形成された各部(第1導電部14a、第1ダミー電極部15a、第1接着層24a及び第1保護層26aを含む。)を総称して第1積層部28aという場合がある。
ところで、透明基体12の他方の主面(図2の矢印s2方向側)には、第2導電部14bが形成されている。第2導電部14bは、第1導電部14aと同様に、金属細線16と開口部18によるメッシュパターン20を有する。透明基体12は絶縁性材料からなり、第2導電部14bは、第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aと電気的に絶縁された状態下にある。
第2導電部14bの略全面には、金属細線16を被覆するように、第2接着層24bを介して第2保護層26bが接着されている。第2接着層24bの材質は、第1接着層24aと同一であってもよいし異なってもよい。第2保護層26bの材質は、第1保護層26aと同一であってもよいし異なってもよい。
第2保護層26bの屈折率n2は、透明基体12の屈折率n0に等しいか、これに近い値である。この場合、第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2は1に近い値である。ここで、屈折率及び相対屈折率の定義は上記の通りとする。また、第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2は、nr2=(n2/n0)で定義される。ここで、相対屈折率nr2は、0.86以上1.15以下の範囲にあればよく、より好ましくは、0.91以上1.08以下である。
以下、透明基体12の他方の主面(図2の矢印s2方向側)に形成された各部(第2導電部14b、第2接着層24b及び第2保護層26bを含む。)を総称して第2積層部28bという場合がある。
この導電シート10は、例えば、表示ユニット30(表示部)のタッチパネルに適用される。この表示ユニット30は、液晶パネル、プラズマパネル、有機EL(Electro-Luminescence)パネル、無機ELパネル等で構成されてもよい。
図3に一部を省略して示すように、表示ユニット30は、複数の画素32がマトリクス状に配列されて構成されている。1つの画素32は3つの副画素(赤色副画素32r、緑色副画素32g及び青色副画素32b)が水平方向に配列されて構成されている。1つの副画素は垂直方向に縦長とされた長方形状とされている。画素32の水平方向の配列ピッチ(水平画素ピッチPh)と画素32の垂直方向の配列ピッチ(垂直画素ピッチPv)は略同じとされている。つまり、1つの画素32と該1つの画素32を囲むブラックマトリクス34(遮光材)にて構成される形状(網掛けにて示す領域36を参照)は正方形となっている。また、1つの画素32のアスペクト比は1ではなく、水平方向(横)の長さ>垂直方向(縦)の長さとなっている。上記した画素配列を有する表示ユニット30の表示パネル上に導電シート10を配置する場合、画素32の配列周期と、ランダムに形成された金属細線16との間における空間周波数の干渉が殆どなく、モアレの発生が抑制されることになる。
次に、本実施の形態に係る導電シート10を組み込んだ表示装置40について、図4〜図8を参照しながら説明する。ここでは、投影型静電容量方式のタッチパネルを例に挙げて説明する。
図4に示すように、表示装置40は、カラー画像及び/又はモノクロ画像を表示可能な表示ユニット30(図3参照)と、入力面42(矢印Z1方向側)からの接触位置を検出するタッチパネル44と、表示ユニット30及びタッチパネル44を収容する筐体46とを有する。筐体46の一面(矢印Z1方向側)に設けられた大きな開口部を介して、ユーザは、タッチパネル44にアクセス可能である。
タッチパネル44は、上記した導電シート10(図1及び図2参照)の他、導電シート10の一面(矢印Z1方向側)に積層されたカバー部材48と、ケーブル50を介して導電シート10に電気的に接続されたフレキシブル基板52と、フレキシブル基板52上に配置された検出制御部54とを備える。
表示ユニット30の一面(矢印Z1方向側)には、接着層56を介して、導電シート10が接着されている。導電シート10は、他方の主面側(第2導電部14b側)を表示ユニット30に対向させて、表示画面上に配置されている。
カバー部材48は、導電シート10の一面を被覆することで、入力面42としての機能を発揮する。また、接触体58(例えば、指やスタイラスペン)による直接的な接触を防止することで、擦り傷の発生や、塵埃の付着等を抑止可能であり、導電シート10の導電性を安定させることができる。
カバー部材48の材質は、例えば、ガラス、樹脂フイルムであってもよい。カバー部材48の一面(矢印Z2方向側)を酸化珪素等でコートした状態で、導電シート10の一面(矢印Z1方向側)に密着させてもよい。また、擦れ等による損傷を防止するため、導電シート10及びカバー部材48を貼り合わせて構成してもよい。
フレキシブル基板52は、可撓性を備える電子基板である。本図例では、筐体46の側面内壁に固定されているが、配設位置は種々変更してもよい。検出制御部54は、導体である接触体58を入力面42に接触する(又は近づける)際、接触体58と導電シート10との間での静電容量の変化を捉えて、その接触位置(又は近接位置)を検出する電子回路を構成する。
図5Aに示すように、導電シート10の一方の主面には、矢印Z2方向側への平面視で、表示ユニット30(図3及び図4参照)の表示領域に配された第1センサ部60aと、前記表示領域の外周領域に配された第1端子配線部62a(いわゆる額縁)とが設けられている。
導電シート10の外形は平面視で矩形状を有するとともに、第1センサ部60aの外形も矩形状を有する。第1端子配線部62aのうち、導電シート10の矢印Y方向に平行する一辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第1端子64aが矢印Y方向に配列形成されている。第1センサ部60aの一辺(本図例では矢印Y方向に平行する辺)に沿って、複数の第1結線部66aが略一列に配列されている。各第1結線部66aから導出された第1端子配線パターン68aは、前記表示領域の外周領域の第1端子64aに向かって引き回されており、それぞれ対応する第1端子64aに電気的に接続されている。
第1センサ部60aに対応した部位には、複数の金属細線16(図1参照)で形成された2以上の第1導電パターン70a(メッシュパターン)を有する。第1導電パターン70aは、矢印X方向(第1方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に直交する矢印Y方向(第2方向)に配列されている。また、各第1導電パターン70aは、2以上の第1感知部72aが矢印X方向に直列に接続されて構成される。その輪郭が概略菱形状の各第1感知部72aは、それぞれ同一の輪郭形状を有する。隣接する第1感知部72a間には、これら第1感知部72aを電気的に接続する第1接続部74aが形成されている。より詳細には、一の第1感知部72aの頂角部は、第1接続部74aを介して、前記一の第1感知部72aの矢印X方向に隣接する他の第1感知部72aの頂角部に連結されている。
各第1導電パターン70aの一方の端部側において、第1感知部72aの開放端には、第1接続部74aが形成されていない。各第1導電パターン70aの他方の端部側において、第1感知部72aの端部には、第1結線部66aがそれぞれ設けられている。そして、各第1導電パターン70aは、各第1結線部66aを介して、第1端子配線パターン68aに電気的に接続されている。
第1センサ部60aに対応した部位には、複数の金属細線16(図1参照)で形成された2以上の第1ダミーパターン76a(メッシュパターン)を有する。各第1ダミーパターン76aは、隣接する第1導電パターン70a同士の第1隙間部75a(図6参照)に配置されている。その輪郭が概略菱形状の第1ダミーパターン76aは、各第1導電パターン70a(第1感知部72a及び第1接続部74a)と所定間隔だけ離間して配されている。この間隔(幅)は、第1感知部72aの一辺の長さと比較してきわめて小さい。したがって、第1センサ部60aには、その全面にわたって、略一様な密度で金属細線16が配線されている。
説明の便宜のため、図6では、1つの第1ダミーパターン76a(図面の中央右部)に限り、各メッシュ形状を詳細に表記している。その他の第1ダミーパターン76aにおいては、その輪郭を破線で示し、その内部の形状を省略した。
図6に示すように、各第1感知部72a及び各第1ダミーパターン76aは、それぞれ2以上の第1メッシュ要素78aを組み合わせて構成されている。第1メッシュ要素78aの形状は、上述したメッシュ形状22(図1参照)と同様に、少なくとも3辺を有する多角形状である。また、隣接する第1感知部72a間を接続する第1接続部74aは、少なくとも1つの第1メッシュ要素78aから構成されている。
なお、各第1感知部72a及び各第1ダミーパターン76aの周縁部を構成する第1メッシュ要素78aは、位相幾何学(トポロジー)的に閉空間であってもよいし開空間であってもよい。第1接続部74aに関しても同様である。
また、隣接する第1導電パターン70a間には、電気的に絶縁された第1絶縁部80aがそれぞれ配されている。
ここで、第1ダミーパターン76aの配線密度は、第1導電パターン70a(第1感知部72a及び第1接続部74a)の配線密度に等しい。この場合、第1ダミーパターン76aの平面領域内での光反射率は、第1導電パターン70aの平面領域内での光反射率に一致する。金属細線16の線幅が一定であるとき、配線密度と光反射率との間には高い相関関係があるためである。
なお、本明細書中において「配線密度が等しい」とは、完全に等しい場合のみならず、実質的に等しい場合(密度比が概ね0.8〜1.2の範囲内)をも含む概念である。すなわち、人間(観察者)の視覚にとって検知できない程度の光反射率の差であればよい。また、金属細線16の配線密度の測定面積は、測定精度等を考慮して、1mm2以上であればよい。
また、各第1導電パターン70aと各第1ダミーパターン76aとの離間距離は、位置によらず一定(略一定の場合も含まれる。)にしてもよい。これにより、金属細線16の配線密度が一様に近づくので好ましい。
さらに、第1隙間部75aに対する第1ダミーパターン76aの被覆率(配置割合)は、概ね30〜95%の範囲が好ましく、70〜95%の範囲が一層好ましい。
さらに、各第1ダミーパターン76aの輪郭は、三角形、矩形、円形等を含む種々の形状を採り得る。例えば、各第1ダミーパターン76aの輪郭は、各第1感知部72aの輪郭の形状(図5A例では、概略菱形状)と同一の又は相似する形状を有してもよい。
一方、図5Bに示すように、導電シート10の他方の主面には、矢印Z1方向側への平面視で、表示ユニット30(図3及び図4参照)の表示領域に配された第2センサ部60bと、前記表示領域の外周領域に配された第2端子配線部62b(いわゆる額縁)とが設けられている。
導電シート10の外形は平面視で矩形状を有するとともに、第2センサ部60bの外形も矩形状を有する。第2端子配線部62bのうち、導電シート10の矢印Y方向に平行する一辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第2端子64bが矢印Y方向に配列形成されている。第2センサ部60bの一辺(本図例では矢印X方向に平行する辺)に沿って、複数の第2結線部66b(例えば、奇数番目の第2結線部66b)が略一列に配列されている。第2センサ部60bの他辺(前記一辺に対向する辺)に沿って、複数の第2結線部66b(例えば、偶数番目の第2結線部66b)が略一列に配列されている。各第2結線部66bから導出された第2端子配線パターン68bは、前記表示領域の外周領域の第2端子64bに向かって引き回されており、それぞれ対応する第2端子64bに電気的に接続されている。
第2センサ部60bに対応した部位には、複数の金属細線16(図1参照)で形成された2以上の第2導電パターン70b(メッシュパターン)を有する。第2導電パターン70bは、矢印Y方向(第2方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に直交する矢印X方向(第1方向)に配列されている。また、各第2導電パターン70bは、2以上の第2感知部72bが矢印Y方向に直列に接続されて構成される。その輪郭が概略菱形状の各第2感知部72bは、それぞれ同一の輪郭形状を有する。隣接する第2感知部72b間には、これら第2感知部72bを電気的に接続する第2接続部74bが形成されている。より詳細には、一の第2感知部72bの頂角部は、第2接続部74bを介して、前記一の第2感知部72bの矢印Y方向に隣接する他の第2感知部72bの頂角部に連結されている。
各第2導電パターン70bの一方の端部側において、第2感知部72bの開放端には、第2接続部74bが形成されていない。各第2導電パターン70bの他方の端部側において、第2感知部72bの端部には、第2結線部66bがそれぞれ設けられている。そして、各第2導電パターン70bは、各第2結線部66bを介して、第2端子配線パターン68bに電気的に接続されている。
なお、第2センサ部60bに関し、第1センサ部60a(図5A及び図6参照)と異なり、隣接する第2導電パターン70b同士の第2隙間部75bにダミーパターンが配されていない。
図7に示すように、各第2感知部72bは、それぞれ2以上の第2メッシュ要素78bを組み合わせて構成されている。第2メッシュ要素78bの形状は、上述したメッシュ形状22(図1参照)と同様に、少なくとも3辺を有する多角形状である。隣接する第2感知部72b間を接続する第2接続部74bは、少なくとも1つの第2メッシュ要素78bから構成されている。
なお、各第2感知部72bの周縁部を構成する第2メッシュ要素78bは、位相幾何学(トポロジー)的に閉空間であってもよいし開空間であってもよい。第2接続部74bに関しても同様である。
また、隣接する第2導電パターン70b間には、電気的に絶縁された第2絶縁部80bがそれぞれ配されている。
図8に示すように、導電シート10の平面視において、一面(矢印Z2方向側)に形成された第1導電パターン70a及び第1ダミーパターン76aの隙間(第1隙間部75aの一部)を埋めるように、他面(矢印Z2方向側)に形成された第2導電パターン70bが配列された形態となる。また、第1導電パターン70aの輪郭と、第2導電パターン70bの輪郭が重なる平面領域において、両者の金属細線16の位置が完全に一致する。さらに、第1ダミーパターン76aの輪郭と、第2導電パターン70bの輪郭とが重なる平面領域において、両者の金属細線16の位置が完全に一致する。その結果、導電シート10の平面視において、多数のポリゴン82(メッシュ形状)が敷き詰められた形態となる。
第1感知部72a(及び第2感知部72b)の一辺の長さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜6mmであることがより好ましい。一辺の長さが、上記下限値未満であると、導電シート10をタッチパネルに適用した場合、検出時の第1感知部72a(及び第2感知部72b)の静電容量が減るため、検出不良になる可能性が高くなる。他方、上記上限値を超えると、接触位置の検出精度が低下するおそれがある。同様の観点から、ポリゴン82(第1メッシュ要素78a、第2メッシュ要素78b)の一辺の平均長さは、上述したように、100〜400μmであることが好ましく、150〜300μmであることがさらに好ましく、最も好ましくは210〜250μm以下である。ポリゴン82の一辺が上記範囲である場合には、さらに透明性も良好に保つことが可能であり、表示ユニット30の前面に取り付けた際に、違和感なく表示を視認することができる。
図6に戻って、第1接続部74aの幅w1は、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.4〜0.8mmであることがより好ましい。w1が上記した下限値未満である場合、各第1感知部72aを接続する配線数が減少するため電極間抵抗が上昇する。一方、w1が上記した上限値を超える場合、第2感知部72bとの重なり面積が増加するためノイズ量が増大する。なお、第2接続部74b(図7参照)の幅に関しても幅w1と同様である。
第1感知部72aと第2感知部72bとの離間幅w2は、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。w2が上記した下限値未満である場合、接触体58の接触(又は近接)に伴う静電容量の変化量が小さくなるため信号量が低下する。一方、w2が上記した上限値を超える場合、第1感知部72aの密度が低下するためセンサの解像度が低下する。
続いて、第1導電部14a、第1ダミー電極部15a、及び第2導電部14bの配線形状の決定方法の一例について、図9A〜図10Cを参照しながら説明する。
本実施の形態では、1つの平面領域100内に存在する複数の位置からメッシュパターン20を決定する。図9Aに示すように、正方形状の平面領域100の中から、8つのシード点P1〜P8を無作為に選択したとする。
図9Bは、ボロノイ図(ボロノイ分割法)に従って配線形状を決定した結果を示す概略説明図である。これにより、8つのシード点P1〜P8をそれぞれ囲繞する8つの領域V1〜V8がそれぞれ画定される。ここで、ボロノイ図により区画された領域Vi(i=1〜8)は、シード点Piが最も近接する点である点の集合体であることを示している。ここで、距離関数としてユークリッド距離を用いたが、種々の関数を用いてもよい。
図9Cは、ドロネー図(ドロネー三角形分割法)に従って配線形状を決定した結果を示す概略説明図である。ドロネー三角形分割法とは、シード点P1〜P8のうち、隣接する点同士を繋いで三角形状の領域を画定する方法である。これにより、8つのシード点P1〜P8のいずれかを頂点とする8つの領域V1〜V8がそれぞれ画定される。
このようにして、図9B(又は図9C)に示す各境界線を金属細線16とし、各領域Viを開口部18とする配線形状、すなわち、第1導電部14a、第1ダミー電極部15a、及び第2導電部14bを重ね合わせた場合での各メッシュ形状22が決定される。
続いて、本発明に係る導電シート10の数理的特徴について説明する。
図10Aは、メッシュパターン20の模様を表す画像データImgを可視化した概略説明図である。以下、この画像データImgを例に挙げて説明する。この画像データImgは、スキャナ等の入力装置を用いて読み取られた導電シート10の色値データであってもよいし、メッシュパターン20の出力形成に実際に用いた露光データであってもよい。いずれの場合でも、画像データImgは、金属細線16の平均線幅を1以上の画素で表現可能な程度の高い解像度(小さい画素サイズ)を有する。
先ずは、図10Aに示す画像データImgに対してフーリエ変換、例えば、FFT(Fast Fourier Transformation)を施す。これにより、メッシュパターン20の形状について、部分的形状ではなく、全体の傾向(空間周波数分布)として把握できる。
図10Bは、図10Aの画像データImgに対してFFTを施して得られるパワースペクトル(以下、単にスペクトルSpcという。)の分布図である。ここで、当該分布図の横軸はX軸方向に対する空間周波数を示し、その縦軸はY軸方向に対する空間周波数を示す。また、空間周波数帯域毎の表示濃度が薄いほど強度レベル(スペクトルの値)が小さくなり、表示濃度が濃いほど強度レベルが大きくなっている。本図の例では、このスペクトルSpcの分布は、等方的であるとともに環状のピークを2個有している。
図10Cは、図10Bに示すスペクトルSpcの分布のXC−XC線に沿った断面図である。スペクトルSpcは等方的であるので、図10Cはあらゆる角度方向に対する動径方向分布に相当する。本図から諒解されるように、低空間周波数帯域及び高空間周波数帯域での強度レベルが小さくなり、中間の空間周波数帯域のみ強度レベルが高くなるいわゆるバンドパス型の特性を有する。すなわち、図10Aに示す画像データImgは、画像工学分野の技術用語によれば、「グリーンノイズ」の特性を有する模様を表すものといえる。
図11は、人間の標準視覚応答特性の一例を表すグラフである。
本実施の形態では、人間の標準視覚応答特性として、明視状態下、観察距離300mmでのドゥーリー・ショー(Dooley-Shaw)関数を用いている。ドゥーリー・ショー関数は、VTF(Visual Transfer Function)の一種であり、人間の標準視覚応答特性を模した代表的な関数である。具体的には、輝度のコントラスト比特性の2乗値に相当する。なお、グラフの横軸は空間周波数(単位:cycle/mm)であり、縦軸はVTFの値(単位は無次元)である。
観察距離を300mmとすると、0〜1.0cycle/mmの範囲ではVTFの値は一定(1に等しい。)であり、空間周波数が高くなるにつれて次第にVTFの値が減少する傾向がある。すなわち、この関数は、中〜高空間周波数帯域を遮断するローパスフィルタとして機能する。
なお、実際の人間の標準視覚応答特性は、0cycle/mm近傍で1より小さい値になっており、いわゆるバンドパスフィルタの特性を有する。しかし、本実施の形態において、図11に例示するように、極めて低い空間周波数帯域であってもVTFの値を1にすることで、後述する評価値EVPへの寄与度を高くしている。これにより、メッシュパターン20の繰り返し配置に起因する周期性を抑制する効果が得られる。
ここで、複数のシード点の位置を決定するアルゴリズムは、種々の最適化手法を採り得る。例えば、配置が異なるドットパターンの作成と、評価値EVPによる評価とを順次繰り返す方法を用いることができる。この場合、ドットパターンを決定する最適化問題として、構成的アルゴリズムや逐次改善アルゴリズム等の種々の探索アルゴリズムを用いることができる。具体例として、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、擬似焼きなまし法、ボイド・アンド・クラスター法等が挙げられる。
評価値EVPは、スペクトルSpcの値をF(Ux,Uy)とするとき、次の(1)式で算出される。
ウィナー・ヒンチン(Wiener-Khintchene)の定理によれば、スペクトルSpcを全空間周波数帯域で積分した値は、RMS(Root Mean Square)の2乗値に一致する。このスペクトルSpcに対してVTFを乗算し、この新たなスペクトルSpcを全空間周波数帯域で積分した値は、人間の視覚特性に略一致する評価指標となる。この評価値EVPは、人間の視覚応答特性で補正したRMSということができる。通常のRMSと同様に、評価値EVPは、常に0以上の値を取り、0に近づくほどノイズ特性が良好であるといえる。
また、図11に示すVTFに対して逆フーリエ変換(例えば、IFFT)を施すことで、VTFに対応する実空間上のマスクを算出し、評価しようとする画像データImgに対して該マスクを作用して畳み込み演算を行い、新たな画像データImgに対してRMSを求めてもよい。これにより、(1)式を用いた上記方法と同等の演算結果を得ることができる。
なお、メッシュパターン20を決定するための目標レベル(許容範囲)や評価関数に応じて、評価値EVPの算出式を種々変更し得ることはいうまでもない。
作成された画像データImgは、金属細線16の出力形成に用いられる。例えば、後述する両面一括露光を用いて導電シート10を製造する場合、画像データImgは、フォトマスクのパターンの作製に用いられる。また、スクリーン印刷、インクジェット印刷を含む印刷により導電シート10を製造する場合、画像データImgは、印刷用データとして用いられる。
図12は、本実施の形態に係るメッシュパターン20及び従来例に係る各種パターンPT1〜PT3の模様を表す画像データImgに対してそれぞれFFTを施して得られるスペクトルSpcのX軸に沿った断面図である。
図34Aに示すパターンPT1のスペクトルSpcは、約10cycle/mmを頂点とした幅の広いピーク(2〜30cycle/mmの範囲)を有している。また、図34Bに示すパターンPT2のスペクトルSpcは、約3cycle/mmを中心とした幅の広いピーク(3〜20cycle/mmの範囲)を有している。さらに、図34Cに示すパターンPT3のスペクトルSpcは、約10cycle/mmを中心とした幅のやや狭いピーク(8〜18cycle/mmの範囲)を有している。これに対し、メッシュパターン20(本図では、Mと表記する。以下、図16においても同じ。)のスペクトルSpcは、8.8cycle/mmを中心とした幅の狭いピークを有している。
ところで、図10Cに示すスペクトルSpcの特徴と、各メッシュ形状22の重心位置との関係について以下説明する。図13に示すように、図9Bと同様の平面領域100に対し、上述したボロノイ図を用いて多角形状の各領域V1〜V8が画定されているものとする。なお、各領域V1〜V8内にそれぞれ属する各点C1〜C8は、各領域の重心位置を表している。
図14は、本実施の形態に係るメッシュパターン20と、各メッシュ形状22の重心位置との関係を示す概略説明図である。
図15Aは、図14のメッシュパターン20が有する各メッシュ形状22の重心位置の分布(以下、「重心位置分布C」という。)を表す画像データ(以下、「重心画像データImgc」という。)を可視化した概略説明図である。本図から諒解されるように、重心位置分布Cは、各重心位置が互いに重複することなく適度に分散している。
図15Bは、図15Aの重心画像データImgcに対してFFTを施して得られる二次元パワースペクトル(以下、「重心スペクトルSpcc」という。)の分布図である。ここで、当該分布図の横軸はX軸方向に対する空間周波数を示し、その縦軸はY軸方向に対する空間周波数を示す。また、空間周波数帯域毎の表示濃度が薄いほど強度レベル(スペクトルの値)が小さくなり、表示濃度が濃いほど強度レベルが大きくなっている。本図の例では、この重心スペクトルSpccの分布は、等方的であるとともに環状のピークを1個有している。
図15Cは、図15Bに示す重心スペクトルSpccの分布のXVC−XVC線に沿った断面図である。重心スペクトルSpccは等方的であるので、図15Cはあらゆる角度方向に対する動径方向分布に相当する。本図から諒解されるように、低空間周波数帯域での強度レベルが小さくなり、中間の空間周波数帯域には幅が広いピークを有している。さらに、低空間数端数帯域に対して、高空間周波数帯域での強度レベルが高くなるいわゆるハイパス型の特性を有する。すなわち、図15Aに示す重心画像データImgcは、画像工学分野の技術用語によれば、「ブルーノイズ」の特性を有する模様を表すものといえる。
なお、導電シート10における重心位置分布Cのパワースペクトルは、以下の過程により取得できる。先ず、メッシュパターン20の模様を表す画像データImgを取得し、各メッシュ形状22(閉空間)を識別し、その重心位置(例えば1画素のドット)をそれぞれ算出して重心画像データImgcを求め、その二次元パワースペクトルを算出する。これにより、重心位置分布Cのパワースペクトル(重心スペクトルSpcc)が得られる。
図16は、図10C及び図15Cのグラフの比較図である。具体的には、メッシュパターン20のスペクトルSpcと、重心位置分布Cの重心スペクトルSpccとを比較する。便宜のため、最大のピークPkの値が一致するように、スペクトルSpc及び重心スペクトルSpccの強度を規格化している。
本図によると、ピークPkの空間周波数Fpは一致しており、この値は8.8cycle/mmに相当する。空間周波数Fpを超えた高空間周波数帯域では、スペクトルSpcの強度は徐々に減少するのに対し、重心スペクトルSpccの強度はなおも高い値を維持している。この理由は、メッシュパターン20の構成要素は互いに交差した所定の幅を有する線分であるのに対し、重心位置分布Cの構成要素が点であるためと推測される。
図17Aは、図15Cの重心スペクトルSpccの特徴を表す概略説明図である。重心スペクトルSpccの値は、0〜5cycle/mmの範囲で徐々に増加し、6cycle/mmの周辺で急激に増加し、約10cycle/mmで幅が広いピークを有する。そして、10〜15cycle/mmの範囲で徐々に減少し、15cycle/mmを超える高空間周波数帯域で高い値を維持する。
ここで、基準空間周波数Fb(所定の空間周波数)を6cycle/mmに設定する。Fbよりも低い空間周波数帯域側、つまり、0〜Fb[cycle/mm]の範囲における重心スペクトルSpccの平均強度(平均値)をPLとする。一方、Fbよりも高い空間周波数帯域側、つまり、Fb[cycle/mm]〜ナイキスト周波数での重心スペクトルSpccの平均強度(平均値)をPHとする。このように、PHはPLよりも大きくなっている。重心スペクトルSpccはこのような特徴を有しているので、観察者にとって視覚的に感じられるノイズ感が減少する。この根拠は以下の通りである。
例えば、Fbの値は、人間の視覚応答特性が最大応答の5%に相当する空間周波数となるように設定している。この強度レベルであれば、視認が困難なレベルだからである。また、図11に示すように、明視距離が300mmでのドゥーリー・ショー関数に基づいて得られる視覚応答特性を用いている。本関数は、人間の視覚応答特性に良く適合するからである。
すなわち、Fbの値として、明視距離が300mmでのドゥーリー・ショー関数において、最大応答の5%に相当する空間周波数6cycle/mmを用いることができる。なお、6cycle/mmは、167μm間隔に相当する。
また、図17Bに示すように、重心スペクトルSpccの値が最大となる空間周波数Fpを、基準空間周波数Fbとして設定してもよい。この場合でも、上記した関係(PH>PL)を満たしている。
そして、画像データImg(図10A参照)が表す平面領域100の配線形状から2以上の第1導電パターン70a、2以上の第1ダミーパターン76a、及び2以上の第2導電パターン70bをそれぞれ切り出す。
図18Aは、各第1導電パターン70a及び各第1ダミーパターン76aを切り出した結果を示す概略説明図である。図18Bは、各第2導電パターン70bを切り出した結果を示す概略説明図である。説明の便宜上、平面領域100を右回りに45度だけ回転させた状態で表記している。
図18Aに示す平面領域100の中から第1領域R1(ハッチングが付された領域)を除く箇所を切り出すことで、2以上の第1導電パターン70a及び2以上の第1ダミーパターン76a(図6等参照)がそれぞれ形成される。ここで、第1領域R1は、額縁状の菱形枠が、矢印X方向に複数個連結された形状を有する。また、図18Bに示す平面領域100の中から第2領域R2(ハッチングが付された領域)のみを切り出すことで、2以上の第2導電パターン70b(図7等参照)がそれぞれ形成される。なお、第2領域R2を除く残余の領域(図18Bに示す平面領域100内の余白領域)は、各第1導電パターン70aの位置にそれぞれ対応する。
続いて、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1を1に近い値にすることで得られる作用効果について、図19A〜図20Bを参照しながら詳細に説明する。理解の容易のため、導電シート10の一部の構成を省略し、透明基体12、第1導電部14a及び第1保護層26aのみを表記している。
図19Aに示すように、表示ユニット30(図4参照)側から照射された平行光102は、透明基体12の内部に入射し、矢印Z1方向に沿って直進する。そして、平行光102は、透明基体12と金属細線16との第1界面104で、反射成分106として、矢印Z2方向に略全て反射される。すなわち、非透光性材料である金属細線16の有無に応じて、導電シート10を透過する光量の差が大きくなる。その結果、メッシュパターン20の形状に応じた濃淡が顕著になり、モアレが発生し易くなる。これに対して、透光性が高い導電性材料(典型的には、ITO)を用いた導電シートの場合、上記した影響を殆ど受けることはない。
以下、透明基体12と第1保護層26aとの屈折率差が大きい場合、すなわち、相対屈折率nr1が1から離れている場合での光学的現象について、図19B及び図19Cを用いて説明する。
図19Bに示すように、矢印Z1方向に対し僅かながら斜入する光(斜入光108)は、透明基体12の内部に入射し、第1導電部14a(開口部18)と第1保護層26aとの第2界面110まで直進する。そして、斜入光108は、第2界面110による屈折現象により、一部の光(直進成分112)は透過されるとともに、残余の光(反射成分114)は反射される。このとき、相対屈折率nr1が1から離れているので界面透過率が低下し、直進成分112(あるいは反射成分114)の光量は相対的に減少(あるいは増加)する。
例えば、図19Cに示すように、開口部18に対応する位置においてI=Iwの光量が、金属細線16に対応する位置においてI=Ibの光量が、導電シート10をそれぞれ透過して検出されたとする。この場合、金属細線16に起因する光学濃度は、開口部18での検出光量を基準として、ΔD1=−log(Ib/Iw)で表される。
次いで、透明基体12と第1保護層26aとの屈折率差が小さい場合、すなわち、相対屈折率nr1が1に近い値である場合での光学的現象について、図20A及び図20Bを用いて説明する。
相対屈折率nr1が1に近い値である場合、光学的考察から容易に導き出せるように、界面透過率が1(界面反射率が0)に近づく。したがって、直進成分116(あるいは反射成分118)の光量は、図19Bの場合と比べて相対的に増加(あるいは減少)する。換言すれば、散乱されることなく透明基体12内部を通過する光量が、非透光性材料からなる金属細線16の位置によらず一律に増加する。以下、説明の便宜のため、検出光量がε(正値)だけ増加したとする。
このとき、図20A及び図20Bに示すように、開口部18に対応する位置においてI=Iw+εの光量が、金属細線16に対応する位置においてI=Ib+εの光量が、それぞれ透過して検出される。金属細線16に起因する光学濃度は、開口部18での検出光量を基準として、ΔD2=−log{(Ib+ε)/(Iw+ε)}で表される。
Iw>Ib≧0、且つ、ε>0のとき、(Ib/Iw)<(Ib+ε)/(Iw+ε)の不等式を満たすので、ΔD1>ΔD2の関係が常に成り立つ。すなわち、透明基体12及び第1保護層26aの相対屈折率nr1を1に近い値にすることで、金属細線16に起因する光学濃度のコントラストを低減できる。これにより、表示装置40の平面視において、金属細線16の模様がユーザに視認され難くなる。
なお、透明基体12と第1保護層26aとの関係のみならず、透明基体12と第2保護層26bとの関係においても上記と同様である。また、相対屈折率nr1、nr2が0.86〜1.15であれば好ましく、0.91〜1.08であることが一層好ましい。特に、第1保護層26a及び/又は第2保護層26bは、透明基体12と同一の材料であれば、nr1=1(nr2=1)となるので、更に好ましい。
このように、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1、及び/又は第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2を0.86〜1.15にしたので、透明基体12の法線方向(矢印Z1方向)に対して僅かに斜入する光(斜入光108)のうち、透明基体12と第1保護層26aとの界面、及び/又は透明基体12と第2保護層26bとの界面において直進する光量(直進成分116)が相対的に増加する。すなわち、散乱されることなく透明基体12内部を通過する光量が、非透光性材料からなる金属細線16の位置によらず一律に増加する。これにより、金属細線16に起因する光学濃度のコントラストを低減可能であり、観察者(ユーザ)に視認され難くなる。特に、異なるメッシュ形状22を隙間なく配列したメッシュパターン20では、ノイズ粒状感の発生を抑制できるので一層効果的である。なお、各メッシュ形状22が多角形状である場合のみならず、種々の形状であっても上記した作用効果が得られることは言うまでもない。
続いて、導電シート10に第1ダミーパターン76aを設けることで得られる作用効果について、図21A〜図22Cを参照しながら説明する。以下、理解の容易のため、第1保護層26a等の構成を省略するとともに、光の屈折効果による影響が僅かであるとして光学的現象を説明する。
図21Aは、参考例に係る第1センサ部120の概略平面図である。第1センサ部120は、第1導電パターン70aのみで構成されており、第1ダミーパターン76a(図5A及び図6参照)が欠落した形態を有する。
図21Bは、第1センサ部120に入射された外光122の経路を表す概略説明図である。本図は、図21Aに示す第1導電パターン70aの境界Bd近傍での概略断面図に相当する。
位置P1は、第1導電部14a及び第2導電部14bのいずれにも金属細線16が存在しない位置に相当する。表示装置40(図4参照)の外部から照射された外光122は、導電シート10の内部に入射し、矢印Z2方向に沿って略平行に直進する。そして、外光122は、開口部18と透明基体12との第1界面104で、矢印Z2方向に略全て透過される。このとき、透過光の一部は、直進成分124として矢印Z2方向に沿って直進するとともに、残余の一部は散乱成分126として散乱する。その後、直進成分124は、透明基体12と開口部18との第3界面128で、矢印Z2方向に略全て透過される。透過光の一部は、直進成分130として矢印Z2方向に沿って直進するとともに、残余の一部は散乱成分132として散乱する。その結果、位置P1に照射された外光122のうちの大半は、導電シート10の矢印Z2方向側に放出される。
位置P2は、第1導電部14aに金属細線16が存在し、且つ、第2導電部14bに金属細線16が存在しない位置に相当する。表示装置40(図4参照)の外部から照射された外光122は、第1導電部14a(非透光性材料である金属細線16)の表面で、反射成分134として矢印Z1方向に略全て反射される。
位置P3は、第1導電部14aに金属細線16が存在せず、且つ、第2導電部14bに金属細線16が存在する位置に相当する。表示装置40(図4参照)の外部から照射された外光122は、導電シート10の内部に入射し、矢印Z2方向に沿って略平行に直進する。そして、外光122は、第1界面104で、矢印Z2方向に略全て透過される。このとき、透過光の一部は、直進成分124として矢印Z2方向に沿って直進するとともに、残余の一部は散乱成分126として散乱する。そして、直進成分124は、第3界面128(非透光性材料である金属細線16の表面)で、反射成分135として矢印Z1方向に略全て反射される。その後、反射成分135は、矢印Z1方向に沿って透明基体12内部を直進し、第1界面104で、矢印Z1方向に略全て透過される。その結果、位置P3に照射された外光122のうちの一部は、直進成分136(あるいは散乱成分137)として、導電シート10の外側(矢印Z1方向側)に放出される。
このように、位置P2での反射光量Ir(反射光134)は、位置P3での反射光量Ir(直進成分136)と比べて多いことが諒解される。これは、金属細線16の位置に到達するまでの光路長の差異(透明基体12の厚みの2倍値に相当する。)に起因する。
図21Cは、図21Aの第1センサ部120における反射光の強度分布を表すグラフである。グラフの横軸は矢印X方向の位置を表し、グラフの縦軸は反射光の強度(反射光量Ir)を表す。この反射光量Irは、矢印X方向の位置によらず一様な外光122を入射した場合での、導電シート10の一面側(矢印Z1方向側)に反射される光量を意味する。
その結果、第1センサ部120に第1導電パターン70aが存在しない位置では、反射光量Irは極小値(Ir=I1)を採る。また、第1センサ部120に第1導電パターン70aが存在する位置では、反射光量Irは極大値(Ir=I2)を採る。すなわち、反射光量Irは、第1感知部72aの規則的配置に応じた特性、換言すれば、極小値(I1)及び極大値(I2)を交互に繰り返す周期的な特性を有する。
これに対して、透光性が高い導電性材料(典型的には、ITO)を用いた導電シートの場合、反射光量Irは略0に等しい(I1=I2=0)。このため、第1導電パターン70aの有無に起因するコントラスト(輝度差)が殆どない。すなわち、第1導電パターン70aに金属細線16を適用する場合と比べて、上記した影響を殆ど受けることはない。
一方、図22Aは、本実施の形態に係る第1センサ部60a(図5A及び図6参照)の概略平面図である。第1センサ部60aは、第1導電パターン70a及び第1ダミーパターン76aで構成されている。
図22Bは、第1センサ部60aに入射された外光122の経路を表す概略説明図である。本図は、図22Aに示す第1導電パターン70aの境界Bd近傍での概略断面図に相当する。
位置P1に対応する位置Q1に関しては、図21Bと同様であるので説明を割愛する。位置P2に対応する位置Q2に関しても同様である。
位置P3に対応する位置Q3において、表示装置40(図4参照)の外部から照射された外光122は、第1ダミー電極部15a(非透光性材料である金属細線16)の表面で、反射成分138として矢印Z1方向に略全て反射される。すなわち、導電シート10は、第2導電部14bでの金属細線16の有無にかかわらず、位置Q2と同じ程度に外光122を反射する。
その結果、図22Cに示すように、反射光量Irは、第1感知部72aの規則的配置によらず、Ir=I2とする一様な特性を有する。なお、第1導電部14aと第1ダミー電極部15aとの離間部において、反射光量Irが若干(ε)減少する傾向がみられる。この離間部の幅を小さくすることで、第1感知部72aの形状が一層視認されにくくなる。
以上のように、隣接する第1導電パターン70a同士の第1隙間部75aに配置された第1ダミーパターン76aの配線密度を、第1導電パターン70aの配線密度に等しくしたので、一方の主面側からの外光122に対する第1ダミーパターン76aの平面領域内での光反射率は、第1導電パターン70aの平面領域内での光反射率に略一致する。すなわち、第1感知部72aの規則的配置によらず、反射光(反射成分134、138)の強度分布を一様に近づけることが可能である。これにより、透明基体12の両面に金属細線16からなる電極を形成した構成であっても、反射光源としての外光122に起因する第1感知部72a(又は第2感知部72b)の視認を抑制できる。
次に、第1導電パターン70a、第1ダミーパターン76a、及び第2導電パターン70b(以下、第1導電パターン70a等という場合がある。)を形成する方法としては、例えば、透明基体12上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって、露光部及び未露光部にそれぞれ金属銀部及び光透過性部を形成して第1導電パターン70a等を形成するようにしてもよい。なお、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部に導電性金属を担持させるようにしてもよい。図2に示す導電シート10に関し、以下に示す製造方法を好ましく採用することができる。すなわち、透明基体12の両面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層に対して一括露光を行って、透明基体12の一主面に第1導電パターン70a及び第1ダミーパターン76aを形成し、透明基体12の他主面に第2導電パターン70bを形成する。
この製造方法の具体例を、図23〜図25を参照しながら説明する。
先ず、図23のステップS1において、長尺の感光材料140を作製する。感光材料140は、図24Aに示すように、透明基体12と、該透明基体12の一方の主面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層(以下、第1感光層142aという)と、透明基体12の他方の主面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層(以下、第2感光層142bという)とを有する。
図23のステップS2において、感光材料140を露光する。この露光処理では、第1感光層142aに対し、透明基体12に向かって光を照射して第1感光層142aを第1露光パターンに沿って露光する第1露光処理と、第2感光層142bに対し、透明基体12に向かって光を照射して第2感光層142bを第2露光パターンに沿って露光する第2露光処理とが行われる(両面同時露光)。図24Bの例では、長尺の感光材料140を一方向に搬送しながら、第1感光層142aに第1光144a(平行光)を第1フォトマスク146aを介して照射すると共に、第2感光層142bに第2光144b(平行光)を第2フォトマスク146bを介して照射する。第1光144aは、第1光源148aから出射された光を途中の第1コリメータレンズ150aにて平行光に変換されることにより得られ、第2光144bは、第2光源148bから出射された光を途中の第2コリメータレンズ150bにて平行光に変換されることにより得られる。
図24Bの例では、2つの光源(第1光源148a及び第2光源148b)を使用した場合を示しているが、1つの光源から出射した光を光学系を介して分割して、第1光144a及び第2光144bとして第1感光層142a及び第2感光層142bに照射してもよい。
そして、図23のステップS3において、露光後の感光材料140を現像処理する。第1感光層142a及び第2感光層142bの露光時間及び現像時間は、第1光源148a及び第2光源148bの種類や現像液の種類等で様々に変化するため、好ましい数値範囲は一概に決定することができないが、現像率が100%となる露光時間及び現像時間に調整されている。
そして、本実施の形態に係る製造方法のうち、第1露光処理は、図25に示すように、第1感光層142a上に第1フォトマスク146aを例えば密着配置し、該第1フォトマスク146aに対向して配置された第1光源148aから第1フォトマスク146aに向かって第1光144aを照射することで、第1感光層142aを露光する。第1フォトマスク146aは、透明なソーダガラスで形成されたガラス基板と、該ガラス基板上に形成されたマスクパターン(第1露光パターン152a)とで構成されている。従って、この第1露光処理によって、第1感光層142aのうち、第1フォトマスク146aに形成された第1露光パターン152aに沿った部分が露光される。第1感光層142aと第1フォトマスク146aとの間に2〜10μm程度の隙間を設けてもよい。
同様に、第2露光処理は、第2感光層142b上に第2フォトマスク146bを例えば密着配置し、該第2フォトマスク146bに対向して配置された第2光源148bから第2フォトマスク146bに向かって第2光144bを照射することで、第2感光層142bを露光する。第2フォトマスク146bは、第1フォトマスク146aと同様に、透明なソーダガラスで形成されたガラス基板と、該ガラス基板上に形成されたマスクパターン(第2露光パターン152b)とで構成されている。従って、この第2露光処理によって、第2感光層142bのうち、第2フォトマスク146bに形成された第2露光パターン152bに沿った部分が露光される。この場合、第2感光層142bと第2フォトマスク146bとの間に2〜10μm程度の隙間を設けてもよい。
第1露光処理及び第2露光処理は、第1光源148aからの第1光144aの出射タイミングと、第2光源148bからの第2光144bの出射タイミングを同時にしてもよいし、異ならせてもよい。同時であれば、1度の露光処理で、第1感光層142a及び第2感光層142bを同時に露光することができ、処理時間の短縮化を図ることができる。
最後に、図23のステップS4において、現像処理後の感光材料140にラミネート処理を施すことで、導電シート10が完成する。具体的には、第1感光層142a側に第1保護層26aを形成するとともに、第2感光層142b側に第2保護層26bを形成する。これにより、第1センサ部60a、第2センサ部60bの保護になる。
このように、上述の両面一括露光を用いた製造方法を用いることで、タッチパネル44の電極を容易に形成可能であり、タッチパネル44の薄型化(低背化)を図ることができる。
上述した例は、感光性ハロゲン化銀乳剤層を用いて第1導電パターン70a等を形成する製造方法であるが、その他の製造方法としては、以下のような製造方法がある。
例えば、透明基体12上に形成された銅箔上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する銅箔をエッチングすることによって、第1導電パターン70a等を形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に金属微粒子を含むペーストを印刷し、ペーストに金属めっきを行うことによって、第1導電パターン70a等を形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に、第1導電パターン70a等をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に、第1導電パターン70a等をインクジェットにより形成するようにしてもよい。
続いて、本実施の形態に係る導電シート10の変形例(第1〜第5変形例)について、図26〜図32を参照しながら説明する。なお、変形例において本実施の形態と同一である構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略し、以下同様とする。
[第1変形例]
タッチパネル160は、静電容量方式ではなく、抵抗膜方式(更には、デジタル方式、アナログ方式)に適用されてもよい。以下、図26〜図28を参照しながら、構造及び動作原理について説明する。
デジタル抵抗膜方式のタッチパネル160は、下側パネル162と、下側パネル162に対向して配置された上側パネル164と、下側パネル162及び上側パネル164の周縁部で貼り合わせ、且つ、両者を電気的に絶縁する額縁接着層166と、下側パネル162及び上側パネル164に挟持されたFPC168(Flexible Printed Circuits)とを備える。
図26及び図27Aに示すように、上側パネル164は、可撓性を有する材質(例えば、樹脂)からなる第1透明基体170aと、その一主面(矢印Z2方向側)に形成された第1センサ部172a及び第1端子配線部174aとを有する。第1センサ部172aは、複数の金属細線16でそれぞれ形成された、2以上の第1導電パターン176aを有する。帯状の第1導電パターン176aは、矢印Y方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に等間隔に配列されている。各第1導電パターン176aは、第1端子配線部174aを介して、FPC168に電気的に接続されている。各第1導電パターン176a間には、帯状の第1ダミーパターン178aがそれぞれ配置されている。
図26及び図27Bに示すように、下側パネル162は、高剛性の材質(例えば、ガラス)からなる第2透明基体170bと、その一主面(矢印Z1方向側)に形成された第2センサ部172b及び第2端子配線部174bと、第2センサ部172b上に所定間隔で配置された多数のドットスペーサ180とを有する。第2センサ部172bは、複数の金属細線16でそれぞれ形成された、2以上の第2導電パターン176bを有する。帯状の第2導電パターン176bは、矢印X方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に等間隔に配列されている。各第2導電パターン176bは、第2端子配線部174bを介して、FPC168に電気的に接続されている。各第2導電パターン176b間には、帯状の第2ダミーパターン178bがそれぞれ配置されている。
図26及び図28に示すように、上側パネル164及び下側パネル162を貼り合わせた状態において、各ドットスペーサ180を介して、第1センサ部172aは、第2センサ部172bと所定間隔だけ離間して配されている。そして、各第1導電パターン176aと各第2導電パターン176bがそれぞれ交差することで、略正方形の重複領域182が多数形成される。さらに、各第1ダミーパターン178aと各第2ダミーパターン178bがそれぞれ交差する位置に、ドットスペーサ180がそれぞれ配置されている。すなわち、各重複領域182の四隅に、ドットスペーサ180が1つずつ配置された位置関係にある。
次いで、タッチパネル160の動作について説明する。入力面(第1透明基体170aの矢印Z1側主面)からの押圧を受けて、可撓性を有する第1透明基体170aが凹状に撓まされる。そうすると、押圧位置に最も近い4つのドットスペーサ180に囲まれた、1つの重複領域182に対応する部位で、第1導電パターン176aの一部が、第2導電パターン176bの一部と接触する。この状態下で、FPC168を介して電圧を印加することで、上側パネル164と下側パネル162との間に電位勾配が発生する。すなわち、FPC168を介して、上側パネル164から電圧を読み取ることで、矢印X方向(X軸)の入力位置が検出可能である。同様に、下側パネル162から電圧を読み取ることで、矢印Y方向(Y軸)の入力位置が検出可能である。
ここで、第1導電パターン176a(又は第2導電パターン176b)の幅w3は、解像度に応じて種々設定してもよく、例えば1〜5mm程度が好ましい。第1ダミーパターン178a(又は第2ダミーパターン178b)の幅w4は、第1導電パターン176a(又は第2導電パターン176b)との絶縁性及びタッチパネル160の感度の観点から、50〜200μmの範囲が好ましい。
図27A及び図27Bに示すシングルハッチング領域(第1導電パターン176a及び第2導電パターン176b)、並びにダブルハッチング領域(第1ダミーパターン178a及び第2ダミーパターン178b)の一部を拡大すると、図1に示すメッシュパターン20の構造が現れることとなる。すなわち、上側パネル164及び下側パネル162を重畳した状態下で、モアレ発生の抑制及びノイズ粒状感の低減を両立可能な配線形状を決定しておくことが好ましい。
[第2変形例]
第1導電パターン192a及び/又は第2導電パターン192bの輪郭形状は、本実施の形態と異なる形状であってもよい。以下、第1感知部72a(図5A参照)及び第2感知部72b(図5B参照)を形成することなく、平面視において巨視的に概略格子状の模様を有する第1センサ部190a及び第2センサ部190bについて、図29A及び図29Bを参照しながら説明する。
図29Aは第1センサ部190a(第1導電部14a、第1ダミー電極部15a)の部分拡大図であり、図29Bは第2センサ部190b(第2導電部14b、第2ダミー電極部15b)の部分拡大図である。説明の便宜のため、図29A及び図29Bにおいて、複数の金属細線16で形成されるメッシュパターン20の輪郭のみを単線で表記している。すなわち、図29A及び図29Bに示す各単線の一部を拡大すると、図1に示すメッシュパターン20の構造が現れることとなる。
図29Aに示すように、第1センサ部190aに対応する部位には、複数の金属細線16で形成された2以上の第1導電パターン192aを有する。第1導電パターン192aは、矢印Y方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に直交する矢印X方向に等間隔で配列されている。また、第1導電パターン192aは、第2導電パターン70b(図5B参照)とは異なり、略一定の線幅を有している。各第1導電パターン192aの間には、格子状の第1ダミーパターン194がそれぞれ配置されている。第1ダミーパターン194は、矢印Y方向に延在し且つ等間隔で配置された4本の長線パターン196と、4本の長線パターン196にそれぞれ交差して配置された多数の短線パターン198とから構成される。各短線パターン198はいずれも同じ長さを有しており、4本を繰り返し単位として、矢印Y方向に対し等間隔に並設されている。
図29Bに示すように、第2センサ部190bに対応する部位には、複数の金属細線16で形成された2以上の第2導電パターン192bを有する。第2導電パターン192bは、矢印X方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に直交する矢印Y方向に等間隔で配列されている。また、第2導電パターン192bは、第1導電パターン70a(図5A参照)とは異なり、略一定の線幅を有している。各第2導電パターン192bの間には、矢印X方向に伸びる直線状の第2ダミーパターン200が多数配置されている。各第2ダミーパターン200はいずれも同じ長さを有しており、4本を繰り返し単位として、矢印Y方向に対し等間隔に並設されている。
すなわち、平面視において、第1センサ部190a(図29A参照)及び第2センサ部190b(図29B参照)に形成される模様が相互に補完することで、格子要素202を単位とする格子形状が完成する。このように構成しても、本発明と同様の作用効果が得られる。
[第3変形例]
導電シート210は、2枚のシート部材(第1シート部材212a及び第2シート部材212b)から構成されてもよい。
図30に示すように、導電シート210は、下方から順番に、第2シート部材212b及び第1シート部材212aを積層して構成されている。第1シート部材212aは、第1透明基体12aの一主面(矢印s1方向側)に形成された第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aを有する。第2シート部材212bは、第2透明基体12bの一主面(矢印s1方向側)に形成された第2導電部14bを有する。すなわち、第1透明基体12aの一主面(矢印s1方向側)上に第1導電部14a等が形成され、且つ、第1透明基体12aの他主面(矢印s2方向側)上に第2導電部14b等が形成された一形態であると言える。
このように導電シート210を構成しても、本実施の形態と同様の作用効果が得られる。なお、第1シート部材212aと第2シート部材212bとの間に他の層が介在してもよい。また、第1導電部14aと第2導電部14bとが、あるいは、第1ダミー電極部15aと第2導電部14bとが絶縁状態であれば、それらが対向して配置されてもよい。
[第4変形例]
導電シート220には、片面側のみならず、両面側にダミー電極部(第1ダミー電極部15a及び第2ダミー電極部15b)を設けてもよい。
図31に示すように、透明基体12の他方の主面(矢印s2方向側)には、第2導電部14bのみならず、第2ダミー電極部15bが形成されている。ここで、第2ダミー電極部15bは、第2導電部14bと所定間隔だけ離間して配置されている。すなわち、第2ダミー電極部15bは、第2導電部14bと電気的に絶縁された状態下にある。
このように、透明基体12の両面側にダミー電極部を設けることで、表示装置40(図4参照)に導電シート220を組み込む際、表裏いずれの配置であっても本発明の作用効果が得られる。逆に、生産コストの観点から、透明基体12の両面にダミー電極部を設けない形態を採ってもよい。
[第5変形例]
導電シート230は、異方的(非等方的)なメッシュパターン232を有していてもよい。
図32は、ブラックマトリクス34(図3参照)を重畳する条件下で形状が最適化された、メッシュパターン232を有する導電シート230の部分拡大平面図である。
図10A及び図32から諒解されるように、メッシュパターン232の模様(各開口部18)は、メッシュパターン20の模様と比べて、総じて横長の形状を有している。その根拠は以下のように推測される。
図3に示すように、赤色副画素32r、緑色副画素32g、青色副画素32bが矢印X方向に配設されることで、1つの画素32が1/3の領域にそれぞれ区画され、高空間周波数成分のノイズ粒状度が増加する。一方、矢印Y方向には、ブラックマトリクス34の配設周期に相当する空間周波数成分のみ存在し、それ以外の空間周波数成分がないため、この配設周期の視認性を低減するようにメッシュパターン232の模様が決定される。すなわち、矢印Y方向に延在する各配線は、矢印X方向と比べて、その間隔がなるべく狭くなるように、且つ、ブラックマトリクス34の間に規則的に配置されるように決定される。
このように、ブラックマトリクス34を含む構造パターンの模様を考慮に入れたメッシュパターン232の最適化が可能である。つまり、実際の使用態様での観察でノイズ粒状感が低減され、観察対象物の視認性が大幅に向上する。導電シート230の実際の使用態様が既知である場合、特に効果的である。
次に、本実施の形態に係る導電シート10において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる製造方法を中心にして述べる。
本実施の形態に係る導電シート10の製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面の小さい球形である。
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
ここで、本実施の形態に係る導電シート10の各層の構成について、以下に詳細に説明する。
[透明基体12]
透明基体12としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)を含むポリエステル類、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
透明基体12としては、融点が約290℃以下であるプラスチックフイルム、又はプラスチック板が好ましく、特に、光透過性や加工性等の観点から、PETが好ましい。
[銀塩乳剤層]
第1積層部28a及び第2積層部28bの金属細線16となる銀塩乳剤層は、銀塩とバインダの他、溶媒や染料等の添加剤を含有する。
<1.銀塩>
本実施の形態に用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本実施の形態においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
銀塩乳剤層の塗布銀量(銀塩の塗布量)は、銀に換算して1〜30g/m2が好ましく、1〜25g/m2がより好ましく、5〜20g/m2がさらに好ましい。この塗布銀量を上記範囲とすることで、導電シート10とした場合に所望の表面抵抗を得ることができる。
<2.バインダ>
本実施の形態に用いられるバインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
本実施の形態の銀塩乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。銀塩乳剤層中のバインダの含有量は、銀/バインダ体積比で1/4以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。銀/バインダ体積比は、100/1以下が好ましく、50/1以下がより好ましい。また、銀/バインダ体積比は1/1〜4/1であることがさらに好ましい。1/1〜3/1であることが最も好ましい。銀塩乳剤層中の銀/バインダ体積比をこの範囲にすることで、塗布銀量を調整した場合でも抵抗値のばらつきを抑制し、均一な表面抵抗を有する導電シート10を得ることができる。なお、銀/バインダ体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダ量(重量比)を銀量/バインダ量(重量比)に変換し、さらに、銀量/バインダ量(重量比)を銀量/バインダ量(体積比)に変換することで求めることができる。
<3.溶媒>
銀塩乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
<4.その他の添加剤>
本実施の形態に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。
[第1保護層26a、第2保護層26b]
第1保護層26a及び第2保護層26bとしては、透明基体12と同様に、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、PET、PEN、PMMA、PP、PS、TAC等を用いることができる。
第1保護層26a及び第2保護層26bの厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、5〜100μmが好ましく、8〜50μmがより好ましく、10〜30μmが特に好ましい。
次に、導電シート10の作製方法の各工程について説明する。
[露光]
本実施の形態では、第1導電部14a及び第2導電部14bを印刷方式によって施す場合を含むが、印刷方式以外は、第1導電部14a及び第2導電部14bを露光と現像等によって形成する。すなわち、透明基体12上に設けられた銀塩含有層を有する感光材料又はフォトリソグラフィ用フォトポリマーを塗工した感光材料への露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
現像、定着処理を施した感光材料は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。
現像処理後の露光部に含まれる金属銀部の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
以上の工程を経て、導電シート10は得られる。現像処理後の導電シート10に対しては、さらにカレンダー処理を行ってもよく、カレンダー処理により所望の表面抵抗に調整することができる。得られた導電シート10の表面抵抗は0.1〜300オーム/sq.の範囲にあることが好ましい。
なお、表面抵抗は、導電シート10の用途によって異なる。例えば、タッチパネル用途の場合には、1〜70オーム/sq.であることが好ましく、5〜50オーム/sq.であることがより好ましく、5〜30オーム/sq.であることがさらに好ましい。また、電磁波シールド用途の場合には、10オーム/sq.以下であることが好ましく、0.1〜3オーム/sq.であることがより好ましい。
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部の導電性を向上させる目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本発明では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよく、物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよい。なお、金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施したものを含めて「導電性金属部」と称する。
本実施の形態における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオン等の金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフイルム、インスタントスライドフイルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
本実施の形態において、めっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。本実施の形態における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術を用いることができ、例えば、プリント配線板等で用いられている無電解めっき技術を用いることができ、無電解めっきは無電解銅めっきであることが好ましい。
なお、本実施の形態に係る導電シート10の製造方法では、めっき等の工程は必ずしも行う必要はない。本製造方法では銀塩乳剤層の塗布銀量、銀/バインダ体積比を調整することで所望の表面抵抗を得ることができるからである。
[酸化処理]
本実施の形態では、現像処理後の金属銀部、並びに、物理現像及び/又はめっき処理によって形成された導電性金属部には、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性を略100%にすることができる。
[現像処理後の硬膜処理]
銀塩乳剤層に対して現像処理を行った後に、硬膜剤に浸漬して硬膜処理を行うことが好ましい。硬膜剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類及びほう酸等の特開平2−141279号公報に記載のものを挙げることができる。
本実施の形態に係る導電シート10には、反射防止層やハードコート層等の機能層を付与してもよい。
[カレンダー処理]
現像処理済みの金属銀部にカレンダー処理を施して平滑化するようにしてもよい。これによって金属銀部の導電性が顕著に増大する。カレンダー処理は、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは通常一対のロールからなる。
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると699.4kgf/cm2)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm2)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
[ラミネート処理]
第1センサ部60a、第2センサ部60bの保護のため、銀塩乳剤層上に保護層を形成してもよい。保護層と銀塩乳剤層との間に第1接着層24a(又は第2接着層24b)を設けることで、接着性の調整が自在となる。
第1接着層24a及び第2接着層24bの材料として、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等が挙げられる。特に、接着可能な材料の種類が豊富であり、且つ、貼り合わせ速度も早いドライラミネート接着剤が好ましい。ドライラミネート接着剤として、具体的には、アミノ樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、クロロプレンゴム接着剤、ニトリルゴム接着剤、エポキシ接着剤、ウレタン接着剤、反応型アクリル接着剤等を用いることができる。その中でも、アクリル系低酸価接着剤である住友スリーエム社製のOCA(Optical Clear Adhesive;登録商標)を用いることが好ましい。
乾燥条件は、30〜150℃の温度環境下で、1〜30分間であることが好ましい。乾燥温度は、50〜120℃が特に好ましい。
また、上記した接着層に代替して、透明基体12及び保護層の少なくともいずれかを表面処理することにより、層間接着力を調整することができる。前記銀塩乳剤層との接着力を高めるため、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、高周波照射処理、グロー放電照射処理、活性プラズマ照射処理、レーザ光線照射処理等を施してもよい。
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組み合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
この実施例では、実施例1〜6、比較例1〜3、並びに参考例1、2に係る導電シート10について、これらを組み込んだ表示装置40での、表面抵抗率、視認性(ノイズ粒状感)及び輝度変化率をそれぞれ評価した。
<実施例1〜6、比較例1〜3、参考例1、2>
(ハロゲン化銀感光材料)
水媒体中のAg150gに対してゼラチン10.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=40モル%)を含有する乳剤を調製した。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10−7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が10g/m2となるように透明基体(ここでは、屈折率n0=1.64であるポリエチレンテレフタレート(PET))上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は2/1とした。
幅300mmのPET支持体に250mmの幅で20m分だけ塗布し、塗布幅の中央部240mmを残すように両端を30mmずつ切り落とし、ロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
(露光パターンの作成)
先ず、平面領域100(図9B及び図9C参照)内の配線形状を表す画像データを作成した。この画像データに関し、単位パターンのサイズを縦横とも5mm、画像解像度を3500dpi(dot per inch)とした。メルセンヌ・ツイスタを用いて、メッシュ形状22を画定する複数のシード点の初期位置をランダムに決定し、所定の評価条件に基づいて各シード点の配置を最適化した。そして、ボロノイ図(図9B参照)を用いて、最適化された各シード点から、メッシュパターン20(図1等参照)の形状を決定した。
一方、比較のため、従来例に係るパターンPT1〜PT3(図34A〜図34C参照)を表す画像データも併せて作成した。
次いで、単位パターンを表す画像データを上下方向及び左右方向に並べて配置することで、周期的な露光パターンを形成した。この露光パターンは、全体透過率を93%、透明基体12の厚さを20μm、金属細線16の幅を20μm、金属細線16の厚さを10μmとして作成したものである。これによって、目論見通りの導電シート10が作製されたことを事後的に確認した。
次いで、図18A及び図18Bに示した通り、第1領域R1を除く領域からなる第1露光パターンと、第2領域R2からなる第2露光パターンとをそれぞれ作成した。
(露光)
A4判サイズ(210mm×297mm)の透明基体12の両面に向けてそれぞれ露光を行った。露光は上記した第1露光パターン(第1導電部14a側に対応)及び第2露光パターン(第2導電部14b側に対応)のフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光した。
(現像処理)
・現像液1L処方
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
・定着液1L処方
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3−ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
上記処理剤を用いて露光済み感材を、富士フイルム社製自動現像機 FG−710PTSを用いて処理条件:現像35℃ 30秒、定着34℃ 23秒、水洗 流水(5L/分)の20秒処理で行った。
(ラミネート処理)
現像済み感材の両面に、同一の材質からなる第1保護層26a及び第2保護層26bをそれぞれ貼り付けた。後述するように、導電シート10のサンプル毎に、屈折率n1がそれぞれ異なる保護膜を用いた。また、第1接着層24a及び第2保護層26b(図2参照)として、市販の粘着テープ(NSS50−1310;新タック化成社製、厚さ50μm)を用いた。そして、第1保護層26a及び第2保護層26bを貼り付けた後、気泡の発生を防止するため、0.5気圧、40℃の環境下で20分間加熱し、オートクレーブ処理を施した。
なお、評価の便宜のため、シートの一部を切り欠いた第1保護層26aを用いた。すなわち、第1保護層26aを形成した場合(屈折率n1)と、第1保護層26aを形成しない場合(屈折率1.00の空気層)との差異を一度に視認できるようにした。以下、第1保護層26aの切り欠き部に対応する表示箇所をA領域、残余の表示箇所をB領域という。
(実施例1)
屈折率n1=1.42であるポリクロロトリフルオロエチレン(PCTTE)を第1保護層26aとして用い、実施例1に係る導電シート10を作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.42/1.64)=0.86である。
(実施例2、比較例1〜3)
屈折率n1=1.50であるポリメチルメタクリレート(PMMA)を第1保護層26aとして用い、実施例2に係る導電シート10を作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.50/1.64)=0.91である。
また、パターンPT1(図34A参照)に対応する比較例1、パターンPT2(図34B参照)に対応する比較例2、及びパターンPT3(図34C参照)に対応する比較例3についても、ポリメチルメタクリレートを被覆することで各サンプルを作成した。
(実施例3)
屈折率n1=1.60であるポリスチレン(PS)を第1保護層26aとして用い、実施例3に係る導電シート10を作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.60/1.64)=0.97である。
(実施例4)
屈折率n1=1.70であるポリチオウレタン(PTU)を第1保護層26aとして用い、実施例4に係る導電シート10を作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.70/1.64)=1.03である。
(実施例5)
屈折率n1=1.78である高屈折率ガラスを第1保護層26aとして用い、実施例5に係る導電シート10を作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.78/1.64)=1.08である。
(実施例6)
屈折率n1=1.90である超高屈折率ガラスを第1保護層26aとして用い、実施例6に係る導電シート10を作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.90/1.64)=1.15である。
(参考例1)
屈折率n1=1.34であるテトラフルオロエチレン(FEP)を第1保護層として用い、参考例1に係る導電シート10を作製した。この場合、相対屈折率n12は、nr1=(1.34/1.64)=0.81である。
(参考例2)
屈折率n1=1.98である超高屈折率ガラスを第1保護層として用い、参考例2に係る導電シート10を作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.98/1.64)=1.20である。
[評価]
実施例1〜6、比較例1〜3及び参考例1、2に係る各サンプルを、表示ユニット30の表示画面上にそれぞれ貼り付けた。表示ユニット30として、市販のカラー液晶ディスプレイ(画面サイズ11.6型、1366×768ドット、画素ピッチは縦横とも約192μm)を用いた。
(表面抵抗測定)
表面抵抗率の均一性を評価するために、実施例2、比較例1〜3の各サンプルの表面抵抗率をダイアインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP−T610)直列4探針プローブ(ASP)にて任意の10箇所を測定し、これらの平均値を取った。
(ノイズ粒状感)
表示ユニット30を表示制御して白色(最高輝度)を表示させた状態下で、3名の研究員は、ノイズ粒状感(ざらつき感)の官能評価をそれぞれ実施した。今回の評価では、メッシュ形状22に起因する輝度のノイズ感と、副画素の構造に起因する色のノイズ感とを総合的に勘案し数値化した。なお、表示画面からの観察距離を300mmに、室内照度を300lxにそれぞれ設定した。
今回の官能評価では、A領域(第1保護層26aを形成しない表示領域)での視認結果に対する対比観察を行った。具体的には、A領域に対して、B領域でのノイズ粒状感が顕著に改善した場合は5点、改善した場合は4点、変化がない場合は3点、悪化した場合は2点、顕著に悪化した場合は1点にそれぞれ設定した。そして、各研究員による得点の平均値を、ノイズ粒状感の評価値とした。
(輝度変化率)
表示ユニット30を表示制御して白色(最高輝度)を表示させた状態下で、表示画面上の輝度を測定した。輝度計は、LS−100(コニカミノルタ社製)を用いた。なお、表示画面からの計測距離を300mmに、測定角を2°に、室内照度を1lx以下にそれぞれ設定した。
A領域での輝度をLa[cd/m2]、B領域での輝度をLb[cd/m2]とするとき、輝度変化率(単位:%)を100×(Lb−La)/Laとして算出した。なお、面内の均一性を考慮し、B領域内の測定位置を、A領域の境界近傍に設定した。
[結果]
(表面抵抗測定)
実施例2、比較例1〜3ともに、表面抵抗率も透明電極として十分に実用化できるレベルであり、透光性も良好であった。特に、表面抵抗率のばらつきが最も小さかったのは、実施例2(本発明に係る導電シート10)であった。
(ノイズ粒状感)
[1]パターン同士の視認性に関し、実施例2、比較例3、比較例1、及び比較例2のサンプルの順番で高い評価結果が得られた。この順番は、図17に示すパワースペクトルのピークがなす面積が小さい順番に一致している。特に、実施例2(本発明に係る導電シート10)でのノイズ粒状感が一層目立たないことを確認した。
[2]図33に示すように、実施例1〜6、参考例1、2のいずれも評価値が3を超えており、空気層を無くすることで、ノイズ粒状感の低減効果が得られた。その中でも、実施例1〜6に関して評価値がいずれも4を超えており、参考例1、2と比べて顕著な効果がみられた。すなわち、相対屈折率nr1が、0.86≦nr1≦1.15の関係を満たす場合、ノイズ粒状感を抑制可能である結論を得た。
(輝度の変化率)
表3に示すように、実施例1〜6、参考例1、2のいずれも輝度変化率が正値であり、空気層(エアギャップ)を無くすることで、表示画面上の輝度が向上した。
その中でも、実施例2〜5に関して輝度変化率がいずれも20%を超えており、実施例1、6等と比較して、目視で識別可能な程度の差異がみられた。すなわち、相対屈折率nr1が、0.91≦nr1≦1.08の関係を満たす場合、更には表示輝度を向上可能である結果を得た。
[補足説明]
上記した実施例の他、導電シート10の作製条件を種々変更して同様の評価を行った結果、以下の知見が得られた。
(1)透明基体12の材料はPETに限られず、上記した相対屈折率nr1、nr2の関係を満たす範囲においては、材料を問わず同様の実験結果が得られた。また、第2保護層26bが第1保護層26aと異なる材料であっても、前記関係を満たす範囲においては同様であった。
(2)相対屈折率nr1、nr2のいずれか一方を0.86以上1.15以下にすることで、ノイズ粒状感を低減する効果が得られた。そして、相対屈折率nr1、nr2の両方を0.86以上1.15以下にすることで、顕著な低減効果が得られた。
(3)相対屈折率nr1、nr2のいずれか一方を0.91以上1.08以下にすることで、表示画面を介して外部に放射される光量、すなわち表示輝度が向上する効果が得られた。そして、相対屈折率nr1、nr2の両方を0.91以上1.08以下にすることで、顕著な低減効果が得られた。
(4)表裏を反転した状態で導電シート10を配置しても、上記と略同様の評価結果が得られた。
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。