JP5802373B2 - 薄型分離膜支持体 - Google Patents
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[1]樹脂のコーティング面となる表面層、中間層及び裏面層が熱接着により一体化された積層不織布で構成されており、且つ、下記(1)〜(6)を満足することを特徴とする分離膜支持体。
(1)表面層は、繊維径が7μm以上12μm未満である熱可塑性樹脂長繊維の層を少なくとも一層有する。
(2)中間層は、繊維径が5μm以下であるメルトブロー繊維からなる層を少なくとも一層有する。
(3)裏面層は、繊維径が7μm以上12μm未満である熱可塑性樹脂長繊維からなる層を少なくとも一層有し、繊維量が3〜20g/m2である。
(4)積層不織布の見掛け密度が0.80〜0.91g/cm3である。
(5)積層不織布の厚みが45μm未満である。
(6)中間層のメルトブロー繊維の結晶化度が28.5%以下である。
[2]コーティング面となる表面の平滑度がKES表面粗さSMDで0.2〜2μmであることを特徴とする上記[1]に記載の分離膜支持体。
[3]メルトブロー繊維の繊維径が1.6μm以下であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の分離膜支持体。
[4]中間層の繊維量が3g/m2以上で且つ全繊維量の25wt%以下であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の分離膜支持体。
[5]熱可塑性樹脂長繊維およびメルトブロー繊維の融点が180℃以上であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の分離膜支持体。
[6]熱可塑性樹脂長繊維および/またはメルトブロー繊維の主成分が、ポリエステル繊維もしくはポリエステル共重合体の繊維、または、ポリエステルとポリエステル共重合体との混合物の繊維であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の分離膜支持体。
[7]下記(a)〜(d)を満足することを特徴とする分離膜支持体の製造方法。
(a)融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂長繊維をコンベア上に紡糸して少なくとも1層の不織布を形成し、
(b)次いで、その上に、メルトブロー法で、融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用い、結晶化度が28.5%以下、繊維径が5μm以下の繊維層を少なくとも1層積層し、
(c)さらに、融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂長繊維の不織布を少なくとも1層積層し、
(d)熱可塑性樹脂長繊維の融点よりも50〜120℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmでフラットロールを用いて熱接着した後、前記の熱接着温度より10℃以上高く且つ熱可塑性樹脂長繊維の融点よりも10〜100℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmでカレンダー処理する。
[8]熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする上記[7]に記載の分離膜支持体の製造方法。
本発明の分離膜支持体の特徴は、結晶化度を下げたメルトブロー繊維(中間層)が表面層と裏面層を構成する熱可塑性樹脂長繊維不織布間に挿入されて熱接着された積層不織布で支持体を構成している点にある。このような構造の積層不織布において、メルトブロー繊維(中間層)の結晶化度を特定の範囲に設定することにより、少ない繊維量の薄い不織布においても、機械的強度とコーティング時の樹脂の裏抜け防止性という互いに相反する性能を両立させることが可能となった。
樹脂コーティング時の裏抜け防止性のよい不織布を得るためには、メルトブロー繊維を多く配置するか、または加熱空気の流量を増加してメルトブロー繊維径を細くする必要があるが、前者では熱可塑性樹脂長繊維量が低下し支持体の強度は低下してしまい、後者ではメルトブロー繊維の結晶化度が増加してバインダー効果が減少してしまい支持体の強度は低下する。
本発明においては、コーティング面に長繊維を使用しているため、繊維の端面が少なく、毛羽の発生がきわめて少ないので、平滑なコーティング面を得ることが可能である。
本発明の支持体を構成する積層不織布において、特定の見掛け密度を得るためには、加熱ロールなどによる熱接着が好ましく用いられる。
逆浸透膜などに使用される場合は、180℃以上の熱処理を受ける場合があるため、耐熱性が要求される。したがって、本発明においては、熱可塑性樹脂長繊維およびメルトブロー繊維の融点が180℃以上であることが好ましい。
本発明において、表面層は、熱可塑性樹脂長繊維の層を少なくとも一層有する長繊維不織布であり、スパンボンド法によって得ることができる。
下限は特に限定されないが、極細繊維を狙う場合、吐出量を下げる為、例えば0.1μm以上が製造における生産性などから好ましい。
分離膜の製造工程においては、熱処理が必要な場合もあるため、メルトブロー繊維としては、耐熱性の高いPET、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどをはじめとするポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド系繊維、または、これらの樹脂を主体とする共重合体もしくはそれらの混合物などの繊維が好ましく使用される。中でも、ポリエステル系繊維は強度や寸法安定性が高いため、好ましく使用される。また、実用的な強度に影響のない範囲において、少量のポリオレフィンなどの低融点成分を加えて改質を行うこともできる。
裏面層に使用される熱可塑性樹脂長繊維は、表面層の熱可塑性樹脂長繊維と同様の繊維が使用可能であり、耐熱性の高いPET、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどをはじめとするポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド系繊維、または、これらの樹脂を主体とする共重合体もしくは混合物などの繊維が好ましく使用される。中でも、ポリエステル系繊維は強度や湿潤時の寸法安定性が高いため、より好ましく使用される。また、実用的な強度に影響のない範囲において、少量のポリオレフィンなどの低融点成分を加えて改質を行うこともできる。
本発明の支持体は、コーティング面となる表面の平滑度が、KES表面粗さSMDで0.2〜2μmであることが好ましい。より好ましくは、0.2〜1.5、さらに好ましくは、0.2〜1.0である。表面の平滑度がこの範囲であると、コーティング樹脂のピンホールが低減される。
本発明の支持体は、地合指数が120以下であることが好ましい。地合指数は均一性の指標であり、120以下であると、コーティング樹脂の局所的な裏抜けが低減される。
本発明の支持体の引張強力は155N/5cm以上が好ましく、より好ましくは170N/5cm以上。
本発明の支持体を構成する積層不織布は、下記(a)〜(d)を満足する製造方法により得られる。
(a)融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂長繊維をコンベア上に紡糸して少なくとも1層の不織布を形成し、
(b)次いで、その上に、メルトブロー法で、融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用い、結晶化度が28.5%以下、繊維径が5μm以下の繊維層を少なくとも1層積層し、
(c)さらに、融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂長繊維の不織布を少なくとも1層積層し、
(d)熱可塑性樹脂長繊維の融点よりも50〜120℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmでフラットロールを用いて熱接着した後、前記の熱接着温度より10℃以上高く且つ熱可塑性樹脂長繊維の融点よりも10〜100℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmでカレンダー処理する。
本発明の製造方法の最大の特徴は、熱可塑性樹脂長繊維ウェブの上に、メルトブロー法により微細な繊維層を直接吹き付けて、メルトブロー繊維を熱可塑性樹脂長繊維ウェブ内に侵入させる点にある。前述のように、メルトブロー繊維が熱可塑性樹脂長繊維ウェブ内に侵入することにより各層が強固に固定され、積層不織布の強度が向上するだけでなく、中間層の微細繊維が外力によって移動しにくくなるため、優れた裏抜け防止性が得られると考えられる。
PETの場合、還元粘度(ηsp/c)が好ましくは0.2〜0.8、さらに好ましくは0.2〜0.6の樹脂を用いることにより、一般的なメルトブロー紡糸条件で、メルトブロー繊維の結晶化度を28.5%以下に調整することが可能である。
また、ポリアミドの場合、相対粘度(ηrel)が好ましくは1.8〜2.7、さらに好ましくは1.8〜2.2の樹脂を用いることにより、一般的なメルトブロー紡糸条件で、メルトブロー繊維の結晶化度を28.5%以下に調整することが可能である。
また、メルトブロー繊維の結晶化度は軟化点の低下の点から、15%以上が好ましい。
JIS−L−1906に従った。縦20cm×横25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3箇採取して質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの質量に換算して求めた。
JIS−L−1906に従った。接圧荷重100g/cm2にて幅方向に10箇所測定し、その平均値を厚みとした。厚み測定装置は、PEACOCK製No.207を用いた。最小目盛が0.01であるため、小数点第3位まで読み取って平均した後、有効数字を2桁としてμmに換算した。
上記(1)にて測定した繊維量(g/m2)、上記(2)にて測定した厚み(μm)を用い、以下の式により算出した。
見掛け密度=(繊維量)/(厚み)
試料(不織布)の両端部10cmを除いて、試料の幅20cm毎の区域から、それぞれ1cm角の試験片を切り取った。各試験片について、マイクロスコープで繊維の直径を30点測定して、測定値の平均値(小数点第2位を四捨五入)を算出し、試料を構成する繊維の繊維径とした。
試料(不織布)の両端部10cmを除き、幅5cm×長さ20cmの試験片を切り取った。試験片が破断するまで荷重を加え、試験片の最大荷重時の強さの平均値をMD方向(マシン方向)で求めた。
試料(繊維)約8mgを秤量して、サンプルパンに入れ、サンプルシーラーを用いてサンプルを調整した。SIIナノテクノロジー社製のDSC210を使用し、下記の条件で測定した。
測定雰囲気:窒素ガス50ml/min
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:25〜300℃
ポリエステル繊維は、冷結晶化部があるので、以下の式で結晶化度を求めた(小数点第2位四捨五入)。
結晶化度(%)=〔(融解部の熱量)−(冷結晶部の熱量)〕/(完全結晶の熱量)
なお、熱量の値は、下記の文献に記載の値を用いた。
PET完全結晶の熱量:126.4J/g(“Macromol Physics”Academic Press, New York & London Vol.1, P389 (1973))
PP完全結晶の熱量:165J/g(J.Chem.Phys.Ref.Data,10(4)1981 1051)
ナイロン66の完全結晶の熱量:190.8J/g(J.plymer Scial,1 2697(1963))
上記(6)と同様にして測定を行い、融解ピークの導入部分における変曲点の漸近線とTgより高い温度領域でのベースラインが交わる温度を融点とした。
0.025gのサンプルをオルソクロロフェノール(OCP)25mlに溶解する。90℃に加温して(溶けなければ120℃に加温)溶かす。測定温度35℃で、粘度管により測定し、下記式で計算する。サンプル数3点の測定値を算術平均し、小数点第3位を四捨五入して算出する。
ηsp/c=〔(t−t0)/t0〕/c
式中、tは溶液通過時間(秒)、t0は溶媒通過時間(秒)、cは1000mlあたりの溶質(g)を表す。
0.025gのサンプルを98%硫酸25mlに常温で溶解する。測定温度25℃で、粘度管により測定し、下記式で計算する。サンプル数3点の測定値を算術平均し、小数点第2位を四捨五入して算出する。
ηrel=t/t0
式中、tは溶液通過時間(秒)、t0は溶媒通過時間(秒)を表す。
コーティング樹脂の原液として、ポリスルホンをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したポリスルホン溶液(20%wt濃度)を用いた。この原液を、ステンレス板上に固定した支持体上に200μmの厚みにてコーティングし、2秒後に20℃の純水中に浸漬して凝固させ、洗浄脱水した後、80℃の熱風乾燥機にて乾燥することにより分離膜を得た。評価は下記の基準で行った。
良好:ステンレス板上に樹脂の付着が見られないもの。
不良:ステンレス板上に樹脂が付着しているもの。
上記(10)にて得られた分離膜をサンプルとして、コーティング樹脂膜の剥離強力を測定した。引張試験機を用い、1.5cm幅にて200mm/minの速度で、支持体とコーティング樹脂膜を剥離させる時に必要な応力を測定した。測定はサンプル数3点で実施し、その平均値をもって密着性の指標とした(小数点第2位を四捨五入した)。
カトウテック社製KES FB−4を使用し、支持体のコーティング面となる表面の平滑度を測定した。標準条件(布張力400gf/20cm、初期荷重10gf)にてMD方向の表面粗さSMDを、サンプル数3点で測定し平均した。この数値が小さい程、表面の平滑性に優れる。
フォーメーションテスターFMT−MIII(野村商事株式会社 特許No.1821351)を使用し、CD方向に1mあたり4点測定し、地合指数を得た。この数値が小さい程、地合が均一で斑がない。
裏面層として、汎用的なPETを用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃でフィラメント群を移動する捕集ネット面に向けて押し出し、紡糸速度4500m/minで紡糸し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて十分に開繊させ、熱可塑性樹脂長繊維ウェブを捕集ネット上に調製した。繊維径の調整は、吐出量を変えることにより行った。
得られた積層不織布で構成された支持体及びその評価結果を表1、2に示す。
比較例2はメルトブロー繊維の繊維径を1.6μm、結晶化度を30.0%に調整し、4.7g/m2を配置した。樹脂をコーティングしたところステンレス板には樹脂の付着が見られた。裏抜けが発生した原因は、中間層のメルトブロー繊維の繊維重量比が低いことにより裏抜け防止性が不良であった。
裏面層として、汎用的なPETを用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃でフィラメント群を移動する捕集ネット面に向けて押し出し、紡糸速度4500m/minで紡糸し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて十分に開繊させ、熱可塑性樹脂長繊維ウェブを捕集ネット上に調製した。繊維径の調整は、吐出量を変えることにより行った。
得られた積層不織布で構成された支持体及びその評価結果を表1、2に示す。
表面層が密である為、コーティング樹脂の浸透が不十分となり基材とコーティング樹脂との接着力が低下しコーティング基材には不適であった。
繊維間隙がメルトブロー繊維層(中間層)に近くなり、メルトブロー層に滞留しているコーティング樹脂を毛細管力により吸引する力が強くなるため、十分な裏抜け防止性能が得られなかった。
Claims (7)
- 樹脂のコーティング面となる表面層、中間層及び裏面層が熱接着により一体化された積層不織布で構成されており、且つ、下記(1)〜(6)を満足することを特徴とする分離膜支持体。
(1)表面層は、繊維径が7μm以上12μm未満である熱可塑性樹脂長繊維の層を少なくとも一層有する。
(2)中間層は、繊維径が1.0μm以下であるメルトブロー繊維からなる層を少なくとも一層有する。
(3)裏面層は、繊維径が7μm以上12μm未満である熱可塑性樹脂長繊維からなる層を少なくとも一層有し、繊維量が3〜20g/m2である。
(4)積層不織布の見掛け密度が0.80〜0.91g/cm3である。
(5)積層不織布の厚みが45μm未満である。
(6)中間層のメルトブロー繊維の結晶化度が28.5%以下である。 - コーティング面となる表面の平滑度がKES表面粗さSMDで0.2〜2μmであることを特徴とする請求項1に記載の分離膜支持体。
- 中間層の繊維量が3g/m2以上で且つ全繊維量の25wt%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の分離膜支持体。
- 熱可塑性樹脂長繊維およびメルトブロー繊維の融点が180℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離膜支持体。
- 熱可塑性樹脂長繊維および/またはメルトブロー繊維の主成分が、ポリエステル繊維もしくはポリエステル共重合体の繊維、または、ポリエステルとポリエステル共重合体との混合物の繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離膜支持体。
- 下記(a)〜(d)を満足することを特徴とする分離膜支持体の製造方法。
(a)融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂長繊維をコンベア上に紡糸して少なくとも1層の不織布を形成し、
(b)次いで、その上に、メルトブロー法で、融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用い、結晶化度が28.5%以下、繊維径が1.0μm以下の繊維層を少なくとも1層積層し、
(c)さらに、融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂長繊維の不織布を少なくとも1層積層し、
(d)熱可塑性樹脂長繊維の融点よりも50〜120℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmでフラットロールを用いて熱接着した後、前記の熱接着温度より10℃以上高く且つ熱可塑性樹脂長繊維の融点よりも10〜100℃低い温度で、線圧100〜1000N/cmでカレンダー処理して、厚み45μm未満の分離膜支持体を得る。 - 熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の分離膜支持体の製造方法。
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