JP2009090279A - 分離膜支持体並びにそれを用いた分離膜及び流体分離素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱可塑性連続フィラメントより構成され、剛性と表面平滑性に優れる長繊維不織布からなり、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜等の分離膜を支持する際に優れた製膜性および機械的強度を有する分離膜支持体並びにそれを用いた分離膜及び流体分離素子を提供する。
【解決手段】目付が20〜150g/m、充填密度が0.4〜0.8、通気量が0.2〜30.0cc/cm/secであり、さらに低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmである長繊維不織布からなることを特徴とする分離膜支持体。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性連続フィラメントより構成され、剛性と表面平滑性に優れる長繊維不織布からなる、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜等の分離膜を支持する支持体に関するものである。また、それを用いた分離膜、流体分離素子に関するものである。
近年の水処理には多くの場合において膜技術が適用されている。例えば浄水場には精密ろ過膜または限外ろ過膜が、海水淡水化には逆浸透膜が、半導体製造用水、ボイラー用水、医療用水、ラボ用純水などには逆浸透膜やナノろ過膜が用いられ、さらに下廃水処理には精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた膜分離活性汚泥法も適用されている。
これらの分離膜は、その形状から平膜と中空糸膜に大別されるが、主に合成重合体から形成される平膜は分離機能を有する膜単体では機械的強度に劣るため、一般に不織布や織布等の支持体と一体化して使用されることが多い。
一般に分離機能を有する膜と支持体は、不織布や織布等の上に分離機能を有する膜の原料となる高分子溶液を流延し、固着させる方法や、逆浸透膜等の半透膜においては、不織布や織布等の上に高分子溶液を流延し支持層を形成させた後に、支持層上に半透膜を形成させる方法等により一体化される。したがって、支持体となる不織布や織布等には、高分子溶液を流延した際に過浸透により裏抜けしたり、膜物質が剥離したり、さらには支持体の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがない、優れた製膜性が要求される。
また、高圧下で使用されることが多い逆浸透膜などの半透膜の場合は特に、支持体には高い機械的強度、寸法安定性が要求される。
このような分離膜支持体およびその製造方法として、太い繊維を使用した目開きおよび表面粗度の大きな表面層と、細い繊維を使用した目開きが小で緻密な構造を有する裏面層との二重構造を基本とした多層構造体の不織布よりなることを特徴とする分離膜支持体や(特許文献1参照)、半透膜形成用重合体溶液を流延し、膜形成を行うための不織布からなる半透膜支持体において、該不織布が、通気度が5〜50cc/cm/secの低密度層と、通気度が0.1cc/cm/sec以上で5cc/cm/sec未満の高密度層とを積層一体化した二層構造の不織布であり、全体としての通気度が0.1cc/cm/sec〜4.5cc/cm/secであることを特徴とする半透膜支持体が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、これらの支持体は短繊維からなるため毛羽立ちにより膜の不均一化や欠点が発生する恐れがあり、さらには不織布の強度についてなんら記載がない、または詳しい記載がないため、支持体として十分な機械的強度、寸法安定性が得られないという問題があった。
また、このような分離膜支持体およびその製造方法として、5%伸長時の縦方向(MD)および横方向(CD)の裂断長の平均値が4.0km以上であり且つ通気度が0.2〜10.0cc/cm・秒である不織布からなることを特徴とする半透膜支持体が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、該支持体は抄紙法によって製造された不織布であり、特徴とする機械的強度を得るためには、溶融紡糸した後に温水浴中で延伸し、引き続いて緊張熱処理および/または弛緩熱処理を行うなどによって、不織布を構成するポリエステル繊維の複屈折を極めて大きくし、また熱収縮応力を特定の範囲にするなど、製造上コスト高になる上、5%伸長時の縦方向(MD)および横方向(CD)の裂断長の平均値を規定しているにすぎないため、分離膜支持体の厚み方向にかかる力(圧力)に対する剛性を長期間に渡り安定的に発現できるものではなかった。さらに短繊維からなるため毛羽立ちにより膜の不均一化や欠点が発生する恐れがあるという問題があった。
特公平4−21526号公報 特公平5−35009号公報 特許第3153487号公報
本発明は、熱可塑性連続フィラメントより構成され、剛性と表面平滑性に優れる長繊維不織布からなり、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜等の分離膜を支持する際に優れた製膜性および機械的強度を有する分離膜支持体並びにそれを用いた分離膜及び流体分離素子を提供することを目的とする。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1)熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布であって、目付が20〜150g/m、充填密度が0.4〜0.8、通気量が0.2〜30.0cc/cm/secであり、さらに低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることを特徴とする分離膜支持体。
(2)表面平均粗さが2〜9μmであることを特徴とする上記(1)に記載の分離膜支持体。
(3)前記熱可塑性連続フィラメントが、ポリエステル系重合体よりなることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の分離膜支持体。
(4)前記熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径が3〜17μmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜支持体。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の分離膜支持体の表面上に、分離機能を有する膜を形成してなることを特徴とする分離膜。
(6)上記(5)に記載の分離膜を含むことを特徴とする流体分離素子。
本発明により、熱可塑性連続フィラメントより構成され、剛性と表面平滑性に優れる長繊維不織布からなり、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜等の分離膜を支持する際に優れた製膜性および機械的強度を有する分離膜支持体並びにそれを用いた分離膜及び流体分離素子を提供することが可能となる。
本発明の分離膜支持体は、その表面上に分離機能を有する膜を形成させる分離膜支持体である。
本発明の分離膜支持体は、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることが重要である。本発明者らは、短繊維不織布を用いたときにしばしば起こる高分子溶液流延時の不均一化や膜欠点の原因について検討した結果、短繊維不織布の毛羽立ちが一因であり、長繊維不織布を用いることによりこの問題を解決できることをつきとめた。すなわち、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。さらに、本発明は熱可塑性連続フィラメントより構成されるため、短繊維不織布、特に繊維長の短い抄紙不織布に比べ機械的強度が高く、分離膜支持体、特に使用時に高い圧力がかけられる半透膜支持体として優れた耐久性を発現することができる。
本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布は、スパンボンド法によって製造したスパンボンド不織布やメルトブロー法によって製造したメルトブロー不織布等、熱可塑性連続フィラメントより構成されていれば特に限定はされない。その上に分離膜を形成した際に製膜性が良好であり耐久性に優れる分離膜を得ることができればなんら限定されるところではないが、機械的強度、寸法安定性により優れることからスパンボンド不織布であることが好ましい。また、より均一性に優れた分離膜支持体を得ることができることから、複数の長繊維不織布層からなる積層体も好ましい形態である。該積層体は、例えば、2層のスパンボンド不織布の層間に1層のメルトブロー不織布を配した3層構造の積層体等、少なくとも1層はスパンボンド不織布であることが好ましい。また、該積層体は、2層のスパンボンド不織布からなる積層体等、実質的にスパンボンド不織布のみからなることがより好ましい。
本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布は、充填密度が0.4〜0.8であることが重要であり、0.5〜0.8であることが好ましく、0.6〜0.8であることがより好ましい。充填密度が0.4以上であれば、不織布内部の空隙が少なく、分離膜支持体として使用した際に外部からの圧力で変形や損傷しにくくなる。一方、充填密度が0.8以下であれば、不織布の透水性や通気性が確保でき、分離膜支持体としての圧力損失が高くなりすぎることがない。
充填密度0.4〜0.8の長繊維不織布を得る方法としては、長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントとして、高融点重合体の周りにその高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した複合型フィラメントを用いることが好ましい。また、長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径を3〜17μmとすることや、スパンボンド法等で得られた長繊維不織布を、熱圧着によりシート状に一体化することも、充填密度0.4〜0.8の長繊維不織布を得る上で好ましい方法である。
本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布は、通気量が0.2〜30.0cc/cm/secであることが重要であり、0.3〜20.0cc/cm/secであることが好ましく、0.4〜10.0cc/cm/secであることがより好ましい。通気量が0.2cc/cm/sec以上であれば、分離膜支持体としての圧力損失が高くなりすぎることがない。一方、通気量が30.0cc/cm/sec以下であれば、不織布の緻密さを維持でき、分離膜が形成しやすくなる。
通気量0.2〜30.0cc/cm/secの長繊維不織布を得る方法としては、長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径を3〜17μmとすることが好ましい。また、長繊維不織布の目付を20〜150g/mとすることや、スパンボンド法等で得られた長繊維不織布を熱圧着によりシート状に一体化することも、通気量0.2〜30.0cc/cm/secの長繊維不織布を得る上で好ましい方法である。
本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布は、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることが重要であり、0.00〜0.02mmであることが好ましく、0.00〜0.01mmであることが更に好ましい。ここで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量とは、直径16mmの加圧子で低荷重(荷重2kPa)をかけたときの厚さと、同じ加圧子で高荷重(荷重200kPa)をかけたときの厚さとの差をいう。特に逆浸透膜などの分離膜の支持体は、高い逆浸透圧がかかるため、高圧に耐えうる高い剛性が必要となる。ここで必要な剛性とは、分離膜面に垂直に加わる力に耐え、変形しないための剛性のことであり、低荷重時と高荷重時との厚さ変化量が小さければ所望の剛性と言え、分離膜支持体として好適であることを見出した。低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.03mm以下であれば、分離膜支持体として使用した際にかかる圧力、特に部分的にかかる圧力による変形が少なく、膜性能や処理能力を維持することができる。
低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmである長繊維不織布を得る方法としては、長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントとして、高融点重合体の周りにその高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した複合型フィラメントを用いることが好ましい。また、長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径を3〜17μmとすることや、スパンボンド法等で得られた長繊維不織布を熱圧着によりシート状に一体化することも、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmである長繊維不織布を得る上で好ましい方法である。
本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布は、表面平均粗さは2〜9μmであることが好ましく、2〜8μmであることがより好ましく、2〜7μmであることがさらに好ましい。表面平均粗さが2μm以上であれば、不織布表面が極端に緻密化されて分離膜支持体として使用した際に圧力損失の上昇や、支持体上での分離膜剥離が起こることが少なく、表面平均粗さが9μm以下であれば、分離膜支持体として使用した際に支持体上の分離膜形成が困難となることが少ない。
表面平均粗さ2〜9μmの長繊維不織布を得る方法としては、上下1対のフラットロールにより長繊維不織布を熱圧着して一体化させることが好ましい。また、長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントとして、高融点重合体の周りにその高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した複合型フィラメントを用いることや、長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径を3〜17μmとすることも、表面平均粗さ2〜9μmの長繊維不織布を得る上で好ましい方法である。
本発明において長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの原料については、分離膜支持体に適した長繊維不織布を得ることができれば特に限定されない。例えば、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等、なんら限定されるところではないが、より機械的強度、耐熱性、耐水性、耐薬品性等の耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができることから、ポリエステル系重合体であることが好ましい。本発明で用いられるポリエステル系重合体とは、酸成分とアルコール成分からなるポリエステルであり、酸性分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などを用いることができ、また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。ポリエステル系重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂等が挙げられ、またこれらの樹脂の共重合体も挙げられる。
また、用済み後に分離膜支持体を廃棄する際、廃棄が容易であり環境負荷が小さいことから、生分解性樹脂も長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの原料として好ましく用いられる。本発明で用いられる生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂等が挙げられ、なかでも、石油資源を枯渇させない植物由来の樹脂であり、力学特性や耐熱性も比較的高く、製造コストの低い生分解性樹脂として近年脚光を浴びている、でんぷんの発酵で得られる乳酸を原料としたポリ乳酸樹脂は、不織布を構成する繊維の原料として好ましく用いられる。本発明で用いられるポリ乳酸樹脂としては、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体が好ましいものである。
なお、本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤や艶消し剤、滑剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤等を添加してもよい。特に長繊維不織布の熱圧着成形の際、熱伝導性を増すことで長繊維不織布の接着性を向上させる効果がある酸化チタン等の金属酸化物や、熱圧着ロールとウエブ間の離型性を増すことで接着安定性を向上させる効果があるエチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミド、および/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを添加することが好ましい。これら各種の添加剤は、熱可塑性連続フィラメント中に存在させてもよいし、その表面に存在させてもよい。
本発明において、長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントは、単一成分からなる熱可塑性連続フィラメントでも、複数成分からなる複合型熱可塑性連続フィラメントでもかまわないが、本発明の分離膜支持体においては、高融点重合体の周りに、該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した、複合型熱可塑性連続フィラメントから構成される長繊維不織布からなることが好ましい。高融点重合体の周りに、該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配することにより、熱圧着により長繊維不織布を形成し分離膜支持体として使用した際、不織布を構成するフィラメント同士が強固に接着するため、毛羽立ちによる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、このような複合型熱可塑性連続フィラメントを用いることにより、不織布を構成するフィラメント同士が強固に接着することに加え、混繊型に比べその接着点の数も多くなるため、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量も0.03mm以下にコントロールすることができ、分離膜支持体、特に使用時に高い圧力がかけられる半透膜支持体として用いた際の寸法安定性、耐久性につながる。高融点重合体と低融点重合体の融点差が10℃以上であれば、所望の熱接着性を得ることができ、140℃以下であれば、熱圧着時に熱圧着ロールに低融点重合体成分が融着し生産性が低下することを抑制することができる。該高融点重合体と該低融点重合体の融点差のより好ましい範囲は20〜120℃であり、さらに好ましい範囲は、30〜100℃である。なお、この場合の高融点および低融点重合体の組み合わせ(高融点重合体/低融点重合体)についても、分離膜支持体に適した長繊維不織布を得ることができればなんら限定されるところではないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリ乳酸樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂/共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂等の組み合わせが挙げられ、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂の共重合成分としては、イソフタル酸等が好ましく用いられる。
また、本発明の分離膜支持体において、高融点重合体の周りに、該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した、複合型熱可塑性連続フィラメントから構成される長繊維不織布からなる場合の該高融点重合体の融点は、本発明の分離膜支持体上に分離膜を形成した際に製膜性が良好であり耐久性に優れる分離膜を得ることができればなんら限定されるところではないが、160〜320℃の範囲であることが好ましい。高融点重合体の融点が160℃以上であれば、長繊維不織布を形成し分離膜支持体として使用した際、分離膜または流体分離素子製造時に熱が加わる工程を通過したとしても形態安定性に優れ、320℃以下であれば、長繊維不織布製造時に溶融するための熱エネルギーを多大に消費し生産性が低下することを抑制することができる。該高融点重合体の融点のより好ましい範囲は170〜300℃であり、さらに好ましい範囲は180〜280℃である。
複合型熱可塑性連続フィラメントにおける低融点重合体の占める割合については、分離膜支持体に適した長繊維不織布を得ることができればなんら限定されるところではないが、10〜70wt%であることが好ましく、15〜60wt%であることがより好ましく、20〜50wt%であることがさらに好ましい。低融点重合体の占める割合が10wt%以上であれば、所望の熱接着性を得ることができ、70wt%以下であれば、熱圧着時に熱圧着ロールに低融点重合体成分が融着し生産性が低下することを抑制することができる。
複合型熱可塑性連続フィラメントの複合形態については、分離膜支持体に適した長繊維不織布を得ることができればなんら限定されるところではないが、例えば同心芯鞘型、偏心芯鞘型、海島型等が挙げられ、さらにそのフィラメント断面形状としては、円形断面、扁平断面、多角形断面、多葉断面、中空断面等が挙げられる。なかでも熱圧着により、フィラメント同士を強固に接着させることができ、さらには得られる分離膜支持体の厚さを低減し、流体分離素子としたときのユニットあたりの分離膜面積を増大させられることから、複合形態については同心芯鞘型を、フィラメント形状としては円形断面や扁平断面を用いることが好ましい。
本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布において、熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径は3〜17μm(ポリエチレンテレフタレート繊維の密度1.38g/cmで換算すると平均繊度0.1〜3.0dtex)であることが好ましく、5〜15μm(0.3〜2.5dtex)であることがより好ましく、7〜14μm(0.5〜2.0dtex)であることがさらに好ましい。長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径が3μm以上(繊度が0.1dtex以上)であれば、長繊維不織布製造時に紡糸性が低下することが少なく、また分離膜支持体の通気性を維持できるため高分子溶液流延時の膜剥離等が少なく良好な製膜性を得ることができる。一方、該長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径が17μm以下(繊度が3.0dtex以下)であれば、均一性に優れた長繊維不織布および分離膜支持体を得ることができ、また分離膜支持体を高密度化できるため高分子溶液流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができる。
本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布は、目付が20〜150g/mであることが好ましく、30〜120g/mであることがより好ましく、40〜90g/mであることがさらに好ましい。該分離膜支持体を構成する長繊維不織布の目付が、20g/m以上であれば、高分子溶液流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性が得やすくなり、機械的強度、耐久性にも優れた分離膜が得やすくなる。一方、分離膜支持体の目付が、150g/m以下であれば、分離膜の厚さを低減し、流体分離素子ユニットあたりの分離膜面積を増大させやすくなる。
本発明の分離膜支持体の製造方法については、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布であって、充填密度が0.4〜0.8、通気量が0.2〜30.0cc/cm/secであり、さらに低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることを特徴とする分離膜支持体を得ることができればなんら限定されるところではないが、スパンボンド法やメルトブロー法、およびそれら長繊維不織布の積層による方法が好ましく用いられる。
スパンボンド法の場合は、溶融した熱可塑性重合体をノズルから押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸して紡糸した後、移動コンベア上に繊維を捕集してウエブとし、さらに連続的に熱圧着、絡合等を施すことにより一体化して製造することができるが、構成する繊維をより高度に配向結晶化させるため、紡糸速度は2000m/分以上であることが好ましく、3000m/分以上であることがより好ましく、4000m/分以上であることがさらに好ましい。熱可塑性連続フィラメントを芯鞘型等の複合形態する場合は、通常の複合方法を採用することができる。
メルトブロー法の場合は、溶融した熱可塑性重合体に加熱高速ガス流体を吹き当てることにより該熱可塑性重合体を引き伸ばして極細繊維化し、捕集して製造することができる。
さらに、分離膜を形成した際に製膜性が良好であり、機械的強度、耐久性に優れる分離膜を得るために、毛羽立ちを抑制する点で、好ましくはスパンボンド法等で得られた長繊維不織布を、熱圧着によりシート状に一体化させることが好ましく、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量も0.03mm以下にコントロールしやすくなることから、上下1対のフラットロールにより熱圧着し一体化することがより好ましい。フラットロールとは、ロールの表面に凹凸のないロールのことであり、金属製ロールや弾性ロールを採用することができる。
弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールの材質としては、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂および硬質ゴム等の樹脂製ロール等が挙げられる。
1対のフラットロールの組み合わせとしては、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。また長繊維不織布表面の繊維の融着を抑え、形態を保持することで、分離膜支持体として使用した際に分離膜の剥離を抑制する投錨効果を得られることから、1対のフラットロールのロール間に温度差をつけることも好ましい方法である。特に、長繊維不織布を加熱した金属製ロールと非加熱の弾性ロールにより熱圧着する方式を上記投錨効果の点から好ましく採用することができる。
加熱するフラットロールの温度としては、長繊維不織布を構成する熱可塑性フィラメントの少なくとも表面を構成する重合体の融点よりも80〜20℃低いことが好ましく、60〜30℃低いことがより好ましい。
また、1対のフラットロールのうちもう一方(低温側の)フラットロールの温度としては、高温側のフラットロールの温度よりも40〜120℃低い温度とすることが好ましい。低温側のフラットロールと高温側のフラットロールとの温度差を40℃以上、より好ましくは60℃以上とすることで、長繊維不織布の表面に極端な高密度部分が生じることを抑制でき、高分子重合体溶液の流延時の浸透不足による膜剥離等が少なく、良好な製膜性を得ることができる。一方、低温側のフラットロールと高温側のフラットロールとの温度差を120℃以下、より好ましくは100℃以下とすることで、積層長繊維不織布の層間剥離を抑制でき、また、高分子重合体溶液の流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができる。
また、上下それぞれのロールの加工中の温度は、加工開始時の温度を中心に±15℃以下の範囲であることが好ましく、±10℃以下の範囲であることがより好ましく、±5℃以下の範囲であることがさらに好ましい。非加熱の弾性ロールの温度は、一般的に厳密に制御することは困難であるが、加工前に加熱した金属製ロールと接触させた状態で予備運転を行ったり、加工中に弾性ロールの温度が高くなりすぎる場合は、エアブロー、シャワーリング、冷却ロールとの接触などを行ったり、逆に低くなりすぎる場合は、赤外線ヒーターによる加熱、ロール内部の熱媒循環、加熱ロールとの接触などを行ったりすることで、制御することができる。
フラットロールの線圧としては、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量も0.03mm以下にコントロールしやすくなることから、20〜500kg/cmが好ましい。フラットロールの線圧を20kg/cm以上、より好ましくは50kg/cm以上、さらに好ましくは100kg/cm以上とすることで、長繊維不織布の層間剥離を抑制でき、また、高分子重合体溶液の流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができる。一方、フラットロールの線圧を500kg/cm以下とすることで、長繊維不織布の表面に極端な高密度部分が生じることを抑制でき、高分子重合体溶液の流延時の浸透不足による膜剥離等が少なく、良好な製膜性を得ることができる。
また、1対のフラットロールによる熱圧着は、1対のフラットロールにより、または1本のフラットロールおよびウエブの捕集に用いる捕集コンベアにより仮接着状態の長繊維不織布を得た後に、連続で、あるいは一旦巻き取った後に、さらにもう1度フラットロールで熱圧着するような2段階圧着方式を採用することが好ましい。そうすることで、より精密に長繊維不織布の特性をコントロールすることができる。また、積層長繊維不織布の場合も、1段階目の熱圧着により各層の表面に高密度な表層を形成し、2段階目の熱圧着により積層体を形成することで、積層界面に高密度層を形成し、高分子重合体溶液の流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができる。
2段階圧着方式での1段階目の熱圧着においては、2段階目の熱圧着時に不織布をより高密度化できることから、該仮接着の状態の不織布の充填密度を0.1〜0.3とすることが好ましく、その際の熱ロールの温度は長繊維不織布を構成する繊維(またはその低融点部分)の融点よりも140〜20℃低く、線圧は5〜80kg/cmであることが好ましい。
1段階目の熱圧着におけるフラットロールの温度と熱可塑性連続フィラメント(またはその低融点部分)との融点の差を140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下とすることで、長繊維不織布の表面側および/または裏面側に高密度層を形成させることができる。一方、20℃以上、より好ましくは40℃以上とすることで、長繊維不織布の表面側および/または裏面側の融着が過度に進み一体化が困難になるのを防ぐことができる。
また、1段階目の熱圧着における線圧を5kg/cm以上、より好ましくは10kg/cm以上とすることで、長繊維不織布の表面側および/または裏面側に高密度層を形成させることができる。一方、80kg/cm以下、より好ましくは70kg/cm以下、さらに好ましくは60kg/cm以下とすることで、長繊維不織布の表面側および/または裏面側の融着が過度に進み一体化が困難になるのを防ぐことができる。
本発明の分離膜支持体を構成する長繊維不織布は、既述のように、単一層からなる長繊維不織布であっても良いが、より均一性に優れた分離膜支持体を得ることができることから、複数の長繊維不織布層からなる積層体も好ましい形態である。積層体の製造方法については、例えば、2層のスパンボンド不織布からなる積層体の製造方法としては、上記2段階接着方式により、1対のフラットロールで得た仮接着状態のスパンボンド不織布を2層重ね合わせた後、再度フラットロールで熱圧着する方法が好ましく用いることができる。また、2層のスパンボンド不織布の層間にメルトブロー不織布を配した3層構造の積層体の製造方法としては、上記2段階接着方式により、1対のフラットロールで得た仮接着状態のスパンボンド不織布2層の間に、別ラインで製造したメルトブロー不織布を挟むように重ね合わせた後、それを再度フラットロールで熱圧着する方法や、一連の捕集コンベア上部に配されたスパンボンド用ノズル、メルトブロー用ノズル、スパンボンド用ノズルからそれぞれ押し出され、繊維化されたウエブを順に捕集、積層し、熱圧着する方法が好ましく用いることができる。さらには、一連の捕集コンベア上部に配されたスパンボンド用ノズル、メルトブロー用ノズル、スパンボンド用ノズルからそれぞれ押し出され、繊維化されたウエブを順に捕集、積層し、該積層ウエブを、捕集コンベア上に設置された熱ロールと該コンベア間で熱圧着し仮接着状態のシートを製造し、連続工程で、あるいは一旦巻き取った後に、1対のフラットロールで熱圧着する方法も好ましく用いることができる。
本発明の分離膜とは、上記の分離膜支持体の上に、分離機能を有する膜を形成してなる分離膜であり、例として、精密ろ過膜、限外ろ過膜や、ナノろ過膜、逆浸透膜等の半透膜が挙げられる。その製造方法としては、上記の分離膜支持体の少なくとも片方の表面上に、高分子溶液を流延して分離機能を有する膜を形成させ分離膜とする方法が好ましい。また、分離膜が半透膜の場合は、分離機能を有する膜を支持層と半透膜層を含む複合膜とすることも好ましい形態である(この場合、支持層は分離機能を有していなくてもかまわない。)。
分離膜支持体に流延する高分子溶液は、膜となったときに分離機能を有するものであればなんら限定されるところではないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、酢酸セルロースなどの溶液が好ましく用いられ、なかでも特に、化学的、機械的、熱的安定性の点でポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンの溶液がより好ましく用いられる。溶媒は、膜形成物質に応じて、適宜選定することができる。また、分離膜が支持層と半透膜層を含む複合膜の場合の半透膜として、多官能酸ハロゲン化物と多官能アミンとの重縮合などによって得られる架橋ポリアミド膜などが好ましく用いることができる。
本発明の流体分離素子とは、取り扱いを容易にするため上記の分離膜を筐体に納めた流体分離素子であり、その形態についてはなんら限定されるところではないが、平膜のプレートフレーム型、プリーツ型、スパイラル型等が挙げられ、なかでも特に、分離膜が透過液流路材と供給液流路材と共に集水管の周りにスパイラル状に巻き付けられた、スパイラル型が好ましく用いられる。そして、複数の流体分離素子を直列あるいは並列に接続して分離膜ユニットとすることができる。
以下、実施例に基づき本発明につき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、前記した分離膜支持体、該分離膜支持体を構成する長繊維不織布、および該長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの各特性値、および下記実施例における各特性値は、次の方法で測定したものである。
(1)融点(℃)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。また示差走査型熱量計において融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が完全に溶融した温度を融点とした。
(2)固有粘度IV
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度IVは以下の方法で測定した。
オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを下記式により求めた。
η=η/η=(t×d)/(t×d
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η:オルソクロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
:オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
:オルソクロロフェノールの密度(g/cm
ついで、相対粘度ηから下記式、
IV=0.0242η+0.2634
により固有粘度IVを算出した。
(3)平均繊維径(μm)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
(4)平均繊度(dtex)
上記で得られた平均繊維径から平均繊度を次式により算出して求めた。
平均繊度(dtex)=(d×D×π/4)×10−8
ここに、d:密度(g/cm
D:数平均による単繊維直径(nm)
尚、本実施例における繊維の密度は、ポリエチレンテレフタレート樹脂および共重合ポリエステル樹脂については1.38g/cm、ポリブチレンテレフタレート樹脂については1.32g/cm、ポリ乳酸樹脂については1.27g/mをそれぞれ用いた。
(5)目付(g/m
30cm×50cmの不織布を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
(6)厚さ(mm)
A.通常荷重時
JIS L 1906:2000 5.1に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向1mあたり等間隔に10点を0.01mm単位で測定、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
B.低荷重時
直径16mmの加圧子を使用し、荷重2kPaで、30cm×50cmの不織布において任意の15点について0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
C.高荷重時
直径16mmの加圧子を使用し、荷重200kPaで、3030cm×50cmの不織布において任意の15点について0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
(7)充填密度
上記(5)、(6)A.でそれぞれ求めた目付(g/m)、通常荷重時の厚さ(mm)、およびポリマー密度から、下記式を用いて算出し、小数点以下第二位を四捨五入した。
充填密度=目付(g/m)÷厚さ(mm)÷10÷ポリマー密度(g/cm) 。
(8)通気量(cc/cm/sec)
JIS L 1906:2000 4.8(1)フラジール形法に基づいて、気圧計の圧力125Paで、30cm×50cmの不織布において任意の45点について測定した。ただし、その平均値は小数点以下第二位を四捨五入した。
(9)低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量(mm)
上記(6)B.で求めた低荷重時の厚さ(mm)から、上記(5)C.で求めた高荷重時の厚さ(mm)を差し引いた値を、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量とした。
(10)表面平均粗さ(μm)
JIS B 0601:1994 3.1に記載の定義に基づきRa(算術平均粗さ)を求めた。測定は株式会社小坂研究所製のサーフコーダSE−40Cを用いて、カットオフ値2.5mm、評価長さ12.5mm、送り速さ0.5mm/sの条件で、30cm×50cmの不織布の、不織布長さ方向を評価長さ方向とした場合(タテ)、および不織布幅方向を評価長さ方向とした場合(ヨコ)についてそれぞれ表裏各10点、合計40点の測定を行い、その平均値を有効数字一桁となるよう四捨五入した値を表面平均粗さ(μm)とした。
(10)製膜時キャスト液裏抜け性
ガラス板上に固定した各分離膜支持体に、ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ社製の“Udel”(登録商標)−P3500)の15重量%ジメチルホルムアミド溶液(キャスト液)を50μmの厚みで、室温(20℃)でキャストし、ただちに純水中に室温(20℃)で浸漬して、5分間放置することによってポリスルホン製の海水淡水化用分離膜を作製した。
次に、作製した逆浸透膜の裏面を目視で観察し、キャスト液の裏抜け性について以下の5段階で評価し、評価点が4点以上のものを合格とした。
5点:キャスト液の裏抜けが全く見られない。
4点:キャスト液の裏抜けが殆ど見られない(裏抜け部の面積比率5%未満)。
3点:キャスト液の裏抜けが見られる(裏抜け部の面積比率5〜50%)。
2点:大部分でキャスト液の裏抜けが見られる(裏抜け部の面積比率51〜80%)。
1点:ほぼ全面でキャスト液の裏抜けが見られる。
(11)分離膜落ち込み量(μm)
メッシュ状織物からなる供給液流路材、上記の海水淡水化用逆浸透膜、耐圧シート、および透過液流路材(溝幅200μm、溝深さ150μm、溝密度40本/2.54cm、厚さ200μmのポリエステル製シングルトリコット)を用い、有効膜面積40mのスパイラル型の流体分離素子(エレメント)を作製した。
次に、作製した流体分離素子について、逆浸透圧が7MPaで、海水塩分濃度が3wt%で、運転温度が40℃の各条件で耐久性試験を実施し、1000時間運転後に流体分離素子を解体し、分離膜の透過液流路材への落ち込み量を測定した。落ち込み量は、1つの流体分離素子における任意の3点の分離膜断面について、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し測定し(単位:μm)、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入して求めた。分離膜支持体と透過液流路材の重ね合わせる方向は、透過液流路材の溝方向に対し、分離膜支持体の不織布長さ方向(不織布方向タテ)が直交する場合、不織布幅方向(不織布方向ヨコ)が直交する場合それぞれについて試験を実施した。
(実施例1)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のスチール製フラットロールでフラットロール表面温度190℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの平均繊維径11μm(単繊維繊度1.3dtex)、目付80g/m、厚さ0.11mmのスパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.5、通気量は2.0cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは4μmであった。
(実施例2)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4500m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のスチール製フラットロールで温度140℃、線圧50kg/cmで熱セットし、構成フィラメントの平均繊維径10μm(単繊維繊度1.2dtex)、目付70g/m、厚さ0.25mmのスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布を、ともに表面がフラットである1対のスチール製ロールを用い、上側ロールの温度を170℃、下側ロールの温度を70℃にそれぞれ加熱し、線圧170kg/cm、加工速度10m/minで接着加工を行い、スパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.6、通気量は1.2cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは5μmであった。
(実施例3)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4500m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のフラットロールで温度140℃、線圧50kg/cmで熱セットし、構成フィラメントの平均繊維径10μm(単繊維繊度1.2dtex)、目付35g/m、厚さ0.15mmのスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布を2枚重ね合わせ、上側がスチール製ロール、下側がウレタン系樹脂製ロールの1対のフラットロールを用い、上側のスチール製ロールのみを温度170℃に加熱し、樹脂製ロールを表面温度100℃に安定させたところで、線圧170kg/cm、加工速度20m/minで接着加工を行い、積層スパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.5、通気量は2.2cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは4μmであった。
(実施例4)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した共重合成分としてイソフタル酸を10モル%含有し、融点が211℃であるポリブチレンテレフタレート樹脂を、それぞれ295℃と260℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を鞘成分とし、口金温度295℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4500m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のフラットロールでフラットロール表面温度130℃、線圧50kg/cmで熱セットし、構成フィラメントの平均繊維径12μm(単繊維繊度1.5dtex)、目付30g/m、厚さ0.13mmのスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布を2枚重ね合わせ、上側がスチール製ロール、下側がウレタン系樹脂製ロールの1対のフラットロールを用い、上側のスチール製ロールのみを温度160℃に加熱し、樹脂製ロールを表面温度90℃に安定させたところで、線圧180kg/cm、加工速度25m/minで接着加工を行い、積層スパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.4、通気量は4.0cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは5μmであった。
(実施例5)
水分率を50ppm以下に乾燥した量平均分子量が15万でQ値(Mw/Mn)が1.51、融点が168℃であるポリ(L−乳酸)樹脂を、230℃で溶融し、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のスチール製フラットロールで温度150℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの平均繊維径11μm(単繊維繊度1.1dtex)、目付60g/m、厚さ0.09mmのスパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.5、通気量は2.5cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは4μmであった。
(実施例6)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=70:30の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4000m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のスチール製フラットロールで温度140℃、線圧50kg/cmで熱セットし、構成フィラメントの平均繊維径16μm(単繊維繊度2.8dtex)、目付100g/m、厚さ0.38mmのスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布を、ともに表面がフラットである1対のスチール製ロールを用い、上側ロールの温度を170℃、下側ロールの温度を70℃にそれぞれ加熱し、線圧170kg/cm、加工速度10m/minで接着加工を行い、スパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.4、通気量は11.0cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.02mm、表面平均粗さは7μmであった。
Figure 2009090279
Figure 2009090279
得られた不織布の特性は、表1,2に示したとおりであるが、実施例1〜6の分離膜支持体は、いずれも製膜時キャスト液裏抜け性は4点以上であり、また剥離、膜の不均一化、ピンホール欠点等はいずれもなく、製膜性は良好であった。また実施例1〜6の分離膜支持体はいずれも充填密度が0.4〜0.8、かつ通気量が0.2〜30.0cc/cm/sec、かつ低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであり、機械的強度に優れるものであり、またいずれも分離膜落込み量が50μm以下であり、耐久性に優れるものであった。
(比較例1)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(円形断面)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、圧着面積率25%、彫刻深さ0.3mm、彫刻ピッチ2.0mmのスチール製糸目柄エンボスロールとスチール製フラットロールで温度170℃、線圧50kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの平均繊維径13μm(単繊維繊度1.8dtex)、目付100g/m、厚さ0.27mmのスパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.3、通気量は20.8cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.05mm、表面平均粗さは13μmであった。
(比較例2)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.60、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を、295℃で溶融し、口金温度300℃で細孔より紡出した後、1600m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。続いて、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール系延伸機を用いて延伸倍率3.0倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、繊度2.8dtex、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られた繊維を水槽の中で分散させ、次いで繊維と水の混合溶液をメッシュのドラムを用いて、このドラムを回転させつつ、繊維と水を分離し、湿式不織布を漉き上げた。これを2つのロールを用いて搾水し、次いで、150℃の表面温度のドラムドライヤーの表面で乾燥を行い、さらに、上下1対のスチール製フラットロールで温度180℃、線圧100kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの平均繊維径16μm(単繊維繊度2.8dtex)、目付95g/m、厚さ0.18mmの湿式短繊維不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.4、通気量は7.9cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.04mm、表面平均粗さは6μmであった。
(比較例3)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=60:40の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3500m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のスチール製フラットロールでフラットロール表面温度210℃、線圧70kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの平均繊維径10μm(単繊維繊度1.1dtex)、目付110g/m、厚さ0.09mmのスパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.9、通気量は0.0cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.00mm、表面平均粗さは3μmであった。
(比較例4)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のスチール製フラットロールでフラットロール表面温度190℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの平均繊維径13μm(単繊維繊度1.8dtex)、目付40g/m、厚さ0.05mmのスパンボンド不織布を製造し、分離膜支持体を得た。得られた分離膜支持体の充填密度は0.6、通気量は32.8cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは5μmであった。
得られた分離膜支持体の特性は、表1に示したとおりであるが、比較例1、2および4の分離膜支持体は、分離膜支持体の裏側平面まで達するキャスト液の裏抜けが見られ、製膜時キャスト液裏抜け性が4点未満であった。一方、比較例3の分離膜支持体は、ポリスルホン製の分離膜を形成したところ、支持体表面での膜剥離が見られ、製膜性に劣るものであった。また比較例2の分離膜支持体は、分離膜表面から分離膜支持体繊維が飛び出した状態となる膜欠点も見られた。さらに比較例1および2の分離膜支持体は低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量がそれぞれ0.05、0.04mmと大きく、機械的強度に劣るものであり、また分離膜落込み量が50μmを超えており、耐久性に劣るものであった。

Claims (6)

  1. 熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布であって、充填密度が0.4〜0.8、通気量が0.2〜30.0cc/cm/secであり、さらに低荷重時(加圧子直径16mm、荷重2kPa)に対する高荷重時(加圧子直径16mm、荷重200kPa)の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることを特徴とする分離膜支持体。
  2. 表面平均粗さが2〜9μmであることを特徴とする請求項1に記載の分離膜支持体。
  3. 前記熱可塑性連続フィラメントが、ポリエステル系重合体よりなることを特徴とする請求項1または2に記載の分離膜支持体。
  4. 前記熱可塑性連続フィラメントの平均繊維径が3〜17μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜支持体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜支持体の表面上に、分離機能を有する膜を形成してなることを特徴とする分離膜。
  6. 請求項5に記載の分離膜を含むことを特徴とする流体分離素子。
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