JP5135955B2 - 耐圧シートおよびそれを用いた流体分離素子 - Google Patents
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(1)分離膜と流路材から構成される流体分離素子において分離膜と流路材の間に挿入して用いられる耐圧シートであって、前記耐圧シートは、融点230℃以上のポリエステル系重合体からなる熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなり、かつ前記熱可塑性連続フィラメントが高融点重合体の周りに、該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した複合型フィラメントであることを特徴とする耐圧シート。
長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントは、本発明の耐圧シートにおいては、高融点重合体の周りに該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した複合型熱可塑性連続フィラメントから構成される長繊維不織布からなる。高融点重合体の周りに、該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配することにより、熱圧着により長繊維不織布を形成し耐圧シートとして使用した際、不織布を構成するフィラメント同士が強固に接着することに加え、混繊型に比べその接着点の数も多くなるため、耐圧シートとして用いた際の高い機械的強度につながる。該高融点重合体と該低融点重合体の融点差のより好ましい範囲は20〜120℃であり、さらに好ましい範囲は、30〜100℃である。
複合型熱可塑性連続フィラメントの複合形態については、優れた機械的強度を有する耐圧シートを得ることができればなんら限定されるところではないが、例えば同心芯鞘型、偏心芯鞘型、海島型等が挙げられ、さらにそのフィラメント断面形状としては、円形断面、扁平断面、多角形断面、多葉断面、中空断面等が挙げられる。なかでも熱圧着により、フィラメント同士を強固に接着させることができ、さらには得られる耐圧シートの厚さを低減し、流体分離素子としたときのユニットあたりの分離膜面積を増大させられることから、複合形態については同心芯鞘型を、フィラメント形状としては円形断面や扁平断面を用いることが好ましい。
本発明において長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの原料については、優れた機械的強度を有する耐圧シートを得ることができれば特に限定されない。例えば、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等、なんら限定されるところではないが、より機械的強度、耐熱性、耐水性、耐薬品性等の耐久性と、製造面でのコストに優れた耐圧シートを得ることができることから、ポリエステル系重合体であることが好ましい。本発明で用いられるポリエステル系重合体とは、酸成分とアルコール成分からなるポリエステルであり、酸性分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などを用いることができ、また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。ポリエステル系重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂等が挙げられ、またこれらの樹脂の共重合体も挙げられる。また、高融点重合体の周りに該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した複合型熱可塑性連続フィラメントとする場合の高融点および低融点重合体の組み合わせ(高融点重合体/低融点重合体)についても、優れた機械的強度を有する耐圧シートを得ることができればなんら限定されるところではないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂/ポリ乳酸樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂/共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂等の組み合わせが挙げられ、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂の共重合成分としては、イソフタル酸等が好ましく用いられる。
さらに、用済み後に耐圧シートを廃棄する際、廃棄が容易であり環境負荷が小さいことから、生分解性樹脂も長繊維不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの原料として好ましく用いられる。本発明で用いられる生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂等が挙げられ、なかでも、石油資源を枯渇させない植物由来の樹脂であり、力学特性や耐熱性も比較的高く、製造コストの低い生分解性樹脂として近年脚光を浴びている、でんぷんの発酵で得られる乳酸を原料としたポリ乳酸樹脂は、不織布を構成する繊維の原料として好ましく用いられる。本発明で用いられるポリ乳酸樹脂としては、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体が好ましいものである。
本発明の耐圧シートと、分離膜や流路材の積層方法についても、なんら限定されるところではないが、所定の大きさに裁断した流路材の上に、所定の大きさに裁断した耐圧シートを重ね合わせた後、2枚の分離膜の間に組み込む方法などが好ましく用いられる。
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。また示差走査型熱量計において融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が完全に溶融した温度を融点とした。
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度IVは以下の方法で測定した。
オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下記式により求めた。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η0:オルソクロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm3)
t0:オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
d0:オルソクロロフェノールの密度(g/cm3)
ついで、相対粘度ηrから下記式、
IV=0.0242ηr+0.2634
により固有粘度IVを算出した。
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値を、ポリマーの密度で補正し、小数点以下第二位を四捨五入して求めた。
30cm×50cmの不織布を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
JIS L 1906(2000年版)の5.1に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向1mあたり等間隔に10点を0.01mm単位で測定、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
JIS L 1906(2000年版)の5.3.1に基づいて、5cm×30cmのサンプルについて、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で、縦方向および横方向それぞれ5点の測定を実施し、得られた強伸度曲線から5%伸長時の強力を読み取り、少数点以下第1位を四捨五入した値を縦方向(MD)と横方向(CD)の5%伸長時応力とした。
上記(6)で測定した縦方向(MD)と横方向(CD)の5%伸長時応力それぞれを、上記(5)で測定した厚さで除し、小数点以下第1位を四捨五入した値をそれぞれ縦方向(MD)と横方向(CD)の単位厚さ当たりの5%伸長時応力とした。
メッシュ状織物からなる供給液流路材、海水淡水化用逆浸透膜、耐圧シート、透過液流路材を用い、有効膜面積40m2のスパイラル型の流体分離素子(エレメント)を作製した。ここで透過液流路材には、溝幅200μm、溝深さ150μm、溝密度40本/インチ、厚さ200μmのポリエステル製シングルトリコットを用いた。作製した流体分離素子について、逆浸透圧7MPa、海水塩分濃度3wt%、運転温度40℃の各条件で耐久性試験を実施し、1000時間運転後に流体分離素子を解体し、分離膜の透過液流路材への落ち込み量を測定した。落ち込み量は、1つの流体分離素子における任意の3点の分離膜断面について、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入して求めた。なお、耐圧シートと透過液流路材の重ね合わせる方向は、透過液流路材の溝方向に対し、耐圧シートの不織布長さ方向が直交する場合(不織布方向タテ)、不織布幅方向が直交する場合(不織布方向ヨコ)それぞれについて試験を実施した。
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率10モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4500m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のフラットロールでフラットロール表面温度190℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの単繊維繊度が1.2dtex、目付80g/m2、厚さ0.10mmのスパンボンド不織布を製造し、耐圧シートを得た。得られた耐圧シートの単位厚さ当たりの5%伸長時応力は、MD:2500N/5cm・mm、CD:1350N/5cm・mmであった。また、得られた耐圧シートを用いて作製した流体分離素子における分離膜落ち込み量は不織布方向タテ:25μm、不織布方向ヨコ:32μmであった。
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率10モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=85:15の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のフラットロールでフラットロール表面温度190℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの単繊維繊度が1.3dtex、目付50g/m2、厚さ0.08mmのスパンボンド不織布を製造し、耐圧シートを得た。得られた耐圧シートの単位厚さ当たりの5%伸長時応力は、MD:1675N/5cm・mm、CD:863N/5cm・mmであった。また、得られた耐圧シートを用いて作製した流体分離素子における分離膜落ち込み量は不織布方向タテ:32μm、不織布方向ヨコ:38μmであった。
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂を、口金温度300℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4500m/分で紡糸して円形断面フィラメントとし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のフラットロールでフラットロール表面温度230℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの単繊維繊度が1.5dtex、目付30g/m2、厚さ0.06mmのスパンボンド不織布を製造し、耐圧シートを得た。得られた耐圧シートの単位厚さ当たりの5%伸長時応力は、MD:1167N/5cm・mm、CD:683N/5cm・mmであった。また、得られた耐圧シートを用いて作製した流体分離素子における分離膜落ち込み量は不織布方向タテ:40μm、不織布方向ヨコ:46μmであった。
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3wt%含むポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率10モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2wt%含む共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4500m/分で紡糸して同心芯鞘型フィラメント(断面円形)とし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集した繊維ウエブを、上下1対のフラットロールでフラットロール表面温度140℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、構成フィラメントの単繊維繊度が1.2dtex、目付35g/m2、厚さ0.15mmのスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布を2枚重ね合わせ、上側がスチールロール、下側が樹脂製ロールの1対のフラットロールを用い、上側のスチールロールのみを温度170℃に加熱し、線圧170kg/cmでさらに熱圧着し、目付70g/m2、厚さ0.10mmのスパンボンド不織布を製造し、耐圧シートを得た。得られた耐圧シートの単位厚さ当たりの5%伸長時応力は、MD:2200N/5cm、CD:1200N/5cmであった。また、得られた耐圧シートを用いて作製した流体分離素子における分離膜落ち込み量は不織布方向タテ:29μm、不織布方向ヨコ:35μmであった。
重量平均分子量が15万でQ値(Mw/Mn)が1.51、融点が168℃であるポリ(L−乳酸)樹脂を、230℃で溶融し、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して円形断面フィラメントとし、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。捕集したウエブを、上下1対のフラットロールでフラットロール表面温度150℃、線圧60kg/cmの条件で熱圧着し、構成フィラメントの単繊維繊度が1.1dtex、目付60g/m2、厚さ0.09mmのスパンボンド不織布を製造し、耐圧シートを得た。得られた耐圧シートの単位厚さ当たりの5%伸長時応力は、MD:1765N/5cm、CD:706N/5cmであった。また、得られた耐圧シートを用いて作製した流体分離素子における分離膜落ち込み量は不織布方向タテ:33μm、不織布方向ヨコ:41μmであった。
繊度が1.5dtex、長さが10mの延伸ポリエチレンテレフタレート短繊維と、繊度が2.5dtex、長さが10mmの延伸ポリエチレンテレフタレート短繊維と、繊度が1.8dtex、長さが5mmの未延伸ポリエチレンテレフタレート短繊維を、水中においてそれぞれ20:40:40の重量比率で混合した後、十分に分散し、繊維濃度0.05%の水性スラリーを調整した。これを円網抄紙機に送り、抄造後に温度120℃のヤンキードライヤーで乾燥して巻き取って、抄造ウエブを製造した。上記で得られた抄造ウエブを上側がスチールロール、下側がコットン製ロールの1対のフラットロールを用い、上側のスチールロールのみを温度130℃に加熱し、線圧130kg/cmで熱圧着し、目付50g/m2、厚さ0.09mmの抄紙不織布を製造し、耐圧シートを得た。得られた耐圧シートの単位厚さ当たりの5%伸長時応力は、MD:789N/5cm、CD:244N/5cmであった。また、得られた耐圧シートを用いて作製した流体分離素子における分離膜落ち込み量は不織布方向タテ:33μm、不織布方向ヨコ:54μmであった。
Claims (6)
- 分離膜と流路材から構成される流体分離素子において分離膜と流路材の間に挿入して用いられる耐圧シートであって、前記耐圧シートは、融点230℃以上のポリエステル系重合体からなる熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなり、かつ前記熱可塑性連続フィラメントが高融点重合体の周りに、該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した複合型フィラメントであることを特徴とする耐圧シート。
- 縦方向の単位厚さ当たりの5%伸長時応力が800〜3500N/5cm・mmであることを特徴とする請求項1に記載の耐圧シート。
- 横方向の単位厚さ当たりの5%伸長時応力が800〜1800N/5cm・mmであることを特徴とする請求項1または2記載の耐圧シート。
- 前記熱可塑性連続フィラメントの繊度が、0.1〜3.0dtexであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐圧シート。
- 目付が20〜150g/m2、厚さが0.03〜0.20mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐圧シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の耐圧シートを含むことを特徴とする流体分離素子。
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