JP5811532B2 - 分離膜支持体およびその製造方法、分離膜シートならびに膜分離エレメント - Google Patents

分離膜支持体およびその製造方法、分離膜シートならびに膜分離エレメント Download PDF

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Description

本発明は、不織布からなる、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜および逆浸透膜等の分離膜を支持するための分離膜支持体とその製造方法、分離膜シートならびに膜分離エレメントに関するものである。
近年の水処理には、多くの場合において膜技術が適用されている。例えば、浄水場での水処理には、精密ろ過膜や限外ろ過膜が用いられており、海水の淡水化には、逆浸透膜が用いられている。また、半導体製造用水、ボイラー用水、医療用水およびラボ用純水等の処理には、逆浸透膜やナノろ過膜が用いられている。さらに、下廃水の処理には、精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた膜分離活性汚泥法も適用されている。
これらの分離膜は、その形状から平膜と中空糸膜に大別され、主に合成重合体から形成される平膜は、分離機能を有する膜単体では機械的強度に劣るため、一般に不織布や織布等の支持体と固着一体化して使用されることが多い。支持体としては、中でも不織布が、製織工程を経ずにシート状物を得られることから、コスト上優れている。
分離膜と支持体は、支持体上に分離膜の原料となる高分子溶液を流延し、固着させる方法により一体化されることが多いが、高分子溶液が支持体内部まで十分に浸透することにより分離膜と支持体が強固に接着することができる一方、高分子溶液が過剰に浸透して支持体裏面まで達すると、製膜装置を汚して後に製造される分離膜の欠点の原因となったり、膜分離エレメントの製造時に支持板等への貼付を行う場合は支持板との接着強度が不足し膜分離エレメントの耐久性が劣ったりするなど、分離膜支持体は優れた製膜性を有することが重要であった。
また、分離膜が高圧下で使用されることが多い逆浸透膜等の半透膜の場合は、支持体には分離膜の耐久性向上のために高い機械的強度が要求され、また、膜分離活性汚泥法に適用される下廃水処理用の分離膜においても、使用中に砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が膜面に激しく衝突したりするので、支持体はそのような衝撃にも十分に耐えられる高い機械的強度を備えていることが重要であった。
従来、このような分離膜支持体として、太い繊維を使用した目開きおよび表面粗度の大きな表面層と、細い繊維を使用した目開きが小で緻密な構造を有する裏面層との二重構造を基本とした多層構造体の不織布よりなることを特徴とする分離膜支持体や(特許文献1参照)、少なくとも、製膜側の表面層が、円形断面繊維よりも繊維比表面積の大きい異形断面繊維を主体とする繊維からなることを特徴とする分離膜支持体が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、これらの分離膜支持体は強度についてなんら記載がなく、十分な強度が得られないという問題があった。
また、このような高い機械的強度を有する分離膜支持体として、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなり、該長繊維不織布の横方向への引張強度が50〜900N/5cmであり、且つ該長繊維不織布の引張強度縦横比が1.0〜2.7であることを特徴とする分離膜支持体が知られている(特許文献3参照)。
しかしながら、これらの従来の分離膜支持体は、優れた製膜性や高い機械的強度を有するに留まり、分離対象物質の阻止率や透水係数などの分離膜の性能を高めるような機能は有していなかった。
特公平4−21526号公報 特開平11−347383号公報 特開2009−131840号公報
本発明は、不織布からなり、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜および逆浸透膜等の分離膜を支持する際の優れた製膜性および高い機械的強度を有し、さらには分離膜の性能向上に寄与する分離膜支持体とその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、その表面上に、高分子溶液を流延して、水を主成分とする凝固液に浸漬し固着させることにより分離機能を有する膜を形成させる分離膜支持体であって、親水剤が付与されてなる親水性を有する不織布からなることを特徴とする分離膜支持体である。
また本発明は、本発明の表面上に高分子溶液を流延して、水を主成分とする凝固液に浸漬し固着させることにより分離機能を有する膜を形成させる分離膜支持体を製造する方法であって、不織布を熱圧着する工程と親水剤を付与する工程とを含み、不織布を熱圧着した後に親水剤を付与することを特徴とする分離膜支持体の製造方法である。
また本発明は、本発明の分離膜支持体の表面上に、分離機能を有する膜を形成してなることを特徴とする分離膜シートである。
また本発明は、本発明の分離膜シートを含むことを特徴とする膜分離エレメントである。
本発明により、不織布からなり、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜および逆浸透膜等の分離膜を支持する際に優れた製膜性および高い機械的強度を有し、さらには分離膜の性能を高めることができる分離膜支持体を得ることが可能となる。
本発明の分離膜支持体は、不織布からなる。本発明において不織布を構成する繊維のポリマーとしては例えば、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等を挙げることができる。なかでもポリエステル系重合体が、より機械的強度や、耐熱性、耐水性および耐薬品性等の耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができることから好ましい。
ポリエステル系重合体は、酸成分とアルコール成分からなるポリエステルである。酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸およびフタル酸などの芳香族カルボン酸、アジピン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、およびシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などを用いることができる。また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールなどを用いることができる。
ポリエステル系重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸およびポリブチレンサクシネート等、またこれらの共重合体を挙げることができる。
また、生分解性ポリマーも、用済み後の廃棄が容易であり環境負荷が小さいことから、不織布を構成する繊維のポリマーとして好ましい。生分解性樹脂としては例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸およびポリヒドロキシブチレート等が挙げられる。なかでもポリ乳酸は、石油資源を枯渇させない植物由来の樹脂であり、力学特性や耐熱性も比較的高く、製造コストの低い生分解性樹脂であり好ましい。本発明で用いられるポリ乳酸としては、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、あるいはこれらのブレンド体が好ましい。
また、本発明の分離膜支持体を構成する不織布を構成する繊維は、単一成分からなる繊維でも、複数成分からなる複合型繊維でも、複数種の繊維を混合したいわゆる混繊型でもよいが、本発明の分離膜支持体においては、高融点重合体の周りに当該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合型繊維が好ましい。かかる複合型繊維を用いることにより、熱圧着により不織布における繊維同士が強固に接着するため、不織布を分離膜支持体として使用した際、毛羽立ちによる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、高融点重合体のみからなる繊維と低融点重合体のみからなる繊維を混合した混繊型に比べ、接着点の数も多くなるため、分離膜支持体として用いた際の機械的強度の向上につながる。高融点重合体と低融点重合体の融点差としては10〜140℃が好ましい。融点差を10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上とすることで、機械的強度の向上に資する熱接着性を得ることができる。一方、融点差を140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下とすることで、熱ロールを用いた熱圧着時に該ロールに低融点重合体成分が融着して生産性が低下することを抑制することができる。
高融点重合体の融点としては、本発明の分離膜支持体上に分離膜を形成する際の製膜性が良好であり耐久性に優れる分離膜を得ることができる点から、160〜320℃が好ましい。高融点重合体の融点を160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上とすることで、分離膜または膜分離エレメント製造時に熱が加わる工程を通過しても形態安定性に優れる。一方、320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下とすることで、不織布製造時に溶融するための熱エネルギーを多大に消費し生産性が低下することを抑制することができる。
また、低融点重合体の融点としては、120℃以上が好ましく、より好ましくは140℃以上である。
また、高融点重合体および低融点重合体の組み合わせ(高融点重合体/低融点重合体)としては例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリ乳酸、およびポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。またここに共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては、イソフタル酸等が好ましい。
複合型繊維における低融点重合体の占める割合については、分離膜支持体に適した不織布を得る点から10〜70質量%が好ましい。低融点重合体の占める割合を10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上とすることで、分離膜支持体としての使用に堪える熱接着性を得ることができる。一方、70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とすることで、熱ロールによる熱圧着時に当該ロールに低融点重合体成分が融着し生産性が低下することを抑制することができる。
不織布には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤、艶消し剤、滑剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤および難燃剤等の添加剤を添加してもよい。なかでも、酸化チタン等の金属酸化物は不織布の熱ロールによる熱圧着成形の際、熱伝導性を増すことで不織布の接着性を向上させる効果があり好ましく、またエチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミド、および/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドは熱ロールとウエブ間の離型性を増すことで接着安定性を向上させる効果があり好ましい。
複合型繊維の複合形態としては、効率的に繊維同士の熱接着点を得られる点から、例えば同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型等を挙げることができる。
また不織布を構成する繊維の断面形状としては、円形断面、扁平断面、多角形断面、多葉断面および中空断面等を挙げることができる。
なかでも、複合形態としては同心芯鞘型を、繊維断面形状としては円形断面や扁平断面とすることが、熱圧着により繊維同士を強固に接着させることができ、さらには得られる分離膜支持体の厚さを低減し、膜分離エレメントとしたときの省スペース化が図れることから好ましい。
不織布を構成する繊維の平均繊維径としては、3〜30μmであることが好ましい。繊維の平均繊維径を3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上とすることで、不織布製造時に紡糸性が低下することが少なく、また不織布の過度な高密度化を抑制することができる。一方、繊維の平均繊維径を30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下とすることで、均一性に優れた不織布および分離膜支持体を得ることができ、また不織布の過度な低密度化を抑制することができる。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布としては、スパンボンド法によって製造したスパンボンド不織布が好ましい。スパンボンド不織布は機械的強度により優れていて、分離膜支持体としての使用における製膜性が良好であり、耐久性に優れる分離膜シートを得ることもできるからである。
また、本発明の分離膜支持体を複数の不織布層からなる積層体とすることも、より均一性に優れた分離膜支持体を得ることができ、さらに支持体の厚さ方向の密度分布の調整も容易にできることから好ましい。積層体の態様としては例えば、2層のスパンボンド不織布の積層体や、2層のスパンボンド不織布の層間にメルトブロー不織布を配した3層構造の積層体等を挙げることができ、少なくとも1層はスパンボンド不織布であることが好ましく、スパンボンド不織布のみからなることがより好ましい。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布の目付としては、20〜300g/mが好ましい。目付を20g/m以上、より好ましくは30g/m以上、さらに好ましくは40g/m以上とすることで、高分子溶液流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができ、高い機械的強度を有し耐久性に優れた分離膜シートを得ることができる。一方、目付を300g/m以下、より好ましくは240g/m以下、さらに好ましくは180g/m以下とすることで、分離膜シートの厚さを低減し、膜分離エレメントとしたときの省スペース化を図ることができる。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布は、部分的熱圧着による高密度部分と、部分的熱圧着されていない低密度部分とを含むことが好ましい。部分的熱圧着による高密度部分を含むことにより、不織布の機械的強度が向上し、耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができる。ここで部分的熱圧着とは、一対の凹凸を有するロールや、凹凸を有するロールとフラットロールによる熱圧着のことであり、部分的熱圧着されていない部分とは、一対の凹凸を有するロールにより部分的熱圧着する場合はいずれの凸部にも触れない部分、すなわち凹部と凹部が重なる部分のことであり、凹凸を有するロールとフラットロールにより部分的熱圧着する場合は凹凸を有するロールの凸部に触れない部分のことを言う。また、部分的熱圧着の前後でフラットロールにより不織布全面を熱圧着する場合であっても、凹凸を有するロールによる部分的熱圧着の際に凸部に触れない部分は、部分的熱圧着されていない部分である。
また部分的熱圧着による高密度部分の繊維密度としては0.6〜1.0が好ましい。高密度部分の繊維密度を0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上とすることで、不織布の機械的強度が向上し、耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができる。
一方、部分的熱圧着されていない低密度部分を含むことにより、不織布に空隙が存在し、分離膜支持体として用いた際、製膜時に膜の原料となる高分子溶液が分離膜支持体内部に浸透することにより分離膜と分離膜支持体が強固に接着することができ、支持体内部の透水性も確保することができる。さらには、分離膜シートから膜分離エレメントを製造する工程において、膜分離エレメントとして使用した際に分離膜以外の部分で分離前後の液体が出入りしないように、分離膜支持体と支持板を接着したり、分離膜支持体の端部同士を接着したりする加工を施すことが多いが、その際にも接着物質が分離膜支持体の低密度部分に浸透することにより、強固に接着することができる。低密度部分の繊維密度としては、0.1〜0.5が好ましい。低密度部分の繊維密度を0.1以上、より好ましくは0.2以上とすることで、分離膜製膜時に工程部材等と接触した際に毛羽立ち膜欠点が生じるのを防ぐことができる。また低密度部分の繊維密度を0.5以下、より好ましくは0.4以下とすることで、分離膜製膜時に膜の原料となる高分子溶液が支持体内部に十分浸透し、膜と支持体が強固に接着することができ、支持体内部の透水性も確保することができる。
部分的熱圧着により形成された高密度部分の不織布に対する面積率としては10〜50%が好ましい。高密度部分の面積率を10%以上、より好ましくは12%以上、さらに好ましくは14%以上とすることで、不織布の機械的強度が向上し、耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができる。一方、面積率を50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下とすることで、分離膜製膜時に膜の原料となる高分子溶液が支持体内部に十分浸透し、分離膜と分離膜支持体が強固に接着することができ、支持体内部の透水性も確保することができる。
部分的熱圧着により形成された高密度部分の長軸/短軸比としては、1.0〜3.0が好ましい。長軸/短軸比を3.0以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下とすることで、不織布のいずれの方向に力が加わっても、変形が小さい、機械的強度に優れた分離膜支持体を得ることができる。高密度部分の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形等が好ましい。
部分的熱圧着により形成された高密度部分は、不織布の長さ方向と幅方向のいずれにも一定の間隔で存在していることが好ましい。該高密度部分が均一に点在することにより、不織布内の強度のばらつきを低減することができる。
部分的熱圧着により形成された高密度部分の大きさとしては、0.2〜5.0mmであることが好ましい。高密度部分の大きさを0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上とすることで、不織布の機械的強度が向上し、耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができる。一方、高密度部分の大きさを5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下とすることで、分離膜製膜時に膜の原料となる高分子溶液が支持体内部に十分浸透する部分としない部分の差が少なく、分離膜と分離膜支持体が強固に接着することができる。
部分的熱圧着により形成された高密度部分の個数密度としては5〜50個/cmが好ましい。高密度部分の個数密度を5個/cm以上、より好ましくは10個/cm以上、さらに好ましくは15個/cm以上とすることで、不織布の機械的強度が向上し、耐久性に優れた分離膜支持体を得ることができる。一方、高密度部分の個数密度を50個/cm以下、より好ましくは45個/cm以下、さらに好ましくは40個/cm以下とすることで、分離膜製膜時に膜の原料となる高分子溶液が支持体内部に十分浸透し、分離膜と分離膜支持体が強固に接着することができ、透水性も確保することができる。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布の厚さとしては0.05〜0.50mmが好ましい。不織布の厚さを0.05mm以上、より好ましくは0.10mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上とすることで、高分子溶液流延時の過浸透等が少なく良好な製膜性を得ることができ、高い機械的強度を有し耐久性に優れた分離膜シートを得ることができる。一方、不織布の厚さを0.50mm以下、より好ましくは0.45mm以下、さらに好ましくは0.40mm以下とすることで、分離膜シートの厚さを低減し、膜分離エレメントとしたときの省スペース化を図ることができる。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布の引張強力としては250〜800N/5cmが好ましく、より好ましくは300〜750N/5cm、さらに好ましくは350〜700N/5cmである。また、本発明の分離膜支持体を構成する不織布の引張伸度としては15〜50%が好ましく、より好ましくは18〜45%、さらに好ましくは20〜40%である。
また本発明の分離膜支持体を構成する不織布の強伸度積としては400〜1000N/5cmが好ましい。ここで、強伸度積とは、次式で算出される値である。
強伸度積[N/5cm]=引張強力[N/5cm]×(1+引張伸度[%]/100)
不織布の強伸度積を400N/5cm以上、より好ましくは450N/5cm以上、さらに好ましくは500N/5cm以上とすることで、膜分離エレメントとしたとき、ろ過装置運転中の曝気操作や圧力変動などにより瞬間的にかかる力で破損するのを抑えることができる。一方、不織布の強伸度積を1000N/5cm以下、より好ましくは950N/5cm以下、さらに好ましくは900N/5cm以下とすることで、不織布の風合いが硬くなることによって起こる支持板との接着部分からの液体の漏れや、分離膜の変形を抑制することができる。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布の5%伸長時応力としては100〜500N/5cmが好ましい。不織布の5%伸張時応力を100N/5cm以上、より好ましくは150N/5cm以上、さらに好ましくは200N/5cm以上とすることで、膜分離エレメントとしたとき、ろ過装置運転中にかかる膜面に対し垂直方向の圧力による変形を抑えることができる。一方、不織布の5%伸張時応力を500N/5cm以下、より好ましくは450N/5cm以下、さらに好ましくは400N/5cm以下とすることで、不織布の風合いが硬くなることによって起こる支持板との接着部分からの液体の漏れを抑制することができる。
本発明の分離膜支持体は、その表面上に分離機能を有する膜を形成させる分離膜支持体である。
本発明の分離膜支持体は、構成する不織布が親水性を有することが重要である。分離膜支持体として親水性を有する不織布を用いることにより、高い透水性を有する分離膜を得ることができる。そのメカニズムとしては、次のようなことを推測している。すなわち、分離膜と支持体は、支持体上に分離膜の原料となる高分子溶液を流延し、固着させる方法により一体化されることが多いが、高分子溶液を固着させるにあたっては、流延させた高分子溶液を支持体ごと、水を主成分とする凝固液に浸漬し固着させる方法が広く用いられている。このとき、分離膜支持体として本発明の態様、すなわち親水性を有する不織布を用いることにより、高分子溶液を流延させた反対側の面からも効率良く凝固液が支持体内部へ浸透し、支持体側からも高分子溶液の凝固、すなわち分離膜の形成が速やかに進行する。このことにより、膜中の微細孔径が小さくなりすぎず適正な大きさで形成できるものと考える。また、支持体内部へ浸透する高分子溶液の量を抑制できるため、分離膜として用いた際に透過する水の抵抗となる支持体内部の膜物質の量を抑えることにより、高い透水性を有する分離膜が得られるものと考える。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布の吸水時間としては0〜10秒が好ましい。不織布の吸水時間を10秒以下、より好ましくは7秒以下、さらに好ましくは5秒以下とすることで、分離膜製造時に水を主成分とする凝固液が分離膜支持体内部に速やかに浸透し、支持体上に流延した高分子溶液を凝固させ、形成した分離膜の透水性を向上させることができる。
本発明の分離膜支持体の上に形成する分離膜は、分離機能を有する膜を形成してなる分離膜であり、例として、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜および逆浸透膜等の半透膜が挙げられる。特に本発明の分離膜支持体は、前述のように推測されるメカニズムにより適正な孔径の微細孔の形成に資すると考えられることから、分離機能を有する膜のみからなる精密ろ過膜や限外ろ過膜に好ましく用いることができる。
次に、本発明の分離膜支持体の製造方法について説明する。
不織布を構成する繊維として芯鞘型等の複合型繊維とする場合は、通常の複合方法を採用することができる。
不織布を製造する方法として、スパンボンド法の場合は、溶融した熱可塑性重合体をノズルから押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸して紡糸した後、移動コンベア上に繊維を捕集してウエブとし、さらに連続的に熱圧着等を施すことにより一体化して、長繊維不織布を製造することができる。その際、構成する繊維をより高度に配向結晶化させるため、紡糸速度としては2000m/分以上が好ましく、より好ましくは3000m/分以上、さらに好ましくは4000m/分以上である。
メルトブロー法の場合は、溶融した熱可塑性重合体に加熱高速ガス流体を吹き当てることにより該熱可塑性重合体を引き伸ばして極細繊維化し、捕集して長繊維不織布を製造することができる。
また、短繊維不織布であれば長繊維をカットして短繊維とし、乾式法や湿式法により不織布とする方法が好ましく用いられる。
また前述した積層体の製造方法としては例えば、2層の不織布からなる積層体の製造方法としては、1対のロールで得た仮接着状態の不織布を2層重ね合わせた後、部分的熱圧着により一体化する方法が好ましく用いることができる。また、2層のスパンボンド不織布の層間にメルトブロー不織布を配した3層構造の積層体の製造方法としては、1対のロールで得た仮接着状態のスパンボンド不織布2層の間に、別ラインで製造したメルトブロー不織布を挟むように重ね合わせた後、部分的熱圧着により一体化する方法や、一連の捕集コンベア上部に配されたスパンボンド用ノズル、メルトブロー用ノズル、スパンボンド用ノズルからそれぞれ押し出され、繊維化されたウエブを順に捕集、積層し、熱圧着する方法を好ましく用いることができる。
不織布の部分的熱圧着は、一対の凹凸を有するロールや、凹凸を有するロールとフラットロールとの組み合わせを用いて施すことができる。
部分的熱圧着の際のロールの温度は、不織布を構成する繊維の融点より20〜90℃低いことが好ましく、30〜70℃低いことがより好ましい。また、高融点重合体の周りに低融点重合体を配した複合型繊維の場合、ロールの温度は当該低融点重合体の融点よりも20〜90℃低いことが好ましく、30〜70℃低いことがより好ましい。また、ロールの線圧は196〜784N/cmが好ましく、より好ましくは294〜686N/cmである。
また、部分的熱圧着の方法として、凹凸を有するロールと超音波振動子を用いた、いわゆる超音波接着法も用いることができる。
さらに、不織布の、部分的熱圧着されていない低密度部分の繊維密度を制御するために、部分的熱圧着により一体化された不織布を、連続で、あるいは一度巻き取った後に、一対のフラットロールで全体を熱圧着するような2段階熱圧着方式も好ましく用いることができる。このとき、不織布を構成する繊維の表面を構成する重合体の融点とフラットロールの温度Tの差を70〜150℃とすることが好ましく、より好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは90〜130℃である。また、フラットロールの線圧は196〜1960N/cmとすることが好ましく、より好ましくは294〜1568N/cm、さらに好ましくは392〜1176N/cmである。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布への親水性の付与は、ポリマーが親水性でない場合は、親水剤を付与することにより行うことができる。親水剤としては、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸アミドスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等の陰イオン界面活性剤や、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイソキノリウム塩、ベンゼトニウム塩等のカチオン界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエーテルポリエステルブロック共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤や、アルキルジエチレントリアミン酢酸、アルキルカルボキシベタイン、アルキルジメチルベタイン、アルキルメチルアミノカルボン酸塩等の両性イオン界面活性剤などを挙げることができる。
本発明の分離膜支持体を構成する不織布に親水剤を付与する方法としては、繊維の原料となる樹脂に親水剤を添加する方法、繊維に親水剤を付与する方法および不織布ウエブに親水剤を付与する方法などを採用することができる。なかでも不織布を熱圧着した後に親水剤を付与する方法が、熱圧着する前の不織布や繊維に親水剤を付与したときに比べ、熱圧着時に繊維同士をより強固に接着することができることから好ましい。
不織布を熱圧着した後に親水剤を付与する方法としては、スプレーコーティング法、グラビアロールやキスロールを用いたロールコーティング法、含浸法等を用いることができる。なかでも含浸法が、不織布内部まで親水剤を付与しやすいことから好ましい。
親水剤を付与する際には、親水剤を水に希釈した水溶液の状態で付与する方法が、より均一に付与できることから好ましい。この場合、不織布に水分が残存していると、製膜時に水分の存在する部分で膜の原料となる高分子溶液の凝固が起こり製膜が不均一になるので、乾燥により不織布に付着した水分を除去する必要がある。このとき、一対のフラットロールで熱圧着する場合のフラットロールの温度Tと乾燥温度Tの差T−Tとしては5〜40℃が好ましい。T−Tを5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上とすることで、フラットロールを用いた熱圧着により制御した繊維密度が変化することが少ない。一方、T−Tを40℃以下、より好ましくは35℃以下、さらに好ましくは30℃以下とすることで、短い乾燥時間で十分に水分を除去することができる。
本発明の分離膜シートとは、本発明の分離膜支持体の表面上に、分離機能を有する膜を形成してなる分離膜シートであり、本発明の分離膜支持体に分離膜を形成し分離膜シートを製造する方法としては、分離膜支持体の少なくとも片方の表面上に、高分子溶液を流延して分離機能を有する膜を形成させ分離膜とする方法が好ましく用いられる。分離膜支持体に流延する高分子溶液は、膜となったときに分離機能を有するものであり、ポリスルホンやポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、および酢酸セルロースなどの溶液が好ましく用いられる。なかでも、化学的、機械的および熱的安定性の点でポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンおよびポリフッ化ビニリデンの溶液がより好ましく用いられる。溶媒は、膜形成物質に応じて、適宜選定することができる。また、分離膜が支持層と半透膜層を含む複合膜の場合の半透膜として、多官能酸ハロゲン化物と多官能アミンとの重縮合などによって得られる架橋ポリアミド膜などを好ましく用いることができる。
本発明の膜分離エレメントは、取り扱いを容易にするため上記の分離膜シートが流路材などと一体となった膜分離エレメントであり、その形態としては、例えば、平膜のプレートフレーム型、プリーツ型およびスパイラル型等が挙げられる。なかでも、分離膜を形成した側の面を外側にした2枚の分離膜シートで流路材を挟み込み一体化された、平膜のプレートフレーム型が好ましく用いられる。そして、複数の膜分離エレメントを、直列あるいは並列に接続して分離膜ユニットとすることができる。
[測定方法]
(1)融点(℃)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。また、示差走査型熱量計において融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が完全に溶融した温度を融点とした。
(2)固有粘度IV
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度IVは、次の方法で測定した。オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを、下記式により求めた。
η=η/η=(t×d)/(t×d
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η:オルソクロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
:オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
:オルソクロロフェノールの密度(g/cm
ついで、相対粘度ηから下記式、
IV=0.0242η+0.2634
により固有粘度IVを算出した。
(3)平均繊維径(μm)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
(4)不織布の目付(g/m
30cm×50cmの不織布を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
(5)不織布の高密度部分と低密度部分の厚さ(mm)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で断面を50〜300倍の写真を撮影し、各サンプルについて高密度部分と低密度部分の厚さをそれぞれ測定し、それらの平均値を、小数点以下第三位を四捨五入して、高密度部分と低密度部分の厚さを求めた。ここで高密度部分の厚さとしては、熱圧着された部分の中でも最も厚さが小さい箇所を、また低密度部分の厚さとしては、熱圧着されていない部分の中でも最も厚さが大きい箇所をそれぞれ測定した。
(6)不織布の繊維密度(−)
上記(4)と(5)でそれぞれ求めた目付(g/m)、厚さ(mm)、およびポリマー密度から、下記式を用いて算出し、小数点以下第二位を四捨五入した。
繊維密度=目付(g/m)÷厚さ(mm)÷10÷ポリマー密度(g/cm)。
ポリエチレンテレフタレート樹脂と共重合ポリエステル樹脂のポリマー密度はともに1.38g/cmとして計算した。
(7)不織布の引張強力(N/5cm)と引張伸度(%)
JIS L 1913(2010年版)の6.3.1に基づいて、5cm×30cmの不織布サンプルについて、つかみ間隔が20cmで、引張速度10cm/minの条件で、縦方向および横方向それぞれ5点について強力と伸度を測定し、破断したときの強力と伸度を読み取り、少数点以下第一位を四捨五入した値を縦方向と横方向の引張強力と引張伸度とし、縦方向と横方向の平均値の小数点以下第一位を四捨五入した値を、それぞれ不織布の引張強力と引張伸度とした。
(8)不織布の強伸度積(N/5cm)
上記(7)で測定した不織布の引張強力と引張伸度から、次式で強伸度積を算出し、小数点以下第一位を四捨五入した値を不織布の強伸度積とした。
強伸度積[N/5cm]=引張強力[N/5cm]×(1+引張伸度[%]/100)。
(9)不織布の5%伸長時応力(N/5cm)
JIS L 1913(2010年版)の6.3.1に基づいて測定した。5cm×30cmの不織布サンプルについて、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で、縦方向および横方向それぞれ5点の測定を実施した。得られた強伸度曲線から5%伸長時の強力を読み取り、少数点以下第一位を四捨五入した値を縦方向と横方向の5%伸長時応力とし、縦方向と横方向の平均値の小数点以下第一位を四捨五入した値を不織布の5%伸張時応力とした。
(10)不織布の吸水時間(秒)
20cm×20cmの不織布を5個採取して、採取した試料を直径15cm×高さ1cmの保持枠に固定した。固定した試料の上方に、試料表面からの距離が1cmになるようにビュレットの先端を設置し、ビュレットから水を1滴滴下した。水滴が試料表面に達したときから、試料が水滴を吸収するにつれ鏡面反射が消え、湿潤だけが残った状態になるまでの時間を、ストップウォッチを用い1秒単位で測定した。5個の各試料の時間をそれぞれ測定し、得られた値の平均値の小数点以下第二位を四捨五入した値を、不織布の吸水時間とした。
(11)分離膜の膜透水係数(×10−9(m/s)/Pa)
作製した分離膜を用い、直径5cmの円形に切り出し、円筒型のろ過ホルダーにセットし、蒸留水を25℃で、水頭高さ1m(水圧9800Pa相当)に保った状態で5分間予備透過させた後、続けて水頭高さ1mに保った状態で透過させて透過水を3分間採水して単位時間・単位面積当たりの透過量を求め、透過面にかかる水圧で除して1Pa当たりの純水透過係数を求めた。
(12)分離膜のポリスチレンラテックス微粒子阻止率(%)
作製した分離膜を、攪拌式セル(アドバンテック(株)製VHP−43K)にセットし、評価圧力9.8kPa、攪拌速度600rpmにて、逆浸透膜(東レ(株)製SUL−G10)によるろ過水に平均粒径0.09μm以下の微粒子としてポリスチレンラテックス微粒子(セラディン(株)製 公称孔径0.083μm)を20ppmの濃度になるように分散させてなる評価原液をろ過し、評価原液と得られたろ過透過液とについて、波長250nmの紫外線の吸光度を分光光度計(日立製作所製 U−3200)で測定し、次式によって微粒子阻止率を求めた。
微粒子阻止率=[(原水の吸光度−透過液の吸光度)/原液の吸光度]×100。
[実施例1]
(芯成分)
固有粘度IV0.65、融点260℃、酸化チタンの含有量0.3質量%のポリエチレンテレフタレート樹脂を水分率50ppm以下に乾燥したものを芯成分として用いた。
(鞘成分)
固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%、融点230℃、酸化チタンの含有量0.2質量%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を水分率50ppm以下に乾燥したものを鞘成分として用いた。
(紡糸・繊維ウエブ捕集)
上記の芯成分および鞘成分をそれぞれ295℃と270℃の温度で溶融し、口金温度300℃、芯/鞘の重量比率80/20で同心芯鞘型(断面円形)に複合して細孔から紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4400m/分で紡糸して、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。
(熱圧着)
捕集した繊維ウエブを、上ロールとして真円形の凸部が千鳥格子模様に均一に配列された金属製の凹凸ロールと、下ロールとしてフラットロールとの間に通し、上下のロール表面温度170℃、線圧588N/cmで部分的熱圧着した。さらに、部分的熱圧着したシートを、連続して一対のフラットロール間に通し、上下のロール表面温度120℃、線圧686N/cmで全面熱圧着し、繊維径13μm、目付110g/mで、直径0.8mmの円形状の凹部を32個/cmの個数密度で有するスパンボンド不織布を得た。
(親水化処理)
得られたスパンボンド不織布を、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを0.2質量%含有する親水剤水溶液に含浸し、マングルロールで加圧脱水した後に温度110℃の熱風乾燥機で72秒間乾燥し、不織布からなる分離膜支持体を得た。
(分離膜形成)
ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業社製KF#850)17質量%、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン8質量%、N,N−ジメチルホルムアミド72質量%、および水3質量%を混合し、95℃の温度下において十分攪拌し、製膜原液を得た。得られた製膜原液を30℃の温度に冷却した後、分離膜支持体に250g/mを塗布し、塗布後、直ちに20℃の温度の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の温度の熱水に2分間浸漬して、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドと開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を形成して分離膜シートとした。
[実施例2]
親水化処理において親水剤水溶液のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの濃度を0.02質量%とした他は実施例1と同様にして、分離膜支持体を得て、当該分離膜支持体に実施例1と同様にして分離膜を形成して分離膜シートとした。
[実施例3]
親水化処理において熱風乾燥機の温度を130℃とし、乾燥時間を54秒とした他は実施例1と同様にして、分離膜支持体を得て、当該分離膜支持体に実施例1と同様にして分離膜を形成して分離膜シートとした。
[実施例4]
(芯成分)
実施例1で用いたのと同様のポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分として用いた。
(鞘成分)
実施例1で用いたのと同様の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を鞘成分として用いた。
(紡糸・繊維ウエブ捕集)
上記の芯成分および鞘成分を用い、実施例1と同様にして紡糸および繊維ウエブの捕集を行った。
(親水化処理)
捕集した繊維ウエブに、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを5.0質量%含有する親水剤水溶液をウエブ上部からスプレーコーティングした。
(熱圧着)
上記親水化処理後に、繊維ウエブに対して実施例1と同様にして部分的熱圧着および全面熱圧着し、繊維径13μm、目付110g/mで、直径0.8mmの円形状の凹部を32個/cmの個数密度で有するスパンボンド不織布を得て、これを分離膜支持体とした。
(分離膜形成)
上記分離膜支持体に実施例1と同様にして分離膜を形成して分離膜シートとした。
[実施例5]
(混合繊維ウエブ)
いずれもポリエチレンテレフタレートからなり、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを繊維に対し0.2質量%の付着率であらかじめ付着させた、繊維径10μm、繊維長38mmの延伸繊維20質量%と、繊維径17μm、繊維長64mmの延伸繊維30質量%と、繊維径22μm、繊維長38mmの未延伸繊維50質量%を混綿し、カード機で混合繊維ウエブを作製した。
(短繊維不織布)
上記混合繊維ウエブを、連続して一対のフラットロール間に通し、ロール表面温度180℃、線圧1176N/cmで全面熱圧着し、目付110g/mの短繊維不織布を得て、これを分離膜支持体とした。
(分離膜形成)
上記分離膜支持体に実施例1と同様にして分離膜を形成して分離膜シートとした。
実施例1〜5のいずれも、製膜性は良好であり、膜透水係数は50×10−9(m/s)/Pa以上であった。
[比較例1]
親水化処理を施さなかった以外は実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得て、これを分離膜支持体とし、当該分離膜支持体に実施例1と同様にして分離膜を形成して分離膜シートとした。
比較例1において、膜透水係数は50×10−9(m/s)/Pa未満であった。
Figure 0005811532
Figure 0005811532

Claims (7)

  1. その表面上に、高分子溶液を流延して、水を主成分とする凝固液に浸漬し固着させることにより分離機能を有する膜を形成させる分離膜支持体であって、親水剤が付与されてなる親水性を有する不織布からなることを特徴とする分離膜支持体。
  2. 前記不織布の吸水時間が0〜10秒である、請求項1に記載の分離膜支持体。
  3. 前記不織布が熱可塑性連続フィラメントから構成されたスパンボンド不織布である、請求項1または2に記載の分離膜支持体。
  4. 精密ろ過膜または限外ろ過膜の支持体である、請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜支持体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の、表面上に、高分子溶液を流延して、水を主成分とする凝固液に浸漬し固着させることにより分離機能を有する膜を形成させる分離膜支持体を製造する方法であって、不織布を熱圧着する工程と親水剤を付与する工程とを含み、前記不織布を熱圧着した後に前記親水剤を付与することを特徴とする分離膜支持体の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜支持体の表面上に、分離機能を有する膜を形成してなることを特徴とする分離膜シート。
  7. 請求項6に記載の分離膜シートを含むことを特徴とする膜分離エレメント。
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