JP5798500B2 - 排ガス浄化用助触媒の製造方法 - Google Patents

排ガス浄化用助触媒の製造方法 Download PDF

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本発明は、排ガス浄化用助触媒及びその製造方法、より詳しくは酸素吸放出材を含む排ガス浄化用助触媒及びその製造方法に関する。
従来、自動車の排ガス浄化用触媒としては、排ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と窒素酸化物(NOx)の還元とを同時に行う三元触媒が用いられている。このような三元触媒の作用によってCO、HC及びNOxの3成分を同時かつ効率的に浄化するためには、自動車のエンジンに供給される空気と燃料の比率(空燃比A/F)を理論空燃比(ストイキ)近傍に制御することが重要である。しかしながら、実際の空燃比は、自動車の走行条件等によってストイキを中心にリッチ(燃料過剰雰囲気)側又はリーン(燃料希薄雰囲気)側に変動するため、排ガスの雰囲気も同様にリッチ側又はリーン側に変動する。したがって、三元触媒のみでは必ずしも高い浄化性能を確保することができない。そこで、排ガス中の酸素濃度の変動を吸収して三元触媒の排ガス浄化能力を高めるために、排ガス中の酸素濃度が高いときには酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低いときには酸素を放出する、いわゆる酸素吸放出能(OSC)を有するセリア(CeO2)等の酸素吸放出材を含む助触媒が排ガス浄化用触媒において用いられている。
特許文献1では、主組成がアルミナ(Al23)で構成され、且つ酸化セリウム(CeO2)が分散された多孔質酸化セリウム−アルミナ系クリオゲル触媒の製造方法であって、アルミナ源からベーマイトゾルを作製する工程(1)と、セリウムイオンに、水と、エチレングリコール、カテコール、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸のうちのいずれか1つであるキレート剤を加えて、セリウムイオンがキレート保護されたセリウム水溶液を作製する工程(2)と、前記セリウム水溶液を解こうした前記ベーマイトゾルに加え、ゲル化反応によりゲル化物を作製する工程(3)と、前記工程(3)で得られたゲル化物を凍結乾燥する工程(4)とから構成される多孔質酸化セリウム−アルミナ系クリオゲル触媒の製造方法が記載されている。
特許文献2では、酸化物が酸素吸蔵放出能をもつ第1金属元素の水溶性化合物と該第1金属元素とは異なる第2金属元素の水溶性化合物とが溶解された水溶液を有機溶媒及び分散剤と混合してW/O型エマルジョンを形成し、該W/O型エマルジョンを噴霧燃焼することを特徴とする複合酸化物粉末の製造方法が記載され、さらに、前記第1金属元素がCe、Pr、Eu及びTbから選ばれる少なくとも一種であり、前記第2金属元素がAl、Si及びTiから選ばれる少なくとも一種であることが記載されている。
特許文献3では、ゾル・ゲル法によって得られたセリウム及びアルミニウムの複合酸化物を、結晶化しない温度、例えば800〜1100℃において熱処理することにより得られた非晶質組成物からなる高温耐熱性触媒担体が記載されている。
特開2009−090199号公報 特開2002−248347号公報 特開平8−019738号公報
特許文献1では、上記の方法によれば、酸化セリウム(CeO2)が均一に高分散された多孔質酸化セリウム−アルミナ系(CeO2−Al23)クリオゲル触媒を得ることができるとともに、例えば、自動車排ガス浄化用触媒の助触媒として必要不可欠な、ガスとの相互作用を高く保ちつつ、より高い耐久性と酸素貯蔵能力を付与することができると記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、CeO2を高分散化するために、セリウムイオンとキレート剤のモル比率を厳密に制御し、さらにはベーマイトゾルの解こうプロセスにおいてpHを厳密に調整する必要があり、それゆえ工程が複雑である。
特許文献2では、上記の方法によれば、高温耐久時におけるCeO2等の第1金属酸化物粒子の粒成長が抑制されるので、単独酸化物としての酸素吸蔵放出能が失われず、高温耐久後も高い酸素吸蔵放出能を有する複合酸化物粉末が得られる旨が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法では、CeO2のサイズを原子レベルに制御することは困難であり、それゆえ特許文献2に記載の方法によって得られる複合酸化物粉末では、酸素吸放出能の向上に関して依然として改善の余地があった。
そこで、本発明は、酸素吸放出材を含む排ガス浄化用助触媒であって、その酸素吸放出能がより改善された排ガス浄化用助触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)セリアを該セリアとは異なる金属酸化物に担持してなる排ガス浄化用助触媒の製造方法であって、
セリウム及び該セリウムに配位した配位子を含むセリウム錯体と、該セリウム錯体を溶解するための有機溶媒と、前記金属酸化物とを含有する混合溶液を調製する工程、並びに
前記混合溶液を乾燥させ、得られた生成物を焼成する工程
を含み、前記セリウム錯体がCe3(OC(CH3310Oであることを特徴とする、排ガス浄化用助触媒の製造方法。
(2)前記セリアの平均粒径が5nm以下であることを特徴とする、上記(1)に記載の方法。
(3)前記金属酸化物が、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記金属酸化物がアルミナであることを特徴とする、上記(3)に記載の方法。
本発明の方法によれば、従来公知の方法によって得られた材料に比べて、より小さな平均粒径を有するセリア粒子が金属酸化物に担持された排ガス浄化用助触媒を得ることができ、その結果として、従来公知の方法によって得られた材料に比べて、顕著に改善された酸素吸放出能を有する排ガス浄化用助触媒、特にはより低い温度域から酸素吸放出能を示す排ガス浄化用助触媒を得ることができる。したがって、このような排ガス浄化用助触媒を、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般的に用いられている触媒金属、例えば、白金族元素等の触媒金属と組み合わせて使用した場合には、排ガス浄化性能が顕著に改善された排ガス浄化用触媒を得ることが可能である。
本発明の排ガス浄化用助触媒の製造方法を模式的に示す図である。 Al23を添加する前のセリウム3核錯体の黄色溶液及びAl23を添加した後の無色上澄み液に関するUV−Vis(紫外可視)吸収スペクトルを測定した結果を示す。 (a)及び(b)は、それぞれ実施例1及び比較例1の各排ガス浄化用助触媒に関するエネルギー分散型X線分析装置付走査透過型電子顕微鏡(STEM−EDX)による写真を示す。 評価用ガスの条件とCO2生成量の関係を示すグラフである。 実施例1並びに比較例1及び2の各排ガス浄化用助触媒に関する酸素吸放出能(OSC)を示すグラフである。
本発明の排ガス浄化用助触媒は、セリアを該セリアとは異なる金属酸化物に担持してなり、前記セリアの平均粒径が5nm以下であることを特徴としている。
セリア(CeO2)を含む酸素吸放出材では、一般に以下の式で表される反応によって酸素が吸放出される。
2CeO2 ⇔ Ce23 + O
上記の反応式からも明らかなように、CeO2から酸素が放出されると、CeO2中のCe4+イオンがCe3+イオンへと還元される。しかしながら、このようなCe4+イオンからCe3+イオンへの還元によるイオン半径の増大は結晶学的には極めて大きな変化であり、それゆえCeO2の結晶格子の歪みを引き起こして格子を不安定化させる。したがって、このような反応はエネルギー的には非常に不利な反応である。このため、セリアは、理論的には(0.5mol−O/mol−Ce)の酸素吸放出能を有するにもかかわらず、実際には、セリア粒子の表面部分等の一部の場所でしか酸素吸放出反応が進行せず、それゆえ上記の理論値に対して非常に低い酸素吸放出能しか示すことができない。
したがって、セリアの酸素吸放出能を改善するためには、セリア粒子をより小さな粒径を有する微粒子の状態で多孔質酸化物等からなる触媒担体上に高分散に存在させることが極めて重要となる。このようにすることで、より大きな粒径を有するセリア粒子の場合と比較して、Ceイオンのイオン半径の増大に伴う結晶格子の歪みを緩和することが可能となる。また、セリア粒子を微粒子の状態で存在させることで、セリア粒子の表面部分とバルク部分との間の距離が短くなるために、より大きな粒径を有するセリア粒子の場合と比較して、セリア粒子の結晶格子内にある酸素についても上記の酸素吸放出反応に寄与しやすくなると考えられる。したがって、このような微細なセリア粒子を備えた排ガス浄化用助触媒によれば、従来の材料に比べて、その酸素吸放出能を顕著に改善することが可能である。
本発明者らは、従来の方法とは全く異なる方法、具体的にはセリウム錯体を用いてそれを有機溶媒中で金属酸化物に担持、特には吸着担持させることで、より小さな平均粒径を有するセリア粒子が金属酸化物に担持された排ガス浄化用助触媒を得ることができ、結果として、従来公知の方法によって得られた材料に比べて、顕著に改善された酸素吸放出能を達成することができ、特にはより低い温度域から酸素吸放出能を発現させることができることを見出した。
本発明の排ガス浄化用助触媒によれば、金属酸化物上に担持されたセリアの平均粒径は5nm以下である。本発明におけるセリアの平均粒径が5nmよりも大きくなると、酸素吸放出反応においてセリア粒子の結晶格子内にある酸素を十分に利用できなくなる場合があり、結果として、排ガス浄化用助触媒について十分な酸素吸放出能を達成できない場合がある。なお、本発明において「平均粒径」とは、特に断りのない限り、電子顕微鏡を用いて複数個、好ましくは10個以上の粒子の直径を測定したときの算術平均値を言うものである。
本発明の排ガス浄化用助触媒によれば、セリアが担持される金属酸化物としては、セリアとは異なる金属酸化物であって、一般に触媒担体として用いられる任意の金属酸化物を使用することができる。このような触媒担体としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、シリカ−アルミナ(SiO2−Al23)、ゼオライト、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物を使用することができ、好ましくはアルミナ(Al23)を使用することができる。
本発明では、セリアを該セリアとは異なる金属酸化物に担持してなる排ガス浄化用助触媒の製造方法がさらに提供される。
具体的には、セリアを該セリアとは異なる金属酸化物に担持してなる排ガス浄化用助触媒は、セリウム及び該セリウムに配位した配位子を含むセリウム錯体と、該セリウム錯体を溶解するための有機溶媒と、前記金属酸化物とを含有する混合溶液を調製する工程、並びに前記混合溶液を乾燥させ、得られた生成物を焼成する工程を含むことを特徴とする方法によって製造することができる。
本発明の方法によれば、セリウム錯体としては、セリウム及び該セリウムに配位した配位子を含む任意のセリウム錯体を使用することができ、当該セリウム錯体は、錯体中に1個のセリウム原子のみを含む単核錯体であってもよいし、あるいはまた錯体中に2個以上のセリウム原子を含む多核錯体であってもよい。
なお、上記の配位子としては、配位部位を1箇所にのみ有する単座配位子又は2箇所以上で配位する多座配位子のいずれであってもよく特に限定されないが、例えば、アルコキシ配位子(R−CR12−O-)、カルボン酸配位子(R−COO-)、アミド配位子(R−NR1-)、アミン配位子(R−NR12)、イミン配位子(R−CR1=N−R2)、カルボニル配位子(R−CO−R1)、ホスフィン配位子(R−PR12)、ホスフィンオキシド配位子(R−P(=O)R12)、ホスファイト配位子(R−P(OR1)(OR2))、スルホン配位子(R−S(=O)21)、スルホキシド配位子(R−S+(−O-)R1)、スルフィド配位子(R−SR1)、及びチオラト配位子(R−CR12−S-)からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができ、好ましくはアルコキシ配位子(R−CR12−O-)を挙げることができる。なお、上記式中のRは、水素であるか又はヘテロ原子、エーテル結合若しくはエステル結合を有していてもよい置換若しくは非置換の炭化水素基、例えば、C1〜C30(すなわち炭素原子数が1〜30個、以下同様)、特にはC1〜C10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、一価の脂環式基であってよく、より特にはC1〜C5又はC1〜C3のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基であってもよい。
また、上記式中のR1及びR2は、それぞれ独立して、水素であるか又はヘテロ原子、エーテル結合若しくはエステル結合を有していてもよい置換若しくは非置換の炭化水素基、例えば、C1〜C30、特にはC1〜C10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、一価の脂環式基であってよく、より特にはC1〜C5又はC1〜C3のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基であってもよい。
具体的なアルコキシ配位子としては、メトキシ配位子、エトキシ配位子、プロポキシ配位子、ブトキシ配位子、ペントキシ配位子、ドデシルオキシ配位子、及びフェノキシ配位子を挙げることができる。特に、アルコキシ配位子が配位したセリウム錯体の具体例として、例えば、μ3−オキソ−μ3−tert−ブタノラト−トリ−μ−tert−ブタノラト−triangulo−トリス[ビス(tert−ブタノラト)セリウム(IV)](Ce3(OC(CH3310O)を挙げることができる。
具体的なカルボン酸配位子としては、ギ酸(ホルマト)配位子、酢酸(アセタト)配位子、プロピオン酸(プロピオナト)配位子、及びエチレンジアミン四酢酸配位子を挙げることができる。
具体的なアミド配位子としては、ジメチルアミド配位子、ジエチルアミド配位子、ジn−プロピルアミド配位子、ジイソプロピルアミド配位子、ジn−ブチルアミド配位子、ジt−ブチルアミド配位子、及びニコチンアミドを挙げることができる。
具体的なアミン配位子としては、メチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメチレンジアミン、ピペリジン、トリエチレンテトラミン、及びトリエチレンジアミンを挙げることができる。
具体的なイミン配位子としては、ジイミン、エチレンイミン、エチレンイミン、プロピレンイミン、ヘキサメチレンイミン、ベンゾフェノンイミン、メチルエチルケトンイミン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール、及びベンゾイミダゾールを挙げることができる。
具体的なカルボニル配位子としては、一酸化炭素、アセトン、べンゾフェノン、アセチルアセトン、アセナフトキノン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、及びジベンゾイルメタンを挙げることができる。
具体的なホスフィン配位子としては、水素化リン、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、及びジホスフィンを挙げることができる。
具体的なホスフィンオキシド配位子としては、トリブチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、及びトリ−n−オクチルホスフィンオキシドを挙げることができる。
具体的なホスファイト配位子としては、トリフェニルホスファイト、トリトリルホスファイト、トリブチルホスファイト、及びトリエチルホスファイトを挙げることができる。
具体的なスルホン配位子としては、硫化水素、ジメチルスルホン、及びジブチルスルホンを挙げることができる。
具体的なスルホキシド配位子としては、ジメチルスルホキシド配位子、及びジブチルスルホキシド配位子を挙げることができる。
具体的なスルフィド配位子としては、エチルスルフィド、及びブチルスルフィド等を挙げることができる。
具体的なチオラト配位子としては、メタンチオラト配位子、及びベンゼンチオラト配位子を挙げることができる。
本発明の方法によれば、金属酸化物としては、本発明の排ガス浄化用助触媒について説明したのと同様に、セリアとは異なる金属酸化物であって、一般に触媒担体として用いられる任意の金属酸化物を使用することができ、例えば、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、シリカ−アルミナ(SiO2−Al23)、ゼオライト、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物を使用することができ、好ましくはアルミナ(Al23)を使用することができる。
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明の方法では、セリウム錯体を含む溶液を金属酸化物と混合した際に、セリウム錯体が、セリウムに配位した上記の配位子又は当該配位子に結合した置換基を介して、金属酸化物の酸点及び/又は塩基点に吸着すると考えられ、したがって、その後、この混合溶液を乾燥させ、得られた生成物を焼成することで、セリアが金属酸化物全体に均一かつ高分散に担持された排ガス浄化用助触媒を得ることができると考えられる。それゆえ、本発明の方法においては、用いられる金属酸化物との親和性等を考慮して、セリウムに配位する配位子又は当該配位子の置換基を適切に選択することが好ましい。このようにセリウムに配位する配位子又は当該配位子の置換基を金属酸化物との関係で適切に選択することで、より確実にセリウム錯体を金属酸化物全体に均一かつ高分散に吸着担持することができ、その後、焼成等したときにセリア粒子を微粒子の状態、特には5nm以下の平均粒径を有する微粒子の状態で金属酸化物に担持することができると考えられる。なお、例えば、本発明の方法において、金属酸化物として比較的酸点の多いアルミナ、ゼオライト又はチタニア等を使用する場合には、よりアニオン性の配位子又は置換基を有するセリウム錯体を選択することが好ましい。
図1は、本発明の排ガス浄化用助触媒の製造方法を模式的に示す図である。図1を参照すると、セリウム錯体1として、例えば、3つのセリウム原子に10個のtert−ブトキシ配位子(図中、OtBuとして表される)が結合したセリウム3核錯体であるμ3−オキソ−μ3−tert−ブタノラト−トリ−μ−tert−ブタノラト−triangulo−トリス[ビス(tert−ブタノラト)セリウム(IV)](Ce3(OC(CH3310O)が用いられる。本発明の方法では、まず、このセリウム錯体1が有機溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)中に溶解され、次いでこの溶液が金属酸化物2であるアルミナ(Al23)に導入される。次に、この溶液を攪拌等により混合してセリウム錯体1を金属酸化物2全体に均一に吸着させる。最後に、この混合溶液を乾燥させ、得られた生成物を焼成することで、セリア(CeO2)3が微粒子の状態で金属酸化物2の全体に均一かつ高分散に担持された排ガス浄化用助触媒10を得ることができる。
本発明の方法によれば、セリウム錯体を溶解するための有機溶媒としては、セリウム錯体を溶解することができる任意の有機溶媒を使用することができる。しかしながら、本発明の方法では、先に説明したように、セリウム錯体の配位子又は当該配位子に結合した置換基と金属酸化物との間の弱い相互作用によってセリウム錯体が金属酸化物に吸着すると考えられる。それゆえ、本発明の方法における有機溶媒として極性の強い有機溶媒を使用すると、このような吸着が阻害される虞がある。したがって、本発明の方法における有機溶媒としては、より極性の低い有機溶媒、特には非極性の有機溶媒を使用することが好ましい。
なお、本発明の方法では、セリウム錯体、当該セリウム錯体を溶解するための有機溶媒、及び金属酸化物の混合順序は、特には限定されず、これらは任意の順序で混合することができる。例えば、セリウム錯体と有機溶媒を含有する溶液に金属酸化物を加えてもよいし、あるいはまた、金属酸化物と有機溶媒を含有する溶液にセリウム錯体と有機溶媒を含有する溶液を加えてもよい。また、本発明の方法によれば、セリウム錯体と、有機溶媒と、金属酸化物とを含有する混合溶液を単に攪拌等することで、加熱操作を何ら必要とすることなく、混合溶液中に含まれるセリウム錯体を室温下で金属酸化物全体に均一に吸着させることができる。したがって、本発明の方法によれば、従来の方法に比べて、非常に簡単かつ確実にその後の乾燥及び焼成によってセリアを微粒子の状態で金属酸化物全体に均一に担持させることが可能である。なお、本発明の方法においては、セリアは、一般的にセリウム換算で0.01〜10wt%の担持量において金属酸化物に担持させることができる。
また、上記の乾燥及び焼成は、有機溶媒やセリウム錯体の錯塩部分を分解除去しかつセリアを金属酸化物上に担持するのに十分な温度及び時間において実施することができる。例えば、乾燥は、減圧下又は常圧下において約80℃〜約250℃の温度で約1時間〜約24時間にわたり実施することができ、一方で、焼成は、空気中又は酸化性雰囲気中において約300℃〜約800℃の温度で約1時間〜約10時間にわたり実施することができる。
本発明の方法によって得られた排ガス浄化用助触媒は、上記のとおり、従来公知の方法によって得られた材料に比べて、顕著に改善された酸素吸放出能を有するので、これを一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の酸化及び/又は窒素酸化物(NOx)の還元に対して触媒活性を示す触媒金属と組み合わせて使用した場合には、排ガス浄化性能が顕著に改善された排ガス浄化用触媒を得ることができる。なお、このような触媒金属としては、COやHCの酸化及び/又はNOxの還元に対して触媒活性を示す任意の触媒金属を使用することができ、好ましくは排ガス浄化用触媒の技術分野において一般的に用いられている触媒金属、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)等の白金族元素を使用することができる。
また、上記の排ガス浄化用触媒は、例えば、本発明の排ガス浄化用助触媒に上に挙げた触媒金属を、従来公知のいわゆる含浸、蒸発・乾固等において担持することによって調製することができる。あるいはまた、上記の排ガス浄化用触媒は、本発明の排ガス浄化用助触媒と、上に挙げた触媒金属を他の金属酸化物に担持してなる触媒とを粉末状態においてそれらが十分に均一になるまで単に物理的に混合することにより調製してもよい。なお、上記のようにして得られた排ガス浄化用触媒の粉末は、必要に応じて、例えば、高圧下でプレスしてペレット状に成形するか、又は所定のバインダ等を加えてスラリー化し、これをコージェライト製ハニカム基材等の触媒基材上に塗布することにより使用することができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
本実施例では、本発明の方法に従ってセリアを金属酸化物(アルミナ)に担持してなる排ガス浄化用助触媒を調製し、その酸素吸放出能(OSC)及びセリア粒子の粒径等について調べた。
[実施例1]
[セリウム錯体(Ce3(OtBu)10O)の調製]
まず、ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム((NH42[Ce(NO36])253mg(0.461mmol)をシュレンク管に入れ、それをテトラヒドロフラン(THF)10mLによって溶解した。次いで、これに室温でTHF20mLに溶かしたナトリウムtert−ブトキシド(NaOtBu)(267mg、2.78mmol、6.0当量)を加えたところ、直ちに白色沈殿が生じた。次いで、室温下で12時間攪拌した後、静置し、黄色の上澄み液を採取した。次に、減圧下で溶媒を留去した後、ヘキサン10mLで2度抽出した。次いで、黄色溶液の溶媒を減圧下で留去することによりCe(OtBu)4(THF)2(174mg、収率65%)を黄色粉末として得た。得られたCe(OtBu)4(THF)2(242mg、0.420mmol)をシュレンク管に入れ、少量の水を含むトルエン10mLに溶かした。最後に、室温で12時間攪拌した後、ろ過し、黄色のろ液を減圧下で溶媒を留去することによりセリウム3核錯体であるμ3−オキソ−μ3−tert−ブタノラト−トリ−μ−tert−ブタノラト−triangulo−トリス[ビス(tert−ブタノラト)セリウム(IV)](Ce3(OtBu)10O)(161mg、99%)を黄色粉末として得た。
[排ガス浄化用助触媒(CeO2/Al23)の調製]
アルミナ(Al23)(シーアイ化成製ナノテックアルミナ)15.1gをTHF100mLに懸濁させ、この懸濁液に30mLのTHFに溶解した上記のセリウム3核錯体(Ce3(OtBu)10O)(213mg、0.182mmol)の黄色溶液を滴下した。次いで、この混合溶液を室温下で2時間攪拌した後静置すると、白色沈殿と無色上澄み液とに分かれた。この無色上澄み液を除いた後、減圧乾燥して白色粉末14.1gを得た。なお、Al23を添加する前のセリウム3核錯体の黄色溶液及びAl23を添加した後の上記の無色上澄み液に関するUV−Vis(紫外可視)吸収スペクトルを測定した。その結果を図2に示す。図2の結果から明らかなように、Al23を添加する前のセリウム3核錯体の黄色溶液からは、当該セリウム3核錯体に由来する吸収(300nm付近のピーク)が観測されたものの、Al23を添加した後の無色上澄み液からは、当該セリウム3核錯体に由来する吸収は観測されなかった。このことは、セリウム3核錯体の黄色溶液にAl23を添加することで、溶液中のすべてのセリウム3核錯体がAl23に吸着されたことを意味するものである。
最後に、セリウム3核錯体が吸着された上記の白色粉末を120℃で2時間乾燥した後、得られた乾燥粉末を空気中550℃で2時間焼成することにより、セリアをアルミナに担持したCeO2/Al23からなる排ガス浄化用助触媒(セリア担持量:Ce換算で0.5wt%)を得た。
[比較例1]
本比較例では、従来公知のいわゆる含浸法によってCeO2/Al23からなる排ガス浄化用助触媒を調製した。具体的には、まず、500mLのビーカーに蒸留水200mLを入れ、これに硝酸セリウム(III)六水和物(Ce(NO33・6H2O)775mg(1.78mmol)を加えて室温下で攪拌した。次いで、この混合溶液にアルミナ(Al23)(シーアイ化成製ナノテックアルミナ)50gを加えて、ホットスターラーで120℃に加熱し、分散媒を蒸発させて除去した。次いで、120℃の乾燥器にビーカーごと入れ、12時間乾燥した後、得られた乾燥粉末を空気中550℃で2時間焼成することにより、セリアをアルミナに担持したCeO2/Al23からなる排ガス浄化用助触媒(セリア担持量:Ce換算で0.5wt%)を得た。
[比較例2]
本比較例では、セリアとアルミナを単に物理混合することによってCeO2とAl23からなる排ガス浄化用助触媒を調製した。具体的には、まず、セリア(CeO2)(シーアイ化成製ナノテックセリア)123mgとアルミナ(Al23)(シーアイ化成製ナノテックアルミナ)20gを乳鉢で混合及び粉砕し、次いで、この混合粉末を120℃で12時間乾燥した後、得られた乾燥粉末を空気中550℃で2時間焼成することにより、CeO2とAl23の混合物からなる排ガス浄化用助触媒(セリア量:Ce換算で0.5wt%)を得た。
[セリア粒子の分析]
実施例1及び比較例1の各排ガス浄化用助触媒について、エネルギー分散型X線分析装置付走査透過型電子顕微鏡(STEM−EDX)(日立製HD−2000、加速電圧:200kV)によってそれらの測定を行った。図3(a)及び(b)は、それぞれ実施例1及び比較例1の各排ガス浄化用助触媒に関するエネルギー分散型X線分析装置付走査透過型電子顕微鏡(STEM−EDX)による写真を示す。図3(a)の分析結果から、セリウム錯体を用いてセリアをアルミナに担持した実施例1の排ガス浄化用助触媒では、セリア粒子が微粒子の状態でアルミナ上に均一に担持されており、当該セリア粒子が5nm以下の平均粒径を有することを確認した。一方で、図3(b)のSTEM−EDXによる写真から明らかなように、従来の方法によってセリアをアルミナに担持した比較例1の排ガス浄化用助触媒では、実施例1の排ガス浄化用助触媒に比べて、セリア粒子の粒径が明らかに大きく、その平均粒径は10nmを超えるものであった。
[酸素吸放出能の評価]
次に、実施例1並びに比較例1及び2の各排ガス浄化用助触媒について、それらの酸素吸放出能(OSC)を評価した。なお、OSCの測定に際し、上で調製した各排ガス浄化用助触媒の粉末を1トンの圧力でプレスしてペレット状に圧粉成型したものを評価用試料として用いた。次に、これらの各ペレット助触媒2.0gについて、触媒床の温度を300〜600℃の間の所定の温度において一定に保ち、酸素5%(窒素バランス)のガスで5分間にわたり酸化前処理した後、評価用ガスとして酸素2%(窒素バランス)とCO2%(窒素バランス)の各サンプルガスを2分ずつ交互に導入した。なお、サンプルガスの流量は1L/分であった。本試験では、酸素含有サンプルガスを導入した際には、サンプルガス中の酸素が排ガス浄化用助触媒に吸蔵され、次いで、CO含有サンプルガスを導入した際に、排ガス浄化用助触媒から放出される酸素によってCOがCO2に酸化される。したがって、CO含有サンプルガスを導入した際に生成するCO2量を定量することで、各排ガス浄化用助触媒のOSCを評価することができる。図4は、評価用ガスの条件とCO2生成量の関係を示すグラフである。図中の破線が評価用ガス(酸素含有サンプルガスとCO含有サンプルガス)の導入を示し、実線がCO含有サンプルガスを導入した際に生成するCO2量を示している。
図5は、実施例1並びに比較例1及び2の各排ガス浄化用助触媒について、上記の試験によって得られた酸素吸放出能(OSC)を示すグラフである。図5の結果から明らかなように、セリウム錯体を用いてセリアをアルミナに担持した実施例1の排ガス浄化用助触媒では、従来の方法によってセリアをアルミナに担持した比較例1の排ガス浄化用助触媒、及びセリアとアルミナの混合物からなる比較例2の排ガス浄化用助触媒と比較して、より低い温度域から酸素吸放出能が発現し、しかも各温度においてセリウム1原子あたりのOSCが顕著に向上していることがわかる。この結果は、図3のSTEM−EDXによる写真から得られた実施例1及び比較例1のセリア粒子の平均粒径の結果と一致するものであり、また、本発明の排ガス浄化用助触媒では、従来の方法によって調製された排ガス浄化用助触媒に比べて、セリア粒子がより高分散にアルミナ上に担持されていることを裏付けるものである。
1 セリウム錯体
2 金属酸化物
3 セリア
10 排ガス浄化用助触媒

Claims (4)

  1. セリアを該セリアとは異なる金属酸化物に担持してなる排ガス浄化用助触媒の製造方法であって、
    セリウム及び該セリウムに配位した配位子を含むセリウム錯体と、該セリウム錯体を溶解するための有機溶媒と、前記金属酸化物とを含有する混合溶液を調製する工程、並びに
    前記混合溶液を乾燥させ、得られた生成物を焼成する工程
    を含み、前記セリウム錯体がCe3(OC(CH3310Oであることを特徴とする、排ガス浄化用助触媒の製造方法。
  2. 前記セリアの平均粒径が5nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記金属酸化物が、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記金属酸化物がアルミナであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
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