JP5793737B1 - 蒸着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量を均等にする、簡単な構造の蒸着装置の提供。【解決手段】蒸着装置は、蒸着源と、蒸着源を覆い、回転可能なドーム110と、トレイと、回転板と、取付部材と、を備え、取付部材によってドーム10の面に設置されたトレイ保持具1000A〜1000Dであって、回転板が自身の回転軸の周りに回転すると、トレイも自身の回転軸の周りに回転するように構成されたトレイ保持具1000A〜1000Dと、ドーム110の外側に固定された支持部150と、ドーム10の回転軸を囲んでドームの外側の面に沿って配置されるように、支持部に固定されたレールと、を備える。レールの周囲と回転板の周囲とが接触するように配置され、ドームが回転すると、レールによって回転板が自身の回転軸の周りに回転し、トレイが自身の回転軸の周りに回転するように構成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、蒸着装置に関する。
蒸着装置は、一例として、レンズや回折格子などの光学素子の表面に膜を形成するために使用される。蒸着装置は、膜を形成する物質を放出するための蒸着源と、蒸着源を覆い中心軸の周りに回転可能なドームと、を含む。ドームには複数のトレイが取り付けられ、それぞれのトレイには、複数のワーク、たとえば、回折格子が取り付けられる。
ワークへの均一な蒸着量を実現するために、蒸着源の周りにトレイを回転させる(公転)とともに、トレイ自体を自身の中心軸の周りに回転させる(自転)蒸着装置が既に開発されている(たとえば、特許文献1)。
しかし、立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量を均等にするには、上述の公転及び自転動作だけでは十分ではない。他方、製造及び維持コストの観点から、蒸着装置の構造はできるだけ簡単であるのが好ましい。
特開平9−143717号公報
したがって、立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量を均等にする、簡単な構造の蒸着装置に対するニーズがある。
本発明の蒸着装置は、蒸着源と、前記蒸着源を覆い、回転可能なドームと、トレイと、回転板と、取付部材と、を備え、前記取付部材によって前記ドームの面に設置されたトレイ保持具であって、前記回転板が自身の回転軸の周りに回転すると、前記トレイも自身の回転軸の周りに回転するように構成されたトレイ保持具と、前記ドームの外側に固定された支持部と、前記ドームの回転軸を囲んで前記ドームの外側の面に沿って配置されるように、前記支持部に固定されたレールと、を備える。前記レールの周囲と前記回転板の周囲とが接触するように配置され、前記ドームが回転すると、前記レールによって前記回転板が自身の回転軸の周りに回転し、前記トレイが自身の回転軸の周りに回転するように構成されている。
本発明の蒸着装置は、ドームの回転軸を囲んでドームの外側の面に沿って配置されたレールによって、トレイ保持具の回転板を回転させることにより、ドームの回転によって、トレイを自身の回転軸の周りに回転させることができる。このように本発明によれば、上記の簡単な構造によって、ドームの回転に同期したトレイの自身の回転軸の周りの回転を実現し、立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量をより均等にすることができる。
本発明の第1の実施形態による蒸着装置においては、前記トレイ保持具は、前記取付部材によって、前記ドームに回転可能に取り付けられた傾斜軸の周りに傾斜することができるように取り付けられ、前記レールは、前記ドームに対して、少なくとも一つの方向に移動することができるように構成され、前記レールが移動した結果、前記トレイ保持具が前記傾斜軸の周りに傾斜し、前記トレイ及び前記回転板の回転軸が傾斜するように構成されている。
本実施形態によれば、トレイ及び回転板の回転軸を傾斜させることができる。トレイ及び回転板の回転軸の傾斜角度を適切に変化させることにより、立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量をより均等にすることが可能となる。
本発明の第2の実施形態のトレイ保持具は、前記傾斜軸が、前記ドームの回転方向に配置されている。
本発明の第3の実施形態による蒸着装置においては、前記支持部が前記ドームの外側に固定された第1の支持部材と、前記レールを固定する第2の支持部材と、を備え、前記第2の支持部材が前記第1の支持部材に対して移動することにより、前記レールが、前記ドームに対して、少なくとも一つの方向に移動することができるように構成されている。
本実施形態によれば、簡単な構造によって、レールをドームに対して移動させることができる。
本発明の第4の実施形態による蒸着装置においては、前記トレイと前記回転板とが互いに平行に配置されている。
本発明の第5の実施形態による蒸着装置においては、前記回転板の回転軸と前記トレイの回転軸とが歯車を介して結合されている。
本実施形態によれば、歯車の歯数を変えることにより、単位時間当たりのドームの回転数に対する単位時間当たりのトレイの回転数を変えることができる。
本発明の第6の実施形態による蒸着装置においては、前記ドームの回転軸を囲んで前記ドームの外側の面に沿って複数のレールが設置されている。
本実施形態においては、複数のトレイ保持具の回転板の周囲が、前記複数のレールのいずれかの周囲に接触して回転されるように構成されている。
本発明の第7の実施形態による蒸着装置においては、異なるレールに接する複数のトレイが、前記ドームが回転することにより、自身の回転軸の周りに同じ回転速度で回転するように構成されている。
本実施形態によれば、複数のトレイが、自身の回転軸の周りに同じ回転速度で回転することにより、複数のトレイ上の立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量をより均等にすることができる
本発明の蒸着装置の構成を示す図である。 本発明の蒸着装置の特徴的な構成を説明するための図である。 鉛直枠部材を説明するための図である。 鉛直枠部材を説明するための図である。 鉛直枠部材を説明するための図である。 水平枠部材を説明するための図である。 水平枠部材のx軸方向の位置調整を説明するための図である。 ドームの面に取り付けられた、トレイ保持具を示す図である。 トレイ保持具の側面図である。 トレイ保持具の揺動動作を説明するための図である。 第1レールによって回転するトレイ保持具の揺動動作を説明するための図である。 第2レールによって回転するトレイ保持具の揺動動作を説明するための図である。 第3レールによって回転するトレイ保持具の揺動動作を説明するための図である。 第4レールによって回転するトレイ保持具の揺動動作を説明するための図である。 トレイ上のワークの位置の、蒸着装置によるワークへの蒸着量への影響を説明するための図である。 回折格子の機能を説明するための図である。 トレイが自転及び揺動を行わずに、ドームが1回転する間の、ワークへの蒸着量の変化及びワークの成膜角度の変化を示す図である。 トレイが揺動を行わずに自転を行いながら、ドームが1回転する間の、ワークへの蒸着量の変化及びワークの成膜角度の変化を示す図である。 トレイが揺動及び自転を行いながら、ドームが1回転する間の、ワークへの蒸着量の変化及びワークの成膜角度の変化を示す図である。
図1は、本発明の蒸着装置100の構成を示す図である。蒸着装置100は、蒸着源120と、ドーム110と、これらを取り囲むチャンバー130とを含む。チャンバー130は、排気口135を使用して排気することにより所定の真空度に保持される。ドーム110は、その内面にワーク200を取り付けられるように構成され、蒸着源120を覆うように設置される。蒸着源120から放出された物質は、蒸着源120を覆うドーム110の内面に取り付けられたワーク200に到達し、その表面に蒸着される。ドーム110の内面に取り付けられた複数のワーク200に一様に物質が蒸着されるように、蒸着プロセス中にドーム110は、図示しない駆動部によってその中心軸の周りに回転させられる。ワーク200は、一例として回折格子などの光学素子であり、ドーム110の内面に取り付けられた、図示しないトレイに取り付けられる。上記の記述は、本発明の蒸着装置100及び従来の蒸着装置に共通にあてはまるものである。本発明の蒸着装置100の特徴的な構成については、以下に説明する。
図2は、本発明の蒸着装置100の特徴的な構成を説明するための図である。本発明の蒸着装置100は、後で説明するレールが取り付けられた枠部150を備える。枠部150は、鉛直枠部材151と水平枠部材153とを備える。鉛直枠部材151は、取付具155によってチャンバー130に結合される。水平枠部材153は、鉛直枠部材151に結合される。取付具155及び鉛直枠部材151は、水平枠部材153及び水平枠部材153に取り付けられたレールの重量を支える。ドーム110の面には、トレイ保持具1000A、1000B、1000C、及び1000Dが備わる。
図3A乃至図3Cは、鉛直枠部材151を説明するための図である。図3Bは、図3AのAA方向から見た図であり、図3Cは、図3AのBB方向から見た図である。ここで、図3Aにおける水平方向をx軸方向とし、図3Aの紙面に垂直な方向をy軸方向とする。すなわち、図3Aは鉛直枠部材151のx軸方向の側面図であり、図3B及び図3Cは、鉛直枠部材151のy軸方向の側面図である。図3B及び図3Cに示すように、ねじ1511を調節することにより、水平枠部材153の位置を、鉛直枠部材151に対して、y軸方向に調節することができる。このようにして、水平枠部材153とドーム110とのy軸方向の芯合わせを行うことができる。
図4は、水平枠部材153を説明するための図である。図4(a)は、水平枠部材153の平面図である。図4(b)は、水平枠部材153のx軸方向の側面図である。水平枠部材153には、4個のレール1530A、1530B、1530C、及び1530Dが取り付けられている。レール1530A、1530B、1530C、及び1530Dを、それぞれ、第1レール乃至第4レールとも呼称する。
図5は、水平枠部材153のx軸方向の位置調整を説明するための図である。ねじ1531を調節することにより、水平枠部材153の位置を、鉛直枠部材151に対して、x軸方向に調節することができる。図5(a)は、水平枠部材153のx軸方向の中心位置が、鉛直枠部材151のx軸方向の中心位置よりも左側にある場合を示す。図5(b)は、水平枠部材153のx軸方向の中心位置が、鉛直枠部材151のx軸方向の中心位置と一致している場合を示す。この状態の水平枠部材153の位置を水平枠部材153の基準位置と呼称する。図5(c)は、水平枠部材153のx軸方向の中心位置が、鉛直枠部材151のx軸方向の中心位置よりも右側にある場合を示す。このようにして、水平枠部材153に取り付けられた4個のレール1530A、1530B、1530C、及び1530Dのx軸方向の位置を調整することができる。
図6は、ドーム110の面に取り付けられた、トレイ保持具1000A、1000B、1000C、及び1000Dを示す図である。
図7は、トレイ保持具1000の側面図である。図7(a)は、トレイ保持具1000の、ドームの円形断面の接線方向の側面図であり、図7(b)は、トレイ保持具1000の、ドームの円形断面の半径方向の側面図である。トレイ保持具1000は、回転板1010と、取付部材1025と、トレイ1035と、ストッパー1040と、ばね部材1045と、を備える。ストッパー1040及びばね部材1045については後で説明する。回転板1010は、取付部材1025に回転可能に取り付けられた軸1012に取り付けられている。トレイ1035は、取付部材1025に回転可能に取り付けられた軸1030に取り付けられている。軸1012には歯車1015が取り付けられ、軸1030には歯車1020が取り付けられている。歯車1015は、歯車1020と係合し、歯車1015が所定の単位時間当たりの回転数で回転すると、歯車1020が以下の単位時間当たりの回転数で回転する。
歯車1020の単位時間当たりの回転数
=歯車1015の単位時間当たりの回転数×歯車1015の歯数/歯車1020の歯数
したがって、回転板1010が所定の単位時間当たりの回転数で回転すると、トレイ1035が以下の単位時間当たりの回転数で回転する。
トレイ1035の単位時間当たりの回転数
=回転板1010の単位時間当たりの回転数×歯車1015の歯数/歯車1020の歯数
トレイ保持具1000は、取付部材1025によってドーム110に取り付けられる。
図8は、トレイ保持具1000の揺動動作を説明するための図である。図8は、トレイ保持具1000の、ドームの円形断面の半径方向の側面図である。取付部材1025は、傾斜軸1027の周りに回転(傾斜)することができる。傾斜軸1027は、ドーム110に回転可能に取り付けられている。傾斜軸1027の周りのトレイ保持具1000の回転(傾斜)動作を揺動動作、あるいは単に揺動と呼称する。
図8に示すように、回転板1010は、レール1530と接触するように配置される。ここで、上述のように、レール1530の位置は、ドーム110に対してx軸方向に変化させることができる。レール1530の位置をx軸方向に移動させると、回転板1010がレール1530と接触する点は、x軸方向に移動する。
図8において、レール1530の中心軸がドーム110の中心軸と一致している場合に、傾斜軸1027と、回転板1010がレール1530と接触する点とを結ぶ直線が、鉛直方向となす角度をαとする。この状態をトレイ保持具1000の基準状態と呼称する。また、レール1530が最も右に位置する場合に、傾斜軸1027と、回転板1010がレール1530と接触する点とを結ぶ直線が、鉛直方向となす角度をβとする。この状態をトレイ保持具1000の右状態と呼称する。さらに、レール1530が最も左に位置する場合に、傾斜軸1027と、回転板1010がレール1530と接触する点とを結ぶ直線が、鉛直方向となす角度をγとする。この状態をトレイ保持具1000の左状態と呼称する。図8の断面において、トレイ保持具1000の基準状態、右状態、及び左状態における、傾斜軸1027からレール1530の端部までのx軸方向の距離を、それぞれ、b、b、及びbで表すと以下の関係が成立する。
−b=b−b=8.6(ミリメータ)
上記の距離は、水平枠部材153の、基準位置から右方向及び左方向へのx軸方向の移動距離に相当する。
トレイ保持具1000の基準状態において、トレイ1035は、ドーム110の面、より正確には、球面であるドームの面における傾斜軸1027の位置における接面と平行になるように構成されている。トレイ保持具1000の基準状態におけるトレイ1035の面の傾きを基準として、トレイ保持具1000の右状態及び左状態における面の傾き角度を、時計回りで、それぞれ、+θ及び−θで表すと、以下の関係が成立する。
+θ=β−α (1)
−θ=γ−α (2)
角度+θ及び−θを揺動角度と呼称する。さらに、図8の断面において、傾斜軸1027から、回転板1010がレール1530と接触する点までの距離をaで表すと、以下の関係が成立する。
sinα=b/a (3)
sinβ=b/a (4)
sinγ=b/a (5)
このように、式(3)乃至式(5)から揺動角度を求めることができる。
トレイ保持具1000の基準状態、右状態、及び左状態において、取付部材1025は、常に、図7(b)に示すばね部材1045によって、傾斜軸1027の周りでレール1530の方向へ回転する力を受ける。その結果、図8に示すように、回転板1010は、揺動角度にかかわらず、常にレール1530へ押しつけられる。したがって、ドーム110が回転すると、トレイ1035は、ドーム110の中心軸の周りをまわりながら、自身の回転軸1030の周りに回転する。トレイ1035が、ドーム110の中心軸の周りをまわる運動をトレイ1035の公転、自身の回転軸1030の周りに回転する運動をトレイ1035の自転とも呼称する。さらに、図7(b)に示すストッパー1040は、トレイ1035が所定の揺動角度を超えて傾かないように機能する。
図9Aは、第1レール1530Aによって回転するトレイ保持具1000Aの揺動動作を説明するための図である。図9Aは、トレイ保持具1000Aの、ドームの円形断面の半径方向の側面図である。図9A(a)は、トレイ保持具1000Aが第1レール1530Aの左側に位置する場合を示し、図9A(b)は、トレイ保持具1000Aが第1レール1530Aの右側に位置する場合を示す。a=47.33(ミリメータ)、b=14.59(ミリメータ)を式(1)乃至式(3)に代入すると以下の関係が得られる。
sinα=b/a=14.59/47.33
sinβ=b/a=(14.59+8.6)/47.33
sinγ=b/a=(14.59−8.6)/47.33
α=17°56’
β=29°21’
γ=7°18’
上記の値を式(1)及び式(2)に代入すると以下の値が得られる。
+θ=β−α= 11°25’
−θ=γ−α=−10°38’
図9Bは、第2レール1530Bによって回転するトレイ保持具1000Bの揺動動作を説明するための図である。図9Bは、トレイ保持具1000Bの、ドームの円形断面の半径方向の側面図である。図9B(a)は、トレイ保持具1000Bが第2レール1530Bの左側に位置する場合を示し、図9B(b)は、トレイ保持具1000Bが第2レール1530Bの右側に位置する場合を示す。a=47.43(ミリメータ)、b=19.22(ミリメータ)を式(1)乃至式(3)に代入すると以下の関係が得られる。
sinα=b/a=19.22/47.43
sinβ=b/a=(19.22+8.6)/47.43
sinγ=b/a=(19.22−8.6)/47.43
α=23°53’
β=35°57’
γ=12°57’
上記の値を式(1)及び式(2)に代入すると以下の値が得られる。
+θ=β−α= 12°04’
−θ=γ−α=−10°56’
図9Cは、第3レール1530Cによって回転するトレイ保持具1000Cの揺動動作を説明するための図である。図9Cは、トレイ保持具1000Cの、ドームの円形断面の半径方向の側面図である。図9C(a)は、トレイ保持具1000Cが第3レール1530Cの左側に位置する場合を示し、図9C(b)は、トレイ保持具1000Cが第3レール1530Cの右側に位置する場合を示す。a=47.52(ミリメータ)、b=23.65(ミリメータ)を式(1)乃至式(3)に代入すると以下の関係が得られる。
sinα=b/a=23.65/47.52
sinβ=b/a=(23.65+8.6)/47.52
sinγ=b/a=(23.65−8.6)/47.52
α=29°52’
β=42°46’
γ=18°29’
上記の値を式(1)及び式(2)に代入すると以下の値が得られる。
+θ=β−α= 12°54’
−θ=γ−α=−11°23’
図9Dは、第4レール1530Dによって回転するトレイ保持具1000Dの揺動動作を説明するための図である。図9Dは、トレイ保持具1000Dの、ドームの円形断面の半径方向の側面図である。図9D(a)は、トレイ保持具1000Dが第4レール1530Dの左側に位置する場合を示し、図9D(b)は、トレイ保持具1000Dが第4レール1530Dの右側に位置する場合を示す。a=47.9(ミリメータ)、b=25.0(ミリメータ)を式(1)乃至式(3)に代入すると以下の関係が得られる。
sinα=b/a=25.0/47.9
sinβ=b/a=(25.0+8.6)/47.9
sinγ=b/a=(25.0−8.6)/47.9
α=31°28’
β=44°30’
γ=20°00’
上記の値を式(1)及び式(2)に代入すると以下の値が得られる。
+θ=β−α= 13°02’
−θ=γ−α=−11°28’
トレイ保持具1000Aの角度αは、17°56’であり、トレイ保持具1000Bの角度αは、23°53’ であり、トレイ保持具1000Cの角度αは、29°52’であり、トレイ保持具1000Dの角度αは、31°28’である。このように、角度αは、トレイ保持具の位置がドームの回転軸に近いほど大きくなる。トレイ保持具1000A乃至トレイ保持具1000Dの揺動角度+θは、11°25’から13°02’であり、揺動角度−θは、−10°38’から−11°28’である。
トレイ保持具1000A乃至1000Dのトレイの単位時間当たりの自転数は、等しくなるように設計されている。具体的に、ドーム110の回転数が10rmpである場合に、トレイの自転数が100rpmであるように設計されている。
トレイ保持具1000Aの歯車1015の歯数は60であり、歯車1020の歯数は36である。回転板1010の直径は、60ミリメータであるので、第1レール1530Aの直径DAは、以下の式で表せる。
DA=60×(60/36)×(100/10)=1000(ミリメータ)
トレイ保持具1000Bの歯車1015の歯数は54であり、歯車1020の歯数は40である。回転板1010の直径は、60ミリメータであるので、第2レール1530Bの直径DBは、以下の式で表せる。
DB=60×(54/40)×(100/10)=810(ミリメータ)
トレイ保持具1000Cの歯車1015の歯数は48であり、歯車1020の歯数は49である。回転板1010の直径は、60ミリメータであるので、第3レール1530Cの直径DCは、以下の式で表せる。
DC=60×(48/49)×(100/10)=588(ミリメータ)
トレイ保持具1000Dの歯車1015の歯数は35であり、歯車1020の歯数は57である。回転板1010の直径は、60ミリメータであるので、第4レール1530Dの直径DDは、以下の式で表せる。
DD=60×(35/57)×(100/10)=368(ミリメータ)
このように、本実施形態の蒸着装置においては、ドーム110が10rpmの回転速度で回転する場合に、4本のレール1530A乃至1530Dのいずれかによって回転させられるすべてのトレイが、同じ回転速度、すなわち、100rpmで回転(自転)する。
つぎに、蒸着装置によるワークへの蒸着量について説明する。
図10は、トレイ上のワークの位置の、蒸着装置によるワークへの蒸着量への影響を説明するための図である。ここで、トレイは、ドームに固定されているものとする。図10において、ワーク200aは、トレイ1035の左側に配置され、ワーク200bは、トレイ1035の中央に配置され、ワーク200cは、トレイ1035の右側に配置されている。ドーム110が球状であり、球の中心に蒸着源が配置されている。この場合に、ワークには、ワークの位置におけるドーム110の面の法線に沿って、蒸着物質が飛来する。トレイ1035に垂直でワークの中心を通るワークの中心軸に対して、蒸着物が飛来する方向である法線のなす角度を成膜角度と呼称する。図10において、ワーク200aの成膜角度をωとすると、ワーク200cの成膜角度は、−ωである。また、ワーク200b成膜角度は0である。この結果、ワーク200aでは、右側の側面の蒸着量が、左側の側面の成膜量よりも大きくなる。また、ワーク200cでは、左側の側面の蒸着量が、右側の側面の成膜量よりも大きくなる。
図11は、回折格子210の機能を説明するための図である。図11において、回折格子210の左から水平方向に進行する光は、回折格子210によって、0次光、1次光、−1次光に分けられる。回折格子210をワーク200として、図10に示す蒸着装置によって製造した場合に、トレイ1035の左側に配置された回折格子は、格子の右の側面(第1の側面)の蒸着量が左の側面(第2の側面)の蒸着量よりも多くなる。他方、トレイ1035の右側に配置された回折格子は、左の側面(第2の側面)の蒸着量が格子の右の側面(第1の側面)の蒸着量よりも多くなる。一般的に回折格子においては、蒸着量が多く膜厚が厚い側面の方向に回折される光の量が多くなる。仮に第1の側面の方向を1次光の方向とし、第2の側面の方向を−1次光の方向とすると、トレイ1035の左側に配置されて製造された回折格子は、−1次光と比べて1次光の光量が多くなり、トレイ1035の右側に配置されて製造された回折格子は、1次光と比べて−1次光の光量が多くなる。このように、蒸着装置の構造が原因で、同じトレイ上で製造されたワークの光学特性にばらつきが生じる。
図12は、トレイが自転及び揺動を行わずに、ドームが1回転する間の、ワークへの蒸着量の変化及びワークの成膜角度の変化を示す図である。図12乃至図14の結果は、シミュレーションによって求めたものである。図12(a)の横軸は、ドームが1回転する間の時間を表し、縦軸は、蒸着量の相対値を表す。ワークの、その位置におけるドームの面の法線に垂直な面を上面、上面に垂直な、ドームの円形断面の半径方向の面を側面X、上面に垂直な、ドームの円形断面の接線方向の面を側面Yと呼称する。ドームが1回転する間に上面の蒸着量が変化するのは、蒸着源がドーム球の中心位置から離れて配置されているためである。上面の蒸着量は、蒸着源に最も近い位置を通過した時刻に最大となり、蒸着源から最も遠い位置を通過した時刻に最小となる。なお、縦軸の蒸着量の相対値は、ドームが1回転する間の、上面の蒸着量の平均値を1とする。側面X及び側面Yは、それぞれ、反対向きの2個の面を含む。図12(a)の側面X及び側面Yの蒸着量の値の正の領域は、上記2個の面のうち一方の面の蒸着量を表し、負の領域は、上記2個の面のうち他方の面の蒸着量を表す。図12(b)は、ドームが1回転する間の、成膜角度の変化を示す。
図13は、トレイが揺動を行わずに自転を行いながら、ドームが1回転する間の、ワークへの蒸着量の変化及びワークの成膜角度の変化を示す図である。単位時間当たりのトレイの自転回転数とドームの回転数との比は3:1である。図13(a)の横軸は、ドームが1回転する間の時間を表し、縦軸は、蒸着量の相対値を表す。上面、側面X及び側面Yについては、図12(a)と同様である。図13(b)は、ドームが1回転する間の、成膜角度の変化を示す。
図14は、トレイが揺動及び自転を行いながら、ドームが1回転する間の、ワークへの蒸着量の変化及びワークの成膜角度の変化を示す図である。単位時間当たりのトレイの自転回転数とドームの回転数との比は4:1である。揺動動作の周期とドームの回転周期との比は1:5である。揺動動作の傾斜軸は、図8に示したように、ドームの回転円の接線の方向である。揺動角度は、−45°から45°の範囲で、サイン関数にしたがって変化させている。
図10を使用して説明した、トレイ上のワークの位置によって生じる個々のワークの蒸着量の位置的分布の差は、ドームの回転中にトレイを自転させることによって小さくすることができる。
通常、ワークは平面ではなく立体的な形状を有する。立体的な形状のそれぞれの面の蒸着量をできるだけ均等にするためには、ドームの回転中の成膜角度の変化を大きくするのが望ましい。図14を図12及び図13と比較すると、揺動動作によりドームの回転中の成膜角度の変化を大きくなっていることがわかる。なお、上記のシミュレーションでは、揺動角度の絶対値の最大値を45°としたが、上述の実施形態の揺動角度(+θ= 13°02’、−θ=−11°28’)でも成膜角度の変化を十分に大きくできることが確認された。
このように、ドームの回転にトレイの時点及び揺動を組み合わせることにより、トレイ上のワークの位置によって生じる個々のワークの蒸着量の位置的分布の差を小さくし、ワークの立体的な形状のそれぞれの面の蒸着量をできるだけ均等にすることができる。

Claims (7)

  1. 蒸着源と、
    前記蒸着源を覆い、回転可能なドームと、
    前記蒸着源及び前記ドームを取り囲むチャンバーと、
    回転板と、取付部材と、を備え、前記取付部材によって前記ドームの面に設置されたトレイ保持具であって、前記回転板が自身の回転軸の周りに回転すると、保持されたトレイが自身の回転軸の周りに回転するように構成されたトレイ保持具と、
    前記ドームの外側において前記チャンバーに結合された枠部と、
    前記ドームの回転軸を囲んで前記ドームの外側の面に沿って配置されるように、前記枠部に固定されたレールと、を備え、
    前記レールの周囲と前記回転板の周囲とが接触するように配置され、前記ドームが回転すると、前記レールによって前記回転板が自身の回転軸の周りに回転し、前記トレイ保持具に保持されたトレイが自身の回転軸の周りに回転するように構成され、
    前記トレイ保持具は、前記取付部材によって、前記ドームに回転可能に取り付けられた傾斜軸の周りに傾斜することができるように取り付けられ、前記レールは、前記ドームに対して、少なくとも一つの方向に移動することができるように構成され、前記レールが移動した結果、前記トレイ保持具が前記傾斜軸の周りに傾斜し、前記トレイ保持具に保持されたトレイ及び前記回転板の回転軸が傾斜するように構成された蒸着装置。
  2. 前記傾斜軸が、前記ドームの回転方向に配置された請求項1に記載の蒸着装置。
  3. 前記枠部が前記チャンバーに結合された第1の枠部と、前記レールを固定する第2の枠部と、を備え、前記第2の枠部が前記第1の枠部に対して移動することにより、前記レールが、前記ドームに対して、少なくとも一つの方向に移動することができるように構成された請求項1または2に記載の蒸着装置。
  4. 蒸着源と、
    前記蒸着源を覆い、回転可能なドームと、
    前記蒸着源及び前記ドームを取り囲むチャンバーと、
    回転板と、取付部材と、を備え、前記取付部材によって前記ドームの面に設置されたトレイ保持具であって、前記回転板が自身の回転軸の周りに回転すると、保持されたトレイが自身の回転軸の周りに回転するように構成されたトレイ保持具と、
    前記ドームの外側において前記チャンバーに結合された枠部と、
    前記ドームの回転軸を囲んで前記ドームの外側の面に沿って配置されるように、前記枠部に固定されたレールと、を備え、
    前記レールの周囲と前記回転板の周囲とが接触するように配置され、前記ドームが回転すると、前記レールによって前記回転板が自身の回転軸の周りに回転し、前記トレイ保持具に保持されたトレイが自身の回転軸の周りに回転するように構成され、
    前記回転板の回転軸と前記トレイ保持具に保持されたトレイの回転軸とが歯車を介して結合された蒸着装置。
  5. 蒸着源と、
    前記蒸着源を覆い、回転可能なドームと、
    前記蒸着源及び前記ドームを取り囲むチャンバーと、
    回転板と、取付部材と、を備え、前記取付部材によって前記ドームの面に設置されたトレイ保持具であって、前記回転板が自身の回転軸の周りに回転すると、保持されたトレイが自身の回転軸の周りに回転するように構成されたトレイ保持具と、
    前記ドームの外側において前記チャンバーに結合された枠部と、
    前記ドームの回転軸を囲んで前記ドームの外側の面に沿って配置されるように、前記枠部に固定された複数のレールと、を備え、
    前記複数のレールのうちのいずれかのレールの周囲と前記回転板の周囲とが接触するように配置され、前記ドームが回転すると、前記複数のレールによって前記回転板が自身の回転軸の周りに回転し、前記トレイ保持具に保持されたトレイが自身の回転軸の周りに回転するように構成された蒸着装置。
  6. 異なるレールに接する複数のトレイが、前記ドームが回転することにより、自身の回転軸の周りに同じ回転速度で回転するように構成された請求項5に記載の蒸着装置。
  7. 請求項1から6のいずれかの蒸着装置に使用されるトレイ保持具であって、前記回転板は、前記取付部材に回転可能に取り付けられた回転軸に取り付けられ、前記取付部材は、蒸着装置のドームに回転可能に取り付けられた傾斜軸の周りに傾斜することができるように構成され、前記回転板が前記回転軸の周りに回転すると、保持されたトレイが自身の回転軸の周りに回転し、前記回転板が移動すると、前記取付部材が前記傾斜軸の周りに傾斜し、保持されたトレイが傾斜するように構成されたトレイ保持具。
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