JP5792576B2 - 収納部用前板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、収納部の前面に配置され、収納部の開閉に用いられる取手を有する収納部用前板の製造方法に関するものである。
引出、開き戸、引き戸などの収納部の前板には取手(引手とも称される)が設けられ、使用者がこの取手に手を掛けて前後方向または左右方向にそれを引っ張ることにより、収納部が開閉される。前板の取手としては、コの字状の金具を取り付ける旧来の構造や、折り返した形状の取手用金具を前板の上縁に取り付ける構造(いわゆるライン取手)、前板の面内に取手用部材をはめ込んだ構造(以下、取手構造と称する)などがある。
上記の取手構造としては、例えば特許文献1に、基材である戸板に設けられた長穴状の取付溝に、押出成型の樹脂部材からなる引手本体(取手用部材)を嵌め込んだ取手構造が開示されている。かかる特許文献1では、引手本体の両端にその端面を覆うホルダ(キャップ)が嵌め込まれる。また同様に特許文献2においても、長尺の取手本体(取手用部材)と、その両側部に嵌着されるキャップとを、被取付板(基材)に設けられた長孔に嵌めこむ取手構造が開示されている。
特開2005−076278号公報 特開2006−204500号公報
収納部において前面に配置される前板(収納部用前板)は、使用者にもっとも観察される部材であるため収納部の美観に最も大きな影響を及ぼす。特に、前板において取手が必要以上に目立ってしまったり、前板との統一感がなかったりすると、収納庫全体の美観が損なわれ、使用者が違和感を覚えてしまう。このため、収納部用前板に設けられる取手においても、機能性はもちろんのことデザイン性も重要視される。
しかしながら、上記特許文献1および2のいずれの取手構造においても、外観上、基材に取手用部材が嵌め込まれていることが明らかに見て取れるため、基材との統一感に乏しく、美観に優れているとは言い難い。また特許文献1および2の構成であると、取手用部材およびキャップが前板の表面より突出しているため、視覚的に凹凸が感じられ、使用者は雑然とした印象を受けるおそれがある。
上述した問題を解決する方法として、前板の基材に木材を用い、基材自体に窪みを切削して取手を形成することが考えられる。このような構成であれば、取手用部材やキャップが必要ないため、当然にしてそれらを取り付ける必要がない。したがって、前板において取手用部材およびキャップが突出することがなく、単に手掛け用の窪みがあるだけになる。このため、収納部を簡潔で高級感のある外観にすることができ、優れた美観が得られる。
上記のように前板に窪みによって取手を形成する場合には、手掛けのための折り返し(以下手掛部と称する)を作る必要がある。手掛部を作るには、窪みの中の上面を前板表面より上方にもぐりこんだように彫り込まなくてはならず、そのような加工はNC旋盤やフライス盤などによる機械加工では困難である。そこで一案として、前板においてその上縁から窪みの位置までを帯状に切除し、切除した部品の断面を掘り込んで手掛部を形成した上で、かかる部品を前板に戻して接着することが考えられる。しかし、この製造方法であると、多くの手間を要し、製造コストの増大を招いてしまうため、採用が難しい。
本発明は、このような課題に鑑み、基材を彫り込んだように見える取手構造を容易且つ安価に実現することが可能な収納部用前板の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかる収納部用前板の製造方法の代表的な構成は、基材の前面の面内に溝を形成し、溝に窪み部および手掛部を有する埋込部材を挿入して接合し、基材の前面と埋込部材の前端面が面一になるように調整し、基材の前面および埋込部材の前端面を覆うように、シートまたは薄板からなる化粧材を貼着することを特徴とする。
上記構成によれば、基材の前面に溝を形成し、その溝に埋込部材を挿入して接合することにより、かかる基材に窪み部を容易に形成することができる。そして、埋込部材の前端面と基材の前面とを面一とし、そこを化粧材によって覆うことにより、前板の外観からは埋込部材の窪み部しか観察されなくなり、あたかも基材を彫り込んだように見える。このため、収納部の外観に高級感を与えることができる。このように本発明によれば、従来の機械加工による複雑な工程を必要とすることなく窪み部を形成することができるため、製造工程の複雑化を招くことがなく、美観に優れた収納部用前板を容易且つ安価に製造することが可能となる。
上記の溝に埋込部材を挿入した後に、基材または埋込部材の一方を研削することによって、基材の前面と埋込部材の前端面を面一になるように調整するとよい。これにより、埋込部材の成型の寸法誤差および溝の切削加工の寸法誤差を吸収し、基材と埋込部材の前端面とを正確に面一にすることができる。
上記の化粧材を基材のほぼ全面に貼着した後に、窪み部の縁の全周に沿って化粧材をカッティングして、窪み部を開口させるとよい。化粧材に予め開口を設けた場合、その開口を窪み部に位置合わせしながら化粧材を基材に貼着しなければならないため、貼着作業を慎重に行う必要がある。これに対し、上記構成のように基材に貼着した後に化粧材をカッティングすることにより、基材への化粧材貼着時の細かい位置合わせが不要になるため、作業性の向上を図ることができる。また化粧材に予め開口を設けると、その開口近傍において化粧材が撓んでしまい、貼着時にシワが発生することが懸念されるが、上述したように後から開口を形成する構成であればシワの発生を防ぐことが可能となる。
上記の埋込部材は、前記窪み部の下縁に形成された前端面に連続し、断面視において該前端面とほぼ直角をなす段部を有するとよい。これにより、上述したように窪み部の化粧材をカッティングする際に段部をガイドとすることができ、容易かつ正確なカッティングが可能となる。したがって、化粧材の端面(断面)の仕上がりを向上させることができる。
上記の埋込部材を溝に接合する前に、窪み部にエンボス形状を形成するとよい。これにより、埋込部材の窪み部において、そこに化粧材を貼付せずとも、あたかもそれを貼付したかのような模様を形成することができる。したがって、収納部用前板(厳密にはそれに貼付される化粧材)との外観上の統一感(一体感)が得られる。なお、エンボス形状は、例えばローラーでプレスして形成することが可能である。
本発明によれば、基材を彫り込んだように見える取手構造を容易且つ安価に実現することが可能な収納部用前板の製造方法を提供することができる。
本実施形態にかかる収納部用前板を備える収納部の正面斜視図である。 図1のA−A断面斜視図である。 埋込部材の詳細図である。 本実施形態にかかる前板の製造方法を説明するフローチャートである。 本実施形態にかかる前板の製造方法を説明する図である。 本実施形態にかかる前板の製造方法を説明する図である。 端部部材の詳細図である。 本実施形態にかかる前板の製造方法を説明する図である。 本実施形態にかかる前板の製造方法を説明する図である。 本実施形態にかかる前板の製造方法を説明する図である。 本実施形態にかかる前板の製造方法を説明する図である。 上述した前板の製造方法の他の例を説明する図である。 上述した前板の製造方法の他の例を説明する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、以下の実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
以下、本実施形態にかかる製造方法によって製造される収納部用前板を備える収納部として引出を例示して説明する。ただし、これに限定するものではなく、本実施形態の収納部用前板は、開き戸や引き戸等、前板(基材)に取手を必要とする他の収納部にも当然にして適用可能である。また理解を容易にするために、本実施形態では、収納部、それに設けられる収納部用前板、その製造方法の順に説明する。
(収納部100)
図1は、本実施形態にかかる収納部用前板を備える収納部100の正面斜視図である。図1に示す収納部100は、キャビネット(不図示)に収容されて被収納物(不図示)を収納する引出である。かかる収納部100は、前面を構成する本実施形態の収納部用前板(以下、前板102と称する)、側面を構成する2枚の側板104aおよび側板104b、底面を構成する底板106、および背面を構成する背板108を備える。これらのうち、前板102には、収納部100を開閉するための取手部110(取手構造)が設けられている。図1に示すように、取手部110は、あたかも前板102を掘り込んで形成されたような外観を有する。
(前板102)
図2は、図1のA−A断面斜視図である。図2に示すように、前板102は、その芯材となる基材112と、かかる基材112の前面112a(図3(e)参照)に配置される化粧材114とを備える。基材112には、その前面112aの面内に溝116が形成されていて、後に説明するように溝116には埋込部材120が挿入される。この溝116を切削(掘穿)によって容易に形成するために、基材112には木材を用いることが好ましい。化粧材114は、基材112の前面に貼着されるシート(または薄板)である。
図3は、埋込部材120の詳細図であり、図3(a)は側面図(断面図)、図3(b)は上面図、図3(c)は正面図、図3(d)は下面図であり、図3(e)は埋込部材120の溝116への挿入を説明する断面図である。図3に示す埋込部材120は、すべての位置での短手方向の切断面が同一の断面形状を有する長尺部材である。このため、埋込部材120は押出成形によって安価に製造することが可能であり、低コスト化を図ることができる。埋込部材120としては樹脂材料を好適に用いることができるが、これに限定するものではなく、アルミ等の金属材料を押出成型によって加工したものを用いてもよい。
図3(a)に示すように、埋込部材120は、数字の『2』のような断面形状を有する。詳細には、埋込部材120は下方から順に、溝116の下面116b(図2参照)に接触する下壁部122、下壁部122の前面122a近傍に連続し上方に延びる内壁部124、および内壁部124が上部で前方に向かって折り返すことにより形成される手掛部126を有する。そして、内壁部124および手掛部126によって囲まれた空間に窪み部128が形成されている。これにより、使用者は、窪み部128に指をさしこみ、その指を手掛部126に引っ掛けることにより、収納部100の開閉を行うことが可能となる。すなわち窪み部128および手掛部126によって、埋込部材120を手掛け用の取手部110として用いることができる。
本実施形態において、手掛部126は、上端から後方に向かって延びる上壁部126aと、前端から上方に向かって延びる前壁部126bとを有する。これらにより、埋込部材120の強度の向上を図ることができる。また図3(a)に示すように上壁部126aおよび前壁部126bがともに溝116内において上面116a(図2参照)に接触することにより、それらの接触面積が増大するため設置安定性を向上させることが可能である。
更に、上壁部126aおよび下壁部122の外側には、それぞれ複数の爪部129が形成されている。これにより、爪部129が溝116の上面116aおよび下面116bに掛止される。このため、収納部100を開ける際(埋込部材120を引っ張った際)における溝116からの埋込部材120の脱落を好適に防ぐことができ、設置安定性の更なる向上が図れる。
図3(e)に示すように、埋込部材120は、溝116に矢印方向に挿入されると下壁部122が撓む。これにより、下壁部122が下面116bに対して、上壁部126aが上面116aに対して付勢される。この状態において、基材112の前面112aと、埋込部材120の前端面、すなわち手掛部126の前面126cならびに下壁部122の前面122aとが面一になるようにする(以下、手掛部126の前面126cと、下壁部122の前面122aを併せて、埋込部材120の前端面と称する)。そして、基材112の前面112aおよび埋込部材120の前端面を覆うように化粧材114を基材112に貼着すると、図2に示す状態となり取手部110が形成される。
(前板102の製造方法)
次に、上記説明した前板102の製造方法について説明する。図4は本実施形態にかかる前板102の製造方法を説明するフローチャートであり、図5〜図11は、本実施形態にかかる前板102の製造方法を説明する図である。なお、以下に説明する製造方法において用いられる工具や材料、加工方法は理解を容易にするための例示にすぎず、必ずしもこれに限定するものではない。
前板102の製造では、まず基材112の前面112aの面内に溝116を形成する(ステップ400)。溝116の形成では、図5に例示するようにNC旋盤(全体は不図示)のバイト180(回転ビットとも称される)により、基材112に溝116を彫る。溝116は、好ましくは2段彫りで形成されるとよく、1段目は粗いバイトを、2段目は精密バイトを用いて彫ることにより、加工精度を担保することができる。なお、当然であるが、この溝116の形成時には、基材112を貫通しないよう、埋込部材120の厚みt(図3(a)参照)とほぼ同じ深さまで彫る。
上述したように、本実施形態のNC旋盤ではフライス盤(不図示)のように回転ビット(バイト180)によって溝116を形成するため、図5に示すように、溝116の角部に、バイト180の曲率半径をほぼ同じ曲率半径を有する湾曲部116c(いわゆるアール)が形成される。これに対し、図3に示す埋込部材120は押出成型材を切断して製造されるため切断面は平坦である。故に、図5に示す溝116に埋込部材120を単に挿入しただけでは、埋込部材120の端部120aおよび120b(図3参照)と溝116との間に間隙が生じてしまう。
そこで本実施形態では、埋込部材120の端部120aおよび120bに、図6(a)に示す端部部材130を取り付ける。図7は、端部部材130の詳細図であり、図7(a)は端部部材130の上面図、図7(b)は端部部材130の正面図、図7(c)は130の側面図である。
図7に示すように、端部部材130は、ブロック状の部材であり、その前面130cは、基材112の前面112a(埋込部材120の前端面)と面一に形成されている。また埋込部材120と対向する正面130aは、埋込部材120の端部120aおよび120bと同様に平坦面である。一方、端部部材130において、埋込部材120と対向しない側の背面130bの角は、溝116の湾曲部116c(すなわちバイト180)とほぼ同じ曲率半径で湾曲し、丸みを帯びている。このような端部部材130を埋込部材120の端部120aおよび120bに取り付けることにより、埋込部材120を溝116に挿入した際に生じる間隙を埋めることができる。したがって、後述する化粧材114が間隙に向かって窪むのを防ぎ、前板102(収納部100)の美観を良好に保つことが可能となる。
なお、端部部材130の材質としては、埋込部材120と同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよいが、好ましくは柔軟性や弾性を有する材料を用いるとよい。これにより、端部部材130が溝116と埋込部材120との間隙の形状に追従して変形し、間隙をより好適に埋めることができる。
ここで、端部部材130を埋込部材120の端部120aおよび120bに取り付けることにより、埋込部材120と基材112との間に生じる間隙を埋めることができるものの、単に端部部材130を埋込部材120に接着すると、端部部材130の正面130aが窪み部128に露出した状態になる。すると、使用者が取手部110を側方から見た際に端部部材130の正面130aを容易に観察できてしまうため、かかる正面130aと、前板102の前面すなわち化粧材114との調和がとれていないと、使用者が違和感を覚えるおそれがある。
そこで本実施形態では、埋込部材120と端部部材130との間に、化粧材114と同じ色調や模様(本実施形態では木目調)の被覆シート140を配置する。そして、端部部材130の正面130aに被覆シート140を貼着し、それを介して埋込部材120の端部120aおよび120bと端部部材130の正面130aとを貼着すると、図6(b)に示す状態となる。これにより、使用者が取手部110を側方から見た際に観察されるのは被覆シート140となるため、化粧材114との調和がとれ、使用者にそれらを一体のものと感じさせることができる。埋込部材120、端部部材130および被覆シート140の貼着方法としては、接着剤や接着テープ等、既知の方法を用いることができる。
なお、本実施形態では、端部部材130によって間隙を埋める場合を例示して説明したが、上述した構成は一例であり、これに限定するものではない。例えば、溝116を彫る旋盤に角ノミ盤を用いれば、アールを有さない四角形の溝を形成することが可能である。したがって、埋込部材120と基材112との間に間隙が生じづらくなるため、端部部材130を不要とすることができる。また埋込部材120と溝116との間隙を埋めるのは、必ずしも端部部材130でなくてもよく、パテやシーリング材等の充填材を用いてもよい。更に、基材112の前面112aに貼着される化粧材114が硬質材料からなるシート、すなわち薄板である場合には、埋込部材120と基材112との間隙を埋めなくてもよい。化粧材114が硬質なシートであれば、化粧材114の窪みが生じにくいからである。
次に、図6(b)に示すように端部部材130および被覆シート140を取り付けた(接着した)埋込部材120を、図6(c)に示すように溝116に挿入して接合する(ステップ402)。このとき、溝116の内面(図2に示す上面116a、下面116bおよび側面116c)、または埋込部材120および端部部材130において基材112の内面と対向する面の少なくとも一方に接着材(不図示)を塗布しておくとよい。これにより、それらの接着強度を高めることができ、溝116からの埋込部材120や端部部材130の脱落を効果的に防ぐことが可能となる。
なお、図6(c)に示す状態において、溝116と端部部材130との間に隙間が生じたら、そこにパテ(不図示)を充填する。溝116と端部部材130との間に隙間が生じなかった場合には、当然にしてこの工程は不要である。また上記説明では、端部部材130および被覆シート140を取り付けた埋込部材120を溝116に挿入する場合を例示したが、これに限定するものではない。すなわち埋込部材120、端部部材130および被覆シート140は必ずしもすべてを一体にしてから溝116に挿入する必要はなく、例えば、埋込部材120と、被覆シート140を貼着した端部部材130とを別々に溝116に挿入してもよいし、被覆シート140を貼着した埋込部材120と、端部部材130とを別々に溝116に挿入してもよい。
図6(c)に示すように埋込部材120(厳密には、埋込部材120、端部部材130および被覆シート140)を溝116に挿入して接合したら、基材112の前面112aと、埋込部材120の前端面とが面一になるように調整する(平坦化する)。以下、特に断らない限り、基材112の前面112a、および埋込部材120の前端面(前面122a、126c)を総じて、基材112の前面112a等と称する。
上記の調整(平坦化)では、図8に例示するように、ワイドサンダー182(ベルトサンダーとも称される)により、基材112の前面112a等を研磨(研削)する(ステップ404)。これにより、埋込部材120の成型の寸法誤差および溝116の切削加工の寸法誤差が吸収され、基材112の前面112a等が正確に面一な状態になる(図3(e)参照)。この平坦化すなわち研磨工程においても、1回目は目が粗い研磨ベルト(例えば♯80)を、2回目は目が細かい研磨ベルト(例えば♯150)を用いて2段研磨を行うことが好ましい。
なお、埋込部材120を溝116に挿入した状態(図6(c)参照)において、図3(e)に示すように基材112の前面112a等が面一な状態であったら、上述した研磨工程は必ずしも行う必要がないが、加工精度を向上するためにはやはり実施することが好ましい。また上記構成では、基材112の前面(表面)および埋込部材120の前端面(基材112の前面112a等)の両方を研磨(研削)する構成を例示したが、これに限定するものではなく、基材112の前面112aまたは埋込部材120の前端面の一方に対して突出している他方のみを研磨する構成としてもよい。
次に、図9(a)に示すように、手掛部126の前面126cと、下壁部122の前面122aの間(図3(a)参照)、すなわち内壁部124の前面にマスキングテープ184を貼付する(ステップ406)。そして、基材112の前面112a等に接着剤188(図9(b)にて破線で図示)を塗布する(ステップ408)。このように内壁部124の前面をマスキングしておくことにより、内壁部124への接着剤188の付着を防ぐことができる。
接着剤188の塗布には、図9(b)に例示するようにスプレーガン186を用いるとよい。これにより、基材112の前面112a等に薄く且つ均一に接着剤188を塗布することができる。ただし、かかる構成に限定するものではなく、例えばローラ(不図示)を用いて接着剤188を塗布してもよい。これによれば、接着剤188の窪み部128への進入が生じにくいため、マスキングテープ184により窪み部128を封止する工程を省略することができる。また接着剤188は、基材112の前面112a等ではなく、それに貼着される化粧材114の裏面(前面112aと当接する側の面)に塗布されていてもよい。これによれば、スプレーガン186を用いても接着材の128への進入が起こらないため、スプレーガン186による利点を得つつ、マスキングテープ184により窪み部128を封止する工程を省略することが可能である。
接着剤188を塗布したら、基材112の前面112a等のほぼ全面に、そこを覆うように化粧材114を貼着する(ステップ410)。化粧材114の接着では、図10に例示するように、接着剤188を塗布した基材112の前面112a等に化粧材114を被せ、その上に当て板192を当てて、真空プレス装置190によって加熱圧着する。真空プレス装置190では、当て板192と当接する面にゴムシート194が配置されている。そして、基材112を載置された架台196に設けられた孔196aから真空引きすることにより、大気圧でゴムシート194が締め付けられ、かかるゴムシート194によって化粧材114が均一に加圧される。
このとき、基材112に当て板192が載せられていることにより、加圧時に化粧材114に筋が生じることを防止できる。またこのように化粧材114上(基材112上)に当て板192を載せた状態であっても、真空プレスであれば高い接着強度を得ることができる。なお、図10に示すように、上述した化粧材114の接着時において、基材112の前面112a等には化粧材114が貼着(接着)されるが、基材112の端面112bは露出した状態である。
続いて、図11(a)に例示するように、基材112の前面112a等に貼着された化粧材114のうち、窪み部128に対応する領域114a(ハッチングにて図示)を、かかる窪み部128の縁の全周(破線にて図示)に沿って切断工具198によってカッティングし、かかる窪み部128を開口させる(ステップ412)。なお、図11(a)では切断工具198としてカッターナイフを例示しているが、これに限定するものではなく、化粧材114を切断可能な工具であればどのようなものを用いてもよい。
上記の化粧材114の切断を容易にするために、本実施形態では、埋込部材120において、窪み部128の下縁、すなわち下壁部122の前面122aの上端と、内壁部124の内面の下端との間に、段部120cを形成している(図3(a)参照)。詳細には、段部120cは、窪み部128の下縁に形成された前端面(下壁部122の前面122a)に連続していて、断面視においてそれとほぼ直角をなすように形成されている。段部120cの幅は極めて狭くてよく、例えば1mm程度でよい。
かかる構成により、図11(b)に示すように、化粧材114において埋込部材120の窪み部128に対応する領域114a(図11(a)参照)を切断工具198によってカッティングする際に段部120cをガイドとして利用することができる。したがって、容易かつ正確なカッティングが可能となるため、切断時の作業効率の向上を図れるとともに、化粧材114の端面(断面)の仕上がりを向上させることができる。
次に、素材が露出している基材112の端面112bに、縁貼り機を用いて木口材(不図示)を貼付する(ステップ414)。木口材には、例えばABS等からなる厚さ3〜5mm程度の樹脂製のテープを好適に用いることができる。そして、窪み部128を封止していたマスキングテープ184(図9参照)を剥離することにより(ステップ416)、図1に示す前板102が製造される。
なお、木口材の貼付は、基材112に化粧材114を貼付する工程以降であれば、いずれのタイミングで行ってもよく、マスキングテープ184の剥離も、化粧材114における埋込部材120の窪み部128に対応する領域を切断する工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
上記説明したように、本実施形態にかかる前板102の製造方法によれば、基材112の前面112aに溝116を形成し、その溝116に埋込部材120を挿入して接合することにより、従来の機械加工による複雑な工程を必要とすることなく手掛部126および窪み部128を容易に形成することができる。そして、埋込部材120の前端面と基材112の前面112aとを面一とし、そこを化粧材114によって被覆することにより、前板102の外観からは埋込部材120の窪み部128しか観察されなくなり(図1および図2参照)、取手部110はあたかも基材112を彫り込んで形成したように見える。したがって、製造工程の複雑化を招くことなく、美観に優れた収納部用前板(前板102)を容易且つ安価に製造することが可能となる。
(前板102の製造方法の他の例)
図12および図13は、上述した前板102の製造方法の他の例を説明する図である。上記説明した実施形態では、基材112の前面112aに貼付される化粧材114と同じ色調や模様(本実施形態では木目調)の被覆シート140を端部部材130の正面130aに貼付することにより(図6参照)、取手部110内の側面と前板102の表面(厳密には、それに貼付される化粧材114)との調和を図っていた。しかしながら、この状態であると、埋込部材120において、取手部110の正面となる内壁部124の内面はかかる埋込部材120の素材が露出した状態である。このため、使用者が前板102を前方から観察した際に、埋込部材120に対して違和感を覚える可能性がある。
そこで、取手部110の正面となる内壁部124の内面においても化粧材114との調和を図るべく、図12(a)に示すように、埋込部材120を溝116(図2参照)に挿入する前に、窪み部128、すなわちそれを構成する内壁部124の内面124aにエンボス形状を形成するとよい。エンボス形状の形成方法としては、例えばローラ200によるプレスを例示することができる。これにより、埋込部材120の窪み部128においても化粧材114を貼付したときと同様の模様が形成されるため、正面視においても前板102と取手部110との外観上の統一感(一体感)が得られる。
また上記構成に限定するものではなく、図12(b)に示すように、化粧材114と同じ色調や模様の化粧シート214(化粧材)を内壁部124の内面124aに貼付してもよい。化粧シート214の貼着方法としては、接着剤や接着テープ等、既知の方法を用いることができる。ただし、内壁部124の内面124aに正確に化粧シート214を貼付する手間を鑑みると、化粧シート214を貼付せずともあたかもそれを貼付したように見せることができる図12(a)に示す方法の方が好ましい。
また上記説明した実施形態では、基材112の前面112a等に化粧材114を貼着した後に(ステップ410)、窪み部128の縁の全周(図11に破線にて図示)に沿って化粧材114の領域114aをカッティングすることにより(ステップ412)、取手部110に対応する窪み部128を開口させる構成を例示したが(図11参照)、これに限定するものではない。図13に示すように、化粧材114において、窪み部128に対応する領域114aを予め切断することにより開口部114bを形成し、開口部114bが形成された化粧材114を基材112の前面112a等に貼着してもよい。
上記構成では、基材112と化粧材114とは、窪み部128と開口部114bとを基準として位置合わせされる。このため、基材112と同一寸法の化粧材114を用いるとそれらの外周において寸法誤差によるズレが生じることが想定される。故に、上記のように予め開口部114bを設けた化粧材114を基材112に貼着するときには、図13に示すように、化粧材114の寸法を基材112よりも大きく設定し、窪み部128と開口部114bとを位置合わせして化粧材114を基材112に貼着した後に、基材112の前面112aからはみ出した化粧材114の縁をカッティングするとよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、収納部の前面に配置され、収納部の開閉に用いられる取手を有する収納部用前板の製造方法に適用可能である。
100…収納部、102…前板、104a…側板、104b…側板、106…底板、108…背板、110…取手部、112…基材、112a…前面、112b…端面、114…化粧材、114a…領域、114b…開口部、116…溝、116a…上面、116b…下面、116c…湾曲部、120…埋込部材、120a…端部、120b…端部、120c…段部、122…下壁部、122a…前面、124…内壁部、124a…内面、126…手掛部、126a…上壁部、126b…前壁部、126c…前面、128…窪み部、129…爪部、130…端部部材、130a…正面、130b…背面、140…被覆シート、180…バイト、182…ワイドサンダー、184…マスキングテープ、186…スプレーガン、188…接着剤、190…真空プレス装置、192…当て板、194…ゴムシート、196…架台、196a…孔、198…切断工具、200…ローラ

Claims (5)

  1. 基材の前面の面内に溝を形成し、
    前記溝に窪み部および手掛部を有する埋込部材を挿入して接合し、
    前記基材の前面と前記埋込部材の前端面が面一になるように調整し、
    前記基材の前面および前記埋込部材の前端面を覆うように、シートまたは薄板からなる化粧材を貼着することを特徴とする収納部用前板の製造方法。
  2. 前記溝に前記埋込部材を挿入した後に、前記基材または前記埋込部材の一方を研削することによって、該基材の前面と該埋込部材の前端面を面一になるように調整することを特徴とする請求項1に記載の収納部用前板の製造方法。
  3. 前記化粧材を前記基材のほぼ全面に貼着した後に、前記窪み部の縁の全周に沿って該化粧材をカッティングして、該窪み部を開口させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の収納部用前板の製造方法。
  4. 前記埋込部材は、前記窪み部の下縁に形成された前端面に連続し、断面視において該前端面とほぼ直角をなす段部を有することを特徴とする請求項3に記載の収納部用前板の製造方法。
  5. 前記埋込部材を前記溝に接合する前に、前記窪み部にエンボス形状を形成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の収納部用前板の製造方法。
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