特許文献1に記載された防護柱構造は、構造物を漂流物から防護する構成であり、D型中空プレキャストPC柱は、津波による波力を受け流してしまう。これにより、受け流された津波は、波力が低減されることなく構造物へ到達する。このため、構造物は、波の波力を直接受けることを考慮して、構造物の剛性を向上させる必要がある。この場合、構造物の剛性を高めるための費用が増大する。
そこで、本発明は、対象構造物に与えられる波の波力を低減することができる波力低減構造を提供することを課題とする。
本発明の波力低減構造は、陸地に設けられた対象構造物の外面に取り付けられ、対象構造物へ向かう波を、対象構造物を回避するように分割する分割部材を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、分割部材は、対象構造物を回避するように、対象構造物へ向かう波を分割することができる。これにより、分割部材は、分割後の波が対象構造物を回避する分、対象構造物に与えられる波の波力を低減することができる。以上から、対象構造物に与えられる波の波力を抑制することができるため、対象構造物の剛性を高めるための費用を抑制することができる。
この場合、分割部材は、対象構造物の外面から外側へ向けて、波の対向方向に延びて設けられた分割プレートを有していることが好ましい。
この構成によれば、分割プレートを対象構造物に取り付けるという簡易な構成で、対象構造物を回避するように対象構造物へ向かう波を分割することができ、対象構造物に与えられる波の波力を低減することができる。
この場合、分割プレートは、複数設けられ、複数の分割プレートは、第1分割プレートと、第1分割プレートを挟んで両側に設けられた一対の第2分割プレートと、を有しており、第1分割プレートは、対象構造物の外面から外側へ延びる方向が、第2分割プレートに比して長いことが好ましい。
この構成によれば、第1分割プレートの対象構造物の外面から外側へ延びる方向を、第2分割プレートに比して長くすることができる。このため、第1分割プレートおよび第2分割プレートは、対象構造物をより好適に回避するように、対象構造物へ向かう波を分割することができる。
この場合、分割プレートは、プレート本体と、鉛直方向を軸方向としてプレート本体を屈曲させるヒンジと、を有していることが好ましい。
この構成によれば、ヒンジを介してプレート本体を屈曲させることにより、分割プレートを折り畳むことができる。このため、対象構造物へ向かう波が発生しない場合、分割プレートを折り畳むことで、分割プレートを収容することができる。
この場合、分割部材は、分割プレートの対向方向の先端側に設けられ、波の進行方向に直交し、波が衝突する衝突面を有する衝突プレートを更に有していることが好ましい。
この構成によれば、分割プレートの先端側に衝突プレートを設けることで、衝突プレートに波を衝突させて波の波力を低減させた後、衝突プレートおよび分割プレートにより波を分割することができる。これにより、対象構造物に与えられる波の波力をより低減することができる。
この場合、分割部材は、分割プレートの対向方向の先端側に設けられ、進行方向に進む波を二方向に分岐させる分岐部を更に有していることが好ましい。
この構成によれば、分割プレートの先端側に分岐部を設けることで、波をより好適に分割することができる。このため、分岐部は、分割後の波を、対象構造物を好適に回避させることができる分、対象構造物に与えられる波の波力を低減することができる。
この場合、分割部材は、対象構造物の波に対向する側の壁体に取り付けられ、進行方向に進む波を左右に分岐させる分岐部を有していることが好ましい。
この構成によれば、対象構造物の壁体に分岐部を設けることができるため、分岐部を対象構造物の壁体で支持することができる。これにより、分岐部は、剛性を高めつつ、分割後の波を、対象構造物を好適に回避させることができ、対象構造物に与えられる波の波力を低減することができる。
この場合、分岐部は、対象構造物の波に対向する側の壁体として、一体に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、分岐部を対象構造物の壁体として、一体に設けることができるため、対象構造物の剛性を高めることができる。
本発明の波力低減構造によれば、複数の耐波力構造物により波の波力を低減することができるため、対象構造物に与えられる波力を低減することができる。
以下、添付した図面を参照して、本発明の波力低減構造について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
実施例1に係る波力低減構造は、対象構造物に与えられる波の波力を低減するものであり、対象構造物としては、例えば、タンク施設、または火力発電プラント、原子力発電プラント、化学プラント等に用いられる各種設備である。以下、図1および図2を参照して、波力低減構造について説明する。
図1は、実施例1に係る波力低減構造を模式的に表した平面図であり、図2は、実施例1に係る波力低減構造を模式的に表した側面図である。対象構造物1は、沿岸、つまり海洋に沿った陸地3に設けられている。対象構造物1は、例えば、平面視円形となる円柱状のタンク施設である。対象構造物1の海洋7側には、堤防5が設けられている。堤防5は、陸地3と海洋7との間に設けられた防潮堤である。なお、実施例1では、堤防5として、防潮堤を適用したが、海洋7に設けられた防波堤であってもよい。堤防5は、海洋7側で発生した津波または高波等の波から、陸地3側にある対象構造物1の被害を防いでいる。なお、津波は、地震により発生する波であり、高波は、台風等により発生する波である。また、実施例1では、海洋7で発生する波に適用して説明するが、川または湖で発生する波でもよい。
波力低減構造10は、対象構造物1へ向かう波を対象構造物1を回避するように分割する分割部材として、対象構造物1の外面から外側へ向けて延びる板状の分割プレート15を有している。分割プレート15は、対象構造物1の海洋7側に1つ取り付けられており、波の進行方向に対向する対向方向に延びて設けられている。なお、進行方向は、海洋7から陸地3へ向かう方向(図示右側から図示左側へ向かう方向)である。また、対向方向は、波の進行方向の逆方向となる方向である。つまり、分割プレート15は、対象構造物1の中心から外側に向かう径方向(対向方向)に延びて設けられている。分割プレート15は、鉛直方向における高さが、波の想定高さよりも高くなるように構成される。
従って、例えば、地震により海洋7側で津波が発生すると、発生した津波は、陸地3側へ向かって打ち寄せる。打ち寄せた津波が堤防5を越えるような津波である場合、津波は、その一部が堤防5によりせき止められるが、他の一部が堤防5を越えて、陸地3側に流入する。堤防5の陸地3側に流入した津波は、その一部が対象構造物1へ向かって流れる。対象構造物1へ向かう津波は、対象構造物1に到達する前に、波力低減構造10に到達する。波力低減構造10に到達した津波は、波力低減構造10の分割プレート15によって分割される。つまり、波力低減構造10に到達した津波は、分割プレート15を挟んで進行方向の左右の二方向に分割される。二方向に分割された津波のうち、進行方向の左側(図示下側)の津波は、進行方向に進行しつつ左方向に向かうことで、対象構造物1に対し左側に反れて、対象構造物1を回避する。同様に、二方向に分割された津波のうち、進行方向の右側(図示上側)の津波は、進行方向に進行しつつ右方向に向かうことで、対象構造物1に対し右側に反れて、対象構造物1を回避する。
以上のように、実施例1の構成によれば、分割プレート15を設けることで、対象構造物1を回避するように、対象構造物1へ向かう波を分割することができる。このため、分割プレート15は、分割後の波が対象構造物1を回避する分、対象構造物1に与えられる波の波力を低減することができる。これにより、分割プレート15は、対象構造物1に与えられる波の波力を抑制することができるため、対象構造物1の剛性を高めるための費用を抑制することができる。
また、実施例1の構成によれば、分割プレート15を対象構造物1に取り付けるという簡易な構成で、対象構造物1に与えられる波の波力を低減することができる。
なお、実施例1の波力低減構造10では、対象構造物1に1つの分割プレート15を取り付けたが、図3に示す変形例1の構成であってもよい。図3は、変形例1に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。図3に示すように、変形例1の波力低減構造10では、対象構造物1に複数の分割プレート15が取り付けられている。複数の分割プレート15は、第1分割プレート15aと、第1分割プレート15aを挟んで左右両側に設けられた一対の第2分割プレート15bと、を有している。
複数の分割プレート15は、対象構造物1の海洋7側の外面に取り付けられ、対象構造物1を中心として外側へ向かう放射状に配置されている。複数の分割プレート15のうち、第1分割プレート15aは、波の進行方向に対向する対向方向に延びて設けられている。複数の分割プレート15のうち、一対の第2分割プレート15bは、波の進行方向に対向して設けられているものの、対向方向から傾斜させた方向に延びて設けられている。つまり、一対の第2分割プレート15bのうち、第1分割プレート15aを挟んで対向方向の右側(図示下側)の第2分割プレート15bは、対向方向に対して右側に傾けた方向に延びて設けられている。一対の第2分割プレート15bのうち、第1分割プレート15aを挟んで対向方向の左側(図示上側)の第2分割プレート15bは、対向方向に対して左側に傾けた方向に延びて設けられている。また、第1分割プレート15aは、対象構造物1の外面から外側へ延びる方向が、第2分割プレート15bに比して長くなっている。
従って、対象構造物1へ向けて流れる津波は、波力低減構造10に到達すると、第1分割プレート15aによって左右の二方向に分割される。二方向に分割された津波のうち、進行方向の左側(図示下側)の津波は、進行方向に進行しつつ左方向に向かうことで、対象構造物1に対して左側に反れながら、進行方向の左側(図示下側)の第2分割プレート15bに到達する。同様に、二方向に分割された津波のうち、進行方向の右側(図示上側)の津波は、進行方向に進行しつつ右方向に向かうことで、対象構造物1に対して右側に反れながら、進行方向の右側(図示上側)の第2分割プレート15bに到達する。
左側の第2分割プレート15bに到達した津波は、第2分割プレート15bによって二方向に分割される。そして、二方向に分割された津波の大部分が、進行方向の左側へ向かう。進行方向の左側の津波は、進行方向に進行しつつ更に左方向に向かうことで、対象構造物1に対し左側に大きく反れて、対象構造物1を好適に回避する。
右側の第2分割プレート15bに到達した津波は、第2分割プレート15bによって二方向に分割される。そして、二方向に分割された津波の大部分が、進行方向の右側へ向かう。進行方向の右側の津波は、進行方向に進行しつつ更に右方向に向かうことで、対象構造物1に対し右側に大きく反れて、対象構造物1を好適に回避する。
以上のように、変形例1の構成によれば、第1分割プレート15aおよび第2分割プレート15bを設けることで、対象構造物1へ向かう波を、対象構造物1をより好適に回避するように分割することができる。このため、第1分割プレート15aおよび第2分割プレート15bは、分割後の波を対象構造物1からより好適に回避させる分、対象構造物1に与えられる波の波力をより低減することができる。これにより、対象構造物1に与えられる波の波力を更に抑制することができるため、対象構造物1の剛性を高めるための費用を更に抑制することができる。
また、実施例1では、対象構造物1に分割プレート15を取り付けたが、図4に示す変形例2の構成であってもよい。図4は、変形例2に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。図4に示すように、変形例2では、対象構造物1に取り付けられた分割プレート20が折り畳み可能となっている。
分割プレート20は、プレート本体21と、プレート本体21を屈曲させるヒンジ22と、を有している。分割プレート20のプレート本体21は、対象構造物1の海洋7側に1つ取り付けられており、対向方向に延びて設けられている。ヒンジ22は、鉛直方向を軸方向としており、プレート本体21の基端側(対象構造物1側)に設けられている。このため、プレート本体21は、対向方向の先端側が、ヒンジ22を中心として周方向に回動可能に構成される。
以上のように、変形例2の構成によれば、ヒンジ22を介してプレート本体21を屈曲させることにより、分割プレート20を折り畳むことができる(二点鎖線)。このため、対象構造物1へ向かう波が発生しない場合、分割プレート20を折り畳むことで、分割プレート20を収容することができる。
また、実施例1では、平面視円形となる円柱状の対象構造物1に適用して説明したが、図5の変形例3に示すように、平面視方形となる長方体状の対象構造物1に適用してもよい。図5は、変形例3に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。図5に示すように、対象構造物1が平面視方形である場合、分割プレート15を一対設けてもよい。一対の分割プレート15は、対象構造物1の海洋7側の外面に取り付けられ、波の進行方向の逆方向となる対向方向に延びて設けられている。また、一対の分割プレート15は、対象構造物1の外面の両側に寄せて設けられている。つまり、一対の分割プレート15のうち、一方の分割プレート15が、対象構造物1の外面の対向方向における右側(図示下側)に寄せて設けられ、他方の分割プレート15が、対象構造物1の外面の対向方向における左側(図示上側)に寄せて設けられている。一対の分割プレート15は、対象構造物1の外面から外側へ延びる方向が、それぞれ同じ長さとなっている。
従って、対象構造物1へ向けて流れる津波は、波力低減構造10に到達すると、各分割プレート15によって進行方向の左右の二方向に分割される。つまり、対象構造物1へ向けて流れる津波は、進行方向の左側(図示下側)にある分割プレート15に津波が到達すると、進行方向の左側(図示下側)の分割プレート15によって、進行方向の左右の二方向に分割される。また、対象構造物1へ向けて流れる津波は、進行方向の右側(図示上側)にある分割プレート15に津波が到達すると、進行方向の右側(図示上側)の分割プレート15によって、進行方向の左右の二方向に分割される。
進行方向の左側の分割プレート15によって二方向に分割された津波のうち、進行方向の左側の津波は、進行方向に進行しつつ左方向に向かうことで、対象構造物1に対して左側に反れながら、対象構造物1を回避する。また、進行方向の右側の分割プレート15によって二方向に分割された津波のうち、進行方向の右側の津波は、進行方向に進行しつつ右方向に向かうことで、対象構造物1に対して右側に反れながら、対象構造物1を回避する。
以上のように、変形例3の構成においても、一対の分割プレート15を設けることで、平面視方形の対象構造物1を回避するように、対象構造物1へ向かう波を分割することができる。このため、一対の分割プレート15は、分割後の波が対象構造物1を回避する分、対象構造物1に与えられる波の波力を低減することができる。なお、変形例3では、一対の分割プレート15を設けたが、この構成に限らず、対象構造物1の外面の中央部に1つの分割プレート15を設けた構成であってもよい。
次に、図6を参照して、実施例2に係る波力低減構造30について説明する。図6は、実施例2に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。なお、実施例2では、重複した記載を避けるべく、実施例1と異なる部分のみ説明する。実施例1に係る波力低減構造10は、対象構造物1に分割部材として分割プレート15を取り付けた構造であったが、実施例2に係る波力低減構造30は、対象構造物1に分割部材として分岐部35を取り付けている。
図6に示すように、波力低減構造30は、対象構造物1の海洋7側の外壁面に取り付けられた分岐部35を有している。分岐部35は、波の進行方向の逆方向となる対向方向を凸とするV字状に形成されている。つまり、分岐部35は、一方のプレートの一端部に他方のプレートの一端部を、所定の角度を持って一体に接続することにより、頂部を有する屈曲した形状となる。分岐部35は、頂部から離れた両端部が対象構造物1の海洋7側の外壁面に接続される。このため、分岐部35は、その頂部が対向方向に向けられた状態で配置される。
従って、対象構造物1へ向けて流れる津波は、波力低減構造30に到達すると、分岐部35によって進行方向の左右の二方向に分割される。二方向に分割された津波のうち、進行方向の左側(図示下側)の津波は、進行方向に進行しつつ左方向に向かうことで、対象構造物1に対し左側に反れて、対象構造物1を回避する。同様に、二方向に分割された津波のうち、進行方向の右側(図示上側)の津波は、進行方向に進行しつつ右方向に向かうことで、対象構造物1に対し右側に反れて、対象構造物1を回避する。
以上のように、実施例2の構成においても、分岐部35を設けることで、対象構造物1を回避するように、対象構造物1へ向かう波を分割することができる。このため、分岐部35は、分割後の波が対象構造物1を回避する分、対象構造物1に与えられる波の波力を低減することができる。
なお、実施例2でも、平面視円形となる円柱形状の対象構造物1に適用して説明したが、図7の変形例4に示すように、平面視方形となる長方体状の対象構造物1に適用してもよい。図7は、変形例4に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。図7に示すように、対象構造物1が平面視方形である場合、分岐部35を対象構造物1の海洋7側の外壁面に取り付けてもよい。つまり、分岐部35は、その頂部が対向方向に向けられた状態で配置される。
また、実施例2では、分岐部35を対象構造物1に取り付ける構成としたが、対象構造物1の壁体の一部として、一体に設けてもよい。つまり、対象構造物1の海洋7側の壁体は、波の対向方向に凸となる屈曲形状に形成されている。
次に、図8を参照して、実施例3に係る波力低減構造40について説明する。図8は、実施例3に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。なお、実施例3でも、重複した記載を避けるべく、実施例1と異なる部分のみ説明する。実施例1に係る波力低減構造10は、対象構造物1に分割部材として分割プレート15を取り付けた構造であったが、実施例3に係る波力低減構造40は、分割部材として、分割プレート45と、分割プレート45の対向方向の先端部に取り付けた衝突プレート46とを有している。
波力低減構造40は、対象構造物1の外面から外側へ向けて延びる板状の分割プレート45と、分割プレート45の対向方向の先端部に設けた衝突プレート46とを有している。分割プレート45は、実施例1と同様の構成であるため、説明を省略する。衝突プレート46は、波の進行方向に直交する衝突面を有している。そして、衝突プレート46と分割プレート45とが直交するように、衝突プレート46の中央部と分割プレート45の先端部とが接続される。このため、衝突プレート46と分割プレート45とはT字状に配置される。
従って、対象構造物1へ向けて流れる津波は、波力低減構造40に到達すると、衝突プレート46により津波の波力が低減される。つまり、対象構造物1へ向けて流れる津波は、衝突プレート46の衝突面に衝突することで、津波の波力が低減される。この後、衝突後の津波は、衝突プレート46および分割プレート45によって進行方向の左右の二方向に分割される。二方向に分割された津波のうち、進行方向の左側(図示下側)の津波は、進行方向に進行しつつ左方向に向かうことで、対象構造物1に対し左側に反れて、対象構造物1を回避する。同様に、二方向に分割された津波のうち、進行方向の右側(図示上側)の津波は、進行方向に進行しつつ右方向に向かうことで、対象構造物1に対し右側に反れて、対象構造物1を回避する。
以上により、実施例3の構成によれば、分割プレート45の先端側に衝突プレート46を設けることで、衝突プレート46に波を衝突させて波の波力を低減させた後、衝突プレート46および分割プレート45により波を分割することができる。このため、衝突プレート46および分割プレート45は、対象構造物1に与えられる波の波力をより低減することができる。これにより、実施例3の波力低減構造40は、対象構造物1に与えられる波の波力をより抑制することができるため、対象構造物1の剛性を高めるための費用を更に抑制することができる。
なお、実施例3でも、平面視円形となる円柱形状の対象構造物1に適用して説明したが、図9の変形例5に示すように、平面視方形となる長方体状の対象構造物1に適用してもよい。図9は、変形例5に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。図9に示すように、対象構造物1が平面視方形である場合、分割プレート45および衝突プレート46をT字状に配置してもよい。つまり、分割プレート45は、対象構造物1の海洋7側における外面の中央部に取り付けられ、波の進行方向の逆方向となる対向方向に延びて設けられている。衝突プレート46は、分割プレート45の対向方向の先端部に設けられている。そして、衝突プレート46と分割プレート45とが直交するように、衝突プレート46の中央部と分割プレート45の先端部とが接続される。
次に、図10を参照して、実施例4に係る波力低減構造50について説明する。図10は、実施例4に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。なお、実施例4でも、重複した記載を避けるべく、実施例1と異なる部分のみ説明する。実施例1に係る波力低減構造10は、対象構造物1に分割部材として分割プレート15を取り付けた構造であったが、実施例4に係る波力低減構造50は、分割部材として、分割プレート55と、分割プレート55の対向方向の先端部に取り付けた分岐部56とを有している。
波力低減構造50は、対象構造物1の外面から外側へ向けて延びる板状の分割プレート55と、分割プレート55の対向方向の先端部に設けた分岐部56とを有している。分割プレート55は、実施例1と同様の構成であるため、説明を省略する。分岐部56は、波の進行方向の逆方向となる対向方向を凸とする平面視三角形に形成されている。つまり、分岐部56は、3つのプレートを3辺として一体に接続することにより、3つの頂部を有する三角柱状となる。そして、分岐部56の一辺と分割プレート55とが直交するように、分岐部56の一辺の中央部と分割プレート55の先端部とを接続する。これにより、分岐部56は、1つの頂部が対向方向に向けられた状態で配置される。
従って、対象構造物1へ向けて流れる津波は、波力低減構造50に到達すると、分岐部56によって進行方向の左右の二方向に分割される。二方向に分割された津波のうち、進行方向の左側(図示下側)の津波は、進行方向に進行しつつ左方向に向かい、進行方向の右側(図示上側)の津波は、進行方向に進行しつつ右方向に向かう。分割後の津波は、分岐部56および分割プレート55により、分割された状態を維持する。つまり、二方向に分割された津波のうち、進行方向の左側(図示下側)の津波は、進行方向に進行しつつ更に左方向に向かうことで、対象構造物1に対し左側に反れて、対象構造物1を回避する。同様に、二方向に分割された津波のうち、進行方向の右側(図示上側)の津波は、進行方向に進行しつつ更に右方向に向かうことで、対象構造物1に対し右側に反れて、対象構造物1を回避する。
以上のように、実施例4の構成においても、分割プレート55の先端側に分岐部56を設けることで、対象構造物1を回避するように、対象構造物1へ向かう波を早期に分割することができる。つまり、分岐部56は、分割プレート55の先端側に設けられていることから、対象構造物1からより離れた位置で、波を分割することができるため、対象構造物1における波の拡散を大きなものとすることができる。このため、分岐部56は、対象構造物1における波の拡散が大きい分、対象構造物1に与えられる波の波力を低減することができる。
なお、実施例4でも、平面視円形となる円柱形状の対象構造物1に適用して説明したが、図11の変形例6に示すように、平面視方形となる長方体状の対象構造物に適用してもよい。図11は、変形例6に係る波力低減構造を模式的に表した平面図である。図11に示すように、対象構造物1が平面視方形である場合、分割プレート55の対向方向の先端部に分岐部56を取り付けてもよい。つまり、分割プレート55は、対象構造物1の海洋7側における外面の中央部に取り付けられ、波の進行方向の逆方向となる対向方向に延びて設けられている。分岐部56は、波の進行方向の逆方向となる対向方向を凸として、分割プレート55の対向方向の先端部に取り付けられている。
なお、実施例1から実施例4では、波力低減構造10,30,40,50を、対象構造物1に取り付けたが、少なくとも一部が取り付けられていればよい。つまり、実施例1に適用して説明すると、対象構造物1に、分割プレート15を僅かに離して配置し、対象構造物1と分割プレート15とを、連結部材を用いて連結してもよい。